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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A62B
管理番号 1270468
審判番号 不服2011-19017  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-17 
確定日 2013-02-14 
事件の表示 特願2008-101918号「紫の可視光線と不可視光線近紫外線を透過する安全マスク」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 9月24日出願公開、特開2009-213853号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年3月7日の出願であって、平成23年5月31日付けで拒絶査定され、その査定を不服として同年8月17日に審判請求されたものである。

第2 原査定
原査定における拒絶理由は、以下のとおりである。
「この出願の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.特開2000-197711号公報
2.特開平10-146396号公報
3.特開2006-34340号公報
4.特開平10-296246号公報」

上記刊行物のうち特開2000-197711号公報を、以下「引用例」という。

第3 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項に係る発明は、出願時の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。

「【請求項1】
殺菌作用のある、紫の可視光線と不可視光線の近紫外線の働きにより、常に清潔で健康的な空気を供給することを特徴とした「紫の可視光線と不可視光線の近紫外線を透過する安全マスク」。」

第4 引用刊行物記載の発明
本願の出願日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である引用例には、マスク及びマスクカバーに関し、図面とともに次の事項が記載されている。

(a)「【請求項9】 マスクカバーに光触媒層と炭素繊維層とから成る複合フィルターを設けて成るマスクカバー。
【請求項10】 マスクカバーとマスクとの間に光触媒層と炭素繊維層とから成る複合フィルターを着脱自在に設けたことを特徴とする、請求項9のマスクカバー。
【請求項11】 マスクカバーが透明であり且つマスクカバーの裏面に光触媒層が、この光触媒層の裏面に炭素繊維層が設けられていることを特徴とする、請求項9のマスクカバー。」
(b)「【0027】マスクカバーは、着用したマスクの外側に掛けるものであるが、この時マスクとマスクカバーとの間に光触媒層を挟み込むようにすることにより、所望の効果を得る。マスクカバーは透光性であることを要す。」
(c)「【0054】第12実施形態
次に図13はマスクカバー8を図示したものである。合成樹脂製の薄い素材に沢山の通気孔80を開孔し、両側に掛け紐83を設け、全面に複合フィルター2を貼付して成る。
【0055】着用したマスクの外側を本マスクカバー8で覆うようにし、両側の掛け紐83を耳に掛けて使用するが、この際、光触媒層3の面が外側(太陽光や蛍光燈の光が当たる側)と成るようにする。通気孔80は呼気・吸気をよく通過させるが、光触媒層3に紫外線が当たるとこの部位の空気がイオン化され、この生成されたイオンによりここを通過する吸気が殺菌される。或いは花粉が分解される。従ってこのマスクカバー8を掛けてさえいれば、マスクを通過する空気は自然に殺菌されていることに成る。」
(d)「【0057】第13実施形態
本実施形態のマスクカバー81は、四角にクリップ82を具えた合成樹脂製の薄い素材に沢山の通気孔80が開孔され、これとは別体の複合フィルター21を具えて成るものである。この複合フィルター21は、炭素繊維層4の前面に光触媒層3を塗布して成るものである。
【0058】本実施形態のマスクカバー81を使用するには、マスク1とマスクカバー81との間に複合フィルター21を挟み込むようにして、マスクカバー81に設けられたクリップ82でマスクカバー81をマスク1に固定する。即ち吸気の殺菌や雑菌の除去は、この複合フィルター21が行なうことに成る。」

上記記載事項a?d及び図面の記載を総合すれば、引用例には、次の発明が記載されているといえる(以下「引用発明」という。)。

「マスク1と、四角にクリップ82を具えた合成樹脂製の薄い素材に沢山の通気孔80が開孔された透光性を有するマスクカバー81と、これとは別体の複合フィルター21を具えて成り、複合フィルター21は、炭素繊維層4の前面に光触媒層3を塗布し、マスク1とマスクカバー81との間に複合フィルター21を挟み込むようにして、マスクカバー81に設けられたクリップ82でマスクカバー81をマスク1に固定してなるものであり、吸気の殺菌は、この複合フィルター21の光触媒層3の面が外側(太陽光や蛍光燈の光が当たる側)と成るようにして光触媒層3に紫外線が当たるとこの部位の空気がイオン化され、この生成されたイオンによりここを通過する吸気が殺菌されることによって行われ、マスクを通過する空気は自然に殺菌されるマスク。」

第5 対比・判断
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「マスク」は、マスクを通過する空気を殺菌して害のないものとした空気を吸気するためのものであるから、本願発明の「安全マスク」に相当するものといえる。
引用発明は、「マスクを通過する空気は自然に殺菌される」ものであるから、引用発明は、本願発明における「常に清潔で健康的な空気を供給する」との要件を備えている。
引用発明の「マスクカバー81」は透光性を有するものであって、該マスクカバーは、紫の可視光線や不可視光線の近紫外線を含む、可視光線及び不可視光線のすべての光を透過するものといえるから、引用発明は、本願発明における「紫の可視光線と不可視光線の近紫外線を透過する」との要件を備える。ここで、本件審判請求における請求人の主張の全趣旨によれば、請求人は、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明として、紫の可視光線と不可視光線の近紫外線のみを透過するマスクを想定しているものと解されるが、本願の明細書及び図面にはそのような事項は記載されておらず、また当該明細書及び図面の記載から自明な事項でもない。したがって、本願発明は、請求人の主張するような「紫の可視光線と不可視光線の近紫外線のみを透過するマスク」に係るものであるとは認められず、単に「紫の可視光線と不可視光線の近紫外線を透過する」マスクを意味しているにすぎない。

したがって、本願発明と引用発明は、本願発明の表記にできるだけしたがえば、
「常に清潔で健康的な空気を供給する「紫の可視光線と不可視光線の近紫外線を透過する安全マスク」。」
である点で一致し、以下の点で一応相違する。

[相違点]
本願発明は、「殺菌作用のある、紫の可視光線と不可視光線の近紫外線の働きにより、」常に清潔で健康的な空気を供給するものであるのに対し、引用発明は、光触媒層3に紫外線が当たることによりその部位の空気がイオン化され、この生成されたイオンによりそこを通過する吸気が殺菌されてマスクを通過する空気が自然に殺菌されるものであって、紫の可視光線や近紫外線自体の働きによる吸気の殺菌を想定したものではない点。

上記相違点について検討する。
近紫外線や近紫外線の波長領域に近い紫の可視光線が殺菌効果を有することは、本願の出願前に周知の事項である(必要であれば、原審においても示した特開2006-34340号公報、特開平10-296246号公報及び特開2003-34630号公報を参照)。引用発明においても近紫外線等による殺菌効果が併せて作用しているということもできるが、そうでないとしても、光触媒層に紫外線が当たって生成されるイオンによる吸気の殺菌のみでなく、マスク全体に当たる近紫外線や紫の可視光線による吸気の殺菌をもその目的として設定することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。すなわち、引用発明において上記相違点に係る構成とすることは、上記周知の事項を参酌することにより、当業者であれば容易になし得たことといえる。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-29 
結審通知日 2012-04-03 
審決日 2012-04-17 
出願番号 特願2008-101918(P2008-101918)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A62B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 出口 昌哉  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 栗山 卓也
川向 和実
発明の名称 紫の可視光線と不可視光線近紫外線を透過する安全マスク  

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