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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1270837
審判番号 不服2011-18215  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-23 
確定日 2013-03-07 
事件の表示 特願2001-138870「オペレーションシステム代替使用制御方法、プログラム及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月22日出願公開、特開2002-333980〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成13年5月9日の出願であって、平成20年5月7日付けで審査請求がなされ、平成23年2月21日付けで拒絶理由通知(同年3月1日発送)がなされ、同年4月26日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、同年5月16日付けで拒絶査定(同年5月24日謄本送達)がなされたものである。
これに対して、本件審判請求は、「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものであるとの審決を求める。」ことを請求の趣旨として、平成23年8月23日付けで審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。
そして、平成23年9月15日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、同年12月28日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(平成24年1月10日発送)がなされ、平成24年3月6日付けで回答書の提出があったものである。


第2 平成23年8月23日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成23年8月23日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容

平成23年8月23日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成23年4月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項3の記載

「【請求項1】
複数のドライブを設けたコンピュータが実行するオペレーションシステム代替使用制御方法であって、
前記コンピュータの電源が投入されると、通常時使用するオペレーションシステムを格納した第1のドライブのオペレーションシステムと、バックアップ用のオペレーションシステムを格納した第2のドライブのオペレーションシステムの何れかを選択する選択画面を表示し、ユーザに指定されたドライブのオペレーションシステムを起動する、
オペレーションシステム代替使用制御方法。
【請求項2】
複数のドライブを設けたコンピュータが実行するオペレーションシステム代替使用制御プログラムであって、
前記コンピュータの電源が投入されると、通常時使用するオペレーションシステムを格納した第1のドライブのオペレーションシステムと、バックアップ用のオペレーションシステムを格納した第2のドライブのオペレーションシステムの何れかを選択する選択画面を表示し、ユーザに指定されたドライブのオペレーションシステムを起動する処理を前記コンピュータに実行させる、
オペレーションシステム代替使用制御プログラム。
【請求項3】
複数のドライブを設けたオペレーションシステム代替使用制御装置であって、
前記オペレーションシステム代替使用制御装置の電源が投入されると、通常時使用するオペレーションシステムを格納した第1のドライブのオペレーションシステムと、バックアップ用のオペレーションシステムを格納した第2のドライブのオペレーションシステムの何れかを選択する選択画面を表示し、ユーザに指定されたドライブのオペレーションシステムを起動する、
オペレーションシステム代替使用制御装置。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)

を、

「【請求項1】
複数のドライブを設けた記憶装置を備えるコンピュータが実行するオペレーションシステム代替使用制御方法であって、
前記コンピュータの電源が投入されると、通常時使用するオペレーションシステムを格納した第1のドライブのオペレーションシステムと、バックアップ用のオペレーションシステムを格納した第2のドライブのオペレーションシステムの何れかを選択する選択画面を表示し、ユーザに指定されたドライブのオペレーションシステムを起動する、
オペレーションシステム代替使用制御方法。
【請求項2】
複数のドライブを設けた記憶装置を備えるコンピュータが実行するオペレーションシステム代替使用制御プログラムであって、
前記コンピュータの電源が投入されると、通常時使用するオペレーションシステムを格納した第1のドライブのオペレーションシステムと、バックアップ用のオペレーションシステムを格納した第2のドライブのオペレーションシステムの何れかを選択する選択画面を表示し、ユーザに指定されたドライブのオペレーションシステムを起動する処理を前記コンピュータに実行させる、
オペレーションシステム代替使用制御プログラム。
【請求項3】
複数のドライブを設けた記憶装置を備えるオペレーションシステム代替使用制御装置であって、
前記オペレーションシステム代替使用制御装置の電源が投入されると、通常時使用するオペレーションシステムを格納した第1のドライブのオペレーションシステムと、バックアップ用のオペレーションシステムを格納した第2のドライブのオペレーションシステムの何れかを選択する選択画面を表示し、ユーザに指定されたドライブのオペレーションシステムを起動する、
オペレーションシステム代替使用制御装置。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)

に補正することを含むものである。

そして、本件補正は、補正前の請求項1ないし請求項3に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2.独立特許要件

以上のように、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、補正前の請求項1に対して、限定的減縮を行ったものと認められる。そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)以下に検討する。

(1)補正後の発明

本件補正により、本願補正発明は、前記「1.補正の内容」の補正後の請求項1に記載されたとおりのものである。

(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

本願の出願前に頒布され、原審の拒絶の査定の理由である上記平成23年2月21日付けの拒絶理由通知において引用された、特開2000-267716号公報(平成12年9月29日出願公開。以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

A 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、部品実装機、部品搬送機、リフロー装置などの生産設備に具備されたコンピュータ装置や生産設備の復旧方法に関し、特にハードディスクドライブ装置にクラッシュ等の障害が発生しても短時間で復旧させることができるコンピュータ装置に関するものである。」

B 「【0021】図1は、前記コンピュータ装置1の基本構成を示し、演算装置Aと、演算データを入力する入力装置Bと、演算データを表示する表示装置Cと、演算処理プログラムや演算データを記憶するHDD装置Dと、HDD装置D内のドライブユニットの1つを選択するためのドライブユニット選択回路2とで構成されている。」

C 「【0022】また図11、図12に示すように、前記ドライブユニット選択回路2を切り換えるスイッチ51が、コンピュータ装置1の前面に設置されている。より具体的に説明すると、前記スイッチ51は、コンピュータ装置1の前面下部、すなわち前面パネル55の下部に形成した凹所56の奥に入った位置に取付けられている。このようにコンピュータ装置1の前面下部にスイッチ51を取付けることにより、部品実装機100の前面扉104を開くと、そのすぐ前面にスイッチ51が位置するように構成でき、HDD装置Dの故障時の復旧作業を容易に行うことができる。他方、スイッチ51をコンピュータ装置1の前面下部の奥に入った位置に配置することで、作業者による誤った操作による選択回路の切り換えやこれによるマシンのトラブルを未然に防止することができる。すなわち、上記位置にスイッチ51を配置することで、ドライバ等の簡単な工具を用いてのみスイッチ51の切り換え作業が可能な構成とし、作業者が不注意によりスイッチ51に接触することを防止することにより、作業者による誤った操作が行われることを防いでいる。なお、このスイッチはHDD装置Dに障害が発生した時に使用するので、コンピュータ装置1が部品実装機の機械本体内の簡単に手が届かないような位置に設置されている場合には、前記スイッチのみを操作し易い機械本体の外面部に配設してもよい。」

D 「【0024】図2は、コンピュータ装置1の信号伝送の構成を示す回路図であり、HDD装置Dには通常少なくとも2台以上のドライブユニットが接続されている。本実施形態では1台の基本ドライブユニット4aと、他の1台のバックアップ用ドライブユニット4bの2台のドライブユニットが配設されている。演算装置AとHDD装置Dとの間の信号伝送ラインnは、データを送受信するデータバスと、データの読み書きの番地を指定するアドレスバスと、ドライブユニットの1つを選択する選択信号で構成される。」

E 「【0027】また、基本ドライブユニット4aには、コンピュータシステム起動に必要なOSプログラム(デバイスドライブプログラムを含む)とコンピュータ処理内容を記述したAPLプログラムとAPLプログラムの処理データ(実装データ、生産管理情報データ、エラーロギングデータ等)とが格納され、バックアップ用ドライブユニット4bにも、基本ドライブユニット4aの内容がOSプログラムを含めて全く同一になるように複製されている。また、コンピュータシステム起動後は、APLプログラムの処理のなかで、演算処理の結果が新たな処理データとして、基本ドライブユニット4aとバックアップ用ドライブユニット4bの両方に書き込まれるようにプログラムされている。」

F 「【0032】以上の構成において、基本ドライブユニット4aとバックアップ用ドライブユニット4bが共に正常に動作している場合の通常処理について、図5を参照して説明する。この場合、コンピュータ起動後のAPLプログラムの処理の中で、APLプログラムの処理結果は処理データとして基本ドライブユニット4aとバックアップ用ドライブユニット4bに格納される。
【0033】まず、コンピュータ装置1の前面の前記スイッチ51を備えたドライブユニット選択回路2で演算装置Aのカレントドライブが基本ドライブユニット4aになるように設定する。次に、コンピュータ装置1の電源を投入すると、基本ドライブユニット4a内のOSプログラムとAPLプログラム及び処理データでシステムが起動する。APLプログラムの処理の中で、処理結果は処理データとして基本ドライブユニット4aとバックアップ用ドライブユニット4bに同時に書き込まれる。」

G 「【0035】次に、基本ドライブユニット4aが故障し、正常なバックアップ用ドライブユニット4bに切り換えている場合のバックアップ処理について、図6を参照して説明する。この場合、コンピュータ起動後のAPLプログラムの処理の中で、APLプログラムの処理結果は処理データとしてバックアップ用ドライブユニット4bに格納される。
【0036】まず、コンピュータ装置1の前面のドライブユニット選択回路2で演算装置Aのカレントドライブがバックアップ用ドライブユニット4bになるように設定する。次に、コンピュータ装置1の電源を投入すると、バックアップ用ドライブユニット4b内のOSプログラムとAPLプログラム及び処理データでシステムが起動する。APLプログラムの処理の中で、処理結果は処理データとしてバックアップ用ドライブユニット4bに書き込まれる。」

ここで、上記引用文献に記載されている事項を検討する。

(ア)上記Aの「本発明は、…(中略)…ハードディスクドライブ装置にクラッシュ等の障害が発生しても短時間で復旧させることができるコンピュータ装置に関するもの」との記載、上記Bの「図1は、前記コンピュータ装置1の基本構成を示し、…(中略)…HDD装置Dと、HDD装置D内のドライブユニットの1つを選択するためのドライブユニット選択回路2とで構成されている。」との記載、上記Dの「図2は、コンピュータ装置1の信号伝送の構成を示す回路図であり、HDD装置Dには通常少なくとも2台以上のドライブユニットが接続されている。」との記載からすると、引用文献には、
“複数のドライブユニットが接続されているHDD装置を備えるコンピュータ装置のドライブユニット選択方法”
が記載されている。

(イ)上記Bの「HDD装置D内のドライブユニットの1つを選択するためのドライブユニット選択回路2」との記載、上記Cの「ドライブユニット選択回路2を切り換えるスイッチ51が、コンピュータ装置1の前面に設置されている。」との記載、上記Dの「図2は、コンピュータ装置1の信号伝送の構成を示す回路図であり、HDD装置Dには通常少なくとも2台以上のドライブユニットが接続されている。本実施形態では1台の基本ドライブユニット4aと、他の1台のバックアップ用ドライブユニット4bの2台のドライブユニットが配設されている。」との記載、上記Eの「基本ドライブユニット4aには、コンピュータシステム起動に必要なOSプログラム(デバイスドライブプログラムを含む)とコンピュータ処理内容を記述したAPLプログラム」、「バックアップ用ドライブユニット4bにも、基本ドライブユニット4aの内容がOSプログラムを含めて全く同一になるように複製されている。」との記載、上記Fの「通常処理について」、「コンピュータ装置1の前面の前記スイッチ51を備えたドライブユニット選択回路2で演算装置Aのカレントドライブが基本ドライブユニット4aになるように設定する。次に、コンピュータ装置1の電源を投入すると、基本ドライブユニット4a内のOSプログラムとAPLプログラム及び処理データでシステムが起動する。」との記載、上記Gの「基本ドライブユニット4aが故障し、正常なバックアップ用ドライブユニット4bに切り換えている場合のバックアップ処理について」、「コンピュータ装置1の前面のドライブユニット選択回路2で演算装置Aのカレントドライブがバックアップ用ドライブユニット4bになるように設定する。次に、コンピュータ装置1の電源を投入すると、バックアップ用ドライブユニット4b内のOSプログラムとAPLプログラム及び処理データでシステムが起動する。」との記載からすると、引用文献には、
“コンピュータ装置の電源が投入されると、通常時使用するOSプログラム等を格納した基本ドライブユニットと、バックアップ用のOSプログラム等を格納したバックアップ用ドライブユニットの何れかを選択するドライブユニット選択回路で指定されたドライブユニットを起動する”
態様が記載されている。

以上、(ア)ないし(イ)で指摘した事項から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

複数のドライブユニットが接続されているHDD装置を備えるコンピュータ装置のドライブユニット選択方法であって、
前記コンピュータ装置の電源が投入されると、通常時使用するOSプログラム等を格納した基本ドライブユニットと、バックアップ用のOSプログラム等を格納したバックアップ用ドライブユニットの何れかを選択するドライブユニット選択回路で指定されたドライブユニットを起動する、
ドライブユニット選択方法。

(3)参考文献に記載されている技術的事項

(3-1)参考文献1

本願の出願前に頒布された刊行物である、国際公開第00/29946号(2000年5月25日国際公開。以下、「参考文献1」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

H 「The present invention facilitates the selection and configuration of a hardware devices or a BCV device (such as a hard disk drive) from a plurality of hardware device or BCV devices 24 (such as a plurality of hard disk drives) that are installed on the processor system 10. Figure 3 is a flow chart illustrating one embodiment of the boot drive selection and configuration process provided in accordance with the principles of the present invention. Beginning from a start state, the process 100 proceeds to process block 110, where it conducts power on self test (POST), initialization and installation procedures. At this juncture, the hardware devices 24 and the I/O and peripheral devices 26 are initialized and installed. Hardware devices 24 that are configured to be controlled by BIOS are installed on the INT 13h template structure. The boot connection vector (BCV) device record is also created at this juncture.
The process 100 then proceeds to decision block 120, where it determines if the boot process should proceed from a currently specified drive. If not, the process 100 proceeds to process block 130, where the user is prompted to specify the drive from which the boot process should proceed. The process 100 then configures the specified drive for the booting process. The process 100 then advances to process block 140, where it initiates the booting process. If, at decision block 120, the process 100 determines that the boot process should proceed from the currently specified drive, the process would proceed directly to process block 140. Upon completing the boot process, the process 100 terminates.」(第5頁3?23行目)
(訳(特表2002-530739号公報の該当部分):
【0013】
本発明は、プロセッサ・システム10にインストールされている複数のハードウェア・デバイスまたは(複数のハードディスク・ドライブなどの)BCVデバイス24からの、ハードウェア・デバイスまたは(ハードディスク・ドライブなどの)BCVデバイスの選択および構成を容易にする。図3に、本発明の原理に従って提供されるブート・ドライブの選択および構成のプロセスの一実施形態の流れ図を示す。プロセス100は、開始状態から始まってプロセス・ブロック110に進み、そこで電源入力自己診断(POST)、初期化、およびインストレーションの手順を実行する。この時点で、ハードウェア・デバイス24ならびにI/Oデバイスおよび周辺デバイス26が初期化され、インストールされる。BIOSによって制御されるように構成されたハードウェア・デバイス24が、INT13hテンプレート構造にインストールされる。ブート・コネクション・ベクタ(BCV)デバイス・レコードも、この時点で生成される。
【0014】
プロセス100は、次いで、判定ブロック120に進み、そこで、現在指定されているドライブからブート・プロセスが進行するべきかどうかを判定する。進行すべきでない場合、プロセス100は、プロセス・ブロック130に進み、そこでユーザは、ブート・プロセスが進行すべきドライブを指定するようプロンプト指示される。プロセス100は、次いで、指定されたドライブをブーティング・プロセスのために構成する。プロセス100は、次いで、プロセス・ブロック140に前進し、そこで、ブーティング・プロセスを開始する。判定ブロック120で、プロセス100が、現在指定されているドライブからブート・プロセスが進行するべきであると判定する場合、プロセスは、プロセス・ブロック140に直接に進む。ブート・プロセスが完了すると、プロセス100は終了する。)

(3-2)参考文献2

本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平2-143319号公報(平成2年6月1日出願公開。以下、「参考文献2」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

J 「2.特許請求の範囲
パーソナルコンピュータ起動時に接続されているディスクドライブの個数とそのディスクドライブの種類をチェックするドライブチェック部と、このドライブチェック部をチェック結果である接続中のディスクドライブとその種類を画面メッセージとして表示して起動ドライブのキー入力を促すメッセージ表示部と、キー入力を受けつけるキー入力判断部と、キー入力により指定されたディスクドライブからの起動を行うディスクドライブ起動処理部とを、ROM上のパーソナルコンピュータ起動プログラム内に具備するパーソナルコンピュータ起動制御方式。」

(4)本願補正発明と引用発明との対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

(4-1)引用発明の「ドライブユニット」、「HDD装置」、及び「コンピュータ装置」は、それぞれ、本願補正発明の「ドライブ」、「記憶装置」、及び「コンピュータ」に相当する。そして、引用発明の「ドライブユニットが接続されているHDD装置」は、本願補正発明の「ドライブを設けた記憶装置」に相当する。
ところで、引用発明の「コンピュータ装置のドライブユニット選択方法」は、上記Aに「本発明は、…(中略)…ハードディスクドライブ装置にクラッシュ等の障害が発生しても短時間で復旧させることができるコンピュータ装置に関するもの」、上記Gに「基本ドライブユニット4aが故障し、正常なバックアップ用ドライブユニット4bに切り換えている場合のバックアップ処理」、「コンピュータ装置1の前面のドライブユニット選択回路2で演算装置Aのカレントドライブがバックアップ用ドライブユニット4bになるように設定する。次に、コンピュータ装置1の電源を投入すると、バックアップ用ドライブユニット4b内のOSプログラムとAPLプログラム及び処理データでシステムが起動する。」と記載されるように、基本ドライブユニットの障害時に、代替用であるバックアップ用ドライブユニットに格納されているOSプログラムを起動して使用するための制御方法であるといえることから、本願補正発明の「コンピュータが実行するオペレーションシステム代替使用制御方法」に相当するといえる。
してみると、引用発明の「複数のドライブユニットが接続されているHDD装置を備えるコンピュータ装置のドライブユニット選択方法」は、本願補正発明の「複数のドライブを設けた記憶装置を備えるコンピュータが実行するオペレーションシステム代替使用制御方法」に相当するといえる。

(4-2)引用発明の「OSプログラム等」、「基本ドライブユニット」、及び「バックアップ用ドライブユニット」は、それぞれ、本願補正発明の「オペレーションシステム」、「第1のドライブ」、及び「第2のドライブ」に相当する。また、引用発明の「基本ドライブユニット」及び「バックアップ用ドライブユニット」を起動することとは、それぞれ、“起動ドライブユニットのOSプログラム”及び“バックアップ用ドライブユニットのOSプログラム”を起動することに他ならない。
そして、引用発明の「ドライブユニット選択回路」と、本願補正発明の「選択画面」とは、ともに、起動するドライブを選択するための“選択手段”である点で共通する。
してみると、引用発明の「前記コンピュータ装置の電源が投入されると、通常時使用するOSプログラム等を格納した基本ドライブユニットと、バックアップ用のOSプログラム等を格納したバックアップ用ドライブユニットの何れかを選択するドライブユニット選択回路で指定されたドライブユニットを起動する」と、本願補正発明の「前記コンピュータの電源が投入されると、通常時使用するオペレーションシステムを格納した第1のドライブのオペレーションシステムと、バックアップ用のオペレーションシステムを格納した第2のドライブのオペレーションシステムの何れかを選択する選択画面を表示し、ユーザに指定されたドライブのオペレーションシステムを起動する」とは、ともに、“前記コンピュータの電源が投入されると、通常時使用するオペレーションシステムを格納した第1のドライブのオペレーションシステムと、バックアップ用のオペレーションシステムを格納した第2のドライブのオペレーションシステムの何れかを選択する選択手段で指定されたドライブのオペレーションシステムを起動する”点で共通するといえる。

以上から、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)

複数のドライブを設けた記憶装置を備えるコンピュータが実行するオペレーションシステム代替使用制御方法であって、
前記コンピュータの電源が投入されると、通常時使用するオペレーションシステムを格納した第1のドライブのオペレーションシステムと、バックアップ用のオペレーションシステムを格納した第2のドライブのオペレーションシステムの何れかを選択する選択手段で指定されたドライブのオペレーションシステムを起動する、
オペレーションシステム代替使用制御方法。

(相違点)

起動するドライブの選択に関して、本願補正発明が、「前記コンピュータの電源が投入されると、」「選択画面を表示し、ユーザに指定されたドライブ」を起動するのに対して、引用発明は、このような特定がない点。

(5)当審の判断

上記相違点について検討する。

起動するドライブの選択に際して、画面上でドライブを選択する技術については、当該技術分野において、一般的に行われている周知慣用技術に過ぎない。(必要であれば、上記参考文献1(上記H)、上記参考文献2(上記J)等参照。)
そして、画面上でドライブを選択する以上、電源が投入されていることは明らかであるから、引用発明においても、起動ドライブユニットの選択に際して、当該周知技術を採用し、ドライブユニット選択回路によるドライブユニットの選択に替えて、電源が投入されると、選択画面を表示し、ユーザに指定されたドライブユニットを起動するように構成すること、すなわち、上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

なお、請求人は、上記平成24年3月6日付け回答書において、
『よって、引用文献2から「ドライブを選択画面により選択する」という部分だけを抽出し、引用文献1に記載の選択手段と置換することは、引用文献1に記載の「作業者の不注意による誤った操作の防止」を不可能にするため、引用文献2から「ドライブを選択画面により選択する」という部分だけを抽出し、引用文献1に記載の選択手段と置換することは当業者に困難です。』
と主張している。
しかしながら、引用文献(上記回答書中の「引用文献1」に相当)に記載されているコンピュータ装置は、全く同一の基本ドライブユニットとバックアップ用ドライブユニットを備え、障害時に切り換えることで、短時間で復旧させることができることを主たる目的とするものであり、そして、起動するドライブの選択に際して、ハードウェアとしての選択スイッチを用いて選択するように構成するか、ソフトウエアとしての選択画面を用いて選択するように構成するかについては、当業者が適宜採用し得る設計的事項に過ぎず、引用文献に記載された発明(引用発明)に、上記参考文献1(上記回答書中の「引用文献2」に相当)等に記載の周知技術を適用することは、当業者にとって、何ら技術的困難性は認められない。

よって、相違点は格別なものではない。

そして、本願補正発明の奏する作用効果は、上記引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願補正発明は、上記引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(6)まとめ

以上のように、補正後の請求項1に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.むすび

以上のように、本件補正は、上記「2.独立特許要件」で指摘したとおり、補正後の請求項1に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1.本願発明

平成23年8月23日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年4月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「複数のドライブを設けたコンピュータが実行するオペレーションシステム代替使用制御方法であって、
前記コンピュータの電源が投入されると、通常時使用するオペレーションシステムを格納した第1のドライブのオペレーションシステムと、バックアップ用のオペレーションシステムを格納した第2のドライブのオペレーションシステムの何れかを選択する選択画面を表示し、ユーザに指定されたドライブのオペレーションシステムを起動する、
オペレーションシステム代替使用制御方法。」

2.引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献およびその記載事項は、前記「第2 平成23年8月23日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.独立特許要件」の「(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、前記「第2 平成23年8月23日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.独立特許要件」で検討した本願補正発明から「記憶装置を備える」を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、上記「第2 平成23年8月23日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.独立特許要件」の「(3)参考文献に記載されている技術的事項」ないし「(5)当審の判断」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-21 
結審通知日 2013-01-08 
審決日 2013-01-21 
出願番号 特願2001-138870(P2001-138870)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 毅  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 仲間 晃
田中 秀人
発明の名称 オペレーションシステム代替使用制御方法、プログラム及び装置  
代理人 今堀 克彦  
代理人 川口 嘉之  
代理人 平川 明  
代理人 和久田 純一  
代理人 高田 大輔  
代理人 松倉 秀実  

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