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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1270867
審判番号 不服2012-16808  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-29 
確定日 2013-03-07 
事件の表示 特願2005- 46747「レンズ鏡筒」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月 7日出願公開、特開2006-235020〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成17年2月23日の出願であって、平成23年9月8日及び平成24年2月2日付けで手続補正がなされ、同年5月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月29日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成24年2月2日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、平成24年2月2日付けで補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。

「第1レンズ群を保持する第1保持枠と、
前記第1保持枠に一端が固定された、光軸と相互に平行な2つの棒状の第1のガイド部材と、
前記第1保持枠よりも像面側に配置され、第2レンズ群を保持し、前記第1のガイド部材により光軸方向に摺動自在に支持された第2保持枠と、
光軸と相互に平行な2つのみからなる棒状の第2のガイド部材と、
前記第2保持枠よりも像面側に配置され、前記第2のガイド部材により光軸方向に摺動自在に支持され、像ぶれ補正用の第3レンズ群を保持する像ぶれ補正手段と、
前記像ぶれ補正手段よりも像面側に配置され、前記第2のガイド部材により光軸方向に摺動自在に支持され、第4レンズ群を保持する第4保持枠と、
前記第2のガイド部材の一端を保持する第1の固定部材と、
前記第2のガイド部材の他端を保持する第2の固定部材とを備え、
前記第1のガイド部材は、前記第2のガイド部材に対して、光軸方向に移動可能であり、
前記第1のガイド部材と前記第2のガイド部材は、光軸と直交する面内において光軸を中心として略等分割する位置に配置されたことを特徴とするレンズ鏡筒。」(以下「本願発明」という。)

3 刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-258689号公報(以下「引用例」という。)」には、図とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、像ぶれ補正装置を搭載した沈胴式レンズ鏡筒に関する。特に、光学性能を保ちつつ、小型化、全長が短縮化された沈胴式レンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮影画像をすぐに確認することができるデジタルスチルカメラ(以下、DSCと称す)が急速に普及している。このDSC用のレンズ鏡筒としては、非撮影時における携帯性を考慮し、非撮影時には鏡筒の長さが短くなる、いわゆる沈胴式のレンズ鏡筒が採用されているのが一般的である。
【0003】
図16に、従来の沈胴式のレンズ鏡筒の分解斜視図を示す(例えば、特許文献1参照)。この沈胴式のレンズ鏡筒60は、1つのカム筒61により移動レンズ枠62,63を前後方向に移動させることにより焦点距離を変える光学系である。このカム筒61の内周面にはカム溝64,65が形成され、このカム溝64,65が移動レンズ枠62,63の移動軌跡をそれぞれ決定する。移動レンズ枠62,63は、それぞれの外周面に設けられた3本のカムピン62a,63aがそれぞれカム溝64,65と係合することにより、光軸(Z軸)方向に移動する。カム筒61は、固定筒70の外側に設けられ、光軸の回りに回転自在である。カム筒61の外周にはギア66が形成され、このギア66に駆動力伝達ギア67が噛合される。駆動力伝達ギア67は、減速ギアトレイン68を介してカム筒駆動アクチュエータ69の出力軸に連結されている。したがって、カム筒駆動アクチュエータ69を駆動すると、その駆動力が減速ギアトレイン68を介して駆動力伝達ギア67に伝達されて、カム筒61が回転される。これにより、移動レンズ枠62,63がそれぞれカム溝64,65の形状に沿って移動するので、沈胴状態から広角端を経由し、ズーミングが行われる。
【0004】
また、光学ズームの高倍率化に伴い、手ぶれの影響が目立つようになってきており、その影響を少なくするため、像ぶれ補正装置が内蔵されたDSCも商品化されつつある。このDSC用の像ぶれ補正装置としては、補正用レンズ群を光軸と垂直な2方向に動かすことにより、撮影者による手ぶれを補正し、安定な画像を得る方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002-107598号公報
【特許文献2】特開2001-117129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の沈胴式のレンズ鏡筒においては、次のような問題点があった。
【0006】
1.DSC本体の小型化により、DSC用のレンズ鏡筒としては、未使用時にレンズ鏡筒の全長を短縮する沈胴式が一般的である。しかしながら、像ぶれ補正装置を搭載したレンズ鏡筒に沈胴式を適用したものは開発されていない。
【0007】
2.像ぶれ補正装置を搭載した4群構成の高倍率対応のレンズ鏡筒では、光学性能の高性能化を図るため、レンズ枚数が多く、厳しい組立精度が要求される。図16に示した従来の沈胴式レンズ鏡では、レンズ鏡筒を沈胴させるためにレンズを光軸方向に移動させると、光学性能が著しく悪化するため、高倍率ズームレンズへの適用が困難である。
【0008】
3.上記の従来の沈胴式のレンズ鏡筒においては、減速ギアトレイン68、カム枠(カム筒61)を用いてズーミングを行っていたため、ズーム速度の高速化、ズーム音の静音化に対しては不向きである。
【0009】
そこで、本発明は、像ぶれ補正装置を搭載した高倍率対応のレンズ鏡筒であって、沈胴式による小型化を実現し、沈胴による光学性能の悪化量を最小限に抑えることができるレンズ鏡筒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の沈胴式レンズ鏡筒は、第1レンズ群を保持する第1枠と、前記第1枠に一端が固定された、相互に平行な少なくとも2つの棒状のガイド部材と、前記第1枠よりも像面側に配置され、第2レンズ群を保持し、前記ガイド部材により摺動自在に保持された第2枠と、前記第2枠よりも像面側に配置され、前記ガイド部材を光軸と略平行に且つ摺動可能に支持し、像ぶれ補正用の第3レンズ群を保持する像ぶれ補正手段と、前記第1枠を前記像ぶれ補正手段に対して光軸方向に移動させる駆動手段とを備え、前記駆動手段は、撮影時には前記第1枠を物体側に移動させ、非撮影時には前記第1枠を像面側に移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記の本発明の沈胴式レンズ鏡筒によれば、第1レンズ群、第2レンズ群が、像ぶれ補正用の第3レンズ群に対し、少なくとも同一方向に傾く。このように、光学性能への影響度が最も高い、像ぶれ補正用の第3レンズ群に対する第1,第2レンズ群の傾き方向を同一方向にすることができるので、光学性能の低下量を最小限に抑えつつ、全長が短い、像ぶれ補正装置が搭載された沈胴式レンズ鏡筒を提供することができる。
【0012】
また、ズーミング用駆動アクチュエータとは別に沈胴用アクチュエータとして第1枠を光軸方向に移動させる駆動手段を備え、撮影時には第1枠を物体側に移動させた状態とし、非撮影時には第1枠を像面側に移動させた状態とするので、ズーミング時にはカム枠が駆動されず、ズーム時間の高速化、ズーム音の低騒音化が実現できる。」

(2)「【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
上記の本発明の沈胴式レンズ鏡筒において、前記ガイド部材は、それぞれ、光軸方向に貫通する、相互に離間した二つの貫通穴に圧入されて、前記第1枠に固定されていることが好ましい。
【0014】
かかる好ましい構成によれば、ガイド部材の光軸に対する平行度の調整を容易に行うことができ、光軸とガイド部材とを平行に固定することができる。また、従来のガイド手段を専用の治具にて仮固定して接着する方式に比べ、組立工数の削減を図ることができる。
【0015】
また、上記の本発明の沈胴式レンズ鏡筒において、複数のカム溝が形成されたカム枠と、前記カム枠の前記カム溝が形成されていない部分に、光軸方向を長手方向として設けられた駆動ギアと、前記カム枠のカム溝と係合し、かつ前記駆動ギアと噛合して光軸の回りに回転することにより前記第1枠を光軸方向に移動させる駆動枠と、前記第3レンズ群を光軸と直交する2方向に駆動する第1、第2アクチュエータとを備え、前記第1、第2アクチュエータの間に前記駆動ギアが配置されていることが好ましい。
【0016】
かかる好ましい構成によれば、像ぶれ補正用の第1,第2アクチュエータの間に駆動ギアを設けたことにより、カム溝と干渉することなく、駆動ギアを光軸中心に寄せることが可能となるため、レンズ鏡筒の小径化を図ることができる。
【0017】
また、上記の本発明の沈胴式レンズ鏡筒において、更に、前記像ぶれ補正手段と前記第2枠との間にシャッターユニットを備え、前記シャッターユニットは、前記第2枠側の面に駆動アクチュエータを備え、前記第2枠は、前記駆動アクチュエータの一部が入り込む凹部を備えることが好ましい。
【0018】
かかる好ましい構成によれば、シャッターユニットと2群移動枠との間隔を小さくすることができるので、沈胴式レンズ鏡筒の全長を短くすることができる。
【0019】
以下、本発明の第1の実施の形態における沈胴式レンズ鏡筒について、図1?図12を用いて説明する。図1は本実施の形態における沈胴式レンズ鏡筒の分解斜視図、図2(a),(b),(c)は同沈胴式レンズ鏡筒のガイドポールの固定方法を説明する片断面図、図3は同沈胴式レンズ鏡筒のガイドポール支持部を説明する分解斜視図、図4(a),(b),(c)は同沈胴式レンズ鏡筒におけるレンズの傾きを説明する図、図5は同沈胴式レンズ鏡筒におけるカム溝の展開図、図6は同沈胴式レンズ鏡筒におけるカム枠の分解斜視図、図7は同沈胴式レンズ鏡筒における像ぶれ補正装置の構成を示す分解斜視図、図8は像ぶれ補正装置の位置検出部の変位量とマグネットの磁束密度との関係を示す図、図9は同沈胴式レンズ鏡筒の沈胴時での断面図、図10は同沈胴式レンズ鏡筒の望遠端使用時での断面図、図11は同沈胴式レンズ鏡筒の広角端使用時での断面図、図12は同沈胴式レンズ鏡筒における像ぶれ補正装置の動作を説明するブロック図である。
【0020】
沈胴式のレンズ鏡筒1について、図1から図6を用いて説明する。図示したように、沈胴式レンズ鏡筒の光軸をZ軸(物体側を正とする)とするXYZ3次元直交座標系を設定する。L1は1群レンズ、L2は光軸(Z軸)上を移動して変倍を行う2群レンズ、L3は像ぶれ補正用の3群レンズ、L4は変倍に伴う像面変動の補正及び合焦のために光軸上を移動する4群レンズである。
【0021】
1群保持枠2は1群レンズL1を保持しており、1群レンズL1の中心軸が光軸と平行となるように、筒状の1群移動枠3に対してネジ等で固定されている。この1群移動枠3には、光軸と平行な2本のガイドポール(ガイド部材)4a,4bの一端が固定されている。このガイドポール4の固定方法については、後述する。
【0022】
2群移動枠5は2群レンズL2を保持し、先述の2本のガイドポール4a,4bによって支持されることにより、光軸方向に摺動可能となっている。また2群移動枠5は、ステッピングモータなどの2群レンズ駆動アクチュエータ6の送りネジ6aと、2群移動枠5に設けたラック7のネジ部とが噛合することにより、2群レンズ駆動アクチュエータ6の駆動力にて、光軸方向に移動して変倍を行う。
【0023】
3群枠8は、像ぶれ補正用レンズ群L3(3群レンズ)を保持し、後述する像ぶれ補正装置31を構成している。
【0024】
4群移動枠9は、3群枠8とマスターフランジ10との間に挟まれた、光軸と平行な2本のガイドポール11a,11bにて支持されることにより、光軸方向に摺動可能となっている。また4群移動枠9は、ステッピングモータなどの4群レンズ駆動アクチュエータ12の送りネジ12aと、4群移動枠9に設けたラック13のネジ部とが噛合することにより、4群レンズ駆動アクチュエータ12の駆動力にて、光軸方向に移動し、変倍に伴う像面変動の補正と合焦とを行う。
【0025】
撮像素子(CCD)14は、マスターフランジ10に取り付けられている。
【0026】
ここで、1群移動枠3へのガイドポール4a,4bの固定方法について、図2(a)?(c)を用いて説明する。図2(a)?(c)は、いずれもZ軸に対して一方の側のみを図示した片断面図である。以下の説明では、Z軸に対して一方の側のガイドボール4aの固定部3aへの固定方法を説明するが、他方の側のガイドボール4bの固定部3bへの固定方法も全く同様である。
【0027】
図2(a)は、ガイドポール4aの一端を固定するための固定部3aの樹脂成形方法を示す片断面図である。図2(a)に示すように、1群移動枠3の内側面に、ガイドポール4aの一端を固定するための固定部3aが成形される。固定部3aはZ軸と略平行で、相互に離間した貫通穴3a1,3a2からなる。このような貫通穴3a1,3a2は、3つの成形型29a,29b,29cを用いて樹脂成形される。断面が略台形の成形型29cの両側面に円柱状の成形型29a,29bを当接させた状態で樹脂成形を行う。その後、円柱状の成形型29a,29bをZ軸と略平行で且つ相互に逆向きの方向A,Bに、略台形の成形型29cをZ軸に向かう方向Cに、それぞれ引き抜くことにより、貫通穴3a1,3a2が得られる。このとき、得られる貫通穴3a1,3a2にガイドポール4aを圧入したとき、ガイドポール4aがZ軸と平行に固定されるように、円柱状の成形型29a,29bのZ軸と直交する面内での位置を調整する。
【0028】
その後、図2(b)に示すように、貫通穴3a1,3a2に図の右側(撮像素子14側)からガイドポール4aを圧入する。貫通穴3a1,3a2の内径d1,d2はガイドポール4aの外径Dよりも数ミクロン程度大きく設定されているが、円柱状の成形型29a,29bの中心軸30a,30b(図2(a)参照)のZ軸と直交する面内での相対的位置ずれや傾きにより、ガイドポール4aは2つの貫通穴3a1,3a2によって強固に固定される。かくして、ガイドポール4aはZ軸と平行に1群移動枠3に固定される。
【0029】
図2(c)は、従来のガイドボール4aの固定方法を示した片断面図である。従来の固定方法は以下の通りである。まず、ガイドポール4aの外径Dに対して十分に大きい内径d3の1つの連続する貫通穴からなる固定部3dを樹脂成形する。次いで、ガイドポール4aを固定部3dに挿入し、専用の治具にて仮固定し、ガイドポール4aと固定部3dとの間に接着剤を導入して固定する。
【0030】
以上のように、本実施の形態のガイドボールの固定方法では、ガイドボール4aを貫通穴3a1,3a2に圧入するだけでガイドボール4aをZ軸と平行に固定することができる。従って、従来のようにガイドボール4aを仮固定するための専用の治具や接着剤が不要であり、また、接着剤を固化させる手間や時間も不要である。よって、低コスト且つ短時間にガイドボール4aを固定することができる。さらに、成形型29a,29bのZ軸と直交する面内での位置を調整するだけで、ガイドポール4aをZ軸と平行に精度よく固定することができる。」

(3)「【0031】
次に、ガイドポール4a,4bの支持方法について、図3を用いて説明する。
【0032】
3群枠8には支持部8a(主軸側),8b(廻り止め側)が設けられている。ガイドポール4a,4bが支持部8a,8bを貫入することにより、ガイドポール4a,4bは光軸と平行に保持される。この2つの支持部8a,8bに対してガイドポール4a,4bが光軸方向に摺動するため、ガイドポール4a,4bの一端に固定された1群移動枠3に保持された1群レンズL1は、3群枠8に設けられた像ぶれ補正用レンズL3に対して精度が保たれる。さらに、ガイドポール4a,4bが、2群移動枠5に設けられた支持部5a(廻り止め側),5b(主軸側)を摺動可能に貫入することにより、2群移動枠5はガイドポール4a,4bに光軸方向に摺動自在に支持されるため、2群移動枠5に保持された2群レンズL2は、3群枠8に設けられた像ぶれ補正用レンズL3に対して精度が保たれる。
【0033】
ここで、上記に説明した1群レンズL1,2群レンズL2,3群レンズL3の関係を、図4(a)?図4(c)を用いて説明する。図中、矢印L1a,L2aは、それぞれ1群レンズL1,2群レンズL2の中心軸の向きを示している。
【0034】
図4(a)は3つのレンズ群L1,L2,L3の理想状態を示しており、Z軸(レンズ鏡筒の光軸であり、これは3群レンズL3の中心軸と一致する)に対して1群レンズL1の中心軸L1a及び2群レンズL2の中心軸L2aが平行になっている。
【0035】
図4(b)は図16に示す従来のレンズ鏡筒と同様の方式により、1群レンズL1及び2群レンズ群L2を、図16の移動レンズ枠62に設けたカムピン62a及び移動レンズ枠63に設けたカムピン63aによりそれぞれ支持した場合を示している。この場合、カムピン62a,63a及びカム溝64,65の精度のばらつきにより、1群レンズL1の中心軸L1a及び2群レンズL2の中心軸L2aは、相互に平行ではなく、且つZ軸とも平行とはならない。従って、光学性能が悪化する可能性が大きい。
【0036】
図4(c)は本実施の形態の場合を示している。1群レンズL1及び2群レンズL2は、同一のガイドポール4a,4bに支持されているため、1群レンズL1の中心軸L1a及び2群レンズL2の中心軸L2aがZ軸に対して仮に傾いたとしても、両中心軸L1a,L2aの向きは常に一致する。すなわち、光学性能に対する影響度が最も高い像ぶれ補正用レンズ群L3に対して1群レンズL1及び2群レンズL2は常に同一方向に傾くため、光学性能の悪化量を最小限に抑えることができる。」

(4)「【0037】
次に、1群レンズL1を光軸方向に移動させる構成について説明する。
【0038】
略中空円筒状の駆動枠15の撮像素子14側の内周面の一部にギア15aが形成されている。また、その物体側(Z軸の正の側)の内周面に略120°間隔に3つの突起部15bが形成されている。突起部15bが1群移動枠3の撮像素子14側の外周面に設けられた周方向の3つの溝部3aと係合することにより、駆動枠15は1群移動枠3に対して光軸を中心として相対的に回転可能であり、光軸方向には駆動枠15と1群移動枠3とは一体で移動する。さらに駆動枠15の内周面には、3本のカムピン16a,16b,16cが120°間隔に圧入固定されている。
【0039】
筒状のカム枠17の外表面には、略120゜間隔にて3本のカム溝18a,18b,18cが形成されている。図5に、カム枠17の外周面の展開図を示す。カム枠17のカム溝18a,18b,18cに駆動枠15のカムピン16a,16b,16cがそれぞれ係合する。各カム溝18a,18b,18cは、撮像素子14側(Z軸の負の側)にカム枠17の周方向とほぼ平行な部分19aと、物体側(Z軸の正の側)にカム枠17の周方向とほぼ平行な部分19cと、部分19aと部分19cとを螺旋状に繋ぐ部分19bとを有する。カムピン16a,16b,16cが、部分19aにあるとき、1群レンズL1は撮像素子14側に繰り込まれた状態(沈胴状態)で停止する。この状態から、駆動枠15が光軸回りに回転することにより、カムピン16a,16b,16cは部分19bを経て、部分19cに至る。カムピン16a,16b,16cが部分19cにあるとき、1群レンズL1は物体側に繰り出されて停止する。
【0040】
図6に示すように、カム枠17の外周面であって、カム溝18bとカム溝18cとの間には、スプライン状の駆動ギア19の両端の駆動ギア軸20を回転可能に保持する軸受け部17dと、駆動ギア19との干渉を避けるために半円筒面状に窪ませた駆動ギア取り付け部(凹部)17aとが形成されており、これにより駆動ギア19はカム枠17の外周面上に回転自在に保持されている。駆動ギア19は、後述するマスターフランジ10に取り付けられた駆動ユニット21の駆動力を駆動枠15に設けられたギア部15aに伝達する。したがって、駆動ギア19が回転することにより、駆動枠15が光軸の回りに回転し、この際、駆動枠15に設けられたカムピン16a,16b,16cが、カム枠17のカム溝18a,18b,18c内を移動することにより、駆動枠15は光軸方向にも移動する。このとき、1群移動枠3は、これに固定された2本のガイドポール4a,4bが3群枠8の支持部8a,8bに貫入されていることにより、光軸回りの回転が制限されるから、駆動枠15が光軸方向に移動するに従って、1群移動枠3は光軸方向に直進移動する。
【0041】
2群移動枠5の駆動アクチュエータ6は、カム枠17の取り付け部17bに固定される。また、4群移動枠9の駆動アクチュエータ12は、マスターフランジ10の取り付け部10aに固定される。駆動ギア19に駆動力を伝達する駆動ユニット21は、駆動アクチュエータ22と複数のギアからなる減速ギアユニット23とからなり、マスターフランジ10の取り付け部10bに固定される。
【0042】
2群移動枠5用の原点検出センサ25は、発光素子および受光素子からなる光検出センサであり、2群移動枠5の光軸方向の位置、つまり2群レンズL2の原点位置を検出する。4群移動枠9用の原点検出センサ26は、4群移動枠9の光軸方向の位置、つまり4群レンズL4の原点位置を検出する。駆動枠15用の原点検出センサ27は、駆動枠15の回転方向の位置、つまり駆動枠15と一体で移動する1群移動枠3及び1群レンズL1の原点位置を検出する。」

(5)「【0054】
このように構成された沈胴式レンズ鏡筒1について、その動作を以下に述べる。
【0055】
最初に、この沈胴式のレンズ鏡筒1の動作について、まず図9に示す非撮影時(未使用時)の状態から、図10に示す状態を経て、図11に示す撮影時(広角端)の状態に移行する際の動作について説明する。
【0056】
図9の非撮影時の状態より、カメラ本体の電源スイッチ等がオンとなると撮影準備状態になる。最初に1群レンズL1を駆動する1群レンズ駆動アクチュエータ22が回転し、減速ギアユニット23を介して駆動ギア19を回転させる。駆動ギア19が回転することにより、駆動ギア19と噛合している駆動枠15が、カム溝18a,18b,18cに沿って光軸を中心として回転する。そして原点検出センサ27を初期化した後、駆動枠15が物体方向(Z軸方向)に移動することにより、1群移動枠3も物体方向に移動する。そして、1群レンズ駆動アクチュエータ22が所定の回転量だけ回転したのを図示せぬ回転量検出センサが検出すると、1群移動枠3が所定の位置まで移動した後、1群レンズ駆動アクチュエータ22の回転が停止する。この停止位置では、図5のカム溝の展開図において、カムピン16a,16b,16cは、カム枠17の周方向とほぼ平行な部分19cに到達している。図10はこのときの状態を示している。
【0057】
次に、2群レンズ駆動アクチュエータ6が回転し、送りネジ6aを介してラック7を駆動することにより、2群移動枠5がZ軸に沿って動き出す。そして原点検出センサ25を初期化した後、物体方向に移動し、2群移動枠5は、図11に示す広角端の位置にて停止し、カメラ本体は撮影可能状態となる。ここで1群移動枠3および2群移動枠5は、3群枠8の支持部8a,8bに保持された同一のガイドポール4a,4bにて支えられながら所定位置まで移動する。したがって、1群レンズL1および2群レンズL2が光軸に対して傾いたとしても、それらの傾き方向は像ぶれ補正用レンズ群L3に対して同一であるため、所定の光学性能を確保することができる。
【0058】
実際の撮影時には、2群レンズ駆動アクチュエータ6と4群レンズ駆動アクチュエータ12により、それぞれ変倍動作と変倍に伴う像面変動の補正及び合焦の動作とを行う。変倍を行う際、広角端の状態では、図11に示す状態にて撮影を行い、望遠端の状態では、2群レンズL2を-Z方向(撮像素子14側端)に移動させて図10に示す状態にて撮影を行う。よって、広角端から望遠端まで、任意の位置にて撮影することが可能となる。
【0059】
次に図11に示す撮影時の状態から、図10に示す状態を経て、図9に示す非撮影時の状態に移行する際の動作について説明する。
【0060】
図11の撮影時の状態(広角端)より、カメラの電源スイッチ等がオフされると撮影が終了し、最初に2群移動枠5が2群レンズ駆動アクチュエータ6により撮像素子14側に移動して、図10に示す状態となる。次に1群レンズ駆動アクチュエータ22が回転し、減速ギアユニット23を介して駆動ギア19を上記とは逆方向に回転させる。駆動ギア19が回転することにより、駆動ギア19と噛合している駆動枠15が光軸を中心として回転し、同時に、カム溝18a,18b,18cによって撮像素子14方向に移動することにより、1群移動枠3も移動する。そして原点検出センサ27により駆動枠15の回転を検出すると、1群移動枠3が所定の位置まで移動した後、1群レンズ駆動アクチュエータ22の回転が停止する。この停止位置では、図5のカム溝の展開図において、カムピン16a,16b,16cは、カム枠17の周方向とほぼ平行な部分19aに到達している。これにより、図9に示す状態に移行し、撮影時の状態に比べて長さCだけ短くなった沈胴状態となる。
【0061】
ここで、沈胴式レンズ鏡筒1の光軸方向の長さを変える沈胴動作については1群レンズL1を駆動する1群レンズ駆動アクチュエータ22を用い、ズーミング動作については2群レンズ駆動アクチュエータ6を単独で使用している。そのため、実際の撮影でのズーミング動作は、1群レンズL1を繰り出した状態で行うため、1群レンズ駆動アクチュエータ22を動作させる必要はなく、2群レンズ駆動アクチュエータ6のみを駆動して図10と図11との間の所定位置に2群レンズL2を移動させてズーミングを行うことができる。したがって、ズーミング動作を行うなどの撮影を行う際には、図16に示した従来方式の沈胴式レンズ鏡筒とは異なり、ズーム倍率に応じて、鏡筒の繰り出し動作及び繰り込み動作を行う必要がない。図16の従来の沈胴式のレンズ鏡筒においては、ズーミング動作時に、1つの駆動アクチュエータ69を回転させ、減速ギアトレイン68を介してカム筒61を回転させて、移動レンズ枠62,63を同時に駆動していたため、ズーミング速度が遅く、駆動音が大きい。本発明の沈胴式のレンズ鏡筒1は、2群レンズ駆動アクチュエータ6としてステッピングモータを使用し、そのステッピングモータに取り付けられた送りネジ6aを介して、2群移動枠5を直接駆動するため、送り速度も速く、動作音も小さい。従って、沈胴式のレンズ鏡筒であっても、ズーム速度の高速化、ズーム音の低騒音化を実現できる。したがって、撮影者は瞬時に画角を変更することが可能となり、被写体を追いかける、動画を撮影するなど、従来のDSCでは不向きであった使用方法を行うことができる。
【0062】
次に、像ぶれ補正装置31の動作について、図12を用いて説明する。
【0063】
像ぶれは、手ぶれによりカメラに変位や振動が生じることに発生する。像ぶれ補正装置31を内蔵したカメラでは、この変位や振動を、検出方向が略90゜になるように配置された2個の角速度センサ44y,44xにより検出する。角速度センサ44y,44xからの出力は時間積分される。そしてカメラ本体のぶれ角度に変換され、像ぶれ補正用レンズ群L3の目標位置情報に変換される。この目標位置情報に応じて像ぶれ補正用レンズ群L3を移動させるために、サーボ駆動回路45は、目標位置情報と位置検出部42y,42xにより検出された現在の像ぶれ補正用レンズ群L3の位置情報との差を演算し、電磁アクチュエータ41y,41xに信号を伝送する。電磁アクチュエータ41y,41xは、この信号に基づいて像ぶれ補正用レンズ群L3を駆動する。
【0064】
第1の方向であるピッチング方向(Y方向)の駆動については、サーボ駆動回路45から指令を受けた電磁アクチュエータ41yは、フレキシブルプリントケーブル43を通じて第1のコイル37yに電流を流し、ピッチング方向(Y方向)に力を発生させ、ピッチング移動枠32をピッチング方向(Y方向)に駆動する。
【0065】
また、第2の方向であるヨーイング方向(X方向)の駆動については、サーボ駆動回路45から指令を受けた電磁アクチュエータ41xは、フレキシブルプリントケーブル43を通じて第2のコイル37xに電流を流し、ヨーイング方向(X方向)に力を発生させ、ヨーイング移動枠34とこの上に搭載されたピッチング移動枠32とをヨーイング方向(X方向)に駆動する。
【0066】
よって、像ぶれ補正用レンズ群L3をピッチング移動枠32及びヨーイング移動枠34により、光軸と直交する2次元平面内において任意に動かすことが可能となるため、手ぶれにより発生する像ぶれを補正することが可能となる。
【0067】
以上のように本実施の形態によれば、1群レンズL1及び2群レンズL2が、像ぶれ補正用レンズL3に対し、少なくとも同一方向に傾くように構成したことにより、像ぶれ補正装置が搭載されたレンズ鏡筒において、光学性能の低下量を最小限に抑えつつ、未使用時の全長を短くすることが可能となる。
【0068】
また、ガイドボール4a,4bが、光軸方向に貫通する、相互に離間した二つの貫通穴に圧入されて固定されていることにより、従来の、ガイドポールを専用の治具で仮固定して接着する方式に比べ、組立工数の削減を図ることができる。また、貫通穴を形成する成形型29a,29bのZ軸と直交する面内での相対位置を調整することにより、ガイドボール4a,4bの向きを容易に調整することができ、ガイドポール4a,4bを光軸と平行に固定することができる。
【0069】
なお、本実施の形態においては、1群レンズL1を設けた1群枠2と1群移動枠3とを別々の構成としたが、一体の構成とし、その一体部分にガイドポールを固定する構成としても良い。
【0070】
また、本実施の形態に記載した像ぶれ補正装置31において、ホール素子を用いた位置検出手段を別の場所に設けた構成であっても良い。あるいは磁気式の位置検出手段に替えて、例えば発光素子と受光素子とからなる光学式の位置検出手段を設けても差し支えない。
【0071】
また、本実施の形態においては、1群移動枠3と2群移動枠5とを順に移動させたが、繰り出し又は沈胴時間の短縮のために両者を同時に移動させてもよい。例えば、鏡筒の繰り出し時には、1群移動枠3の移動が開始し、1群移動枠3が所定位置に停止する前に、2群移動枠5の沈胴位置からの移動を開始し、広角端位置に停止させてもよい。また、鏡筒の沈胴時には、2群移動枠5の移動が開始し、2群移動枠5が所定位置に停止する前に、1群移動枠3の移動を開始させ、沈胴位置に停止させてもよい。」

(6)図1、図9ないし図11の記載から、次アないしエのことが見て取れる。
ア 物体側から像面側に向けて、1群レンズL1、2群レンズL2、像ぶれ補正用レンズ群L3、4群レンズL4及び撮像素子14の順に配列されている。
イ 2本のガイドポール4a,4bは、2本のガイドポール11a,11bに対して、光軸方向に移動可能である。
ウ ガイドポール4a,4bは、光軸と直交する面内において、光軸を挟んで対称に配置され、ガイドポール11a,11bは、光軸と直交する面内において、光軸を挟んで対称に配置され、光軸と直交する面内において、ガイドポール4a,4bを結ぶ線とガイドポール11a,11bを結ぶ線は光軸当たりで交差し、その交差する角度はほぼ直角である。
エ 4群レンズL4は4群移動枠9に保持されている。

(7)上記(1)ないし(6)の記載からみて、引用例には、
「像ぶれ補正装置を搭載した4群構成の高倍率対応のレンズ鏡筒では光学性能の高性能化を図るためレンズ枚数が多く厳しい組立精度が要求され、一方沈胴式レンズ鏡ではレンズ鏡筒を沈胴させるためにレンズを光軸方向に移動させると光学性能が著しく悪化するため、高倍率ズームレンズへの適用が困難である従来の沈胴式のレンズ鏡筒においては像ぶれ補正装置を搭載しておらず、また、従来の沈胴式のレンズ鏡筒は、減速ギアトレイン、カム枠を用いてズーミングを行っていたためズーム速度の高速化ズーム音の静音化に対しては不向きであったため、
像ぶれ補正装置を搭載した高倍率対応の沈胴式レンズ鏡筒において、小型化を実現し、沈胴による光学性能の悪化量を最小限に抑えることを目的として、
光軸と平行な2本のガイドポール4a,4bの一端が固定されている筒状の1群移動枠3と、
1群レンズL1を保持し、1群レンズL1の中心軸が光軸と平行となるように前記1群移動枠3に対して固定されている1群保持枠2と、
2群レンズL2を保持し、前記2本のガイドポール4a,4bによって支持されることにより光軸方向に摺動可能となっており、2群レンズ駆動アクチュエータ6の駆動力にて光軸方向に移動して変倍を行う2群移動枠5と、
像ぶれ補正用レンズ群L3を保持し、像ぶれ補正装置31を構成している3群枠8と、
変倍に伴う像面変動の補正及び合焦のために光軸上を移動する4群レンズL4を保持し、前記3群枠8とマスターフランジ10との間に挟まれた光軸と平行な2本のガイドポール11a,11bにて支持されることにより光軸方向に摺動可能となっており、4群レンズ駆動アクチュエータ12の駆動力にて光軸方向に移動し変倍に伴う像面変動の補正と合焦とを行う4群移動枠9と、
マスターフランジ10に取り付けられている撮像素子14と、
を備え、
物体側から像面側に向けて、1群レンズL1、2群レンズL2、像ぶれ補正用レンズ群L3、4群レンズL4及び撮像素子14の順に配列されており、2本のガイドポール4a,4bは2本のガイドポール11a,11bに対して光軸方向に移動可能であり、ガイドポール4a,4bは光軸と直交する面内において光軸を挟んで対称に配置され、ガイドポール11a,11bは光軸と直交する面内において光軸を挟んで対称に配置され、光軸と直交する面内においてガイドポール4a,4bを結ぶ線とガイドポール11a,11bを結ぶ線は光軸当たりで交差し、その交差する角度はほぼ直角であり、
1群レンズL1及び2群レンズL2は、同一のガイドポール4a,4bに支持されているため、1群レンズL1の中心軸L1a及び2群レンズL2の中心軸L2aがZ軸に対して仮に傾いたとしても、両中心軸L1a,L2aの向きは常に一致し、光学性能に対する影響度が最も高い像ぶれ補正用レンズ群L3に対して1群レンズL1及び2群レンズL2は常に同一方向に傾くため、光学性能の悪化量を最小限に抑えることができ、
ズーミング用駆動アクチュエータ6,12とは別に沈胴用アクチュエータとして、駆動アクチュエータ22と複数のギアからなる減速ギアユニット23とからなり、マスターフランジ10の取り付け部10bに固定される駆動ユニット21及び該駆動ユニット21の駆動力を駆動枠15に設けられたギア部15aに伝達する駆動ギア19とをさらに備え、
駆動ギア19が回転することにより、駆動枠15が光軸の回りに回転すると同時に光軸方向にも移動し、このとき、1群移動枠3は、これに固定された2本のガイドポール4a,4bが3群枠8の支持部8a,8bに貫入されていることにより、光軸回りの回転が制限されるから、駆動枠15が光軸方向に移動するに従って、1群移動枠3は光軸方向に直進移動し、撮影時には1群移動枠3を物体側に移動させた状態とし、非撮影時には1群移動枠3を像面側に移動させた状態とし、
ズーミング動作は2群レンズ駆動アクチュエータ6を単独で使用し、実際の撮影でのズーミング動作は1群レンズL1を繰り出した状態で行うため1群レンズ駆動アクチュエータ22を動作させる必要はなく、2群レンズ駆動アクチュエータ6のみを駆動して所定位置に2群レンズL2を移動させてズーミングを行うことができ、ズーミング動作を行うなどの撮影を行う際には従来方式の沈胴式レンズ鏡筒とは異なりズーム倍率に応じて鏡筒の繰り出し動作及び繰り込み動作を行う必要がなく、
2群レンズ駆動アクチュエータ6としてステッピングモータを使用し、そのステッピングモータに取り付けられた送りネジ6aを介して、2群移動枠5を直接駆動することにより、送り速度も速く、動作音も小さく、従って、沈胴式のレンズ鏡筒であっても、ズーム速度の高速化、ズーム音の低騒音化を実現した沈胴式レンズ鏡筒。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「1群レンズL1」、「『筒状の1群移動枠3』及び『1群保持枠2』」、「『1群保持枠2』が『固定され』ている『筒状の1群移動枠3』に『一端が固定され』ている『光軸と平行な2本のガイドポール4a,4b』」、「2群レンズL2」、「2群移動枠5」、「光軸と平行な2本のガイドポール11a,11b」、「像ぶれ補正用レンズ群L3」、「像ぶれ補正用レンズ群L3を保持し、像ぶれ補正装置31を構成している3群枠8」、「4群レンズL4」、「4群移動枠9」、「マスターフランジ10」及び「沈胴式レンズ鏡筒」は、それぞれ、本願発明の「第1レンズ群」、「第1保持枠」、「第1保持枠に一端が固定された、光軸と相互に平行な2つの棒状の第1のガイド部材」、「第2レンズ群」、「第2保持枠」、「光軸と相互に平行な2つのみからなる棒状の第2のガイド部材」、「像ぶれ補正用の第3レンズ群」、「『像ぶれ補正用の第3レンズ群を保持する像ぶれ補正手段』及び『第2の固定部材』」、「第4レンズ群」、「第4保持枠」、「第1の固定部材」及び「レンズ鏡筒」に相当する。

(2)引用発明において、「第1レンズ群(1群レンズL1)」は、1群移動枠3に対して固定されている1群保持枠2に保持されているから、引用発明の「第1保持枠(筒状の1群移動枠3及び1群保持枠2)」と本願発明の「第1保持枠」とは「第1レンズ群を保持する」点で一致する。

(3)引用発明の「第1のガイド部材」は、「第1保持枠(1群保持枠2が固定されている筒状の1群移動枠3)」に一端が固定されている光軸と平行な2本のガイドポール4a,4bであるから、本願発明の「第1のガイド部材」と、「第1保持枠に一端が固定された、光軸と相互に平行な2つの棒状の」ものである点で一致する。

(4)引用発明において、「第2保持枠(2群移動枠5)」は、「第2レンズ群(2群レンズL2)」を保持し、「第1保持枠に一端が固定された、光軸と相互に平行な2つの棒状の第1のガイド部材(前記2本のガイドポール4a,4b)」によって支持されることにより光軸方向に摺動可能となっており、2群レンズ駆動アクチュエータ6の駆動力にて光軸方向に移動して変倍を行うものであり、上記「第2レンズ群」は「第1保持枠(筒状の1群移動枠3及び1群保持枠2)」が保持する「第1レンズ群(1群レンズL1)」よりも像面側に配置されているから、「第2レンズ群」が「第1保持枠」よりも像面側に配置されていることが明らかである。
したがって、引用発明の「第2保持枠」と本願発明の「第2保持枠」とは「前記第1保持枠よりも像面側に配置され、第2レンズ群を保持し、前記第1のガイド部材により光軸方向に摺動自在に支持された」点で一致する。

(5)引用発明において、「像ぶれ補正手段(像ぶれ補正装置31を構成している3群枠8)」は、「像ぶれ補正用の第3レンズ群(像ぶれ補正用レンズ群L3)」を保持し、該「像ぶれ補正用の第3レンズ群」は、「第2保持枠(2群移動枠5)」が保持する「第2レンズ群(2群レンズL2)」よりも像面側になるように配列されているから、上記「像ぶれ補正手段」は「第2保持枠」よりも像面側に配置されていることが明らかである。
したがって、引用発明の「像ぶれ補正手段」と本願発明の「前記第2保持枠よりも像面側に配置され、前記第2のガイド部材により光軸方向に摺動自在に支持され、像ぶれ補正用の第3レンズ群を保持する像ぶれ補正手段」とは「前記第2保持枠よりも像面側に配置され、像ぶれ補正用の第3レンズ群を保持する」点で一致する。

(6)引用発明において、「第4保持枠(4群移動枠9)」は、「像ぶれ補正手段」が保持する「像ぶれ補正用の第3レンズ群(像ぶれ補正用レンズ群L3)」よりも像面側になるように配列されている「第4レンズ群(4群レンズL4)」を保持しているから、上記「第4保持枠」は「像ぶれ補正手段」よりも像面側に配置されていることが明らかであり、また、上記「第4保持枠」は、「第2の固定部材(3群枠8)」と「第1の固定部材(マスターフランジ10)」との間に挟まれた「光軸と相互に平行な2つのみからなる棒状の第2のガイド部材(光軸と平行な2本のガイドポール11a,11b)」にて支持されることにより光軸方向に摺動可能となっており、4群レンズ駆動アクチュエータ12の駆動力にて光軸方向に移動し変倍に伴う像面変動の補正と合焦とを行うから、引用発明の「第4保持枠」と本願発明の「第4保持枠」とは「像ぶれ補正手段よりも像面側に配置され、前記第2のガイド部材により光軸方向に摺動自在に支持され、第4レンズ群を保持する」点で一致する。

(7)引用発明の「第2のガイド部材(光軸と平行な2本のガイドポール11a,11b)」は、「第2の固定部材(3群枠8)」と「第1の固定部材(マスターフランジ10)」との間に挟まれているから、本願発明の「第2のガイド部材」と、「一端を第1の固定部材が保持し、他端を第2の固定部材が保持する」点で一致する。

(8)引用発明において、2本の「第1のガイド部材(ガイドポール4a,4b)」は2本の「第2のガイド部材(ガイドポール11a,11b)」に対して光軸方向に移動可能であり、2本の「第1のガイド部材」は光軸と直交する面内において光軸を挟んで対称に配置され、2本の「第2のガイド部材」も光軸と直交する面内において光軸を挟んで対称に配置され、光軸と直交する面内において2本の「第1のガイド部材」を結ぶ線と2本の「第2のガイド部材」を結ぶ線は光軸当たりで交差し、その交差する角度はほぼ直角であるから、引用発明は、本願発明の「前記第1のガイド部材は、前記第2のガイド部材に対して、光軸方向に移動可能であり、前記第1のガイド部材と前記第2のガイド部材は、光軸と直交する面内において光軸を中心として略等分割する位置に配置された」との構成を有しているといえる。

(9)上記(1)ないし(8)からみて、本願発明と引用発明とは、
「第1レンズ群を保持する第1保持枠と、
前記第1保持枠に一端が固定された、光軸と相互に平行な2つの棒状の第1のガイド部材と、
前記第1保持枠よりも像面側に配置され、第2レンズ群を保持し、前記第1のガイド部材により光軸方向に摺動自在に支持された第2保持枠と、
光軸と相互に平行な2つのみからなる棒状の第2のガイド部材と、
前記第2保持枠よりも像面側に配置され、像ぶれ補正用の第3レンズ群を保持する像ぶれ補正手段と、
前記像ぶれ補正手段よりも像面側に配置され、前記第2のガイド部材により光軸方向に摺動自在に支持され、第4レンズ群を保持する第4保持枠と、
前記第2のガイド部材の一端を保持する第1の固定部材と、
前記第2のガイド部材の他端を保持する第2の固定部材とを備え、
前記第1のガイド部材は、前記第2のガイド部材に対して、光軸方向に移動可能であり、
前記第1のガイド部材と前記第2のガイド部材は、光軸と直交する面内において光軸を中心として略等分割する位置に配置されたレンズ鏡筒。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点:
前記「像ぶれ補正手段(像ぶれ補正装置31を構成している3群枠8)」が、本願発明では、前記「第2のガイド部材」により光軸方向に摺動自在に支持されるのに対して、引用発明では、「第2のガイド部材」の他端を保持する「第2の固定部材」でもあり、光軸方向に摺動自在ではない点。

5 判断
上記相違点について検討する。
(1)ガイドポールにより、ぶれ補正用のレンズ群を保持しする像ぶれ補正手段を光軸方向に摺動自在に支持することは、本願の出願前に周知である(以下「周知技術」という。例.原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-236248号公報(【0048】?【0050】、図1?図3参照。)、特開2003-222918号公報(【0047】?【0050】)、原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-198742号公報(【0014】?【0016】、図1参照。シフトユニット3(「像ぶれ補正手段」に相当する。)はガイドバー5及び6により支持されている。))

(2)上記(1)からみて、引用発明において、マスターフランジ10が一端を3群枠8が他端を保持している2本のガイドポール11a,11bの他端を、他の部材に保持させ、2本のガイドポール11a,11bにより、「像ぶれ補正用レンズ群L3を保持し、像ぶれ補正装置31を構成している3群枠8」を、光軸方向に摺動自在に支持すること、すなわち、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術に基づいて容易に想到することができた程度のことである。

(3)本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び周知技術の奏する効果から当業者が予測することができた程度のことである。

(4)したがって、本願発明は、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-26 
結審通知日 2013-01-08 
審決日 2013-01-21 
出願番号 特願2005-46747(P2005-46747)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 住田 秀弘
西村 仁志
発明の名称 レンズ鏡筒  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 寺内 伊久郎  
代理人 藤井 兼太郎  

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