• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02M
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 F02M
管理番号 1270897
審判番号 不服2011-15737  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-21 
確定日 2013-03-05 
事件の表示 特願2008-264734「流体ポンプ」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 6月18日出願公開、特開2009-133303〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本件出願は、平成20年10月14日(パリ条約による優先権主張2007年11月5日、欧州特許庁)の出願であって、平成20年12月15日付けで翻訳文提出書が提出されるとともに明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の翻訳文が提出され、平成22年8月25日付けの拒絶理由通知に対して、平成23年2月22日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年3月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けで手続補正書が提出されて特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、その後、当審において平成24年2月20日付けで書面による審尋がなされ、これに対し、同年8月20日付けで回答書が提出されたものである。


【2】平成23年7月21日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成23年7月21日付けの手続補正を却下する。


[理 由]
1.本件補正の内容
平成23年7月21日付けの手続補正書による手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成23年2月22日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の下記の(b)に示す請求項1を、下記の(a)に示す請求項1へと補正するものである。

(a)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
少なくとも2つの異なる第1及び第2の流体を送り出すためのポンプ(1)において、
長手方向のボア(5)を画定している本体(3)と、
前記ボア(5)と連通している第1及び第2入口(9、19)と、
前記ボア(5)と連通している第1及び第2出口(11、21)と、
前記ボア(5)内で往復運動して、第1の流体を前記第1入口(9)から前記第1出口(11)へ、第2の流体を前記第2入口(19)から前記第2出口(21)へ送り出すように滑動可能に取り付けられているプランジャ(16)と、
前記ボア(5)内に滑動可能に取り付けられていて、第1の静止モードと、第2の往復運動モードで作動するように配置されているピストン(14)とを備え、
前記第1の静止モードでは、第2の流体が、前記プランジャ(16)だけの往復運動によって前記第2入口(19)から前記第2出口(21)へ送られ、
前記第2の往復運動モードでは、前記プランジャ(16)と前記ピストン(14)は互いに接触させられ、前記プランジャ(16)と前記ピストン(14)両方の往復運動によって、第1の流体が前記第1入口(9)から前記第1出口(11)へ送られ、少なくとも2つの異なる第1及び第2の流体を選択的に送り出すことができる、ポンプ。」(下線部は審判請求人が補正箇所を示したものである。)

(b)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
流体を送り出すためのポンプ(1)において、
長手方向のボア(5)を画定している本体(3)と、
前記ボア(5)と連通している第1及び第2入口(9、19)と、
前記ボア(5)と連通している第1及び第2出口(11、21)と、
前記ボア(5)内で往復運動して、流体を、前記第1入口(9)から前記第1出口(11)へ、前記第2入口(19)から前記第2出口(21)へ送り出すように滑動可能に取り付けられているプランジャ(16)と、
前記ボア(5)内に滑動可能に取り付けられていて、第1の静止モードと、第2の往復運動モードで作動するように配置されているピストン(14)とを備え、
前記第1の静止モードでは、流体は、前記プランジャ(16)だけの往復運動によって前記第2入口(19)から前記第2出口(21)へ送られ、
前記第2の往復運動モードでは、前記プランジャ(16)と前記ピストン(14)は互いに接触させられ、前記プランジャ(16)と前記ピストン(14)両方の往復運動によって、流体は前記第1入口(9)から前記第1出口(11)へ送られる、ポンプ。」


2.本件補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に関して、
「流体を送り出すためのポンプ」を「少なくとも2つの異なる第1及び第2の流体を送り出すためのポンプ」と限定するとともに、「ポンプ」を「少なくとも2つの異なる第1及び第2の流体を選択的に送り出すことができる、ポンプ」と限定し、
「流体を、前記第1入口(9)から前記第1出口(11)へ」を「第1の流体を前記第1入口(9)から前記第1出口(11)へ」と「流体」の「第1の」ということを限定し、
「流体は、前記プランジャ(16)だけの往復運動によって前記第2入口(19)から前記第2出口(21)へ送られ」を「第2の流体を前記第2入口(19)から前記第2出口(21)へ送られ」と「流体」の「第2の」ということを限定し、
「流体は前記第1入口(9)から前記第1出口(11)へ送られ」を「第1の流体が前記第1入口(9)から前記第1出口(11)へ送られ」と「流体」の「第1の」ということを限定するものであるから、
請求項1に関する本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。


3.本件補正の適否の判断
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて、以下に検討する。

3-1.特許法第36条第6項第1号について
(1)本件補正発明における「少なくとも2つの異なる第1及び第2の流体を送り出すためのポンプ(1)」なる記載の点は、3つの異なる流体や4つの異なる流体を送り出すためのポンプも含まれるものと解されるが、ポンプのどのような構造、機構によって、3つの異なる流体や4つの異なる流体を送り出せるのか、発明の詳細な説明には、明確に記載されていないことから、上記記載は、発明の詳細な説明に基づくものとはいえない。

(2)すなわち、本件出願の明細書の段落【0033】には、
「本発明は、単一の流体又は2つの流体を送るための配置に限定されるわけではなく、ポンプが、追加の流体を送り出すことのできる別の入口と出口を備えることも考えられる。その様な配置は、それぞれの流体を互いに分離して保持するため、1つ又は複数の追加のピストン及び作動システムを備えていてもよい。例えば、3つの流体のシステムは、油、ディーゼル及びガソリンを含むことができる。」
と記載されている。
しかしながら、例えば、上記の3つの流体のシステムは、「1つ又は複数の追加のピストン及び作動システム」をどのように本件発明の2つの流体のシステムである実施形態に組み合わせれば良いのか不明であり、発明の詳細な説明には、何ら具体的に開示されているとはいえないことから、上記記載の点は、発明の詳細な説明に基づくものとはいえない。

(3)したがって、本件補正発明は、発明の詳細な説明に基づくものとはいえないので、特許法第36条第6項第1号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


3-2.特許法第29条第2項について
3-2-1.引用文献記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である米国特許第3215080号明細書(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「This invention relates to pumping apparatus …(中略)…into the combustion spaces of an internal combustion engine.」(第1欄第8ないし14行)

〈当審仮翻訳〉
「本発明は、往復ピストンまたはプランジャーの手段により液体を圧送するポンプ装置に関係し、具体的には特定の量の液体を測定して送り込む種類のポンプ、たとえば、液体燃料を内燃機関の燃焼空間に送り込むために使用される燃料噴射ポンプ装置に関係する。」

(イ)「The primary objective of this invention is to provide a pump apparatus having the capability of metering and delivering a plurality of liquids from each of the apparatus cylinder bores during a stroke cycle of the apparatus reciprocating piston or plunger member.
…(中略)…
The objectives of this invention are obtained by the use of an auxiliary free piston which is adapted to mount and to operate within the cylinders of reciprocating pump apparatus. The inherent characteristics of liquids, namely their inability to compress, are utilized to form a hydraulic coupling between this auxiliary free piston member and the main reciprocating plunger member. This hydraulic coupling is employed to reciprocate the auxiliary piston thereby enabling the auxiliary piston to serve as a second plunger member for the pump apparatus.」(第1欄第15ないし41行)

〈当審仮翻訳〉
「本発明の主要な目的は、装置往復ピストンまたはプランジャー・メンバーのストローク・サイクル中に装置シリンダー・ボアのそれぞれから複数の液体を計量・圧送する機能をもつポンプ装置を提供することである。
本発明は、2つの異なるグレードの液体燃料を内燃機関のメイン・シリンダーまたはその他の燃焼空間に送り込むために有益に使用できる。これらの燃料の一方は点火装置による点火のためのハイオクタン・ガソリンであり、第2の燃料は、第1の燃料により点火され、エンジンの出力を与えるストーブ・オイルまたはディーゼル油のような沸点の高い燃料である。
本発明に含まれている原理は、一定または変動する量のそのような液体を同時に圧送したい場合は常に、任意の性質の2種類以上の液体を圧送するためにも役立つ。
本発明の目的は、往復ポンプ装置のシリンダー内に取り付けられて作動するように適合されている補助自由ピストンの使用により達成される。液体の固有の特性、すなわち、圧縮できないことを利用してこの補助自由ピストン・メンバーとメイン往復プランジャー・メンバー間に油圧結合を形成する。この油圧結合を使用して補助ピストンを往復させ、それにより補助ピストンがポンプ装置の第2プランジャー・メンバーとして働くことを可能にする。」

(ウ)「FIGURE 1 illustrates the preferred method for operating this invention when it is desired to pump a constant amount of a primary liquid and a variable amount of a secondary liquid when the timing of the delivery of such liquids may be staggered. This illustration shows a metal cylinder block 1 containing an elongated plunger member 3 mounted for reciprocation within a cylinder bore 2. The compression spring 4 and the cam 5 serve to illustrate a suitable means for reciprocating the said plunger 3.
…(中略)…
A secondary liquid, such as diesel fuel, is communicated through the cylinder bore 2 of the apparatus below the piston 9. An intake duct 16 and a discharge duct 17 serve this purpose. The preferred method for positioning the intake and discharge ducts 16 and 17 is to place these adits below the reciprocating range of the piston 9 and to provide suitable check valve means 19 and 20 to control the directional flow of the liquid between the pipe 18, which communicates the secondary liquid with the intake duct 16, and the pipe 21 which communicates the secondary liquid with the discharge duct 17. The pipe 18 would connect to the source of secondary liquid and the pipe 21 would connect to the point of final delivery of the secondary liquid.」(第1欄第59行ないし第2欄第62行)

〈当審仮翻訳〉
「図1は、一定量の第1液体および可変量の第2液体を圧送することが望ましく、かつ、これらの液体の圧送のタイミングがずらされる場合に、本発明を実現する好ましい方法を示している。この図は、シリンダー・ボア2内における往復運動のために取り付けられた細長いプランジャー・メンバー3を含むメタル・シリンダー・ブロック1を示している。圧縮スプリング4およびカム5は、前記プランジャー3を往復させるための適切な手段を示すために役立つ。
この構成は、新規ではない。さらに、往復プランジャーがポンプ・シリンダー・ボア内で作動される任意の他の適切な構成でも、これらの概念を実現するために十分である。選択される構成は、プランジャー3およびボア2の直径が一致して適度に密着する滑り嵌合およびプランジャー3の軸付近からの漏出を防止するために適切な締め付けナットまたは図示Oリング6のような仕組みを準備するべきである。摩耗にさらされるすべての表面は研磨し、何らかの適切な焼き戻し手段により硬化して装置の長い作動寿命を確保するべきである。
私の発明は、プランジャー3の往復範囲の下に配置される補助ピストン9を設けることにより実現される。ボア2の一番上の部分の直径は、プランジャー3の直径に等しい。プランジャー3の下端の往復限度の下では、ボア2の直径は太くなっており、それによりボア2内の小直径と大直径間の係合点に直角のオフセット7が形成されている。補助ピストン9は、ボア2の大直径下端部分内における往復運動のために取り付けられ、オフセット肩部7によりプランジャー3の往復範囲に上昇しないようになっている。ネジ山付きプラグ8が適合されてボア2を密閉し、かつ、ピストン9をオフセット7の方に押して通常休止位置に置くスプリング10の張力を調整する。
ピストン9は、ボア2内における往復運動のために取り付けられる。このピストン9を組み付ける際、ボア2内の滑らかな滑り嵌合を確保するように注意するべきである。ボア2内のピストン9の自由な往復運動を可能とするためにボア2の内部およびピストン9の外側表面を滑らかに研削・研磨するべきである。
ハイオクタン・ガソリンのような第1液体は、プランジャー3の往復範囲内のシリンダー・ボア2経由で伝達される。取り入れダクト11および排出ダクト13がこの目的を果たす。パイプ12の末端は、圧入またはその他の手段によりブロック1に取り付けられ、取り入れダクト11と連絡する。第2のパイプ15は、同様にブロック1に取り付けられ、排出ダクト13と連絡する。パイプ12の反対側の末端は第1液体ソースと接続し、また、パイプ15の反対側の末端は前記第1液体の最終供給点と接続する。パイプ15の内側末端と排出ダクト13の間に適切な逆止め弁手段14を配置するべきである。このバルブ14は絶対的必要物ではないが、私は、このような逆止め弁をボア2に隣接して設けた場合にこの装置の性能が改善されることを発見した。
ディーゼル燃料のような第2液体は、ピストン9の下の装置のシリンダー・ボア2経由で伝達される。取り入れダクト16および排出ダクト17がこの目的を果たす。取り入れダクト16および排出ダクト17を配置する好ましい方法は、これらの出入口をピストン9の往復範囲の下に配置し、適切な逆止め弁手段19および20を設けてパイプ18 (第2液体を取り入れダクト16により伝達する)とパイプ21 (第2液体を排出ダクト17により伝達する)間の液体の方向流量を制御することである。パイプ18は第2液体のソースに接続し、パイプ21は第2液体の最終供給点に接続する。」

(エ)「In a normal operation of the apparatus of FIGURE 1 the primary liquid would course from a primary liquid source, through the pipe 12, through the intake duct 11 and would fill the bore 2 between the uppermost extremity of the piston 9 and the lowermost extremity of the plunger 3. The primary liquid would also fill the discharge duct 13 up to the point of contact with the check valve 14.
…(中略)…
In a normal stroke cycle of the apparatus depicted in FIGURE 1 the reciprocating range of the plunger 3 would extend from a point above the intake duct 11 and would continue through to a point below the discharge duct 13.」(第2欄第63行ないし第3欄第59行)

〈当審仮翻訳〉
「図1の装置の通常の作動において、第1液体は、第1液体ソースから、パイプ12を経由し、取り入れダクト11を経由して流れ、そしてピストン9の最上部末端とプランジャー3の最下部末端間のボア2を満たす。第1液体は、逆止め弁14と接触する点まで排出ダクト13も満たす。
第2液体は、第2液体ソースからパイプ18経由で流れ、逆止め弁19を回って、プラグ8の内側末端とピストン9の最下部末端間のボア2を満たす。第2液体は、逆止め弁20と接触する点まで排出ダクト17も満たす。
この装置に燃料が注入されたとき、すなわち、第1液体がボア2の上側局限領域を満たし、かつ、第2液体が前記ボア2の下側局限領域を満たしたとき、プランジャー3に下向き圧力を及ぼすカム5の回転により、先ず第1液体が取り入れダクト11を経由し、パイプ12を経由して逆に流れる。かかる下方への運動によりポンプがポイント22において取り入れダクト11の底部を通過した後、第1液体は、排出ダクト13を経由し、逆止め弁14を回り、パイプ15を経由して流れるようになる。
構造の重要な部分は、圧縮スプリング10である。スプリング10およびその上にプラグ8により保持される張力は、逆止め弁14により及ぼされる抵抗力および/または第1液体供給ライン15に含まれるその他の抑制力より大きな力でなければならない。これが必要な理由は、第1液体の供給を抑制するように働く力がピストン9に対抗して働く力を打ち負かすならば、第1液体が装置から引き出され得ないことになるからである。
第2液体の実効ストロークは、プランジャー3の最下末端が排出ダクト13を通過して、それによりポイント23で開いているそれを密閉したときに始まる。
ポイント23とピストン9のトップの間に捕らえられた液体は圧縮せず、したがって捉えられた液体は、プランジャー3により加えられた下方への圧力をピストン9に伝達する媒体として働く。この油圧結合は、ピストン9をそのシートから肩部7に向かって引き離し、それを内側に押しやるように働く。ピストン9を引き離し、それを内側に押しやることにより、排出ダクト17を通り、逆止め弁20を回り、供給パイプ21を通過する第2液体の流れが始まる。
プランジャー3の外側へ向かう運動は、ピストン9に働く油圧を解除し、スプリング10によりピストン9が肩部7を背にするその通常休止位置の方向に押される。ピストン9の外側へ向かう運動は、逆止め弁20を閉じ、かつ、第2液体を逆止め弁19を回ってシリンダー2の下側局限領域に流し込むように働く吸引力を生成する。
第2液体の取り入れは、ピストン9が肩部7に着座するまで続く。この時点において吸引力は下側シリンダーにおいて終了し、シリンダー2の上側局限領域内において始まる。プランジャー3により上側シリンダー2内において生成された吸引力は、逆止め弁14を閉じ、かつ、第1液体を取り入れダクト11経由でシリンダー2の上側局限領域に流し込む。
図1に示した装置の通常のストローク・サイクルにおいて、プランジャー3の往復範囲は、取り入れダクト11の上の点から伸び、排出ダクト13の下の点まで続く。」

(オ)「There are several known means for adjusting the eflFective stroke and/or changing the depth of the reciprocating range of the plunger 3 within the bore 2. One such means is described in my copending application, Serial No. 188,082. Such adjustable means will permit the effective stroke of the plunger 3 to be adjusted within the bore 2. When an adjustable means is provided, the apparatus of FIGURE 1 may be set to pump and deliver variable amounts of I-the primary liquid and none of the secondary liquid, set to pump and deliver a constant amount of the primary liquid and a variable amount of the secondary liquid, or set to deliver a constant amount of the secondary liquid and none of the primary liquid. For examples:
…(中略)…
When the plunger travel is set to begin below the point 23 only the secondary liquid will be pumped and delivered.」(第3欄第60行ないし第4欄第17行)

〈当審仮翻訳〉
「実効ストロークを調整する手段および/またはボア2内のプランジャー3の往復範囲の奥行きを変更する手段は、いくつか知られている。このような手段の1つは、私の同時係属出願、Serial No. 188,082において記述されている。このような調整可能手段は、プランジャー3の実効ストロークのボア2内における調整を可能にする。調整手段を設けた場合、可変量の第1液体のみを圧送すること、一定量の第1液体および可変量の第2液体を圧送すること、または一定量の第2液体のみ圧送するように図1の装置を設定することができる。たとえば次のとおりである:
取り入れダクト11の上で始まり、ポイント22と23の間で止まるようにプランジャーの行程を設定した場合、第1液体のみ供給される。第1液体の量は、2つのポイント22と23の間のプランジャー3の停止位置を変えることにより調節できる。
取り入れダクト11の上で始まり、ポイント23を越えて続くようにプランジャーの行程を設定した場合、ポイント22と23の間のボア2中の全量の液体が装置からパイプ15経由で押し出される。また、一定量の第2液体も圧送される。第2液体の容積は、ポイント23の下に伸びるプランジャー末端により排除される容積に等しい。第2液体の量は、ポイント23の下のプランジャー3の停止位置を変えることにより調節できる。
プランジャーの行程がポイント23の下で始まるように設定された場合、第2液体のみ圧送される。」

(カ)「The components of FIGURE 2 correspond with like components described for the apparatus of FIGURE 1. It will be noted that the intake duct 11 and the discharge duct 13 are on the same plane, are laterally placed with respect to the cylinder 2 and that a check valve 24 has been provided in the intake duct 11.
…(中略)…
When the plunger travel is set to begin and to terminate above the lateral ducts 11 and 13 only primary liquid will be pumped and delivered; when the plunger travel is set to begin and terminate below the lateral ducts 11 and 13 only the secondary liquid will be pumped and delivered; and when the plunger travel is set to begin above and to terminate below these ducts 11 and 13 both primary and secondary liquid will be pumped and delivered.」(第4欄第20ないし56行)

〈当審仮翻訳〉
「図2の構成要素は、図1の装置について記述した同様な構成要素に対応する。取り入れダクト11および排出ダクト13が同一平面にあり、シリンダー2に関して両側に配置されていること、および逆止め弁24が取り入れダクト11に設けられていることに注意されたい。
第1液体は、パイプ12経由で供給され、逆止め弁24を回って流れ、ボア2の上側局限領域を満たす。第2液体は、パイプ18経由で供給され、逆止め弁19を回って流れ、ボア2の下側局限領域を満たす。
図2の装置のプランジャー3のどの運動も、有効である。プランジャー3に下方向の圧力を及ぼすカム5の回転によりボア2からの液体の流れが始まり、また、スプリング4がプランジャー3の外側へ運動を起こすことを許容するカム5の回転によりボア2への液体の流れが始まる。
図2の装置には、ボア2内でプランジャー3の上昇および/または下降往復範囲を調整する手段も設けることができる。しかし、この装置では完全なプランジャー・ストロークが有効であるので、このような調整手段は圧送される液体の量を増減しない。シリンダー2内のプランジャー3の往復範囲の奥行きを変更する調整は、装置のストローク・サイクル中に圧送される容積における第1液体の第2液体に対する比を変更する。例えば、
プランジャーの行程を側面ダクト11および13の上で終始するように設定した場合、第1液体のみ圧送される。プランジャーの行程を側面ダクト11および13の下で終始するように設定した場合、第2液体のみ圧送される。プランジャーの行程をこれらのダクト11および13の上で始まり、これらの下で終わるように設定した場合、第1液体および第2液体の両方が圧送される。」

(キ)「1. The combination of a pump cylinder block, a cylinder bore with-in said block, an elongated plunger member having an end portion thereof equal in diameter to and slideably encased within said bore, a reciprocating means outward from said block and engaged with the free end of said plunger, an obstruction within and partially blocking said bore, said obstruction being inward from the innermost reciprocating limit of said plunger, a free piston member having a diameter equal to said bore, said piston mounted for reciprocation within said bore inward from said obstruction, a compression spring within said bore between the inward extremity of said free piston and the bottom of said bore; a liquid admitting and discharging duct throngh said block, said duct disposed on an angle to and intersected with said bore between the inward and the outward reciprocating limits of the encased end of said plunger, and a second liquid admitting and discharging duct through a sidewall of said block and engaged with said bore inward from the innermost reciprocating limit of said free piston.
…(中略)…
5. An apparatus for pumping and delivering liquids comprising the combination of a pump cylinder block, a cylinder bore within said block, an elongated plunger member having an end portion thereof equal in diameter to and slideably encased within said bore, a reciprocating means outward from said block and engaged with the free end of said plunger, an obstruction within and partially blocking said bore, said obstruction being inward from the innermost reciprocating limit of said plunger, an elongated free piston member having a diameter equal to said bore, said piston mounted for reciprocation within said bore inward from said obstruction, a compression spring within said bore between the inward extremity of said free piston and the bottom of said bore, a first liquid admitting and discharging duct transversely disposed to and intersected with said bore between the inward and the outward reciprocating limits of the encased end of said plunger and a second liquid admitting and discharging duct transversely disposed to and intersected with bore inward from the innermost reciprocating limit of the inward extremity of said free piston, there being check valve means disposed within the admitting and the discharging extremities of said first duct and check valve means disposed within the -admitting and discharging extremities of said second duct.」(第5欄第50行ないし第7欄第17行)

〈当審仮翻訳〉
「1. ポンプ・シリンダー・ブロック、前記ブロック内のシリンダー・ボア、細長いプランジャー・メンバー(その端部は、直径において前記ボアに等しく、前記ボア内に滑動できるように収容されている)、前記ブロックから外側の往復手段(前記プランジャーの自由端と係合する)、前記ボア内にあってそれを部分的にブロックする障害物(この障害物は前記プランジャーの最内部往復限界から内側にある)、前記ボアに等しい直径をもつ自由ピストン・メンバー(このピストンは往復のために前記ボア内に前記障害物から内側に取り付けられている)、前記ボア内に前記自由ピストンの内側末端と前記ボアの底部の間にある圧縮スプリング、前記ブロック経由で液体を取り入れ、排出するダクト(このダクトは、前記プランジャーの被封入端の外側と内側往復限界間において前記ボアに対して一定の角度をもって配置され、かつ、それと交差している)、および第2液体取り入れ・排出ダクト(このダクトは、前記ブロックの側壁を通過し、前記自由ピストンの最内部往復限界から内側で前記ボアと係合している)の組み合わせ。
2. ポンプ・シリンダー・ブロック、前記ブロック内のシリンダー・ボア、細長いプランジャー・メンバー(その端部は、直径において前記ボアに等しく、前記ボア内に滑動できるように収容されている)、前記ブロックから外側の往復手段(前記プランジャーの自由端と係合する)、前記ボア内にあってそれを部分的にブロックする障害物(この障害物は前記プランジャーの最内部往復限界から内側にある)、前記ボアに等しい直径をもつ自由ピストン・メンバー(このピストンは往復のために前記ボア内に前記障害物から内側に取り付けられている)、前記ボア内に前記自由ピストンの内側末端と前記ボアの底部の間にある圧縮スプリング、前記ブロックを通過する第1液体取り入れ・排出ダクト(この第1ダクトは、前記プランジャーの被封入端の内側と外側往復限界間において前記ボアに対してほぼ横断的に配置され、かつ、それと交差している)および第2液体取り入れ・排出ダクト(この第2ダクトは、前記ブロックを通過し、前記自由ピストンの内側末端の最内部往復限界から内側で前記ボアと交差している)の組み合わせから構成される、液体を圧送する装置。
3. ポンプ・シリンダー・ブロック、前記ブロック内のシリンダー・ボア、細長いプランジャー・メンバー(その端部は、直径において前記ボアに等しく、前記ボア内に滑動できるように収容されている)、前記ブロックから外側の往復手段(前記プランジャーの自由端と係合する)、前記ボア内にあってそれを部分的にブロックする障害物(この障害物は前記プランジャーの最内部往復限界から内側にある)、前記ボアに等しい直径をもつ細長い自由ピストン・メンバー(このピストンは往復のために前記ボア内に前記障害物から内側に取り付けられている)、前記ボア内に前記自由ピストンの内側末端と前記ボアの底部の間にある圧縮スプリング、第1液体取り入れ・排出ダクト(この第1液体ダクトは前記ブロックを通過し、前記プランジャーの被封入端の内側および外側往復限界間で前記ボアに対しほぼ横断的に配置され、それと交差する)および第2液体取り入れ・排出ダクト(この第2液体ダクトは、前記ブロックを通過し、前記自由ピストンの内側末端の最内部往復限界から内側で前記ボアと交差している)の組み合わせから構成され、前記第1液体ダクトの排出末端内に配置された逆止め弁手段を有する液体を圧送する装置。
4. ポンプ・シリンダー・ブロック、前記ブロック内のシリンダー・ボア、細長いプランジャー・メンバー(その端部は、直径において前記ボアに等しく、前記ボア内に滑動できるように収容されている)、前記ブロックから外側の往復手段(前記プランジャーの自由端と係合する)、前記ボア内にあってそれを部分的にブロックする障害物(この障害物は前記プランジャーの最内部往復限界から内側にある)、前記ボアに等しい直径をもつ細長い自由ピストン・メンバー(このピストンは往復のために前記ボア内に前記障害物から内側に取り付けられている)、前記ボア内に前記自由ピストンの内側末端と前記ボアの底部の間にある圧縮スプリング、第1液体取り入れ・排出ダクト(この第1液体ダクトは前記ブロックを通過し、前記プランジャーの被封入端の内側および外側往復限界間において前記ボアにある角度をもって配置され、それと交差する)および第2液体取り入れ・排出ダクト(この第2液体ダクトは、前記ブロックを通過し、前記自由ピストンの内側末端の最内部往復限界から内側で前記ボアに対して横断的に配置され、かつ、それと交差している)の組み合わせから構成され、前記第1液体ダクトの排出末端内に配置された逆止め弁手段および前記第2液体ダクトの取り入れおよび排出末端内に配置された逆止め弁手段を有する、液体を圧送する装置。
5. ポンプ・シリンダー・ブロック、前記ブロック内のシリンダー・ボア、細長いプランジャー・メンバー(その端部は、直径において前記ボアに等しく、前記ボア内に滑動できるように収容されている)、前記ブロックから外側の往復手段(前記プランジャーの自由端と係合する)、前記ボア内にあってそれを部分的にブロックする障害物(この障害物は前記プランジャーの最内部往復限界から内側にある)、前記ボアに等しい直径をもつ細長い自由ピストン・メンバー(このピストンは往復のために前記ボア内に前記障害物から内側に取り付けられている)、前記ボア内に前記自由ピストンの内側末端と前記ボアの底部の間にある圧縮スプリング、第1液体取り入れ・排出ダクト(この第1液体ダクトは、前記プランジャーの被封入端の内側および外側往復限界間において前記ボアに対して横断的に配置され、それと交差する)および第2液体取り入れ・排出ダクト(この第2液体ダクトは、前記自由ピストンの内側末端の最内部側往復限界の内側において前記ボアに対して横断的に配置され、それと交差する)の組み合わせから構成され、前記第1ダクトの取り入れおよび排出末端内に配置された逆止め弁手段および前記第2ダクトの取り入れおよび排出末端内に配置された逆止め弁手段を有する、液体を圧送する装置。」

(2)ここで、上記(1)の(ア)ないし(キ)及び図面の記載からみて、次のことがわかる。

(ク)上記(1)の(ア)ないし(キ)並びに図1及び2の記載からみて、図1及び図2のいずれの液体を圧送する装置も、2つの異なる第2液体及び第1液体を送り出すものであることがわかる。

(ケ)上記(1)の(ウ)ないし(キ)並びに図1及び2の記載からみて、図1及び図2のいずれの液体を圧送する装置も、ブロック1、取り入れダクト16、取り入れダクト11、排出ダクト17、排出ダクト13、プランジャー3、及びピストン9とを備えていることがわかる。
また、前記ブロック1は長手方向のシリンダー・ボア2を画定しており、前記取り入れダクト16及び前記取り入れダクト11はシリンダー・ボア2と連通しており、前記排出ダクト17及び前記排出ダクト13シリンダー・ボア2と連通しており、前記プランジャー3は、シリンダー・ボア2内で往復運動して、第2液体を前記取り入れダクト16から前記排出ダクト17へ、第1液体を前記取り入れダクト11から前記排出ダクト13へ送り出すように滑動可能に取り付けられており、前記ピストン9は、シリンダー・ボア2内に滑動可能に取り付けられていていることがわかる。

(コ)上記(1)の(ウ)ないし(オ)及び(キ)並びに図1の記載からみて、図1の液体を圧送する装置について、プランジャー3とピストン9との関連動作並びに第1液体及び第2液体の流れは、
「第1液体がボア2の上側局限領域を満たし、かつ、第2液体が前記ボア2の下側局限領域を満たしたとき、プランジャー3に下向き圧力を及ぼすカム5の回転により、先ず第1液体が取り入れダクト11を経由し、パイプ12を経由して逆に流れる。かかる下方への運動によりポンプがポイント22において取り入れダクト11の底部を通過した後、第1液体は、排出ダクト13を経由し、逆止め弁14を回り、パイプ15を経由して流れるようになる。」((1)(エ)参照。)、及び
「第2液体の実効ストロークは、プランジャー3の最下末端が排出ダクト13を通過して、それによりポイント23で開いているそれを密閉したときに始まる。
ポイント23とピストン9のトップの間に捕らえられた液体は圧縮せず、したがって捉えられた液体は、プランジャー3により加えられた下方への圧力をピストン9に伝達する媒体として働く。この油圧結合は、ピストン9をそのシートから肩部7に向かって引き離し、それを内側に押しやるように働く。ピストン9を引き離し、それを内側に押しやることにより、排出ダクト17を通り、逆止め弁20を回り、供給パイプ21を通過する第2液体の流れが始まる。
プランジャー3の外側へ向かう運動は、ピストン9に働く油圧を解除し、スプリング10によりピストン9が肩部7を背にするその通常休止位置の方向に押される。ピストン9の外側へ向かう運動は、逆止め弁20を閉じ、かつ、第2液体を逆止め弁19を回ってシリンダー2の下側局限領域に流し込むように働く吸引力を生成する。」((1)(エ)参照。)
ということである。
そうすると、第2液体が排出ダクト17から流れるようになるのは、
互いに液体により油圧結合させられているプランジャとピストンとの係合状態が、排出ダクト13のシリンダー・ボア2に開口する開口部の下端位置とピストン9のトップの間に捕らえられた液体は、プランジャー3により加えられた下方への圧力をピストン9に伝達する媒体として働き、この油圧結合は、ピストン9をそのシートから肩部7に向かって引き離し、それを内側に押しやるように働いてピストン9を引き離し、それを内側に押しやることにより、排出ダクト17を通り、逆止め弁20を回り、供給パイプ21を通過する第2液体の流れが始まるようになる状態であることがわかる。ここで、このような状態を、以下、『ピストン9とプランジャー3とが油圧結合する第2のモード』という。
他方、第1液体が排出ダクト13から流れるようになるのは、逆に、
互いに液体により油圧結合させられていないプランジャとピストンとの係合状態である。ここで、このような状態を、以下、『ピストン9とプランジャー3とが油圧結合しない第1のモード』という。

(サ)上記(1)の(カ)、(キ)及び上記(コ)並びに図2の記載からみて、図2の液体を圧送する装置について、プランジャー3とピストン9との関連動作並びに第1液体及び第2液体の流れは、
「プランジャーの行程を側面ダクト11および13の上で終始するように設定した場合、第1液体のみ圧送される。プランジャーの行程を側面ダクト11および13の下で終始するように設定した場合、第2液体のみ圧送される。プランジャーの行程をこれらのダクト11および13の上で始まり、これらの下で終わるように設定した場合、第1液体および第2液体の両方が圧送される。」((1)(カ)参照。)
ということであるので、「プランジャーの行程をこれらのダクト11および13の上で始まり、これらの下で終わるように設定した場合」には、その図2の構造からにて、図1の液体を圧送する装置と同様に、『ピストン9とプランジャー3とが油圧結合する第2のモード』及び『ピストン9とプランジャー3とが油圧結合しない第1のモード』が存在するのは明らかである。

(シ)上記(コ)及び(サ)並びに図1及び2の記載からみて、図1及び図2の液体を圧送する装置はいずれも、『ピストン9とプランジャー3とが油圧結合する第2のモード』及び『ピストン9とプランジャー3とが油圧結合しない第1のモード』が存在することがわかる。

(ス)上記(1)の(ウ)ないし(キ)、上記(コ)ないし(シ)並びに図1及び2の記載からみて、図1及び図2のいずれの液体を圧送する装置も、ピストン9は、シリンダー・ボア2内に滑動可能に取り付けられていて、『ピストン9とプランジャー3とが油圧結合しない第1のモード』と、『ピストン9とプランジャー3とが油圧結合する第2のモード』で作動するように配置されており、図1及び図2の液体を圧送する装置は、いずれも、前記『ピストン9とプランジャー3とが油圧結合しない第1のモード』では、第1液体が、前記プランジャー3だけの往復運動によって取り入れダクト11から排出ダクト13へ送られ、前記『ピストン9とプランジャー3とが油圧結合する第2のモード』では、前記プランジャー3と前記ピストン9は互いに液体により油圧結合させられ、前記プランジャー3と前記ピストン9両方の往復運動によって、第2液体が取り入れダクト16から排出ダクト17へ送られ、2つの異なる第2液体及び第1液体を選択的に送り出すことができるものであることがわかる。

(3)上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用文献記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「2つの異なる第2液体及び第1液体を送り出すための液体を圧送する装置において、
長手方向のシリンダー・ボア2を画定しているブロック1と、
前記シリンダー・ボア2と連通している取り入れダクト16及び取り入れダクト11と、
前記シリンダー・ボア2と連通している排出ダクト17及び排出ダクト13と、
前記シリンダー・ボア2内で往復運動して、第2液体を前記取り入れダクト16から前記排出ダクト17へ、第1液体を前記取り入れダクト11から前記排出ダクト13へ送り出すように滑動可能に取り付けられているプランジャー3と、
前記シリンダー・ボア2内に滑動可能に取り付けられていて、ピストン9とプランジャー3とが油圧結合しない第1のモードと、ピストン9とプランジャー3とが油圧結合する第2のモードで作動するように配置されているピストン9とを備え、
前記ピストン9とプランジャー3とが油圧結合しない第1のモードでは、第1液体が、前記プランジャー3だけの往復運動によって前記取り入れダクト11から前記排出ダクト13へ送られ、
前記ピストン9とプランジャー3とが油圧結合する第2のモードでは、前記プランジャー3と前記ピストン9は互いに液体により油圧結合させられ、前記プランジャー3と前記ピストン9両方の往復運動によって、第2液体が前記取り入れダクト16から前記排出ダクト17へ送られ、2つの異なる第2液体及び第1液体を選択的に送り出すことができる、液体を圧送する装置。」


3-2-2.対比
本件補正発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明における「第2液体」は、その機能、形状、構造又は技術的意義からみて、本件補正発明における「第1の流体」に相当し、以下同様に、「第1液体」は「第2の流体」に、「第2液体及び第1液体」は「第1及び第2の流体」に、「液体を圧送する装置」は「ポンプ(1)」及び「ポンプ」のそれぞれに、「シリンダー・ボア2」は「ボア(5)」に、「ブロック1」は「本体(3)」に、「取り入れダクト16」は「第1入口(9)」に、「取り入れダクト11」は「第2入口(19)」に、「取り入れダクト16及び取り入れダクト11」は「第1及び第2入口(9、19)」に、「排出ダクト17」は「第1出口(11)」に、「排出ダクト13」は「第2出口(21)」に、「排出ダクト17及び排出ダクト13」は「第1及び第2出口(11、21)」に、「プランジャー3」は「プランジャ(16)」に、「ピストン9とプランジャー3とが油圧結合しない第1のモード」は「第1の静止モード」に、「ピストン9とプランジャー3とが油圧結合する第2のモード」は「第2の往復運動モード」に、「ピストン9」は「ピストン(14)」に、それぞれ相当する。
また、引用文献記載の発明における「2つ」は、その技術的意義からみて、本件補正発明における「少なくとも2つ」に包含される。
さらに、引用文献記載の発明における「互いに液体により油圧結合させられ」は、「互いに一体化させられ」という限りにおいて、本件補正発明における「互いに接触させられ」に相当する。

したがって、本件補正発明と引用文献記載の発明は、次の一致点及び相違点を有するものである。

<一致点>
「2つの異なる第1及び第2の流体を送り出すためのポンプにおいて、
長手方向のボアを画定している本体と、
前記ボアと連通している第1及び第2入口と、
前記ボアと連通している第1及び第2出口と、
前記ボア内で往復運動して、第1の流体を前記第1入口から前記第1出口へ、第2の流体を前記第2入口から前記第2出口へ送り出すように滑動可能に取り付けられているプランジャと、
前記ボア内に滑動可能に取り付けられていて、第1の静止モードと、第2の往復運動モードで作動するように配置されているピストンとを備え、
前記第1の静止モードでは、第2の流体が、前記プランジャだけの往復運動によって前記第2入口から前記第2出口へ送られ、
前記第2の往復運動モードでは、前記プランジャと前記ピストンは互いに一体化させられ、前記プランジャと前記ピストン両方の往復運動によって、第1の流体が前記第1入口から前記第1出口へ送られ、2つの異なる第1及び第2の流体を選択的に送り出すことができる、ポンプ。」

<相違点>
第2の往復運動モードにおけるプランジャとピストンとの係合状態に関し、
本件補正発明においては、「互いに接触させられ」るのに対し、引用文献記載の発明においては、「互いに液体により油圧結合させられ」る点(以下、「相違点」という。)。


3-2-3.判断
上記相違点について検討する。
引用文献記載の発明における、「互いに液体により油圧結合させられ」るプランジャとピストンとの係合状態は、引用文献において、排出ダクト13のシリンダー・ボア2に開口する開口部の下端位置とピストン9のトップの間に捕らえられた液体は、プランジャー3により加えられた下方への圧力をピストン9に伝達する媒体として働き、この油圧結合は、ピストン9をそのシートから肩部7に向かって引き離し、それを内側に押しやるように働いてピストン9を引き離し、それを内側に押しやることにより、排出ダクト17を通り、逆止め弁20を回り、供給パイプ21を通過する第2液体の流れが始まるようになるので(上記3-2-1.(1)(エ)参照。)、本件補正発明も引用文献記載の発明もいずれもプランジャとピストンとが「互いに一体化させられ」る点において共通する。
このプランジャとピストンとが「互いに一体化させられ」ることにより、本件補正発明も引用文献記載の発明もいずれも、「第2の往復運動モード」では、「前記プランジャと前記ピストン両方の往復運動によって、第1の流体が第1入口から第1出口へ送られ」るようにする同じ動作が生じることになるものである。
そして、このプランジャとピストンとが「互いに一体化させられ」るのは、「第2の往復運動モード」では、プランジャとピストンとが「互いに接触させられ」るか、若しくは、「互いに液体により油圧結合させられ」ることしかないのは明らかである。
また、排出ダクト13のシリンダー・ボア2に開口する開口部の下端位置とピストン9のトップとの間の距離をできるだけ短くすれば、プランジャー3とピストン9とが「互いに接触させられ」るのに近い状態になることは明らかである。
そうすると、「互いに一体化させられ」ることを、「互いに接触させられ」るものとするか「互いに液体により油圧結合させられ」るものとするかの選択に格別の困難性はなく、引用文献記載の発明において、上記相違点に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が必要に応じて適宜選択し得るものである。

また、本件補正発明は、全体として検討してみても、引用文献記載の発明から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。


3-2-4.まとめ
したがって、本件補正発明は、引用文献記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


4.むすび
以上のとおり、上記3.の3-1.又は3-2.に記載したとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるので、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。


【3】本件発明について
1.本件発明の内容
平成23年7月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし16に係る発明は、平成23年2月22日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲、平成20年12月15日付けの翻訳文による明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、単に「本件発明」という。)は、前記【2】の[理 由]の1.(b)に示した請求項1に記載されたとおりのものである。


2.引用文献記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献の記載事項及び引用文献記載の発明は、前記【2】の[理 由]3.の3-2.の3-2-1.(1)ないし(3)に記載したとおりである。


3.対比・判断
本件発明は、実質的に、前記【2】で検討した本件補正発明における発明特定事項を全て含むものである。
そうすると、本件発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が、前記【2】の[理 由]3.の3-2.の3-2-1.ないし3-2-4.に記載したとおり、引用文献記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も、同様の理由により、引用文献記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明は、全体として検討してみても、引用文献記載の発明から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものではない。


4.むすび
以上のとおり、本件発明は、引用文献記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

なお、審判請求人は、平成24年8月20日付けの回答書において補正案を提示し、請求項1に関し、特に、「前記ピストン(14)の位置は、前記第1及び第2入口(9、19)の流体圧力によって制御されるように配置されている」点を付加している。
しかしながら、引用文献における図1及び図2の両方の装置とも、ピストン9の位置は、オフセット7及びスプリング10によって制御されているのに加え、当該ピストン9の上端及び下端に作用する液体圧力によっても制御されているので、上記の点に格別の困難性は認められない。
したがって、補正案における請求項1に係る発明であっても進歩性は認められない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-10 
結審通知日 2012-10-11 
審決日 2012-10-24 
出願番号 特願2008-264734(P2008-264734)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02M)
P 1 8・ 575- Z (F02M)
P 1 8・ 537- Z (F02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩谷 一臣八木 誠  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 柳田 利夫
金澤 俊郎
発明の名称 流体ポンプ  
代理人 星野 修  
代理人 小林 泰  
代理人 千葉 昭男  
代理人 富田 博行  
代理人 小野 新次郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ