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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1270902
審判番号 不服2011-27706  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-22 
確定日 2013-03-05 
事件の表示 特願2009-155936「キーボード配置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月 5日出願公開、特開2009-259263〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2004年2月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年12月31日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願(特願2006-545856号)の一部を、平成18年12月12日に新たな特許出願(特願2006-335145号)としたものの一部を、さらに平成21年6月30日に新たな特許出願としたものである。
そして、本願の主な手続の経緯は、以下のとおりである。
平成23年 4月13日 拒絶理由通知
平成23年 7月15日 意見書及び手続補正書提出
平成23年 8月19日 拒絶査定
平成23年12月22日 審判請求書提出


2.本願発明
本願の請求項1ないし12に係る発明は、平成23年7月15日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)の記載は以下のとおりである。
「 【請求項1】
物理キーボードを有する携帯式移動通信装置であって、
該装置は、
ハウジングと、
文字の印に関連付けられたキーと信号通信するキーストロークインタープリタであって、テキスト入力の間に予測テキストルーチンを用いるキーストロークインタープリタと
を備え、
該ハウジングは、該ハウジングの前表面に配置された複数のキーを有し、
該複数のキーは、少なくとも4行および少なくとも5列を有する格子に配列されており、該少なくとも4行は、第1行、第2行、第3行、第4行を順番に含み、該少なくとも5列は、第1列、第2列、第3列、第4列、第5列を順番に含み、
該複数のキーは、
AからZまでの文字の印を有する少なくとも12個のキーからなる第1のキーセットであって、該AからZまでの文字の印は、該第1のキーセットの該少なくとも12個のキーに関連付けられており、該文字は、標準的なアルファベットキーボードの配列で配列されている、第1のキーセットと、
0から9までの数字の印を有する複数のキーからなる第2のキーセットであって、該0から9までの数字の印は、該第2のキーセットの該複数のキーに関連付けられており、該数字は、該標準的なアルファベットキーボードの配列の上に少なくとも部分的にオーバーレイされる数字の電話キーパッドの配列で配列されている、第2のキーセットと
を含み、
該少なくとも12個のキーからなる第1のキーセットのキーは、26個未満であり、これにより、該第1のキーセットの少なくとも一部の各キーは、各キーに関連付けられた1個よりも多くの文字の印を有するか、2個よりも少ない文字の印を有し、
該数字および該文字は、キーボードレイアウトにおいて同時に配列および表示され、これにより、該キーボードを用いた通話およびテキスト入力の配置が容易にされ、
該電話キーパッドは、該第1行、第2行、第3行、第4行におけるキーに関連付けられており、該第1行におけるキーは、該第2列において数字「1」を含み、該第3列において数字「2」を含み、該第4列において数字「3」を含み、該第2行におけるキーに関連付けられた該電話キーパッドは、該第2列において数字「4」を含み、該第3列において数字「5」を含み、該第4列において数字「6」を含み、該第3行におけるキーに関連付けられた該電話キーパッドは、該第2列において数字「7」を含み、該第3列において数字「8」を含み、該第4列において数字「9」を含み、該第4行におけるキーに関連付けられた該電話キーパッドは、該第2列において「*」を含み、該第3列において数字「0」を含み、該第4列において「#」を含み、
該第2のキーセットは、該第2のキーセットによってオーバーレイされない該第1のキーセットのキーとは色に基づいて区別されており、該第2のキーセットの各キーは、第1の色の第1の部分と、第2の色の第2の部分とを有し、
該第1の部分は、該第1の部分に関連付けられた数字の印を有し、該第2の部分は、該第2の部分に関連付けられた文字の印を有し、これにより、該数字の印は、該文字の印とは区別される、携帯式移動通信装置。」


3.各引用例の記載事項及び引用例記載の発明
(1)引用例1の記載事項及び引用例1記載の発明
原査定で通知した平成23年4月13日付け拒絶理由通知書で引用した、本願優先日前に頒布された刊行物である国際公開第03/056784号(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項及び発明が記載されている。なお、括弧内に当審での翻訳文を併記する。

ア.段落[0002]
「[0002] This invention relates generally to the field of small handheld electronic devices and especially to dual-mode handheld communication devices or mobile stations with a keyboard input. More particularly, the present invention relates to textual input keyboards for use in such devices. 」
([0002] 本願は、概して、小型ハンドヘルド電子デバイス、特に、キーボード入力を用いるデュアルモードハンドヘルド通信デバイスまたは移動局に関する。より具体的には、本発明は、このようなデバイスにおいて用いられるテキスト入力キーボードに関する。)

イ.段落[0009]
「[0009] The keyboard of the present invention provides a keyboard with a standard layout, so that a user can input information and commands with a keyboard that is familiar, while allowing a manufacturing process that reduces the number of keys required to provide the standard keyboard layout. This allows for a reduction in the complexity of the casing, and reduces the number of dome switches required on a PCB. The use of predictive text input simplifies text input for a user, though the use of a standard 'tap method' of text entry is also foreseen.」
([0009] 本発明のキーボードは、標準的な配列を有し、ユーザが使い慣れたキーボードを用いて情報およびコマンドを入力することができるキーボードであって、標準的なキーボード配列を提供するために必要なキーの数を低減することを可能にするキーボードを提供する。これによって、ケーシングの複雑さを低減することが可能になり、PCB(当審注:printed circuit board (プリント回路基板)の略)上で必要なドームスイッチの数が低減される。予測テキスト入力を用いることによって、ユーザのテキスト入力が簡略化されるが、テキスト入力の標準的な「タップ方法」も予測される。)

ウ.段落[0028]
「[0028] Fig. 3 is a front view of the device. The front housing 50 has several openings to incorporate a plurality of input and output devices. A speaker 62, display 22, keyboard 32 and microphone (not shown) are preferably mounted within the front surface 50 of the device housing. ・・・(後略)」
([0028] 図3はデバイスの前面図である。前ハウジング50は複数の入力および出力デバイスを組み込むためのいくつかの開口部を有している。デバイスハウジングの前面50内には、好ましくはスピーカ62と、ディスプレイ22とキーボード32とマイクロフォン(図示せず)とが搭載されている。・・・(後略))

エ.段落[0048]
「[0048] Figure 9 illustrates an embodiment of the present invention wherein the standard DTMF keypad layout 32C is reproduced in the center of keyboard 32. Rows 31, 33 and 35 provide the three rows of a standard QWERTY keyboard. The '*' key, in conjunction with the 'ALT' key found below the leftmost key in row 35 is used to change between alphabetic and numeric modes. When in alphabetic mode, the '#' key serves as either a 'SHIFT' or a 'CAPS LOCK' value, so that capital letters can be entered. This layout provides a keyboard configuration where no more than two alphabetic values are assigned to a single key. The '0' key, when in the alphabetic mode, serves as the 'SPACE BAR'. The 'BACKSPACE' key is provided as the rightmost key in row 35, and the 'ENTER' key is provided below 'BACKSPACE' key.」
([0048] 図9は、標準DTMFキーパッドレイアウト32Cがキーボード32の中心において再生される本発明の実施形態を例示する。行31、33および35は、標準QWERTYキーボードの3つの行を提供する。「*」キーは、行35における最も左のキーの下に見られる「ALT」キーとともに、アルファベットと数字モードとの間で変更するため使用される。アルファベットモードの場合、「#」キーは、「SHIFT」または「CAPS LOCK」値のいずれかとして働くので、大文字が入力され得る。このレイアウトは、1つのキーに2つ以下のアルファベット値が割り当てられるキーボード構成を提供する。「0」キーは、アルファベットモードの場合、「SPACE BAR」として働く。「BACKSPACE」キーは、行35における最も右のキーとして提供され、かつ「ENTER」キーは、「BACKSPACE」キーの下に提供される。)

オ.段落[0054]
「[0054] (前略)・・・Using predictive text input, the keystroke interpreter obtains a string of key strokes matching the obtained string against a database of strings, which correspond to words. ・・・(後略)」
([0054](前略)・・・予測テキスト入力を使用すると、キーストロークインタプリタは、単語に対応するストリングのデータベースに対して得られたストリングに一致するキーストロークストリングを得る。・・・(後略))

カ.Figure9の図示
Figure9(図9)には、以下の事項について図示されていることを看取できる。
(ア)キーが、4行及び5列を有する格子状に配列されており、該4行は、第1行、第2行、第3行、第4行を順番に含み、該5列は、第1列、第2列、第3列、第4列、第5列を順番に含んでいること。
(イ)AからZまでの文字の印を有する14個のキーからなる英文字のキーセットであって、該AからZまでの文字の印は、該英文字のキーセットの該14個のキーに関連付けられており、該文字は、QWERTY配列で配列されていること。
(ウ)0から9までの数字の印を有する複数のキーからなる数字のキーセットであって、該0から9までの数字の印は、該数字のキーセットの該複数のキーに関連付けられており、該数字は、QWERTY配列の9個のキーにオーバーレイされる数字の標準DTMFキーパッドレイアウトで配列されている、数字のキーセットが存在すること。
(エ)14個のキーからなる英文字のキーセットのうちの「L」の文字及び「Z」の文字キーについては、2個よりも少ない文字の印を有し、その他の文字キーについては、1個よりも多くの文字の印を有していること。
(オ)標準DTMFキーパッドレイアウトで配列されているキーパッドは、第1行、第2行、第3行、第4行におけるキーに関連付けられており、該第1行におけるキーは、該第2列において数字「1」を含み、該第3列において数字「2」を含み、該第4列において数字「3」を含み、該第2行におけるキーに関連付けられた該キーパッドは、該第2列において数字「4」を含み、該第3列において数字「5」を含み、該第4列において数字「6」を含み、該第3行におけるキーに関連付けられた該キーパッドは、該第2列において数字「7」を含み、該第3列において数字「8」を含み、該第4列において数字「9」を含み、該第4行におけるキーに関連付けられた該キーパッドは、該第2列において「*」を含み、該第3列において数字「0」を含み、該第4列において「#」を含んでいること。

キ.引用例1記載の発明
上記イ.に摘示する「PCB上で必要なドームスイッチ」という記載からみて、上記ア.及びウ.ないしエ.でいう「キーボード」が物理キーボードであることは、明らかである。
以上の記載事項や図面の図示を、技術常識をふまえて、本願発明の記載に沿って整理すると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されていると認める。
「物理キーボードを有するデュアルモードハンドヘルド通信デバイスであって、
該デバイスは、
前ハウジング50と、
文字の印に関連付けられたキーと信号通信するキーストロークインタープリタであって、テキスト入力の間に予測テキストルーチンを用いるキーストロークインタープリタと
を備え、
該前ハウジング50は、該前ハウジング50の前表面に配置された複数のキーを有し、
該複数のキーは、4行および5列を有する格子に配列されており、該4行は、第1行、第2行、第3行、第4行を順番に含み、該5列は、第1列、第2列、第3列、第4列、第5列を順番に含み、
該複数のキーは、
AからZまでの文字の印を有する14個のキーからなる英文字のキーセットであって、該AからZまでの文字の印は、該英文字のキーセットの該14のキーに関連付けられており、該文字は、QWERTY配列で配列されている、英文字のキーセットと、
0から9までの数字の印を有する複数のキーからなる数字のキーセットであって、該0から9までの数字の印は、該数字のキーセットの該複数のキーに関連付けられており、該数字は、該QWERTY配列の9個のキーにオーバーレイされる数字の標準DTMFキーパッドレイアウトで配列されている、数字のキーセットと
を含み、
該14個のキーからなる英文字のキーセットのキーは、26個未満であり、これにより、該英文字のキーセットの少なくとも一部の各キーは、各キーに関連付けられた1個よりも多くの文字の印を有するか、2個よりも少ない文字の印を有し、
該数字および該文字は、キーボードレイアウトにおいて同時に配列および表示され、これにより、該キーボードを用いた通話およびテキスト入力の配置が容易にされ、
該標準DTMFキーパッドレイアウトで配列されているキーパッドは、該第1行、第2行、第3行、第4行におけるキーに関連付けられており、該第1行におけるキーは、該第2列において数字「1」を含み、該第3列において数字「2」を含み、該第4列において数字「3」を含み、該第2行におけるキーに関連付けられた該キーパッドは、該第2列において数字「4」を含み、該第3列において数字「5」を含み、該第4列において数字「6」を含み、該第3行におけるキーに関連付けられた該キーパッドは、該第2列において数字「7」を含み、該第3列において数字「8」を含み、該第4列において数字「9」を含み、該第4行におけるキーに関連付けられた該キーパッドは、該第2列において「*」を含み、該第3列において数字「0」を含み、該第4列において「#」を含んでいる、デュアルモードハンドヘルド通信デバイス。」


(2)引用例2の開示事項及び引用例2開示の技術的事項
原査定で通知した平成23年4月13日付け拒絶理由通知書で引用した、本願優先日前に電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった.“カラー液晶&キーボード&トラックホイール搭載「BlackBerry 7730」が発売”,[online],毎日コミュニケーションズ,2003年11月27日,[平成23年4月13日検索],インターネット<URL:http://journal.mycom.co.jp/news/2003/11/27/16.html>(以下、引用例2という。)には、以下の事項が開示されている。

ア.引用例2の文章の開示
引用例2には、「カナダのResearch In Motion(RIM)は、カラー液晶ディスプレイを搭載した携帯電話一体型PDA「BlackBerry 7730」を、欧州市場に向けて発売した。」という文章の開示、及び「BlackBerry 7730は、65,000色表示の見やすいカラー液晶ディスプレイを標準装備。バックライトで夜間も快適に入力できるQWERTYキーボードに加え、右側面には片手でも快適操作できるトラックホイールを備えている。」という文章の開示がある。

イ.引用例2の図面の図示
引用例2には、「BlackBerry 7730」という表題の図面が示されており、当該図面には、以下の事項について図示されていることを看取できる。
(ア)キーが、3行及び10列を有する格子状に配列されており、その格子状のキーの下側に、さらに3つのキーが配列されていること。
(イ)AからZまでの文字の印を有する26個のキーからなる英文字のキーセットであって、該AからZまでの文字の印は、該英文字のキーセットの該26個のキーに関連付けられており、該文字は、QWERTY配列で配列されていること。
(ウ)0から9までの数字の印を有する複数のキーからなる数字のキーセットであって、該0から9までの数字の印は、該数字のキーセットの該複数のキーに関連付けられており、該数字は、QWERTY配列の9個のキーにオーバーレイされる、電話キーパッドの配列で配列されている、数字のキーセットが存在すること。
(エ)数字のキーセットによってオーバーレイされない英文字のキーセットのキー(例えば、第1行第1列の「Q」)は、白の地色に黒文字で表示され、数字のキーセットの数字部分は、灰色の地色に白数字で表示され、数字のキーセットの英文字部分は、白色の地色に黒文字で表示されていること。

ウ.引用例2開示の技術的事項
以上の開示事項を、技術常識をふまえて、本願発明の記載に沿って整理すると、引用例2には、以下の技術的事項(以下、「引用例2開示の技術的事項」という。)が示されていると認める。
「携帯電話一体型PDA装置であって、
該装置は、ハウジングを備え、
該ハウジングは、該ハウジングの前表面に配置された複数のキーを有し、該複数のキーは、3行および10列を有する格子と、当該格子の下に3つのキーが配列されており、
該複数のキーは、
AからZまでの文字の印を有する26個のキーからなる英文字のキーセットであって、該AからZまでの文字の印は、該英文字のキーセットの該26個のキーに関連付けられており、該文字は、QWERTY配列で配列されている、英文字のキーセットと、
0から9までの数字の印を有する複数のキーからなる数字のキーセットであって、該0から9までの数字の印は、該数字のキーセットの該複数のキーに関連付けられており、該数字は、QWERTY配列の9個のキーにオーバーレイされる、電話キーパッドの配列で配列されている、数字のキーセットと
を含み、
該数字および該文字は、キーボードレイアウトにおいて同時に配列および表示され、これにより、該キーボードを用いた通話およびテキスト入力の配置が容易にされ、
該数字のキーセットは、該数字のキーセットによってオーバーレイされない該英文字のキーセットのキーとは色に基づいて区別されており、該数字のキーセットの各キーは、灰色の数字表示部分と、白色の英文字表示部分とを有し、
該数字表示部分は、該数字表示部分に関連付けられた数字の印を有し、該英文字表示部分は、該英文字表示部分に関連付けられた文字の印を有し、これにより、該数字の印は、該文字の印とは区別される、携帯電話一体型PDA装置。」


4.対比
本願発明と、引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「デュアルモードハンドヘルド通信デバイス」は、持ち運び可能な通信装置を意味するから、本願発明の「携帯式移動通信装置」に相当する。
また、引用例1記載の発明の「4行および5列を有する格子」が、本願発明の「少なくとも4行および少なくとも5列を有する格子」に相当し、同様に、「14個のキー」が「少なくとも12個のキー」に相当し、「英文字のキーセット」が「第1のキーセット」に相当し、「QWERTY配列」が「標準的なアルファベットキーボードの配列」に相当し、「前ハウジング50」が「ハウジング」に相当することは、明らかである。
また、引用例1記載の発明の「数字のキーセット」が、本願発明の「第2のキーセット」に相当する。そして、引用例1記載の発明において「QWERTY配列の9個のキーにオーバーレイされる」ことは、標準的なアルファベットキーボードの配列の14個のキーのうちの9個のキーの表面に重畳することを意味するから、本願発明において「標準的なアルファベットキーボードの配列の上に少なくとも部分的にオーバーレイされる」ことに相当する。また、引用例1記載の発明の「標準DTMFキーパッドレイアウト」は、いわゆるプッシュホンのキーパッドの配列を意味するから、本願発明の「電話キーパッドの配列」に相当し、「標準DTMFキーパッドレイアウトで配列されているキーパッド」は、「電話キーパッド」に相当する。

以上から、本願請求項1に係る発明と引用例1記載の発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「物理キーボードを有する携帯式移動通信装置であって、
該装置は、
ハウジングと、
文字の印に関連付けられたキーと信号通信するキーストロークインタープリタであって、テキスト入力の間に予測テキストルーチンを用いるキーストロークインタープリタと
を備え、
該ハウジングは、該ハウジングの前表面に配置された複数のキーを有し、
該複数のキーは、少なくとも4行および少なくとも5列を有する格子に配列されており、該少なくとも4行は、第1行、第2行、第3行、第4行を順番に含み、該少なくとも5列は、第1列、第2列、第3列、第4列、第5列を順番に含み、
該複数のキーは、
AからZまでの文字の印を有する少なくとも12個のキーからなる第1のキーセットであって、該AからZまでの文字の印は、該第1のキーセットの該少なくとも12個のキーに関連付けられており、該文字は、標準的なアルファベットキーボードの配列で配列されている、第1のキーセットと、
0から9までの数字の印を有する複数のキーからなる第2のキーセットであって、該0から9までの数字の印は、該第2のキーセットの該複数のキーに関連付けられており、該数字は、該標準的なアルファベットキーボードの配列の上に少なくとも部分的にオーバーレイされる数字の電話キーパッドの配列で配列されている、第2のキーセットと
を含み、
該少なくとも12個のキーからなる第1のキーセットのキーは、26個未満であり、これにより、該第1のキーセットの少なくとも一部の各キーは、各キーに関連付けられた1個よりも多くの文字の印を有するか、2個よりも少ない文字の印を有し、
該数字および該文字は、キーボードレイアウトにおいて同時に配列および表示され、これにより、該キーボードを用いた通話およびテキスト入力の配置が容易にされ、
該電話キーパッドは、該第1行、第2行、第3行、第4行におけるキーに関連付けられており、該第1行におけるキーは、該第2列において数字「1」を含み、該第3列において数字「2」を含み、該第4列において数字「3」を含み、該第2行におけるキーに関連付けられた該電話キーパッドは、該第2列において数字「4」を含み、該第3列において数字「5」を含み、該第4列において数字「6」を含み、該第3行におけるキーに関連付けられた該電話キーパッドは、該第2列において数字「7」を含み、該第3列において数字「8」を含み、該第4列において数字「9」を含み、該第4行におけるキーに関連付けられた該電話キーパッドは、該第2列において「*」を含み、該第3列において数字「0」を含み、該第4列において「#」を含んでいる、携帯式移動通信装置。」である点。

<相違点>
本願発明は、「第2のキーセットは、該第2のキーセットによってオーバーレイされない第1のキーセットのキーとは色に基づいて区別されており、該第2のキーセットの各キーは、第1の色の第1の部分と、第2の色の第2の部分とを有し、該第1の部分は、該第1の部分に関連付けられた数字の印を有し、該第2の部分は、該第2の部分に関連付けられた文字の印を有し、これにより、該数字の印は、該文字の印とは区別される」ものであるのに対して、引用例1記載の発明は、「数字のキーセット」や「英文字のキーセット」の彩色について不明である点。


5.相違点についての検討及び判断
上記相違点について検討するため、引用例2開示の技術的事項を参照して、本願発明と対比すると、引用例2開示の技術的事項における「携帯電話一体型PDA装置」は、本願発明の「物理キーボードを有する携帯式移動通信装置」に相当し、以下同様に、「英文字のキーセット」が「第1のキーセット」に相当し、「QWERTY配列」は「標準的なアルファベットキーボードの配列」に相当し、「数字のキーセット」が「第2のキーセット」に相当し、「QWERTY配列の9個のキーにオーバーレイされる」ことは「標準的なアルファベットキーボードの配列の上に少なくとも部分的にオーバーレイされる」ことに相当する。
また、引用例2開示の技術的事項における「灰色の数字表示部分」が、本願発明における「第1の色の第1の部分」に相当し、以下同様に、「白色の英文字表示部分」が「第2の色の第2の部分」に相当し、「数字表示部分は、該数字表示部分に関連付けられた数字の印を有し」ていることが、「第1の部分は、該第1の部分に関連付けられた数字の印を有し」ていることに相当し、「英文字表示部分は、該英文字表示部分に関連付けられた文字の印を有し」ていることが、「第2の部分は、該第2の部分に関連付けられた文字の印を有し」ていることに相当する。

引用例2開示の技術的事項を、本願発明の用語を用いて整理すると、
「物理キーボードを有する携帯式移動通信装置であって、
該装置は、ハウジングを備え、
該ハウジングは、該ハウジングの前表面に配置された複数のキーを有し、該複数のキーは、3行および10列を有する格子と、当該格子の下に3つのキーが配列されており、
該複数のキーは、
AからZまでの文字の印を有する26個のキーからなる第1のキーセットであって、該AからZまでの文字の印は、該第1のキーセットの該26個のキーに関連付けられており、該文字は、標準的なアルファベットキーボードの配列で配列されている、第1のキーセットと、
0から9までの数字の印を有する複数のキーからなる第2のキーセットであって、該0から9までの数字の印は、該第2のキーセットの該複数のキーに関連付けられており、該数字は、標準的なアルファベットキーボードの配列の上に少なくとも部分的にオーバーレイされる、電話キーパッドの配列で配列されている、第2のキーセットと
を含み、
該数字および該文字は、キーボードレイアウトにおいて同時に配列および表示され、これにより、該キーボードを用いた通話およびテキスト入力の配置が容易にされ、
該第2のキーセットは、該第2のキーセットによってオーバーレイされない該第1のキーセットのキーとは色に基づいて区別されており、該第2のキーセットの各キーは、第1の色の第1の部分と、第2の色の第2の部分とを有し、
該第1の部分は、該第1の部分に関連付けられた数字の印を有し、該第2の部分は、該第2の部分に関連付けられた文字の印を有し、これにより、該数字の印は、該文字の印とは区別される、携帯式移動通信装置。」となり、上記相違点に係る事項は、引用例2開示の技術的事項に示されている。
そして、引用例1記載の発明と、引用例2開示の技術的事項とは、携帯式移動通信装置という技術分野に関して共通するし、携帯式移動通信装置がキーボードを有しており、当該キーボードには、数字がオーバーレイされた英文字のキーと、数字がオーバーレイされていない英文字のキーとが存在するというレイアウトについても共通している。
また、キーボードを利用して誤りなく入力を行うためには、それぞれのキーと、入力しようとする文字や数字との関係を正しく認識する必要があることは、当然の前提であって、同じキーが、文字だけでなく数字の入力にも利用可能な場合には、当該キーと文字との関係を認識するだけでなく、当該キーと数字との関係も正しく認識しなければならない。そして、上記3.(2)ウ.に示す、引用例2開示の技術的事項のように、同じキーが、文字だけでなく数字の入力にも利用可能な場合に、灰色の数字表示部分と、白色の英文字表示部分とが存在すれば、当該キーと数字との関係や、当該キーと英文字との関係を、それぞれ正しく認識できることは、明らかである。引用例1記載の発明における第2のキーセットの数字は、標準的なアルファベットキーボードの配列の上に少なくとも部分的にオーバーレイされる数字の電話キーパッドの配列で配列されているから、同じキーが、文字だけでなく数字の入力にも利用可能であって、キーと文字との関係や、キーと数字との関係を正しく認識する必要がある以上、引用例1記載の発明のキーボードに引用例2開示の技術的事項を適用して、「第2のキーセットは、該第2のキーセットによってオーバーレイされない第1のキーセットのキーとは色に基づいて区別されており、該第2のキーセットの各キーは、第1の色の第1の部分と、第2の色の第2の部分とを有し、該第1の部分は、該第1の部分に関連付けられた数字の印を有し、該第2の部分は、該第2の部分に関連付けられた文字の印を有し、これにより、該数字の印は、該文字の印とは区別される」ように構成することは、当業者が容易に想到できた事項である。


6.むすび
したがって、本願請求項1に係る発明は、上記引用例1記載の発明、及び引用例2開示の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項2ないし12に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-09 
結審通知日 2012-10-10 
審決日 2012-10-24 
出願番号 特願2009-155936(P2009-155936)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩橋 龍太郎  
特許庁審判長 豊原 邦雄
特許庁審判官 長屋 陽二郎
刈間 宏信
発明の名称 キーボード配置  
代理人 大塩 竹志  

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