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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2010800182 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01N
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  G01N
審判 全部無効 2項進歩性  G01N
管理番号 1271338
審判番号 無効2011-800160  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-09-06 
確定日 2013-02-15 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4662580号発明「自動化診断用分析器および方法」の特許無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
1 出願手続経緯
本件特許第4662580号に係る出願は,平成11年4月30日(パリ条約による優先権主張 1998年5月1日 米国)を国際出願日として特許出願された特願2000-547476号の一部を,平成19年6月6日に新たな出願として出願したものであり,本件出願の手続の経緯の概要は,以下のとおりである。

平成19年 6月 6日 本件特許出願(特願2007-151041号)
平成23年 1月14日 特許権の設定登録

2 審判手続経緯
これに対して,請求人より平成23年9月6日に本件無効審判の請求がなされたものであり,本件無効審判における手続の経緯の概要は,以下のとおりである。

平成23年 9月 6日 無効審判請求(甲第1?14号証,甲第2?6,
8,10,14号証の抄訳)
平成24年 2月13日 訂正請求
2月13日 答弁書(乙第1?19号証,乙第1?11,13
?17,19号証の抄訳)
5月11日 弁駁書(甲第2,4,5,10号証の抄訳(追加
),甲第15?25号証,甲第17?23号証の
抄訳)
6月18日 審理事項通知書
8月28日 口頭審理陳述要領書(請求人,甲第26?29号
証,甲第4号証の抄訳(追加),甲第27?28
号証の抄訳)
8月28日 口頭審理陳述要領書(被請求人,乙第3,16号
証の抄訳(追加),乙第20?23号証,乙第2
0?23号証の抄訳)
9月 7日 口頭審理陳述要領書(2)(被請求人)
9月11日 第1回口頭審理
9月11日 審理終結
9月25日 上申書(被請求人)
9月26日 上申書(請求人,甲第30?31号)

第2 訂正請求について
1 本件訂正請求の内容
平成24年2月13日付け訂正請求書による訂正(以下「本件訂正請求」という)の内容は,本件特許明細書を,訂正請求書に添付した全文訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり,以下のとおりである(下線部は訂正箇所である)。

本件訂正は,本件特許の特許請求の範囲について,
「【請求項1】
核酸に基づく増幅反応を実施するためのプロセスであって、該プロセスは、分析器内において以下の自動化工程:
a)該分析器の処理デッキ上の第一位置に配置された分離ステーションにおいて、該分析器内で磁気応答性の固体支持体上に固定化された標的核酸を、流体試料中に存在する他の材料から分離する工程であって、該分離ステーションは、該処理デッキ上に配置された複数のステーションのうちの1つである、工程;
b)該分析器の該処理デッキ上の第二位置に配置された増幅ステーションにおいて、前記分離された標的核酸を、反応受容器中で1つ以上の増幅試薬とともに、該標的核酸中に含まれる標的配列を増幅させるのに十分な時間および条件下でインキュベートする工程であって、該反応受容器は、開放頂部端と閉鎖底部端とを有するように形成されており、該増幅ステーションは該処理デッキ上に配置された該複数のステーションのうちの1つである、工程;ならびに
c)該分離された標的核酸を含む反応受容器を、工程b)の前に該増幅ステーションへと運搬する工程、
を実施することを包含し、
コンピュータコントローラが、異なるステーションに位置する異なる反応受容器において複数の異なるアッセイ手順を同時に実施するために、該複数のステーションを並行して操作し、
該複数のステーションは、ハウジング内に含まれ、
該自動化工程は操作者の仲介なしに実施される、
プロセス。
【請求項2】
前記自動化工程は、前記工程b)の後に、前記反応受容器にプローブを提供する工程をさらに包含し、該プローブの提供は、該プローブを、前記標的配列または該標的配列もしくはその相補体を含むアンプリコンにハイブリダイズするのに十分な時間および条件下でなされる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記プローブが、検出可能な標識を含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記標識が、蛍光色素または化学発光化合物である、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記自動化工程は、前記流体試料中の生物またはウイルスの標的群のメンバーの存在または不存在の指標として、前記標的配列または該標的配列もしくはその相補体を含むアンプリコンにハイブリダイズされた前記プローブの存在または不存在を検出する工程をさらに包含し、該標的群は、少なくとも1つの生物またはウイルスからなる、請求項2?4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記検出する工程が、前記流体試料中の生物またはウイルスの標的群のメンバーの存在または不存在の指標として、前記反応受容器から発生した光の量を決定することを含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記自動化工程は、前記流体試料中の生物またはウイルスの標的群のメンバーの量を決定する工程をさらに包含する、請求項5または請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
請求項2?7のいずれか一項に記載のプロセスであって、前記自動化工程は、前記プローブを、前記反応受容器に提供する前に、該反応受容器を、前記増幅ステーションから、前記処理デッキ上の第三位置において配置された温度制御ハイブリダイゼーションステーションに運搬する工程をさらに包含する、プロセス。
【請求項9】
前記プローブが、前記反応受容器の前記増幅ステーションから前記ハイブリダイゼーションステーションへの運搬の後に、該反応受容器に提供される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載のプロセスであって、前記自動化工程は、前記反応受容器を前記ハイブリダイゼーションステーションから前記処理デッキ上の第四位置に配置された検出ステーションに運搬する工程をさらに包含し、ここで、ハイブリダイズされたプローブの存在または量が、該検出ステーションにおいて決定される、プロセス。
【請求項11】
前記検出ステーションが、前記反応受容器の内容物により発生した光の量を決定するための照度計を備える、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記自動化工程は、前記増幅ステーションへの前記反応受容器の運搬の前に、該反応受容器の内容物の温度を上昇または降下させる工程をさらに包含する、請求項1?11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記自動化工程は、前記増幅ステーションおよび前記ハイブリダイゼーションステーションのうち少なくとも1つへの前記反応受容器の運搬の前に、該反応受容器の内容物の温度を上昇または降下させる工程をさらに包含する、請求項8?11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記自動化工程は、前記反応受容器中に存在する核酸を破壊するための不活性化試薬を、該反応受容器に提供する工程をさらに包含する、請求項1?13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記不活性化試薬が、過マンガン酸カリウムの溶液、ギ酸、次亜塩素酸ナトリウムの溶液、ヒドラジンおよび硫酸ジメチルからなる群より選択される化学薬品を含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
請求項14または請求項15に記載のプロセスであって、前記自動化工程は、前記不活性化試薬を前記反応受容器に提供する前に、該反応受容器を、前記検出ステーションから前記処理デッキ上の第五位置に配置された不活性化ステーションに運搬する工程をさらに包含する、プロセス。
【請求項17】
前記標的核酸が前記固体支持体上に固定化される前に、該標的核酸が、捕捉プローブにハイブリダイズされる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記流体試料が、前記分離する工程の間に磁場に供される、請求項1?17のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記運搬する工程の各々が、受容器運搬機構を用いて実施される、請求項1?18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記増幅ステーションにおいて前記反応受容器の内容物をインキュベートする前に、該反応受容器に、油層が提供される、請求項1?19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
請求項1?20のいずれか一項に記載のプロセスであって、前記反応受容器が、一体化されて形成された複数の反応受容器のうちの1つを含む、プロセス。
【請求項22】
前記複数の反応受容器の各反応受容器は、同じかまたは異なる流体試料を含み、該同じかまたは異なる流体試料は、該各反応受容器中の該同じかまたは異なる流体試料中に存在し得る同じかまたは異なる標的核酸を同時に分離および増幅するためのものである、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記複数の反応受容器の各反応受容器が円筒形管である、請求項21または22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記ハウジングが、自給型の分析器ユニットを規定する、請求項1?23のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項25】
前記分析器ユニットが可動式である、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記他の材料が非ハイブリダイズ核酸を含む、請求項1?25のいずれか一項に記載のプロセス。
」と訂正するものである。

2 当審の本件訂正請求についての判断
(1)請求項1において,「分析器内において」,「該分析器の」および「該分析器内で」を追加する訂正

この訂正は,明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当することは,明らかである。

(2)請求項1において,「該増幅ステーションは該処理デッキ上に配置された該複数のステーションのうちの1つである」を追加する訂正

この訂正は,明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当することは,明らかである。

(3)請求項1において,「実施することを」を追加する訂正

この訂正は,明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当することは,明らかである。

(4)請求項1において,「該複数のステーションは、ハウジング内に含まれ」を追加する訂正

「ハウジング」は訂正前の請求項1?23を引用する請求項24に記載された事項であり,請求項1に「ハウジング」を追加する訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当することは,明らかである。
そして,本件特許明細書の段落【0023】における「(好ましい実施形態の詳細な説明)(分析器概要) 本発明に従った自動化診断分析器は,図1および2において一般に参照番号50により示される。分析器50は,好適には鋼で作製された内部フレーム構造62上に構築されたハウジング60を含む。」との記載,同段落【0024】における「自動化アッセイを行うことに伴う多様なステーションおよびアッセイ標本は,ハウジング60内に収容される。加えて,多様な溶液,試薬およびその他のアッセイを行うのに使用される材料が,好ましくはハウジング60内に格納され,アッセイが分析器50を用いて行われるときに生成する廃物も同様である。」(下線は当審により付記したものである。以下同様。)との記載からみて,「ハウジング」が記載されていることは明らかであり,上記訂正は,願書に最初に添付した明細書または図面に記載した範囲内においてしたものであるといえる。

(5)請求項1において,「該自動化工程は操作者の仲介なしに実施される」を追加する訂正

この訂正は,明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当することは,明らかである。

(6)請求項2において,「前記反応受容器に、プローブを、該プローブを、前記標的配列または該標的配列もしくはその相補体を含むアンプリコンにハイブリダイズするのに十分な時間および条件下で、提供する自動化工程をさらに包含する」を「前記自動化工程は、前記工程b)の後に、前記反応受容器にプローブを提供する工程をさらに包含し、該プローブの提供は、該プローブを、前記標的配列または該標的配列もしくはその相補体を含むアンプリコンにハイブリダイズするのに十分な時間および条件下でなされる」とする訂正

この訂正は,明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当することは,明らかである。

(7)請求項5,7,12,13および14において,「・・・・・自動化工程をさらに包含」を「前記自動化工程は、・・・・・工程をさらに包含」とする訂正

この訂正は,明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当することは,明らかである。

(8)請求項8,10および16において,「・・・・・該プロセスは、・・・・・自動化工程をさらに包含」を「・・・・・前記自動化工程は、・・・・・工程をさらに包含」とする訂正

この訂正は,明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当することは,明らかである。

(9)請求項22において,「前記複数の受容器のうちの各受容器容器は、同じかまたは異なる標的核酸を同時に分離し、該受容器容器の流体サンプル中に存在し得る同じかまたは異なる標的配列を増幅するための同じかまたは異なる流体サンプルを含む」を「前記複数の反応受容器の各反応受容器は、同じかまたは異なる流体試料を含み、該同じかまたは異なる流体試料は、該各反応受容器中の該同じかまたは異なる流体試料中に存在し得る同じかまたは異なる標的核酸を同時に分離および増幅するためのものである」とする訂正

この訂正は,明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当することは,明らかである。

なお,この訂正について請求人は,「図58や多試験管ユニットの節からは反応受容器の形状しか読み取れず、答弁書で説明した内容に相当する記載は見当たらない。従って、訂正後の請求項22において説明されているような各反応受容器に含まれる得る流体試料の種類やその反応の手順については明示されておらず、訂正の根拠が不十分であると言わざるを得ない。」(弁駁書58頁6?11行)あるいは「しかしながら、図58や多試験管ユニットの節には容器の内容物についての記載は一切見当たらない。特に、訂正の根拠として挙げられた上記段落等において、当該反応受容器が如何なるサンプルを含み、また、当該サンプルが如何なるタイミングで分離や増幅にかけられるかについては何ら説明がなされていない。ましてや、訂正前のイ)『同時に』分離される『同じかまたは異なる標的核酸』と、ロ)増幅される『同じかまたは異なる標的配列』とが同一の標的核酸であり、且つ、これらが『同時に』分離・増幅されることが本件特許明細書の記載により支持されていないことは明らかである。」(口頭審理陳述要領書4頁3?11行)として,請求項22に係る訂正は訂正要件を満たしていないと主張している。
しかしながら,多試験管ユニットである「前記複数の反応受容器」,すなわち,「一体化されて形成された複数の反応受容器」は,図58および段落【0073】?【0081】に明記されており,この多試験管ユニットの各反応受容器に,「同じかまたは異なる流体試料」が含まれる,すなわち,「同一種の流体試料」あるいは「複数種の流体試料」が収容されることは,本件特許明細書の段落【0015】の記載からみて明らかである。そして,複数の多試験管ユニットが,同時に並行して「分離」あるいは「増幅」の処理が実施されることも,同様に,同段落【0021】の記載からみて明らかである。したがって,上記請求人の主張は採用できない。

(10)請求項23において,「前記受容器の各々」を「前記複数の反応受容器の各反応受容器」とする訂正

この訂正は,明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当することは,明らかである。

(11)「【請求項25】・・・・・請求項24に記載のプロセス。」を「【請求項24】・・・・・請求項1?23のいずれか1項に記載のプロセス。」とする訂正

この訂正は,上記請求項1の減縮訂正にともなうものであって,明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当することは,明らかである。

(12)「【請求項26】・・・・・請求項25に記載のプロセス。」を「【請求項25】・・・・・・請求項24に記載のプロセス。」とする訂正

この訂正は,上記請求項1の減縮訂正にともなうものであって,明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当することは,明らかである。

(13)「【請求項27】・・・・・請求項1?26のいずれか一項に記載のプロセス。」を「【請求項26】・・・・・請求項1?25のいずれか一項に記載のプロセス。」とする訂正

この訂正は,上記請求項1の減縮訂正にともなうものであって,明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当することは,明らかである。

3 まとめ
してみると,訂正事項(1)?(13)は,特許請求の範囲の減縮および明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し,新規事項を追加するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものでもない。
以上のとおり,本件訂正請求は,平成23年法改正前の特許法134条の2第5項において準用する同法126条3項および4項の規定に適合し,また,上記訂正事項は,同法134条の2ただし書きに適合するから,当該訂正を認める。

第3 本件発明
以上のように,本件訂正請求が認められることから,本件特許の請求項1?26に係る発明は,上記訂正請求により訂正された特許明細書の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1?26に記載された事項により特定される上記「 1 本件訂正請求の内容」にて記載されたとおりのものである(以下「本件発明1」?「本件発明26」という)。

第4 当事者の主張
1 請求人の主張
審判請求書,弁駁書および口頭審理陳述要領書によれば,請求人は,請求項22についての訂正は認められず,訂正後の本件発明1?26は,特許法29条2項の規定によって特許を受けることができないものであって,本件発明1?26に付与された本件特許は同法123条1項2号の規定により無効とすべきものであると主張して下記甲第2?31号証を提出し,また,訂正後の本件発明1?26は,同法36条4項および同法36条6項1号の規定によって特許を受けることができないものであり,訂正後の本件発明22?26は,同法36条6項2号の規定によって特許を受けることができないものであって,本件発明1?26に付与された本件特許は同法123条1項4号の規定により,無効とすべきものであると主張している。

(1)甲第1号証:特許第4662580号公報(本件特許明細書)
(2)甲第2号証:Automated Sample Processing Using Robotics for Genetic Typing of Short Tandem Repeat Polymorphisms by Capillary Electrophoresis, by Phillip Belgrader and Michael A.Marino, Laboratory Robotics and Automation, Vol.9, pp.3-7,(1997)
(3)甲第3号証:A Magnetic Attraction to High-Throughput Genomics, Trevor L.Hawkins et.al., SCIENCE, Vol.276, 第1887頁及び第1889頁(第1888頁は広告のみのため省略)
(4)甲第4号証:国際公開第93/25912号
(5)甲第5号証:COBAS AMPLICOR: fully automated RNA and DNA amplification and detection system for routine diagnostic PCR, DiDomenico N et.al.,Clinical Chemistry 42(12), p.1915-23, (1996)
(6)甲第6号証:An Open Software Environment to Optimize the Productivity of Robotized Laboratories,Reto Buhlmann, Jorge Carmona, Alain Donzel, Nader Donzel, and Jose Gil, Journal of Chromatographic Science, Vol.32, pp.243-248, June 1994
(7)甲第7号証:特開平5-281239号公報
(8)甲第8号証:米国特許第5612200号公報
(9)甲第9号証:特開昭62-148858号公報
(10)甲第10号証:Experiment manager software for an automated chemistry workstation, including a scheduler for parallel experimentation, L.Andrew Corkan and Jonathan S.Lindsey, Original Research Paper, Laboratory Information Management, 17(1992), 47-74
(11)甲第11号証:特開平8-211071号公報
(12)甲第12号証:特開平10-62426号公報
(13)甲第13号証:Image of Techne PHC-3 Thermal cycler,download of vendorPegasus Scientific Inc.,http://www.pegasusscientific.com/detail.cfm?autonumber=67881
(14)甲第14号証:米国特許第4751177号公報
(15)甲第15号証:特許第4511034号の無効審判請求(無効2011-800049号)に対する平成24年2月7日付け審決
(16)甲第16号証:特開平7-107999号公報
(17)甲第17号証:Kinetic PCR Analysis:Real-time Monitoring of DNA Amplification Reaction,Russel Higuchi, Carita Fockler, Gavin Dollinger' and Robert Watson, Biotechnology 1993, 11(9), pp. 1026-1030
(18)甲第18号証:Automated DNA diagnostics using an ELISA-Based oligonucletide ligate assay, Nickerson, Deborah A. ; Kaiser, Robert; Lappin, Stephen; Stewart, Jason; Hood, Leroy; Landegren, Ulf, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 87 (22), pp. 8923-8927
(19)甲第19号証:Automated techniques in biotechnology, Rudi Pauwels, Hilde Azijn, Marie-Pierre de Bethune, Carine Claeys and Kurt Hertogs, Current Opinion in Biotechnology 1995, 6, pp. 111-117
(20)甲第20号証:Automation of Polymerase Chain Reaction Tests-Reduction of Human Errors Leading to Contamination-”,Werner W. Wilke et al., Diagnostic Microbiology and Infections Disease, 21(4): pp. 181-185, (1995)
(21)甲第21号証:Automation of Polymerase Chain Reaction Tests to Achieve Acceptable Contamination Rates, Werner W. Wilke et al., Clinical Chemistry, 41(4), pp. 622-623, (1995)
(22)甲第22号証:米国特許第5554516号公報
(23)甲第23号証:国際公開第01/44510号
(24)甲第24号証:特開平1-211500号公報
(25)甲第25号証:Evaluation of automated COBAS AMPLICOR PCR system for detection of several infectious agents and its impact on laboratory management, Donald Jungkind et al., Journal of Clinical Microbiology, pp. 2778-2783,(1996)
(26)甲第26号証:Journal of Biomolecular Screening, Society of Biochemical Screening Volume 1, Number 4, pp. 161-172, (1996)
(27)甲第27号証:PCR, C. R. Newton and A. Graham, 1997, pp.1-28
(28)甲第28号証:Cycle sequencing, K. Kretz et al., Genome Research, 1994 3: S107-S112
(29)甲第29号証:参考図「処理能力比較」
(30)甲第30号証:TIGRIS(登録商標)のウエブサイト, http://www. fujirebio.co.jp/products/nat.html
(31)甲第31号証:APPLIED BIOSYSTEMS PRODUCT CATALOGUE, 1993-1994, Applied Biosystems

2 被請求人の主張
これに対して,被請求人は,答弁書および口頭審理陳述要領書において,乙第1?23号証を提出して,上記無効理由は理由がないと主張している。

(1)乙第1号証:Belgraderら,Laboratory Robotics and Automation, 1997, Vol.9, p.3-7(甲第2号証と同じ)
(2)乙第2号証:Hawkinsら,Science 20 June 1997: 1887-1889(甲第3号証と同じ)
(3)乙第3号証:国際公開第93/25912号パンフレット(甲第4号証と同じ)
(4)乙第4号証:Krieg P.A.編,A Laboratory Guide to RNA, 1996, Wiley-Liss, p.210
(5)乙第5号証:White B.A.編,PCR Cloning Protocols, 1997, Humana Press Inc., p.4-5
(6)乙第6号証:Dennis Lo Y.M.編,Clinical Applications of PCR, 1998, Humana Press Inc., p.11-17
(7)乙第7号証:Uckunら,Blood, 1998, Vol.92, No.3, p.810-821
(8)乙第8号証:Farrell, RNA Methods, Second Edition, Academic Press, 1998, chapter 15, pp. 296-307
(9)乙第9号証:Riggioら,J. Med. Microbiol., 1999, Vol.48, 317-322
(10)乙第10号証:Leeら,J.Clin.Microbiol., 1998, Vol.36, No.10, p. 2887-2892
(11)乙第11号証:Leeら編,Nucleic Acid Amplification Technologies: Application to Disease Diagnosis, p.110
(12)乙第12号証の1:国際公開97/16561パンフレット
(13)乙第12号証の2:特表2000-500331号公報(乙第12号証の1の対応公表公報)
(14)乙第13号証:van Gemenら,PCR Methods and Applications,4: S177-S184(Cold Spring Harbor Laboratory 1995)
(15)乙第14号証:Stoneら,Molecular and Gellular Probes, 1996, 10, p.359-370
(16)乙第15号証:Findlayら,Clin. Chem., 1993, Vol.39, No.9, p.1927-1933
(17)乙第16号証:DiDomenicoら,Clin. Chem. 1996 Dec; 42(12): 1915-1923(甲第5号証と同じ)の抄訳文
(18)乙第17号証:Meltzer S.J.編,PCR in Bioanalysis, Humana Press Inc., p.1-29
(19)乙第18号証:特許庁のウェブサイト,http://www.jpo.go.jp/cqi/link.cqi?url=/shiryou/kijun/kijun2/tukujitu_casestudy.htm,平成23年8月9日ダウンロード
(20)乙第19号証:TIGRIS(登録商標)の宣伝広告用パンフレット
(21)乙第20号証:Experiment manager software for an automated chemistry workstation, including a scheduler for parallel experimentation, L.Andrew Corkan and Jonathan S.Lindsey, Original Research Paper, Laboratory Information Management, 17(1992), 47-74(甲第10号証と同じ)
(22)乙第21号証:Kinetic PCR Analysis:Real-time Monitoring of DNA Amplification Reaction,Russel Higuchi, Carita Fockler, Gavin Dollinger' and Robert Watson, Biotechnology 1993, 11(9), pp. 1026-1030(甲第17号証と同じ)
(23)乙第22号証:Automated DNA Diagnostics Using an ELISA-Based Oligonucletide Litigate Assay, Nickerson, Deborah A. ; Kaiser, Robert; Lappin, Stephen; Stewart, Jason; Hood, Lerroy; Landegren, Ulf, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 87 (22), pp. 8923-8927(甲第18号証と同じ)
(24)乙第23号証:Automation of Polymerase Chain Reaction Tests-Reduction of Human Errors Leading to Contamination-,Werner W. Wilke et al., Diagnostic Microbiology and Infections Disease, 21(4): pp. 181-185, (1995)(甲第20号証と同じ)

第5 各証拠およびその内容
以下,「甲第2号証」?「甲第31号証」を「甲2」?「甲31」と,「乙第1号証」?「乙第23号証」を「乙1」?「乙23」という。
なお,これら書証のうち日本語ではない原語で記載されたものについては,その翻訳について当事者に争いがないので,原文は省略し,その代替として当審,請求人あるいは被請求人の翻訳文を摘記する。

1 甲2について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲2には,「血染カードからのDNA精製とPCR増幅を自動化したロボティックシステム」に関して,次の事項が記載されている。

(甲2-ア)
「我々は,血染カード(bloodstain card)からのDNA精製と,PCR増幅とを,自動化され,連続したプロセスにおいて結合させる,ロボティックシステムを作製した。このシステムは,一日に多数の試料を処理することを可能とするものであり,周辺機器を必要に応じて追加したり性能向上することを可能にする組み立てユニットとして設計されている。現在の装置は,STRsからなるlociにより生成されるPCR増幅生成物を得るための,ロボティックシステムを用いたものも含んでいる。より作業時間を短縮するために,これらの生成物は,自動化されたキャピラリー電気泳動法により検出される。この方法は,ゲルの注入と,手動によるサンプルの装填を不要とするものである。」(3頁左欄1?14行)

(甲2-イ)
「我々は,処理能力の高い血染カードの処理システムを開発のためにロボティックスを利用する。血染カードは,我々の研究所において,DNA分類による軍人識別のために保存される参照試料を,収集し保存するために,日常的に用いられている。さらに,ますます多くの法の実施当局が,血染カードを,有罪判決を受けた重罪犯罪者や性犯罪者のDNAの保管とデータバンクを設立するために用いている。その結果,作製されるカードの数は急速に増えており,サンプル処理と分析のための高い処理能力をもったシステムの開発は不可欠となっている。この論文において,我々は,DNA精製と,STRlociのPCRを,自動化され,連続した手法において結合させる,ロボティックシステムについて説明する。結果として得られたPCR生成物は,自動化されたキャピラリー電気泳動法によって特徴付けられた。」(4頁左欄4?20行)

(甲2-ウ)
「試料
血染カード(Fitzco,Mineapolis,MN)は,6人の職員から得た血液により滴下され,空気乾燥され,-20℃にて保存された。パンチ(1/16インチ)は,カードから手作業で得られ,Cycloplate(Robbins Scientific,Sunnyvale,CA)と名付けられた,特別な96ウエル マイクロプレートに,一つのウエルに一つのパンチが入るように,納められた。」(4頁左欄22?28行)

(甲2-エ)
「ロボティックサンプル処理
ロボティックシステムは,4mの直線軌道にあるT265ロボティックアーム(CRS Robotics,Burlington,OT,Canada)と,MF-102 マイクロプレート供給ステーション(Eastern Technical Sales,Manchester,NH)と,液体処理ピペッティングステーション(Rosys,Wilmington,DE)と,ヒートブロックと,二つのProgene サーマルサイクラー(Techne,Princeton,NJ)と,マイクロプレートホルダー(Beckman,Columbia,MD)と,からなる。このシステムは,ヴァージョン4.3のRobocommソフトウエア(CRS Robotics)と,RAPL-IIプログラム言語(CRS Robotics)により,プログラム化されていた。
マイクロプレート供給部は,血染カードのパンチを納めたマイクロプレートをロボティックアームへ供給した。上記アームは,マイクロプレートをピペッティングステーションへ移送し,マイクロアンプチューブラック(Applied Biosystems Division/Perkin Elmer,Foster City,CA)の上へ配置した。これは,端部が離れた状態となっていた。上記アームは,マイクロプレートに,ピペットチップが通過するための孔を有した,特別な蓋をかぶせた。これらの孔は,時折吸引の際に上記チップに付着するパンチが,ウエルから取り出されないように,充分小さなものとされた。ピペッティングステーションは,それぞれのウエルに,200μLの毒性のないFTA精製試薬(Fitzco)を添加し,10分待ち,溶液を吸引した。FTA精製試薬による抽出は繰り返された。パンチは200μLのTE(1mM tris-HCl,0.5mM EDTA,pH8.0)により二回洗浄され,200μLのエタノールにより二回洗浄された。上記アームは,精製されたパンチを納めたマイクロプレートをヒートブロックに移送した。マイクロプレートは,パンチを乾燥させるために80℃で10分間培養され,その後,上記アームはマイクロプレートをピペッティングステーションに戻した。Amplitaq DNA ポリメラーゼ(Applied Biosystems Division/Perkin Elmer)が,PCR試薬(試薬3mLに対して,ポリメラーゼ25μL)に添加され,溶液はピペットを5回上下動させることで混合された。PCR試薬は1X STRバッファ(Promega,Madison,WI)と,vWA またはTHO1 STRプライマーペア(それぞれ5μM)(Promega)と,からなる。容積30μLのPCR混合物がそれぞれのウエルに添加され,その後,25μLの液体ワックス(MJ Research,Watertown,MA)が添加された。アームは,マイクロプレートをサーマルサイクラーへ配置し,サーマルサイクラーの加熱されたカバーは自動的に閉じられ,そしてサーマルサイクルは96℃で2分維持し,94℃で30秒,60℃で30秒及び70℃で30秒のサイクル10回:90℃で30秒,60℃で30秒,70℃で30秒及び70℃で10分のサイクル20回,とした。の条件によるサーマルサイクルが行われた。PCRが完了すると,サーマルサイクラーのカバーは開けられ,アームはマイクロプレートをマイクロプレートホルダーへと移送した。」(4頁左欄29行?同頁右欄30行)

(甲2-オ)
「結果と考察
・・・・・これは,血染カードのパンチ上のDNAの精製のための新しい手法を実施することによって,達成された。PCRのインヒビターが,パンチから抽出されたが,DNAは,パンチに対して強固に固定されたままとなり,その後,固相PCRにより増幅された。DNAがパンチから取り去られる従来の手法に比べたこの方法の有利な点は,マイクロプレートのウエル間でのDNAのクロスコンタミネーションが無くなる点である。」(5頁左欄1?16行)

(甲2-カ)
「この報告において示すロボティックシステム(Figure.1)は,試料処理における高い処理能力を実現し,我々の従来システムに対して大きな進歩を表すために,実用的なアプローチをするものである。システムは,直線トラック上のロボティックアーム,向上された液体処理によるピペッティングステーション,マイクロプレートに収容された9600の血染のパンチを収容可能なマイクロプレート供給部,ロボティックアームが接近可能で接続可能なように特に設計されたサーマルサイクラー,とを一体化させている。操作手順はRobocommソフトウエアとRAPL IIプログラム言語で記載され,これによりロボティックアームが自動的にパンチを有したマイクロプレートをマイクロプレート供給部から選択し,以下の各位置へ移送するのを指示する。(1)DNA精製のためのピペッティングステーション,(2)パンチを乾燥させるためのヒートブロック,(3)PCRセットアップのためのピペッティングステーション,(4)PCRを実行するためのサーマルサイクラー,そして最後に(5)保存のためのマイクロプレートホルダー。
処理の開始のために,6人の血染カードが準備された。それぞれのカードから16個のパンチが,96ウエル マイクロプレートに収容された。マイクロプレートはマイクロプレート供給部に収容され,適切な溶液,PCR試薬,AmplitaqDNAポリメラーゼがピペッティングステーションのプラットフォームのコンテナーに装填された(Figure.1)。PCR試薬は,フルオレセイン標識されたプライマーペアを含んでおり,これによりTHO1またはvWA STRの多型の座を増幅させる。操作手順は,コンピュータにより開始され,DNA精製とPCRの全体の処理は,連続的で自動的な形態で実行された。処理の完了時に,PCR生成物を有したマイクロプレートは,手動によってマイクロプレートホルダーから取りはずされ,96個全てのサンプルはCEによって解析された。電気泳動図は,安定したPCR生成物を示したが,これはCEソフトウエアによって自動的に強度に従い分けられたものである(Figure.2)。全てのサンプルから,明確な結果が,容易に得られ,サンプルの混合やコンタミネーションは,全く示されなかった。遺伝子型の読み出しは,矛盾なく正確であり,6人全てについて,有効で従来法廷で用いられてきた検査によって予め決定された遺伝子型と一致した。」(5頁左欄17行?同頁右欄4行)

(甲2-キ)
「DNA精製とPCRセットアップには1時間要し,PCRには2時間要した。PCRセットアップにおける支障を回避するために,さらに2つのサーマルサイクラーが,システムに追加され得る。4つのサーマルサイクラーによる処理能力により,最初の3時間で96サンプルが処理され,その後1時間毎にさらに96サンプルが処理されるであろう。連続的なシステムの稼働によって,1日あたり,2100のサンプルが処理され,最終的に分類されるであろう。しかしながら,システム効率を最大化するためのスケジューリングソフトウエアを利用して,いくつかのアプリケーションを調整することによって(すなわち,あるマイクロプレートがヒートブロックにある時,他のマイクロプレートがマイクロプレート供給部からピペッティングステーションに移送される),処理能力はより向上されるであろう。いずれにしても,効率的に実用化された迅速な解析技術の先端において,システムにより,処理された試料が充分に供給されるであろう。
今後のシステムへの改善・変更として,血染カードのパンチングの自動化と,サンプル処理のCE解析への統合化が,挙げられる。これは,自動化された血染カードパンチャー,PCR生成物を扱うための他のピペッティングステーション,そしてロボティックアームがマイクロプレートをサンプル区画へ装填することのできるCEシステムの追加によって達成されるであろう。」(5頁右欄5行?6頁右欄3行)

(甲2-ク)
Figure.1には,直線軌道上に配置されたロボティックアームと,プレートホルダー,2つのサーマルサイクラー,プレート供給部,ピペッティングステーションがその順に上記直線軌道と平行に配置され,上記軌道の反対側にコンピュータが配置された形態が,記載されている。

上記記載事項(甲2-ア)?(甲2-ク)を総合すると,甲2には,以下の発明が記載されていると認められる。

「血染カードからのDNA精製とPCR増幅とを連続自動化され,かつ,プログラム化されたロボティックシステムにより実行されるプロセスであり,
該ロボティックシステムは,直線軌道にあるロボティックアームと,マイクロプレート供給ステーションと,DNA精製およびPCRセットアップのためのピペッティングステーションと,パンチを乾燥させるためのヒートブロックと,PCRを実行するためのサーマルサイクラーと,保存のためのマイクロプレートホルダーと,からなり,
処理の開始のために,血染カードが準備され,カードから手作業で得られたパンチがマイクロプレートの一つのウエルに一つのパンチが入るように納められ,該マイクロプレートをマイクロプレート供給部に収容するステップと,
前記マイクロプレート供給部において,パンチを納めた前記マイクロプレートを前記ロボティックアームへ供給し,該アームが,該マイクロプレートを前記ピペッティングステーションへ移送するステップと,
該ピペッティングステーションにおいて,前記アームは,前記マイクロプレートに,ピペットチップが通過するための孔であり,吸引の際に上記チップに付着するパンチが,ウエルから取り出されないように,充分小さな孔を有した特別な蓋をかぶせ,それぞれの前記ウエルにFTA精製試薬を添加し,該FTA精製試薬による抽出を繰り返し,前記パンチは洗浄され,前記アームは,該精製されたパンチを納めた前記マイクロプレートを前記ヒートブロックに移送するステップと,
前記ヒートブロックにおいて,前記マイクロプレートは,前記パンチを乾燥させるために80℃で10分間培養され,その後,前記アームは,前記マイクロプレートを前記ピペッティングステーションに戻すステップと,
前記ピペッティングステーションにおいて,Amplitaq DNA ポリメラーゼが,PCR試薬に添加して混合され,該混合物がそれぞれの前記ウエルに添加され,前記アームは,前記マイクロプレートを前記サーマルサイクラーへ配置するステップと,
前記サーマルサイクラーにおいて,該サーマルサイクラーの加熱されたカバーは自動的に閉じられてサーマルサイクルが行われ,PCRが完了すると,前記サーマルサイクラーのカバーは開けられて,前記アームは前記マイクロプレートを前記マイクロプレートホルダーへと移送するステップと,
処理の完了時に,PCR生成物を有した前記マイクロプレートは,手動によって該マイクロプレートホルダーから取りはずされ解析されるステップと,
さらに,DNA精製とPCRセットアップには1時間,PCRには2時間要するから,4つのサーマルサイクラーにより,最初の3時間で96サンプルを処理し,その後1時間毎にさらに96サンプルを処理するという連続的なシステムの稼働によって,1日あたり,2100のサンプルを処理するとともに,システム効率を最大化するためのスケジューリングソフトウエアを利用して,あるマイクロプレートがヒートブロックにある時,他のマイクロプレートが前記マイクロプレート供給部から前記ピペッティングステーションに移送されるステップと
からなるプロセス。」(以下「甲2発明」という)

2 甲3について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲3には,「配列決定Sequatronシステム」に関して,次の事項が記載されている。

(甲3-ア)
「DNA塩基配列決定法が発明されてから20年の間,人ゲノムのほんのわずかな部分,全3000Mbpの約1%しか解読されていない。それゆえ,ヒトゲノムプロジェクトが残り99%の配列を2005年までに完了することを表明していることを考えると,これは幾分困難に感じられる。」(1887頁左欄1?10行 )

(甲3-イ)
「これらを念頭に置き,我々は,ヒトゲノムプロジェクトに求められる実験室の処理能力を満足するための,自動化された配列決定システムを設計した。
我々は,まず,主要な性能要件についての考察から始めた。(i)機械的に,システムはマイクロリットル容積の何千ものサンプルを,異なり変化する生化学工程において扱わなければならない。サンプル処理のために高度に統合されたchip-basedシステムが開発中ではあるが,現在の技術で目的を達成するために最も確実な手法は,実験室で行われる人による操作を模倣することである。全てがスケジューリングソフトウエアによって調和して動作される,液体操作,サーモサイクリング,混合,保存のためのモデュールのセットの中央に配置された,関節を有したアームを用いて,我々は包括的に自動化されたプラットフォームを作り出すことが可能となった。(ii)生化学的に,システムは,従来からの手法であり自動化困難な手法である,DNA単離において用いられる遠心分離法と溶媒抽出法を,回避しなければならない。このような制約を克服するために,我々は,SPRIと呼ばれる方法を開発した(2)。一定の条件下で,DNAはカルボキシルコーディングした磁性粒子の表面に強固に結合され,徹底的に洗浄され,そしてその後溶液中に戻され得る。
これらの考察から,我々は,Sequatronを設計した。これは,自動化され,高い処理能力のゲノム構造機能解析システムに適用可能なものである。Sequatronという語は,実質的に,関節を有したロボティックアームを有した包括的なプラットフォーム,集中的管理,スケジューリングソフトウエアを意味する。」(1887頁左欄24行?右欄1行)

(甲3-ウ)
「Sequatronシステムは,当初は,DNA塩基配列決定のために設計されたが,分子生物学における課題の一般的な解決手法も提供する。
基本的なSequatronプラットフォームは,手首部分にカスタマイズされた指を備えたCRS A465 関節アーム(CRS Robotics,Burlington,Canada)を備えた1.5×1.5mのテーブルから成る(図を参照)。中央パーソナルコンピュータ(PC)が,シリアル接続を介して,直接アームを制御し,他のデバイスへ(または,それらのコンピューターコントローラへ)動作指示を送る(ダイアグラム参照)。当該PCはイベント,例えばプレートと液体処理システムやサーマルサイクラーとの往復の動きをスケジュール管理する;スケジュール管理は,CRS Roboticsにより開発された簡便なプログラム言語を用いることで可能となる。」(1887頁右欄4?21行)

(甲3-エ)
「現在,我々は,次の各事項を実行するための,3つのSequatronシステムを有している。
(i)M13ファージとPCR生成物,からのDNA精製を実行するもの,
(ii)染色されたプライマーおよび染色されたターミネ-タの化学反応を用いたDNA塩基配列決定反応を実行するもの,
(iii)部分的に完了したゲノム配列のギャップを埋めるために行う,特別なPCR増幅の実行と,選択されたテンプレートの配列決定の実行を含む,フィニッシング(第3のシステムはプロトタイプが作成されたが,まだ開発中である。)を実行するもの。」(1887頁右欄30?47行)

(甲3-オ)
「精製Sequatronは,DNAを,SPRIを用いてM13やPCR生成物から単離する。
その目的は,再現性と効率化を達成することである。磁気ビーズを用いたアプローチは,我々の全ての応用において,非常に安定した,対費用効果の高い(テンプレートあたり10セント以下)ものであることが,明らかとなり,Sequatronシステムのための,DNA単離と操作において,一般的な手法となった。・・・・・
配列決定Sequatronは,先のシステムにより精製されたM13 DNAを用いた,DNA塩基配列決定反応を実行する。塩基配列決定反応の自動化には,384ウエル プレートにおける液体処理,反応のサーモサイクリング,96ウエルプレートへ戻しての保存,の無人操作が必要となる。このSequatronは,配列決定反応のセットアップのために,3つのタイプのモデュールを用いる。一つ目は,Packard 104 XYZ液体処理ロボット(Packard Instrument,Meriden,CT)であり,4つのシングルピペットチップの一つを,12チャンネルピペットに置き換えることで改善されたものであり,12の新しいチップは,Packardロボットコントロールユニットによってシリアル接続を介して制御される,二つの6チャンネルディスペンサー(Cavro,Sunnyvale,CA)に接続している。その結果,マイクロタイタプレートに対する,またマイクロタイタプレートからの迅速な分注や,これと同様に他の試薬源からの迅速な分注が可能な,高度に柔軟なワークステーションが得られる。二つ目のモデュールのタイプは,液体処理部(Tecan US,Research Triangle Park,NC)であり,これもまた,12チャンネルピペットを用いるように改善されている。三つ目のモデュールのタイプは,特別なサーマルサイクリング装置(Techne,Princeton,NJ,and MJ Research,Watertown,MA)であり,シリアル接続を介して制御される,加熱された蓋を有した384ウエルのペルチェブロックを備えたものである。
384ウエル・サーモサイクラーの利点は,96ウエル-プレートからのDNAテンプレートを,ダイプラーマーのシーケンシングに必要な,4つの異なる配列決定反応(ヌクレオチドA,T,C,G)へと都合よく分けることが出来る点にあり,それにより,サンプルトラッキングを簡略化し,コストを低減する。」(1887頁右欄48行?1889頁左欄35行)

(甲3-カ)
「Sequatronシーケンシング 中央に,CRS A465 ロボティックアームがあり,マイクロタイタプレートをカルーセル(左)から,配列決定反応のセットアップを行う二つのPackard 104 XYZロボット(緑)の一つへと移動させている様子が示されている。Tecan XYZ ロボット(オレンジ,カルーセルの右)は,配列決定反応が完了したものを保存するために用いられ,TechneとMJ Research サーマルサイクラー(茶色)は配列決定反応を実行するために用いられる。」(1887頁中央における図の解説)

(甲3-キ)
1889頁中央の図には,中央に,マイクロタイタプレートを保持したCRSロボティックアームが配置され,その周囲に,プレートカルーセル,Tecan XYZステージ,Techne/MJ サーマルサイクラー,Packard XYZ液体処理ステージ,中央パソコンが配置され,中央パソコンに対して,CRSロボティックアーム,プレートカルーセル,パソコンを介してTecan XYZステージ,Techne/MJ サーマルサイクラー,パソコンを介してPackard XYZ液体処理ステージが接続された形態が記載されるとともに,図の説明文として,「配列決定Sequatronの構成要素。各モジュールは,イーサネットによってプロセス制御データベースと繋がっているセントラルコンピューターによって制御される。」と記載されている。

(甲3-ク)
「本装置の典型的な実施は,大体10,000クローンの中から約500個のクローンを選択し,必要に応じてPCR反応を設定し,そして種々の配列決定のための化学反応を実施することを伴うことがある。」(1889頁左欄57?61行)

(甲3-ケ)
「将来的な課題としては,試薬(DNA配列決定における主要なコスト)の容量の減少及び(プロセスにおける最も労働集約的な工程の1つである,配列決定ゲルへの手動でのローディングを回避するための)配列検出器への直接的な結合が挙げられる。我々は,圧電性ディスペンサーを備える液体操作システム(BioChip Processor, Packard Instrument)を用いることにより,容量の10倍の減少を達成したが,このような小容量の使用は,蒸発の問題を持ち込み,そして,液体操作のための一体型のチップベースのシステムに対する需要を促し得る。我々はまた,サンプル調製を配列検出器に結び付けるための方法を試みた。Sequatronは,当然のことながら,マイクロタイタープレートを用いるキャピラリ-ベースまたは質量分析ベースのシーケンサーと連動する。あるいは,Sequatronは,アームをシーケンサーの前面に移動及び配置し得る独立して誘導される運搬手段上にシステムを設置することによって,既存のスラブゲルシーケンサー(例えば,Applied BioSystems モデル377)と共に使用され得る。より一般的には,Sequatronシステムは,ヒトゲノムプロジェクトの範囲内及びヒトゲノムプロジェクトを超える範囲の両方における,他のオートメーション需要のためのフレキシブルなプラットフォームを提供する。Sequatronの試作品は,サブクローンライブラリー,細菌人工染色体(BAC)のプール及び他のライブラリーの構築と,配列決定対象である大型の挿入クローンの特徴づけのための開発におけるものである。将来のシステムはまた,遺伝子型決定,高密度アレイの準備及び医薬化合物のハイスループットスクリーニングなどの機能的遺伝学にも向けられ得る。将来のある時点において,分子生物学の仕事を実施するより小型のSequatronシステムは,当然,典型的なラボの環境に存在することもあり得る。」(1889頁右欄9?51行)

上記記載事項(甲3-ア)?(甲3-ケ)を総合すると,甲3には,以下の発明が記載されていると認められる。

「中央に,マイクロタイタプレートを保持するCRSロボティックアームが配置され,その周囲に,プレートカルーセル,Tecan XYZステージ,Techne/MJ サーマルサイクラー,Packard XYZ液体処理ステージ,中央パソコンが配置され,中央パソコンに対して,CRSロボティックアーム,プレートカルーセル,Tecan XYZステージ,Techne/MJ サーマルサイクラー,Packard XYZ液体処理ステージのそれぞれが接続された構成を有し,該CRSロボティックアームは,例えば,マイクロタイタプレートをカルーセルから配列決定反応のセットアップを行う二つのPackard 104 XYZロボットの一つへと移動させる動作を行うものであり,Tecan XYZ ロボットは,配列決定反応が完了したものを保存するために用いられ,TechneとMJ Research サーマルサイクラーは配列決定反応を実行する配列決定Sequatronシステムによる配列決定する方法であって,
他のシステムにより精製されたDNAを用いた,DNA塩基配列決定反応を自動実行する配列決定する方法であり,配列決定反応のセットアップのための3つのプロセスを有する配列決定する方法。
一つ目のステップは,Packard 104 XYZ液体処理ロボットにより,マイクロタイタプレートに対する,またマイクロタイタプレートからの迅速な分注や,これと同様に他の試薬源からの迅速な分注をするステップであり,
二つ目のステップは,液体処理のステップであり,
三つ目のステップは,シリアル接続を介して制御される,加熱された蓋を有した384ウエルのペルチェブロックを備えた特別なサーマルサイクリング装置によるステップである。」(以下「甲3発明」という)

3 甲4について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲4には,「自動化された核酸調製に用いられる装置」に関して,次の事項が記載されている。

(甲4-ア)
「アッセイプレート内での磁性粒子の使用を包含する、複合サンプルから関心のあるDNA配列を調製するための装置と、複合サンプルからDNAを調製する自動化された方法が開示され、この装置は、三次元空間においてアッセイプレートを移動するための手段;該アッセイプレートに液体を供給するための手段;そのアッセイプレートの温度を制御するための熱制御手段;そのアッセイプレートにおける磁性粒子を操作するための磁性分離手段;および上記全ての手段の制御および協働操作のため、および複合サンプルからDNAを調節するための自動化方法のためのコンピュータコントロール手段を備える。」(フロント頁アブストラクト)

(甲4-イ)
「本願発明の技術分野
この発明は,自動化された核酸の調製に関するものであり,自動化された核酸の調製方法とそのために用いられる装置に関するものである。
発明の背景
「現在,多数の大規模DNA配列決定プロジェクトが進行している。配列データの生成における律速段階の一つは高純度のDNA鋳型の調製である。
DNAの調製または操作を含む技術の進歩により,あるプロセスのために自動化装置の導入が可能になった。例えば,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施するための自動化装置,およびDNA配列決定反応を実施するための自動化装置が,公知である。」(1頁2行?2頁26行)

(甲4-ウ)
「発明の概要
発明の一つの形態において,本願発明は,複合サンプルからの関心領域のDNAシーケンスの調製のための装置を提供する。これは,アッセイプレートにおける磁気粒子の使用を含むものである。上記装置は,
アッセイプレートを3次元空間内で移動させる手段,
アッセイプレートに液体を供給する手段,
アッセイプレートから液体を排出する手段,
アッセイプレートの温度制御のための温度調整手段,
アッセイプレート内の磁気粒子を操作するための磁気分離手段,
上記全ての手段を制御し協働して動作させるためのコンピュータ制御手段を備える。
・・・・・
本願発明の装置は,あるゆる三次元内で移動が可能なロボットヘッドを都合よく備える
・・・・・
該磁気的分離手段は,2つの分離ワークステーションを都合よく備える。一方のワークステーションは棒状のマグネットを備えてよく,かかるマグネットは,典型的なマイクロタイタプレートがその上に載ることができ,プレート内のウエルの列が棒状のマグネットと整列するような大きさ及び数となっている。このようなステーションを「分離」ステーションと呼ぶこともでき,当該ステーションは磁気粒子をマグネットに引き寄せることで混合物から当該粒子を分離するのに使用してもよい。他の磁気ワークステーションは,2列のウエルが各棒磁石の間に配置されるような大きさおよび数の棒磁石を備え得,これらの磁石がマイクロタイタープレート上のウエルの異なる列の間に置かれ得るような,プレートの磁石に関する移動を可能とする。このステーションは,「洗浄」ステーションと呼ばれ得る。洗浄は,マイクロタイタープレートのウエルに洗浄メディウムを加え,磁気粒子をウエルの片側に引きつけることによって行われ得る。
適切な期間(例えば,5秒)の後,プレートは,磁石がウエルの反対側に来るように磁石に関して動かされ,それにより,洗浄メディウムの中を通して磁気粒子を引きずる。
・・・・・
該温度調節手段は,マイクロタイタプレートにあるブロックから他のブロックに移動してプレートの温度を変える、それぞれ一定の所望の温度に設定された3つのヒートブロックを都合よく備える。しかし、他の構成が当業者によって認識され得る。例えば、制御された可変温度を有する単一の加熱ブロックが、使用され得る。
・・・・・
該装置の全ての運転はコンピューター手段,典型的にはパーソナルコンピューターによって制御される。かかるコンピューターは,例えば,ロボットヘッド及びマイクロタイタープレートの動作,液体のピペッティング/分配,並びに熱制御手段の温度,を,典型的にはRS232コンピューターインターフェースを介して制御する。」(2頁27行?6頁4行)

(甲4-エ)
「発明の他の形態において,本願発明は,複合サンプルからの関心領域のDNAシーケンスを調製する自動化された方法を提供する。この方法は,以下のステップのための自動化された手段を使用することを含むものであり,ステップとは,適切な洗浄剤の存在下で熱の作用によりDNA含有物の溶解を引き起こすステップ,ポリマーを含有するハイブリダイゼーションバッファーと共にプローブに結合された磁気粒子を加えて,有効な核酸濃度の増加をもたらすステップ,関心のある配列を,相補的なプローブにハイブリダイズさせるステップ,次いで,磁力によりサンプルの残部から,粒子/プローブ複合体と,これにハイブリダイズした配列を分離するステップ。・・・・・望ましくは,上記方法のステップは,マイクロタイタアッセイプレートのウエル内において実行される。」(6頁5?19行)

(甲4-オ)
「図面の詳細な説明
図1は,本願発明のDNA調製方法を実行するのに適した,本願発明に基づき自動化された装置の構造を表すものである。この装置は,多数の標準的な市販のコンポーネントを備えており,これは,明瞭性の目的のため,図には示していない。」(7頁15?21行)

(甲4-カ)
「図示された装置は,X-Y-Zロボット10,例えばBurger Lahr,Aerotech またはLinearTechnology製のもの,を備える。ロボットは,基板(図示されない)を備え,これは,X方向に延びるレール12,14,16,18と,Y方向に延びるレール20,22,24を有した直線状の枠組みを支持している。」(7頁22行?8頁1行)

(甲4-キ)
「ロボットヘッド38は,レール34,36の下端で移動される。ロボットヘッド38は,ブロック26,28,30とレール34,36に対応した駆動手段によって適切に可動させるよう機能する,コンピュータ制御手段(図示しない)の制御のもと,基板に対して3次元方向で可動である。
ロボットヘッドは,標準的な96ウエル マイクロタイタプレート(図示しない)を,枠組みの範囲中で異なる位置の間で移動させるように設計されている。」(8頁11?19行)

(甲4-ク)
「ロボットヘッドはまた,ピペッティング機能と吸引機能を実行するように設計されている。」(8頁23?24行)

(甲4-ケ)
「基板は,本願方法を実行するために必要な,多数の異なる構成要素を支持している。特に,基板は,Techne製の3つのヒートブロックを支持し,その一つは図の40として概略的に記載されている。それぞれのヒートブロックは,コンピュータ制御手段のもと,異なる所定温度に加熱されるように適合されている。基板は,また,例えばTechne製の二つの磁気分離ステーションを備えており,そのうちの一つは,図に42として概略的に示されている。それぞれの磁気分離ステーションは,平行に配置された棒磁石のアレイよりなる。
一つの磁気分離ステーションは,液体が吸引される間,マイクロタイタプレートウエルの底に,磁気ビーズを保持し,これによりビーズを分離するように設計されている。」(8頁最終行?9頁13行)

(甲4-コ)
「他方の磁気分離ステーションは,洗浄機能を実行するよう設計され,一つおきのマイクロタイタプレートのウエル列の間の空間の下に配置されるよう,分離して配置された4つの棒磁石を備えるように設計されている。」(9頁17?20行)

(甲4-サ)
「この処理が何度も繰り返されて,磁気ビーズはウエルの中の液体中を左右に移動し,洗浄機能を実行する。」(9頁31行?10頁1行)

(甲4-シ)
「基板は,使い捨て可能で殺菌されたピペットチップの供給部も支持しており,これは44として概略的に図示され,それと共に,チップがロボットヘッドによって適正に持ち上げられたかを検知するための対応したセンサ46も図示されている。
基板は,チップの廃棄ステーションも有しており,48として概略的に図示されており,これは,その下にチップを受ける容器(図示しない)を有した開口を備えている。
装置は,また,処理を待つタイタプレートや処理を実行されたマイクロタイタプレートを保管する領域も有している。
装置は,また,再生のあと,更なる使用において再利用される,ビーズの一時的な保管のための容器も有している。
装置は,さらに,PC(図示しない)のようなコンピューター制御手段を有し,これにより,ロボットヘッドと対応する機能の動きを,当業者には明らかな形態で,制御し協動させる。
処理されるサンプルを納めたマイクロタイタプレートは,使用において,ロボットヘッド28によりつかみ上げられ,所望の処理を実行するために,適宜の試薬添加や試薬除去を伴い,適切な位置の間を移動される。」(10頁2?22行)

(甲4-ス)
「例
以下の例は,自動化されたDNA調製方法に関するものであり,図1の装置において実行の可能なものである。本実施例は、3’末端にビオチン基を伴って合成されたオリゴヌクレオチドプローブに関する。このビオチン化プローブは、ストレプトアビジンでコートされた磁気ビーズに付着されて、磁気ビーズ/プローブ複合体を形成する。このプローブは、M13-21ユニバーサルプライマー部位から上流にある領域に対して相補的であるように設計される。
・・・・・そして,粒子/プローブ 複合物が加えられ,プローブは標的DNAへのアニールが可能となる。一度結合されると,粒子/プローブ/鋳型 複合物は,残りの試料から,磁力によって分離可能となり,洗浄される。そして,鋳型は,加熱によって粒子/ブローブ 複合体から遊離されることが可能となる。手順はシンプルで迅速であり,簡単に自動化される。全ての成長後のステップは,マイクロタイタプレート内部で実行可能であり,遠心分離やエタノール沈降が不要となる。この例においては,250のランダムなM13サブクローンが準備され,上に概要が示された手法を用いてシーケンスされた。(250のランダムなM13サブクローンが以下に記載の方法に従い調製され,そして配列決定された。)」(10頁23行?11頁19行)

(甲4-セ)
「・・・・・そして,上清をマイクロタイタープレートへと移した。各々が200μlの上清を含む2つのウエルを用いて,各サンプルから400μlの上清を使用した(Falcon 3911 MicroTest Flexible Assay Plate)。
溶解
上澄みの添加に先立ち,エッペンドルフ型マルチディスペンシング ピペットを用いて,10μlの15%SDSがそれぞれのウエルに添加された。ファージは,マイクロタイタプレートをTechne PHC-3サイクラーで10分間70度に加熱することによって,溶解された。
アニーリング
20ulのハイブリダイゼーションバッファ(20%PEG 8000/2.5M NaCl)が,マルチディスペンシングピペットにより,各ウエルに添加された。混合は必要とされないので,同じチップが全てのウエルに使用され得る。また,20ulの粒子/プローブ 複合体が各ウエルに添加され,ディッシュは45°で30分間,インキュベートされた。
洗浄ステップ
マイクロタイタプレートはサイクラーから取りはずされ,Dynal MPC-96磁気セパレータへセットされた。30秒後,上澄みは吸引され,100ulの洗浄バッファ(0.1X SSC)がそれぞれのウエルに添加され,5秒間隔で3回,プレートを磁気セパレータ上で移動させることにより,粒子は洗浄バッファ内部を移動された。このステップは,全3回繰り返された。最後に,粒子は,10ulの水の中に溶離された;磁石を用いることで,粒子はこの小さな容積に分散され得る。

変性
プレートを80度で3分加熱することによって,鋳型は,プローブから,遊離される。加熱の後,粒子は磁石を用いて集められ,上澄みは新たなマイクロタイタプレートへ移された。」(12頁28行?14頁4行)

(甲4-ソ)
「シーケンシング結果
一度,上記のように鋳型が精製されると,配列決定反応の実行が可能となるが,これは予備反応の混合物が生成可能となり,事前に分注可能となるからである。ABI Taq ダイプライマーキット試薬が使用された。・・・全ての試料は,M13-21ユニバーサル プライマーとTaqポリメラーゼを用いて,配列決定反応が行われた。反応は,Techne PHC-3ドライサイクラーにおいて行われ,それぞれの試料はミネラルオイルで覆われていた。反応の生成物は,ABI 373A DNAシーケンサーにより解析された。」(14頁23行?15頁5行)

(甲4-タ)
「2.X,Y,Zロボティックヘッドを備えた請求項1に記載された装置」(18頁12?13行)

上記記載事項(甲4-ア)?(甲4-タ)を総合すると,甲4には,以下の発明が記載されていると認められる。

「複合サンプルからの関心領域のDNAシーケンスを調製する自動化された方法であって,以下のステップのための自動化された手段を使用することを含むものであり,
前記ステップとは,
適切な洗浄剤の存在下で熱の作用によりDNA含有物の溶解を引き起こすステップ,
ポリマーを含有するハイブリダイゼーションバッファーと共にプローブに結合された磁気粒子を加えて,有効な核酸濃度の増加をもたらすステップ,
関心のある配列を,相補的なプローブにハイブリダイズさせるステップ,
次いで,磁力によりサンプルの残部から,粒子/プローブ 複合体と,これにハイブリダイズした配列を分離するステップであり,
前記自動化された手段とは,基板を備えたX-Y-Zロボット10とロボットヘッド38を備え,
該ロボットヘッド38は,コンピュータ制御手段のもと,基板に対して3次元方向で可動であり,マイクロタイタプレートを,枠組みの範囲中で異なる位置の間で移動させるように設計され,ピペッティング機能と吸引機能を実行するように設計されており,
前記基板は,3つのヒートブロックを支持し,それぞれのヒートブロックは,コンピュータ制御手段のもと,異なる所定温度に加熱されるように適合され,
二つの磁気分離ステーションを備え,
前記磁気分離ステーションに一つは,液体が吸引される間,マイクロタイタプレートウエルの底に,磁気ビーズを保持し,これによりビーズを分離するように設計され,
前記磁気分離ステーションの他方は,洗浄機能を実行するよう設計され,
前記基板は,使い捨て可能で殺菌されたピペットチップの供給部を支持し,チップの廃棄ステーションを有し,
処理を待つマイクロタイタプレートや処理を実行されたマイクロタイタプレートを保管する領域も有し,
コンピューター制御手段を有し,これにより,ロボットヘッド38と対応する機能の動きを制御し協動させるものであり,
そして,処理されるサンプルを納めたマイクロタイタプレートは,使用において,ロボットヘッド28によりつかみ上げられ,所望の処理を実行するために,適宜の試薬添加や試薬除去を伴い,適切な位置の間を移動される,
DNAシーケンスを調製する自動化された方法。」(以下「甲4発明」という)

4 甲5について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲5には,「標的核酸の増幅と検出を自動化するCOBAS AMPLICORシステム」に関して,次の事項が記載されている。

(甲5-ア)
「COBAS AMPLICORTMシステムは,様々な感染性疾患のための診断PCR手順を実行する,標的核酸の増幅と検出を自動化するものである。このシステムは,二つのそれぞれ独立に制御される加熱/冷却ブロックを備えた一つのサーマルサイクラー,インキュベーター,磁気粒子洗浄部,ピペッター,フォトメーターを有している。」(1915頁左欄1?6行)

(甲5-イ)
「化学の進歩は,この技術におけるフォーマッティングの進歩が,速いペースで進行することを可能にしてきたが,自動化は,特に検出方法については,かなり遅れている。例外は,多数のサーマルサイクラーの急速な開発である[36]。この論文において,我々は,診断PCRのルーティンを実行するための,完全に自動化されたシステムについて説明する。これは,標的DNAをPCRによって増幅し,または,標的RNAを逆転写PCRによって増幅し,そして結果として生じた増幅された生成物を特異的に検出する,統合されたシステムである。このシステムは,増幅のためのサブシステムと,検出のためのサブシステムとを,備えている。増幅のためのサブシステムは,二つの中央線御されたサーマルサイクラーセグメント(一つの集積回路基板に接続された,二つの加熱/冷却ブロック)を備えている。二つのサーマルサイクラーセグメントの温度は,独立に制御可能であり,これにより,それぞれ異なるサイクリングプロファイルを必要とする,二セットのサンプルの同時増幅を,柔軟に行うことができる。PCR生成物は,ELISA-likeフォーマットにより検出される。ここでは,オリゴヌクレオチド プローブでコーティングされた常磁性の微粒子が,生成物へのハイブリダイゼーションによって,ビオチンでラベルされた増幅生成物を捕捉する。検出のためのサブシステムは,4つのモデュール,温度制御されたインキュベーター,磁気粒子の洗浄ステーション,自動化されたピペッティングユニット,基板に組み込まれたフォトメーター,を有している。このシステムは,(a)内部コントロールのオプションを提供すること,(b)標的核酸の選択的な増幅のための酵素ウラシル-N-グリコシラーゼを含む試薬であるAmpErase(登録商標)[23]を組み込むこと,(c)プロトコールの標準化,(d)試料および試薬のバーコードによる識別,ならびに(e)自動化された試料のピペッティングおよび試薬の添加,によって,結果の無欠性を確実なものとするように設計されている。」(1915頁右欄23行?1916頁左欄19行)

(甲5-ウ)
「システムは,5つの機器(サーマルサイクラー,インキュベーター,洗浄ステーション,ピペッター,フォトメータ)を,一つのユニットに組み合わせたものである。標的核酸は,サーマルサイクラーで増幅される。ハイブリダイゼーションと検出反応は,37℃インキュベータにおいて実行される。洗浄ステーションは,微粒子を分離し洗浄し再懸濁するための,磁石,再懸濁チップ,吸引チップ,を備えている。ピペッターは,x-y-z移動機構の上に搭載された,自動化されたピペッティングステーションからなる。フォトメータは,発色現象の後,吸光度を測定する。」(1916頁左欄26?最終行)

(甲5-エ)
「完全に統合されたCOBAS AMPLICORシステム
この上面図は,サーマルサイクラー加熱/冷却ブロック(1),自動化されたピペッター(2),インキュベータ(3),洗浄ステーション(4),フォトメータ(5),の配置を示すものである。A-ringは,加熱/冷却ブロックの下方に配置されている。」(1916頁Fig.1の説明)

(甲5-オ)
「システムの特徴
ディスポーザブルである。
サーマルサイクラーは,成形されたリング(A-ring)を用いており,これは,PCR増幅用の,12個のキャップを備えたポリプロピレンチューブ(A-tubes;最大の作動容量は300μL)を有している。それぞれのA-ringは,識別情報バーコードのためのタブを有し,それぞれのA-tubeには,個別に番号がふられている。それぞれの反応混合物の増幅後の解析は,ディスポーザブルなポリスチレン検出カップ(D-cup;最大の作動容量は350μL)の中で実行される。このカップは,一般に,システムにより,ハイブリダイゼーション,検出,洗浄,フォトメータによる検出,の全てのステップにおいて用いられる。」(1916頁右欄1?10行)

(甲5-カ)
「サーマルサイクラー。
・・・サーマルサイクラーは二つの中央制御されたセグメントと,追加のA-ringを保持するための二つの周囲温度セグメント(ブロック)を有している。・・・
二つの稼働モードが実行可能である。第一のモードは,24またはより少ないサンプルの増幅と検出に用いられるもので,システムは,増幅が完了した後,自動的に検出を開始する(シーケンシャルモード)。自動化されたピペッターが,増幅された生成物を,検出のために,サーマルサイクリングセグメントにあるA-ringからD-cupへと移動させる。
(該自動化ピペッターは,検出のためにサーマルサイクリングセグメントのAリングからDカップに増幅産物を移動させる。)第二のモードは,サンプルが24より多い場合に用いられる。24サンプルの最初のセットが検出されている間,残りのサンプルの第二のセットが,増幅される(パラレルモード)。システムは,試料の最初のセットの増幅が完了した後,一時停止して,オペレータが,増幅されたA-ringを周囲温度セグメントへと移送し,追加のA-ringをサーマルサイクリングセグメントへ加え,システムを再スタートさせるのを,可能とする。このモードにおいて,自動化されたピペッターは,検出のために増幅された生成物を,周囲温度セグメントのA-tubeの最初のセットから移送する。」(1916頁右欄11?33行)

(甲5-キ)
「試薬の移送。
検出を実行するために必要な全ての試薬は,COBAS AMPLICORシステムに保持されている。・・・・・ピペッターは,試薬の一定分量を,カセッテからA-tubeまたはD-cupのいずれかへ移送するのに用いられる。ピペッターのチップは,A-tubeや試薬カセッテキャップへ容易に穿孔可能なように加工されている。(該ピペッターのチップは,Aチューブや試薬カセットキャップを容易に貫通できるように作られている。)COBAS AMPLICORは,それぞれの試薬移送の後,自動的にピペッターチップを洗浄する。」(1916頁右欄34?46行)

(甲5-ク)1916頁のFig.1は,COBAS AMPLICORシステムの上面からの図を示すものであり,この図には,サーマルサイクラー,ピペッター,インキュベータ,洗浄ステーション,フォトメータが,枠を備えた単一のケース内に近接して配置された形態が記載されている。 そして,図1の説明文として,「この上面図は、サーマルサイクラーのヒーティング/クーリング・ブロック(1),自動化ピペッター(2),インキュベータ(3),洗浄ステーション(4),フォトメータ(5)を示している。」と記載されている。

(甲5-ケ)
「フォトメータ。
フォトメータは,検出反応による吸光度を測定するものであり,パルス化され発光ピーク波長660nmであり,周波数35mHzで作動する,GaAlAs LEDを備えている。D-cupを通過したパルス光強度は,透過光強度に比例した電流値を生じる光電子増倍管ダイオードにより測定される。」(1917頁左欄1?7行)

(甲5-コ)
「複合的なテスト。
増幅反応混合物は,プライマーの二つのペアを含有していた。・・・それぞれの増幅反応における生成物は,C.trachomatis,CT IC,またはN.gonorrboeaeに特異的なプローブでコーティングされた常時性粒子を用いて,三つの個々の反応において検出された。」(1917頁左欄31行?同頁右欄5行)

(甲5-サ)
「システムオペレーション。
オペレータは,手作業により,MasterMix(バッファ溶液であり,耐熱・熱安定性のポリメラーゼ,AmpEraseR(Roche Diagnostic Systems,Branchburg,NJ),プライマー,塩,dNTPsを含有している)を,それぞれのA-tubeに添加する。システム外でのサンプル調製は,COBAS AMPLICORにおける分析の前に必要となる。分析に特有なサンプルの調製手順は,洗浄工程(特定の検体タイプに対して),核酸を遊離するための溶解工程,PCRに適した溶解した検体を提供する,中和工程または核酸の沈殿工程,から成る。
・・・サンプルが調製された後,これらは,適切で分析に特有なMasterMixを含有した,A-Tubeに移送される。そして,A-ring,D-cupラック,試薬カセッテはシステムに搭載される。適切なワークリストデータとコマンドが,オペレータによって,キーパッドかバーコードスキャナを用いて,入力される。そして,システムの動作が開始する。
PCR増幅プロファイルは,複数の異なるアッセイがシステムにあらかじめ入力されているため,独自に設計されている。適切な増幅プロファイルは,入力されたワークリストデータに従い,自動的に実行される。増幅の最後に,100μLの変性溶液が,それぞれのA-tubeの内容物に,自動的に添加される。ハイブリダイゼーション反応は,D-cupを基板上の保存ラックから37℃インキュベータに移送し,続いて100μLのハイブリダイゼーション溶液と25μLの変性された増幅産物をD-cupに添加することによって,開始する。ハイブリダイゼーション溶液は,分析に特有なオリゴヌクレオチドプローブでコーティングされた常磁性微粒子(DynabeadsR;Dynal A.S.,Oslo,Norway)を含んでいる。それぞれの,ハイブリダイゼーション反応物は,洗浄ステーションへ移送される前,37℃で14分インキュベートされる。
洗浄ステーションは,12個のD-cup位置に洗浄ホイールと,それぞれのcup位置に一対の磁石と(再懸濁が実行される位置は除く),吸引と再懸濁のためのチップと,対応する洗浄タワーと,を有している。・・・検出は,それぞれのD-cupに,安定化されたアビジン複合のHRP溶液よりなる希釈液200μLを添加し,37℃で14分インキュベートすることにより,開始される。それぞれのD-cupは,その後,洗浄ステーションへ移送され,4つの洗浄工程のサイクルを受け,最後の色形成ステップのためにインキュベータに戻ってくる。3回目の14分37℃のインキュベータは,300μLのTMB基質溶液の存在下で実行される。このインキュベータ期間の後,D-cupはフォトメータに移送され,ここで吸収が測定される。COBAS AMPLICORは,ハイブリダイゼーション,洗浄,検出の工程における,それぞれのステップについて,正確に時間管理し,それにより,ハイブリダイゼーション開始時刻と吸収測定時刻との時間間隔は,それぞれのD-cupについて同じとなる。」(1917頁右欄6行?1918頁左欄2行)

(甲5-シ)
「増幅が完了した後,生じたアンプリコンは検査特異的なオリゴヌクレオチド・プローブでコートされた常磁性微粒子とハイブリダイズされる。ハイブリダイゼーションが終了すると,反応混合物は磁気的に分離され,そして組み込まれなかったプライマー及びdNTPは吸引され,そして残った微小粒子は洗浄される。」(1918頁左欄23?29行)

(甲5-ス)
「TMB基質溶液へのアビジン-HRPの持ち越しは,偽陽性の結果を生じる。COBAS AMPLICOR装置の一部は,このような持ち越しを防ぐように設計されているので,このシステムは,アビジン-HRP結合体のピペッティングとTMB基質のピペッティングとの間に,少なくとも3回のピペットの洗浄と,2回の他の試薬の移動を実施するようにプログラムされている。アビジン-HRPの持ち越しの上限を決定するために,我々は,COBAS AMPLICORシステムに,濃縮したHRP溶液をAチューブからDカップへとピペットで移動させ,TMB基質をDカップに加え,そして,再度ピペットをすすぐようにプログラムした。システムは,第二のAチューブ内のブランク溶液についてこの手順を直ちに繰り返した。このプロトコールにより,我々は,2回のピペットのすすぎと1回の中間試薬の移動(濃縮したHRPを含むDカップ内へのTMB基質の移動)のみによって隔てられたHRPピペッティング工程からブランク溶液のピペッティング工程への持ち越しを評価することができた。濃縮したHRP溶液の活性は,1:10^(6)希釈が,0.05と0.1との間の吸光度を生じるように調整した。基準を提供するために,我々は,濃縮したHRP溶液の1:10^(6)希釈物をDカップに手動で加え,そして,COBAS AMPLICORが,TMB基質溶液を加えた。TMB基質が加えられた後,Dカップを37℃で14分間インキュベートし,その吸光度を光度計で読んだ。結果(図4)は,2回のピペットのすすぎと1回の中間的な移動の工程が,10のシステム全てにおいて,HRP濃度を少なくとも10^(6)倍減少させたことを実証する。」(1919頁左欄13行?同頁右欄16行)

(甲5-セ)
「該装置は,C.トラコマチス(C.trachomatis)アンプリコン(1.0」A)の複数の試料(Aチューブあたり6つ)をDカップに移動させた。」(1920頁Fig.6の説明)

(甲5-ソ)
「考察
この,PCR増幅と検出のための,完全に自動化されたシステムにおいて,装置は三つのプロセスを自動化する。それは,サンプルから取得したターゲット核酸のPCR増幅,増幅された生成物の,標的に特異的なオリゴヌクレオチドプローブへの,ハイブリダイゼーション捕捉,プローブが結合した増幅生成物の検出であり,酵素に媒介された発色であり,分光的に定量化できる発光による検出,である。全部で48のサンプルを同時に扱うことができ,増幅と検出は,システムによって同時に実行できる。装置の動作モードには柔軟性がある。装置は,増幅と検出の反応を,シーケンシャルモード,または,パラレルモードで,実行するようプログラムできる。シーケンシャルモードは,完全な不介在を可能とする。一度システムが開始すると,結果はオペレータの介在なしに得られる。パラレルモードでは,オペレータは最初のサンプルのセットを装置に装填する。増幅が完了した後,適宜のタイミングで,オペレータはしばらく装置へ戻り,増幅されたサンプルを周囲温度保持ブロックへ移送し,第二のサンプルセットを,サーマルサイクラーへ装填する。第二のサンプルセットは,最初のサンプルセットの増幅生成物が検出されている間,増幅される。それぞれのサンプルセットの結果は,オペレータの介在なしに得られる。
システムは,5つの装置(サーマルサイクラー,インキュベータ,洗浄ステーション,ピペッタ,フォトメータ)を一つのユニットへと統合するものである。サーマルサイクラーモデュールが,二つのセグメントを備え,二つの異なる増幅プロファイルを同時に実行可能であるため,システムは,複数のアッセイを同時に実行可能である。パラレルモードでは,4つまでの異なる増幅プロファイルが実行可能である(二つの増幅処理のそれぞれに,二つのプロファイル)。複数アッセイを実行する場合,ユーザーは,システムを,それぞれの増幅反応から得た生成物を,適切な捕捉プローブを用いて検出するようにプログラムする。
・・・・・
該システムの内部ソフトウエハは,スループットの最大化と不要な検査を最小化するために反射検査能力を提供する。」(1921頁右欄1?57行)

(甲5-タ)
「装置の洗浄能力,そして,全体的なシステムの性能の我々の調査は,アンプリコンまたは試薬の持ち越しの証拠を見出さなかった。すなわち,ピペッティングモジュールの設計および付随するピペットチップのすすぎ処理は,各ピペッティング工程の後に,残留するDNAおよび他の試薬をピペットチップから効率的に除去する。COBAS AMPLICOR検出フォーマットの全体的な洗浄効率の研究は,標準的なアッセイ条件下において,微粒子および検出カップが徹底的に洗浄されることを示した。検出精度研究からの結果は,COBAS AMPLICOR検出サブシステムの優れた再現性(3?4%のCV)を実証する;これに対し,AMPLICORマイクロウエルプレート検出フォーマットは,5?15%のCVを示す(データ示さず)。一体型の増幅および検出の処理の精度に関するデータは,PCR増幅プロセスが,システムの調節可能性に対し,検出サブシステムよりも大きく寄与していることを示唆する。」(1922頁左欄8?23行)

(甲5-チ)
「このシステムは,実験室の構成を単純化し,工程とワークステーションを統合し,そして,手動の作業を減らす。」(1922頁左欄42?43行)

5 甲6について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲6には,「試料の並行処理」に関して,次の事項が記載されている。

(甲6-ア)
「当該ソフトウェアは包括的なアプローチとオープン構造という戦略的なコンセプトに基づくものである。これらのコンセプトを応用することで,あらゆるコンピュータ駆動機器の実行が単純化される。」(243頁左欄11?14行)

(甲6-イ)
「このプロジェクトの主な目的は,品質と再現性を同時に改善しつつ,生産性を向上し且つコストを削減することである。この目的達成のために,多段階式の手順は,様々な状態のレベルで試料の並行処理を必要とする。これらの状況は,すべてのタスクの効率的なスケジューリングによって適切に管理される。」(243頁右欄31?36行)

(甲6-ウ)
「ロボットに応用したスケジューリングタスクは,複数の試料が,通常,試料の使用期限及び処理手続と関連する時間的制約に反することなく,試料調製の順序又は分析手順内における複数の状態のレベルにおいて,自動化されたシステム上で同時に処理される一連の処理である。」(244頁左欄48?53行)

(甲6-エ)
「このプロセスで得られる最大の処理量は1日当たり152個の試料である(3日の就業日)。この最適化された状態において,ロボットアームは90%超の時間使用状態にあり,そして5つの異なる状態のレベルのサンプルを同時に処理する。」(245頁右欄31?35行)

6 甲7について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲7には,「医療上のアナライザに使用されるインキュベータ」に関して,次の事項が記載されている。

(甲7-ア)「【0001】【産業上の利用分野】この発明は医療上のアナライザに使用されるインキュベータに関するものであり,更に詳しくは,この種のインキュベータにおけるスライドエレメントの位置決めを適正に行なう技術に関するものである。」

(甲7-イ)「【0009】図1においてこの発明のインキュベータを使用したアナライザ10は通常のようにスライドエレメント“E”を予熱ステーション14に装填するプッシャブレード12とこのスライドエレメントをインキュベータ30に搬送する第2のプッシャブレード16とを有する。」

(甲7-ウ)「【0022】・・・患者サンプルを担持した試験エレメントE・・・」

7 甲8について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲8には,「Method and kit for destroying ability of nucleic acid to be amplified」に関して,次の事項が記載されている。

(甲8-ア)
「本発明は,RNA及びDNAのいずれをも含むものであって,核酸増幅法によって増幅されるものを破壊する化学物質を使用する。」(1段62?64行)

(甲8-イ)
「かかる化学物質の例として,マンガン酸カリウムの溶液,ギ酸,次亜塩素酸ナトリウムの溶液,ヒドラジン,硫酸ジメチル及び類似の化合物がある。」(2段4?7行)

8 甲9について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲9には,「車輪を備えた自動免疫測定装置」に関して,次の事項が記載されている。

(甲9-ア)
「本発明は,多数の被検体(試料)を自動的かつ連続的に測定するために用いられる自動免疫測定装置に関するものである。」(1頁右欄2?4行 )

(甲9-イ)第1図には,装置底部に車輪の備わった形態が記載されている。

9 甲10について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲10には,「サンプルの同時処理」に関して,次の事項が記載されている。

(甲10-ア)
「このワークステーションは、比較的きれいな合成化学ドメインにおけるマイクロスケール用に設計されている。・・・・・
・・・・・並行性は,主に,半自律のハードウェアモジュールによって,ユーザーインターフェースによって,及び,スケジューラーを利用して,サンプルの同時処理を介してもたらされる。」(47頁3?14行)

(甲10-イ)
「図2.自動化化学ワークステーション」(49頁図2の説明1行)

(甲10-ウ)
「我々は,可能な限り5つのハードウェアモジュールが同時に機能し得るように,並行して構築することに努めてきた。」(50頁右欄5?7行)

10 甲11について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲11には,「試料の同時処理」に関して,次の事項が記載されている。

(甲11-ア)「【0038】図7に示すように,この形態例に係る自動分析装置30は,当該自動分析装置30に関する種々の制御を行うCPU及びメモリ60と,カートリッジ容器32の装填の指示,解析結果の表示等の種々の表示を行う表示部65と,前記カートリッジ容器情報読取手段に相当し,前記回転ステージ30に装填されたカートリッジ容器32の回転ステージ30の中心に近い方の端に付されたバーコードをバーコード読取部51で読み取って解読するバーコード読取制御部66と,を有する。」

(甲11-イ)「【0059】処理パターンの設定は,できるだけ短い時間に沢山の処理を行うこと,即ち,処理効率を上げるように処理パターンの設定が行われる。しかも,その際できればなるべく回転ステージ30の動作を少なくすることである。」

(甲11-ウ)「【0061】しかし,当該処理時間の大半は,インキュベーション(恒温反応)のための時間であり,その間は,ピペット装置47は空いている状態にある。そこで,その時間を利用して他の処理を行わせることによって処理時間を短縮させることができる。」

11 甲12について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲12には,「自動化処理システム」に関して,次の事項が記載されている。

(甲12-ア)「【0020】本発明では,基本的には各モジュールが記憶したソフトウエアに基づいて情報処理機構がその装置の運用を自律的にとり行うため,各モジュールは自律的,分散的,並列的に動作する。本発明の自動化処理システムは,各モジュールを制御するためのコントローラやパソコン,ワークステーションなどの中央制御装置を必要とせず,システム全体として,自律分散処理システムとして機能する。」

(甲12-イ)「【0094】本実施例では医師の端末と試料容器が一つの場合を説明したが,それぞれ複数あってもよい。この場合,複数の医師の端末からの依頼により,複数の試料容器は,各々の処理動作を並行してそれぞれ自律的に行う。このように本システムは自律的かつ並列分散的な制御方式を有する。」

12 甲13について
甲13は,TECHNE PHC-3 THERMAL CYCLER-TECHNIに関するものであり,Pegasus Scientific Inc.のインターネットサイトである,
http://www.pegasusscientific.com/detail.cfm?autonumber=67881からダウンロードされたイメージの紙出力である。甲13には,イメージ左上に紙出力の日付と推測される2011/02/11が記入されることから,本件特許の優先日後に頒布されたものと推認される。そして,甲13にはTECHNE PHC-3 THERMAL CYCLERのカラー写真が記載され,写真の下に,「カテゴリー:PCR/サーマルサイクラー」と記載されている。

13 甲14について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲14には,「Methods and kits for performing nucleic acid hybridization assays」に関して,次の事項が記載されている。

(甲14-ア)
「試料溶液中に懸濁されている,選択された標的ポリヌクレオチドについて当該試料溶液を探索する方法であって,以下の工程:
(a)当該試料を,固定化されたポリヌクレオチドと相補的であり,且つ当該ポリヌクレオチドとハイブリダイズ可能な第一の部分を有し,且つ当該第一の部分と離れており且つ異なる第二の部分であって,当該標的ポリヌクレオチドの第一の部分と相補的であり且つハイブリダイズ可能なヌクレオチド配列を有している第二の部分,を有するメデイエーターポリヌクレオチドに曝露する工程;
(b)当該試料に対し,付随しているレポーター基を有しているプローブポリヌクレオチドであって,当該標的ポリヌクレオチドの第二の部分と相補的であり且つハイブリダイズ可能なヌクレオチド配列を有する部分を有しているプローブポリヌクレオチドを導入する工程,ここで,当該第二の部分は,当該標的ポリヌクレオチドの第一の部分と離れており且つ異なる;
(c)当該標的ポリヌクレオチドの第一の部分と,当該メデイエーターポリヌクレオチドの第二の部分とを,そして当該標的ポリヌクレオチドの第二の部分と当該プローブポリヌクレオチドの当該部分とをハイブリダイズする工程;及び
(d)当該メデイエーターポリヌクレオチドの第一の部分と,当該固定化されたポリヌクレオチドとをハイブリダイズすることにより,当該メデイエーターポリヌクレオチドを固定化する工程,
を含んで成る,方法。」(15段44?68行)

14 甲16について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲16には,「遺伝子解析方法及び装置」に関して,次の事項が記載されている。

(甲16-ア)
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記のような検出方法をはじめ、生体試料からゲノムを抽出するプロセス、及びDNA増幅の反応液の調製プロセスはこれまで手操作で行われており、大変な労力を要している。特に多数の試料を手操作で処理するには、過酷であり時には調製ミスを起こす可能性がある。またこれらのプロセスは、液体の注入、混合、分離、加温、冷却等の操作を繰り返す作業であるので煩雑であり、また再現性良く試料調製を行うには熟練を要する。さらに取り扱う生体試料には検査者に感染する恐れのあるウイルスや、環境を汚染する細菌等も含まれる為、組み換えDNA実験指針に示す法律等に従って、作業所全体を隔離したり、クリーンベンチを使用する等、取り扱い場所を限定し厳重な注意を払う必要がある。」

(甲16-イ)
「【0021】(3)ハイブリダイゼイション工程
DNA増幅工程を行った反応液に、オリゴヌクレオチドプローブ5を作用させる(ハイブリダイゼイション)。このオリゴヌクレオチドプローブ5の塩基配列は、目的とするDNA配列中の、オリゴヌクレオチドプライマー1および2の配列以外を選択し、更にこのオリゴヌクレオチドプローブ5の5’末端或いは5’末端から数塩基内側の領域に蛍光色素6が標識されたものを準備する。このオリゴヌクレオチドプローブ5の塩基長は、20塩基以上であれば使用可能であり、好ましくは30から50塩基あればより確実であるが、塩基長が長鎖となれば切断されやすくなり、その取り扱いや、合成に手間が掛かるため、20から30塩基前後のものが適切である。」

(甲16-ウ)
「【0027】・・・・・また上記分注機、上記保冷室、上記加温機、上記検出器、上記搬送機の作動空間を覆い、装置内部作業空間と装置外部空間を遮断する筐体が設けられているから、生体試料を閉じ込めた状態で処理することができるので、作業者や環境を汚染することなく遺伝子解析を行うことが出来る。」

(甲16-エ)
「【0045】(2)ウイルス感染症のウイルスゲノムの検出の例
ヒトB型肝炎ウイルス(Hepatitis B Virus:HBV)感染による肝炎の、遺伝子検出方法に関する文献に蛋白質 核酸 酵素,35巻,17号:(1990),3003頁?3010頁がある。これによると、HBVゲノムは約3,200塩基対の2本鎖DNAであり、既に全塩基配列が決定されている。我々は上記の報告に従って、本発明を用いて以下の方法によりHBVゲノムの検出を行った。HBVはDNAウイルスであるので、生体試料からの遺伝子抽出は1.の方法に従って100μlの血液より抽出したDNAを約0.5μg用いた。PCR増幅により増幅させる遺伝子領域は、HBs抗原中の遺伝子の432bpであり、この領域の遺伝子部位は変異が少なく、良く保存されている領域である。この領域の両端にそれぞれ相補的なオリゴヌクレオチドプライマー(プライマ3とプライマ4)をDNA合成機により合成した。プライマの配列を以下に示す。
【0046】プライマ3 5’-GGACTTCTCTCAATTTTCTAGGG-3’
プライマ4 5’-CAAATGGCACTAGTAAACTGAGC-3’
次いで前記の方法に従って、プライマ3及びプライマ4をビオチンを標識した。
PCR反応液の組成は50μl中
10mM Tris-HCl(mark)
50mM KCl(和光純薬)
1.5mM MgCl2(和光純薬)
0.1% ゼラチン(sigma)
50pmol プライマ3
5pmol プライマ4
0.25mM dATP,dCTP,dGTP,dTTP(Takara)
2.5unit Taq plymerase(Cetus)
この反応液を、加温機にて以下の条件で加温した。
【0047】95℃×1分、(95℃×1.5分、57℃×1分、72℃×2分)×40サイクル
この反応液を4℃に保存した。次いでプライマ3とプライマ4に挾まれた領域のハイブリダイゼイションプローブ(プローブ2)を混入した。プローブ2の塩基配列を示す。
【0048】プローブ2 -TCCTCTTCATCCTGCTGCTATGCCTCATCT-3’
このプローブ2の5’にFITCを付加したものを準備した。保存したPCR反応液にプローブ2を5pmol混入し、ハイブリダイゼイション工程を行った。ハイブリダイゼイション工程の手順を以下に示す。
【0049】PCR反応液50μl
1pmol/10μl プローブ2
これらを95℃に3分間保温し、次いで37℃で10分間保温し、次いで4℃に保温した。次いで精製工程を次の手順で行った。
【0050】ハイブリダイゼイション済反応液 60μl
精製洗浄液100μl(10μg 磁気ビーズ M-280 ストレプトアビジン(ダイナル))
以上を分注機で注入、混合後、10分間室温で保持し、次いで分注機の容器保持台に内蔵された磁石を作用させ、ビオチン標識されたオリゴヌクレオチドプライマーを凝集した。次いで分注機を動作させ、混合後反応液全量を吸引した。ついで、TEバッファに溶解し、検出器にて検出を行った。検出器に容器1を搬送し、オリゴヌクレオチドプローブに標識したFITCの蛍光光518nmの蛍光強度を測定した。
【0051】検出結果を図7に示す。このうち肝炎患者から抽出した試料1及び3は、非患者である試料2及び4の蛍光度よりも高い値を示した。(1)の検出結果の判定方法と同様に、このプロセスの判定基準値を測定により求め、1,000を基準値とし、プログラムした。よって図7中の判定項目に、試料No.1、No.3は陽性を示し、No.2,No.4は陰性を示し、同様に他の試料についても判定することが出来た。」

(甲16-オ)
「【0062】次いで搬送機20の詳細な構成を、図12を用いて説明する。本搬送機はモータ71、モータ間のアーム60、ハンド部61からなる自動制御機械であり、自動組立てライン等で用いられるごく一般的なロボットアームである。この先端に設けられたハンド部73はチャック部74を介して容器12を保持し、持ち上げ、移動後、容器を置くことが出来る。これらはコントローラ21に指令により動作し、容器12を分注機15、加温機16、保冷室17、検出器19のそれぞれの間を最短距離でそれぞれへ搬送することが出来る。」

15 甲17について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲17には,「Kinetic PCR Analysis:Real-time Monitoring of DNA Amplification Reaction」に関して,次の事項が記載されている。

(甲17-ア)
「この検出は、いったん増幅が始められるとチューブを開ける必要がないという点で、「均質」である。これにより、必要な労働量が減らされ、プロセスは簡単になり、PCR産物が後の反応へと『キャリーオーバー』混入するリスクが減少する。」(1029頁左欄38?42行)

(甲17-イ)
「キャップを使用しなかった場合,ミネラルオイル又はAmpliwaxTM(Perkin-Elmer, Norwalk, CT)が蒸発の障壁として使用された。」(1030頁左欄62?64行)

16 甲18について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲18には,「Automated DNA Diagnostics Using an ELISA-Based Oligonucletide Litigate Assay」に関して,次の事項が記載されている。

(甲18-ア)
「ロボット式ワークステーション. マルチピペットツールとマルチバルクツールとを備えたBiomek 1000ワークステーション(Beckman)を使用して、すべてのピペット操作手順、吸引手順、および洗浄手順を実施した。このワークステーションは、ELISAの間に洗浄液を交換するように、ソレノイドで変更されている。サンプル処理用のすべての試薬は、滅菌96ミニチューブカセット中に保存した。」(8923頁右欄14?20行)

(甲18-イ)
「図1. ロボット式ワークステーションを用いて実施した自動化PCR/OLA手順における工程の模式図。このアッセイは、以下の3つの工程を含む:1,DNA標的増幅;2,ビオチン(B)標識およびジゴキシゲニン(D)標識オリゴヌクレオチドプローブならびにT4DNAリガーゼ(L)を用いた標的ヌクレオチド配列の分析;3,ストレプトアビジン(SA)コートしたマイクロタイターウエル上でのビオチン(B)標識プローブの捕捉、ならびにアルカリホスファターゼ(AP)結合体化抗ジゴキシゲニン(αD)抗体および基質(S)を用いるELISA手順を使用することによる共有結合したジゴキシゲニン(D)の分析。」(8924頁右欄図1の説明)

(甲18-ウ)
「本アッセイのステップは自動化可能であり,これにより退屈で単調なプロセスにおいて人間が介在する必要性(及びミスの可能性)を排除することができる。自動化により,ハイスループットが可能である。現在、著者らは、1人の操作者とロボット式ワークステーションとにより、1日当たり1200の連結反応を処理し得る。」(8926頁右欄5?10行)

17 甲19について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲19には,「Automated techniques in biotechnology」に関して,次の事項が記載されている。

(甲19-ア)
「異なるPCR反応手順を実施するようにプログラムで制御可能なサーモサイクラーが広く使用されるようになっている。プログラムで制御可能なロボットも使用されており,これにより複数組のPCRチューブを異なる複数の温度ステーションに運搬することができる。PCRの自動化は以下のように二方向で進化している。1つは,特有のピペッティング装置の開発であり,これによりデリケートな液体の処理が実施可能になり,以前の反応に由来する増幅したDNAにより新たな反応混合物が汚染するのを防ぐことができる。次は,反応条件及び容器の縮小化である。長方形のシリコンチップの特定の領域をエッチングすることで,5μl?10μlのPCR試薬を保持することができるマイクロチャンバーが構築されている[15]。装置を微小化した場合,マイクロスケールのPCRは自動化にとってより魅力的なものとなるであろう[16]。」(114頁左欄51行?同頁右欄13行)

18 甲20について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲20には,「PCRの自動化によるキャリーオーバーコンタミネーションの減少」に関して,次の事項が記載されている。

(甲20-ア)
「我々は,21ヶ月にわたり手作業で実施されたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースのDNA解析実験と,Zymarkロボットシステムにより実施された25ヶ月の自動PCRとを性能比較した。PCR技術の自動化は,キャリーオーバーコンタミネーションを報告する実験数の6倍の減少をもらたし,そして,全反応間の全コンタミネーション率を68倍減少させた。手作業による実験における混入の発生は、研究間隔の間全体にわたり一様に分散し、実験室職員の経験不足と相関した。」(181頁左欄1?10行)

(甲20-イ)
「PCR実験は,Zymate IIロボットシステム(Zymark Corporation,Hopkinton,MA,USA)を用いて自動化した(Suttonら,1993;SuttonおよびWilke,1995)。DNA抽出は、このロボットシステムと同じ実験室において手作業で実施した。ロボット自動化試薬アセンブリ(プライマー、緩衝液、MgCl_(2)、デオキシヌクレオチド三リン酸、およびThermus aquaticus DNAポリメラーゼI)、サンプルローディング、PCT-100 96ウエルU底およびV底サーマルサイクラー(MJ Research,Inc.,Watertown,MA,USA),および増幅したDNAと電気泳動用緩衝液との混合.これはすべて、鋼カニューレを取り付けたHamiltonシリンジを備えたロボット式ハンドと、滅菌しておらず濾過していない使い捨て可能なピペットチップを使用する8チャネル式空気置換ピペットハンドとを使用して達成した。アンプリコンとローディング緩衝液との混合はこのロボットによって慣用的に実施したが、ゲルのうちの約75%は、手作業による実験と同じ実験室において実施した。他の25%は、このロボットを配置したのと同じ実験室おいて実施した。このDNA分析実験のすべての段階は同じロボット実験室において実施したが、手作業によるDNA抽出およびゲル電気泳動は、各々、その施設の専用の場所に委託した。」(183頁左欄25行?同頁右欄15行)

19 甲21について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲21には,「PCRベースのDNA解析における自動化」に関して,次の事項が記載されている。

(甲21-ア)
「更に,コンタミネーションを防ぎ,且つ既存のコンタミネーション問題を是正するのに役立つ複数の物理的及び化学的方法が開発されている(6-11)。自動化はPCRベースのDNA診断の信頼性を改善するための別の手段であり(12),そしてKodak(13)とRocheはそれぞれ自動化PCR装置を開発している。」(622頁左欄12?19行)

20 甲22について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲22には,「核酸配列増幅方法,組成物及びキットNucleic acid sequence amplification method, composition and kit」に関して,次の事項が記載されている。

(甲22-ア)
「図1を用いて説明すると、本発明は、RNA又はDNAである核酸標的配列(2)を,プロモーター6及びプライマー8を有するプロモーター-プライマープロモーター(6)及びプライマー(8)を有するプロモーター-プライマーを含んで成るオリゴヌクレオチドで処理することを含んで成る方法を特徴としており,ここで,プライマー(8)は,前記標的配列の3’末端(9)又はその付近で複合化できる程度当該標的配列の3’末端(9)部分と十分相補的である。プロモーター-プライマー(4)は,僅かに一本の核酸配列から実質的に成り,増幅を達成するのにその他のプロモーター-プライマーを反応混合物に導入する必要はない。」(9欄61行?10欄4行)

21 甲23について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲23には,「マイコバクテリウム属(Mycobacterium)種の核酸増幅および検出」に関して,次の事項が記載されている。

(甲23-ア)
「転写媒介増幅又は転写付随増幅とは,RNAポリメラーゼを使用して核酸の鋳型から多数のRNA転写物を生成するあるゆる種類の核酸増幅を意味する。」(8頁5?7行)

22 甲24について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲24には,「アフィニティー検定用増幅を伴う標的およびバックグラウンド捕獲法」に関して,次の事項が記載されている。

(甲24-ア)
「実施例 5.
本実施例では標的DNAの非特異的複製およびそのDNAの転写の両方が捕獲された標的DNAの増幅に使用されている。
第5図を参照すると、変性された試料DNAは上記に述べたように捕獲され、DNAポリメラーゼ酵素(例えば、クレノウ(Klenow)断片;ヨーロ・ジエイ・バイオケム(Dur.J.Biochem.)(1974)45:623、ニユー・イングランド・バイオラボス(New England Biolabs)より入手可能)、ランダムオリゴヘキサマープライマー(即ち、ヘキサマーはヘキサマー中の各ヌクレオチド位置において無秩序に選択された塩基を含むように調製されている)およびデオキシヌクレオチド三リン酸が追加の2重鎖DNAを作るために標的DNAを複製を引き起こすように適当な緩衝液に添加される。適当なオリゴヘキサマープライマーはフアルマシア・インク(Pharmacia,Inc)(ピスコタウエイ(Piscotaway)、NJ)から入手可能であり、カタログ番号27-2166に記載されている。適当なデオキシヌクレオチド三リン酸/緩衝液は次の組成を有している:
66mM グリシンNaOH緩衝液、pH9.2
6mM MgCl2
1mM 2-メルカプトエタノール
30mM 各dCTP、dGTP、dTTP、dATP
プライマーは特定の配列ではないので、単に統計的問題としてそれらのあるものは、配列に拘わりなく試料配列に結合してその複製を引き起こす。(別法として、二重鎖DNAを捕獲プローブαから開始される合成により形成することができる。)シグマサブユニツトを欠落するRNAポリメラーゼがヌクレオチド三リン酸及び低塩濃度転写緩衝液と共に添加される。標的DNA(数が増加している)からの転写はそのDNAの多くのRNAコピーを生産する。RNA転写物は実施例4のようにして捕獲され検出される。
実施例 6.
本実施例では、標的DNAがDNAポリメラーゼを用いて複製される。
第6図を参照すると、試料DNAは変性され、小さくされ、実施例4および5で述べられたようにして捕獲される。DNAポリメラーゼ、例えば、クレノウ断片、およびデオキシヌクレオチド三リン酸ランダムヘキサマーオリゴヌクレオチドと共に適当な緩衝液に添加して、非特異的二重鎖DNA合成を行わせた。インビトロで合成されたDNA生成物は加熱処理(例えば、100℃で3分間)またはそれと同じ効果を持つ処理によつて一重鎖DNAにされ、そして新たなDNAポリメラーゼが加熱処理によつて失活したものの代わりに添加される。そして更に、インビトロDNA複製が起こされる。加熱処理およびポリメリゼーシヨン反応が、標的DNAのレベルが約1000倍になるまで約10回繰り返される。複製されたDNAはインビトロで加熱もしくはアルカリによつて変性され、そして捕獲され上記に述べたようにして検出される。」(28頁右下欄18行?29頁左下欄15行)

23 甲25について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲25の2780頁のFIG.1には,自動化されたCOBAS AMPLICOR PCRシステムのカラー写真が記載され,この図には,システムが蓋を伴った内蔵型ユニットとして構成された形態が記載されている。

24 甲26について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲26には,「マイクロプレート」に関して,次の事項が記載されている。

(甲26-ア)
図3はマイクロプレートの底面図および縦断面図であり,図4はマイクロプレートの斜視図である。

25 甲27について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲27には,「PCR」に関して,次の事項が記載されている。

(甲27-ア)
「ミネラルオイル.PCRを覆うライトミネラルオイルの層は、反応チューブの蓋を加熱しないサーマルサイクラーにおいて蒸発を防ぐために必要である。通常、50?60μlのオイルが100μlのPCRに添加され、そしてその量はPCRの効率ばらつきを防ぐために標準化されるべきである。当該ばらつきはサーマルプロファイルを変更する過剰なオイルにより生じることがある。当該オイルはまた、サンプル間の汚染を防ぐのに寄与する。サーマルサイクラーの蓋が加熱される場合(例えば、P.E. Applied Biosystems 社製サーマルサイクラーGeneAmp 2400 又は9600; MJ Research 社製DNA engenes ; Techne 社製 Cyclogen 又はGene E)、反応液を油で重層する必要はない。ミネラルオイルの代替手段としてシリコンオイルを使用することもできる[13]。当該オイルはPCR後にピペットで簡単に除去することができ、あるいはクロロホルムによる抽出で除去することができる。あるいは、ピペットチップを油層から挿入して水槽(PCR)のアリコートを分析のために除去することができる。」(27頁6?20行)

26 甲28について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲28には,「サイクル シークエンシング」に関して,次の事項が記載されている。

(甲28-ア)
「PROTOCOL(Taq DNAポリメラーゼ用)
1. 3μlの適当なddNTPを4つのターミネーションチューブのそれぞれに添加する。当該チューブに蓋をし、そして氷上で保持する。
2. 各DNAの鋳型について、氷上で以下の反応成分を組み合わせ、ピペットで穏やかに、しなしながら徹底的に混合する:
鋳型
プライマー(2?5ピコモル;10?25ナノグラムの17量体)
4μlの10倍シークエンスバッファー
10μCi[α-^(32P)]dATP、又は[α-^(32S)]dATP(標識プライマーが使用されている場合には不要)
2?5ユニットのTaq DNAポリメラーゼ
最終的な体積が30μlにするための水
3. ステップ2由来の7μlの反応混合物を、ステップ2由来の4つのターミネーションチューブのそれぞれに等分して添加する。
4. 必要に応じて反応溶液に15μlのシリコンオイル又はミネラルオイルを重層する。
5.最適なサイクリングパラメータは使用する鋳型、プライマー及びサーマルサイクラーによって変動する。有用な出発時のプロファイルを以下に示す:
以下の工程を30サイクル
95℃で30秒間
60℃で30秒間
72℃で60秒間
6. 5μlの以下の停止用色素を油層に添加し、そしてピペッティングにより混合する。
7. 80℃以上で2?5分間試料を熱変性させ、直ちに配列決定用のゲルに1?3μl添加する。」(S110頁13行?S111頁3行)

27 甲29について
請求人が作成した資料であって,甲2記載装置構成において,分離工程と増幅工程とが同時に実施された場合,1日の処理能力が2112サンプルであり,分離工程と増幅工程を連続して実施された場合,1日の処理能力が768サンプルであることを示している。

28 甲30について
甲30は,核酸増幅検査(NAT検査)システムである「タイグリス^(TM)DTSシステム」および「As-1000増幅検出機/Ps-1000分離機」に関するものであり,富士レビオ(株)のインターネットサイトから,平成24年9月21日にダウンロードし,紙出力したものであり,次の事項が記載されている。

(甲30-ア)
タイグリス^(TM),すなわち,TIGRIS(登録商標)が「TMA法核酸増幅」を実施するものである。

29 甲31について
1998年の著作権表示があるものの,頒布日が不明の刊行物である甲31には,「サイクルシークエンシング」に関して,図1-3には次の事項が記載されている。

(甲31-ア)
サイクルシークエンシングにおいても鋳型(すなわち標的配列)に対応する配列が繰り返し生成される。

30 乙1?3について
乙1?3は甲2?4と同一の書証である。

31 乙4について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である乙4には,「PCRにおける汚染管理のために,増幅の前後で作業領域および物質の物理的分離を行うこと」に関して,次の事項が記載されている。

(乙4-ア)
「競合的RT PCRのための汚染管理は,良好かつ基本的なPCRに関する実験上の衛生法を課すものであり,これは,指向性のワークフローとともに,増幅前と増幅後の段階について作業領域および物質の物理的な分離を含む。検体の相互汚染の可能性を最小限にするためには,実行可能な場合には,研究室へのアクセスの制限と,操作者の徹底的な訓練もまた,ポジティブディスプレースメント式ピペットおよびエアゾール耐性ピペットチップの使用とともに重要である。」(210頁11?17行)

32 乙5について
本件特許の優先日前に頒布されたものである乙5は,「PCR前後における作業領域の分離」に関して,次の事項が記載されている。

(乙5-ア)
「PCR前およびPCR後の作業について,専用のピペッター,プラグつきピペットチップおよび分離した作業領域が指定されるべきである。」(4頁下から2?1行)

33 乙6について
乙6は,被請求人が技術水準を立証する目的で,本件特許の優先日の前ないし直後に発行された文献の一つとして提出したものである。
乙6は頒布された刊行物であるが,その頒布日については,「1998 Humana Press Inc.」と記載されるのみであり,本件特許の優先日前に頒布されたものであるのか不明である。
乙6には,「汚染回避のためのPCR関連操作の物理的分離」に関して,次の事項が記載されている。

(乙6-ア)
「高感度はまた,その主たる弱点,すなわち,その外因的な汚染に起因して偽陽性の結果を生じる傾向もPCRに与える(1,2)。それゆえ,汚染の回避は,PCR実験室,特に,診断情報を生成することに関係するものを設置する際の,一つの最も重要な考慮の対象である。」(11頁3?7行)

(乙6-イ)
「3.汚染回避の原理
多くの問題と同様に,回避は矯正よりも望ましい;そして,PCR汚染も例外でない。PCRにおける汚染回避の主要な原理は以下のとおりである:
1.個々のPCR関連操作の厳密な物理的分離:我々は,試料調製段階,PCR準備段階およびPCR後段階について3つの別々の領域を使用することを推奨する。これは,機器と同じ程度に,実験手順の遂行にも当てはまる。すなわち,設備のあらゆる物品は,いかに小さいものであっても,各領域に制限されるべきである。これは,実験ノートにも当てはまり,実験ノートは,異なる領域間で持ち運んで込んではならない。物品の移動が必須である場合,その方向は,PCR前領域からPCR後領域となるべきであり,逆はあってはならない。
a.試料調製領域:この領域は,DNAおよびRNAの抽出などの試料物質の処理のためのものである。PCR産物は,常に,この領域に入ることを許されない。ピペッティングの器具および実験着を含む専用の器具および試薬が,もっぱら試料調製の目的のために保持されるべきである。手袋は常に着用され,頻繁に交換されるべきである。一般に,試料の処理が単純であればあるほど,汚染が導入される機会がより少なくなる。専用の保存設備,例えば,フリーザーが,試料調製だけのために利用可能であるべきである。
b.PCR準備領域:PCR反応の準備は,層流フード内で実施されることが推奨される。フードの境界を定められた領域は,その領域の清潔の維持を容易にする。専用の器具および保存設備がPCR準備領域の近くに利用可能であるべきである。試料をPCR試薬に加えるための別の領域が利用可能であるべきである。DNAまたはRNA試料は,けっして,PCR準備フードの内側に入れてはならない。
c.PCR機器:PCR機器の位置は,厳密な増幅の要件に依存する。一ラウンドのPCRをともない,個々のPCRチューブが,分析の前に試薬の添加もしくはサンプリングのために開かれる必要のないPCRの用途については,PCR機器は,PCR後領域(dを参照のこと)に配置され得る。しかし,PCRチューブが開かれる必要がある用途(例えば,ネスト化PCRまたは手動によるホットスタート)については,PCR機器は,試料調製,PCR準備およびPCR後領域とは別の第4の隔離された領域に配置されるべきである。ネスト化PCRまたは手動によるホットスタートが必要とされる場合,専用のピペットセットがこの目的に割り当てられるべきである。
d.PCR後領域:これは,電気泳動,制限酵素分析およびサザンブロッティングを含むPCR産物の分析のために確保される領域である。PCR後領域からの物品は,上述した他の領域へと戻すことは許されない。これは,ノートやペンといった物品を含むことに留意することが重要である。」(12頁1?37行)

34 乙7について
乙7は,被請求人が技術水準を立証する目的で,本件特許の優先日の前ないし直後に発行された文献の一つとして提出したものである。
乙7は,1998年8月1日,すなわち本件特許の優先日後に頒布された刊行物である。
乙7には,「汚染防止のためにPCR反応と試料調製とを別の部屋で行うこと」に関して,次の事項が記載されている。

(乙7-ア)
「試料の相互汚染を防止するために厳密な予防措置を使用し,そして,RNA抽出ならびにPCR増幅の段階において,ネガディブコントロールを含めた47。増幅したcDNA配列の持ち越しを防ぐために,我々は,PCR反応を実施した部屋とは別の専用の部屋において我々の試料を調製した。
バイオセイフティーフード内でUV殺菌灯を使用して,露出された表面上に残るDNAを迅速に傷め,その後の増幅に不適当なものとした。備品およびピペッティング装置の別のセットを,試料の調製用,反応の準備用の専用とした。脱イオン水,バッファー溶液,使い捨てピペットチップおよび遠心チューブをオートクレープした。我々は,試薬をアリコートに分けて,必要とされる繰り返しのサンプリング回数を最小限にした。PCR反応において用いた全ての試薬を,PCR増幅産物が存在しない領域において調製,分割および保存した。同様に,増幅に使用したオリゴヌクレオチドを,PCR産物を含まない環境中で合成および精製した。PCR反応に関与する個人は,手袋の装着と,手袋を頻繁に交換することを要求された。ピペッティング装置のバレルは,試料RNAを含むエアゾールで汚染され,試料の相互汚染につながり得る。これを防ぐために,我々は,エアゾール耐性チップを備えたピペットを使用した。我々は,試薬を,アリコートに分ける前に混合した。全てのPCR試薬は,「予備混合物」へと組み合わせ,これを次いで,RNA/cDNAを含む反応チューブ内にピペットで入れた。予め混合したdNTP,プライマー,バッファーおよび酵素などの非試料成分は,試料cDNAより前に反応チューブに加えた(Molecular Bio-Products,San Diego,CA)。」(811頁右欄46行?812頁左欄6行)

35 乙8について
乙8は,被請求人が技術水準を立証する目的で,本件特許の優先日の前ないし直後に発行された文献の一つとして提出したものである。
乙8は,1998年12月23日,すなわち本件特許の優先日後に頒布された刊行物である。
乙8には,「汚染防止のために,鋳型調製,試薬調製,PCRサイクリングのために専用領域を定めること」に関して,次の事項が記載されている。

(乙8-ア)
「最適化の手順
・・・・・
6.サンプル準備領域。明らかに鋳型の調製,試薬の調製およびPCRサイクリングのために別々の部屋を維持するために利用可能な適切な研究室の面積を有することが望ましいが,これは,より小さい研究室において常に可能というわけではない。代わりに,アンプリコン汚染(PCR持ち越し)という特有の危険性を最小限にするために,研究室内で,少なくとも,鋳型のみが扱われる領域,ならびに,試薬の調製およびPCRサイクリング専用の領域を定めることが最善である。さらに,研究者は,どのチューブを,そして,どの方法に各領域内へと移動させるかを大いに認識すべきである。一般に,もっぱらPCR関連物品の調製および取り扱いに関連する3つの領域が指定されるべきである。物質の移動または流れは,常に,最も清浄または最も高度に純化された物質を用いる領域(試薬の調整)から,純度が劣る領域(鋳型の調整),最も純度の低いまたは最も汚い物質を含む最終領域(生成物の分析のための,サーマルサイクラーおよびゲルの箱/プレートリーダーの場所)であるべきである。図1のフローチャートに示唆されるようなPCRに関連する試料成分の一定方向の動きは,おそらく,持ち越し汚染の発生率を最小限にする。研究者は,十分に,遠心分離機,マイクロピペッター,そして,さらには実験着などの設備が,その指定された領域から出ることがないように忠告を受ける。PCR技術のこの局面に対して慎重に注意を払わなければ,DNAおよびRNAの両方の鋳型について,おそらく,遅かれ早かれがっかりさせる汚染の問題が生じるだろう。」(305頁27行?307頁12行)

36 乙9について
乙9は,被請求人が技術水準を立証する目的で,本件特許の優先日の前ないし直後に発行された文献の一つとして提出したものである。
乙9は,1999年,すなわち本件特許の優先日後に頒布された刊行物である。
乙9には,「汚染回避のために,試料調製,PCR反応準備,PCR後分析のために別々の部屋を使用すること」に関して,次の事項が記載されている。

(乙9-ア)
「PCR品質管理 汚染を回避するために,PCRを実施する際,厳重な手順を採用した。試料の調製と,PCR反応の準備と,反応生成物のPCR後分析のために別々の部屋を使用した。反応を準備する際には,全ての段階においてフィルターチップを用い,そして,試料を反応混合物に加えるためにポジティブディスプレースメント式チップを使用した。」(318頁右欄42?49行)

37 乙10について
乙10は,被請求人が技術水準を立証する目的で,本件特許の優先日の前ないし直後に発行された文献の一つとして提出したものである。
乙10は,1998年10月,すなわち本件特許の優先日後に頒布された刊行物である。
乙10には,「持ち越し汚染を回避するために,試料調製,PCR前準備,サーマルサイクリング,PCR後処理を別々の部屋で行うこと」に関して,次の事項が記載されている。

(乙10-ア)
「敗血症の直接的診断のためのネスト化PCRプロトコールの応用。確率されたネスト化PCRプロトコールは,上述のような微調整のいくつかの工程の後に,最終的に臨床症例を診断するために使用した。偽陽性および持ち越しによる汚染を最小限にするために,試料の調製,PCR前の準備,サーマルサイクリングおよびPCR後の処理は,標準的なプロトコール(6)によって推奨されるように,別々の道具を用いて別々の部屋で行った。処理の各工程において,エアゾール耐性チップ(Boehringer Mannheim)を使用した。偽陽性は,各工程においてネガティブコントロールを用いることにより厳密に排除した。」(2890頁左欄11?20行)

38 乙11について
乙11は,被請求人が技術水準を立証する目的で,本件特許の優先日の前ないし直後に発行された文献の一つとして提出した刊行物である。
乙11には,「Copyright 1997 Eaton Publishing」と記載されており,本件特許の優先日前に頒布されたものと推認される。
乙11には,「相互汚染を回避するために,検体調製,アッセイ準備,分析のために別々の部屋を使用すること」に関して,次の事項が記載されている。

(乙11-ア)
「現在,手動による核酸増幅アッセイもまた,増幅反応の最終生成物による検体の相互汚染の影響を受けやすく,これは,PCRのユーザを悩ませている問題である。核酸増幅アッセイの申し分のない感度は,1014分子もの最終生成物を含み得る増幅反応混合物からの最終生成物の2?3の分子だけが偽陽性の結果を生じ得るという信頼性であり得る。人件費を削減することに加え,密閉された使い捨ての反応パックを使用する完全な自動化核酸増幅機器は,相互汚染の可能性をほぼ排除するはずである。密閉された反応パックがない場合,増幅アッセイは,専用の設備と,検体の調製,アッセイの準備および分析のための別々の部屋の使用を必要とし得る。」(110頁28?38行)

39 乙12の1について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である乙12の1は,出願手続において,平成18年12月4日付け拒絶理由通知の中で引用文献1として引用された文献である。

40 乙12の2について
2000年1月18日,すなわち本件特許の優先日後に頒布された刊行物である乙12の2は,上記乙12の1の国内公表公報である。

41 乙13について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である乙13には,「持ち越し汚染防止のために,NASBA活動(核酸単離,増幅設定,および増幅産物の生成)に対し物理的分離を行うこと」に関して,次の事項が記載されている。

(乙13-ア)
「この1チューブ定量式(Q)-NASBAは,定量ごとに1回の増幅のみを使用し,そして,核酸の実際の単離の前に,溶解バッファー内の臨床試料に,内部標準を加えることを可能にする。」(S177頁19?22行)

(乙13-イ)
「われわれの研究室では,NASBA活動(核酸単離,増幅設定,および増幅産物の生成)に対する物理的分離を行って,持ち越し汚染を防止してきている。物理的分離は,異なる研究室を利用すること,あるいは換気フードまたはフローキャビネットを使用することによって達成している。各々の指定領域には,自分用のセットの研究用装備(ピペット)が備わり,領域の間の移動を最小限にする。」(S178頁36?41行)

(乙13-ウ)
「すべての増幅方法について存在する汚染に関する問題は,単純に,異なるNASBA活動を物理的に分離することによって対処することができる(材料および方法を参照のこと)。」(S183頁26?28行)

42 乙14について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である乙14には,「アナライザ-において,密閉された使い捨てパックを使用すること」に関して,次の事項が記載されている。

(乙14-ア)
「このアナライザ-(GalileoTM)は,密閉された使い捨てパックにおいてこれらのタスクを実施し,7時間ごとに10サンプルのスループットを1回行い,最初の結果までは3時間である。」(360頁左欄12?15行)

43 乙15について
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である乙15には,「増幅および検出アッセイにおいてパウチを使用すること」に関して,次の事項が記載されている。

(乙15-ア)
「この機器は,依然として,一度に8個のパウチを収容する。」(1932頁左欄12?13行)

(乙15-イ)
「全体的な増幅および検出アッセイの時間は,約1時間まで低減されている。代表的には,40サイクルのPCRが,95℃にて15秒間および68℃にて30秒間からなるサーマルプロフィール(傾斜あり,これには,1サイクルにつき約65秒を要する)で実行される。検出処理は,実施に約15分を要する。パウチが機器上に装填された後,システムは完全に操作者から独立するように設計され,そして,結果は,紙テープ上に出力される。」(1932頁左欄19?26行)

44 乙16について
乙16は甲5と同一の書証である。

45 乙17について
乙17は頒布された刊行物であるが,その頒布日については,「1998 Humana Press Inc.」と記載されるのみであり,本件特許の優先日前に頒布されたものであるのか不明である。
乙17には,「相互汚染回避のために,PCR前後の作業領域を物理的に分離すること」に関して,次の事項が記載されている。

(乙17-ア)
「1 臨床微生物学における核酸増幅の応用 Gorm Lisby」(目次 vii頁)

(乙17-イ)
「2.4.2偽陽性の結果
・・・・・
汚染は,過去にPCR技術の主要な問題と考えられていたが(31,32),この問題は,この技術の特別な要求に応じた職員の厳しい訓練とPCR実験室を設計(下記の見出し4.1を参照のこと),そして,市販のPCRキットに既に包含されている持ち越し防止システムの適用によって最小限度に抑えられ得る。」(6頁1?13行)

(乙17-ウ)
「4.1 実験室の設計および職員の訓練
・・・・・
相互汚染の回避における必須の要素は,PCR前とPCR後の作業領域を,物理的に分離(理想的には,2つの別々の建物に)することである。慣用的な臨床実験室において,これは実用的ではないが,社内PCR(または,LCRおよび/もしくは3SR技術の社内変法,bDNA技術は該当しない,下記の見出し5.1?5.3を参照のこと)を実施するPCR実験室についての「ゴールドスタンダード」(レベル3)を考慮すべきである:一定方向のワークフロー(実験室1から4)で,かつ,個別に気流がひけない場合には一定方向の気流(163)を持つ,4つの別々の部屋(図2)。各部屋は,少なくとも2つのドアによって他の部屋のいずれからも分離されるべきであり,可能であれば,実験室1,2および3では正の気圧が達成されるべきである。」(9頁26行?10頁1行)

(乙17-エ)
「レベル2:持ち越し防止システムが社内での分析に含まれている場合,実験室3は省略できる。臨床材料の抽出と,この抽出された材料の予め作製されたPCRミックスへの添加は,実験室2の,好ましくは,2つの層気流作業台で実施される。この実験室設計はまた,持ち越し防止手順を含むLCRおよび/または3SR技術が実施される場合にも推奨される。
レベル1:市販のPCR,LCRまたは3SRキットのみが使用される場合,患者試料の抽出および分析の準備(増幅前の手順)は,実験室1内の2つの層気流作業台の中で実施され得る。増幅および増幅後の手順は,実験室4で実施される。」(10頁9?18行)

46 乙18について
乙18は,特許庁のインターネットサイトにおいて,平成22年6月30日付けで発表された「『進歩性』のケーススタディ」の公開についての紙出力である。

47 乙19について
乙19は,ジェン-プロウブ社の製品TIGRISの宣伝広告用パンフレットであり,刊行物であるといえる。また,「2006 Gen-Probe Incorporated」との記載があることから2006年以降に頒布されたものと推測されるが,その頒布日は不明である。なお,乙19の頒布日について,請求人および被請求人の両者に争いはない。
乙19には,試料のスループットについて,「最初の結果について3.5時間,最初の結果に続いて1時間あたり100サンプルが処理されること」について記載されている。

48 乙20について
乙20は甲10と同一である。

49 乙21について
乙21は甲17と同一である。

50 乙22について
乙22は甲18と同一である。

51 乙23について
乙23は甲20と同一である。

第6 当審の判断

1 甲2発明に対する進歩性について

(1)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。

ア 甲2発明の「ロボティックシステム」は,PCR増幅反応の実施において使用するための装置であり,そのプロセスは自動化されたものである。そして,上記増幅反応が核酸に基づくものであり,該プロセスが「ロボティックシステム」内において実行されるのは明らかである。
よって,甲2発明の「血染カードからのDNA精製とPCR増幅とを連続自動化され,かつ,プログラム化されたロボティックシステムにより実行されるプロセス」は,本件発明1の「核酸に基づく増幅反応を実施するためのプロセス」に相当し,甲2発明の「ロボティックシステム」は,本件発明1の「分析器」に相当するといえる。

イ 甲2発明の「マイクロプレート供給ステーション」,「ピペッティングステーション」,「ヒートブロック」,「サーマルサイクラー」,「マイクロプレートホルダー」は,それぞれの機能および構成からみて,本件発明1の「複数のステーション」に相当する。

ウ 甲2発明においては,Amplitaq DNA ポリメラーゼおよびPCR試薬の混合物をウエルに添加した後,PCR増幅が実行されるのであるから,甲2発明の「Amplitaq DNA ポリメラーゼ」および「PCR試薬」はPCR増幅を行うための試薬として機能するものであるといえる。
一方,本件発明1において,「増幅試薬」の具体的な内容は特定されていない。本件特許明細書の発明の詳細な説明を参酌すると,「【0260】試薬コンテナ用のトレイ1922内の位置を確認するために、ベースプレート1926上には、英数字のボトル位置ラベル1940が好ましくは設けられる。好ましいラベル図式は、円で囲んだ文字-数字対(最初の文字A、E、PまたはSに続いて、番号1、2、3または4を含む)を含む。文字A、E、PおよびSは、それぞれ、増幅試薬、酵素試薬、プローブ試薬および選択試薬を表わし、これらは、分析器50の好ましい使用モードに対応しており、また、番号1?4は、トレイ1922の四分円を表わしている。各モジュラー断片1930は、各ボトル保持空洞1924の底部にて、円形穴1934を含む。穴1934は、ボトル位置ラベル1940と整列して、その結果、ラベル1940は、モジュラー断片1930がベースプレート1926で適切な位置にあるとき、見られ得る。」と記載され,増幅試薬と酵素試薬を区別している。ここで,DNAポリメラーゼは,通常,酵素試薬として扱われるものである。
そうすると,甲2発明の少なくとも「PCR試薬」は本件発明1の「増幅試薬」に含まれるものといえるから,甲2発明の「PCR試薬」は,本件発明1の「増幅試薬」に相当するといえる。

エ 甲2発明の「ピペッティングステーション」は,「DNA精製およびPCRセットアップ」を実行するためのステーションであり,「DNA精製」の実行にあたり,マイクロプレートのパンチの納められたウエルに対してFTA精製試薬を添加し,FTA精製試薬による抽出を繰り返し,精製されたパンチを得るものであるから,甲2発明において,DNA精製を行う対象となる試料はパンチ上に固定された状態にあり,DNA精製された試料もパンチ上に固定された状態にあるといえる。
また,FTA精製試薬を用いたDNA精製とは,その原理からみて,標的核酸を他の材料から分離するものであるということができる。
そうすると,甲2発明の,「FTA精製試薬」を用いた「DNA精製」「のための」「ピペッティングステーション」と本件発明1の「分離ステーション」とは,「分析器の第一位置に配置され」「複数のステーションのうちの1つである」「分離ステーション」である点で共通し,甲2発明の「該ピペッティングステーションにおいて,前記アームは,前記マイクロプレートに,ピペットチップが通過するための孔であり,吸引の際に上記チップに付着するパンチが,ウエルから取り出されないように,充分小さな孔を有した特別な蓋をかぶせ,それぞれの前記ウエルにFTA精製試薬を添加し,該FTA精製試薬による抽出を繰り返し,前記パンチは洗浄され,前記アームは,該精製されたパンチを納めた前記マイクロプレートを前記ヒートブロックに移送するステップ」と,本件発明1の「該分析器の処理デッキ上の第一位置に配置された分離ステーションにおいて、該分析器内で磁気応答性の固体支持体上に固定化された標的核酸を、流体試料中に存在する他の材料から分離する工程であって、該分離ステーションは、該処理デッキ上に配置された複数のステーションのうちの1つである、工程」とは,「該分析器の該処理デッキ上の第一位置に配置された分離ステーションにおいて,該分析器内で固体支持体上に固定化された標的核酸を,他の材料から分離する工程であって,該分離ステーションは,複数のステーションのうちの1つである,工程」である点で共通するといえる。

オ 甲2発明の「サーマルサイクラー」は「PCRを実行するため」のものであり,「マイクロプレート」のウエルには,精製されたパンチに対してPCR増幅を行う試薬として作用するAmplitaq DNA ポリメラーゼおよびPCR試薬が添加されている。ここで,PCR増幅を実行するサーマルサイクラーが,標的配列を増幅させるのに十分な時間かつ条件下でインキュベートするものであるのは当然の前提である。
また,甲2発明の「マイクロプレート」の備える「ウエル」は,その中に「血染カード」の「パンチ」が収納され,「Amplitaq DNA ポリメラーゼ」と「PCR試薬」が添加混合され,PCR増幅が実行されるのであるから,本件発明1の「反応受容器」に相当するものであるといえる。
そうすると,甲2発明の「PCRを実行するため」の「サーマルサイクラー」と本件発明1の「増幅ステーション」とは,「分析器の第二位置に配置され」「複数のステーションのうちの1つである」「増幅ステーション」である点で共通し,甲2発明の「前記サーマルサイクラーにおいて,該サーマルサイクラーの加熱されたカバーは自動的に閉じられてサーマルサイクルが行われ,PCRが完了すると,前記サーマルサイクラーのカバーは開けられて,前記アームは前記マイクロプレートを前記マイクロプレートホルダーへと移送するステップ」と,本件発明1の「該分析器の該処理デッキ上の第二位置に配置された増幅ステーションにおいて、前記分離された標的核酸を、反応受容器中で1つ以上の増幅試薬とともに、該標的核酸中に含まれる標的配列を増幅させるのに十分な時間および条件下でインキュベートする工程であって、該反応受容器は、開放頂部端と閉鎖底部端とを有するように形成されており、該増幅ステーションは該処理デッキ上に配置された該複数のステーションのうちの1つである、工程」とは,「該分析器の第二位置に配置された増幅ステーションにおいて、前記分離された標的核酸を、反応受容器中で1つ以上の増幅試薬とともに、該標的核酸中に含まれる標的配列を増幅させるのに十分な時間および条件下でインキュベートする工程」である点で共通するといえる。

カ 甲2発明の「ロボティックアーム」は「マイクロプレート」を「マイクロプレート供給部から選択し」,「ピペッティングステーション」,「ヒートブロック」,「サーマルサイクラー」,「マイクロプレートホルダー」の「各位置へ移送するよう構成され」たものであるから,甲2発明の「Amplitaq DNA ポリメラーゼが,PCR試薬に添加して混合され,該混合物がそれぞれのウエルに添加され,上記アームは,マイクロプレートをサーマルサイクラーへ配置するステップ」は,本件発明1の「該分離された標的核酸を含む反応受容器を、工程b)の前に該増幅ステーションへと運搬する工程」に相当するといえる。

キ 甲2発明は,「プログラム化されたロボティックシステム」であり,「4つのサーマルサイクラーにより」「連続的なシステムの稼働によって,1日あたり,2100のサンプルを処理」するのであるから,「DNA精製とPCRセットアップ」(分離工程)と「PCR」(増幅工程)とは,それぞれ異なるサーマルサイクラーを同時に使用して異なるマイクロプレートに対して同時に実行される(甲29参照)とともに,「ロボティックアーム」によるマイクロプレートの移送は「ソフトウエアの指示により」行われ,「あるマイクロプレートがヒートブロックにある時,他のマイクロプレートがマイクロプレート供給部からピペッティングステーションに移送されるよう構成」することも「スケジューリングソフトウエアを利用して」行われるものであり,摘記事項(甲2-カ)に「・・・操作手順は,コンピュータにより開始され,DNA精製とPCRの全体の処理は,連続的で自動的な形態で実行された。・・・」と記載されることから,これらの操作がコンピュータ制御によるものであるのは明らかである。
そうすると,甲2発明の「DNA精製とPCRセットアップには1時間,PCRには2時間要するから,4つのサーマルサイクラーにより,最初の3時間で96サンプルを処理し,その後1時間毎にさらに96サンプルを処理するという連続的なシステムの稼働によって,1日あたり,2100のサンプルを処理するとともに,システム効率を最大化するためのスケジューリングソフトウエアを利用して,あるマイクロプレートがヒートブロックにある時,他のマイクロプレートがマイクロプレート供給部からピペッティングステーションに移送されるステップ」と,本件発明1の「コンピュータコントローラが、異なるステーションに位置する異なる反応受容器において複数の異なるアッセイ手順を同時に実施するために、該複数のステーションを並行して操作し」とは,「コンピュータコントローラが、異なるステーションに位置する異なる反応受容器において複数の異なるアッセイ手順を同時に実施するために、該複数のステーションを並行して操作し」である点で共通する。

ク 甲2発明においては,「血染カードからのDNA精製とPCR増幅とを連続自動化かつ,プログラム化されたロボティックシステムにより実行されるプロセス」であり,「処理の開始のために,血染カードが準備され,カードから手作業で得られたパンチがマイクロプレートの一つのウエルに一つのパンチが入るように納められ,マイクロプレートはマイクロプレート供給部に収容されるステップ」と「処理の完了時に,PCR生成物を有したマイクロプレートは,手動によってマイクロプレートホルダーから取りはずされ解析されるステップ」以外の工程は,連続自動化されいているのであるから,甲2発明においても,その「DNA精製とPCR増幅」のプロセスは,本件発明1と同様に,「自動化工程は操作者の仲介なしに実施される」といえる。

以上より両者は, 次の点で一致し,下記の点で相違する。

(一致点)
「核酸に基づく増幅反応を実施するためのプロセスであって、該プロセスは、分析器内において以下の自動化工程:
a)該分析器の第一位置に配置された分離ステーションにおいて、該分析器内で固体支持体上に固定化された標的核酸を、他の材料から分離する工程であって、該分離ステーションは、該分析器に配置された複数のステーションのうちの1つである、工程;
b)該分析器の第二位置に配置された増幅ステーションにおいて、前記分離された標的核酸を、反応受容器中で1つ以上の増幅試薬とともに、該標的核酸中に含まれる標的配列を増幅させるのに十分な時間および条件下でインキュベートする工程であって、該増幅ステーションは該分析器内に配置された該複数のステーションのうちの1つである、工程;
c)該分離された標的核酸を含む反応受容器を、工程b)の前に該増幅ステーションへと運搬する工程、
を実施することを包含し、
コンピュータコントローラが、異なるステーションに位置する異なる反応受容器において複数の異なるアッセイ手順を同時に実施するために、該複数のステーションを並行して操作し、
該自動化工程は操作者の仲介なしに実施される、
プロセス。」

(相違点1-1)本件発明では「ハウジング」および「処理デッキ」を備え,「分離ステーション」および「増幅ステーション」を含む「複数のステーション」が「処理デッキ上に配置され」るとともに,「ハウジング内に含まれ」るものであるのに対して,甲2発明では,このような特定が無い点。

(相違点1-2)「分離ステーション」において,本件発明1では「磁気応答性の固体支持体上に固定化された標的核酸を、流体試料中に存在する他の材料から分離する工程」とするものであるのに対して,甲2発明では,このような特定がされていない点。

(相違点1-3)「増幅ステーション」おいて,本件発明1では,「反応受容器は、開放頂部端と閉鎖底部端とを有するように形成されて」いるものであるのに対して,甲2発明では,このような特定がされていない点。

(2)相違点1-1について
摘記事項(甲2-エ)に「ロボティックシステムは,4mの直線軌道にある・・・・・」と記載されるように,甲2発明のロボティックシステムの軌道となる直線軌道は4mの長さを有するものである。
また,摘記事項(甲2-ク)より,ロボティックアームの上記直線軌道に平行に,プレートホルダー,2つのサーマルサイクラー,プレート供給部,ピペッティングステーションが配置され,上記軌道の反対側にコンピュータが配置されている。
さらに,上記サーマルサイクラーはカバーを有するものであり,このカバーはマイクロプレートの出し入れに応じて開閉されるものであることから,独立した装置として構成されたものといえる。
ここで,「ハウジング」及び「処理デッキ」について,本件発明1は具体的に特定しておらず,本件特許明細書中において具体的に定義されるものでもないが,生化学試料を対象とした自動化装置において,「ハウジング」及び「処理デッキ」として通常想定されるのは,甲25に記載させるようなデスクトップ型あるいは本件特許明細書に記載された実施例のようなキャスタホイールを備えた可動型のシステムを内蔵する規模のものといえ,屋内に収容された装置の配置された,部屋の屋根や床のような規模のものを上記「ハウジング」や「処理デッキ」として解釈することはできない。
そうすると,全長4m程度に及ぶ直線軌道,さらに,プレートホルダー,2つのサーマルサイクラー,プレート供給部,ピペッティングステーション,コンピュータを含んだロボティックシステムを,単一の処理デッキ上に配置してハウジング内に納めることについて,甲2に示唆されているということはできず,また,甲2発明において甲25の記載を適用して相違点1-1のような構成とすることには動機付けもなく,むしろ,その大きさからみて,阻害要因が存在するというべきである。
したがって,相違点1-1は,当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

(3)相違点1-2について
甲2発明において,試料となるのは血染カードから得られたパンチである。
また,摘記事項(甲2-オ)に「これは,血染カードのパンチ上のDNAの精製のための新しい手法を実施することによって,達成された。PCRのインヒビターが,パンチから抽出されたが,DNAは,パンチに対して強固に固定されたままとなり,その後,固相PCRにより増幅された。DNAがパンチから取り去られる従来の手法に比べたこの方法の有利な点は,マイクロプレートのウエル間でのDNAのクロスコンタミネーションが無くなる点である。」と記載されるように,甲2発明は,パンチ上にDNAを保持することにより,クロスコンタミネーションを低減させることを意図している。
そうすると,生化学分析において標的核酸を分離する際に,試料形態を流体とし,標的核酸の分離対象を流体試料中に存在する他の材料とすることが,例えば,甲5に記載されるように,本件特許の優先権主張日前に周知であるとしても,甲2発明において,分離対象を固相から流体とすることについて動機付けは無く,むしろ阻害要因があるといえる。
したがって,相違点1-2は,当業者が容易に想到し得ることということはできない。

(4)相違点1-3について
生化学分析において用いられるマイクロプレートは,甲26の図面等から明らかなように,通常,ウエル上端部の開放された形状を有すること,および,甲2発明のウエルはピペッティングステーションにおいて特別な蓋をかぶせられることからみて,甲2発明におけるマイクロプレートは,ウエル上端部が開放された形状を有するものと解するのが自然である。反応容器とは別体の蓋等により頂部端が閉鎖されるか否かは,本件発明1に特定されておらず,また,反応容器の形状とは関係がないから,相違点1-3の判断に影響を与えるものではない。
そして,マイクロプレートのウエルの底部(端)は,閉鎖されているのは当然であり,相違点1-3は実質的な相違点とはいえない。

(5)まとめ
以上のとおり,本件発明は上記相違点1-1および1-2の点で,甲2発明および他の甲号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということができない。

2 甲3発明に対する進歩性について

(1)対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。

ア 甲3発明の「配列決定Sequatronシステム」は,摘記事項(甲3-エ)に「現在,我々は,次の各事項を実行するための,3つのSequatronシステムを有している。(i)M13ファージとPCR生成物,からのDNA精製を実行するもの,(ii)染色されたプライマーおよび染色されたターミネ-タの化学反応を用いたDNA塩基配列決定反応を実行するもの,(iii)部分的に完了したゲノム配列のギャップを埋めるために,行う,特別なPCR増幅の実行と,選択されたテンプレートの配列決定の実行を含む,フィニッシング(第3のシステムはプロトタイプが作成されたが,まだ開発中である。)を実行するもの。」と記載される3つのSequatronシステムのうち,第2のシステムである。そして,上記第2のシステムが実施する「DNA塩基配列決定反応」は,第1のシステムが「M13ファージとPCR生成物,からのDNA精製を実行するもの」であることからみて,増幅を伴うものではないと理解される。
さらに,甲3に,上記3つのシステムを統合することや,そのための具体的手段について,記載されているということもできない。
そうすると,甲3発明の「他のシステムにより精製されたDNAを用いた,DNA塩基配列決定反応を自動実行する配列決定する方法」は,DNA精製やPCR増幅を実行するものではなく,増幅を伴う配列決定反応を実行するものでもないから,本件発明の「核酸に基づく増幅反応を実施するためのプロセス」とは,「核酸に基づく反応を実施するためのプロセス」である点でのみ共通するというべきである。

イ 「DNA塩基配列決定」は一種の分析であるといえるから,甲3発明の「配列決定Sequatronシステム」は,「分析器」といえる。

ウ 甲3発明の「プレートカルーセル」,「TecanXYZステージ」,「Techne/MJ サーマルサイクラー」,「Packard XYZ液体処理ステージ」は,これらの機能および構成からみて,本件発明の「複数のステーション」に相当する。

エ 甲3発明の「マイクロタイタプレート」が試料を受容する部分を備えるのは明らかであるから,これは,本件発明の「反応受容器」に相当するものといえる。

オ 甲3発明においては「該CRSロボティックアームは,例えば,マイクロタイタプレートをカルーセルから配列決定反応のセットアップを行う二つのPackard 104 XYZロボットの一つへと移動させる動作を行うものであ」るから,甲3発明が「マイクロタイタプレート」を運搬する工程を実施することは,明らかである。

カ 甲3発明は,「DNA塩基配列決定反応を自動実行する配列決定する方法」であるから,操作者の仲介なしに実施されるといえる。

以上より両者は, 次の点で一致し,下記の点で相違する。

(一致点)
「核酸に基づく反応を実施するためのプロセスであって,該プロセスは,分析器内において,
複数ステーションでの自動化工程:
反応受容器を運搬する工程:
を実施することを包含し,
該自動化工程は操作者の仲介なしに実施される,
プロセス。」

(相違点2-1)「プロセス」が,本件発明1では「核酸に基づく増幅反応を実施するため」であるのに対して,甲3発明は,「配列決定反応を実施する」ためである点。

(相違点2-2)「分析器」が,本件発明1では「ハウジング」および「処理デッキ」を備え,「該分析器の処理デッキ上の第一位置に配置された」「複数のステーションのうちの1つである」「分離ステーション」と「該分析器の該処理デッキ上の第二位置に配置された」「該複数のステーションのうちの1つである」「増幅ステーション」とを備えているのに対して,甲3発明では,そのような構成ではない点。

(相違点2-3)「自動化工程」が,本件発明1では「該分析器内で磁気応答性の固体支持体上に固定化された標的核酸を、流体試料中に存在する他の材料から分離する工程」と「前記分離された標的核酸を、反応受容器中で1つ以上の増幅試薬とともに、該標的核酸中に含まれる標的配列を増幅させるのに十分な時間および条件下でインキュベートする工程」とを含むものであるのに対して,甲3発明では,そのような工程を包含しない点。

(相違点2-4)「反応受容器」が,本件発明1では「開放頂部端と閉鎖底部端とを有するように形成されて」いるのに対して,甲3発明では,そのような構成であるか否か不明である点。

(相違点2-5)「運搬する工程」が,本件発明では「該分離された標的核酸を含む反応受容器を、工程b)の前に該増幅ステーションへと運搬する工程」であるのに対して,甲3発明では,そのような工程ではない点。

(相違点2-6)本件発明では「コンピュータコントローラが、異なるステーションに位置する異なる反応受容器において複数の異なるアッセイ手順を同時に実施するために、該複数のステーションを並行して操作し」ているのに対して,甲3発明では,不明である点。

(2)相違点2-1について
上記「(1)ア」において検討したとおり,甲3発明は,PCR増幅の実行を行うものではなく,増幅を伴う配列決定反応を行うものということもできない。
そうすると,生化学試料のPCR増幅を自動化することが,甲2に記載されるように本件特許の優先権主張日前に公知であるとしても,甲3発明を,敢えて核酸に基づく増幅反応,すなわち核酸増幅を実施するために使用する動機付けはなく,むしろ,「核酸増幅」を別の自動化装置にて実施することを前提とする甲3発明においては,阻害要因があるというべきであって,相違点2-1は,当業者にとって容易であるということはできない。

(3)相違点2-2について
甲3発明の配列決定Sequatronシステムは,摘記事項(甲3-キ)に「中央に,マイクロタイタプレートを保持したCRSロボティックアームが配置され,その周囲に,プレートカルーセル,TecanXYZステージ,Techne/MJ サーマルサイクラー,Packard XYZ液体処理ステージ,中央パソコンが配置され,中央パソコンに対して,CRSロボティックアーム,プレートカルーセル,パソコンを介してTecanXYZステージ,Techne/MJ サーマルサイクラー,パソコンを介してPackard XYZ液体処理ステージが接続された形態が記載されている。」と記載されるように,CRSロボティックアームの周囲に,プレートカルーセル,パソコンおよびTecanXYZステージ,Techne/MJ サーマルサイクラー,パソコンおよびPackard XYZ液体処理ステージ,中央パソコンを備えるものである。
「1 甲2発明に対する進歩性について (2)相違点1について」にて述べたように,「ハウジング」及び「処理デッキ」について,本件発明1は具体的に特定しておらず,本件特許明細書中において具体的に定義されるものでもないが,生化学試料を対象とした自動化装置において,「ハウジング」及び「処理デッキ」として通常想定されるのは,甲25に記載させるようなデスクトップ型あるいは本件特許明細書に記載された実施例のようなキャスタホイールを備えた可動型のシステムを内蔵する規模のものといえ,屋内に収容された装置の配置された,部屋の屋根や床のような規模のものを上記「ハウジング」や「処理デッキ」として解釈することはできない。
そうすると,甲3発明のシステムが各処理部に加えて複数のパソコンを備えていること,各処理部の一般的なサイズや図面に記載された配置形態からして,これら全てを単一の処理デッキ上に配置してハウジングに納めることが想定されているとはいえず,当業者であっても容易になし得ることであるとはいえない。

(4)相違点2-3について
上記「(2)」で検討したとおり,甲3発明は,増幅反応の実施を想定したものではないから,「核酸に基づく増幅反応を実施するためのプロセス」において分離工程と増幅工程を自動化することが甲2に記載されているように,本件特許の優先権主張日前に公知であるとしても,甲3発明には分離工程と増幅工程に替える動機付けがなく,当業者が容易に想到し得ることということはできない。

(5)相違点2-4について
「1 甲2発明に対する進歩性について (4)相違点3について」にて述べたように,生化学分析において用いられる「マイクロタイタプレート」,すなわち「マイクロプレート」は,甲26の図面等から明らかなように,通常,ウエル上端部の開放された形状を有すること,および,甲3発明の「384ウエル」が「サーマルサイクリング装置」において「加熱された蓋」を有することからみて,甲3発明における「マイクロタイタプレート」は,ウエル上端部が開放された形状を有するものと解するのが自然である。反応容器とは別体の蓋等により頂部端が閉鎖されるか否かは,本件発明1に特定されておらず,また,反応容器の形状とは関係がないから,相違点2-4の判断に影響を与えるものではない。
そして,「マイクロタイタプレート」のウエルの底部(端)は,閉鎖されているのは当然であり,相違点2-4は実質的な相違点とはいえない。

(6)相違点2-5について
そもそも,甲3発明には「分離工程」と「増幅工程」を備えていないのであるから,「反応受容器」を「分離ステーション」から「増幅ステーション」へと運搬することはありえない。そして,前述したように,甲3発明には分離工程と増幅工程に替える動機付けがなのであるから,相違点3と同様に,相違点2-5も当業者が容易に想到し得ることということはできない。

(7)相違点2-6について
甲3の記載全体を通じて,相違点2-6に係る複数同時並行操作についての記載および示唆があるとはいえない。
また,請求人が提出した他の証拠は,甲3発明のような自動化システムにおいて,複数同時並行操作を実現するための具体的手段について開示するものではない。
さらに,分離工程と増幅工程を包含しない甲3発明に,甲2に記載された分離工程と増幅工程に関する事項を適用する動機付けはないことは明らかであり,適用しても本件発明1の作用効果を奏することができないのは明らかであるから,当業者が相違点2-6について容易に想到し得るということはできない。

(8)まとめ
以上のとおり,本件発明は上記相違点2-4以外の点で,甲3発明および他甲号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということができない。

3 甲4発明に対する進歩性について

(1)対比
本件発明と甲4発明とを対比する。

ア 甲4発明の「複合サンプルからの関心領域のDNAシーケンスを調製する自動化された方法」は,摘記事項(甲4-イ)に「本願発明の技術分野 この発明は,自動化された核酸の調製に関するものであり,自動化された核酸の調製方法とそのために用いられる装置に関するものである。発明の背景 現在,多数の大規模DNA配列決定プロジェクトが進行している。配列データの生成における律速段階の一つは高純度のDNA鋳型の調製である。・・・・・DNAの調製または操作を含む技術の進歩により、あるプロセスのために自動化装置の導入が可能になった。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施するための自動化装置、およびDNA配列決定反応を実施するための自動化装置が、公知である。」と記載され,摘記事項(甲4-シ)に「例 以下の例は,自動化されたDNA調製方法に関するものであり,図1の装置において実行の可能なものである。・・・」と記載されていることからみて,配列決定方法の全体を対象とする方法ではなく,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびDNA配列決定反応の前に実施される,高純度のDNA鋳型を調製するためのDNA調製方法,すなわち,DNA鋳型を精製する方法であるといえる。
そして,甲4の摘記事項(甲4-セ)には「シーケンシング結果 一度,上記のように鋳型が精製されると,配列決定反応の実行が可能となるが,これは予備反応の混合物が生成可能となり,事前に分注可能となるからである。ABI Taq ダイプライマーキット試薬が使用された。・・・全ての試料は,M13-21 ユニバーサル プライマーとTaqポリメラーゼを用いて,配列決定反応が行われた。反応は,Techne PHC-3ドライサイクラーにおいて行われ,それぞれの試料はミネラルオイルで覆われていた。反応の生成物は,ABI 373A DNAシーケンサーにより解析された。」と記載されているが,プライマーとTaqポリメラーゼを用いてTechne PHC-3ドライサイクラーにて行われる該配列決定反応は,甲4発明に含まれる工程ではなく,甲4発明のDNA調製後に行われる工程であるといえる。このことは,該「Techne PHC-3ドライサイクラー」が,甲4発明の「3つのヒートブロック」であることを示唆する記載がない,すなわち,実施例では「Techne製の3つのヒートブロック」あるいは「Techne PHC-3サイクラー」と記載されているものの,該記載が前記配列決定反応の「Techne PHC-3ドライサイクラー」と同じものであることを意味しているとはいえないし,該「DNAシーケンサー」が甲4発明の「基板」に配置することを示唆する記載ないことからも明らかである。
一方,本件発明1は,「核酸に基づく増幅反応を実施するためのプロセス」であって,「該分析器内で磁気応答性の固体支持体上に固定化された標的核酸を、流体試料中に存在する他の材料から分離する工程」,すなわち,「核酸に基づく増幅反応」のためのDNA鋳型となる標的核酸を精製する工程を含むものである。
また,本件特許明細書の段落【0008】には「たいていの場合、当業者に周知のいくつかの核酸増幅手順のうちの任意を使用して標的配列を増幅することが望ましい。特定的には、核酸増幅は増幅される核酸配列に相補的な配列を含む、核酸アンプリコン(コピー)の酵素的合成である。この技術において実施される核酸増幅手順の例は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、鎖置換増幅(SDA)、リガーゼ連鎖反応(LCR)および転写付随増幅(TAA)を含む。核酸増幅は、サンプル中に存在する標的配列の量が非常に低いとき特に有用である。標的配列を増幅し、そして合成されるアンプリコンを検出することにより、アッセイの感度が非常に改善される。これは、対象の生物またはウイルスに属するサンプル中の核酸の検出をより確実にするために、アッセイの開始において標的配列がほとんど必要とされないからである。」と記載されていることからみて,本件発明1の「核酸に基づく増幅反応」が,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)以外の核酸増幅を含むとしても,甲4に記載されているような「DNA配列決定反応」を含めていないことは明らかである。
そうすると,甲4発明の「複合サンプルからの関心領域のDNAシーケンスを調製する自動化された方法」と本件発明1の「核酸に基づく増幅反応を実施するためのプロセス」とは,「核酸に基づく精製反応を実施するためのプロセス」である点でのみ共通するというべきである。

イ 「複合サンプルからの関心領域のDNAシーケンスを調製する」ことは,分析の一種である「DNA配列決定」の一部であるといえるから,甲4発明の「自動化された手段」は,「分析器」といえる。

ウ 甲4発明の「ヒートブロック」,「磁気分離ステーション」,「使い捨て可能で殺菌されたピペットチップの供給部」,「チップの廃棄ステーション」,「マイクロタイタプレートを保管する領域」は,その機能からみて,本件発明1の「複数のステーション」に相当するといえる。

エ 甲4発明の「基板」は「ヒートブロック」,「磁気分離ステーション」,「使い捨て可能で殺菌されたピペットチップの供給部」,「チップの廃棄ステーション」を支持するものであり,本件発明1の「処理デッキ」に相当するといえる。

オ 甲4の摘記事項(甲4-シ)における「例 以下の例は,自動化されたDNA調製方法に関するものであり,図1の装置において実行の可能なものである。・・・そして,粒子/プローブ 複合物が加えられ,プローブは標的DNAへのアニールが可能となる。一度結合されると,粒子/プローブ/鋳型 複合物は,残りの試料から,磁力によって分離可能となり,洗浄される。・・・」との記載,(甲4-ス)における「・・・洗浄ステップ マイクロタイタプレートはサイクラーから取りはずされ,Dynal MPC-96磁気セパレータへセットされた。30秒後,上澄みは吸引され,100μlの洗浄バッファ(0.1X SSC)がそれぞれのウエルに添加され,5秒間隔で3回,プレートを磁気セパレータ上で移動させることにより,粒子は洗浄バッファ内部を移動された。このステップは,全3回繰り返された。最後に,粒子は,10μlの水の中に溶離された;磁石を用いることで,粒子はこの小さな容積に分散され得る。変性 プレートを80度で3分加熱することによって,鋳型は,プローブから,遊離される。加熱の後,粒子は磁石を用いて集められ,上澄みは新たなマイクロタイタプレートへ移された。」との記載から,甲4発明の「基板」に備えられた「磁気分離ステーション」は,標的核酸を,流体試料中に存在する他の材料から分離するためのものであるといえるから,本件発明1の「該複数のステーション」を「備え」る「該処理デッキ上の第一位置に配置され,かつ標的核酸を,流体試料中に存在する他の材料から分離するように構築および構成された,分離ステーション」に相当するといえる。

カ 甲4発明の「マイクロタイタプレート」は,処理されるサンプルを納めるのであるから,本件発明1の「分離された標的核酸を含む反応受容器」に相当するといえる。

キ 甲4発明の「ロボットヘッド38」は「マイクロタイタプレートを,枠組みの範囲中で異なる位置の間で移動させるように設計され」たものであり,「マイクロタイタプレート」を「つかみ上げ」「所望の処理を実行するために,適宜の試薬添加や試薬除去を伴い,適切な位置の間を移動」させるものである。
そして,上記「位置」が,「ヒートブロック」,「磁気分離ステーション」,「使い捨て可能で殺菌されたピペットチップの供給部」,「チップの廃棄ステーション」,「マイクロタイタプレートを保管する領域」であるのは,その機能からみて明らかである。
そうすると,甲4発明の「処理されるサンプルを納めたマイクロタイタプレートは,使用において,ロボットヘッド28によりつかみ上げられ,所望の処理を実行するために,適宜の試薬添加や試薬除去を伴い,適切な位置の間を移動される」と,本件発明1の「該分離された標的核酸を含む反応受容器を、工程b)の前に該増幅ステーションへと運搬する工程」とは,「該分離された標的核酸を含む反応受容器を運搬する工程」の点で共通するといえる。

ク 甲4発明においては「コンピューター制御手段を有し,これにより,ロボットヘッド38と対応する機能の動きを制御し協動させる」のであるから,本件発明1と同様に「操作者の仲介なしに実施される」ものであるといえる。

以上より両者は, 次の点で一致し,下記の点で相違する。

(一致点)
「核酸に基づく精製反応を実施するためのプロセスであって、該プロセスは,分析器内において以下の自動化工程:
a)該分析器の処理デッキ上の第一位置に配置された分離ステーションにおいて、該分析器内で磁気応答性の固体支持体上に固定化された標的核酸を,流体試料中に存在する他の材料から分離する工程であって、該分離ステーションは,該処理デッキ上に配置された複数のステーションのうちの1つである,工程;
c)該分離された標的核酸を含む反応受容器を運搬する工程、
を実施することを包含し,
該自動化工程は操作者の仲介なしに実施される,
プロセス。」

(相違点3-1)「分析器」が,本件発明1では「ハウジング内に含まれ」ているのに対して,甲4発明では,ハウジングの有無について不明である点。

(相違点3-2)「自動化工程」が,本件発明1では「該分析器の該処理デッキ上の第二位置に配置された増幅ステーションにおいて、前記分離された標的核酸を、反応受容器中で1つ以上の増幅試薬とともに、該標的核酸中に含まれる標的配列を増幅させるのに十分な時間および条件下でインキュベートする工程であって、該増幅ステーションは該処理デッキ上に配置された該複数のステーションのうちの1つである、工程」を実施することを包含しているのに対して,甲4発明では,そのような工程を実施することを包含していない点。

(相違点3-3)「反応受容器」が,本件発明では「該反応受容器は、開放頂部端と閉鎖底部端とを有するように形成され」るものであるのに対して,甲4発明では,そのような特定がない点。

(相違点3-4)本件発明では「コンピュータコントローラが、異なるステーションに位置する異なる反応受容器において複数の異なるアッセイ手順を同時に実施するために、該複数のステーションを並行して操作」するのに対して,甲4発明では,不明である点。

(2)相違点3-1について
「1 甲2発明に対する進歩性について (2)相違点1について」にて述べたように,「ハウジング」について,本件発明1は具体的に特定しておらず,本件特許明細書中において具体的に定義されるものでもないが,生化学試料を対象とした自動化装置において,「ハウジング」として通常想定されるのは,甲25に記載させるようなデスクトップ型あるいは本件特許明細書に記載された実施例のようなキャスタホイールを備えた可動型のシステムを内蔵する規模のものといえ,屋内に収容された装置の配置された,部屋の屋根や床のような規模のものを上記「ハウジング」として解釈することはできない。また,上記記載事項(甲16-ウ)によれば,甲16には「上記分注機、上記保冷室、上記加温機、上記検出器、上記搬送機の作動空間を覆い、装置内部作業空間と装置外部空間を遮断する筐体が設けられているから、生体試料を閉じ込めた状態で処理することができるので、作業者や環境を汚染することなく遺伝子解析を行うことが出来る。」と記載され,該「筐体」が本件発明1の「ハウジング」に類似しているといえるものの,甲16に記載のものは,本件発明1の「処理デッキ」に相当するものを有しておらず,デスクトップ型あるいは可動型のシステムを内蔵する規模のものを想定しているといえない。
そうすると,ロボットヘッド38を備えたX-Y-Zロボット10,3つのヒートブロック,磁気分離ステーション,ピペットチップの供給部およびチップの廃棄ステーションを支持した基板をハウジング内に納めることについて,甲4に示唆されているということはできず,また,甲4発明において甲25および16の記載を適用して相違点3-1のような構成とすることには動機付けもなく,むしろ,その大きさからみて,阻害要因が存在するというべきである。
したがって,相違点3-1は,当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

(3)相違点3-2について
上記「(1)ア」において検討したとおり,甲4発明は,核酸増幅の実行を行うものではなく,増幅を伴う配列決定反応を行うものということもできない。
そうすると,生化学試料のPCR増幅を自動化することが,甲2に記載されるように本件特許の優先権主張日前に公知であるとしても,それは,甲4の「自動化された手段」で実施するのではなく,それとは独立した手段にて実施されるのであって,甲4発明を,敢えて核酸増幅を実施するために使用する動機付けはなく,むしろ,「核酸増幅」および「配列決定」を別の自動化装置にて実施することを前提とする甲4発明においては阻害要因があるというべきであって,相違点3-2は,当業者にとって容易であるということはできない。

(4)相違点3-3について
「1 甲2発明に対する進歩性について (4)相違点3について」にて述べたように,生化学分析において用いられる「マイクロタイタプレート」,すなわち「マイクロプレート」は,甲26の図面等から明らかなように,通常,ウエル上端部の開放された形状を有すること,および,甲4発明における「マイクロタイタプレート」は,ウエル上端部が開放された形状を有するものと解するのが自然である。反応容器とは別体の蓋等により頂部端が閉鎖されるか否かは,本件発明1に特定されておらず,また,反応容器の形状とは関係がないから,相違点3-3の判断に影響を与えるものではない。
そして,「マイクロタイタプレート」のウエルの底部(端)は,閉鎖されているのは当然であり,相違点3-3は実質的な相違点とはいえない。

(5)相違点3-4について
甲4の記載全体を通じて,相違点3-4に係る複数同時並行操作について,記載および示唆があるとはいえない。
また,請求人が提出した他の証拠は,甲4発明のような自動化システムにおいて,複数同時並行操作を実現するための具体的手段について開示するものではない。
さらに,増幅工程を包含しない甲4発明に甲2に記載された分離と増幅に関する事項を適用する動機付けはないことは明らかであり,適用しても本件発明1の作用効果を奏することができないのは明らかであるから,当業者が相違点3-4について容易に想到し得るということはできない。

(6)まとめ
以上のとおり,本件発明1は上記相違点3-3以外の点で,甲4に記載された発明,および,他甲号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということができない。

4 本件発明2?26について
本件発明2?26は,いずれも本件発明1を引用してさらに限定したものであり,甲2?4発明のそれぞれと対比すると,上で挙げた相違点を少なくとも有している。
そして,上記相違点については,当業者といえども容易に想到し得るものでないから,新たな相違点については検討するまでもなく,本件発明2?26は,甲2?4に記載された発明,および,他甲号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5 本件特許明細書の記載要件について
(1)請求人は,「本件発明の『反応受容器は、開放頂部端と閉鎖底部端とを有するように形成されている』について,本件特許の明細書の段落【0014】には、本件の特許発明の効果として『病原曝露、汚染、および流出を多いに減少させる』と記載されている。しかしながら,反応受容器の頂部端が開放されているにも拘わらず、なぜ,病原曝露等を減少させるという効果が得られるのか,発明の詳細な説明に記載されていない。」旨を主張している。(請求書95頁15?22行)

しかしながら,請求人が主張する「病原曝露を減少させる効果」に関して,本件特許明細書には,【0013】に「手作業で行うとき,核酸に基づくアッセイに関する複雑さとかなりの数の処理工程は,医者の間違いの機会,病原への曝露,およびアッセイ中の相互汚染を導びく。・・・」と記載され,【0014】に「・・・特に,核酸に基づくアッセイの多様な処理工程を自動化することによって,かなりの利点が実現され得,これらの利点には,使用者の間違いのリスク,病原曝露,汚染,および流出を多いに減少させることが含まれ,一方でスループット容量のかなりの増加という利点が含まれる。核酸に基づくアッセイの工程の自動化はまた医者が必要とする訓練の量を減少させ,そして大容量手作業適用に起因する肉体的損傷の原因を実質的に除去する。」と記載され,【0325】に「・・・一旦,分析器50が始動され開始すると,それは,通常,操作者の補助または介入を殆どまたは全く必要としない。・・・結果的に,手動のピペット取出,インキュベーションタイミング,温度制御,および手動で行われる複数アッセイに関連した他の限界は,回避され,それにより,信頼性,効率および出力が高まる。操作者が試料に触れるのは,一般に試料の装填に限られているので,潜在的な感染の危険性は,大きく低下する。」と記載されており,上記効果は,手作業に起因する病原への曝露を,アッセイ処理工程の自動化によって減少させることによって得られるものとされ,反応受容器の頂部端が開放されたことと直接的に関連するものではないことが理解される。

よって,本件特許明細書の特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載したものではないとまではいえず,また,本件特許明細書の発明の詳細な説明が,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に,記載したものではないとまでいうことはできず,請求人の上記主張は採用できない。

(2)請求人は,「本件の請求項22の記載は、日本語の体をなしておらず、それによって特定しようとする構成要件A22の技術的意義が全く不明である。・・・・・全ての受容器容器が異なる流体サンプルを含んでおり、且つ異なる標的配列が分離されて増幅されるという態様を含むことを意味していたとしても、本件特許の明細書はその根拠を明らかにしていない。」旨を主張している。(請求書96頁12?27行)

しかしながら,請求項22は,「前記複数の反応受容器の各反応受容器は、同じかまたは異なる流体試料を含み、該同じかまたは異なる流体試料は、該各反応受容器中の該同じかまたは異なる流体試料中に存在し得る同じかまたは異なる標的核酸を同時に分離および増幅するためのものである、請求項21に記載のプロセス。」と訂正されたことにより,多試験管ユニットである「前記複数の反応受容器」,すなわち,「一体化されて形成された複数の反応受容器」の各反応受容器に,「同じかまたは異なる流体試料」が含まれる,すなわち,「同一種の流体試料」あるいは「複数種の流体試料」が収容されることが明確となるとともに,複数の多試験管ユニットが,同時に並行して「分離」あるいは「増幅」の処理が実施されることも明確となった。そして,これらの事項は,本件特許明細書の図58および段落【0073】?【0081】の記載および,同段落【0015】および【0021】の記載から十分サポートされていることは,明らかである。したがって,上記請求人の主張は採用できない。

第7 むすび
以上のとおり,本件発明1?26,すなわち,訂正後の請求項1?26に係る発明は,甲第2?4号証に記載された発明,および,他の各甲号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから,訂正後の請求項1?26に係る発明についての特許は,特許法29条2項の規定に違反してなされたものではなく,同法第123条1項2号に該当しない。
また,本件特許明細書の特許請求の範囲および発明の詳細な説明の記載は,同法36条4項および同法36条6項1,2号の規定に適合するものであるから,本件特許に対する特許は同法123条1項4号に該当しない。

審判に関する費用については,特許法169条2項において準用する民事訴訟法61条の規定により,審判費用は請求人の負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
自動化診断用分析器および方法
【技術分野】
【0001】
(1.発明の分野)
本発明は、複数診断アッセイを同時に行うための自動化分析器に関する。
【背景技術】
【0002】
(2.発明の背景)
本明細書中に記載または参照される文献はいずれも本発明の特許請求の範囲の先行技術とはならないと認められる。
【0003】
診断アッセイは、医療診断および健康科学調査において広く使用され、生物的抗原、細胞異常、疾病状態、ならびに宿主生物またはサンプルに存在する寄生虫、菌類、バクテリアおよびウイルスを含む、疾病に関連する病原を検出し、あるいは存在または量を定量化する。診断アッセイが定量化を可能にする場合、医者は、感染または疾病の程度をよりよく算定し得、経時の疾病状態を決定し得る。一般に、診断アッセイは、対象の生物またはウイルスに属する、抗原(イムノアッセイ)または核酸(核酸に基づくアッセイ)の検出のいずれかに基づく。
【0004】
核酸に基づくアッセイは一般に、対象の生物またはウイルスに特異的である、サンプル中の1つ以上の標的核酸配列の検出または定量化に導く、いくつかの工程を含む。この標的核酸配列は、生物またはウイルスの識別可能な群にも特異的であり得、ここでこの群は、群の全てのメンバーに共通し、アッセイされるサンプルにおいてその群に特異的である核酸の少なくとも1つの、共通する配列により規定される。核酸に基づく方法を使用した生物およびウイルスの個体および群の検出は、Kohneによる、米国特許第4,851,330号およびHogan米国特許第5,541,551号に詳しく記載される。
【0005】
核酸に基づくアッセイの第一工程は、対象の生物またはウイルスに属する核酸配列に対して、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件のもとで、特異性を示すプローブを設計することである。核酸に基づくアッセイは、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)のいずれかを検出するために設計され得るが、リボソームRNA(rRNA)、または遺伝子コード化rRNA(rDNA)は、典型的にはサンプル中の原核生物または真核生物の検出のための好適な核酸である。リボソームRNA標的配列は、細胞内に比較的豊富にあるため、そしてrRNAは、近接して関連する生物の間でさえ識別し得るプローブを設計するのに利用され得る配列可変性の領域を含むため、好適である。(リボソームRNAは、リボソームの主要な構造の構成要素であり、細胞中の蛋白合成の部位である。)ウイルス(rRNAを含まない)および細胞変化はしばしば標的化DNA、RNA、または蛋白を合成するために使用される核酸媒介物である、メッセンジャーRNA(mRNA)配列により、最もよく検出される。核酸に基づくアッセイの焦点が遺伝的異常の検出であるとき、慢性骨髄性白血病に伴う異常なフィラデルフィア染色体などの、遺伝情報の識別可能な変化を検出するために、プローブは通常設計される。例えばStephensonら米国特許第4,681,840号を参照のこと。
【0006】
核酸に基づくアッセイを行うとき、サンプルの調製は、サンプル中に存在し得る標的核酸を遊離し、安定化させるために必要である。サンプル調製はまた、ヌクレアーゼ活性の除去のために作用し得、そして核酸増幅(以下に記載)または標的核酸の検出の潜在的インヒビターの除去または不活性化にも作用し得る。例えば、Ryderらの米国特許第5,639,599号を参照のこと、この特許は、溶解赤血球により寄与される第二鉄イオンと錯体化し得る錯化剤の使用を含んだ、増幅のための核酸の調整のための方法を開示する。サンプル調製の方法は、変化し得、処理されるサンプル(例えば血液、尿、便、膿、痰)の性質に一部に依存する。標的核酸が、希釈されたまたは希釈されない全血サンプル中に存在する白血球集団から抽出されているとき、差示的溶解手順が一般的に続く。Ryderらの欧州特許出願第93304542.9号および欧州特許公報第0547267号を参照のこと。差示的溶解手順は、当業者には周知であり、白血球から核酸を特定的に単離するために設計され、一方で、核酸増幅または検出に干渉し得るヘムなどの赤血球産物の存在または活性を制限または除去する。
【0007】
抽出された核酸をプローブに晒す前または後に、標的核酸は、磁気ビーズなどの基質へ結合される「捕捉プローブ」を使用して、直接的にまたは間接的に、のいずれかで、標的捕捉手段によって固定化され得る。標的-捕捉法の例は、Rankiらによる米国特許第4,486,539号およびStabinskyによる米国特許第4,751,177号に記載される。標的捕捉プローブは、一般にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件のもとで標的配列もまた含む核酸の配列と、ハイブリダイズし得る、核酸の短い配列(すなわちオリゴヌクレオチド)である。反応受容器に近接して磁石が使用され、磁気ビーズを受容器の側部に引き寄せ保持する。一旦、標的核酸がこのように固定化されると、ハイブリダイズされた核酸は、反応受容器から流体を吸引すること、そして必要に応じて1つ以上の洗浄工程を行うことにより、ハイブリダイズされていない核酸から、分離され得る。
【0008】
たいていの場合、当業者に周知のいくつかの核酸増幅手順のうちの任意を使用して標的配列を増幅することが望ましい。特定的には、核酸増幅は増幅される核酸配列に相補的な配列を含む、核酸アンプリコン(コピー)の酵素的合成である。この技術において実施される核酸増幅手順の例は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、鎖置換増幅(SDA)、リガーゼ連鎖反応(LCR)および転写付随増幅(TAA)を含む。核酸増幅は、サンプル中に存在する標的配列の量が非常に低いとき特に有用である。標的配列を増幅し、そして合成されるアンプリコンを検出することにより、アッセイの感度が非常に改善される。これは、対象の生物またはウイルスに属するサンプル中の核酸の検出をより確実にするために、アッセイの開始において標的配列がほとんど必要とされないからである。
【0009】
核酸増幅の方法は、文献中に徹底して記載されている。例えば、PCR増幅は、Mullisらの米国特許第4,683,195号、4,683,202号および4,800,159号に、ならびにMethods in Enzymology、155:335-350(1987)に記載される。SDAの例は、WalkerのPCR Methods and Applications,3:25-30(1993)、WalkerらのNucleic Acids Res.,20:1691-1996(1992)およびProc.Natl.Acad.Sci.,89:392-396(1991)に見出され得る。LCRは、米国特許第5,427,930号および第5,686,272号に記載される。種々のTAAフォーマットは、Burgらの米国特許第5,437,990号;Kacianらの米国特許第5,399,491号および5,554,516号;ならびにGingerasらの国際出願PCT/US87/01966と国際公報WO88/01302および国際出願PCT/US88/02108と国際公報WO88/10315などの発行物に提供される。
【0010】
標的核酸配列の検出は、標的配列またはそのアンプリコンに対して実質的に相補的なヌクレオチド塩基配列を有するプローブの使用を要求する。選択されるアッセイ条件のもとで、サンプル中の標的配列の存在を医者が検出することを可能にする様式で、プローブは標的配列またはそのアンプリコンにハイブリダイズする。効果的なプローブは、標的配列の存在の検出に干渉する核酸配列との非特異的ハイブリダイゼーションを防ぐように設計される。プローブは検出を可能にする標識を含み得、この標識は、例えば、放射標識、蛍光色素、ビオチン、酵素または化学発光化合物である。化学発光化合物は、ハイブリダイゼーション保護アッセイ(HPA)において使用され、次いで照度計にて検出され得るアクリジニウムエステルを含む。化学発光化合物および化学発光化合物でのプローブ標識の方法例は、Arnoldらの米国特許第4,950,613号、第5,185,439号および第5,585,481号;およびCampbellらの米国特許第4,946,958号に見い出され得る。
【0011】
HPAは、標的配列またはそのアンプリコンへハイブリダイゼーションされた、アクリジニウムエステル-標識プローブの特異的な検出を可能にする差示的加水分解に基づく検出方法である。HPAは、Arnoldらによって米国特許第5,283,174号および第5,639,599号に詳細に記載される。この検出フォーマットは、溶液中でハイブリダイズされたプローブが、非ハイブリダイズプローブから識別されることを可能とし、そしてハイブリダイゼーション工程と選択工程の両方を含む。ハイブリダイゼーション工程において、アクリジニウムエステル標識プローブの余剰が、反応受容器に加えられ、標的配列またはそのアンプリコンにアニールすることが可能にされる。ハイブリダイゼーション工程に次いで、ハイブリダイズされていないプローブに伴う標識が、アルカリ性の試薬の添加による選択工程において、非化学発光的に行われる。このアルカリ試薬は、ハイブリダイズされないプローブに伴うアクリジニウムエステル標識のみを特異的に加水分解し、プローブと標的とのハイブリッドのアクリジニウムエステルを非処置および検出可能のままとする。ハイブリダイズされたプローブのアクリジニウムエステルからの化学発光は、次いで照度計を使用して測定され得、そして信号は相対光単位(RLU)で表される。
【0012】
核酸に基づくアッセイが動作する後、そして続く増幅反応の可能性のある汚染を避けるため、反応混合物は、反応受容器中の核酸および関連する増幅産物を破壊する不活性化試薬で処理され得る。そのような試薬には、酸化剤、還元剤、および核酸の一次化学構造を改変する反応性化学薬品が含まれ得る。これらの試薬は、核酸がRNAであろうとDNAであろうと、その核酸を増幅反応に対して不活性にさせることにより作用する。そのような化学試薬の例には、次亜塩素酸塩(漂白剤)の溶液、過マンガン酸カルシウムの溶液、ギ酸、ヒドラジン、硫酸ジメチル、および類似の化合物が含まれ得る。不活性化プロトコルのより詳細は、Dattaguptaらの米国特許第5,612,200号に見い出され得る。
【0013】
手作業で行うとき、核酸に基づくアッセイに関する複雑さとかなりの数の処理工程は、医者の間違いの機会、病原への曝露、およびアッセイ中の相互汚染を導びく。手作業のフォーマットに続いて、医者は試験サンプル、試薬、廃棄コンテナ、アッセイ受容器、ピペットチップ部、吸引装置、分配装置、および標的捕捉を行うための磁気ラックを安全にそして都合よく並置しなければならず、一方ラック、試験サンプル、アッセイ受容器、および関連するチップを混同しないように特に注意し、または試験管、チップ、受容器もしくは器具をひっくり返すことがないように特に注意しなければならない。加えて、医者は、アッセイ受容器間の所望しない接触、エアロゾルの形成、または標的捕捉アッセイに使用される磁気粒子もしくは他の物質の吸引を避けるための正確な遂行が要求される態様で、携帯、非固定器具で、吸引および分配工程を注意深く実行しなければならない。さらなる用心として、手作業で行われる標的捕捉アッセイ中の磁界は、しばしばアッセイ受容器の一方側のみに適用され、アッセイ受容器の反対側に沿って挿入されたピペットチップを通して流体が吸引され得るようにされる。磁界をアッセイ受容器の一方側のみに適用することは、標的捕捉アッセイを行うためのあまり効率がよくない手段であるが、医者の不正確さの結果として、磁気粒子が不必要に吸引されることを防ぐために設計される。
【0014】
核酸に基づくアッセイを行うための手作業のアプローチに関する、多くの注意が処理される自動化診断分析器の必要が存在する。特に、核酸に基づくアッセイの多様な処理工程を自動化することによって、かなりの利点が実現され得、これらの利点には、使用者の間違いのリスク、病原曝露、汚染、および流出を多いに減少させることが含まれ、一方でスループット容量のかなりの増加という利点が含まれる。核酸に基づくアッセイの工程の自動化はまた医者が必要とする訓練の量を減少させ、そして大容量手作業適用に起因する肉体的損傷の原因を実質的に除去する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の要旨)
上記の必要性は、本発明の局面に従って構成されそして操作された自動臨床分析器により、表される。一般に自動化臨床分析器は、反応受容器に含まれる複数の反応混合物の1つ以上のアッセイを行う際に含まれる、多様な自動化されたステーションまたはモジュールの操作を統合または組み合わせる。この分析器は好ましくは、自給型の独立ユニットである。アッセイ標本材料および反応受容器、および種々の溶液、試薬、およびアッセイを行うのに使用される他の材料は、好ましくは分析器内に格納され、アッセイを行うときに生成される廃棄産物も同様である。
【0016】
この分析器は、分析器制御およびアッセイスケジュールソフトウェアを動作させるコンピュータコントローラを含み、このコンピュータコントローラは、分析器のステーションの操作、および分析器を通る各反応受容器の移動を調整する。
【0017】
反応受容器は、運搬機構により回収されるピックアップ位置にて各受容器を順次提供する入力列に充填され得、この運搬機構は自動的に分析器のステーションの間で反応受容器を移動させる。
【0018】
標本コンテナが第一リングアセンブリ上で運ばれ、そして使い捨てピペットチップが第二リングアセンブリ上で運ばれる。固体支持材料の懸濁液を含む標的捕捉試薬のコンテナは、内部回転可能アセンブリ上に運ばれる。この内部回転可能アセンブリは、コンテナを選択的に揺動するかまたは自動ロボットピペットシステムのプローブによりアクセスするためのコンテナを提供するために、構成されるかまたは配置される。液体標本材料および標的捕捉試薬を含む反応混合物は、各反応受容器内のピペットシステムにより調製される。
【0019】
この分析器はさらに、そこに配置される受容器の内容物を混合するための受容器ミキサを含む。このミキサは、液体コンテナと流体連絡し得、受容器中へ1以上の流体を分配するための分配器を含み得る。1つ以上のインキュベータが温度制御チャンバ内に複数の受容器を備え、個々の容器はこのチャンバ内に自動的に配置され、そしてこのチャンバから自動的に除去され得る。磁気分離洗浄ステーションは、自動的にステーション内に配置された容器の内容物についての磁気分離洗浄手順を実施する。
【0020】
操作の好ましい方法において、アッセイ結果は、好適な調製工程の結果において、受容器から発せられる光の量により確認され得る。従って、この分析器は、反応受容器の内容物により発せられる光の量を検出するための、および/または定量化するための照度計を含む。不活化列は、アッセイの結果においてそこに配置される反応受容器の内容物を不活化させるために提供され得る。
【0021】
反応受容器は、独立して運搬機構によりステーション間を移動され得、ステーションは異なる反応受容器で異なるアッセイ手順を同時に実施するために、並行して操作され得、それにより分析器の効率的な高いスループット操作を容易化する。さらに、本発明は、核酸に基づくアッセイに伴う多様なステーションを単一の、収容されるプラットフォーム上へ配置することを容易化し、それにより効率的な空間利用を達成し得る。
【0022】
本発明の、操作の方法および、構造の要素に関連する機能および相互関係を含む、他の目的、特徴および特性は、次の説明および添付の特許請求の範囲を、添付の図面を参照して、考慮すれば明らかであり、これら図面の全ては本開示の一部を形成し、ここで類似の参照番号は多様な図における対応する部分を指示する。
上記に加えて、本発明は、以下を提供する:
(項目1)複数の反応受容器の各々に含有された流体試料中に存在し得る標的分析物を単離し増幅するための自動化プロセスであって、該プロセスは、複数のステーションで実行され、該ステーション間では、各反応受容器は、1個またはそれ以上の自動化受容器運搬機構を含む自動化受容器運搬システムにより、運搬され、各該自動化受容器運搬機構は、該反応受容器の少なくとも1個を該ステーションの1つから回収するように、そして該反応受容器を該ステーションの別のものへと運搬するように、構成され配置されており、該複数の反応受容器は、最初は、該プロセスの開始前に該複数の反応受容器を保持するための保持ステーションで保持されており、該プロセスは、該反応受容器の各々で実行される、以下:
該自動化受容器運搬システムを用いて、該反応受容器の1個を該保持ステーションから回収する工程であって、ここで、該保持ステーションから回収された各該反応受容器が、固体支持材料をさらに含有する、工程;
該自動化受容器運搬システムを用いて、該反応受容器を第一インキュベーションステーションへと運搬する工程であって、該第一インキュベーションステーションは、1個またはそれ以上のインキュベータを含み、各々は、密閉した温度制御インキュベーションチャンバを規定する、工程;
該標的分析物を該固体支持材料で固定化させるのに充分な条件下にて、一定時間にわたって、該第一インキュベーションステーションの該インキュベーションチャンバ内で、該反応受容器を滞留させる工程;
該自動化受容器運搬システムを用いて、該反応受容器を該第一インキュベーションステーションから回収する工程;
該自動化受容器運搬システムを用いて、該反応受容器を分離ステーションへと運搬する工程;
該分離ステーションにて、標的分析物分離手順を実行する工程であって、ここで、該標的分析物分離手順が、該反応受容器内にある該固体支持材料を該流体試料から単離すること、および該流体試料を該反応受容器から除去することを包含する、工程;
該自動化受容器運搬システムを用いて、該固体支持材料を含有する該反応受容器を該分離ステーションから回収する工程;
該自動化受容器運搬システムを用いて、該反応受容器を第二インキュベーションステーションへと運搬する工程であって、該第二インキュベーションステーションは、1個またはそれ以上のインキュベータを含み、各々は、密閉した温度制御インキュベーションチャンバを規定し、ここで、該第一および第二インキュベーションステーションは、互いに独立しているか、または少なくとも1個のインキュベータを共有している、工程;
該反応受容器を該第二インキュベーションステーションへと運搬する前または後にて、該反応受容器に増幅試薬を分配する工程;および
該標的分析物を増幅させるのに充分な条件下にて、一定時間にわたって、該第二インキュベーションステーションの該インキュベーションチャンバ内で、該反応受容器を滞留させる工程、
を包含する、プロセス。
(項目2)前記標的分析物分離手順がさらに、以下:
前記流体試料を前記反応受容器から除去した後、該反応受容器に洗浄バッファを分配する工程;
該反応受容器を攪拌して、該洗浄バッファおよび前記固体支持材料を混合する工程;
該反応受容器内の該固体支持材料を、該洗浄バッファから単離する工程;および
該洗浄バッファを該反応受容器から除去する工程、
を包含する、項目1に記載の方法。
(項目3)自動化分析器のステーション間で反応受容器を運搬するための運搬機構であって、該反応受容器は、操作構造体を含み、該運搬機構は、以下:
受容器キャリアアセンブリであって、回転軸の周りで回転可能であるように、そして該受容器キャリアアセンブリが該回転軸の周りで回転している間、反応受容器を受容して該反応受容器を運ぶように、構成され配置されている、受容器キャリアアセンブリ;
操作フック部材であって、該操作フック部材は、該受容器キャリアアセンブリと相互関係に置かれて、それに対して移動可能であるようにされており、該反応受容器の該操作構造体と噛み合い可能であるように、構成され配置されている、操作フック部材;および
フック部材駆動アセンブリであって、該フック部材駆動アセンブリは、フックモーターおよび親ネジ機構を含み、該フックモーターは、それに対して定位置で該受容器キャリアアセンブリに備えられた固定構造体を有し、そして該親ネジ機構は、該回転軸に対して略半径方向で配向されたネジ付きシャフトを含み、そして該操作フック部材に連結された末端を有し、ここで、該親ネジ機構は、該フックモーターに操作可能に連結されており、そして該フックモーターの動力運動を、該ネジ付きシャフトのいずれかの軸方向で、該フックモーターの該固定構造体に対して、該ネジ付きシャフトの運動へと変換するように、構成され配置されて、それにより、該操作フック部材により噛み合わされた反応受容器が該受容器キャリアアセンブリに対して移動できるように、該受容器キャリアアセンブリに対して、該操作フック部材の対応する運動を引き起こす、フック部材駆動アセンブリ、
を含む、機構。
(項目4)反応流体を含有する複数の反応受容器を受容し、該反応流体を温度制御環境で維持するためのインキュベータであって、該インキュベータは、以下:
ハウジングであって、該ハウジングは、その中に形成された受容器アクセス開口部を含み、該受容器アクセス開口部は、該受容器アクセス開口部を通って、該ハウジングの中または外へ該反応受容器を移動させるためにある、ハウジング;
コマンド応答性閉鎖機構であって、該コマンド応答性閉鎖機構は、該受容器アクセス開口部に近接した関係で、該ハウジングに接続されており、ここで、該コマンド応答性閉鎖機構は、該アクセス開口部を通しての該ハウジングへのアクセスを防止または許容するために、対応する閉鎖運動コマンドに応答して、該受容器アクセス開口部に対して、閉鎖位置と開放位置との間で移動可能であるように、構成され配置されており、
該ハウジングおよび該コマンド応答性閉鎖機構は、その中でインキュベーションチャンバを規定する囲壁を構成する、コマンド応答性閉鎖機構;
該インキュベーションチャンバと熱連絡している、熱源;
動力ファン機構であって、該動力ファン機構は、該インキュベーションチャンバ内に配置されており、そして該インキュベーションチャンバ内で空気運動を発生させて該インキュベーションチャンバの内部でのほぼ均一な温度分布を促進するように、構成され配置されている、動力ファン機構;
受容器キャリアであって、該受容器キャリアは、該インキュベーションチャンバ内に配置されており、そして複数の受容器ステーションを含み、該受容器ステーションの各々は、単一の反応受容器を運ぶように、構成され配置されており、該受容器キャリアは、該アクセス開口部に対して受容器運搬位置で、該複数の受容器ステーションのいずれかを提供するように、構成され配置されている、受容器キャリア、
を含む、インキュベータ。
(項目5)反応流体を含有する複数の反応受容器を受容し、該反応流体を温度制御環境で維持するためのインキュベータであって、該インキュベータは、以下:
ハウジングであって、該ハウジングは、その中に形成された受容器アクセス開口部を含み、該受容器アクセス開口部は、該受容器アクセス開口部を通って、該ハウジングの中または外へ該反応受容器を移動させるためにある、ハウジング;
コマンド応答性閉鎖機構であって、該コマンド応答性閉鎖機構は、該受容器アクセス開口部に近接した関係で、該ハウジングに接続されており、ここで、該コマンド応答性閉鎖機構は、該アクセス開口部を通しての該ハウジングへのアクセスを防止または許容するために、対応する閉鎖運動コマンドに応答して、該受容器アクセス開口部に対して、閉鎖位置と開放位置との間で移動可能であるように、構成され配置されており、
該ハウジングおよび該コマンド応答性閉鎖機構は、その中でインキュベーションチャンバを規定する囲壁を構成する、コマンド応答性閉鎖機構;
該インキュベーションチャンバと熱連絡している、熱源;
受容器キャリアであって、該受容器キャリアは、該インキュベーションチャンバ内で配置されており、そして複数の受容器ステーションを含み、該受容器ステーションの各々は、単一の反応受容器を運ぶように、構成され配置されており、該受容器キャリアは、該アクセス開口部に対して受容器運搬位置で、該複数の受容器ステーションのいずれかを提供するように、構成され配置されている、受容器キャリア;ならびに
受容器混合機構であって、該受容器混合機構は、該ハウジングに取り付けられており、そして該混合機構に対して操作可能な位置に配置された受容器ステーションで運ばれる反応受容器を攪拌して、それにより、該反応受容器に含有された該反応流体を混合するように、構成され配置されている、受容器混合機構、
を含む、インキュベータ。
(項目6)自動化分析器のためのモジュールであって、該モジュールは、以下:
(A)該モジュールの1つから該モジュールの別のものへと反応受容器を運搬するための運搬機構であって、該反応受容器は、操作構造体を含み、該運搬機構が、以下:
(1)受容器キャリアアセンブリであって、該受容器キャリアアセンブリは、回転軸の周りで回転可能であるように、そして該受容器キャリアアセンブリが該回転軸の周りで回転している間、反応受容器を受容して該反応受容器を運ぶように、構成され配置されている、受容器キャリアアセンブリ;
(2)操作フック部材であって、該操作フック部材は、該受容器キャリアアセンブリと相互関係に置かれて、それに対して移動可能であるようにされており、該操作フック部材は、該反応受容器の該操作構造体と噛み合い可能であるように、構成され配置されている、操作フック部材;および
(3)フック部材駆動アセンブリであって、該フック部材駆動アセンブリは、フックモーターおよび親ネジ機構を含み、該フックモーターは、それに対して定位置で該受容器キャリアアセンブリに備えられた固定構造体を有し、そして該親ネジ機構は、該回転軸に対して略半径方向で配向されたネジ付きシャフトを含み、そして該操作フック部材に連結された末端を有し、ここで、該親ネジ機構は、該フックモーターに操作可能に連結されており、そして該フックモーターの動力運動を、該ネジ付きシャフトのいずれかの軸方向で、該フックモーターの該固定構造体に対して、該ネジ付きシャフトの運動へと変換するように、構成され配置されて、それにより、該操作フック部材により噛み合わされた反応受容器が該受容器キャリアアセンブリに対して移動できるように、該受容器キャリアアセンブリに対して、該操作フック部材の対応する運動を引き起こす、フック部材駆動アセンブリ、
を含む、運搬機構;ならびに
(B)反応流体を含有する複数の該反応受容器を受容し、該反応流体を温度制御環境で維持するためのインキュベータであって、該インキュベータは、以下:
(1)ハウジングであって、該ハウジングは、その中に形成された受容器アクセス開口部を含み、該受容器アクセス開口部は、該受容器アクセス開口部を通って、該ハウジングの中または外へ該反応受容器を移動させるためにある、ハウジング;
(2)コマンド応答性閉鎖機構であって、該コマンド応答性閉鎖機構は、該受容器アクセス開口部に近接した関係で、該ハウジングに接続されており、ここで、該コマンド応答性閉鎖機構は、該アクセス開口部を通しての該ハウジングへのアクセスを防止または許容するために、対応する閉鎖運動コマンドに応答して、該受容器アクセス開口部に対して、閉鎖位置と開放位置との間で移動可能であるように、構成され配置されている、コマンド応答性閉鎖機構、
ここで、該ハウジングおよび該コマンド応答性閉鎖機構は、その中でインキュベーションチャンバを規定する囲壁を構成する;
(3)該インキュベーションチャンバと熱連絡している、熱源;
(4)受容器キャリアであって、該受容器キャリアは、該インキュベーションチャンバ内に配置されており、そして複数の受容器ステーションを含み、該受容器ステーションの各々は、単一の反応受容器を運ぶように、構成され配置されており、該受容器キャリアは、該アクセス開口部に対して受容器運搬位置で、該複数の受容器ステーションのいずれかを提供するように、構成され配置されている、受容器キャリア、
を含む、インキュベータ、
を含み、
該インキュベータは、該インキュベータからの妨害なしで、該受容器キャリアアセンブリを回転させるように、該運搬機構の該受容器キャリアアセンブリにより揺り動かされる円弧の半径方向外側に配置され、そして該インキュベータは、該運搬機構の該受容器キャリアアセンブリにより揺り動かされる円弧に隣接して該アクセス開口部が配置されるよう配向され、それによって、該運搬機構が、以下:
(a)該コマンド応答性閉鎖機構が該開放位置にあるとき、該受容器キャリアアセンブリを該受容器アクセス開口部と協同して整列するように回転することにより、そして該操作フック部材を、該受容器キャリアアセンブリに対して第一方向で移動して、該反応受容器を、該受容器キャリアアセンブリから、該受容器アクセス開口部を通って、該複数の受容器ステーションの空の1個内で支持されて噛み合うように移動することにより、該運搬機構により運ばれる該反応受容器を、該アクセス開口部を通って、該空の受容器ステーションへと挿入すること、および
(b)該コマンド応答性閉鎖機構が該開放位置にあるとき、該受容器キャリアアセンブリを該受容器アクセス開口部と協同して整列するように回転することにより、そして該操作フック部材を、該第一方向で移動して、該操作フック部材の少なくとも一部を、該受容器アクセス開口部を通って挿入し、該受容器ステーションで運ばれる反応受容器の該操作構造体を噛み合わせることにより、引き続いて、該操作フック部材を、該反応受容器キャリアアセンブリに対して第二方向で移動して、該反応受容器を、該受容器ステーションから、該受容器アクセス開口部を通って、該受容器キャリアアセンブリ内で支持されて噛み合うように引き出すことにより、該受容器キャリアの該受容器ステーションから該反応受容器を取り除くこと、
を可能とする、モジュール。
(項目7)磁気応答性粒子を含みかつ反応受容器に含有される溶液に対して磁気分離精製操作を実行するための装置であって、該装置は、以下:
受容器キャリアユニットであって、磁気応答性粒子を含む溶液を含有する反応受容器を受容するように、そして該磁気分離精製操作を通じて該反応受容器を運ぶように、構成され配置されている、受容器キャリアユニット;
磁石移動構造体であって、磁場を発生させる少なくとも1個の磁石を含み、ここで、該磁石移動構造体は、該受容器キャリアユニットで運ばれる該反応受容器に対して、第一位置と第二位置との間で、該少なくとも1個の磁石を移動するように、構成され配置されている、磁石移動構造体、
ここで、該少なくとも1個の磁石が該第一位置にあるとき、該少なくとも1個の磁石の該磁場は、該磁気応答性粒子を、該少なくとも1個の磁石に隣接した該反応受容器の内面へと引き出し、そしてここで、該磁気応答性粒子に対する該磁場の効果は、該少なくとも1個の磁石が該第一位置にあるときよりも、該少なくとも1個の磁石が該第二位置にあるときの方が少ない;
流体運搬機構であって、該受容器キャリアユニットで運ばれる該反応受容器へと流体を選択的に分配するように、そして該反応受容器から流体を引き出すように、構成され配置されている、流体運搬機構;および
キャリア攪拌機構であって、該キャリア攪拌機構は、該受容器キャリアユニットに操作可能に連結されており、そして該受容器キャリアユニットに周期運動を与えて該受容器キャリアユニットで運ばれる該反応受容器に含有される該溶液を攪拌し混合するように、構成され配置されている、キャリア攪拌機構、を含む、装置。
(項目8)アセンブリであって、以下:
第一リングアセンブリであって、該第一リングアセンブリは、第一回転軸の周りで回転可能であるように、構成され配置されており、該第一リングアセンブリは、内周および外周を有する環状流体コンテナキャリア部分を含み、該内周と該外周との間で、該流体コンテナキャリア部分が規定されており、該流体コンテナキャリア部分は、複数の流体コンテナを運ぶように、構成され配置されている、第一リングアセンブリ;および
第二リングアセンブリであって、該第二リングアセンブリは、該第一回転軸とほぼ平行な第二回転軸の周りで、該第一リングアセンブリとは無関係に回転可能であるように、構成され配置されており、該第二リングアセンブリは、該第二リングアセンブリの外周の少なくとも一部が該第一リングアセンブリの該流体コンテナキャリア部分の該内周に半径方向内側に配置されるように、該第一リングアセンブリに対して、位置づけられており、該第二リングアセンブリは、その上に複数のピペットチップを備えるように、構成され配置されている、第二リングアセンブリ;
を含む、アセンブリ。
(項目9)前記第二リングアセンブリが、内周および外周を有するピペットチップキャリア部分を含み、該内周と該外周との間で、該ピペットチップキャリア部分が規定されており、ここで該アセンブリは、内部回転アセンブリをさらに含み、該内部回転アセンブリは、第一回転軸および第二回転軸に対して概して平行である第三回転軸の周りに第一リングアセンブリおよび第二リングアセンブリとは独立して回転可能であるように構成され配置されており、該内部回転アセンブリは、該第二リングアセンブリに対して配置されており、その結果、該内部回転アセンブリの外周の少なくとも一部が、該第二リングアセンブリの該ピペットチップキャリア部分の該内周に半径方向内向きに配置されており、該内部回転アセンブリがその上の複数の流体容器を運搬するために構成され配置されている、項目8に記載のアセンブリ。
(項目10)少なくとも1個のコンテナの流体内容物を攪拌するための装置であって、以下:
第一回転軸の周りで回転可能であるように構成され配置されている、ターンテーブル構造体;
1個またはそれ以上のコンテナホルダーであって、各々は、回転軸を有し、その中でコンテナを保持するように、構成され配置されており、該ターンテーブル構造体と共に回転可能であるように、また、各コンテナホルダーの該回転軸が該第一回転軸とほぼ平行になるように、該ターンテーブル構造体に取り付けられている、コンテナホルダー;
コンテナホルダー取付アセンブリであって、該コンテナホルダー取付アセンブリは、各1個のコンテナホルダーに付随しており、ここで、該コンテナホルダー取付アセンブリは、該付随コンテナホルダーを該ターンテーブル構造体に取り付けるように、そして該付随コンテナホルダーを、該第一回転軸および該コンテナホルダーの該回転軸の両方とほぼ平行であってそれらから間隔を置いて配置された第二回転軸の周りで、回転させるように、構成され配置されている、コンテナホルダー取付アセンブリ;および
回転運動連結要素であって、該回転運動連結要素は、該回転構造体および該コンテナホルダー取付構造体に操作可能に付随しており、そして該ターンテーブル構造体が該第一回転軸の周りで回転するにつれて、各コンテナホルダーを該第二回転軸の周りで回転させるように、構成され配置されている、回転運動連結要素、
を含む、装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
(分析器概要)
本発明に従った自動化診断分析器は、図1および2において一般に参照番号50により示される。分析器50は、好適には鋼で作製された内部フレーム構造62上に構築されたハウジング60を含む。分析器50は、好ましくは分析器を可動にさせるようにフレーム構造62に構造的に取りつけられたキャスタホイール64により支持される。
【0024】
自動化アッセイを行うことに伴う多様なステーションおよびアッセイ標本は、ハウジング60内に収容される。加えて、多様な溶液、試薬およびその他のアッセイを行うのに使用される材料が、好ましくはハウジング60内に格納され、アッセイが分析器50を用いて行われるときに生成する廃物も同様である。
【0025】
ハウジング60は、図1に示される、試験受容器充填開口68を含み、これはハウジング60の前面に面するパネルに配置されるが、ハウジング60の他のパネルにも配置され得る。観察窓72を有するピペットドア70および観察窓76を有するカルーセルドア74が、ほぼ水平の作業表面66の上方に配置される。前面に突出するアーチ状パネル78は、以下に詳細を記載する標本カルーセルを収容する。はじき上げアーチ状標本ドア80がハウジングに旋回的に装着され、アーチ状パネル78に対して垂直に旋回するようにし、パネル78の後ろの標本カルーセルの前部へのアクセスを提供するようにする。ドアが閉められるときセンサが表示し、そして標本ドア80、カルーセルドア74およびピペットドア70が、分析操作中ロックされる。各ドアについてのロック機構は好ましくは、バネ戻りを有する(連続使用のための仕様の)DCロータリーソレノイドに装着されたフックを有する。好ましいロータリーソレノイドは、Lucas Control Systems,of Vandalia,Ohioから入手可能であり、型番L-2670-034とL-1094-34である。
【0026】
拡張部102は、好ましくは透明または半透明材料から作成され、ハウジング60内で構成要素を動かすための垂直隙間を提供するようにする。
【0027】
アッセイは、以下に述べる分析器50の多様なアッセイステーションの一般的な位置である、処理デッキ200上で主に行われる。例示の簡単のために、処理デッキ200は、その上にアッセイステーションが1つも取り付けられることなく図2に示される。処理デッキ200は、多様なステーションが直接にまたは間接に取り付けられるデータプレート82を備える。データプレート82は好ましくは機械加工されたアルミプレートから構成される。処理デッキ200は、また化学デッキとしてもまた公知であり、ハウジングの内部をデータプレート82の上方の化学領域または上部シャーシ、およびデータプレート82の下方に配置される格納領域または低部シャーシ1100に分離する。
【0028】
多数のファンおよびルーバは好ましくはハウジング60の上部シャーシ部に提供され、上部シャーシ中へ空気循環を生成し、上部シャーシ内の過剰温度を回避する。
【0029】
本発明の分析器50はコンピュータ制御されるため、この分析器50はコンピュータコントローラを含み、図2のボックス1000として概略的に示され、「アッセイマネージャプログラム」として公知の高レベル分析器制御ソフトウェアを作動させる。アッセイマネージャプログラムは、化学デッキ200を通じて試験標本動作を監視しおよび制御するスケジューラルーチンを含む。
【0030】
分析器50を制御するコンピュータシステム1000は、CPU、キーボード、モニタ、および必要に応じて含まれ得るプリンタ装置を含む単独型コンピュータシステムを含み得る。ポータブルカートもまた多様なコンピュータ構成要素を格納して支持するために提供され得る。あるいは、分析器制御ソフトウェアを作動させるためのコンピュータハードウェアは、分析器50のハウジング60内に一体的に収容され得る。
【0031】
分析器50の全体を通じて使用される電気モータおよびヒータの制御、およびバルク流体および廃棄流体コンテナ内の流体レベルのモニタリングなどの、低レベル分析器制御は、好ましくはMotorola 68332マイクロプロセッサを備える埋め込みコントローラにより行われる。分析器全体を通じて使用されるステッパモータもまた、E-M Technologies,Bala Cynwyd,Pennsylvaniaから入手可能な、予めプログラムされた既製のマイクロプロセッサチップにより好ましくは制御される。
【0032】
処理デッキ200が図3および4に概略的に示される。図3は、処理デッキ200の一部の概略平面図を示し、そして図4は、処理デッキの概略斜視図を示す。データプレート82は、その上に全てのステーションが直接にまたは間接に装着される処理デッキ200の基礎を形成する。
【0033】
処理デッキ200はハウジング60の前面の開口68から延びる、反応受容器入力列150を含む。複数の反応受容器が入力列150において積み重なる様式で充填される。入力列の目的は、処方された複数の反応受容器を保持し、そして順次に取り出し位置においてそれらを提供し、運搬機構により回収される(以下に述べる)。取り出し位置における反射センサにより、その位置における受容器の存在を確認する。入力列はまた、所与の時間においてその中に存在する受容器の数を数えるための装置も含む。
【0034】
この列内の反応受容器シャトルアセンブリ(図示せず)は、受容器を、取り出し位置に向って受容器前進経路に沿って動かす。シャトルアセンブリがそのホーム位置および充分に伸張した位置にあるとき、光センサが表示する。この列は、その中に受容器を充填するために引き出し得る、引き出しを含む。しかし、引き出しが開けられる前には、ロックが解除され、そしてシャトルが受容器前進経路から外れなければならない。引き出しが再び閉められるとき、ロックされそしてシャトルは受容器と係合し、そしてそれらを取り出し位置に向って動かす。引き出しが閉められそしてシャトルが受容器と係合したとき、光センサが表示する。各受容器が運搬機構により取り出し位置から除去されるとき、受容器シャトルは、受容器を1受容器幅だけ移動させ、次の受容器が取り出し位置にくるようにする。
【0035】
反応受容器は、好ましくは試験管の直線状アレイを一体的に形成され、そして多試験管ユニットとしてまたはMTUとして公知である。この好ましい反応受容器(MTU)は、以下により詳細に記載される。
【0036】
第一リングアセンブリは、好ましい実施形態においては標本リング250を備え、データプレート82の上方の遠位にて旋回ジグプレート130上に取り付けられる。標本リング250はほぼ円状であり、好ましくはその環状流体コンテナキャリア部内で9つまでの標本トレイ300を保持する。そして各標本トレイは好ましくは20個の標本含有コンテナまたは試験管320を保持する。標本リング250は、第一の回転のほぼ垂直軸の周りに回転可能であるように構成および配置され、標本管320を、好ましくは自動化ロボットピペットシステムである、標本ピペットアセンブリ450に送達する。標本リング250の前面部はハウジング60に備わるはじき上げカルーセルドア80を通じてアクセス可能であり、試験管320のトレイ300が容易に標本リング250に充填され得、そして標本リングから容易に充填を取り出され得る。標本リング250は、モータにより駆動され、以下により詳細に記載される。
【0037】
第二リングアセンブリは、好ましい実施形態においてはピペットチップホイール350を備え、標本リング250の内側部に配置され、少なくともピペットチップホイール350の外側周辺の部分がリング250の内側周辺に半径方向内向きに配置されるようにする。ピペットチップホイール350は、その上に複数の市販のピペットチップのパッケージを備える。ピペットチップホイール350は、モータ駆動され、標本リング250の第一の回転軸にほぼ平行である、第二の回転軸の周りで、標本リング250と独立して回転させる。
【0038】
複数の流体コンテナを有するように構成および配置された内側回転可能アセンブリは、ピペットチップホイール350の内側部分に提供される。好適な実施形態においては、内側回転可能アセンブリは、ピペットチップホイール350(すなわち第二リングアセンブリ)および標本リング250(すなわち第一リングアセンブリ)内の半径方向内側に配置される、多軸ミキサ400を備える。多軸ミキサ400は、第一の回転軸および第二の回転軸にほぼ平行な第三の回転軸の周りに回転可能である、回転ターンテーブル414を含み、そしてその上に4つの独立して偏心的に回転するコンテナホルダ406が取りつけられる。コンテナホルダ406のそれぞれはコンテナを、好ましくは固定化したポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチド捕捉プローブとともに磁性粒子のフルイドサスペンションを含む、プラスチックボトルの形態で受容する。各コンテナホルダ406は、形状がほぼ円筒状でありそして対称の軸または回転の軸を含む。多軸ミキサ400は、ホルダ406の中心に対して偏心的に各コンテナを回転させ、一方同時にターンテーブル414をその中心のまわりに回転させ、コンテナの実質的に一定な揺動を提供するようにし、流体中で磁性粒子を懸濁液に維持する。
【0039】
標本ピペットアセンブリ、またはロボット、450は、標本リング250およびピペットチップホイール350の上方の位置にあるフレーム構造62(図2参照)に取り付けられる。標本ピペットアセンブリ450は、ガントリーアセンブリに取りつけられた管状プローブ457を有するピペットユニット456を含み、X,Y,Z運動を提供する。特に、ピペットユニット456は、横レール454に形成されたトラック458に沿ってY方向に直線的に可動であり、そして横レール454は長手トラック452に沿ってX方向に長手に移動可能である。ピペットユニット456は、プローブ457の垂直のすなわちZ軸運動を提供する。標本ピペットアセンブリ450内の駆動メカニズムは、ピペットユニット456を分析器50内のピペット流体への正しいX,Y,Z座標へ配置させ、ピペットユニット456のプローブ457を洗浄し、ピペットユニット456のプローブ457の端部から保護チップを廃棄し、または不使用時の間(例えば「ホーム」ポジションにおいて)ピペットユニット456を収容する。標本ピペットアセンブリ450の各軸は、公知のそして通常の様式によってステッパモータにより駆動される。
【0040】
ピペットアセンブリは、好ましくは既製品である。現在好ましいのは、Cavro Inc.of Sunnyvale,Californiaから入手できるRobotic Sample Processor、型番RSP9000である。このモデルは単一ガントリーアームを備える。
【0041】
標本ピペットアセンブリ450は、好ましくはシリンジポンプ(図示されず)(the Cavro XP 3000が使用された)およびDC駆動ダイアフラムシステム流体洗浄ポンプ(図示されず)に結合される。標本ピペットアセンブリ450のシリンジポンプは好ましくは、化学デッキ200の左手側の上方の置において、分析器50のハウジング60内の内部フレーム構造62に取りつけられ、そして好適なチュービング(図示されず)または他の導管構造によりピペットユニット456に接続される。
【0042】
標本調製開口252は、ジグプレート130内に提供され、標本ピペットアセンブリ450が、ジグプレート130の下方に配置される入力列150内の反応受容器160にアクセスし得るようにされる。
【0043】
分析器50の標本ピペットアセンブリ450は、嵩上げカバープレート138の開口140、142を通じた標本リング250上に保持される標本管320に係合し、標本リング250およびピペットチップホイール350の後部の近くのピペットチップホイール350上に保持されるピペットチップに、それぞれ係合する。従って、操作者は、標本リング250および、ピペットチップホイール350の前部に、分析器の操作中にカルーセルドア開口80を通じて、ピペット手順を妨害することなくアクセスを有し得る。
【0044】
チップ洗浄/処分ステーション340はジグプレート130上の標本リング250に隣接して配置される。ステーション340は、チップ処分チューブ342及び洗浄ステーションベイスン346を含む。標本調製の間、標本ピペットアセンブリ450のピペットユニット456は、洗浄ステーションベイスン346の上方の位置に動き得、この洗浄ステーションベイスン346において管状プローブ457が、プローブ457を通って蒸留水をポンピングすることにより、洗浄され得る。洗浄ステーションのベイスン346は好ましくは可撓性ホース(図示されず)により低部シャーシ1100中の液体廃棄コンテナに接続される。
【0045】
チップ処分チューブ342は直立管状部材を備える。標本管320からの反応受容器160への標本移動の間、細長ピペットチップは摩擦的にピペットユニット456の管状プローブ457の端部へ固定され、材料が標本管320から引かれ細長ピペットチップへ至るときまで、標本材料は、ピペットユニット456の管状プローブ457に接触しないようにされる。標本が標本管320から移された後、その標本を移すのに使用されたピペットチップが他の関係ない標本のために再び使用されないことが重要である。それゆえ、標本移動の後、ピペットユニット456をチップ処分チューブ342の上方に移動させ、そして使用された使い捨て可能ピペットチップを、チップ処分チューブ342の中に排出する。このチップ処分チューブ342は低部シャーシ1100に保有される固形廃物コンテナの1つに接続される。
【0046】
細長ピペットチップは好ましくはまた、標的捕捉試薬を多軸ミキサ400に保持されるコンテナから、反応受容器160へ移動させるためのプローブ457に摩擦的に固定される。試薬移動に次いで、ピペットチップは廃棄される。
【0047】
記載したように、標本リング250、ピペットチップホイール350、および多軸ミキサ400は、好ましくはデータプレート82の上方に支持されたヒンジ付きジグプレート130(図5および6を参照)に装着される。ジグプレート130は、その後端132においてヒンジが付けられ(図6参照)、プレートならびにそこに装着されたリング250、ホイール350およびミキサ400は、上方で旋回してジグプレートの下の化学デッキの領域へのアクセスを可能にする。
【0048】
第一の右側の運搬機構500は、入力列150とほぼ同じ平面上のジグプレート130および標本リング250の下のデータプレート82上に装着される。運搬機構500は、受容器キャリアアセンブリを規定する回転本体部504および、本体504内に装着され、そして動力フック部材駆動アセンブリにより、そこに対して伸張および後退する伸張操作フック506を備える。各反応受容器160は好ましくは、伸張操作フック506により係合され得る操作構造を含み、運搬機構500は反応受容器160に係合し得、反応受容器160を操作し得、そして、反応受容器160内でアッセイを行う間、反応受容器が1つのステーションから他のステーションへ順次に移動されるにつれ、反応受容器160を処理デッキ200上の1つの位置から他へ移動させる。
【0049】
第二の、または左側運搬機構502(第一分配アーム500と実質的に同じ構造)もまた処理デッキ200上に含まれる。
【0050】
複数の受容器定置ステーション210はまたジグプレート130の下方に配置される。定置ステーション210は、名前が意味するとおり、分析器50の処理デッキ200のアッセイ実施ステーションが反応受容器の受容を準備するまで、標本含有反応受容器を保持するための構造である。反応受容器は必要に応じて運搬機構500により、定置ステーション210から回収され、そして定置ステーション210へ挿入される。
【0051】
右側軌道ミキサ550は、データプレート82に装着され、そして右側運搬機構500によりそこに挿入された反応受容器160を受容する。軌道ミキサが反応受容器160の内容物を混合するために提供される。混合が完結した後、右側運搬機構500は、反応受容器を右側軌道ミキサ550から除去し、そして処理デッキの他の位置に移動させる。
【0052】
実質的に同一の構造の多数のインキュベータ600、602、604、606が提供される。インキュベータ600、602、604および606は好ましくは、ロータリーインキュベータである。実施されるべき特定のアッセイおよび所望のスループットが、必要なインキュベータの所望の数を決定するが、4つのインキュベータが分析器50に好ましくは提供される。
【0053】
以下により詳細に記載するように、各インキュベータ(600、602、604、606)は、第一受容器アクセス開口を有し、そして第二受容器アクセス開口もまた有し得、そこを通して運搬機構500または502が反応受容器160をインキュベータへ挿入し得るか、またはインキュベータから反応受容器160を回収し得る。受容器がインキュベートされている間に、各インキュベータ(600、602、604、606)内には、個別の反応ステーション内に複数の反応受容器160を保持する回転受容器キャリアカルーセルがある。本発明の分析器50で好ましくは実施される、核酸に基づく診断アッセイのために、第一ロータリーインキュベータ600は標的捕捉およびアニーリングインキュベータであり、第二ロータリーインキュベータ602は、活性温度および事前読み込み冷却インキュベータ(「ATインキュベータ」としても公知である)であり、第三ロータリーインキュベータ604は増幅インキュベータであり、そして第四ロータリーインキュベータ606はハイブリダイゼーション保護アッセイインキュベータである。アッセイの全体の実施の中でのインキュベータの構造、機能、および役割は、以下により詳細に記載される。
【0054】
処理デッキ200はまた、好ましくは、複数の温度ランピング(temperature ramping)ステーション700を含む。このような2つのステーション700図3において示され、これらのステーションはインキュベータ602および604の間のデータプレート82に装着されている。追加のランピングステーションが処理デッキ200上で、運搬機構500,502のうちの1つによりアクセス可能な他の位置に配置され得る。
【0055】
反応受容器160は、運搬機構500または502のいずれかにより、温度ランピングステーション700に配置され得、または温度ランピングステーション700から取り除かれ得る。各ランピングステーション700は、反応受容器およびその内容物の温度を、所望の温度まで上昇させるかまたは低下させるかのいずれかであり、その後受容器がインキュベータまたは他の温度感受性ステーション内に配置される。インキュベータ(600、602、604、606)のうちの1つに反応受容器を挿入する前に、反応受容器およびその内容を所望の温度に持っていくことにより、インキュベータ内の温度変動が最小化される。
【0056】
処理デッキ200はまた磁気分離洗浄手順を実施するための、磁気分離洗浄ステーション800を含む。各磁気分離洗浄ステーション800は、一度に1つの反応受容器160で洗浄手順を収容しそして実施し得る。それゆえ、所望のスループットを達成するため、平行して作動する5つの磁気分離洗浄ステーション800が好ましい。受容器160は、左側運搬機構502により、磁気分離洗浄ステーション800に挿入されそして、磁気分離洗浄ステーション800から除去される。
【0057】
試薬冷却ベイ900が、およそインキュベータ604および606の間のデータプレート82に装着される。試薬冷却ベイ900は、温度感受性試薬のボトルを保持するための複数のコンテナ受容器を有するカルーセル構造を備える。このカルーセルは、その中に形成されるピペットアクセス孔を備える蓋を有する冷却ハウジング構造内にある。
【0058】
第二のまたは左側の軌道ミキサ552は、実質的に右側軌道ミキサ550に同一であり、インキュベータ606および604の間に配置される。左側軌道ミキサ552は、左側軌道ミキサ552内にある反応受容器内に流体を分配するための分配ノズル、およびラインを含む。
【0059】
試薬ピペットアセンブリ、またはロボット、470はフレーム構造62(図2参照)に装着された二重ガントリー構造を含み、そして処理デッキ200の左手側上のインキュベータ604および606のほぼ上方に配置される。特に、試薬ピペットアセンブリ470はピペットユニット480および482を含む。ピペットユニット480は、管状プローブ481を含み、そして横レール476のトラック474に沿って、ほぼX方向に、直線移動のために装着され、そしてピペットユニット482もまた、管状プローブ483を含み、横レール478のトラック484に沿って、ほぼX方向に、直線移動のために装着される。横レール476および478は、長手トラック472に沿って、ほぼY方向に並進し得る。各ピペットユニット480、482は、それぞれプローブ481、483の独立の垂直な、またはZ軸運動を提供する。アセンブリ470内の駆動機構は、ピペットユニット480、482を、分析器50内でピペット流体に対して正確なX,Y,Z座標に配置させ、各ピペットユニット480、482の管状プローブ481、483を洗浄するか、または不使用(例えば「ホーム」位置にある)の期間の間のピペットユニット480、482を収容する。ピペットアセンブリ470の各軸は、ステッパモータにより駆動される。
【0060】
この試薬ピペットアセンブリ470は、好ましくは既製品である。現在好ましいユニットは、2つのガントリーアームを備えた、Cavro Robotic Sample Processor、モデルRSP9000である。
【0061】
試薬ピペットアセンブリ470のピペットユニット480、482はそれぞれ好ましくは、各シリンジポンプ(図示されず)(Cavro XP 3000 が使用された)およびDC駆動ダイアフラムシステム流体洗浄ポンプに結合される。試薬ピペットアセンブリ470のシリンジポンプは、好ましくは化学デッキ200の左手側の上方の位置において分析器50のハウジング60内の内部フレーム構造62に装着され、そして好適な配管(図示されず)または他の導管構造により、各ピペットユニット480、482に接続される。
【0062】
各ピペットユニット480、482は好ましくは、容量性レベル感知能力を含む。容量性レベル感知は、医療器具分野において一般に公知であり、キャパシタの誘電性がキャパシタの1つのプレートとしてのピペットユニット、および対向するプレートとしてのピペットユニットにより係合されたコンテナの周囲の構造およびハードウェア、により形成された場合のキャパシタンスの変化ならびに、ピペットユニットのプローブがコンテナ内の流体を貫入した場合に感知する空気から流体への変化を利用する。ピペットユニットの垂直方向の動きを駆動するステッパモータをモニタすることにより知られ得る、ピペットユニットのプローブの垂直位置を確認することにより、ピペットユニットにより係合されるコンテナ内の流体のレベルが決定され得る。
【0063】
ピペットユニット480は、試薬を、試薬冷却ベイ900から、インキュベータ606または軌道ミキサ552内に配置される反応受容器へ、移動させ、そしてピペットユニット482は試薬物質を、試薬冷却ベイ900から、増幅インキュベータ604または軌道ミキサ552内に配置される反応受容器に、移動させる。
【0064】
ピペットユニット480、482は、容量性レベル感知を使用し、コンテナ内の流体レベルを確認し、そしてピペットユニットのプローブの端部のほんの小部分を、コンテナからのピペット流体へ浸す。ピペットユニット480、482は好ましくは、それぞれ管状プローブ481、483内に流体がピペットされるとき下降し、プローブの端部を一定の深さまで浸して維持する。ピペットユニット480または482の管状プローブの中に試薬を引き込んだ後、ピペットユニットは、各プローブ481または483の端部に10μlの最小移動空気ギャップを形成し、ピペットユニットが化学デッキ200の上方の他の位置へ動かされるとき、プローブの端部からの滴りが無いことを確実にする。
【0065】
本発明の分析器50において実施されるアッセイの結果は、好ましくは、好適な調製工程の終了における容器162から発せられる、化学ルミネッセンスまたは光の量により確認される。特に、アッセイの結果は、アッセイの終了におけるハイブリダイズされたポリヌクレオチドプローブに関連する標識により発せられる光の量から、決定される。従って、処理デッキ200は、照度計950を含み、反応受容器の内容により発せられる光の量の検出および/または定量化をする。要するに、照度計950は、ハウジングを備え、そのハウジングを通って反応受容器が、運搬機構、光電子増倍管、および関連する電子品の影響のもとで、移動する。多様な照度計の実施形態が以下により詳細に記載される。
【0066】
処理デッキ200はまた、好ましくは不活化列750を含む。分析器50の中で実施されるアッセイは、少なくとも1つの対象の生物または細胞に属する核酸の単離および増幅を含む。従って、反応受容器160の内容物を不活化させることが望ましく、典型的には、漂白剤ベースの試薬を、アッセイの終了において反応受容器160に分配することにより、不活化させる。この不活化は、不活化列750内において生じる。
【0067】
不活化に次いで、反応受容器160の不活化された内容物は低部シャーシ1100の液体廃物コンテナの1つに格納され、そして使用された反応受容器は、低部シャーシ1100内の専用固形廃棄物コンテナに廃棄される。この反応受容器は好ましくは再使用されない。
【0068】
(分析器操作)
上記に記載の、分析器50の操作、ならびにステーション、構成要素、およびモジュールの構成、協同作用、および相互作用は、分析器50を用いて実施され得る1つのタイプのアッセイの実施における単一の試験標本について、分析器50の操作を記載することにより、説明される。本明細書中に記載される1つ以上のステーション、構成要素、およびモジュールの使用を要求する他の診断アッセイもまた、分析器50を用いて実施され得る。本明細書中の特定のアッセイ手順の記載は、単に、分析器50の多様なステーション、構成要素、およびモジュールの、操作および相互作用を例示する目的のためであり、限定の意図はない。診断試験の当業者は、多様な化学的および生物的アッセイが、本発明の分析器50を使用して自動化された様式で、実施され得ることを理解する。
【0069】
分析器50は初期的には、バルク流体を、低部シャーシ1100のバルク流体格納ベイに充填すること、およびバルク流体コンテナを適切なホース(図示されず)に接続することにより、アッセイの実行のために構成される。
【0070】
分析器は、好ましくは順次プロセスにおいて起動(powered up)され、最初にプロセスの初期において必要とされるステーション、またはモジュールに電源投を入れ、そして次いでプロセスの後の方まで必要とされないステーションに、電源を入れる。これはエネルギーを節約し、そしてまた全分析器の起動に伴う大きな電源サージ(そしてこれはサーキットブレーカをトリップさせ得る)を回避するのに役立つ。この分析器はまた不使用期間中の「スリープ」モードを採用する。スリープモードの間、最小量の電力が分析器に供給され、さらに、完全なシャットダウンからの分析器の起動に必要な大きなサージを避ける。
【0071】
多数の反応受容器160は、好ましくはプラスチックの形態であり、多試験管ユニット(MTU)を一体的に形成し、このことは以下により詳細に述べるが、開口68を通じて、入力列150に充填される。これ以後は、反応受容器160は、MTUとし、分析器50を使用する好ましい様式と一致する。
【0072】
入力列150内の反応受容器シャトルアセンブリ(図示されず)は、MTU160を充填開口68から列150の端部における取りだし位置へ、移動させる。右側運搬機構500はMTU160を、列150の端から取り、そしてMTUをバーコードリーダ253へ動かし、そのMTUを確認するMTU上の独自のバーコードラベルを読む。バーコードリーダ253から、MTUを、開口252の下方の利用可能な標本移動ステーション255へ移動させる。
【0073】
(多試験管ユニット)
図58に示されるように、MTU160は、複数の、好ましくは5個の個別の容器162を備える。容器162は、好ましくは開放頂部端と閉鎖底部端を備える円筒形管の形態であり、互いに接続リブ構造164により接続される。この接続リブ構造164は、MTU160のいずれかの側に沿った長手に延びる下向きに面するショルダを規定する。
【0074】
このMTU160は、好ましくは射出成型ポリプロピレンから形成される。最も好ましいポリプロピレンはWilmington,DelawareのMontell Polyolefinsにより販売され、商品番号PD701NWである。Montell材料が使用されるのは、成型しやすく、分析器50の操作の好適なモードで化学的に融和性があり、そして化学ルミネッセンスの正確な検出または定量を妨害し得る静電放電現象の数が限られるからである。
【0075】
アーチ状シールド構造169は、MTU160の一端に提供される。運搬機構500、502の1つにより係合されるMTU操作構造166は、このシールド構造169から延びる。MTU操作構造166は、プレート168の対向端上に垂直に伸びる片167とともにシールド構造169から延びる、横伸張プレート168を備える。ガセット壁165は、シールド構造169と垂直片167との間で横プレート168から下向きに延びる。
【0076】
図60に示されるように、シールド構造169および垂直片167は、互いに面する凸面を有する。MTU160は、運搬機構500、502およびその他の構成要素により、以下に記載されるように、係合部材を横方向に(「A」方向に)、シールド構造169と垂直片167との間の空間へ移動させることにより、係合される。シールド構造169と垂直片167の凸面は、空間へ横方向運動を経る係合部材のためのより広いエントリーのポイントを提供する。垂直片167とシールド構造169の凸面は、それぞれ隆起部分171、172を含み、その中央部分で形成される。部分171、172の目的は以下に述べる。
【0077】
平坦ラベル受容面175を有する、ラベル受容構造174は、シールド構造169およびMTU操作構造166の反対のMTU160の端部上に提供される。スキャン可能バーコードなどのラベルは、表面175上に配置され得、MTU160上の確認および指示情報を提供する。
【0078】
MTU160は好ましくは、各それぞれの容器162の開口に隣接して、チップレット(tiplet)保持構造176を含む。各チップレット保持構造176は、接触制限チップレット170を受容する円筒状オリフィスを提供する。チップレット170の構造および機能は、以下に記載される。各保持構造176は、チップレット170を、MTU160が逆にされたときチップレット170が保持構造176から外れることを防ぐような様式で、摩擦的に受容するように構成され配置される。しかしチップレット170は、ピペットにより係合するされるとき保持構造176から除去されることを可能にする。
【0079】
図59に示されるように、チップレット170は、周囲リムフランジ177およびチップレット170の下部179よりほぼ大きい直径の上部カラー178を有するほぼ円筒構造を備える。チップレット170は、好ましくは導電性ポリプロピレンから形成される。チップレット170が保持構造176のオリフィスに挿入されると、フランジ177は構造176の頂部に接触し、そしてカラー178はチップレット170と保持構造176との間でぴったりとした、しかし開放可能な締まり嵌めを提供する。
【0080】
軸方向に伸張する貫通孔180はチップレットを通る。孔180はチップレット170の頂部において外側に広がった端部181を含み、ピペット管状プローブ(図示されず)のチップレット170への挿入を容易にする。2つの環状のリッジ183を孔180の内壁に並べる。リッジ183は、チップレット170とチップレット170へ挿入される管状プローブとの間の締まり摩擦嵌めを提供する。
【0081】
チップレット170の低部端は好ましくは、傾斜部182を含む。チップレット170がMTU160の容器162などの反応受容器の底部に挿入される吸引器の端部で使用されるとき、傾斜部182は、真空がチップレット170の端部と反応容器の底部との間で形成されるのを防ぐ。
【0082】
(低部シャーシ)
本発明の低部シャーシの実施形態は、図52から54に示される。低部シャーシ1110はブラックポリウレタンパウダーコートを有する鋼フレーム1101、シャーシの下方に配置された引き出しドリップトレイ1102、右側引出し1104、および左側引出し1106を含む。左側引出し1106は実際には低部シャーシ1100内の中央に配置される。低部シャーシ1100のさらに左側には多様な電力供給システム構成装置および他の分析器装置(例えば取りつけプラットフォーム1154に装着された7つのシリンジポンプ1152、振動分離器(示されず)上の低部シャーシ1100のフロアに好ましくは装着された真空ポンプ1162、電力供給ユニット1156、電源フィルタ1158およびファン1160など)を収容する。
【0083】
異なるシリンジポンプ1152が各5つの磁気分離洗浄ステーション800のために指定され、1つは左側軌道ミキサ552のために指定され、そして1つは不活化列750のために指定される。シリンジポンプが好ましいが、蠕動ポンプが代替として使用され得る。
【0084】
真空ポンプ1162は各磁気分離洗浄ステーション800および不活化列750に作用する。好ましい真空ポンプの定格は、0”Hgで5.3?6.5cfmおよび5”Hgで4.2?5.2cfmである。好ましい真空ポンプは、Sheboygan,WisconsinのThomas Industries,Inc.から型番2750CGHI60として入手可能である。キャパシタ1172はポンプ1162に付随して販売される。
【0085】
電力供給ユニット1156は好ましくは、ASTEC型番VSI-B5-B7-03であり、Carlsbad,CaliforniaのASTEC America,Inc.から入手可能である。電力供給ユニット1156は50?60Hzの範囲の220ボルト、すなわち典型的な220ボルト壁コンセントからの電力を受ける。電源フィルタ1158は、好ましくはCorcomモデル20MVIフィルタであり、Libertyville,IllinoisのCorcom,Inc.から入手可能である。ファン1160は好ましくは、San Ysidro CaliforniaのComair Rotronから入手可能である、Whisper XLDCファンである。各ファンは24VDCモータで駆動されそして75cfm出力を有する。図52に示されるように、ファン1160は好ましくは低部シャーシ1100の左側外壁に近接して配置される。ファン1160は好ましくは外側に方向付けられ、その右側からその左側へ低部シャーシから空気が引かれ、そして低部シャーシから過剰な熱を引く。
【0086】
他の電源供給システム構成要素は低部シャーシ1100の背面左手側に収容され、電源スイッチ1174および電源入力モジュール1176を含む。電源スイッチ1174は、好ましくは、Cleveland,OhioのCutler-Hammer Division of Eaton Corporationから入手可能である、Eatonサーキットブレーカスイッチ2極シリーズJA/Sである。電源入力モジュール1176は、外部電源に分析器50が接続されるための電源コード(図示されず)が接続される。分析器50の電源供給システムはまた、そこに複数の電気ターミナルを装着するためのターミナルブロック(図示されず)、半導体スイッチ(図示されず)、およびRS232 9ピンコネクタポートを含む。この半導体スイッチは、好ましくはCal Switch,Carson City,Californiaから入手可能である、Crydom Series1、型番D2425であり、異なる回路の間でスイッチングするためにある。そしてRS232 9ピンコネクタポートは、分析器50を外部コンピュータコントローラ1000へ接続するためにある。
【0087】
右側引出しおよび左側引出しベイは好ましくは、分析器の前の1つまたは2つのドア(図示されず)の後ろで閉じられ、これ/これらは好ましくは、分析器の操作の間、アッセイマネージャプログラムによりロックされる。マイクロスイッチが、好ましくはドア閉状態を確認するために提供される。さらに左のベイは、正面パネルによりカバーされる。端部パネルはシャーシを包囲するために低部シャーシの対向端上に提供される。
【0088】
4つのレバー脚1180は、シャーシ1100の4つのコーナから下に延びる。レバー脚1180は、その低部端にてパッドを有するネジ切りシャフトを含む。分析器が所望の位置にあるとき、脚1180は、パッドが床に係合して分析器を水平出しして安定化させるまで、低められ得る。脚はまた、分析器がそのキャスタで移動されることを可能にするために上昇され得る。
【0089】
典型的に低部シャーシ1100のコンテナに含まれるバルク流体は、(固定化された標的を洗浄するための)洗浄緩衝液、(固定ピペットチップを洗浄するための)蒸留水、診断試験試薬、(試験試薬および標本の上に重ねるための浮遊流体として使用する)シリコンオイル、および(サンプル不活化のために使用される)漂白剤ベース試薬を含み得る。
【0090】
右側引出し1104は、図53に詳細に示され、右側引出し1104は、正面引出しハンドル1105を有する箱状引出し構造を含む。引き出しハンドル1105は、通常の引き型引出しハンドルとして示され、分析器50の好適な実施形態においては、ハンドル1105は、Tハンドルラッチであり、これらはSouthco,Inc.of Concordville,Pennsylvaniaから入手可能である。引き出し1104はスライドブラケット(図示されず)上の低部シャーシに取り付けられ、引き出し1104は低部シャーシへ引き入れられ得、および低部シャーシから引き出され得るようにする。センサ(図示されず)が好ましくは引き出し1104が閉じられたことを確認するために提供される。引き出しの正面部は、ボトル1128(図52に示される)およびボトル1130(また図52に示される)を保持するためのボトル受容器1122を含む。ボトル1128は、専用のピペット洗浄廃物含有ボトルであり、ボトル1130は、磁気洗浄、標的捕捉手順からの含有廃物のための専用廃物ボトルである。ボトル1130は好ましくは排出(evacuated)される。
【0091】
低部シャーシ1100において要求されるいずれかのボトルがないとき、分析器50は処理アッセイを始めない。ボトル受容器1122は、好ましくはボトル存在センサ(図示されず)を含み、各受容器1122内のボトルの存在を確認する。ボトル存在センサは好ましくは、West Des Moines,IowaのSUNX/Ramco Electric,Inc.から入手可能である、拡散反射型光センサ、モデルEX-14Aである。
【0092】
右側引出し1104はさらにその中に、使用されたMTUおよび標本チップを保持するための廃物箱(bin)1108を含む。廃物箱1108は、その頂部にセンサを取りつけるためのセンサマウント1112を有する開放ボックス構造である。このセンサは好適には、廃物箱1108が満ちているかどうかを検出するための、24VDC光拡散反射スイッチ(図示されず)である。もう1つの拡散反射型光センサ(図示されず)が、右側引出し1104内に位置し、廃物箱1108が適所にあることを確認する。再び、拡散反射型光センサは、West Des Moines,IowaのSUNX/Ramco Electric,Inc.から入手可能である、モデルEX-14Aが好適である。
【0093】
デフレクタ1110は、廃物箱1108の側部から斜めに延びる。デフレクタ1110は、シュートの直接下に配置され、シュートを通って使用されたMTUが廃物箱1108に落とされ、そして落とされたMTUを廃物箱1108の真中に向け、廃物箱1108のコーナにおけるMTUの山積みを回避する。デフレクタ1110は、好ましくは旋回的に取りつけられ、実質的に垂直な位置まで上方に旋回し得、そのため廃物箱1108と整列しそしてデフレクタ1110を覆う廃物袋が廃物箱1108から除去されるとき、デフレクタ1110は、袋が引き出されるときともに上向きに旋回し、そして従って袋を破らないようにさせる。
【0094】
プリント回路基板(図示されず)およびカバー1114は廃物箱1108の正面に装着され得る。センサマウント1116および1117もまた廃物箱1108の正面に装着される。センサ1118および1119はセンサマウント1116に装着され、そしてセンサ1120および1121はセンサマウント1117上に装着される。センサ1118、1119、1120および1121は好ましくはDC容量性近接センサである。上方センサ1118、1119は、ボトル1128および1130が満ちたとき表示し、そして底部センサ1120,1121は、ボトルが空のとき表示する。センサ1118?1121は好ましくはReno,NevadaのStedham Electronics Corporationの型番C2D45AN1-Pから入手可能である。これらのセンサは、低部シャーシ1100の緊密な領域内で少ない空間しか必要としない、その比較的フラットな物理的プロフィールのため、およびStedhamセンサが3?20mmの範囲の所望の感知距離を提供するので選択された。
【0095】
アッセイマネージャプログラムが、右側引出し1104内の廃物流体コンテナのいずれかが初期に空でないことを検出すれば、分析器50は好ましくはいずれのアッセイも実行しない。
【0096】
容量性近接センサ1118?1121およびボトル存在、廃物箱存在、および右側引出し1104の廃物箱満杯光センサは、カバー1114の後ろのプリント回路基板(図示されず)上に接続され、そしてこのプリント回路基板は分析器50の埋め込みコントローラに接続される。
【0097】
右側引出し1104が低部シャーシ1100から完全には引くことができないため、廃物袋ライナーを設置しおよび除去するために廃物箱にアクセスすることを可能とするために、廃物箱1108を前方に引くことを可能にすることが必要である。この目的のため、ハンドル1126が廃物箱1108の正面に取り付けられ、そしてテフロン(登録商標)ストリップ1124が、右側引出し1104の底部フロアに配置され、ボトル1128および1130が除去されるとき、引き出し1104内の廃物箱1108の前方および後方への滑りを容易にする。
【0098】
左側引出し1106の詳細は図54に示される。左側引出し1106は、正面取付けハンドル1107を有する箱状構造を含み、低部シャーシ1100内でスライドブラケット(図示されず)上に取りつけられる。ハンドル1107は、通常の引き型引出しハンドルとして示されるが、分析器50の好ましい実施形態では、ハンドル1107はTハンドルラッチであり、Concordville,PennsylvaniaのSouthco,Inc.から入手できるものなどである。センサが、左側引出し1106が閉められていることを確認するために提供される。
【0099】
左側引出し1106は、その上にチップレット廃物箱満杯センサ(図示されず)を装着するための取りつけ構造1135を備える、チップレット廃物箱1134を含む。チップレット廃物箱存在センサは好ましくは、左側引出し1106に提供され、チップレット廃物箱1134が正しく設置されることを確認する。拡散反射型光センサはWest Des Moines,IowaのSUNX/Ramco Electric,Inc.,から入手でき、モデルEX-14Aがチップレット廃物箱満杯センサおよびチップレット廃物箱存在センサの両方に好適である。
【0100】
束ね構造1132が低部シャーシ1100内の多様な配管および/またはワイヤ(図示されず)を固定するために、および束ねるために提供される。使用される好ましい束ね構造は、East Providence,Rhode IslandのIgus,Inc.により製造され販売されるEnergy Chain Systemsである。
【0101】
プリント回路基板1182は、チップレット廃物箱1134の後ろに配置されるパネル1184の後ろに装着される。ソレノイドバルブ取りつけパネル1186は、チップレット廃物箱1134の下方に配置される。
【0102】
左側引出し1106は、その中に6つの類似のサイズのボトルを保持するための前方コンテナ保持構造を含む。コンテナ構造は、分割壁1153、1155、1157および1159および湾曲ボトル適合正面エッジを有するコンテナブロック1151を含み、これらが合わせて6つのコンテナ保持領域を規定する。低部センサ1148および上部センサ1150(各6つ)が分割壁1155、1157および1159に装着される。上部センサ1148および下部センサ1150は好ましくは、DC容量性近接センサ(好ましくは,そのフラットなプロフィールと感知範囲のために選ばれた、Reno,NevadaのStedham Electronics Corporationから入手可能であるセンサ、型番C2D45AN1-P)である。上部センサ1150は、コンテナ構造に保持されるボトルが満杯になるときに表示し、そして低部センサ1148は、ボトルが空のとき表示する。好ましい装置においては、左2つのボトル1146は検出剤(「Detect I」)、真中の2つのボトル1168は、シリコンオイル、そして右の2つのボトル1170は、他の検出剤(「Detect II」)を含む。
【0103】
ボトル存在センサ(図示されず)は、コンテナブロック1151および分割壁1153、1155、1157、および1159により規定されるコンテナ保持領域のそれぞれにおいて好ましくは提供され、各コンテナ保持領域におけるボトルの存在を確認する。ボトル存在センサは好ましくは、West Des Moines,IowaのSUNX/Ramco Electric,Inc.,から入手できる、モデルEX-14Aである、拡散反射型光センサである。
【0104】
中央に配置された大型のコンテナ受容器1164は、好ましくは脱イオン水を含有するボトル1140(図52に示される)を保持する。コンテナ受容器1166(図54において1つのみが見られる)は、好ましくは洗浄緩衝溶液を含有するボトル1142および1144(図52においても示される)を保有する。受容器1164および1166の間の分割壁1143はその上に、ボトル1140、1142および1144の中の流体レベルをモニタするための、センサ1141などのセンサを取りつける。センサ1141などのセンサは、好ましくはDC容量性近接センサ(好ましくはReno,NevadaのStedham Electronics Corporationから入手可能の型番C2D45AN1-Pのセンサ)である。
【0105】
コンテナ受容器1164および1166は好ましくは、ボトルが正しくそれらのそれぞれの受容器に配置されることを確認する、ボトル存在センサ(図示されず)を含む。このボトル存在センサは好ましくは拡散反射型光センサであり、West Des Moines,IowaのSUNX/Ramco Electric,Inc.,から入手できる、モデルEX-14Aである。
【0106】
アッセイマネージャプログラムが、左側引出し1106におけるバルク流体受容器のいずれかが初期的に空であると決定すると、分析器50はいずれのアッセイの実行も開始しない。
【0107】
容量性近接流体レベルセンサ、多様なボトル存在センサ、チップレット廃物箱満杯センサおよびチップレット廃物存在センサは全て、プリント回路基板1182に接続され、そしてプリント回路基板1182は、分析器50の埋め込まれたコントローラに接続される。
【0108】
4つのソレノイドバルブ(図示されず)が、ソレノイドバルブ取りつけパネル1186の下方に装着される。ソレノイドバルブはバルク流体ボトルを接続し、ここで流体は対のボトルに貯蔵され、すなわち、ボトル1140,1142は洗浄緩衝溶液を含み、2つのボトル1146は「Detect I」試薬を含み、2つのボトル1168はオイルを含み、そして2つのボトル1170は「Detect II」試薬を含む。ソレノイドバルブは、各容量性近接センサからの信号に応答して、同じ流体を含む2つのボトルの1つが空のとき、流体が引かれるボトルを切り替える。加えて、ソレノイドバルブは所定の数の試験が実施された後、ボトルを切換え得る。好ましいソレノイドバルブはLaguna Hills,CaliforniaのBeco Manufacturing Co.,Inc.から入手可能のテフロン(登録商標)ソレノイドバルブ、型番S313W2DFRTおよびM223W2DFRLTである。2つの異なる型番は、2つの異なる管サイズで使用するために適合されたソレノイドバルブに対応する。テフロン(登録商標)ソレノイドバルブが好ましく、これは、バルブを通る流体を汚染する可能性が低く、そしてバルブがそれを通る腐食性流体により損傷されることがないためである。
【0109】
ボトル1136(図52参照)は、真空トラップブラケット1137に保持される真空トラップであり、そしてボトル1138は漂白含有試薬などの不活化剤を含む。再び、ボトル存在センサは、好ましくはボトル1136および1138の存在を確認するために提供される。
【0110】
携帯バーコードスキャナ1190が、低部シャーシ1100に提供され得、スキャン可能コンテナラベルに提供される情報をスキャンしアッセイマネージャプログラムに入れる。スキャナ1190は、コードにより左側引出し1106のプリント回路基板1182に接続され、そして好ましくは分割壁1143に装着されたブラケット(図示されず)に収容される。Holtsville,New YorkのSymbol Technologies,Inc.,から入手可能なスキャナ、シリーズLS2100が好ましい。
【0111】
(標本リングおよび標本管トレイ)
標本は標本管320に含まれ、そして管320は分析器50の外側の管トレイ300に充填される。標本管320を有するトレイ300は、はじき上げカルーセルドア80を開くことにより提供されるアクセス開口を通じて、標本リング250上に配置される。
【0112】
図5および6を参照して、第一リングアセンブリまたは標本リング250は、ミリングした、非硬性アルミウムから形成され、そしてリング250の外周のまわりに環状トラフ251を規定する隆起リング構造を含み、それとともに複数の隆起した半径方向に伸び、トラフ251を通って延びる分割器254を含む。好ましくは9個の分割器254が、トラフ251を9個のアーチ状標本管トレイ受容ウェル256に分割する。トラフ251およびウェル256は、以下に記載されるように複数のコンテナを運ぶために構成され配置された、環状流体コンテナキャリア部を規定する。
【0113】
標本リング250は好ましくは、3つの120°間隔のV溝ローラ257、258,260により回転的に支持され、これらのV溝ローラは図5および6に示されるように、リング250の内周に形成される連続Vリッジ262に係合し、リング250が回転の第一中央軸の周りに回転可能であるようにする。ローラは好ましくは、Pittsburg,CaliforniaのBishop-Wisecarver Corp.により作製された型番W1SSXである。ローラ257および260は、固定シャフト上に回転的に取りつけられ、そしてローラ258は、垂直軸のまわりで旋回するブラケット上に取り付けられ、そしてローラ258をリング250の内周に対して半径方向外側に付勢するようにバネ付勢される。2つの固定されたローラおよび1つの半径方向に可動のローラを有するので、3つのローラがリング250の円から外れた内周に適合させることを可能にする。加えて、リング250は容易に取りつけられ得、そして単に旋回ローラ258を半径内側に押すことにより容易に除去され得、標本リング250が横に移動し連続Vリッジ262を固定V溝ローラ257,260から係合を外すことを可能にする。
【0114】
標本リング250は、ステッパモータ264(Tokyo,JapanのOriental Motor Co.,Ltd.から型番PK266-01Aとして入手可能な、VEXTAステッパモータが好適である)により、ガイドローラ266、268上を、そしてリング250の外周のまわりに延びる連続ベルト270(好ましくはNew Hyde Park,New YorkのSDP/SIから型番A6R3M444080として入手可能である)を介して駆動される。ホームセンサおよびセクタセンサ(図示されず)は、好ましくは溝付きの光センサであり、リング250に隣接して、回転ホーム位置および、標本管トレイ受容ウェル256の1つに対応する位置において提供される。リング250は、ホイール上のホーム位置に配置されるホームフラグ(図示されず)および9個の標本管トレイ受容ウェル256のそれぞれの位置に対応する、9個の均等間隔のセクタフラグ(図示されず)を含む。ホームフラグおよびセクタフラグは、ホームセンサおよびセクタセンサと協同して、リング位置情報をアッセイマネージャプログラムへ提供し、そして使用者の再ロードおよびピペットユニット450によるアクセスのための確立された組み合わせに対応する9個の分離された位置において停止させるように制御する。ホームセンサおよびセクタセンサのための好ましいセンサは、Optek溝付き光センサ、型番OPB857であり、Carrollton,TexasのOptekから入手可能である。
【0115】
標本カバーは、環状流体コンテナキャリア部の一部、すなわちトラフ251の上に配置され、ホイール250に対して上昇した位置に、3つの取り付けポスト136上に固定されたアーチ状カバープレート138を備える。プレート138は、アーチ状であり、ほぼトラフ251の曲線に一致する。第一の開口142は、プレート138に形成され、そして第二の開口140は、プレート138に形成され、リング250の回転の軸から、開口142より大きい半径距離において、開口142から円周方向に間隔を空けた配置にて、形成される。
【0116】
図55?57を参照すると、各標本管トレイ300はリング250の曲率に従ってカーブした試験管ラック構造を備える。各トレイ300は、中央壁構造304を備え、壁構造304のいずれかの端部に配置される横端部壁303および305を伴う。フロア312は、トレイ300の底を渡って延びる。標本管トレイ300の主な目的は、標本リング250上の標本管を、標本ピペットアセンブリ450によるアクセスのために保持すること、ならびに多標本管を分析器へ充填すること、および分析器から取り出すことを促進することである。
【0117】
複数のY型分割器302は、トレイ300の対向エッジに沿って等距離に間隔を空けられる。各2つの隣接する分割器302は試験管受容領域330を規定する。端部壁303は、内向きに曲げたフランジ316と318を含み、そして端部壁305は、内向きに曲げたフランジ326と328を含む。分割器302の最端部に沿ったそれぞれ内向きに曲げた端部壁303および305のフランジは、最端部管受領領域332を規定する。受領領域330、332は、中央壁構造304の対向側の2つのアーチ状列に沿ってアーチ状に整列する。
【0118】
図57を参照して、各管受領領域330,332内において板バネ要素310が中央壁304に装着される。板バネ要素310は、好ましくはステンレスバネ鋼で形成され、試験管320が管受容領域330または332に挿入されるとき、弾性的に偏向し、そして管320を分割器302に対して外側に付勢する。従って管320は直立方向に固定される。分割器302の形状および板バネ要素310の弾性は、管320と324などの多様な形状とサイズの標本管をトレイ300が収容するこを可能にする。各トレイ300は好ましくは、各エッジに沿って9個の分割器302を含み、端部壁303および305とともに、中央壁構造304の各側に10個の管受容領域330、332を、合計して1つのトレイにつき20の管受容領域を形成する。隆起数字306などの管受容領域330および332を指示するための刻印が、トレイ上(中央壁304上など)に提供され得る。
【0119】
各トレイ300もまたボス構造308を含み得、例示された実施形態において、最端部の分割器302と一体に形成される。直立逆U形状ハンドル(図示されず)がボス構造308またはいくつかの他の好適な場所において、トレイに装着され得る。直立ハンドルは、アーチ状カルーセルドア80を通してトレイ300を充填するときおよび取り出すときのトレイ300のハンドリングを容易にし得るが、必ずしも好適ではない。
【0120】
ギャップが隣接する分割器302の間に提供され、管320上のバーコードラベル334、または他の読み取り可能またはスキャン可能情報は、管がトレイ320中に配置されるときアクセス可能である。ホイール250上で運ばれるトレー300が標本カバーのプレート138の下を通過するとき、壁構造304に対して半径方向内向きの位置の曲線の列における1つの管320が、第一開口142と整列し、そして壁304に対して半径外向きの位置の曲線の列における他の管320が、第二開口140と整列する。リング250は、インデックスが付けられ、開口140、142の下の各管320を順次動かし、管へのアクセスを可能にする。
【0121】
図5を再び参照すると、バーコードスキャナー272および274はリング250に隣接して配置される。Orangeburg,New YorkのOpticon,Inc.から入手可能のOpticon,Inc.scanner型番LHA2126RR1S-032が好ましい。スキャナ272は、外側リング250に配置され、そしてスキャナ274はリング250の内側に配置される。リング250が標本管320のトレイ300をスキャナ272、274を通過して回転させるとき、スキャナ272および274は、標本管トレイ300に備わる各標本管320上のバーコードデータラベルをスキャンするために配置される。加えて、トレイ300が標本調製領域に来たとき、スキャナ272、274は、各トレイ300の端部壁303の曲げフランジ316および318の外側部上のバーコードラベル337(図55参照)をスキャンする。標本およびアッセイ同定などの多様な情報が、管および/または、各トレイ300に配置され得、そしてこの情報がスキャナ272,274によりスキャンされ得、そして中央処理コンピュータ内に格納される。もし、標本管が存在しないとき、トレイ300は、スキャナ272、274により読まれる、特別コード335(図55参照)を提供する。
【0122】
(ピペットチップホイール)
図5および6で主に示すように、好ましい実施形態の第二リングアセンブリは、ピペットチップホイール350であり、これは、その下部にある円形リング352、上部パネル374(これは、円形内周および5個の円周に沿って間隔を置いて配置された放射状に突出している部分370を規定している)、および複数のほぼ長方形のライザ354(これは、上部パネル374をリング352から分離しており、好ましくは、上部パネル374およびリング352を通ってライザ354へと延びている機械的ファスナー356により、適切な位置で保持されている)を含む。上部パネル374には、部分370の各々に近接して、5個の長方形開口部358が形成されており、パネル374の下には、各開口部358で1個ずつ、長方形ボックス376が配置されている。上部パネル374、リング352およびライザ354は、好ましくは機械加工されたアルミニウムから形成され、そしてボックス376は好ましくは、ステンレス鋼シートストックから形成されている。
【0123】
開口部358および付随したボックス376は、複数の使い捨てピペットチップを保持するトレイ372を受容するように、構成され配置されている。ピペットチップトレイ372は、好ましくは、「Disposable Tips for GENESIS Series」の商品名で、TECAN(TECAN U.S.Inc.,Reseach Triangle Park,North Carolina)により製造、販売されている。各チップは、1000μlの容量を有し、そして導電性である。各トレイは、96個の細長い使い捨てチップを保持する。
【0124】
上部パネル374には、各開口部358の側方縁部および縦方向縁部に沿って、それぞれ、側方スロット378および縦方向スロット380が形成されている。スロット378、380は、下方に延びているフランジ(図示せず)(これは、トレイ372の側方縁部および縦方向縁部に沿って配置されている)を受容する。トレイ372のスロット378、380および付随したフランジは、開口部358に対してトレイ372を正しく合わせてトレイ372をパネル374上の適切な位置で保持するのに、役立つ。
【0125】
ピペットチップホイール350は、好ましくは、120°で間隔を置いて配置された3個のV溝ローラー357、360、361(これらは、図5、6および6Aで示すように、リング352の内周上で形成された連続Vリッジ362と係合する)により回転的に支持されており、その結果、ピペットチップホイール350は、標本リング250の第一回転軸とほぼ平行な第二中心回転軸の周りで、回転可能となる。これらのローラーは、好ましくは、Pittsburg,CaliforniaのBishop-Wisecarverにより、製造されている(モデル番号W1SSX)。ローラー357および360は、固定シャフトに回転的に取付されており、ローラー361は、垂直軸の周りで旋回するブラケットに取り付けられ、そしてローラー361をリング352の内周に放射状に外向きに押し付けるように、バネでバイアスされる。2個の固定ローラーおよび1個の放射状に移動可能なローラーを有することにより、これらの3個のローラーは、リング352の完全な円ではない(out-of-round)内周に適応できるようになる。それに加えて、ホイール350は、単に、旋回ローラー361を放射状に内向きに押してリング352を側方に移動させ固定V溝ローラー357、360から連続Vリッジ362を外すことにより、容易に設置および取り外しできる。
【0126】
ピペットチップホイール350は、シャフトを取り付けた平歯車(これは、リング352の外周上に形成された、合わせギア歯(mating gear theeth)と噛み合う)を有するモーター364により、駆動される。モーター364は、好ましくは、VEXTAギアヘッドステッパーモーター(モデル番号PK243-A1-SG7.2)であり、これは、7.2:1のギアリダクション(gear reduction)を有し、そしてTokyo,JapanのOriental Motor Co.Ltd.から入手できる。7.2:1のギア減率を備えたギアヘッドステッパーモーターは、ピペットチップホイール350の滑らかな運動を与えるので、好ましく、この場合、モーター364の平歯車は、リング352と直接係合する。
【0127】
ホームセンサおよびセクターセンサ(図示せず)(好ましくは、スロット付き光学センサ)は、回転ホーム位置およびボックス376の1個の位置で、ピペットチップホイール350に隣接して設けられている。ピペットチップホイール350は、このホイール上のホーム位置で位置しているホームフラッグ(図示せず)および5個の等間隔に配置したセクターフラッグ(図示せず)(これらは、5個のボックス376の各々の位置に対応している)を含む。これらのホームフラッグおよびセクターフラッグは、ホームセンサおよびセクターセンサと協同して、このアッセイマネージャプログラムにホイールの位置情報を提供し、そして使用者の再充填用に確立した座標に対応する5個の別個の位置で停止してピペットユニット450によってアクセスするように、ピペットチップホイール350を制御する。このホームセンサおよびセクターセンサに好ましいセンサは、Optek Technology,Inc.のスロット付き光学センサ(モデル番号OPB980)であり、これは、Carrollton,TexasのOptek Technology,Inc.から入手できる。
【0128】
(多軸ミキサ)
図7?12を参照すると、多軸ミキサ400は、回転しているターンテーブル414(図10を参照)を含み、これは、中心ベアリング430で支持された中心シャフト428で、固定ベース402(これは、固定ベース402の外周の周りで形成された開口部419を通って延びている機械的ファスナー(図示せず)によって、ジグプレート130に取り付けられている)に回転可能に取り付けられている。カバー部材404がターンテーブル414に取り付けられ、共に回転する。
【0129】
ターンテーブル414は、好ましくは、直角十字形状であり、これは、90°で間隔を置いて配置された3個の等長の長方形アーム444(これは、ターンテーブル414の中心から外向きに放射状に延びている)および第四アーム445(これは、アーム445をアーム444よりも僅かに長くする拡張部417を有する)を含む。図10?12で示すように、ターンテーブル414の中心部は、ネジ429により、中心シャフト428に接続されている。
【0130】
4個のコンテナホルダー406は、ターンテーブルフレーム414のアーム444および445の末端に配置されている。各コンテナホルダー406は、4個の垂直シャフト423(これらは、コンテナホルダーベアリング415で、回転可能に支持される)のうちの1個に装着されている。コンテナホルダーベアリング415は、ターンテーブル414のアーム444、445に押し付けられ、そしてシャフト428から等しい半径方向距離で、配置されている。
【0131】
カバー部材404は、上方に屈曲した周囲フランジ401を備える4個の円形開口部を含み、これらを通って、シャフト423が延びている。上方フランジ401は、有利なことに、こぼれた液体がこれらの開口部に流入するのを防止できる。
【0132】
コンテナホルダー406は、標的捕捉試薬のコンテナ440(好ましくは、プラスチックボトル)を受容し保持するための、ほぼ円筒形部材(これは、開放下部および開放上部を有する)を含む。
【0133】
好ましいアッセイで使用される標的捕捉試薬は、ポリヌクレオチドを固定化した磁気応答性粒子、ポリヌクレオチド捕捉プローブ、および標的核酸を含む細胞を溶解するのに充分な試薬を含有する。細胞溶解後、標的核酸は、第一組の所定ハイブリダイゼーション条件下にて、1個またはそれ以上の捕捉プローブを用いて、ハイブリダイゼーションに利用可能であり、各捕捉プローブは、ヌクレオチド塩基配列領域を有し、これは、標的核酸の少なくとも1個に含有されたヌクレオチド塩基配列領域にハイブリダイズできる。第二組の所定ハイブリダイゼーション条件下では、固定化ポリヌクレオチドのホモポリマー末端(例えば、オリゴ(dT))は、この捕捉プローブに含有された相補的なホモポリマー末端(例えば、オリゴ(dA))とハイブリダイズでき、それにより、標的核酸を固定化する。標的捕捉方法および溶解手順は、当該分野において周知であり、背景の節(上記)で、さらに詳細に記述されている。
【0134】
コンテナ保持具バネ408は、各コンテナホルダー406の壁で形成された側方スロットに架かり、バネ408と反対のホルダー406内部周壁の部分に向かってコンテナ440を押し付けることにより、コンテナホルダー406内でコンテナ440を保持するのを助ける。
【0135】
各コンテナホルダー406は、シャフトブロック構造体432により、付随する垂直シャフト423に固定されている。シャフトブロック構造体432は、曲線末端部を含み、これは、円筒形コンテナホルダー406の内側に適合し、コンテナホルダー406は、ファスナー434により、ブロック432に固定されている。ほぼ円形の開口部449は、シャフト423を受容する。スロット438は、開口部449からブロック432の末端(これは、コンテナホルダー406の内側まで広がらない)へと広がり、そして、第二スロット436は、片持ちアーム435を規定するために、スロット438にほぼ垂直に、ブロック432の縁部から広がる。小ネジ437は、ブロック432を通って側方に形成された貫通穴441を通って、アーム435を通って側方に形成されたネジ付き穴447へと延びている。ネジ437を締めるにつれて、アーム435は反り、それにより、開口部449をシャフト423の回りで締める。
【0136】
シャフトブロック構造体432、シャフト423およびコンテナホルダーベアリング415(これは、各コンテナホルダー406に付随している)は、各コンテナホルダー406に付随した好ましいコンテナホルダー取付構造体を規定し、これは、コンテナホルダー406をターンテーブル414に取り付けてコンテナホルダー406をシャフト423の回転軸412の周りで回転させるように、構成され配置されている。
【0137】
コンテナホルダー遊星歯車422は、シャフト423の対向末端に装着されている。遊星歯車422は、静止太陽歯車416と操作可能に係合する。駆動プーリ418は、中心シャフト428に装着され、そして駆動ベルト(図示せず)により、駆動モーター420に連結されている。駆動モーター420は、好ましくは、ベース402の下のジグプレート130にある開口部(図示せず)を通って延びるように、取り付けられる。駆動モーター420は、好ましくは、ステッパーモーターであり、最も好ましくは、VEXTAステッパーモーターのモデル番号PK264-01A(これは、Tokyo,JapanのOriental Motor Co.Ltd.から入手できる)である。駆動モーター420は、駆動ベルトおよび駆動プーリ418を介して、中心シャフト428およびそれに装着されたターンテーブル414を回転させる。ターンテーブルフレーム414が中心シャフト428の中心線の周りに回転するにつれて、太陽歯車416と係合した遊星歯車422は、シャフト423およびそれに装着されたコンテナホルダー406を、ターンテーブルフレーム414のアーム444の末端で回転させる。各コンテナホルダー406は、好ましくは、その回転軸410が付随シャフト423の回転軸412からずれる(offset)ように、取り付けられる。それゆえ、各コンテナホルダー406は、付随シャフト423の軸412の周りで、偏心的に回転する。従って、遊星歯車422および太陽歯車416は、回転運動連結要素を構成し、これは、ターンテーブル414がシャフト428の回転軸の周りで回転するにつれて、コンテナホルダー406をシャフト423の各個の回転軸の周りで回転させるように、構成され配置されている。
【0138】
バーコードスキャナー装置405は、好ましくは、ブラケット403に取り付けられ、各コンテナホルダー406に形成されたスキャナースロット407を通し、コンテナ440のバーコード情報を読み取る。好ましいスキャナーは、モデル番号NFT1125/002RLスキャナーであり、これは、Oran geburg,New YorkのOpticon,Inc.から入手できる。
【0139】
多軸ミキサ400は、通常、分析器50の操作中に回転して、コンテナ440の流体内容物を攪拌し、それにより、その標的捕捉試薬を懸濁液として保持し、ピペットユニット456がこれらのコンテナの1個から一定量の混合物を引き出すために、ほんの短い間だけ停止する。ピペットユニット456は、そのたびに、同じ位置で、ボルトから混合物を引き出す。従って、混合物が引き出されるボトルがそのたびに特定できるように、これらのボトルの位置をモニターするのが望ましい。
【0140】
4個のスロット付き光学センサ426(この各々は、光学エミッタおよび検出器を含む)は、90°の間隔をあけて、固定ベース402の円周の回りで配置されている。Carrollton,TexasのOptek Technology,Inc.から入手できる光学センサ(モデル番号OPB490P11)が、好ましい。センサタブ424は、ターンテーブル414のアーム445の末端で、拡張部417から下に延びている。センサタブ424がセンサ426を通るとき、このエミッタと検出器との間の連絡が断たれ、それにより、「コンテナ存在」信号を与える。タブ424は、1位置(例えば、第一容器位置)のみに設けられる。この第一容器の位置を知ることにより、残りの容器(これらは、第一容器に対して、固定されている)の位置もまた分かる。
【0141】
多軸ミキサ400には、出力およびデータコネクタを介して、出力信号および制御信号が与えられる。多軸ミキサ400が回転および偏心回転により混合をもたらす間、他の混合方法(例えば、振動、反転など)が、使用され得る。
【0142】
(標本調製手順)
標本調製を開始するために、ピペットユニット456は、多軸ミキサ400に備えられたコンテナ440から、MTU160の容器(receptacle vessel)162の各々へと、標的捕捉試薬(好ましくは、マグ-オリゴ(mag-oligo)試薬)を運搬するように、移動する。この標的捕捉試薬は、標的分析物に結合して固定化できる支持材料を含有する。この支持材料は、好ましくは、磁気応答性粒子を含む。この標本調製手順の開始時にて、右側ピペットアセンブリ450のピペットユニット456は、プローブ457がトレイ372の1個でピペットチップ上に操作可能に配置された位置へと、側方および長手軸方向に移動する。
【0143】
チップトレイ372は、このピペットチップとピペットユニット456の管状プローブ457との間で正しい位置決めを達成するために、正しく位置づけられるように、ピペットチップホイール350上に備えられる。ピペットユニット456は、下に移動して、管状プローブ457の自由端をピペットチップの開放末端に挿入し、このピペットチップと摩擦によって噛み合う。ピペットユニット456に好ましく使用されるCavroプロセッサは、カラー(図示せず)を含み、これは、Cavroプロセッサに特有である。このカラーは、ピペットチップが管状プローブ457の末端と摩擦により噛み合うとき、僅かに上方へ移動し、位置ずれしたカラーは、ピペットユニット456上の電気スイッチを作動させて、ピペットチップが存在していることを立証する。もし、(例えば、トレイ372でチップが欠けていることまたは誤整列のために)チップの取り上げがうまくいかないなら、存在しないチップの信号が発生し、ピペットユニット456は、異なるチップ位置で、再試行チップ噛み合いへと移動し得る。
【0144】
このアッセイマネージャプログラムにより、多軸ミキサ400は、簡単に回転を停止し、その結果、ピペットユニット456は、一定位置まで移動でき、管状プローブ457と、ピペットユニット456の装着したピペットチップは、固定コンテナ440のうちの1個の上で、整列される。ピペットユニット456は、管状プローブ457に装着されたピペットチップをコンテナ440まで下げ、そして所望量の標的捕捉試薬をこのピペットチップへと引き入れる。ピペットユニット456は、次いで、コンテナ440からプローブ457を移動させ、多軸ミキサ400が回転を再開し、ピペットユニット456は、開口部252および標本移動ステーション255の上の位置まで移動する。次に、ピペットユニット456は下降し、開口部252を通して、このピペットチップおよび管状プローブ457を移動させて、必要量の標的捕捉物(典型的には、100?500μl)を、1つ以上のMTU160の容器162へと分配する。この標的捕捉試薬は、このピペットチップへのみ入れられ、プローブ457それ自体へは引き入れられないのが好ましい。さらに、このピペットチップは、MTU160の全5個の導管162に対して充分な試薬を保持するのに充分な容積であるのが好ましい。
【0145】
標的捕捉試薬が移動した後、ピペットユニット456は、次いで、チップ処分チューブ342上の「チップ廃棄」位置に移動し、この場所で、この使い捨てピペットチップは、ピペットユニット456の管状プローブ457の末端から離れて押されるかまたは排出されて、チューブ342を通って、固形廃棄物コンテナの方へと落ちる。光学センサ(図示せず)は、チューブ342に隣接して配置され、チップを廃棄する前に、標本ピペットアセンブリ450は、ピペットユニット456を、このセンサの感知位置へと移動させる。このセンサは、チップが管状プローブ457の末端と噛み合っているか否かを検出して、このチップが、依然として、ピペットユニット456の管状プローブ457で保持されていることを立証し、それにより、このチップが標本調製を通じて管状プローブ457にあったことを確認する。好ましいセンサは、広間隔のスロット付きセンサ、モデルOPB900W(これは、Carrollton,TexasのOptek Technology,Inc.から入手できる)である。
【0146】
好ましくは、このピペットチップは、ピペットユニット456の管状プローブ457上のカラー(図示せず)により、排出される。このカラーは、管状プローブ457が上げられた場合、ハードストップと噛み合い、その結果、プローブ457は、上昇し続け、このカラーは、固定されたままになり、このピペットチップの上端と噛み合って、それにより、それを強制的に管状プローブ457から離す。
【0147】
この標的捕捉試薬をピペットで取り出してこのピペットチップを廃棄した後、ピペットユニット456のプローブ457は、チップ洗浄ステーションベースン346にて、管状プローブ457を通って蒸留水を流すことにより、洗浄され得る。このチップ洗浄水は、集められて、液体廃棄物コンテナへと下に排出される。
【0148】
この試薬分配手順に続いて、右ピペットアセンブリ450上のピペットユニット456は、ピペットユニット456の管状プローブ457がチップトレイ372のうちの1個の上の新しいピペットチップの上で中心に置かれる位置まで、側方および長手軸方向に移動する。チップをうまく噛み合わせた後、ピペットユニット456は、標本調製開口部252に隣接した標本リング250に戻り、カバープレート138の開口部140、142の1個と整列した標本チューブ320から、試験標本(約25?900μl)を引き出す。両方の開口部140、142は、プレート138上へこぼれた任意の流体が開口部140、142へと流れないように、上方に延びている周囲フランジを含む。ピペットユニット456は、次いで、標本運搬ステーション255にて、MTU160の上を移動し、開口部252を通って下に移動し、試験標本を、MTU160(標的捕捉試薬を含む)の容器162の1個へと分配する。ピペットユニット456は、次いで、チップ処分チューブ342上の「チップ廃棄」位置に移動し、この使い捨てピペットチップは、チューブ342へと排出される。ピペットユニット456は、次いで、ピペットチップホイール350から、新しい使い捨てピペットチップを取り上げ、標本リング250は、新しい標本チューブがピペットユニット456によってアクセス可能であるように、位置合わせされ、ユニット456は、この標本チューブへと移動して、そこから、この使い捨てピペットチップへと標本流体を引き入れ、ピペットユニット456は、次いで、標本運搬ステーション255上の位置へと移動し、標本流体を異なる容器162(これは、標的捕捉試薬を含む)へと分配する。このプロセスは、好ましくは、全ての5個の容器162が流体標本試料および標的捕捉試薬の組合せを含むまで、繰り返される。
【0149】
あるいは、分析器50により行われるアッセイプロトコル(単数または複数)に依存して、ピペットユニット456は、同じ試験標本物質を2個またはそれ以上の容器162へと分配し、この分析器は、これらのアリコートの各々に対して、同じかまたは異なるアッセイを実行し得る。
【0150】
ピペットユニット480、482に関して上で記述したように、ピペットユニット456はまた、容量レベル感知性能も備える。管状プローブ457の末端で使用されるピペットは、好ましくは、導電性材料から作製され、その結果、容量レベル感知は、たとえ管状プローブ457の末端にチップが備えられている場合でも、ピペットユニット456を使って実行され得る。このピペットユニットが試験標本分配手順を完結した後、ピペットユニット456は、その流体レベルの頂部が静電容量の変化により検出されるまで、管状プローブ457を容器162へと下に移動し戻す。管状プローブ457の垂直位置は、容器162に適切な量の流体材料が含有されているかどうかを決定するために、記される。容器162での充分な材料の欠乏は、試験標本(これは、管状プローブ457の末端でこのチップを凝固し得、そして試験標本材料のチップの適切な吸引を妨げ得、そして/またはチップからの試験標本の適切な分配を妨げ得る)での凝固により、起こり得る。
【0151】
標本移動後、このピペットチップは、上記のように、チップ廃棄チューブ342へと捨てられる。再度、このピペットユニットの管状プローブ457は、所望ならば、蒸留水で洗浄できるが、このプローブの洗浄は、典型的には、不要である。何故なら、好ましい操作方法では、標本材料は、この使い捨てピペットチップと接触するにすぎないからである。
【0152】
このアッセイマネージャプログラムは、ピペットユニット制御ロジックを包含し、これは、ピペットユニット456、480、482の運動を制御し、好ましくは、ピペットユニット456を、ピペットユニット456が管状プローブ457を標本チューブ320上に配置して試験標本を引き出すとき、または標本チューブ320が標本カバーのプレート138の下にあるときを除いて、標本リング250上の標本チューブ320を決して通り過ぎないような様式で、移動させる。このようにして、ピペットユニット450の管状プローブ457から別の標本チューブの意図しない流体滴(これは、相互汚染を生じる)は、回避される。
【0153】
以下の標本調製に従って、MTU160は、右側運搬機構500により、その標本運搬ステーションから、右軌道ミキサ550(ここで、この標本/試薬混合物は、混合される)まで移動される。軌道ミキサ550、552の構造および操作は、以下でさらに詳細に記述する。
【0154】
MTU160を、右側運搬機構500により、この標本運搬ステーションから引き出した後、入力列(input queue)150内の反応受容器シャトルアセンブリは、次のMTUを、右側運搬機構500(これは、次のMTUを、この標本運搬ステーションへと移動する)により回収される位置へと前進させる。次いで、次のMTUに対して、標本調製手順が繰り返される。
【0155】
(運搬機構)
右側および左側運搬機構500、502を、今ここで、詳細に記述する。図13?16を参照すると、右側運搬機構500は、(左側運搬機構502と同様に)、操作フック部材を有し、これは、図示した実施形態では、プレート512上のスロット510に放射状にスライドして移動可能なフック取付構造体508から延びている伸長可能分配器フック506を含む。プレート512の上部にあるハウジング504は、開口部505を有し、これは、MTU160の上部を受容するように、構成されている。プレート512に取り付けられたステッパーモーター514は、ネジ付きシャフト516を回転させ、これは、リードネジ機構と共に、図13および15で示した伸長位置から、図14で示した後退位置まで、分配器フック506を移動し、モーター514およびネジ付きシャフト516は、好ましいフック部材駆動アセンブリの要素を構成する。ステッパーモーター514は、好ましくは、改良型HSIシリーズ46000である。HSIステッパーモーターは、Waterbury,ConnecticutのHaydon Switch and Instrument,Inc.から入手できる。このHISモーターは、ネジ付きシャフト516の一端からネジを機械切削することにより、改良されており、その結果、シャフト516は、フック取付構造体508を受容できる。
【0156】
ハウジング504、モーター514およびプレート512は、好ましくは、合致したシュラウド507により、覆われる。
【0157】
図16で示すように、ステッパーモーター518は、ベルト519を介して、プーリ520を回転する。(VEXTAステッパーモーター、モデル番号PK264-01A(これは、Tokyo,JapanのOriental Motor Co.Ltd.から入手できる)およびSDPタイミングベルト、モデル番号A6R51M200060(これは、New Hyde Park,New YorkのSDP/SIから入手でき、好ましい))。プーリ520は、好ましくは、特注プーリであり、その周囲には、162個の軸溝が配置されている。主要シャフト522は、独特の形状の取付ブロック523によってプレート512に固定的に装着され、ベース524を通って下に延び、そしてプーリ520に固定される。ベース524は、ベース524の外周の周りに形成された開口部525を通って延びている機械的ファスナーによって、データプレート(datum plate)82に取り付けられている。フレックス回路526は、フック取付構造体508およびモーター514に出力信号および制御信号を提供し、この間、プレート512(およびこのプレートに備えられた要素)を、ベース524に関して340°程度に回転するのに充分に旋回させる。運搬機構アセンブリ500、502は、好ましくは、このユニットの回転移動経路のいずれかの末端にて、ハードストップ(図示せず)を含む。
【0158】
アーム位置エンコーダ531は、好ましくは、主要シャフト522の末端に取り付けられている。このアーム位置エンコーダは、好ましくは、絶対エンコーダである。Seattle,WashingtonのU.S.Digital製のA2シリーズエンコーダ(モデル番号、A2-S-K-315-H)が好ましい。
【0159】
このアッセイマネージャプログラムは、モーター518および514およびフック取付構造体508に制御信号を提供して、分配器フック506がMTU160上のMTU操作構造体166と噛み合うように命令する。フック506が噛み合うと、モーター514は、シャフト516を回転するように、電圧を加えられ得、それにより、フック506およびMTU160をハウジング504へと引き戻す。MTU160は、MTU160の接続リブ構造体164がスロット510に隣接するプレート512の対向縁部511と滑り噛み合いすることによって、運搬機構500、502により、確実に保持される。プレート512は、それにより、好ましい受容器キャリアアセンブリの1要素を構成し、これは、回転軸(例えば、シャフト522の軸)の周りに回転可能であるように、そして反応受容器(例えば、MTU160)を受容し運ぶように、構成され配置されている。モーター518は、ベルト519を介して、プーリ520およびシャフト522を回転でき、それにより、ベース524に対してプレート512およびハウジング504を回転する。それゆえ、ハウジング504を回転することにより、噛み合ったMTUの配向が変化し、それにより、このMTUを、処理デッキ上の異なるステーションと整列させる。
【0160】
ハウジング504内の分配器フック506の位置を表示するために、ハウジング504の対向側面には、センサ528、532が設けられる。センサ528は、移動終端(end-of-travel)センサであり、そしてセンサ532は、ホームセンサである。センサ528、532は、好ましくは、スロット付き光学センサであり、これは、Carrollton,TexasのOptek Technology,Inc.から入手できる(モデル番号、OPB980T11)。ホームセンサ532については、そのセンサビームは、フック506がその完全に後退した位置にあるとき、フック取付構造体508から延びているホームフラッグ536により、断絶される。移動終端センサ528のビームは、フック506が完全に伸長したとき、フック取付構造体508の反対側から伸長している移動終端フラッグ534により、断絶される。
【0161】
ハウジング504の側面に取り付けられたMTU存在センサ530は、ハウジング504内のMTU160の存在を感知する。センサ530は、好ましくは、SUNX赤外線センサであり、これは、West Des Moines,IowaのSUNX/Ramco Electric,Inc.から入手できる。
【0162】
(温度ランピングステーション)
1個またはそれ以上の温度ランピングステーション700は、好ましくは、ジグプレート130および標本リング250の下に配置される(標本リング250の下に位置している温度ランピングステーションは、図面では、示されていない)。MTU160の内容物を軌道ミキサ550内で混合した後、右側運搬機構500は、そのアッセイプロトコルに依存して、右軌道ミキサー550から、温度ランピングステーション700へと、MTU160を移動し得る。
【0163】
各ランピングステーション700の目的は、MTU160およびその内容物の温度を、望ましいように、上下に調節することにある。このMTUおよびその内容物の温度は、このインキュベータ内での大きな温度変動を回避するために、このMTUをインキュベータに挿入する前に、インキュベータ温度に近づくように調節され得る。
【0164】
図17?18で示すように、温度ランピングステーション700は、MTU160が挿入され得るハウジング702を含む。ハウジング702は、ランピングステーション700をデータプレート82に取り付けるための取付フランジ712、714を含む。熱電モジュール704(これはまた、ペルティエ装置として、知られている)は、吸熱構造体706と熱接触しているが、好ましくは、底部710にて、ハウジング702に装着される。好ましい熱電モジュールには、Trenton,New JerseyのMelcor,Inc.から入手できるもの(モデル番号、CP1.4-127-06L)がある。図17では、1個の熱電性モジュール704が示されているものの、ランピングステーション700は、好ましくは、2個のこのような熱電モジュールを含む。あるいは、ハウジング702の外面は、このランピングステーションを加熱するためのマイラーフィルム耐熱箔材料(図示せず)で覆うことができる。適当なマイラーフィルム加熱箔は、Minneapolis,MinnesotaのMinco ProductsおよびLeavenworth,KansasのHeatron,Inc.から入手できる食刻箔である。ランプアップ(ramp-up)ステーション(すなわち、ヒーター)については、好ましくは、耐熱要素が使用され、また、ランプダウン(ramp-down)ステーション(すなわち、冷却機)については、好ましくは、熱電モジュール704が使用される。ハウジング702は、好ましくは、断熱ジャケット構造体(図示せず)で覆われる。
【0165】
熱電モジュール704と共に使用される吸熱構造体は、好ましくは、アルミニウムブロック(そこから、熱発散フィン708が延びている)を含む。
【0166】
温度をモニターするために、好ましくは、ハウジング702上または内の位置で、2個の熱センサ(図示せず)(好ましくは、25℃で10KOhmと見積もられるサーミスタ)が設けられる。Yellow Springs,OhioのYSI,Inc.から入手できるYSI44036シリーズサーミスタが好ましい。YSIサーミスタは、その高い精度および一方のサーミスタから他方のサーミスタへとYSIサーミスタが与える±0.1℃の相互互換性のために、好ましい。これらの熱センサの一方は、一次温度制御のためにあり、すなわち、このランピングステーション内の温度を制御するための埋込み制御装置に信号を送り、そして他方の熱センサは、この一次温度制御熱センサの予備検査(back-up check)として、ランピングステーションの温度をモニターするためにある。埋込み制御装置は、これらの熱センサをモニターし、このランピングステーションの加熱箔または熱電モジュールを制御して、ランピングステーション700内にて、ほぼ均一な所望温度を維持する。
【0167】
MTU160は、ハウジングに挿入され得、MTU支持フランジ718(これは、MTU160の接続リブ構造体164と噛み合う)上で支持される。ハウジング702の側面パネルの前端では、切り欠き720が形成されている。切り欠き720により、運搬機構500または502の分配器フック506は、MTU160のMTU操作構造体166(これは、それに対する側方運動により、温度ランピングステーション700に全面的に挿入される)を噛み合わせまたは外すことが可能になる。
【0168】
(回転インキュベータ)
このアッセイ手順の一般的な記述と連続して、ランピングステーション700での充分な温度ランプアップに続いて、右側運搬機構500は、ランプステーション700から、MTUを回収し、そしてMTU160を標的捕捉およびアニーリングインキュベータ600に置く。分析器50の好ましい操作モードでは、標的捕捉およびアニーリングインキュベータ600は、約60℃で、MTU160の内容物をインキュベートする。ある種の試験のためには、このアニーリングインキュベーション温度は±0.5℃よりも大きく変わらないこと、および増幅インキュベーション(以下で記述する)温度は±0.1℃よりも大きく変わらないことが重要である。結果的に、これらのインキュベータは、一貫した均一な温度を与えるように、設計されている。
【0169】
今ここで、回転インキュベータ600、602、604および606の2つの実施形態の構造および操作の詳細を記述する。図19?23を参照すると、これらのインキュベータの各々は、略円筒形部分610を備えたハウジングを有し、これは、断熱ジャケット612および断熱カバー611内で、データプレート82に適当に取り付けられている。
【0170】
円筒形部分610は、好ましくは、ニッケルメッキした鋳造アルミニウムから構成されており、また、カバー611の金属部分は、好ましくは、機械切削したアルミニウムである。円筒形部分610は、好ましくは、3個またはそれ以上の樹脂「フィート」609の頂上のデータプレート82に取り付けられている。フィート609は、好ましくは、General Electric Plasticsから供給されたUltemU-1000から形成される。この材料は、熱伝導性に乏しい材料であり、従って、フィート609は、このインキュベータをこのデータプレートから隔離するように機能する。断熱材612およびカバー611用断熱材は、好ましくは、Pleasantown,CaliforniaのBoyd Corporationから供給される1/2インチ厚のポリエチレンから構成される。
【0171】
円筒形部分610では、受容器アクセス開口部614、616が形成されており、ジャケット612では、協同受容器アクセス開口部618、620が形成されている。インキュベータ600および602に対して、アクセス開口部セットの一方は、右側運搬機構500によりアクセス可能であるように、位置づけられており、そしてアクセス開口部の他方のセットは、左側運搬機構502によりアクセス可能であるように、位置づけられている。インキュベータ604および606は、左側運搬機構502によってのみアクセス可能である必要があり、従って、単一の受容器アクセス開口部だけを有する。
【0172】
回転ドア622、624を含む閉鎖機構は、開口部614および616内に、回転可能に配置される。各回転ドア622、624は、中実円筒体を通って延びているMTUスロット626を有する。MTUスロット626は、その下部と比較して上部が広くなっており、MTU160の外形にかなり一致するように構成される。ドアローラー628、630は、それぞれドア622、624の各々の頂部に取り付けられている。回転ドア622、624は、ソレノイド(図示せず)(これは、このアッセイマネージャプログラムからの命令により制御される)により作動されて、適切な時点で、ドア622,624を開閉する。ドア622または624は、そのMTUスロット626が各個のアクセス開口部614、616と整列するようにドア622、624を回転することにより、開かれ、また、そのMTUスロット626が各個の受容器アクセス開口部614、616に対して横に延びるようにドア622、624を回転することにより、閉じられる。円筒形部分610、カバー611、ドア622、624、および床パネル(図示せず)は、このインキュベーションチャンバを規定する囲壁を構成する。
【0173】
ドア622、624は、MTUのインキュベータへの挿入、またはそこからのMTUの回収を可能にするために開かれ、また、このインキュベータからアクセス開口部614、616を通る熱損失を最小にするために、他の全ての時点で、閉じられる。
【0174】
中心に配置された放射状ファン632は、内部ファンモーター(図示せず)により、駆動される。Papst(モデル番号RER 100-25/14)遠心ファン(これは、Farmington,Connecticutのebm/Papstから入手できる)は、24VDCモーターを有していて、32cfmで評価されるのが、その形状がこのインキュベータ内での用途にうまく合うので、好ましい。
【0175】
今ここで、図22を参照すると、MTUカルーセルアセンブリ671は、好ましい受容器キャリアであり、これは、このインキュベータ内にある複数の放射状に配向され周囲に配置されたMTU160を運ぶ。MTUカルーセルアセンブリ671は、上板642で運ばれ、これは、このハウジングの円筒形部分610により、支持されており、そして好ましくは、上板642の周縁で支持された回転モーター640(好ましくは、ステッパーモーター)により、作動される。回転モーター640は、好ましくは、VEXTAステッパーモーターのモデル番号PK246-01A(これは、Tokyo,JapanのOriental Motor Co.Ltd.から入手できる)である。
【0176】
MTUカルーセル671は、ハブ646を含み、これは、上板642の下に配置され、そして上板642を通って延びているシャフト649を経由して、プーリ644に連結されている。プーリ644は、好ましくは、特注プーリであり、その周囲に配置された162個の軸溝を備え、そしてベルト643によって、モーター640に連結されて、その結果、モーター640は、ハブ646を回転し得る。ベルト643は、好ましくは、New Hyde Park,New YorkのSDP/SIから入手できるGT(登録商標)シリーズタイミングベルトである。プーリ644とモーター640との間に、好ましくは、9:1の比が設けられる。ハブ646は、複数の等間隔を置いて配置された内部空気流スロット645を有し、これは、必要に応じて、放射状に配向され周囲に配置された仕切り壁647により、分離されている。説明図では、仕切り壁647が3個だけ示されているが、仕切り壁647は、ハブ646の全周囲の周りに仕切り壁を設けられ得ることが理解される。好ましい実施形態では、仕切り壁647は、省略される。支持ディスク670は、ハブ646に装着され、上板642の下で、それとほぼ平行関係で配置されている。支持ディスク670の下部には、複数の放射状に延び周囲に配置されたMTU保持部材672が装着されている(明瞭にするために、3個のMTU保持部材672のみが示されている)。MTU保持部材672は、その対向面に沿って延びている支持リッジ674を有する。放射状に配向されたMTUは、周囲で隣接しているMTU保持部材672により規定されるステーション676内で、MTUカルーセルアセンブリ671に備えられ、支持リッジ674は、MTUカルーセルアセンブリ671で運ばれる各MTU160の接続リブ構造体164を支持している。
【0177】
このMTUカルーセルアセンブリは、駆動プーリ(図示した実施形態では、644)が装着されたカルーセル駆動シャフトにて、回転する。このカルーセル駆動シャフトの外部末端には、好ましくは、カルーセル位置エンコーダが取り付けられている。このカルーセル位置エンコーダーは、好ましくは、スロット付きホイールおよび光学スロットスイッチの組合せ(図示せず)を含む。このスロット付きホイールは、カルーセルアセンブリ671と連結され得、それと共に回転し、そして、光学スロットスイッチは、静止状態にするために、このハウジングの円筒形部分610または上板642に固定され得る。スロット付きホイール/スロットスイッチの組合せは、カルーセルアセンブリ671の回転位置を表示するのに使用され得、そして「ホーム」位置(例えば、#1ステーションと命名されたMTUステーション676がアクセス開口部614の前にある位置)を表示し得る。Seattle,WAのU.S.Digital製のA2シリーズエンコーダ(モデル番号A2-S-K-315-H)が好ましい。
【0178】
円筒形部分610およびカバー611を含むインキュベータハウジング内で規定されたインキュベータチャンバと熱連絡して、熱源が設けられている。好ましい実施形態では、マイラーフィルムを入れた電気抵抗性の加熱箔660がハウジング610を取り囲んでおり、同様に、カバー611に装着され得る。好ましいマイラーフィルム加熱箔には、Minneapolis,MinnesotaのMinco ProductsおよびLeavenworth,KansasのHeatron,Inc.から入手できる食刻箔がある。代替の熱源は、内部に取り付けた抵抗性加熱要素、熱電加熱チップ(Peltiers)、または遠隔熱発生機構(これは、導管などにより、このハウジングに熱的に接続されている)を含み得る。
【0179】
図19および22で示すように、ピペットスロット662は、インキュベータカバー611を通って延びており、放射状に整列されたピペット穴663は、上板642を通って延びており、そしてピペットスロット664は、各MTUステーション676の上の支持ディスク670にて形成され、ピペットで試薬をインキュベータ内に配置されたMTUに入れることが可能となる。好ましい操作モード用の分析器50の好ましい実施形態では、これらのインキュベータの2個だけ、すなわち、増幅インキュベータ604およびハイブリダイゼーション保護アッセイインキュベータ606が、ピペット穴663ならびにピペットスロット662および664を含む。何故なら、好ましい操作モードでは、流体がこのインキュベータ内にある間にMTU160へと分配される場所は、これら2個のインキュベータだけであるからである。
【0180】
上板642には、2個の温度センサ666(好ましくは、サーミスタ(25℃で10KOhm))が位置づけられている。Yellow Springs,OhioのYSI,Inc.から入手できるYSI44036シリーズサーミスタが好ましい。YSIサーミスタは、その高い精度および一方のサーミスタから他方のサーミスタへとYSIサーミスタにより与えられる±0.1℃の相互互換性のために、好ましい。センサ666の一方は、一次温度制御のためにあり、すなわち、このインキュベータ内の温度を制御するための埋込み制御装置に信号を送り、そして他方のセンサは、この一次温度制御熱センサの予備検査として、このインキュベータの温度をモニターするためにある。埋込み制御装置は、センサ666をモニターし、加熱箔660およびファン632を制御して、インキュベータハウジング610内にて、均一な所望温度を維持する。
【0181】
運搬機構500、502がMTU160をインキュベータ600、602、604または606に装填する準備ができるにつれて、モーター640はハブ646を回転して、空のMTUステーション676を、受容器アクセス開口部614(または616)と整列させる。これが起こるにつれて、そのドア作動ソレノイドは、それに対応して、回転ドア622(または624)を1/4回転だけ回転して、このドアのMTUスロット626をMTUステーション676と整列させる。アクセス開口部614は、それにより、露出されて、MTU160の配置または取り外しを可能にする。運搬機構500または502は、次いで、分配器フック506を、その後退位置から伸長位置へと前進させて、MTU160を、ハウジング504から、アクセス開口部614を通って、このインキュベータ内のMTUステーション676へと押す。分配器フック506が引き出された後、モーター640は、ハブ646を回転して、先に挿入したMTU160をアクセス開口部614から離れてシフトして、回転ドア622は、再度、閉じる。この手順は、この回転インキュベータに挿入される次のMTUに対して、繰り返される。装填した各MTUのインキュベーションは、そのMTUがこのインキュベータの回りで(反時計方向)出口スロット618の方へと前進するにつれて、継続する。
【0182】
MTUステーション676の各々にあるMTUセンサ(好ましくは、赤外光反射センサ)は、このステーション内のMTU160の存在を検出する。Optek Technology,Inc.のセンサ(モデル番号OPB770T、これは、Carrollton,TexasのOptek Technology,Inc.から入手できる)は、これらのセンサがインキュベータの高温環境に耐える性能があるため、そして、これらのセンサがMTU160のラベル受容構造体174のラベル受容面175に固定されたバーコードデータを読み取る性能があるために、好ましい。それに加えて、各ドアアセンブリ(回転ドア622、624またはドアアセンブリ650)は、好ましくは、ドアの開閉位置を表示するスロット付き光学センサ(図示せず)を含む。Carrollton,texasのOptek Technology,Inc.から入手できるセンサ(モデル番号OPB980T11)は、比較的微細な解像度によりドア位置の正確なモニタリングが可能なため、好ましい。MTUカルーセルアセンブリ671に隣接するハウジング610内には、斜めデッスク線形ミキサ(これはまた、揺れ動く(wobbler)プレートとしても、公知である)634が設けられ、受容器混合機構として、作動する。ミキサ634は、モーター636のシャフトに斜めに取り付けたディスクを含み、これは、開口部635を通って、ハウジング610へと延びている。このモーターは、好ましくは、VEXTAステッパーモーターのモデル番号PK264-01A(これは、Tokyo,JapanのOriental Motors Ltd.から入手できる)であり、MTUカルーセルアセンブリ671用に好ましく使用されるモーターと同じモーターである。このモーターの高調波(これは、このモーターを失速し得る)を減衰するために、モーター636には、好ましくは、粘性高調波減衰器(viscous harmonic damper)638が装着される。好ましい高調波減衰器には、Oriental Motors Ltd.から入手できるVEXTA高調波減衰器がある。この斜めディスク線形ミキサ634の操作は、以下で記述する。
【0183】
これらのインキュベータのうちの2個だけ、すなわち、増幅インキュベータ604およびハイブリダイゼーション保護アッセイインキュベータ606が、斜めディスク線形ミキサ634を含む。何故なら、好ましい操作モードでは、流体がこのインキュベータ内にある間にMTU160へと分配される場所は、これらの2個のインキュベータだけであるからである。それゆえ、増幅インキュベータ604およびハイブリダイゼーション保護アッセイインキュベータ606において、斜めディスク線形ミキサ634によるMTU160の線形混合を提供する必要があるに過ぎない。
【0184】
このインキュベータにおいて、線形ミキサ634でMTU160の線形混合を行うためには、MTUカルーセルアセンブリ671は、MTU160を移動して、斜めディスク線形ミキサ634と整列させ、斜めディスク線形ミキサ634の斜めディスクは、MTU160のMTU操作構造体166と噛み合う。モーター636が斜めディスク線形ミキサ634の斜めディスクを回転させるにつれて、この斜めディスク構造体のうちMTU160と噛み合った部分は、ハウジング610の壁に対して内外に半径方向に移動して、それにより、MTU操作構造体166の垂直片167およびシールド構造体169と交互に噛み合う。従って、斜めディスク線形ミキサ634と噛み合ったMTU160は、好ましくは、高い振動数で、内外に半径方向に移動して、MTU160の内容物を線形混合する。好ましい操作モードの増幅インキュベーション工程(これは、増幅インキュベータ604内で起こる)には、10Hzの混合振動数が好ましい。好ましい操作モードのプローブインキュベーション工程(これは、ハイブリダイゼーション保護アッセイインキュベータ606内で起こる)には、14Hzの混合振動数が好ましい。最後に、この好ましい操作モードの選択されたインキュベーション工程(これもまた、ハイブリダイゼーション保護アッセイインキュベータ606内で起こる)には、13Hzの混合振動数が好ましい。
【0185】
MTU160と斜めディスク線形ミキサ634との間の摩擦を最小にするために、斜めディスク線形ミキサ634とMTU160との間の表面接触を最小にするように、MTU160の垂直片167およびシールド構造体169の凸面の中間部には、それぞれ、盛り上がったアーチ形部分171、172が設けられている(図47を参照)。
【0186】
好ましい実施形態では、斜めディスク線形ミキサ634が図21で示す「ホーム」位置で回転を停止するのを保証するために、斜めディスク線形ミキサ634には、センサが設けられており、その結果、MTU操作構造体166は、MTUカルーセルアセンブリ671が回転するにつれて、斜めディスク線形ミキサ634と噛み合ったりそこから外れたりできる。好ましい「ホーム」センサには、この斜めディスク線形ミキサ構造体から側方に延びているピン、およびスロット付き光学スイッチ(これは、このピンがこの光学スイッチのビームを遮断するとき、この斜めディスク線形ミキサアセンブリの配向を検証する)がある。磁性を基準にしたホール効果(hall effect)センサもまた、使用され得る。
【0187】
代替のMTUカルーセルアセンブリおよびカルーセル駆動機構は、図23Aおよび23Cで示されている。図23Aで示すように、この代替のインキュベータは、ハウジングアセンブリ1650(これは、一般に、ニッケルメッキした鋳造アルミニウムから構成された円筒形部分1610を含む)、カバー1676(これは、好ましくは、機械切削したアルミニウムから形成されている)、カバー1676用断熱材1678、および断熱ジャケット1651(これは、円筒形部分1610を取り囲んでいる)を含む。先に記述したインキュベータ実施形態と同様に、このインキュベータは、線形ミキサ機構を含み得、これは、高調波減衰器638付きの線形ミキサモーター636を含む。閉鎖機構1600(下記)は、受容器アクセス開口部1614に仕切りをするかまたはそこを通るアクセスを可能にすめように、作動する。先に記述した実施形態と同様に、このインキュベータは、分析器50内でのインキュベータの位置およびその機能に依存して、1個または2個のアクセス開口部1614を含み得る。
【0188】
ハウジング1650の下部には、遠心ファン632が取り付けられ、モーター(図示せず)で駆動される。ファンカバー652は、このファンの上に配置されるが、ファン632により発生する空気を流すのを可能にするのに充分な開口部を含む。カルーセル支持シャフト1654は、下部シャフト1692および上部シャフト1690を含み、これらは、支持ディスク1694により、分離されている。支持シャフト1654は、ファンカバー1652へと下に延びている下部シャフト1692によって支持されており、この場所で、それは、ベアリング(図示せず)により、回転可能に支持され確保されている。
【0189】
MTUカルーセル1656は、中心部1696を有する上部ディスク1658を含む。支持ディスク1694の上面は、カルーセル1656の重量が下から支持されるように、上部ディスク1658の中心部1696の下面と噛み合って装着されている。図23Cで示すように、上部ディスク1658の下には、複数の放射状に延びて円周方向で間隔を置いて配置されたステーション仕切板1660が装着されている。下部ディスク1662は、複数の放射フランジ1682を含み、これらは、環状内部1688から発出している。放射状フランジ1682は、数および間隔において、カルーセルステーション仕切板1660に対応しており、下部ディスク1662は、各フランジ1682が仕切板1660の付随した1個に確保されて、カルーセルステーション仕切板1660の下面に確保されている。
【0190】
放射状フランジ1682は、隣接対のフランジ1682間にて、複数の放射状スロット1680を規定している。図23Cから分かり得るように、その内部末端1686での各フランジ1682の円周方向の幅は、その外部末端1684でのフランジ1682の円周方向の幅よりも小さい。フランジ1682のテーパ付き形状は、スロット1680の対向側面が互いにほぼ平行になることを保証する。
【0191】
下部ディスク1662をカルーセルステーション仕切板1660の下に装着するとき、その各長さの少なくとも一部に沿ったこれらのフランジの幅は、各仕切板1660(これもまた、その外部末端から、その内部末端の方へと、テーパを付けられ得る)の幅よりも大きい。フランジ1684は、隣接対の仕切板1660の側面に沿って、隣接対の仕切板1660間で規定された各MTUステーション1663へと挿入されたMTU160の接続リブ構造体164を支持するための側方棚を規定する。
【0192】
上部ディスク1658の中心部1696の頂部には、プーリ1664が確保され、モーター1672は、ハウジング1650の直径に架かる取付ブラケット1670に備えられ、その対向末端で、このハウジングの円筒形部分1610に確保されている。このモーターは、好ましくは、Vexta PK264-01Aステッパーモーターであり、そしてベルト1666(好ましくは、Gates Rubber Companyにより供給されたもの)により、このプーリ(これは、このモーターに対して、9:1の比を有する)に連結されている。取付ブラケットの上部中心部1672には、位置エンコーダ1674が確保され、そしてカルーセル支持シャフト1654の上部シャフト1690と連結されている。エンコーダ1674(好ましくは、Vancouver,WashingtonのU.S.Digital CorporationによるA2シリーズの絶対エンコーダ)は、カルーセル1656の回転位置を表示する。
【0193】
インキュベータプレート1676(これは、好ましくは、機械切削したアルミニウムから形成されている)および適合しているカバー断熱要素1678により、インキュベータカバーが規定されている。カバープレート1676および断熱要素1678は、エンコーダ1674およびモーター1672を収容する適当な開口部を含み、また、その中に形成された放射状スロット(これは、上記実施形態に関して記述したように、このインキュベータ内で備えられたMTUに流体を分配するためにある)を含み得る。
【0194】
代替の好ましい閉鎖機構1600は、図23Bで示されている。このインキュベータハウジングの円筒形部分1610は、少なくとも1個の受容器アクセス開口部1614を含み、アクセス開口部1614の対向側面に沿って、円筒形部分1610から、一体的に、外向きに突出している壁部分1616、1618が延びている。
【0195】
回転ドア1620は、このハウジングのうちアクセス開口部1614の上の円筒形部分1610に装着されたドア取付ブラケット1636によって、アクセス開口部1614に対して操作可能に取り付けられている。ドア1620は、アーチ形閉鎖パネル1622および横に延びているヒンジプレート部分1628(これは、ドア取付ブラケット1636の取付ポスト(図示せず)を受容するための穴1634を有する)を含む。ドア1622は、第一位置(この位置では、アーチ形閉鎖パネル1622は、突出している壁部分1616、1618と協同して、アクセス開口部1614を閉じる)と第二部分(これは、アクセス開口部1614に対して外向きに回転されて、アクセス開口部1614を通る受容器の移動を可能にする)との間で、アクセス開口部1614に対して、開口部1634の周りで回転可能である。アーチ形パネル1622の内部アーチ形面は、ドア取付ブラケット1636のアーチ形面1638、および受容器アクセス開口部1614の下に配置されたアーチ形面1619と適合して、表面1638および1619に対するアーチ形パネル1622の運動を可能にし、この間、その間の熱損失を最小にするために、各個の表面間では最小の間隙を設けている。
【0196】
ドア1620は、このハウジングのうち受容器アクセス開口部1614の下の円筒形部分1610に確保されたモーター取付ブラケット1640によって、このインキュベータハウジングに取り付けられたモーター1642により、作動される。モーターシャフト1644は、シャフト1644の回転が回転ドア1620の回転へと伝達されるように、回転ドア1620の下部作動プレート1626に連結されている。モーター1642は、最も好ましくは、HSI7.5°パーステップ(per step)モーターであり、これは、Waterbury,ConnecticutのHaydon Switch and Instrument,Inc.から入手できる。このHSIモーターは、比較的に低価格であるために、また、閉鎖アセンブリ1600が高トルクの頑丈なモーターを必要としないために、選択される。
【0197】
ドア取付ブラケット1636の対向側面には、ドア位置センサ1646および1648(好ましくは、スロット付き光学センサ)が操作可能に取り付けられている。センサ1646および1648は、回転しているドア1620の相対位置を指示するために、ドア1620のヒンジプレート1628にあるセンサタブ1632および1630と協同しており、例えば、ドア開放およびドア閉鎖状態を指示するように構成できる。
【0198】
ドア取付ブラケット1636と回転ドア1620の一部とを覆うために、このハウジングの円筒形部分1610の外側には、ドアカバー要素1612が確保されている。カバー要素1612は、アクセス開口部1613(これは、このインキュベータハウジングのアクセス開口部1614と整列している)を含み、さらに、受容器ブリッジ1615(これは、アクセス開口部1613の底端から側方に延びている)を含む。受容器ブリッジ1615は、このインキュベータへの受容器(例えば、MTU160)の挿入およびそこからの受容器の引き出しを容易にする。
【0199】
MTU160および試験標本は、標的捕捉およびアニーリングインキュベータ600にある間、好ましくは、捕捉プローブと標的核酸との間でのハイブリダイゼーションを可能にするのに充分な時間にわたって、約60℃±0.5℃の温度で保たれる。これらの条件下では、この捕捉プローブは、好ましくは、その磁気粒子に直接固定化されたポリヌクレオチドとハイブリダイズしない。
【0200】
標的捕捉およびアニーリングインキュベータ600での標的捕捉インキュベーションに続いて、MTU160は、このインキュベータカルーセルにより、入口ドア622(これはまた、右側分配器ドアまたは第一分配器ドアとしても知られている)まで回転される。MTU160は、インキュベータ600内にて、そのMTUステーション676から回収され、次いで、右側運搬機構500により、標本リング250の下の温度ランプダウンステーション(図示せず)へと運搬される。このランプダウンステーションでは、このMTUの温度は、次のインキュベータのレベルへと低下される。このランプダウンステーションは、活性温度および先行読み取りクールダウン(active temperature and pre-read cool-down)インキュベータ602に先行しており、技術的には、冷却機ではなく、ヒーターである。何故なら、このMTUが下降した温度(約40℃)は、依然として、周囲の分析器の温度(約30℃)よりも高いからである。従って、このランプダウンステーションは、好ましくは、熱電モジュールではなく、抵抗性加熱要素を使用する。
【0201】
このランプダウンステーションから、MTU160は、右側運搬機構500により、活性温度および先行読み取りクールダウンインキュベータ602へと運搬される。活性温度および先行読み取りクールダウンインキュベータ602の設計および操作は、活性温度および先行読み取りクールダウンインキュベータ602が40±1.0℃でインキュベートすること以外は、上記のような標的捕捉およびアニーリングインキュベータ600の設計および操作と類似している。
【0202】
ATインキュベータ602では、そのハイブリダイゼーション条件は、固定化したポリヌクレオチドのポリチミジン尾部がその捕捉プローブのポリアミン尾部へとハイブリダイズできるようなものである。標的核酸が、アニーリングインキュベータ600にて、この捕捉プローブとハイブリダイズされるという条件で、ハイブリダイゼーション複合体は、ATインキュベータ602にて、この固定化ポリヌクレオチド、捕捉プローブおよび標的核酸の間で形成され得、それにより、この標的核酸を固定化する。
【0203】
活性温度結合インキュベーションの間、活性温度および先行読み取りクールダウンインキュベータ602のカルーセルアセンブリ1656(または671)は、このMTUを出口ドア624(これはまた、第二分配器ドアまたは左側分配器ドアとしても、知られている)へと回転し、そこから、MTU160は、左側運搬機構502により、取り除くことができる。左側運搬機構502は、活性温度および先行読み取りクールダウンインキュベータ602からMTU160を取り除き、それを、利用可能な磁気分離洗浄ステーション800へと配置する。
【0204】
温度ランピングステーション700は、多数のMTUを化学デッキ200によって処理する際の隘路であり得る。温度感受性がそれ程重要ではない1個またはそれ以上のインキュベータにおいて、充分に利用されていないMTUステーション676を使用することは、可能であり得る。例えば、活性温度および先行読み取りクールダウンインキュベータ602内で約60℃で起こる活性温度結合工程は、他のインキュベータ程には温度感受性ではなく、このインキュベータの30個のMTUステーション676のうちの15個までは、任意の一定時点にて、未使用であり得る。現在考慮されているように、この化学デッキは、約8個のランプアップステーション(すなわち、ヒーター)だけを有する。従って、それよりも相当に多いMTUは、ランプアップステーション700内よりもむしろ、活性温度および先行読み取りクールダウンインキュベータ602の未使用のスロット内にて、予備加熱できる。さらに、ヒーターの代わりに未使用のインキュベータスロットを使用すると、これらのヒーターの全部または一部を省くことができ、それにより、この化学デッキにて空間を解放する。
【0205】
(磁気分離洗浄ステーション)
図24?25に目を向けると、各磁気分離洗浄ステーション800は、上部801および下部803を有するモジュールハウジング802を含む。適当な機械的ファスナーによって磁気分離洗浄ステーション800をデータプレート82に取り付けるために、下部803から、取付フランジ805、806が延びている。ロケータピン807および811は、ハウジング802の下部803の底部から延びている。ハウジング802をファスナーで確保する前に、磁気分離洗浄ステーション800をデータプレート82に位置づけるのを助けるために、データプレート82に形成された開口部(図示せず)と、ピン807および811とが正しく合わせられている。
【0206】
装填スロット804は、下部803の前壁を通って延びて、運搬機構(例えば、502)は、MTU160を磁気分離洗浄ステーション800へと配置し、そしてMTU160をそこから取り除くことができるようになる。装填スロット804を通るMTUの挿入を容易にするために、充填スロット804の一部を、テーパ付きスロット拡張部821が取り囲んでいる。仕切板808は、下部803から上部801を分離する。
【0207】
下部803の内側には、旋回軸812にて、点812の周りで旋回可能になるように、旋回磁石移動構造体810が装着されている。磁石移動構造体810は、永久磁石814を備え、これは、磁石移動構造体810で形成されたMTUスロット815のいずれかの側面に位置づけられている。好ましくは、磁石移動構造体810の各側面には、整列した配置で、5個の磁石(MTU160の各個々の容器162に対応して、1個ずつ)が保持されている。これらの磁石は、好ましくは、ネオジム-鉄-ホウ素(NdFeB)から製造されており、最小等級(minimum grade)n-35であり、0.5インチ幅、0.3インチ高さおよび0.3インチ深さの好ましい寸法を有する。電気アクチュエータ(一般に、816で表わされる)は、磁石移動構造体810を上下に旋回して、それにより、磁石814を移動する。図25で示すように、アクチュエータ816は、好ましくは、回転ステッパーモーター819を含み、これは、磁石移動構造体810に連結された駆動ネジ機構を回転して、磁石移動構造体810を選択的に上げ下げする。モーター819は、好ましくは、HSI線形ステッパーアクチュエータ(モデル番号26841-05)であり、これは、Waterbury,ConnecticutのHaydon Switch and Instrument,Inc.から入手できる。
【0208】
磁石移動構造体810の下降位置、すなわち、「ホーム」位置を表示するために、ハウジングの下部803の内側には、センサ818(好ましくは、スロット付き光学センサ)が配置される。センサ818は、好ましくは、Optek Technology,Inc.のモデル番号OPB980T11であり、これは、Carrollton,TexasのOptek Technology,Inc.から入手できる。他のセンサ(図示せず)(これもまた、好ましくは、Optek Technology,Inc.のモデル番号OPB980T11スロット付き光学センサ)は、好ましくは、磁石移動構造体810の上昇位置、すなわち、噛み合い位置を表示するために、設けられる。
【0209】
磁気分離洗浄ステーション800内で配置されたMTU160を操作可能に支持するために、装填スロット804に隣接して、仕切板808の下には、MTUキャリアユニット820が配置される。図26に目を向けると、MTUキャリアユニット820は、MTU160の上端を受容するためのスロット822を有する。キャリアユニット820の底部には、下部フォークプレート824が付着しており、MTU160の接続リブ構造体164の裏面がキャリアユニット820へと滑るとき、それを支持する(図28および29を参照)。キャリアユニット820には、バネクリップ826が装着されており、その対向プロング831、833は、スロット822へと伸長していて、このMTUをキャリアユニット820内で解除可能に保持する。
【0210】
MTUキャリアユニット820により保持されたMTUの内容物を軌道に沿って混合するために、キャリアユニット820には、軌道ミキサアセンブリ828が連結されている。軌道ミキサアセンブリ828は、ステッパーモーター830(これは、モーター取付プレート832に取り付けられている)、駆動プーリ834(これは、偏心ピン836を有する)、遊びプーリ838(これは、偏心ピン840を有する)、およびベルト835(これは、駆動プーリ834を遊びプーリ838に接続している)を含む。ステッパーモーター830は、好ましくは、VEXTA、モデル番号PK245-02A(これは、Tokyo,JapanのOriental Motors Ltd.から入手できる)であり、また、ベルト835は、タイミングベルト、モデル番号A 6G16-170012(これは、New Hyde Park,New YorkのSDP/SIから入手できる)である。図25および26で示すように、偏心ピン836は、MTUキャリアユニット820で縦方向に形成されたスロット842内に嵌る。偏心ピン840は、MTUキャリアユニット820の反対末端で形成された円形開口部844内に嵌る。モーター830が駆動プーリ834を回転するにつれて、遊びプーリ838もまた、ベルト835を経由して回転し、MTUキャリアユニット820は、開口部842、844(これらは、キャリアユニット820に形成されている)にそれぞれ噛み合わされた偏心ピン836、840により、水平軌道経路で移動される。遊びプーリ838の回転シャフト839は、好ましくは、上方へ延び、その間に形成された横スロット841を有する。スロット841と同じレベルで、スロット付き光学センサ843が配置されており、これは、シャフト839が回転するにつれてスロット841を通って断続的に向けられるセンサビームによって、遊びプーリ838の振動数を測定する。センサ839は、好ましくは、Optek Technology,Inc.のモデル番号OPB980T11センサであり、これは、Carrollton,TexasのOptek Technology,Inc.から入手できる。
【0211】
駆動プーリ834はまた、ロケータプレート846も含む。ロケータプレート846は、モーター取付プレート832から延びているセンサ取付ブラケット845に取り付けられたスロット付き光学センサ847、848を通る。センサ847、848は、好ましくは、Optek Technology,Inc.のモデル番号OPB980T11センサであり、これは、Carrollton,TexasのOptek Technology,Inc.から入手できる。ロケータプレート846は、その中に、複数の円周方向に間隔を置いて配置された軸開口部が形成されており、これらは、センサ847、848の1つまたは両方と正しく合って、軌道ミキサアセンブリ828の位置を表示し、それにより、MTUキャリアユニット820の位置を表示する。
【0212】
図24および25を参照すると、洗浄バッファ分配チューブ854は、取付具856に接続し、そしてモジュールハウジング802の上面を通って延びている。洗浄バッファ分配チューブ854は、取付具856を経由して、仕切板808を通って延びており、洗浄バッファ分配ネットワークを形成する。
【0213】
図28および29で示すように、取付具856から延びている洗浄バッファ調合器ノズル858は、仕切板808内で配置されている。各ノズルは、容器162に対して側方オフセンタ位置で、MTU160の各容器162の上に位置している。各ノズルは、この洗浄バッファをこのオフセンタ位置から各個の容器へと向けるための側方に向いた下部859を含む。側方要素を有する方向で流体を容器162へと分配すると、この流体が各容器162の側面を下に流れるにつれた跳ねかけを制限できる。それに加えて、側方に向いた流体は、各容器162の側面にくっついている物質を洗い流すことができる。
【0214】
図24および25で示すように、吸引器チューブ860は、チューブホルダー862(それに、チューブ860が固定的に確保されている)を通って延びており、そして仕切板808の開口部861を通って延びている。開口部861の下で、仕切板808の側面には、機械的ファスナーにより、チューブガイドヨーク809(図26を参照)が装着されている。吸引器チューブ860に接続された吸引器ホース864は、分析器50内の真空ポンプ1162(図52を参照)まで延びており、吸引された流体は、低部シャーシ1100に備えられた流体廃棄物コンテナへと引き出される。吸引チューブ860の各々は、0.041インチの内径で、12インチの好ましい長さを有する。
【0215】
チューブホルダー862は、リフトモーター868により作動される駆動ネジ866に装着される。リフトモーター868は、好ましくは、VEXTAのモデル番号PK245-02A(これは、Tokyo,JapanのOriental Motors Ltd.から入手できる)であり、そして駆動ネジ866は、好ましくは、ZBXシリーズのネジ付き抗跳ね返り親ネジ(これは、Hollis,New HampshireのKerk Motion Products,Inc.から入手できる)である。チューブホルダー862は、駆動ネジ866のネジ付きスリーブ863に装着されている。ロッド865およびスライドレール867は、チューブホルダー862用のガイドとして、機能する。Z軸センサ829、827(スロット付き光学センサ)は、ネジ付きスリーブ863から延びているタブと協同して、吸引器チューブ860のストローク位置の上部および下部を表示する。このZ軸センサは、好ましくは、Optek Technology,Inc.のモデル番号OPB980T11センサであり、これは、Carrollton,TexasのOptek Technology,Inc.から入手できる。
【0216】
ケーブルは、コネクタ870を経由して、出力信号および制御信号を磁気分離洗浄ステーション800へと運ぶ。
【0217】
磁石移動構造体810は、最初は、センサ818で検証されるように、下降位置(図25で幻影線で示されている)にあり、このとき、MTU160は、挿入開口部804を通って、磁気分離洗浄ステーション800へと挿入され、そしてMTUキャリアユニット820へと挿入される。磁石移動構造体810が下降位置にあるとき、磁石814の磁場は、MTU160に含有された磁気的に応答性の粒子に対して、実質的に効果を有しない。本文脈において、「実質的に効果を有しない」とは、これらの磁気的に応答性の粒子が、磁石814の磁場の引力によって懸濁液から引き出されないことを意味する。軌道ミキサアセンブリ828は、MTUキャリアユニット820およびMTU160を側方に移動するために、キャリアユニット820を完全軌道の一部へと移動して、その結果、MTU160のチップレット保持構造体176により運ばれるチップレット170の各々は、図28で示すように、吸引器チューブ860の各々と整列される。MTUキャリアユニット820の位置は、ロケータプレート846およびセンサ847、848のうちの1個で検証できる。あるいは、ステッパーモーター830は、既知の多数のステップを移動でき、MTUキャリアユニット820を所望位置に置き、センサ847、848のうちの1個は、省略できる。
【0218】
チューブホルダー862および吸引器チューブ860は、各々の吸引器チューブ860がMTU160の付随した運搬構造体176で保持されたチップレット170と摩擦で噛み合うまで、リフトモーター868および駆動ネジ866により、下降される。
【0219】
図25Aで示すように、各吸引器チューブ860の下端は、テーパーを付けた段差構成に特徴があり、それにより、チューブ860は、このチューブの範囲の殆どに沿った第一部分851、第一部分851の直径よりも小さい直径を有する第二部分853、および第二部分853の直径よりも小さい直径を有する第三部分855を有する。第三部分855の直径は、チューブ860の末端がチップレット170の貫通穴180の張り出し部分181へと挿入できかつ第三部分855の外面と2個の環状リッジ183(図46を参照)(これは、チップレット170の穴180の内壁を裏打ちする)との間で締まり摩擦ばめ(interference friction fit)を作ることができるような値である。第二部分853と第三部分855との間の移行部分では、環状肩部857が規定される。肩部857は、チューブ860がチップレット170に挿入できる範囲を限定し、その結果、このチップレットは、下記のように、使用後に剥ぎ取ることができる。
【0220】
チップレット170は、少なくとも部分的に導電性であり、その結果、吸引器チューブ860にチップレット170が存在していることは、コンデンサ(これは、このコンデンサの半分として、吸引器チューブ860を含み、また、このコンデンサの他の半分として、磁気分離洗浄ステーション800の周囲機械設備を含む)の静電容量により、検証できる。この静電容量は、チップレット170が吸引器チューブ860の末端と噛み合うとき、変化する。
【0221】
それに加えて、各吸引器チューブ860の末端にあるチップレット170の存在を検証するために、仕切板808の上には、5個のスロット付き光学センサ(図示せず)を戦略的に位置できる。好ましい「チップレット存在」センサは、Optek Technology,Inc.のモデル番号OPB930W51センサであり、これは、Carrollton,TexasのOptek Technology,Inc.から入手できる。吸引器チューブ860の末端にあるチップレット170は、付随したセンサのビームを断絶して、チップレット170の存在を検証する。もし、チップレット取り出し運動に続いて、チップレットの噛み合いが、全5個の吸引器チューブ860用のチップレット存在センサで検証されないなら、MTU160は、中断しなければならない。中断したMTUは、磁気分離洗浄ステーション800から回収され、そして不活化列750へと送られ、最終的に、捨てられる。
【0222】
チップレットがうまく噛み合った後、軌道ミキサアセンブリ828は、ロケータプレート846およびセンサ847、848の両方または一方で検証されるにつれて、MTUキャリアユニット820を、図27で示した流体運搬位置へと戻す。
【0223】
磁石移動構造体810は、次いで、磁石814がMTU160の対向側面に隣接して配置されるように、図24で示した上昇位置まで上げられる。このMTUの内容物が磁石814の磁場を受けつつ、標的核酸に間接結合した磁気応答性粒子は、磁石814に隣接した個々の容器162の側面へと引き出される。容器162内の残りの物質は、実質的に影響を受けないはずであり、それにより、標的核酸を単離する。磁石移動構造体810は、そのアッセイプロトコルにより規定されアッセイマネージャプログラムにより制御されるように、適当な滞留時間にわたって、上昇位置でとどまり、これらの磁気粒子は、各容器162の側面に付着する。
【0224】
次いで、これらの吸引器チューブは、MTU160の容器162へと下降されて、個々の容器162の流体内容物を吸引し、この間、これらの磁気粒子は、容器162にとどまり、磁石814に隣接して、その側面に付着する。吸引器チューブ860の末端にあるチップレット170は、各容器162の内容物が、この吸引操作中にて、吸引器チューブ860の側面と接触しないことを保証する。チップレット170は、次のMTUが磁気分離洗浄ステーション800で処理される前に捨てられるので、吸引器チューブ860による相互汚染の機会は、最低限にとどまる。
【0225】
導電性チップレット170は、MTUの容器162内で容量性流体レベルを感知するための公知様式で、使用できる。吸引器チューブ860および導電性チップレット170は、コンデンサの半分を占め、この磁気分離洗浄ステーション内の周囲の導電性構造体は、このコンデンサの第二の半分を占め、このコンデンサの二等分間の流体媒体は、誘電体を構成する。この誘電性の性質の変化による静電容量の変化は、検出できる。
【0226】
吸引器チューブ860の容量性回路は、5個の全ての吸引器チューブ860が単一の連動(gang)レベル感知機構として作動するように、配置できる。連動レベル感知機構として、この回路は、容器162のいずれかで流体レベルが高いかどうかを決定するにすぎず、これらの容器の1個での流体レベルが低いかどうかを決定できない。言い換えれば、吸引器チューブ860およびそれに付随したチップレット170のいずれかが容器内の流体物質と接触するとき、このシステムの静電容量は、その誘電性に変化があるために、変化する。もし、吸引器チューブ860のZ位置(この位置で、この静電容量の変化が起こる)が高すぎるなら、少なくとも1個の容器での高い流体レベルが表示され、それにより、吸引器の故障を暗示する。他方、これらの吸引器チューブのZ位置(この位置で、この静電容量の変化が起こる)が正しいなら、この回路は、吸引器チューブ間で区別できず、従って、もし、他のチューブの1個またはそれ以上が、低い流体レベルのために、この流体の頂部と未だに接触していないなら、この低い流体レベルは、未検出となる。
【0227】
あるいは、この吸引器チューブの容量性回路は、5個の吸引器チューブ860の各々が個々のレベル感知機構として作動するように、配置できる。
【0228】
5個の個々のレベル感知機構と共に、この容量性レベル感知回路は、もし、これらの容器の1個またはそれ以上での流体レベルが高いなら、容器162の1個またはそれ以上での流体吸引が失敗したことを検出できる。個々の容量性レベル感知回路は、もし、これらの容器162の1個またはそれ以上での流体レベルが低いなら、これらの容器162の1個またはそれ以上への流体の分配が失敗したことを検出できる。さらに、この容量性レベル感知回路は、各容器162での容量が所定範囲内にあるかどうかを決定するための容量検証に使用できる。容量検証は、予想流体レベルよりも上(例えば、予想流体レベルの110%)の位置での吸引器チューブ860の下降を停止して、これらの容器のいずれもその高さのレベルを有しないことを確認することにより、次いで、予想流体レベルよりも下(例えば、予想流体レベルの90%)の位置での吸引器チューブ860の下降を停止して、これらの容器の各々が少なくともその高さの流体レベルを有することを確認することにより、実行できる。
【0229】
吸引に続いて、吸引器チューブ860が上げられ、磁石移動構造体810が下げられ、所定容量の洗浄バッファが、洗浄バッファ調合器ノズル858を通って、MTU160の各容器162へと分配される。洗浄バッファ調合器ノズル858上で洗浄バッファの水滴が垂れ下がるのを防止するために、短時間の分配後空気吸引が好ましい。
【0230】
軌道ミキサアセンブリ828は、次いで、高振動数で、水平軌道経路にて、MTUキャリア820を移動して、MTU160の内容物を混合する。このMTUの流体内容物の跳ねかけを回避するために、また、エアロゾルの発生を回避するために、このMTUを水平面で移動することにより混合すること(すなわち、攪拌すること)が好ましい。混合に続いて、軌道ミキサアセンブリ828は、その流体運搬位置で、MTUキャリアユニット820を停止する。
【0231】
その標的核酸をさらに精製するために、磁石移動構造体810は、再度、上げられ、所定滞留時間にわたって、その上昇位置で維持される。磁気滞留後、噛み合ったチップレット170を有する吸引器チューブ860は、MTU160の容器162の底部まで低くされて、上記と事実上同じ吸引手順で、その試験標本流体および洗浄バッファを吸引する。
【0232】
このアッセイプロトコルにより規定されるように、1つまたはそれ以上の追加洗浄サイクル(各々は、分配シーケンス、混合シーケンス、磁気滞留シーケンスおよび吸引シーケンスを包含する)が実行され得る。核酸ベースの診断試験の当業者は、所望の標的捕捉手順に対して、適切な磁気滞留時間、洗浄サイクル数、洗浄バッファなどを決定できる。
【0233】
磁気分離洗浄ステーション800の数は、所望の処理能力に依存して、変えることができるものの、分析器50は、好ましくは、5個の磁気分離洗浄ステーション800を含み、その結果、5個の異なるMTUに対して、並行して、磁気分離洗浄手順が実行できる。
【0234】
その最終洗浄段階後、磁石移動構造体810は、その下降位置へと移動され、そしてMTU160は、左側運搬機構502により、磁気分離洗浄ステーション800から取り除かれ、次いで、左軌道ミキサ552へと配置される。
【0235】
MTU160をこの洗浄ステーションから取り除いた後、チップレット170は、ハウジング802の下部803の底部に位置しているストリッパープレート872により、吸引器チューブ860から剥ぎ取られる。
【0236】
ストリッパープレート872は、吸引器チューブ860の数(好ましい実施形態では、5個である)に対応する数の整列ストリッピング穴871を有する。図29A?29Dで示すように、各ストリッピング穴871は、第一位置873、第一位置873よりも小さい第二位置875、および位置873および875を取り囲む斜角877を含む。各ストリッピング穴871の小部分875が、図29Aで示すように、一般に、各付随した吸引器チューブ860と整列するように、ストリッパープレート872は、ハウジング802の底部で配向されている。吸引器チューブ860は、各吸引器チューブ860の末端にあるチップレット170がストリッピング穴871と噛み合うように、下げられる。小部分875は、チップレット170の直径を収容するには小さすぎるので、斜角877は、図29Bで示すように、チップレット170および吸引器チューブ860を大部分873の方へと向ける。吸引器チューブ860は、弾性的で可撓性の材料(好ましくは、ステンレス鋼)から製造されており、その結果、吸引器チューブ860が下降し続けるにつれて、斜角部分877は、吸引器チューブ860の各々を側方に反らせる。ストリッピング穴871の小部分875は、吸引器チューブ860の直径を収容でき、その結果、チップレット170のリム177がストリッピング穴871を通り抜けた後、吸引器チューブ860の各々は、その自体の弾力性のために、図29Cで示すように、ストリッピング穴871の小部分875を閉める。吸引器チューブ860は、次いで、上げられ、各チップレット170のリム177は、ストリッピング穴871の小部分875の底部周縁と噛み合う。吸引器チューブ860がさらに上昇するにつれて、チップレット170は、ストリッピング穴871により、吸引器チューブ860から引き離される(図29Dを参照)。ストリッピングチップレット170は、シュートにより、固体廃棄物コンテナ(例えば、チップレット廃棄物ビン1134)へと向けられる。
【0237】
吸引器チューブ860のキャパシタンスは、全てのチップレット170がストリップされ捨てられたことを検証するために、サンプリングされる。このストリッピング工程は、もし、必要なら、繰り返すことができる。
【0238】
代替のストリッパープレート882は、図31A?31Cで示されている。ストリッパープレート882は、吸引器チューブ860の数(好ましい実施形態では、5個である)に対応する数の整列ストリッピング穴881を備える。各ストリッピング穴881は、斜角皿穴887により取り囲まれた貫通穴883を含む。貫通穴883の下の直径方向に対向した位置から、一対のタング885が側方に延びている。タング885は、好ましくは、バネ鋼から製造されており、それらの末端にて、V形ノッチ886を含む。
【0239】
チップレット170をその末端に配置した吸引器チューブ860がストリッピング穴881の方へと下がるにつれて、斜角部分887は、任意の誤整列チューブが貫通穴883へと向けられることを保証する。対向タング885の末端間の間隔は、チップレット170の直径よりも小さいので、吸引器チューブ860およびチップレット170が下がるにつれて、このチップレットはタング885と噛み合い、チップレット170がタング885間に押し入るにつれて、それらを下方へ反らす。吸引器チューブ860が上がるにつれて、タング885のノッチ886は、チップレット170の比較的に柔軟な材料を握り、それにより、タング885に対するチップレット170の上方相対運動を防止する。これらのチューブが下降し続けるにつれて、タング885は、チップレット170をチューブ860から引き離す。吸引器チューブ860が、引き続いて下がって、チップレットの次のセットをストリップするとき、先のストリッピングに由来のこれらのタング間で保持されたチップレットは、次のチップレットにより、これらのタングに押し通され、そして廃棄物ビン1134(図52を参照)(これは、5個の磁気分離洗浄ステーション800のほぼ下の低部シャーシ1100に位置している)の方へと向けられる。
【0240】
さらに他の代替の現在好ましいストリッパープレート1400は、図30A?30Dで示されている。ストリッパープレート1400は、5個のストリッパー空洞1402を含み、各々は、初期円錐台(frusto-conical)部分1404を含む。円錐台部分1404は、拡大直線状部分1408に連絡するネック部分1406へと下にテーパを付けられている。直線状部分1408は、ネック部分1406の中心に関して片寄っており、その結果、直線状部分1408の一側面は、ネック部分1406の一側面と同一平面上にあり、そして直線状部分1408の反対側面は、ネック部分1406の側面から段を付けられ、切り取られて、それにより、棚1414を形成する。直線状部分1408に続いて、棚1414と反対側のストリッパー空洞1402の側面には、傾斜部1410が設けられている。傾斜部1410は、底部開口部1412の方へと内向きにテーパを付けられている。
【0241】
その末端にチップレット170を付けた吸引器チューブ860がストリッパー空洞1402の方へと移動するにつれて、円錐台部分1404は、チップレット170およびチューブ860をネック部分1406の方へと向ける。吸引器チューブ860は、下降し続け、チップレット170は、チップレット170のリム177が円錐台部分1404の底部を通り抜けてネック部分1406を通過するにつれて、直線状部分1408に入る。
【0242】
もし、吸引器チューブ860およびステッパー空洞1402が正しく好ましい配置にあるなら、チップレット170のリム177の一部は、チップレット170がネック部分1406を通って直線状部分1408へと移動する場合、ステッパー空洞1402の棚1414の下に配置される。リム177の一部が棚1414の下に配置されるのを保証するために、チップレット170は、吸引器チューブ860がさらに下降して吸引器チューブを側方に押し付けてチップレット170を棚1414の下に向けるにつれて、下部傾斜部1410と噛み合う。
【0243】
吸引器チューブ860の下部で形成された環状肩部857(図25Aを参照)は、チューブ860がストリッパー空洞1402へと下がるにつれて、チューブ860がチップレット170の貫通穴180へとそれ以上押し入らないことを保証する。吸引器チューブ860は、次いで、下降し、棚1414は、リム177を捕獲して、チップレット170をチューブ860からストリップする。ストリップされたチップレット170は、底部開口部1412を通って、低部シャーシ1100(図52を参照)にある廃棄物ビン1134へと落ちる。
【0244】
上記ストリッパープレートの各々と共に、これらのチップレット-ストリッピング要素の位置は、全て同じとは限らない。例えば、ストリッパープレート1400のストリッパー空洞1402の棚1414は、全ての空洞を通じて、同じ高さではない。好ましくは、3個のチップレット-ストリッピング要素は、1つの高さであり、2個のチップレット-ストリッピング要素は、他の3個の要素の上また下で僅かに異なる高さである。これらのオフセットチップレット-ストリッピング要素の結果、吸引器チューブ860の末端上のチップレット170の静止摩擦は、全ての5個のチューブ860について、一度に克服または崩壊する必要はない。吸引器チューブ860が下降し始めるにつれて、チップレット170の静止摩擦は、まず、吸引器チューブ860の1セット(2個または3個)に対して崩壊し、チューブ860が下降し続けるにつれて、チップレット170の静止摩擦は、残りのチューブ860に対して崩壊する。全ての5個の吸引器チューブ860のチップレット170の静止摩擦を一度に崩壊しないことにより、チューブホルダー862、駆動ネジ866、ネジ付きスリーブ863およびリフトモーター868が受ける負荷は、低いレベルに保たれる。
【0245】
(軌道ミキサ)
図32?34で示すような左軌道ミキサ552(および右軌道ミキサ550)は、上記磁気分離洗浄ステーション800の下部ハウジング部分803および軌道ミキサアセンブリ828と同じ様式で、構成され操作される。具体的には、軌道ミキサ550(552)は、ハウジング554を含み、これは、前部プレート551、後部プレート、および軌道ミキサ550(552)をデータプレート82に取り付けるための取付フランジ555、556を含む。ハウジング554の前端では、挿入開口部557が形成されている。MTUキャリア558は、フォークプレート560(これは、その下部に装着されている)およびMTU保持クリップ562(これは、このMTUを収容するキャリア558の内部空洞へと延びているクリップ562の対向プロングを備えたキャリア558の後部に装着されている)を有する。軌道ミキサアセンブリ564は、駆動モーター566(これは、モーター取付板567に取り付けられている)、駆動ホイール568(これは、偏心ピン570を有する)、遊びホイール572(これは、偏心ピン573を有する)、およびベルト574を含む。駆動モーター566は、好ましくは、ステッパーモーターであり、最も好ましくは、VEXTAのモデル番号PK245-02A(これは、Tokyo,JapanのOriental Motors Ltd.から入手できる)である。ベルト574は、好ましくは、タイミングベルト、モデル番号A 6G16-170012(これは、New Hyde Park,New YorkのSDP/SIから入手できる)である。軌道ミキサアセンブリ564は、偏心ピン570、573を通って、MTUキャリア558に連結されて、MTUキャリア558をその軌道経路で移動し、このMTUの内容物をかき混ぜる。駆動ホイール568は、ロケータプレート576を含み、これは、センサ取付ブラケット579に取り付けられたセンサ578と共に、MTU160を軌道ミキサ552(550)に挿入してMTU160をこの軌道ミキサから回収するためのMTUキャリア558の正しい位置決めを検証する。センサ578は、好ましくは、Optek Technology,Inc.のモデル番号OPB980T11センサであり、これは、Carrollton,TexasのOptek Technology,Inc.から入手できる。
【0246】
上部プレート580は、ハウジング554の頂上に装着されている。左軌道ミキサ552の上部プレート580は、多数(好ましくは、5個)のチューブ取付具582を含み、これらには、バルク流体容器から調合器ノズル583を経由してMTU160(これは、このミキサ内に配置されている)へと流体を送達するための同程度数の可撓性送達チューブ(図示せず)に連結されている。上部プレート580もまた、複数のピペット開口部581を含み、これらは、単一のMTU160を含む個々の容器162の数(好ましくは、5個)に対応している。
【0247】
MTU160が左軌道ミキサ552で静止状態で保持されて、左ピペットアセンブリ470のピペットユニット480は、試薬冷却ベイ900内のコンテナから、ピペット開口部581を通って、MTU160の各容器162へと、所定容量の増幅試薬を運搬する。使用される増幅試薬は、それに続く増幅手順に依存している。種々の増幅手順は、核酸ベース診断試験の当業者に周知であり、その多数は、上記の背景部分で述べている。
【0248】
次に、このMTUの内容物は、軌道ミキサ552の軌道ミキサアセンブリ564により混合されて、この標的核酸の増幅試薬への曝露を保証する。望ましい増幅手順のためには、核酸ベース診断試験の当業者は、増幅試薬の適切な成分および量、ならびに混合振動数および持続時間を決定できる。
【0249】
増幅試薬をMTU160にピペットで入れた後、ピペットユニット480は、処理デッキ200上のリンス台(下記)に移動され、そしてピペットユニット480は、プローブ481を通って蒸留水を流すことにより、洗浄される。この蒸留水は、低部シャーシ1100のボトル1140からポンプ上げされ、そのパージ水は、低部シャーシ1100にある液体廃棄物コンテナ1128で集められる。
【0250】
MTU160の内容物を混合した後、調合器ノズル583を通って、各容器には、シリコンオイル層が分配される。このオイル層は、低部シャーシ1100にあるボトル1148からポンプ上げされ、MTU160およびその内容物の引き続く操作およびインキュベーション中にて、MTU160の流体内容物のエバポレーションおよび跳ねかけを防止するのを助ける。
【0251】
(試薬冷却ベイ)
今ここで、試薬冷却ベイ900を記述する。
【0252】
図35?39を参照すると、試薬冷却ベイ900は、円筒形ハウジング904の回りに取り付けられた断熱ジャケット902(これは、好ましくは、アルミニウムから製造されている)を含む。カバー906(これは、好ましくは、デルリンから製造されている)は、カバー906の正しい配向を保証するためにハウジング904のスロット907内に適合するカバー906の位置合わせタブ905と共に、ハウジング904の頂上に位置している。タブ905がスロット907内に据え付けられていることを確認するために、スロット907内またはそれに近接して、光学センサが設けられ得る。あるいは、カバー配置を検証するために、ハウジング904の上部リムの縁部には、光学センサアセンブリ909が確保できる。光学センサアセンブリ909は、カバー906上でセンサトリッピング(sensor-tripping)構造体(図示せず)と協同し、カバーがプレートにあることを検証する。光学センサアセンブリ909は、好ましくは、Optek Technology,Inc.のスロット付き光学センサ(モデル番号OPB980T11)を備え、これは、Carrollton,TexasのOptek Technology,Inc.から入手できる。カバー906はまた、ピペット開口部908を含み、そこを通って、ピペットユニット480、482は、冷却ベイ900内の試薬コンテナにアクセスできる。
【0253】
ハウジング904は、床プレート910に装着されており、床プレート910は、取付フランジ911(これは、床プレート910の周囲で、間隔を置いて配置されている)で形成された開口部を通って延びている適切な機械的ファスナーによって、データプレート82に装着されている。床プレート910には、冷却ユニット912(好ましくは、2個)が装着されている。各冷却ユニット912は、熱電モジュール914を含み、これは、床プレート910の下面に、冷却側を上にして、装着されている。Trenton,New JerseyのMelcor,Inc.から入手できる熱電モジュール(モデル番号、CP1.4-127-06L)は、所望の冷却能力を与える。熱電モジュール914の直下にて、床プレート910の下面には、吸熱器916(これは、複数の熱消散フィン915を含む)が装着されるか、またはそれと一体化され得る。熱シンク916から熱を排出する位置では、ファンユニット918が装着されている。ファンユニット918は、好ましくは、Orixファン(モデル番号MD825B-24、これは、Tokyo,JapanのOriental Motors Ltd.から入手できる)である。それと共に、冷却ユニット912は、ハウジング904の内部を、ベイ900内に保存された温度感受性試薬(例えば、酵素)のために、所定温度まで冷却する。
【0254】
冷却ベイ900のハウジング904内では、その内部温度をモニターし制御するために、2個の温度センサ(図示せず)が配置されている。これらの温度センサは、好ましくは、サーミスタ(25℃で10KOhm)であり、そしてYellow Springs,OhioのYSI,Inc.から入手できるYSI 44036シリーズサーミスタが最も好ましい。YSIサーミスタは、その高精度、および一方のサーミスタから他方のサーミスタへとYSIサーミスタにより提供される±0.1℃相互転換可能性のために、好ましい。これらのセンサの一方は、主要温度制御センサであり、また、他方は、温度モニターセンサである。この主要制御センサからの温度表示に基づいて、包埋された制御装置は、熱電モジュール914への出力および/またはファンユニット918への出力を調整して、冷却ベイ温度を制御する。この温度モニタリングセンサは、この主要温度制御センサの確認検査を行う。
【0255】
図37で示すように、コンテナトレイ922は、ボトル保持空洞924付きの一体型ターンテーブル構造体であり、これは、特定の試薬ボトル925を受容し保持するサイズおよび形状にされる。コンテナトレイ922用の駆動システムは、モーター926、モーター926のシャフト上の小プーリ931、ベルト928、プーリ930、およびシャフト932を含む。(VEXTAステッパーモーター、モデル番号PK265-02A(これは、Tokyo,JapanのOriental Motor Co.Ltd.から入手できる)およびSDPタイミングベルト、GT(登録商標)シリーズ(これは、New Hyde Park,New YorkのSDP/SIから入手でき、好ましい))。モーター926および冷却ユニット912は、データプレート82で形成された開口部(図示せず)を通って延び、そして床プレート910の下に延びている。
【0256】
コンテナトレイ922は、中心直立ハンドル923を含有し得、ハウジング904へのトレイ922の設置およびそこからのトレイ922の取り外しを容易にする。シャフト932の上部933は、床プレート910を通って延び、そしてトレイ922の底部で形成された接合開口部(図示せず)により、受容されている。床プレート910を通ってハウジング904へと上方へ延びているセンサ940は、トレイ922がハウジング904内で適切な位置にあることを検証する。センサ904は、好ましくは、Bradenton,FloridaのAdvanced Controls,Inc.から入手できる容量近接センサ(capacitive proximity sensor)(モデル番号FCP2)である。
【0257】
位置エンコーダ934(好ましくは、スロット付きディスク)は、光学センサ935と共に、コンテナトレイ922の位置を検出するのに使用され得、その結果、特定の試薬ボトル925は、カバー906にあるピペット開口部908の下に整列され得る。
【0258】
図36で示すように、位置エンコーダ934および光学センサ935に対する好ましい代替物は、4個のスロット付き光学センサ937(2個のセンサだけが、図36で見える)を含み、これらは、コンテナトレイ922の底部から延びているフラッグピン(図示せず)と共に、ハウジング904の内側で設けられている。1個のセンサは、コンテナトレイ922の各四分円に設けられており、このフラッグは、これらの4個のセンサのうちの1個を作動させて、コンテナトレイ922のどの四分円がピペット開口部908と整列しているかを表示する。センサ937は、好ましくは、Optek Technology,Inc.のセンサ(モデル番号OPB980T11)であり、これは、Carrollton,TexasのOptek Technology,Inc.から入手できる。
【0259】
図37で示した一体型トレイ922の好ましい代替物は、図35および39で示したモジュラートレイ1922である。トレイ1922は、円形ベースプレート1926、およびその中心部に装着された直立ハンドルポスト1923を含む。ボトル保持空洞1924を有するモジュラー断片1930は、好ましくは、ピン1928およびネジ(図示せず)により互いにおよびベースプレート1926により接続されて、円形トレイ1922を形成する。モジュラー断片1930を固定する他の手段は、ピン1928およびネジに対する代替物で使用され得る。これらの図で示したモジュラー断片1930は、円の四分円であり、それゆえ、もちろん、トレイ1922を完成するためには、4個のこのような断片1930が必要である。四分円が好ましいものの、これらのモジュラー断片は、しかしながら、種々のサイズの扇形(例えば、円の1/2または円の1/8)であり得る。
【0260】
試薬コンテナ用のトレイ1922内の位置を確認するために、ベースプレート1926上には、英数字のボトル位置ラベル1940が好ましくは設けられる。好ましいラベル図式は、円で囲んだ文字-数字対(最初の文字A、E、PまたはSに続いて、番号1、2、3または4を含む)を含む。文字A、E、PおよびSは、それぞれ、増幅試薬、酵素試薬、プローブ試薬および選択試薬を表わし、これらは、分析器50の好ましい使用モードに対応しており、また、番号1?4は、トレイ1922の四分円を表わしている。各モジュラー断片1930は、各ボトル保持空洞1924の底部にて、円形穴1934を含む。穴1934は、ボトル位置ラベル1940と整列して、その結果、ラベル1940は、モジュラー断片1930がベースプレート1926で適切な位置にあるとき、見られ得る。
【0261】
コンテナトレイ1922のモジュラー断片1930は、250回のアッセイを実行するのに充分な試薬量または500回のアッセイを実行するのに充分な試薬量に対応する異なるサイズの試薬コンテナを収容するように、構成されている。4個の250回アッセイモジュラー四分円により、この試薬冷却ベイは、1000回のアッセイに備えることが可能となり、また、4個の500回アッセイモジュラー四分円により、この試薬冷却ベイは、2000回のアッセイに備えることが可能となる。250回または500回アッセイ試薬キット用のモジュラー四分円は、種々の数の単一アッセイ型または種々の数の複数の異なるアッセイ型に適合するためのコンテナトレイを構成するように、混合され合致され得る。
【0262】
コンテナトレイ922と床プレート910との間には、断熱パッド938が配置される。出力信号、制御信号、温度信号および位置信号は、試薬冷却ベイ900からまたはそこへ、分析器50の包埋制御装置に連結されたコネクタ936およびケーブル(図示せず)により、供給される。
【0263】
冷却ベイ900の側壁で形成された開口部942の前で、床プレート910に装着された直立スキャナー取付プレート939には、バーコードスキャナー941が取り付けられる。バーコードスキャナー941は、コンテナトレイ922に備えられた試薬コンテナの各々からのバーコード情報を走査できる。図39で示すように、ボトル保持空洞1924に沿って、縦スロット1932が形成され、ボトル保持空洞1924中に保持される試薬コンテナの側面に配置されたバーコード情報は、スロット1932と整列でき、バーコードスキャナー941がこのバーコード情報を走査できる。好ましいバーコードスキャナーは、モデル番号FTS-0710-0001で、Newbury Park,CaliforniaのMicroscanから入手できる。
【0264】
ハウジング904の側面には、ピペットリンス台1942、1944が装着される。各リンス台1942、1944は、それぞれ、プローブ受容開口部1941、1945(これらは、その上部パネルにおいて形成されている)、およびそれぞれ、廃棄物排出チューブ1946、1948(これらは、その下部に接続されている)を備えた囲壁構造体を提供する。ピペットユニットのプローブは、プローブ受容開口部1941、1945を通って、リンス台1942、1944へと挿入でき、そして洗浄および/またはリンス流体は、このプローブを通って、このリンス台へと入ることができる。リンス台1942、1944中の流体は、各個の廃棄物排出チューブ1946、1948により、低部シャーシ1100にある適切な廃棄物流体容器に伝導される。分析器50の好ましい配置および操作モードでは、ピペットユニット480のプローブ481は、リンス台1942でリンスされ、そしてピペットユニット482のプローブ483は、リンス台1944でリンスされる。
【0265】
この増幅試薬およびオイルが、左軌道ミキサ552にあるMTU160の容器162に添加された後、左側運搬機構502は、左軌道ミキサ552からMTU160を回収し、そしてMTU160を、利用可能な温度ランプアップステーション700(これは、左側運搬機構502にアクセスできる、すなわち、化学デッキ200の左側にある)へと移動して、MTU160およびその内容物の温度を約60℃まで高める。
【0266】
ランプアップステーション700での充分なランプアップ時間後、左側運搬機構502は、次いで、MTU160を標的捕捉およびアニーリングインキュベータ600に移動する。標的捕捉およびアニーリングインキュベータ600の左側分配器ドアが開いて、インキュベータ600内のMTUカルーセルアセンブリ671は、空のMTUステーション676を提示して、この左側運搬機構が、このMTUをインキュベータ600へと挿入できる。MTU160およびその内容物は、次いで、約60℃で、所定インキュベーション期間にわたって、インキュベートされる。インキュベーション中にて、MTUカルーセルアセンブリ671は、他のMTU600がインキュベータ600から取り除かれおよびそこへ挿入されるにつれて、インキュベータ600内で連続的に回転し得る。
【0267】
アニーリングインキュベータ600での60℃でのインキュベーションにより、そのアッセイ溶液中に存在している固定化ポリヌクレオチドからの捕捉プローブ/標的核酸ハイブリダイゼーション複合体の会合が可能となる。この温度で、試薬冷却ベイ900から導入されたオリゴヌクレオチドプライマーは、この標的核酸にハイブリダイズでき、引き続いて、この標的ヌクレオチド塩基配列の増幅を容易にできる。
【0268】
インキュベーションに続いて、インキュベータ600内のMTUカルーセルアセンブリ671は、MTU160を左側分配器ドア624へと回転し、左側分配器ドア624が開き、左側運搬機構502は、標的捕捉およびアニーリングインキュベータ600のMTUカルーセルアセンブリ671から、MTU160を回収する。左側運搬機構502は、次いで、MTU160を移動して、MTU160を、利用可能な温度ランプダウンステーション700(これは、左側運搬機構502にアクセスできる)へと挿入する。MTU160およびその内容物の温度は、このランプダウンステーションにて、約40℃まで低下する。MTU160は、次いで、左側運搬機構502により、このランプダウンステーションから回収され、そして活性温度および先行読み取りクールダウンインキュベータ602へと移動される。ATインキュベータ602の左側分配器ドアが開き、インキュベータ602内のMTUカルーセルアセンブリ671は、空のMTUステーション676を提示して、その結果、左側運搬機構502は、このMTUをインキュベータ602へと挿入できる。活性温度および先行読み取りクールダウンインキュベータ602内では、このMTUは、MTUの温度を安定化するのに必要な時間にわたって、約41℃で、インキュベートされる。
【0269】
活性温度および先行読み取りクールダウンインキュベータ602から、このMTUは、運搬機構502により、増幅インキュベータ604へと移動され、ここで、このMTUの温度は、約41.5℃で安定化される。増幅インキュベータ604内のMTUカルーセルアセンブリ671は、回転して、このMTUを、カバー611で形成されたピペット開口部662の下のピペット取出ステーションに配置する(例えば、図19を参照)。試薬冷却ベイ900内のコンテナトレイ922は、回転して、この酵素試薬コンテナをピペット開口部908の下に配置し、ピペットアセンブリ470のピペットユニット482は、酵素試薬を、試薬冷却ベイ900から、MTU160の容器162の各々へと運搬する。
【0270】
上で説明したように、ピペットユニット480、482は、容量レベル感知を使用して、容器内の流体レベルを確認し、ピペットユニット480、482のプローブ481、483の末端の小部分だけを浸して、この容器から流体をピペットで取り出す。ピペットユニット480、482は、好ましくは、流体が各プローブ481、483へと引き出されるにつれて、下降して、このプローブの末端を一定深さに浸して保持する。試薬をピペットユニット480または482へとピペットで取り出した後、このピペットユニットは、各プローブ481または483の末端にて、10μlの最小移動空気間隙を作り、液滴がこのプローブの末端から落ちないことを保証する。
【0271】
各容器162に酵素試薬を添加した後、増幅インキュベータ604のMTUカルーセルアセンブリ671は、MTU160を、増幅インキュベータ604内の斜めディスク線形ミキサ634へと回転し、MTU160およびその内容物は、約10Hzで、上記のように混合されて、この標的核酸の添加酵素試薬への曝露を容易にする。ピペットユニット482は、リンス台1942に移動され、プローブ483は、それに蒸留水を通すことにより、リンスされる。
【0272】
MTU160は、次いで、所定インキュベーション期間にわたって、約41.5℃で、増幅インキュベータ604内にて、インキュベートされる。このインキュベーション期間は、1個またはそれ以上の標的核酸(これは、受容器チューブ162で存在し得る)上に含有された少なくとも1個の標的ヌクレオチド塩基配列の適切な増幅を可能にするのに充分に長くすべきである。その好ましい実施形態は、転写媒介増幅(TMA)手順(これは、背景部分(前出)で述べられている)を用いる増幅を容易にするように、設計されているものの、専門家は、分析器50を使用する他の増幅手順を実行するのに必要な改変を容易に理解する。それに加えて、このアッセイの初期にて、これらの増幅条件および試薬が増幅に適切であったかどうかの確認を行うために、好ましくは、内部コントロール配列が添加される。内部コントロールは、当該技術分野で周知であり、本明細書中でさらに述べる必要はない。
【0273】
増幅インキュベーションに続いて、MTU160は、左側運搬機構502により、増幅インキュベータ604から、利用可能なランプアップステーション700(これは、左側運搬機構502にアクセスできる)へと移動されて、MTU160およびその内容物の温度を約60℃にする。MTU160は、次いで、左側運搬機構502により、ハイブリダイゼーションインキュベータ606へと移動される。MTU160は、ハイブリダイゼーションインキュベータ606にあるピペット取出ステーションへと回転されて、試薬冷却ベイ900からのプローブ試薬は、ピペットユニット480により、ハイブリダイゼーションインキュベータ606のカバー611にある開口部662を通って、各容器へとピペットで取り出される。このプローブ試薬は、化学発光検出プローブ(好ましくは、アクリジニウムエステル(AE)標識プローブ(これは、ハイブリダイゼーション保護アッセイ(HPA)を用いて検出できる))を含有する。アクリジニウムエステル標識プローブおよびHPAアッセイは、当該技術分野で周知であり、また、背景部分(前出)でさらに詳細に記述されている。AE標識プローブおよびHPAアッセイが好ましいものの、分析器50は、好都合には、種々の検出方法および付随のプローブ(標識したものおよび未標識のものの両方)に適応するように、適合できる。検出プローブが容器162に添加されたことの確認は、ハイブリダイゼーションインキュベータ606にある容器162に現存しているHPAアッセイ条件下にて、この検出プローブ以外で、このプローブ試薬中のプローブをハイブリダイズできる内部コントロール(またはそのアンプリコン(amplicon))を使用して、達成できる。このプローブの標識は、この検出プローブの標識から区別しなければならない。
【0274】
MTU160の容器162の各々にプローブ試薬を分配した後、ピペットユニット480は、ピペットリンス台1944へと移動し、このピペットユニットのプローブ481は、蒸留水でリンスされる。
【0275】
MTUカルーセルアセンブリ671は、MTU160を斜めディスク線形ミキサ634へと回転して、この場所で、MTU160およびその内容物は、上記のように、約14Hzで回転されて、添加した検出プローブの標的アンプリコンの曝露を容易にする。MTU160は、次いで、この標的アンプリコンへの検出プローブのハイブリダイゼーションを可能にするのに充分な時間にわたって、インキュベートされる。
【0276】
ハイブリダイゼーションインキュベーション後、MTU160は、再度、インキュベータ606内で、MTUカルーセルアセンブリ671により、ピペット開口部662の下のピペット取出位置まで回転される。試薬冷却ベイ900にある容器内に保存された選択試薬は、ピペットユニット480により、各容器162へとピペットで取り出される。このHPAアッセイでは、選択試薬が使用され、これは、アルカリ試薬を含み、これは、未ハイブリダイズプローブに付随したアクリジニウムエステル標識を特異的に加水分解して、化学発光に対するその性能を破壊または阻害し、その間、標的アンプリコン(または内部標準のアンプリコン)へとハイブリダイズされたプローブを付随しているアクリジニウムエステル標識は、加水分解されず、適切な検出条件下にて、掲出可能な様式で、化学発光できる。
【0277】
MTU160の容器162の各々に選択プローブを添加することに続いて、ピペットユニット480のピペットプローブ481は、ピペットリンス台1944にて、蒸留水でリンスされる。MTU160は、インキュベータ606内にて、MTUカルーセルアセンブリ671により、斜めディスク線形ミキサ634へと回転され、そして上記のようにして、約13Hzで混合されて、この標的アンプリコンの添加選択試薬への曝露を容易にする。このMTUは、次いで、インキュベータ606にて、この選択プロセセスを完結するのに充分な時間にわたって、インキュベートされる。
【0278】
選択インキュベーションが完結した後、左側運搬機構502は、MTU160を、利用可能ランプダウンステーション700(これは、左側運搬機構502にアクセスできる)へと運搬して、MTU160を冷却する。MTU160を冷却した後、それは、左側運搬機構502により、このランプダウンステーションから回収され、そして運搬機構502により、活性温度および先行読み取りクールダウンインキュベータ602へと移動されて、MTU160の温度を約40℃で安定化する。
【0279】
MTU160の温度を安定化するのに充分な時間が過ぎると、活性温度および先行読み取りクールダウンインキュベータ602内のMTUカルーセルアセンブリ671は、回転して、インキュベータ602の右側分配器ドアにて、MTU160を提示する。この右側分配器ドアは、開かれて、MTU160は、右側運搬機構500により、活性温度および先行読み取りクールダウンインキュベータ602から取り除かれる。
【0280】
右側運搬機構500は、このMTUをバーコードスキャナー(図示せず)へと移動し、これは、MTU160のラベル受容構造体174のラベル受容面175上で書き込まれたMTUバーコード情報を走査する。このバーコードスキャナーは、好ましくは、照度計950のハウジングの外壁に装着されている。好ましいバーコードスキャナーは、部品番号LHA1127RR1S-032として、Orangeburg,New YorkのOpticon,Inc.から入手できる。このスキャナーは、正しいアッセイ時間での正しいMTUを確認することにより、照度計950に入る前の全アッセイ時間を検証する。このバーコード読み取り装置から、右側運搬機構500は、MTU160を照度計950に移動する。
【0281】
好ましい操作モードでは、右側運搬機構500がMTU160を照度計950に移動する前に、MTU160は、右側運搬機構500により、利用可能なMTUランプダウンステーション(すなわち、冷却機)へと配置されて、MTU160の温度を24±3℃まで低下させる。このMTUの内容物は、この冷却した温度で、さらに一貫した化学発光「ライトオフ(light-off)」を示すことが確定された。
【0282】
(照度計)
図40?42Cを参照すると、照度計950の第一実施形態は、ハウジング954内にて、電子機器ユニット952を含む。電子機器ユニット952に連結された光電子増倍管チューブ(PMT)956は、PMTプレート955を通って、ハウジング954内から延びているが、PMTプレート956の前端は、開口部953と整列している。好ましいPMTは、モデルHC135として、Bridgewater,New JerseyのHamamatsu Corp.から入手できる。好ましいPMTを用いた信号測定は、周知の光子計数システムに基づいている。
【0283】
開口部953は、PMTプレート955の前で、開口部ボックス958の中心に置かれる。開口部953および開口部ボックス958は、ハウジングにより、完全に囲まれ、これは、床プレート964、上部プレート966、PMTプレート955、および後部フレーム965および後部プレート967(これは、迷光が開口部953に入るのを防止し、そしてデータプレート82に装着されている)により、規定される。MTU運搬経路は、開口部953の前で、この開口部の光軸をほぼ横断して、このハウジングを通って延びている。MTU160は、このMTU運搬経路を経由して、照度計950を通る。このMTU運搬経路の対向側面には、後部レール991および前部レール995が配置されており、平行水平フランジを提供し、これは、照度計950内で配置されたMTU160の接続リブ構造体164を支持する。このMTU運搬経路の対向末端で配置された付随ドアハウジング961内での回転に対して、回転ドア960が支持されており、これは、ドアモーター962(これは、ステッパーモーターまたはDCギアモーターを含み得る)により、回転される。
【0284】
ドアハウジング961は、そこを通ってMTU160が照度計950に出入できる開口部を提供する。MTU160は、ドアハウジング961の1個を通ってMTU160を挿入する右側運搬機構500によって、照度計950に入る。MTU160は、MTU運搬アセンブリ(その種々の実施形態は、以下で記述するが、これは、このMTU運搬経路を通り、最終的に、この照度計から、他のドアハウジング961を通って、MTUを移動する)の影響下にて、この照度計を出ていく。
【0285】
回転ドア960は、一般に、円筒形であり、切り欠き部分963を含む。各回転ドア960は、開放位置(この位置では、切り欠き部分963は、付随したドアハウジング961の開口部とほぼ整列しており、その結果、MTU160は、この開口部を通過できる)と閉鎖位置(この位置では、切り欠き部分963とは反対側のこの回転ドアの側は、MTU160および光のいずれもこの開口部を通過できないように、付随したドアハウジング961の開口部を横切って、延びている)との間で、回転できる。MTU160が照度計950に入るかまたはそこから出ていくときを除いて、回転ドア960は、好ましくは、それらの各閉鎖位置にあり、迷光がこの照度計に入るのを防止する。試験結果は、PMT956で検出された光の量により確認されるので、標本抽出された受容器160以外の光源からの迷光は、誤った結果を引き起こし得る。
【0286】
図39?41で示すように、このMTU運搬アセンブリは、MTU前進モーター972を含み得、これは、タイミングベルト(図示せず)または斜角ギア975を通って、親ネジ974を駆動する。親ネジ974と噛み合わされたネジ従動節976は、親ネジ974から離れて延びているMTUブラケットに連結されて、MTU160と噛み合う。MTUブラケット977は、ガイドフランジ978を有し、その中には、僅かにアーチ形の細長いガイド穴979が形成されている。照度計950を通って、親ネジ974に隣接してそれと平行に、ガイドロッド980が延びている。ガイドロッド980は、ガイド穴979を通って、延びている。
【0287】
MTUブラケット977を前進させる(図42Cでは、下から上へ)ためには、親ネジ974は、図42Bで見えるように、反時計方向に回転する。系の摩擦があるために、ネジ従動節976およびMTUブラケット977もまた、ガイドロッド980がガイド穴979の左側面と接触するまで、親ネジ974と共に、反時計方向に回転する。ガイドロッド980がガイド穴979の側面と接触すると、MTUブラケット974およびネジ従動節976は、もはや、親ネジ974と共には回転できず、親ネジ974をそれ以上に回転すると、MTUブラケット974およびネジ従動節976は、親ネジ974に沿って前進するようになる。MTUブラケット977から延びているアーム981もまた、親ネジ974が回転するにつれて、限られた円弧で、反時計方向に回転して、MTU160と噛み合い、照度計950を通って、それを前進させる。
【0288】
MTU160がPMT956を通過した後、そのMTUは、照度計950から排出され、そして次のMTUは、照度計950を通って、引くことができる。MTUブラケット977は、親ネジ974を時計方向に回転することにより、このMTU運搬経路のMTU入口末端の方へと移動する。系の摩擦により、ネジ従動節976およびMTUブラケット977は、ガイドロッド980がガイド開口部979の右側と接触するまで、時計方向に回転されて、その後、親ネジ974を引き続いて回転することにより、ネジ従動節976およびMTUブラケット977は、親ネジ974に沿って、後退される。MTUブラケット977の時計方向運動により、アーム981は、限られた円弧で、時計方向に回転されて、このMTUから外れ、その結果、MTUブラケット977は、このMTUと接触することなく、後退できる。すなわち、アーム981は、MTUブラケット977が後退するにつれて、このMTUの上部を通り過ぎる。
【0289】
図39で示すように、ブラインダ982(これは、ブラインダアクチュエータ993で駆動される)は、開口部953と整列して、垂直に上下に移動する。ブラインダ982は、前部パネル983を含み、これは、開口部ブロック958に対する滑り運動のために取り付けられ、その中に、開口部953と整列できる略長方形開口部(図示せず)が形成されている。前部パネル983の上部は、パネル983で形成された開口部が開口部953と整列しないとき、開口部953を遮断し、それにより、開口部953に対するシャッターとして、作動する。ブラインダ982は、2個の側壁987(これらは、この開口部の対向側面て平行に配置されており、前部パネル983とほぼ垂直である)、および後壁988(これは、側壁987のうち、前壁983とは反対側の後縁部に及び、前壁983とほぼ垂直である)を含む。ブラインダ982が、ブラインダアクチュエータ993により、MTU160の1個の容器162に下に上昇するとき、側壁987および後壁988は、MTU160の1個の容器162に適合するサイズにした部分長方形囲壁を規定している。ブラインダアクチュエータ993は、ステッパーモーター992および親ネジ994を含む線形ステッパーアクチュエータであり得る。Waterbury,ConnecticutのHaydon Switch and Instrument,Inc.から入手できるHSI線形ステッパーアクチュエータが、使用されている。
【0290】
MTU160を右側運搬機構500により照度計950に配置した後、モーター972には、電圧が加えられて、このMTUの第一容器を引き込み、開口部953と整列させる。ブラインダ982は、通常、このMTU運搬経路から詰め込まれるが、ブラインダ982の側壁987および後壁988が容器162を取り囲むまで、ブラインダアクチュエータ993により上昇され、そしてブラインダ982の前部パネル983に形成された開口部は、開口部953と整列される。ブラインダ982は、実質的には、開口部953の前にある容器162以外の光源からの光が開口部953に達するのを防止し、その結果、PMT556は、開口部953の前で、この容器からの光放射だけを直接的に検出する。
【0291】
このPMTシャッターが開くと、低部シャーシ1100のコンテナ1148、1170から引き出された異なる検出試薬(Detect IおよびDetect II)は、照度計950の頂部にある試薬ポート984へと延びている専用送達ライン(図示せず)を通って、整列した容器162へと連続的に送達される。Detect IおよびDetect II試薬は、それぞれ、過酸化水素含有試薬および水酸化ナトリウム含有試薬であり、そして、配合して普通の過酸化水素溶液を形成し、これは、加水分解されていないアクリジニウムエステル標識の化学発光を高める。普通の過酸化水素は不安定であるので、Detect I試薬およびDetect II試薬は、好ましくは、照度計950での検出の直前に、容器162で配合される。
【0292】
Detect IIの添加後、容器162の内容物から放射された光は、PMT956を用いて検出され、このPMTシャッターは、次いで、閉じられる。PMT956は、化学発光標識により放射された光を、電子機器ユニット952により処理された電気信号へと変換し、その後、コネクタ986に連結されたケーブル(図示せず)を経由して、制御装置1000または他の周辺ユニットへと送られる。
【0293】
低い感度しか必要としない場合には、光電子増倍管に代えて、光学センサを使用することが可能であり得る。ダイオードは、照度計950と共に使用できる受容可能な光学センサの一例である。MTU160の材料が、好ましいポリプロピレン材料の半透明な外観というよりもむしろ、比較的に透明であるとき、光学センサもまた、適切であり得る。MTU160用の材料を選択するとき、自然な発光をするかまたは静電蓄積を受けやすくした(そのいずれかは、定量測定の誤ったポジティブ(false positive)または妨害の機会を高め得る)材料を回避するには、注意を払うべきである。
【0294】
上記工程は、MTU160の各容器162に対して、繰り返される。MTU160の各容器162からの化学発光信号を測定した後、モーター972が前進して、出口ドア961を通って、照度計950から、アンプリコン不活性化ステーション750へと、MTU160を移動する。
【0295】
代替の現在好ましい照度計は、一般に、図43にて、参照番号1360で指定されている。照度計1360は、ハウジング1372を含み、これは、底壁1370、底壁1370の対向側面にあるドアアセンブリ1200(これは、ハウジング1372の末端部を規定する)、光学センサシャッターアセンブリ1250(これは、ハウジング1370の前壁を規定する)、頂壁(図示せず)、および後壁(図示せず)を有し、これらは、ハウジング1370を完成し、その中で囲壁を規定する。右側ドアアセンブリ1200は、受容器入口開口部1374を規定し、そして左側ドアアセンブリ1200は、受容器出口開口部1376を規定し、そこを通って、MTU160は、ハウジング1370からおよびそこへと通過できる。各ドアアセンブリ1200は、各開口部1374または1376を通るアクセスを制御し、そして端壁1202、カバープレート1232、および回転ドア1220(これは、端壁1202とカバープレート1232との間で、回転可能に配置されている)を含む。光学センサ開口部シャッターアセンブリ1250は、光学センサ(図43では、図示さず)(例えば、光電子増倍管)に入る光を制御する。アセンブリ1250は、光レシーバ取付壁1250およびその中に形成された開口部1292を有するカバープレート1290を含む。
【0296】
ハウジング1372の前部には、照度計1360に入る前にMTUを走査するためのバーコードスキャナー1368が装着されている。
【0297】
受容器運搬アセンブリ1332は、受容器(例えば、MTU160)を、入口開口部1374から、照度計1360を通って、出口開口部1376へと移動する。アセンブリ1332は、ネジ付き親ネジ1340に移動可能に備えられた運搬装置1342を含み、これは、ベルト(図示せず)で、親ネジ1340に連結されたモーター1336により、回転される。
【0298】
その頂壁(図示せず)には、分配ノズル1362が装着され、そして導管チューブ1362および1364により、ポンプに接続され、最終的には、低部シャーシ1100にあるボトル1146および1170に接続されている。ノズル1362は、「Detect I」試薬および「Detect II」試薬を、ハウジング1372内のMTU160の受容器162へと分配する。
【0299】
ハウジング1372内には、容器ポジショナーアセンブリ1300が配置されており、そしてMTU160の各チューブ162を開口部1292の前に位置づけるように、そして位置づけた各チューブを隣接チューブから光学的に隔離するように、構成され配置されていて、その結果、1個のチューブからの光だけが同時に開口部1292に入るようにされる。ポジショナーアセンブリ1300は、受容器ポジショナー1304を含み、これは、ハウジング1372の床1370に確保されたポジショナーフレーム1302内で、回転可能に取り付けられている。
【0300】
照度計1360のMTU入口開口部1374および出口開口部1376用のドアアセンブリ1200は、図44で示されている。ドアアセンブリ1200は、照度計端壁1202を含み、これは、照度計ハウジング1372の端壁を形成する。端壁1202は、第一凹部領域1206を含み、第一陥凹部領域1206には、第二の円形凹部領域1208が重ね合わされている。円形凹部領域1208周囲の周りには、円形溝部1207が延びている。スロット1204は、MTU160の縦方向プロフィールとほぼ一致する形状を有しているが、円形凹部領域1208にて、その中心の一側面まで形成されている。円形凹部領域1208の中心からは、短中心ポスト1209が延びている。
【0301】
回転ドア1220は、円形形状であり、そして回転ドア1220の周囲の周りに延びている軸壁1222を含む。軸壁1222は、回転ドア1220の外周縁から短い半径方向距離で配置されており、それにより、軸壁1222の外側の最外周縁の周りで、環状肩部1230を規定している。スロット1226は、MTUの縦方向プロフィールとほぼ一致する形状を有するが、回転ドア1220にて、中心を外れた位置で、形成されている。
【0302】
回転ドア1220は、端壁1202の円形凹部領域1208に設置されている。中心開口部1224は、端壁1202の中心ポスト1209を受容し、そして円形溝部1207は、軸壁1222を受容する。環状肩部1230は、円形凹部領域1208を取り囲んでいる凹部領域1206の平坦面に載っている。
【0303】
端壁1202は、駆動ギア凹部1210を含み、これは、その中で、モーター1213の駆動シャフトに装着された駆動ギア1212を受容する(図43(ここで、右側ドアアセンブリ1200用のモーター1213だけが示されている)を参照せよ)。モーター1213は、好ましくは、DCギアモーターである。好ましいDCギアモーターは、モデル番号1524T024SR 16/7 66:1で、Clearwater,FloridaのMicro Mo Electronicsから入手できる。回転ドア1220の軸壁1222の外周は、その上にギア歯が形成されており、これらは、このシャッターが円形凹部1208に設置されるとき、駆動ギア1212と噛み合う。
【0304】
カバープレート1232は、一般に、長方形の形状であり、そして端壁1202の凹部領域1206とほぼ一致するサイズおよび形状を有する隆起領域1234を含む。カバープレート1232は、その中に、開口部1236が形成されており、これは、MTUの縦方向プロフィールとほぼ一致する形状を有し、カバープレート1232を端壁1202に設置したとき、隆起長方形領域1234は、長方形凹部領域1206内で受容され、そして開口部1236は、開口部1204とほぼ整列している。それゆえ、回転ドア1220は、カバープレート1232と端壁1202との間で挟まれており、そして開口部1236および1204は、共に、入口開口部1374および出口開口部1376を規定している。
【0305】
駆動ギア1212がモーター1213で回転されるとき、回転ドア1220は、駆動ギア1212と絡んで、中心ポスト1209の周りで回転される。開口部1226が開口部1204および1236と整列するとき、MTU160は、ドアアセンブリ1200の開口部1374(1376)を通過できる。回転ドア1220が円形凹部領域1208内に配置され、そしてカバープレート1232の隆起領域1234が端壁1202の凹部領域1206内に配置されて、実質的に光密(light-tight)構造体が得られ、それにより、開口部1226が開口部1204および1236と整列されていないとき、このドアを通って入る光は、殆どまたは全くない。
【0306】
円形凹部領域1208の外縁に配置されたスロット1214および1216内では、直径方向に対向した位置で、スロット付き光学センサが配置されている。好ましいセンサは、Carrollton,TexasのOptek Technology,Inc.から入手できる(モデル番号OPB857)。スロット1214および1216内で配置されたスロット付きセンサは、軸壁1222に形成されたノッチ1228の存在を検出して、ドアの開閉状態の信号を送る。
【0307】
光学センサ開口部シャッターアセンブリ1250は、図45で示されている。光レシーバ(例えば、光電子増倍管956)は、光レシーバ取付壁1252に形成された光レシーバ開口部1254と連結されている。光レシーバ取付壁1252は、略長方形の2段になった隆起領域1256を含み、これは、長方形隆起領域1256で重ね合わせられた略長方形肩部1257および円形凹部領域1258を規定している。円形凹部領域1258の周囲の周りには、円形溝部1261が延びている。円形凹部領域1258の中心では、円形ポスト1259が位置づけられている。円形凹部領域1258では、光レシーバ開口部1254が形成されている。図示した実施形態では、光レシーバ開口部1254は、中心ポスト1259の下に配置されているが、光レシーバ開口部1254は、円形凹部領域1258の任意の位置に置くことができる。
【0308】
開口部シャッターアセンブリ1250は、回転シャッター1270を含み、これは、軸壁1274を有し、その外周には、ギア歯が形成されている。軸壁1274は、シャッター1270の外周の近くに形成されているが外周には形成されておらず、それにより、環状肩部1276を規定する。円形凹部領域1258では、回転シャッター1270が設置されており、中心ポスト1259は、回転シャッター1270に形成された中心開口部1272内で受容され、そして軸壁1274は、円形溝部1261内で受容されている。ギア凹部1260内で配置され、駆動モーター1263に連結された駆動ギア1262は、回転シャッター1270の軸壁1274で形成された外部ギア歯と噛み合って、回転シャッター1270を中心ポスト1259の周りで回転する。好ましい駆動モーター1263は、モデル番号1524T024SR 16/7 66:1として、Clearwater,FloridaのMicro Mo Electronicsから入手できるDCギアモーターである。Micro Moのギアモーターは、高品質で低バックラッシュのモーターなので、好ましい。回転シャッター1270には、開口部1280が形成されているが、これは、回転シャッター1270が回転するにつれて、動いて光レシーバ開口部1254と整列したり整列から外すことができる。
【0309】
シャッター1270を円形凹部領域1258に設置して、カバープレート(またはセンサ開口部壁)1290は、センサマウント1252上へと設置される。図45Aで示すように、センサ開口部壁1290は、略長方形の2段になった凹部領域1296を含み、これは、略長方形の肩部1297を規定しており、その中で、センサマウント1252の長方形隆起領域1256を受容するサイズおよび形状にされている。センサ開口部1292は、開口部壁1290を通って形成されており、そしてセンサマウント1252に形成された光レシーバ開口部1254とほぼ整列している。センサ開口部1292は、一般に、細長い卵形の形状であり、これは、MTU160の個々の容器162の幅にほぼ一致している幅、および意図した視覚領域の高さに一致している高さを有する。シャッター1270の開口部1280は、図示した実施形態では、円形で示されているものの、開口部1280は、他の形状(例えば、長方形)であり得、容器162の幅に一致する幅またはセンサ開口部1292と類似した細長い卵形を備えている。回転シャッター1270を、開口部1280が光レシーバ開口部1254およびセンサ開口部1292と整列している位置まで回転することにより、光は、センサ956に達することが可能となり、また、回転シャッター1270を、開口部1280が光レシーバ開口部1254およびセンサ開口部1292と整列していない位置まで回転することにより、光が、センサ956に到達するのを防止できるようになる。
【0310】
スロット付き光学センサは、スロット1264および1266に配置されており、そしてシャッター1270の軸壁1274で形成されたノッチ1278を検出して、シャッター1270の開放位置および閉鎖位置を検出する。好ましいスロット付き光学センサは、モデル番号OPB857として、Carrollton,TexasのOptek Technology,Inc.から入手できる。
【0311】
開口部壁1290は、その幅に沿って延びている上方に面した肩部1294を含む。MTU160の下方に面した肩部は、MTU160の接続リブ構造体164により規定されるが(図45を参照)、MTU160がこの照度計を通って滑るにつれて、肩部1294により、支持される。
【0312】
容器ポジショナーアセンブリ1300は、図46および図48?49に示される。容器ポジショナー1304は、容器ポジショナーフレーム1302内で、操作可能に配置されている。容器ポジショナー1304は、シャフト1308の周りで回転するために、容器ポジショナーフレーム1302に取り付けられている。シャフト1308は、回転ソレノイド(または、さらに好ましくは、ギアモーター1306)に操作可能に連結されて、図46で示す後退位置と、図48で示す完全伸長位置との間で、容器ポジショナー1304を選択的に回転する。好ましいギアモーター駆動装置は、モデル番号1724T024S+16/7 134:1+X0520で、Clearwater,FloridaのMicro Mo Electronicsから入手できる。
【0313】
図47で示すように、容器ポジショナー1304は、2枚の平行壁1312を規定するVブロック構造体1310を含む。容器ポジショナー1304は、さらに、その下端にて、容器ポジショナー1304の厚さの一部が取り除かれた領域を含み、それにより、比較的に薄いアーチ形フランジ1314を規定している。
【0314】
MTU160を照度計1360へと挿入するとき、容器ポジショナー1304は、図46で示した後退位置にある。個々の容器162をセンサ開口部1292(図45Aを参照)の前に配置して、その結果、容器162の内容物の化学発光のセンサ読み取りがなされ、容器ポジショナー1304は、図49で示した噛み合い位置へと、前方へ回転する。図49で示した噛み合い位置では、Vブロック1310は、容器162と噛み合い、それにより、この容器を、この照度計の光レシーバ開口部1292と整列して、適当な位置で保持する。図45で示すように、開口部壁1290は、壁1290の後部からこの照度計のMTU通路へと延びている突出部1298を含む。突出部1298は、容器ポジショナー1304が容器162と噛み合ったとき、この容器が側方に押されて硬いストップとして突出部1298と遭遇し、それにより、容器ポジショナー1304がこのMTU通路内で容器162を著しく傾けるのを防止するように、開口部1292と整列している。Vブロック1310の平行側壁1312は、開口部1292のすぐ前に配置された容器162の読み取りを行いつつ、MTU160の隣接容器162からの迷光が、この光レシーバに到達するのを防止する。
【0315】
フレーム1302の下部には、スロット付き光学センサ1318が取り付けられ、アーチ形フランジ1314は、センサ1318に対して、操作可能に位置づけられている。好ましいスロット付き光学センサは、モデル番号OPB930W51として、Carrollton,TexasのOptek Technology,Inc.から入手できる。フランジ1314には、開口部1316が形成されている。開口部1316は、容器ポジショナー1304が容器162と噛み合って容器162および突出部1298が容器ポジショナー1304のそれ以上の回転を防止するとき、センサ1318と正しく整列されている。もし、容器162が容器ポジショナー1304の前で正しく位置づけられていないなら、容器ポジショナー1304は、図48で示した位置まで、前方に回転し、この場合、開口部1316は、センサ1318と整列しておらず、誤信号が発生する。
【0316】
ギアモーター1306が容器ポジショナー1304を回転するのに使用されるなら、図46で示すように、容器ポジショナー1304が完全に後退したとき、このギアモーターを遮断するポジショナー後退(すなわち、「ホーム」)信号を発生させるために、第二センサ(図示せず)を設ける必要がある。好ましいセンサは、モデル番号OPB900Wとして、Carrollton,TexasのOptek Technology,Inc.から入手できる。
【0317】
MTU運搬機構アセンブリ1332は、図50で示されている。MTU運搬機構アセンブリ1332は、照度計1360の中間壁1330(図43では示していない)の頂縁に隣接して、操作可能に配置されている。中間壁1330は、照度計ハウジング1372を通るMTU運搬経路の一面を規定しているが、長方形開口部1334を含む。中間壁1330には、開口部1334に隣接して、容器ポジショナーフレーム1302(例えば、図57を参照)が取り付けられており、容器ポジショナー1304は、回転して、開口部1334を通って、MTU160と噛み合う。
【0318】
MTU運搬装置1342は、ネジ付き親ネジ1340に備えられ、そしてネジ従動節1344と一体的に形成された親ネジ1340およびMTUヨーク1346のネジ筋と噛み合うネジ筋を有するネジ従動節1344を含む。図51で示すように、MTUヨーク1346は、縦方向に延びている部分1356および2つの側方に延びているアーム1348および1350を含み、縦拡張部1352は、アーム1350から延びている。親ネジ1340は、ステッパーモーター1336により、駆動ベルト1338を経由して、駆動される。好ましいステッパーモーターは、VEXTAモーター(モデルPK266-01A、これは、Tokyo,JapanのOriental Motor Ltd.から入手できる)であり、そして好ましい駆動ベルトは、New Hyde Park,New YorkのSDP/SIから入手できる。
【0319】
MTU160を、右側運搬機構500により、照度計950のMTU運搬経路へと挿入するとき、MTU160の第一容器162は、好ましくは、センサ開口部1292のすぐ前に配置され、それにより、第一読み取りのために正しく配置される。側方アーム1348および1350間のヨーク1346の幅は、単一のMTU160の長さに対応している。運搬装置1342は、図50で幻影で示した第一位置と、第二位置との間で親ネジ1340の回転により移動される。スロット付き光学センサ1341および1343は、それぞれ、運搬装置1342が第一位置および第二位置のいずれにあるかを表示する。親ネジ1340とネジ従動節1344との間の摩擦のために、MTU運搬装置1342は、親ネジ1340と共に回転する傾向を有する。親ネジ1340と一緒のMTU運搬装置1342の回転は、好ましくは、しかしながら、ヨーク1346の下部と中間壁1330の頂部との噛み合いにより、また、照度計ハウジング1372の上部ストップ1354と上部カバー(図示せず)との噛み合いのために、制限される。
【0320】
照度計1360に挿入されたMTUを噛み合わせるために、親ネジ1340は、第一方向で回転され、ネジ従動節1344および親ネジ1340のネジ筋内での摩擦により、運搬装置1342は、上部スリップ1354が照度計1360の上部カバー(図示せず)と遭遇するまで、親ネジ1340と共に、上向きに回転される。その時点で、親ネジ1340の連続回転により、運搬装置1342は、図50で幻影で示した位置まで、後方へ移動される。側方アーム1348、1350は、運搬装置1342が後方へ移動するにつれて、このMTUの上部を通り過ぎる。親ネジ1340の逆回転により、まず、運搬装置1342は、ヨーク1346の下部が壁1330の上縁と遭遇するまで、親ネジ1340と共に、下方へ回転されて、その時点で、ヨーク1346の側方アーム1348および1350は、照度計1360内で配置されたMTU160を跨ぐ。
【0321】
次いで、MTU160の容器162の各々が光学センサ開口部1292の前にくる位置まで、MTU160を漸次前向きに移動させるために、MTU運搬機構1332が使用される。最後の容器162をこの照度計内の光レシーバで測定した後、運搬装置1342は、MTU160を、その出口ドアに隣接した位置まで移動して、その時点で、親ネジ1340は、方向を逆にし、それにより、上記のように、運搬装置1342を初期位置(今ここでは、MTU160の後ろ)へと戻して後退させる。親ネジ1340の回転は、再度、逆にされ、運搬装置1342は、次いで、上記のように、前進される。出口ドアアセンブリ1200が開かれ、ヨーク1346の縦拡張部1352は、MTU160のMTU操作構造体166と噛み合って、MTU160を、この照度計の出口ドアから、不活性化列750へと押し出す。
【0322】
(不活性化ステーション)
アンプリコン不活化ステーション750では、専用送達ライン(図示せず)は、不活化溶液(例えば、緩衝化漂白剤)をMTU160の容器162へと添加して、MTU160内に残留している流体を不活化する。これらの容器の流体内容物は、専用吸引ラインに接続された管状要素(図示せず)により吸引され、そして低部シャーシ1100にある専用液体廃棄物コンテナに集められる。これらの管状要素は、好ましくは、4.7インチの長さおよび0.041インチの内径を有する。
【0323】
MTUシャトル(図示せず)は、照度計950から不活化ステーション750へと引き続いて各MTU160を送達すると共に、MTU160を(図3の右側へと)漸次移動する。MTUが、照度計950により、不活化列750へと送達され得る前に、このMTUシャトルは、戦略的に配置した光学スロットスイッチにより感知されるように、ホーム位置へと後退しなければならない。この照度計からMTU160を回収した後、このシャトルは、MTU160を不活化ステーションへと移動し、この場所で、専用注入器に接続された専用送達ラインは、この不活化溶液を、MTU160の各容器162へと分配する。この不活化列での先のMTUは、もしあれば、このMTUシャトルで移動した距離だけ、前向きに押される。この不活化ステーションにあるセンサは、このMTUおよびMTUシャトルの両方の存在を検証し、それにより、実在しないMTUへの不活化流体の注入の発生および同じMTUへと二重の注入の発生を防止する。
【0324】
吸引器ステーション(図示せず)は、5個の機械的に連結された吸引器チューブを含み、これらは、吸引器チューブラックでの垂直運動のために取り付けられ、この吸引器チューブを上げ下げするために、アクチュエータに連結されている。この吸引器ステーションは、これらのMTUがデータプレート82にある穴を通って廃棄物ビン1108へと落ちる前に、この不活化列に沿った最後の位置にある。MTUが不活化ステーションに移動するときはいつでも、これらの吸引器チューブは、この吸引器ステーションにMTUが存在しようとしまいと、同時に、上下に循環する。もし、MTUが存在すると、これらの吸引器チューブは、このMTUからの流体内容物を吸引する。次のMTUが、このMTUシャトルにより、この不活化ステーションへと移動するとき、最後に吸引したMTUは、この不活化列の末端から押し離されて、廃棄物ビン1108へと落ちる。
【0325】
好ましい操作モードにて、分析器50で実行される上記アッセイ操作の工程および手順は、Gen-Probe TIGRIS Storyboard v.1.0(1997年6月23日)の文献で、図式的かつ簡潔に記述されており、そのコピーは、本明細書に対して優先権を主張している仮出願の開示で出願されており、その内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0326】
理想的には、分析器50は、8時間で、約500回の好ましいアッセイを作動でき、あるいは、12時間で、約1,000回の好ましいアッセイを作動できる。一旦、分析器50が始動され開始すると、それは、通常、操作者の補助または介入を殆どまたは全く必要としない。各試料は、所定のアッセイに対して等しく取り扱われるが、この分析器は、複数のアッセイ型を同時に実行でき、ここで、異なるMTUは、等しく取り扱われても良いし、そうでなくても良い。結果的に、手動のピペット取出、インキュベーションタイミング、温度制御、および手動で行われる複数アッセイに関連した他の限界は、回避され、それにより、信頼性、効率および出力が高まる。操作者が試料に触れるのは、一般に試料の装填に限られているので、潜在的な感染の危険性は、大きく低下する。
【0327】
本発明は、最も実用的で好ましい実施形態と現在考えられているものに関連して、記述されているものの、本発明は、開示した実施形態には限定されないが、添付の特許請求の範囲の意図および範囲内に入る種々の変更および等価物の配置を含むことが理解されるべきである。
【0328】
さらに、添付の特許請求の範囲のうち、35U.S.C.§112(¶6)で許容されている「特定の機能を実行するための手段」の形式の語句を含まないものは、35U.S.C.§112(¶6)の下では、本明細書で記述された構造、材料または作用およびそれらの等価物に限定されるとしては、解釈されない。
【図面の簡単な説明】
【0329】
【図1】図1は、本発明に従った自動化された核酸に基づく診断分析器の斜視図である。
【図2】図2は、本発明の分析器の構造的フレームの斜視図である。
【図3】図3は、本発明の分析器のアッセイ処理デッキの一部の平面図である。
【図4】図4は、アッセイ処理デッキの分解斜視図である。
【図5】図5は、本発明の分析器のアッセイ処理デッキの標本リングおよびピペットチップホイールの平面図である。
【図6】図6は、標本リングおよびピペットチップホイールを示す斜視図である。
【図6A】図6Aは、図5でライン6A-6Aに沿った部分断面図である。
【図7】図7は、本発明の分析器の処理デッキの多軸ミキサの斜視図である。
【図8】図8は、多軸ミキサの平面図である。
【図9】図9は、多軸ミキサの側面立面図である。
【図10】図10は、コンテナホルダとそこから除去されるターンテーブルカバーを備える多軸ミキサの平面図である。
【図11】図11は、図10の11-11方向の多軸ミキサの断面図である。
【図12】図12は、多軸ミキサの駆動アセンブリの斜視図である。
【図13】図13は、本発明の分析器の処理デッキの運搬機構の斜視図である。
【図14】図14は、運搬機構の操作フック取りつけプレートおよび操作フック作動機構の斜視図である。ここで操作フック部材は、反応受容器と係合しそして後退位置にある。
【図15】図15は、操作フック部材が伸張位置にあることを以外は、図14と同じである。
【図16】図16は、運搬機構の分解斜視図である。
【図17】図17は、本発明の分析器の処理デッキの温度ランピングステーションの側面立面図である。
【図18】図18は、温度ランピングステーションの正面立面図である。
【図19】図19は、本発明の分析器の処理デッキのロータリーインキュベータの斜視図である。
【図20】図20は、ロータリーインキュベータの第一実施形態に従ったハウジングの一部およびアクセス開閉機構の分解図である。
【図21】図21は、ロータリーインキュベータの斜めディスクリニアミキサの部分図であり、本発明の分析器の好適な操作のモードにおいて採用される反応受容器への係合が示される。
【図22】図22は、ロータリーインキュベータの第一の実施形態の分解斜視図である。
【図23】図23は、その第二の実施形態に従ったロータリーインキュベータの斜視図である。
【図23A】図23Aは、ロータリーインキュベータの第二の実施形態の分解斜視図である。
【図23B】図23Bは、ロータリーインキュベータの第二の実施形態のアクセス開閉機構の部分分解斜視図である。
【図23C】図23Cは、ロータリーインキュベータの第二実施形態の受容器キャリアカルーセルの分解図である。
【図24】図24は、本発明の処理デッキの磁気分離洗浄ステーションの斜視図であり、その側部プレートが除去されている。
【図25】図25は、磁気分離洗浄ステーションの部分横断面である。
【図25A】図25Aは、その端部に汚染制限チップレットを備えた磁気分離洗浄ステーションの吸引チューブのチップの部分横断面である。
【図26】図26は、受容器キャリアユニット、軌道ミキサアセンブリおよび磁気分離洗浄ステーションの分割器プレートの分解斜視図である。
【図27】図27は、洗浄バッファ分配ノズル、その端部に係合する汚染制限チップレットを有する吸引チューブ、および磁気分離洗浄ステーションの受容器キャリアユニットの部分断面図であり、受容器キャリアユニット内に備えられる分析器の操作の好ましい態様において採用される、多試験管ユニット反応受容器、および多試験管ユニットの受容器へ挿入される吸引チューブおよび汚染制限チップレットを示す。
【図28】図28は、洗浄バッファ分配ノズル、吸引チューブ、および磁気分離洗浄ステーションの受容器キャリアユニットの部分断面図であり、受容器キャリアユニットに保持される多試験管ユニット、および多試験管ユニットの汚染制限要素保持構造に保持される汚染制限チップレットに係合する吸引チューブを示す。
【図29A】図29A?29Dは、磁気分離洗浄ステーションのチップレットストリッピングプレートのチップレットストリッピング孔の第一の実施形態の断面、およびそのチップレットストリッピング孔を使用したチップレットストリッピング操作を示す。
【図29B】図29A?29Dは、磁気分離洗浄ステーションのチップレットストリッピングプレートのチップレットストリッピング孔の第一の実施形態の断面、およびそのチップレットストリッピング孔を使用したチップレットストリッピング操作を示す。
【図29C】図29A?29Dは、磁気分離洗浄ステーションのチップレットストリッピングプレートのチップレットストリッピング孔の第一の実施形態の断面、およびそのチップレットストリッピング孔を使用したチップレットストリッピング操作を示す。
【図29D】図29A?29Dは、磁気分離洗浄ステーションのチップレットストリッピングプレートのチップレットストリッピング孔の第一の実施形態の断面、およびそのチップレットストリッピング孔を使用したチップレットストリッピング操作を示す。
【図30A】図30A?30Dは、チップレットストリッピング孔の第二の実施形態の断面およびそのチップレットストリッピング孔を使用したチップレットストリッピング操作を示す。
【図30B】図30A?30Dは、チップレットストリッピング孔の第二の実施形態の断面およびそのチップレットストリッピング孔を使用したチップレットストリッピング操作を示す。
【図30C】図30A?30Dは、チップレットストリッピング孔の第二の実施形態の断面およびそのチップレットストリッピング孔を使用したチップレットストリッピング操作を示す。
【図30D】図30A?30Dは、チップレットストリッピング孔の第二の実施形態の断面およびそのチップレットストリッピング孔を使用したチップレットストリッピング操作を示す。
【図31A】図31Aは、磁気分離洗浄ステーションのチップレットストリッププレートのチップレットストリッピング穴の第三の実施形態の平面図である。
【図31B】図31Bは、チップレットストリッピング穴の第三の実施形態の断面およびそのチップレットストリッピング穴を使用したチップレットストリッピング操作を示す。
【図31C】図31Cは、チップレットストリッピング穴の第三の実施形態の断面およびそのチップレットストリッピング穴を使用したチップレットストリッピング操作を示す。
【図32】図32は、前部プレートが除去された軌道ミキサの斜視図である。
【図33】図33は、本発明の分析器の処理デッキの軌道ミキサの分解図である。
【図34】図34は、軌道ミキサの頂面図である。
【図35】図35は、本発明の分析器の処理デッキの試薬冷却ベイの上方斜視図である。
【図36】図36は、コンテナトレイが除去された試薬冷却ベイの上方斜視図である。
【図37】図37は、試薬冷却ベイの底面図である。
【図38】図38は、試薬冷却ベイの分解図である。
【図39】図39は、試薬冷却ベイのモジュラーコンテナトレイの上方斜視図である。
【図40】図40は、本発明の分析器の処理デッキの照度計の第一の実施形態の斜視図である。
【図41】図41は、第一の実施形態の照度計の部分分解斜視図である。
【図42A】図42Aは、照度計の第一の実施形態の受容器運搬機構の部分斜視図である。
【図42B】図42Bは、照度計の第一の実施形態の受容器運搬機構の端面図である。
【図42C】図42Cは、照度計の第一の実施形態の受容器運搬機構の頂面図である。
【図43】図43は、本発明の照度計の第二の実施形態の破断斜視図である。
【図44】図44は、第二実施形態の照度計のための多試験管ユニットドアアセンブリの分解斜視図である。
【図45】図45は、第二の実施形態の照度計のための光センサ開口のためのシャッタアセンブリの分解斜視図である。
【図45A】図45Aは、第二の実施形態の照度計のシャッタアセンブリの開口プレートの斜視図である。
【図46】図46は、受容器ポジショナーフレーム内に配置された受容器ポジショナーを含む、第二の実施形態の照度計の受容器ポジショナーアセンブリの斜視図である。
【図47】図47は、受容器ポジショナーの斜視図である。
【図48】図48は、受容器ポジショナーアセンブリの側面立面である。
【図49】図49は、分析器の操作の好適なモードにおいて採用される多試験管ユニットを操作的に係合する受容器ポジショナーアセンブリの受容器ポジショナーを示す斜視図である。
【図50】図50は、第二実施形態の照度計の多試験管ユニット運搬機構の斜視図である。
【図51】図51は、照度計の多試験管ユニット移動および多試験管ユニット運搬機構の駆動ねじを示す部分斜視図である。
【図52】図52は、本発明の分析器の低部シャーシの斜視図である。
【図53】図53は、低部シャーシの右側引出しの斜視図である。
【図54】図54は、低部シャーシの左側引出しの斜視図である。
【図55】図55は、本発明の分析器の操作の好ましいモードにおいて採用される標本用試験管トレイの斜視図である。
【図56】図56は、標本試験管トレイの頂面図である。
【図57】図57は、図55のライン57-57を通る標本試験管トレイの部分断面である。
【図58】図58は、本発明の分析器の操作の好適なモードにおいて採用される多試験管ユニットの斜視図である。
【図59】図59は、本発明の分析器の操作の好適なモードにおいて採用されそして図58で示される多試験管ユニット上で保持される接触制限ピペットチップレットの側面立面である。
【図60】図60は、図58の矢印60の方向に示される多試験管ユニットの一部の拡大底面図である。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸に基づく増幅反応を実施するためのプロセスであって、該プロセスは、分析器内において以下の自動化工程:
a)該分析器の処理デッキ上の第一位置に配置された分離ステーションにおいて、該分析器内で磁気応答性の固体支持体上に固定化された標的核酸を、流体試料中に存在する他の材料から分離する工程であって、該分離ステーションは該処理デッキ上に配置された複数のステーションのうちの1つである、工程;
b)該分析器の該処理デッキ上の第二位置に配置された増幅ステーションにおいて、前記分離された標的核酸を、反応受容器中で1つ以上の増幅試薬とともに、該標的核酸中に含まれる標的配列を増幅させるのに十分な時間および条件下でインキュベートする工程であって、該反応受容器は、開放頂部端と閉鎖底部端とを有するように形成されており、該増幅ステーションは該処理デッキ上に配置された該複数のステーションのうちの1つである、工程;ならびに
c)該分離された標的核酸を含む反応受容器を、工程b)の前に該増幅ステーションへと運搬する工程、
を実施することを包含し、
コンピュータコントローラが、異なるステーションに位置する異なる反応受容器において複数の異なるアッセイ手順を同時に実施するために、該複数のステーションを並行して操作し、
該複数のステーションは、ハウジング内に含まれ、
該自動化工程は操作者の介入なしに実施される、
プロセス。
【請求項2】
前記自動化工程は、前記工程b)の後に、前記反応受容器にプローブを提供する工程をさらに包含し、該プローブの提供は、該プローブを、前記標的配列または該標的配列もしくはその相補体を含むアンプリコンにハイブリダイズするのに十分な時間および条件下でなされる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記プローブが、検出可能な標識を含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記標識が、蛍光色素または化学発光化合物である、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記自動化工程は、前記流体試料中の生物またはウイルスの標的群のメンバーの存在または不存在の指標として、前記標的配列または該標的配列もしくはその相補体を含むアンプリコンにハイブリダイズされた前記プローブの存在または不存在を検出する工程をさらに包含し、該標的群は、少なくとも1つの生物またはウイルスからなる、請求項2?4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記検出する工程が、前記流体試料中の生物またはウイルスの標的群のメンバーの存在または不存在の指標として、前記反応受容器から発生した光の量を決定することを含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記自動化工程は、前記流体試料中の生物またはウイルスの標的群のメンバーの量を決定する工程をさらに包含する、請求項5または請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
請求項2?7のいずれか一項に記載のプロセスであって、前記自動化工程は、前記プローブを、前記反応受容器に提供する前に、該反応受容器を、前記増幅ステーションから、前記処理デッキ上の第三位置において配置された温度制御ハイブリダイゼーションステーションに運搬する工程をさらに包含する、プロセス。
【請求項9】
前記プローブが、前記反応受容器の前記増幅ステーションから前記ハイブリダイゼーションステーションへの運搬の後に、該反応受容器に提供される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載のプロセスであって、前記自動化工程は、前記反応受容器を前記ハイブリダイゼーションステーションから前記処理デッキ上の第四位置に配置された検出ステーションに運搬する工程をさらに包含し、ここで、ハイブリダイズされたプローブの存在または量が、該検出ステーションにおいて決定される、プロセス。
【請求項11】
前記検出ステーションが、前記反応受容器の内容物により発生した光の量を決定するための照度計を備える、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記自動化工程は、前記増幅ステーションへの前記反応受容器の運搬の前に、該反応受容器の内容物の温度を上昇または降下させる工程をさらに包含する、請求項1?11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記自動化工程は、前記増幅ステーションおよび前記ハイブリダイゼーションステーションのうち少なくとも1つへの前記反応受容器の運搬の前に、該反応受容器の内容物の温度を上昇または降下させる工程をさらに包含する、請求項8?11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記自動化工程は、前記反応受容器中に存在する核酸を破壊するための不活性化試薬を、該反応受容器に提供する工程をさらに包含する、請求項1?13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記不活性化試薬が、過マンガン酸カリウムの溶液、ギ酸、次亜塩素酸ナトリウムの溶液、ヒドラジンおよび硫酸ジメチルからなる群より選択される化学薬品を含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
請求項14または請求項15に記載のプロセスであって、前記自動化工程は、前記不活性化試薬を前記反応受容器に提供する前に、該反応受容器を、前記検出ステーションから前記処理デッキ上の第五位置に配置された不活性化ステーションに運搬する工程をさらに包含する、プロセス。
【請求項17】
前記標的核酸が前記固体支持体上に固定化される前に、該標的核酸が、捕捉プローブにハイブリダイズされる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記流体試料が、前記分離する工程の間に磁場に供される、請求項1?17のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記運搬する工程の各々が、受容器運搬機構を用いて実施される、請求項1?18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記増幅ステーションにおいて前記反応受容器の内容物をインキュベートする前に、該反応受容器に、油層が提供される、請求項1?19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
請求項1?20のいずれか一項に記載のプロセスであって、前記反応受容器が、一体化されて形成された複数の反応受容器のうちの1つを含む、プロセス。
【請求項22】
前記複数の反応受容器の各反応受容器は、同じかまたは異なる流体試料を含み、該同じかまたは異なる流体試料は、該各反応受容器中の該同じかまたは異なる流体試料中に存在し得る同じかまたは異なる標的核酸を同時に分離および増幅するためのものである、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記複数の反応受容器の各反応受容器が円筒形管である、請求項21または22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記ハウジングが、自給型の分析器ユニットを規定する、請求項1?23のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項25】
前記分析器ユニットが可動式である、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記他の材料が非ハイブリダイズ核酸を含む、請求項1?25のいずれか一項に記載のプロセス。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2012-10-10 
出願番号 特願2007-151041(P2007-151041)
審決分類 P 1 113・ 536- YA (G01N)
P 1 113・ 121- YA (G01N)
P 1 113・ 537- YA (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷 潮秋田 将行小金井 悟  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 小野寺 麻美子
後藤 時男
登録日 2011-01-14 
登録番号 特許第4662580号(P4662580)
発明の名称 自動化診断用分析器および方法  
代理人 北谷 賢次  
代理人 山本 秀策  
代理人 長谷部 真久  
代理人 駒谷 剛志  
代理人 島田 哲郎  
代理人 駒谷 剛志  
代理人 青木 篤  
代理人 長谷部 真久  
代理人 中島 勝  
代理人 伊藤 健太郎  
代理人 森下 夏樹  
代理人 森下 夏樹  
代理人 三橋 真二  
代理人 山本 秀策  

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