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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09J
管理番号 1271378
審判番号 不服2011-8507  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-21 
確定日 2013-03-14 
事件の表示 特願2001-40228「粘着シートおよび粘着シート積層体」拒絶査定不服審判事件〔平成14年8月28日出願公開、特開2002-241715〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年2月16日の出願であって、平成22年8月11日付けで拒絶理由が通知され、同年10月15日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月2日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成23年1月5日に意見書及び手続補正書が提出され、同年1月21日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同年4月21日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年6月27日付けで前置審査の結果が報告され、当審において平成24年7月12日付けで審尋され、同年9月13日に回答書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?5に係る発明は、平成23年4月21日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は以下のとおりである。
「粘着シートが複数枚積層されてなる積層体であって、該粘着シートが、シートの一方の面の一端部側に粘着剤層を有し、該一端部側の縁辺から1個の切断部が設けられており、該切断部の形状が、奥端部において曲線状である切り欠き形状であり、該奥端部の位置に前記縁辺と平行な折り線を有し、かつ、前記切断部を起点として折り線が設けられている粘着シートであることを特徴とする粘着シート積層体。」

3.原査定における拒絶理由の概要
原査定は、「この出願は、平成22年11月2日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべき」というものであるが、当該理由は、「この出願の請求項に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない」という点にある。
そして、次の刊行物が引用されている。
1.実願平4-61721号(実開平6-9971号)のCD-ROM
2.特開2000-305455号公報
3.特開2000-157384号公報
4.特開平8-58765号公報
5.特開平9-107760号公報
6.特開平8-150355号公報
7.特開平7-268819号公報
8.登録実用新案第3002707号公報
9.特開平8-183274号公報
10.特開2000-25363号公報
11.特開平9-226270号公報

4.当審の判断
(1)引用刊行物及びその記載事項
刊行物1:実願平4-61721号(実開平6-9971号)のCD-ROM(原査定における引用文献1)
以下は周知技術を示す文献である。
刊行物2:特開2000-305455号公報(同引用文献2)
刊行物3:特開2000-157384号公報(同引用文献3)
刊行物4:特開平8-58765号公報(同引用文献4)
刊行物5:特開平9-107760号公報(同引用文献5)
刊行物6:特開平8-150355号公報(同引用文献6)
刊行物7:特開平7-268819号公報(同引用文献7)
刊行物8:登録実用新案第3002707号公報(同引用文献8)

≪刊行物1≫
1-ア.「【請求項1】 再剥離・再接着材を塗布したメモ用紙において、切り込みや折り目を施し、その部分をメモ記入後に折り曲げることにより、メモ用紙の一部を立体状にして使用することを特徴とした、立体メモ。
……
【請求項4】 請求項1・請求項2・請求項3の立体メモを、重ねあわせ、一枚づつはがして使用できるようにすることを特徴とした、立体メモ帳。」(実用新案登録請求の範囲の請求項1及び4)

1-イ.「【発明が解決しようとする課題】
従来の再剥離・再接着材を塗布したメモ用紙は、張りつけたときに平面状となるため、少し遠くからでは目立ちにくいものであった。本考案は、少し遠くからでも、メモの存在が認識できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本考案は、メモ用紙に切り込みや折り目を施し、その部分を使用時に折り曲げることにより、立体部分及び、それを支え補強する部分を形成出来るようにした。
【作用】
上記のように構成された再剥離・再接着材を塗布したメモ用紙を使用することにより、メモ用紙を立体的な状態で、設置することができるようになる。」(段落0003?0005)

1-ウ.「【実施例】
図1は、本考案の、立体メモ1の平面図、図2はそれを立てかけたときの姿図である。図1の土台部分3には、その裏面の全面もしくは一部分に、再剥離・再接着材を塗布する。土台部分3とメモ部分2の境目に、くびれ部分5及び折り目4の両方もしくはどちらかを設ける。図1は両方を設けた例である。使用するときには、メモ部分2や土台部分3にメモ書きをする。次に、土台部分3を、机等に接着させる。メモ部分2を、折り目4に沿って、もしくはくびれ部分5から折り曲げて、立てる。立てた状態が図2である。
……
図11は、土台部分3が3ケ所あることを特徴とした、本考案の立体メモ1の平面図、図12はそれを設置したときの姿図である。3ケ所に別れた土台部分3の全ケ所もしくは、任意のケ所の裏面の、全面もしくは一部分に、再剥離・再接着材を塗布する。土台部分3の3ケ所で支えるほかは、仕様・設置方法等、図1・図2の場合と同様である。なお、土台部分3のケ所数は、一ケ所以上任意である。」(段落0006?0011)

1-エ.「上述の立体メモを重ねあわせて、一枚づつはがして使用出来るようにした立体メモ帳も、本考案の範囲図する。」(段落0016)

1-オ.「【図1】

【図2】

【図11】

【図12】

」(図面の【図1】、【図2】、【図11】及び【図12】

≪刊行物2≫
2-ア.「【発明の実施の形態】本発明物は、腰のある厚紙を用いることが望ましいが、プラスチックを用いても良く、……
組立過程背面斜視図の図1に於いて、縦長矩形……のPR板1の背面へ、上端をヒンジ固定(……)した支え板2と、下端をヒンジ固定した橋板3とを取り付け、支え板2と橋板3共に縦長矩形を基本とし、……、支え板2の中心部より下へずれた箇所へ角張ったU字形状(側辺の上部は平行な縦線で途中から下すぼまりになり、底辺は水平)でU字切込4を入れ、……、U字切込4の天端を小さな円形で打ち抜く事で引き裂きを防止し、……」(段落0005?0006)

2-イ.
「【図1】

」(図面の【図1】)

≪刊行物3≫
3-ア.「【発明の実施の形態】本発明物は厚紙及び段ボール紙を素材に用いて製造し、……
組立過程正面斜視図の図1に於いて、……、背縦折線7によって区分された面の各々を左からa背板8b背板9と称し、a底板3及びb底板4の各々の下縁に底背折線2を介して左から延設したa底板3とb底板4との重なり領域に、互いに外側に湾曲した半円形の切れ込みを入れて固定片を設け、これらの固定片の両端は小さな円形で打ち抜かれて引き裂きを防止し、……」(段落0005?0006)

3-イ.「【図1】

」(図面の【図1】)

≪刊行物4≫
4-ア.「図1?図6は本発明の実施例を示すもので、1は前後の側板部3、3と左右の側板部4、4よりなる角形の胴枠部2の下端に底板部5が連繋された段ボール材よりなる角形の通箱本体……である。
……
なお、図において20は底板部5のうち2つの稜線17b、17bに挟まれる下り棟部5aの頂部に設けた三角形状の切欠、20aはこの切欠20の裾端に形成した切り裂け防止用の円形切欠、……である。」(段落0007?0011)

4-イ.「【図2】

」(図面の【図2】)

≪刊行物5≫
5-ア.「図9に示すように、マルチフィルム7のマルチ穴7aの中央を中心とし、周方向にほぼ120°の等間隔で3本切れ目7cを入っても良い。このマルチフィルム7の場合は、切れ目7cの終端には、それぞれマルチフィルム7の持ち上がり易さを増し、また裂け目が入ることを防ぐための小円7dが設ける事が望ましい。……。切れ目7cは3本である必要は無く、マルチ穴7aの中央を中心とし、周方向に十文字または適宜の数の切れ目7cを入れても良い。」(段落0022)

5-イ.「【図9】

」(図面の【図9】)

≪刊行物6≫
6-ア.「ポリエチレンフィルム等の適宜な樹脂フィルムにより方形状の被覆部材5を形成する。この被覆部材5は左右縁の上部寄り及び下部寄りに切欠部5aが形成され……ている。
尚、切欠部5aは可及的に裂けることを防止する為、角のない湾曲形状にすることが望ましい。このように裂けることを防止することで該被覆部材5は再使用が可能となる。」(段落0019?0020)

6-イ.「【図2】

」(図面の【図2】)

≪刊行物7≫
7-ア.「このシート状の払拭部材21の上端部は柱本体10の外周に接着などされて固定され、下端部は解放された自由端となっている。この下端自由端に向かって縦方向に多数のスリット22が平行に柱本体10の外周一円に設けられている。即ち、シート状の払拭部材21は、多数のスリット22によって分割された多数の払拭帯材23を暖簾状に形成したものである。スリット22の上端にはここからの引裂きを防止するために、円形穴24を設けることで、引裂外力を分散させるのに有効である。」(段落0008)

7-イ.「【図1】

」(図面の【図1】)

≪刊行物8≫
8-ア.「すなわち、本考案は、長尺帯の中央部に、上部が拡がった容器を受入れて吊り下げることができる長さ方向のスリットが形成され、……、また上記スリットの両端部に裂け防止用の処置が施されたキャリーバンドを要旨とするものである。
……
上記長尺帯の中央部に形成されるスリットは、長尺帯の幅の中央を長さ方向に切裂いて形成されるが、その長さは、容器の外周の長さに応じて決定される。……
スリットの両端部には、好ましくはスリットの裂け防止用の処置が施される。このような処置は、容器の運搬中にスリットの両端部の裂け目が進行しないようにすることであって、例えば、スリットの両端部に直径が1?3mmの小円孔を設ける……方法が好適に採用される。」(段落0004?0007)

8-イ.「【作用】
本考案のキャリーバンドは、長尺帯の中央部に形成されたスリットに、容器が入れられ、……、上記スリットの両端部に形成された小円孔は、スリットの裂けを防止する。」(段落0011)

8-ウ.「図1、図2に示されるように、本考案のキャリーバンドは、通常、合成樹脂製の長尺帯1で構成され、この長尺帯1の中央部に形成されたスリット2に、植木鉢3が入れられる。……。また、スリット2の端部にはスリット裂け防止用の小円孔8が設けられている。」(段落0013)

8-エ.「【図1】

【図2】

」(図面の【図1】及び【図2】)

(2)刊行物に記載された発明
刊行物1には、摘示1-アからみて、次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。
「再剥離・再接着材を塗布したメモ用紙に、切り込みや折り目を施し、その部分を折り曲げることによりメモ用紙の一部を立体状にして使用する立体メモにおいて、該立体メモを重ねあわせ、一枚づつはがして使用できるようにした、立体メモ帳」

(3)対比
本願発明1と刊行物1発明とを対比する。
刊行物1発明の「再剥離・再接着材」は本願発明1の「粘着剤」に相当するものであるから、刊行物1発明の「再剥離・再接着材を塗布したメモ用紙」又は「立体メモ」は、本願発明1の「粘着シート」に相当する。そして、刊行物1発明の「メモ用紙」又は「立体メモ」は「土台部分3」の「裏面の全面もしくは一部分に再剥離・再接着材を塗布する」(摘示1-ウ)ものであるから、本願発明1の「粘着シートが、シートの一方の面の一端部側に粘着剤層を有」するものと同じ構成であるといえる。また、刊行物1発明の「立体メモを重ねあわせ、一枚づつはがして使用できるようにした立体メモ帳」は、本願発明1の「粘着シートが複数枚積層されてなる積層体」又は「粘着シート積層体」に相当する。
刊行物1発明の「折り目」は、本願発明1の「折り線」に相当する。
ここで、本願明細書には「図3(a)に示すように、折り線6aを折れ山として折り曲げ、粘着剤層2a,2bが接着部位(被着体)と接触するように折り線6bで折り曲げ貼付する。この場合、切断部4で粘着剤層2aおよび粘着剤層2bは分離され」(段落0014)と記載されているように、本願発明1の「切断部」は粘着剤層を分離するものである。一方、刊行物1には、土台部分3が3ヶ所あるものが記載されているところ(摘示1-ウ及び1-オ)、上記したとおりこの「土台部分3」は「再剥離・再接着材」すなわち「粘着剤」が塗布される部分であるから、「土台部分3」が複数存在することは、「土台部分3」を分離するための「切断部」が粘着剤層を有する一端部の縁辺から設けられていることに該当する。
そうすると、本願発明1と刊行物1発明とは、
「粘着シートが複数枚積層されてなる積層体であって、該粘着シートが、シートの一方の面の一端部側に粘着剤層を有し、該一端部側の縁辺から切断部が設けられており、折り線が設けられている粘着シートである粘着シート積層体」
の点で一致しているが、次の点で相違する。

相違点1:
本願発明1では「切断部」の数を「1個」と特定しているが、刊行物1発明では「切断部」の数は特定されていない点。

相違点2:
本願発明1では「切断部の形状が、奥端部において曲線状である切り欠き形状」であると特定しているが、刊行物1発明では、そのような規定がない点。

相違点3:
本願発明1では、「奥端部の位置に前記縁辺と平行な折り線を有し、かつ、前記切断部を基点として折り線が設けられている」と特定しているが、刊行物1発明ではそのような規定がない点。

(3)相違点に対する判断
上記相違点について検討する。
ア.相違点1について
刊行物1には、図11(摘示1-オ)に土台部分3が3つある態様が記載されているところ、先に述べた「切断部」の概念からすると、「切断部」が2個あることに相当する。しかし、刊行物1には「なお、土台部分3のケ所数は、一ケ所以上任意である。」(摘示1-ウ)と記載されており、「土台部分3」が2個の態様、すなわち「切断部」の数が1個の態様も記載乃至示唆されているといえる。
そうすると、「切断部」の数を「1個」とすることは当業者が容易になし得ることである。
「切断部」を「1個」とすることから奏される効果については、本願明細書の段落0014には、次の点が記載されている。
(i)粘着体に対してほぼ垂直に立てることができる。例えば、伝言を受ける者の机等の上にこの粘着シートを佇立させて貼着しておけば、伝言を受ける者の目に止まり注意を引き付けることができる。
(ii)粘着剤層が切断部よりやや上方まで設けられており、シートを重ね合わせたときに、この部分の粘着剤層でシート裏面1aとシート裏面1bが貼付されることになるので、しっかり重ね合わされた状態を維持することができ、折り曲げたシートが佇立中に不用意に開くことを防止できる。例えば、シート裏面に伝言メモ等を記入し、内側に折り曲げれば、伝言文は折り曲げられたシートの内側部分になるので、人目に晒されることなく秘密のまま当事者に伝えられる。
しかし、(i)の点は、切断部が1個である場合の特有の効果ではない。刊行物1の摘示1-イ、1-ウ及び1-オに記載のとおり、切断部がなくても、また切断部が2つでも立体的な状態で設置することが可能である。
また(ii)の点は、「粘着剤層が切断部よりやや上方まで設けられており、シートを重ね合わせたときに、この部分の粘着剤層でシート裏面1aとシート裏面1bが貼付されることになる」こと、及び「シート裏面に伝言メモ等を記入し、内側に折り曲げ」ることを前提とすることに加え、切断部を設けた「一端部側」の中央に存在することも必要となり、これらのことは、本願発明1には特定されていないことから、本願発明が必ず奏する効果ではない。(例えば、本願明細書の段落0005には、「切断部の位置等も特に限定されるものではなく、例えば、粘着剤層が形成されたシート端部において均等な位置に設けられていても、不規則な位置に設けられていてもよい。」及び「切断部の長さは粘着剤層の幅方向の端から端までとしてもよいし、粘着剤層の幅方向の途中までとすることも、粘着剤層部分を越えた部分までとすることもできる。」と記載されており、「不規則な位置に設けられ」た場合や、「粘着剤層の幅方向の途中まで」としなかった場合には、必ずしも、上記(ii)の効果は得られないことになる。)
したがって、「切断部」を1個とすることに格別の効果は認められない。

イ.相違点2について
「切断部の形状が、奥端部において曲線状である切り欠き形状」とするのは、本願明細書の段落0005に記載のとおり「粘着シート積層体の上部から1枚の粘着シートを取り出す際のシートの切り裂き防止等の観点」から構成されたものであるが、紙などの破れやすい素材に切れ込みを行う場合、切れ込み端部を円形などの曲線状にすることは、刊行物2?8にも記載されているように周知技術であり、当業者が適宜行う単なる設計事項にすぎない。
そうであるならば、上記相違点については、当業者が容易になし得ることである。

請求人は、審判請求書において、次の主張をしている・
「刊行物2?5、7?8では、スリットや切り込みの端部に小さな円形で打ち抜いたものが開示されていますが、かかる小円形状は、本願発明の切り欠き形状の奥端部に施される形状とは全く異なるものであることは明らかです。……。したがって、これらの刊行物には、本願発明のような、切り欠きの奥端部が曲線状の形状は全く開示も示唆もされていません。」
しかしながら、「刊行物2?5、7?8では、スリットや切り込みの端部に小さな円形で打ち抜いたものが開示されて」いることは請求人も認めており、「端部に小さな円形」であるから「奥端部において曲線状である切り欠き形状」であることは明らかである。「円形」が「曲線状」でないということはできない。

また、請求人は、審判請求書において、次の主張もしている。
「刊行物2?8は、本願発明の分野とは全く異なる分野の発明であり、そのことは明らかです。……。したがって、これらの発明品では、積層したシートを1枚づつ剥がすようなことは全く想定されていません。しかも、使用形態が本願とは全く異なるので発明品の材質や厚み等も本願と異なるものであると推定され、よって、単に明細書中に「引裂き防止」の記載があるからといっても本願の上記技術思想を想起できるものではありません。すなわち、刊行物2?8は、そもそも本願発明の分野とは全く異なる分野の発明であり、刊行物2?8には本願発明の特定の形態の粘着シートが開示されているはずもなく、粘着シート積層体の上部から1枚の粘着シートを剥がす際のシートの切り裂き防止の技術思想など全く開示も示唆もされていません。このように刊行物2?8は発明の分野が全く異なるものですから、これらの刊行物と、異なる発明分野である刊行物1,9?11とを組み合わせることは困難であります。」
しかしながら、切り裂き防止の観点で「奥端部において曲線状である切り欠き形状」とすることは、応力の集中を避けるための手法であり、様々な分野で汎用される周知技術に過ぎないものである。したがって、刊行物2?8に記載されている発明の技術分野が刊行物1発明と直接関係するものではないとしても、そのことをもって直ちに当該周知技術を刊行物1発明に適用することができないということはできない。

したがって、請求人のいずれの主張も受け入れられない。

ウ.相違点3について
まず、「奥端部の位置に前記縁辺と平行な折り線を有」することについては、本願明細書に何も説明がなく、当該構成については単に図面の記載から導きだしたものに過ぎないところ、このような構成としたのは、当該折り線で折り曲げることによって、被着体に貼着した際に折り曲げたシートが佇立するようにするためと認められる。
一方、刊行物1の例えば図1及び2(摘示1-オ)をみれば、「縁辺と平行な折り線」を有しており、当該折り線で折り曲げたシートが佇立するようになっており、また、図11及び12(摘示1-オ)では、シートを佇立させるための折り線は「切断部」の「奥端部」に相当する位置に設けられているといえる。なお、図11及び12(摘示1-オ)において「縁辺」に相当する部分は明確ではないが、「土台部分3」の「メモ部分2」と接する箇所の反対側の位置を結ぶ線を「縁辺」と見ることもでき、そうすると、シートを佇立させるための折り線は「縁辺」と平行になっているということもできる。

次に、「前記切断部を基点として折り線が設けられている」については、刊行物1の図11及び図12(摘示1-オ)においても、ほぼ同じ位置に「折り目4」が設けられているといえる。なお、「切断部」の機能を考慮すると必然的に設けられるものともいえる。

そうすると、この相違点3は実質的に相違点ではないか、刊行物1に記載された発明から当業者が容易に想到し得るものといえる。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-09 
結審通知日 2013-01-16 
審決日 2013-01-29 
出願番号 特願2001-40228(P2001-40228)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C09J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松原 宜史  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 橋本 栄和
目代 博茂
発明の名称 粘着シートおよび粘着シート積層体  
代理人 大島 由美子  

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