• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1271433
審判番号 不服2011-27110  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-15 
確定日 2013-03-12 
事件の表示 特願2006-514313「LEDパネルランプシステム用の方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月18日国際公開、WO2004/100226、平成18年11月 9日国内公表、特表2006-525684〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2004年5月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年5月5日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成19年5月7日に手続補正がされ、拒絶理由の通知に応答して平成23年4月18日に手続補正がされたが、同年8月9日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年12月15日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明の認定
本願の請求項4に係る発明(以下「本願発明」という。) は、平成23年4月18日に補正された本願の請求項4に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「照明システムであって、
主要な放射線放出方向を有する光エンジンを有し、前記光エンジンは、PC基板、前記PC基板の第1の面に設けられた複数個のUV LED、及び前記LEDと反対側の前記PC基板の第2の面に設けられたヒートシンクを有し、
前記放射線放出方向を覆うエンクロージャを有し、
前記エンクロージャは、UV放射線を実質的に反射する少なくとも1つの部分及び前記光エンジンから離隔した蛍光体含有部分を有し、
前記蛍光体含有部分は、前記光エンジンに向いた前記蛍光体の第1の側部に被着された可視光反射層及び前記光エンジンから見て遠くの前記蛍光体の第2の側部に被着されたUV光反射層を含む、照明システム。」

第3 引用例1の記載事項と引用発明の認定
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された特開2001-156338号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の1ないし3の記載が図とともにある。
1 「【請求項1】透光部を有するケース内に、LEDと、前記LEDと外部回路とを電気的に接続するリードとを配設した可視光線発光装置において、
前記LEDが、紫外線を放射する1 又は複数のLEDであり、
前記ケースの透光部が、その内面に、前記LEDから放射される紫外線で励起して可視光線を発光する蛍光体を塗布されてなることを特徴とする可視光線発光装置。」

2 「 【0026】[第4の実施の形態] 図4に示すように、第4の実施の形態の可視光線発光装置では、紫外線を発光するLED1(例えば、GaN系半導体からなるLED)を用い、このLED1上のP、N両電極は、基板9(例えば、白色セラミック等で形成することができる)上に形成した2つのLED実装側導体パターン端子9a、9bにボンデングワイヤー3a、3bを介して電気的に接続されている。
【0027】LED実装側導体パターン端子9a、9bは、スルーホール部9e、9fを通じてLED非実装側の導体パターン端子9c、9dに接続され、外部回路との電気的接続が可能となっている。
【0028】LED1の周囲にはLED発光時に可視光線及び紫外線光を反射するスペーサー部10(例えば、白色セラミック等で形成することができる)が配設され、基板9と一体化して反射体としての役割を果たし、効率的な可視光線の照射を可能としている。スペーサー部10は、予め基板9と一体化したものを用いてもよい。
【0029】この光反射用スペーサー部10には、透光性のガラスからなる透光部11が接着によって配置され、その内面には、LED1から放射される紫外線で励起して可視光線を発光する蛍光体12が塗布されている。」

3 「【0032】[第7の実施の形態] 図7に示すように、第7の実施の形態の可視光線発光装置では、同一基板上に複数のLED1、ボンデングワイヤー3a、3b、及び導体パターン端子9a、9bを直列又は並列配設したこと以外は、第4の実施の形態と同様の構成となっている。」

4 上記3で参照されている図7は、次のとおりのものである。
【図7】


上記2に記載された「第4の実施の形態」及び上記3に記載された「第7の実施の形態」 は、上記1に記載された「可視光線発光装置」の実施の形態である。
上記3によれば、「第7の実施の形態」は、同一基板上に複数のLED1、ボンデングワイヤー3a、3b、及び導体パターン端子9a、9bを直列又は並列配設したこと以外は、「第4の実施の形態」と同様の構成となっている。
上記1によれば、「透光部を有するケース」内に、LED及びLEDと外部回路とを電気的に接続するリードとが配設されている。
一方、上記2及び上記3によれば「透光部11」が接着された「光反射用スペーサー部10」は、LED1の周囲に配設されており、LED1、ボンデングワイヤー3a、3b、及び導体パターン端子9a、9bを配設した「基板9」と一体化して反射体としての役割を果たす。
よって、上記1に記載された「可視光線発光装置」の「透光部を有するケース」は、「第7の実施の形態」において、「光反射用スペーサー部10」、「透光部11」及び「基板9」を合わせたものに相当する。

上記2によれば、LED1の周囲に配設された「光反射用スペーサー部10」は、LED発光時に可視光線及び紫外線光を反射する。

図7からは、基板9の透光部11と対向する面上に、複数のLED1光反射用スペーサー部10及び導体パターン端子9a、9bが配設されていることが看取できる。

してみると、上記1ないし3の記載及び図7を含む引用例1には、「第7の実施の形態」として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「光反射用スペーサー部10、前記光反射用スペーサー部10に接着される透光部11、及び基板9からなるケース内に、紫外線を放射する複数のLED1と、前記複数のLED1と外部回路とを電気的に接続するリードとを配設した可視光線発光装置において、
前記複数のLED1、前記光反射用スペーサー部10及び導体パターン端子9a、9bが、前記基板9の透光部11と対向する面上に配設され、
前記光反射用スペーサー部10は、前記複数のLED1の周囲に配設され、前記複数のLED1発光時に可視光線及び紫外線光を反射し、
前記透光部11は、その内面に、前記複数のLED1から放射される紫外線で励起して可視光線を発光する蛍光体12を塗布されてなる、
可視光線発光装置。」

第4 引用例2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、優先日前に頒布された特開平11-87770号公報(以下「引用例2」という。)には、次の1及び2の記載がある。
1 「【請求項5】配線基板と、
前記配線基板上に設けられた紫外線を放出する複数の半導体発光素子と、
前記配線基板の周囲を覆うように設けられた透光性を有する外囲器と、を備え、さらに、
前記外囲器の内壁面には蛍光体が設けられ、前記半導体発光素子が放出する前記紫外線を吸収して、前記紫外線よりも長い波長を有する2次光を放出するようにしたことを特徴とする照明装置。
(【請求項6】は省略)
【請求項7】前記2次光は、可視光であることを特徴とする請求項1?6のいずれか1つに記載の照明装置。
(【請求項8】ないし【請求項11】は省略)
【請求項12】前記半導体発光素子と、前記蛍光体との間に、前記紫外線を透過し、前記蛍光体から放出される前記2次光を反射するような波長選択性を有する第1の光反射膜をさらに備えたことを特徴とする請求項1?11のいずれかに記載の照明装置。
【請求項13】前記蛍光体からみて前記半導体発光素子と反対側に、前記紫外線を反射し、前記蛍光体から放出される前記2次光を透過するような波長選択性を有する第2の光反射膜をさらに備えたことを特徴とする請求項1?12のいずれか1つに記載の照明装置。」

2 「【0062】次に、本発明の第9の実施の形態について説明する。
図10は、本発明の第9の実施の形態に係る半導体発光装置を表す模式図である。すなわち、本発明による半導体発光装置500は、紫外線を放出する半導体発光素子132と第1の光反射部510、波長変換部520、第2の光反射部530、および光吸収部540がこの順序で設けられている。
【0063】本実施形態における第1の光反射部510は、半導体発光素子132から放出される紫外線を透過し、波長変換部520において波長変換され放出される可視光などの2次光は反射するような波長選択性を有する。すなわち、半導体発光素子132からの紫外線に対する反射率は低く、波長変換部520からの2次光の波長の光に対する反射率が高くなるように構成されている。
(【0064】は省略。)
【0065】波長変換部520は、半導体発光素子132から放出された紫外線を吸収して、より長波長の2次光を放出する役割を有する。その構成としては、例えば、所定の媒体に蛍光体を含有させた層とすることができる。この蛍光体は、半導体発光素子132から放出される紫外線を吸収して励起され、所定の波長を有する2次光を放出する。例えば、半導体発光素子132から放出される紫外線が、波長約330nmの光であり、蛍光体により波長変換された2次光は、可視光あるいは赤外線領域の所定の波長を有するようにすることができる。
(【0065】の後段と【0066】は省略。)
【0067】次に、第2の光反射部530について説明する。光反射部530は波長選択性を有する反射鏡であり、波長変換部520から入射する光のうちで、紫外線を反射し、2次光を透過させる役割を有する。すなわち、光反射部530は、紫外線の波長の光を反射し、2次光の波長の光を透過するカット・オフ・フィルタ、あるいはバンドパス・フィルタとして作用する。その具体的な構成としては、例えば、前述したようなブラッグ反射鏡とすることができる。
【0068】このような光反射部530を配置することにより、波長変換部520を透過して漏洩した紫外線を高い効率で反射して、波長変換部520に再び戻すことができる。このようにして戻された紫外線は、波長変換部520において波長変換され、2次光として、光反射部530を透過する。つまり、波長変換部520の光出射側に光反射部530を配置することにより、紫外線の外部への漏洩を防止するとともに、波長変換部520を透過した紫外線を戻して高い効率で波長変換することができるようになる。また、外部からの紫外線も光反射部530により反射できるので、外乱光により波長変換部520が励起されて不要な発光を生ずるという問題を解消することもできる。」

上記1において、請求項5を引用する請求項7を引用する請求項12を引用する請求項13は、先行する請求項を引用しない独立形式で表現すると、次の3の記載のとおりである。
3 「配線基板と、
前記配線基板上に設けられた紫外線を放出する複数の半導体発光素子と、
前記配線基板の周囲を覆うように設けられた透光性を有する外囲器と、を備え、
前記外囲器の内壁面には蛍光体が設けられ、前記半導体発光素子が放出する前記紫外線を吸収して可視光を放出し、
前記半導体発光素子と、前記蛍光体との間に、前記紫外線を透過し、前記蛍光体から放出される前記可視光を反射するような波長選択性を有する第1の光反射膜を備え、
前記蛍光体からみて前記半導体発光素子と反対側に、前記紫外線を反射し、前記蛍光体から放出される前記可視光を透過するような波長選択性を有する第2の光反射膜を備えた、照明装置。」

上記3における「蛍光体」、「第1の光反射膜」及び「第2の光反射膜」が、それぞれ、上記2における「波長変換部520」、「第1の光反射部510」及び「第2の光反射部530」に相当する。

第5 対比
引用発明と本願発明とを対比する。
引用発明の
「可視光線発光装置」、
「『導体パターン端子9a、9b』が面上に配設された『基板9』」、
「『基板9の透光部11と対向する面上に配設され』た『紫外線を放射する複数のLED1』」、
「『複数のLED1の周囲に配設され、前記複数のLED1発光時に可視光線及び紫外線光を反射』する『光反射用スペーサー部10』」及び「光反射用スペーサー部10に接着される透光部11」、
「『その内面に、LEDから放射される紫外線で励起して可視光線を発光する蛍光体12を塗布されてなる』『透光部11』」
及び
「『複数のLED1の周囲に配設され、前記複数のLED1発光時に可視光線及び紫外線光を反射』する『光反射用スペーサー部10』」
は、それぞれ、本願発明の
「照明システム」、
「PC基板」、
「PC基板の第1の面に設けられた複数個のUV LED」、
「放射線放出方向を覆うエンクロージャ」、
「蛍光体含有部分」
及び
「UV放射線を実質的に反射する少なくとも1つの部分」
に相当する。

引用発明の「PC基板」(基板9)と「PC基板の第1の面に設けられた複数個のUV LED」(「基板9の透光部11と対向する面上に配設され」た「紫外線を放射する複数のLED1」)とを合わせたものは、紫外線を放射する機能を担っているから、本願発明の「光エンジン」に相当する。 ただし、本願発明の「光エンジン」は、ヒートシンクを有しているのに対して、引用発明の「光エンジン」は、ヒートシンクを有していない。

引用発明の「光エンジン」において、複数のLED1は、基板9の透光部11と対向する面上に配設されているので、複数のLED1が放射する紫外線は透光部11に向かうから、引用発明の「光エンジン」は、「主要な放射線放出方向を有する」といえる。

引用発明の「エンクロージャ」は「光反射用スペーサー部10」と「透光部11」からなる。そして、「光反射用スペーサー部10」は、複数のLED1の周囲に配設され、前記複数のLED1発光時に可視光線及び紫外線光を反射するものであり、「透光部11」は、「光反射用スペーサー部10」に接着されている。
よって、引用発明の「エンクロージャ」は、「放射線放出方向を覆う」ものといえる。

引用発明において、複数のLED1は、基板9の透光部11と対向する面上に配設されているから、複数のLED1と透光部11は離隔している。

してみると、本願発明と引用発明とは、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点1>及び<相違点2>で相違する。
<一致点>
「照明システムであって、
主要な放射線放出方向を有する光エンジンを有し、前記光エンジンは、PC基板、及び前記PC基板の第1の面に設けられた複数個のUV LEDを有し、
前記放射線放出方向を覆うエンクロージャを有し、
前記エンクロージャは、UV放射線を実質的に反射する少なくとも1つの部分及び前記光エンジンから離隔した蛍光体含有部分を有する、
照明システム。」

<相違点1>
本願発明の「蛍光体含有部分」は、「光エンジンに向いた蛍光体の第1の側部に被着された可視光反射層及び前記光エンジンから見て遠くの前記蛍光体の第2の側部に被着されたUV光反射層を含む」のに対して、引用発明の「蛍光体含有部分」(「その内面に、LEDから放射される紫外線で励起して可視光線を発光する蛍光体12を塗布されてなる」「透光部11」)は、蛍光体12を塗布されてなるから上記「蛍光体」は有しているが、上記「光エンジンに向いた蛍光体の第1の側部に被着された可視光反射層及び前記光エンジンから見て遠くの前記蛍光体の第2の側部に被着されたUV光反射層」を含まない点。

<相違点2>
本願発明は、「光エンジン」が「LEDと反対側のPC基板の第2の面に設けられたヒートシンクを有し」ているのに対して、引用発明は、ヒートシンクを有していない点。

第6 判断
<相違点1>及び<相違点2>について検討する。
1 <相違点1>について
上記「第4」によれば、引用例2には、半導体発光素子の放射する紫外線を蛍光体で可視光に変換する装置において、半導体発光素子に向いた蛍光体の第1の側部に紫外線を透過し、可視光を反射する膜を備え、半導体発光素子から見て遠くの前記蛍光体の第2の側部に紫外線を反射し、可視光を透過する膜を設けることが記載されている。
よって、引用発明において、「(その内面に、LEDから放射される紫外線で励起して可視光線を発光する蛍光体12を塗布されてなる)透光部11」として、引用例2の上記構成を採用して、本願発明の<相違点1>に係る構成を備えることは、当業者が引用例2の記載に基づいて、容易に想到し得たことである。

2 <相違点2>について
発光素子を搭載する基板の発光素子搭載面とは反対側にヒートシンクを設けることは周知技術である。
例えば、優先日前に頒布された米国特許第5634711号明細書のFIG.1に示された光学機器optical assembly 18 の基板substrate 24 は、片面に複数の発光ダイオードLED7s 22 、もう一方面にヒートシンクheat sink 26 が設けられている。
また、優先日前に頒布された特開2002-33011号公報には次の記載がある。
「【請求項1】 回路基板および該基板上に二次元的に並べられて実装された複数個の発光素子を有し、かつ該基板の裏側に一または複数個の凸状部を有する面発光素子モジュールと、一または複数個の凹状部が表面に形成されたヒートシンクとを備える発光装置であって、
回路基板の裏面とヒートシンクの表面とが接し、かつ凸状部が凹状部に挿入された状態で、ヒートシンクが面発光素子モジュールに固定されていることを特徴とする発光装置。」
よって、引用発明において、本願発明の<相違点2>に係る構成を備えることは、当業者が周知技術に基づいて、容易に想到し得たことである。

3 まとめ
上記1及び2の検討によれば、引用発明において、本願発明の<相違点1>及び<相違点2>に係る構成を備えることは、当業者が引用例2の記載及び周知技術に基づいて、容易に想到し得たことである。
また、かかる構成を採用することによる効果は、当業者が予測し得る程度のものである。

第7 むすび
したがって、本願発明は、当業者が引用発明、引用例2の記載及び周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-10 
結審通知日 2012-10-15 
審決日 2012-10-29 
出願番号 特願2006-514313(P2006-514313)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 知久  
特許庁審判長 江成 克己
特許庁審判官 星野 浩一
吉野 公夫
発明の名称 LEDパネルランプシステム用の方法及び装置  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 弟子丸 健  
代理人 大塚 文昭  
代理人 井野 砂里  
代理人 吉野 亮平  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ