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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1271492
審判番号 不服2012-14927  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-03 
確定日 2013-03-15 
事件の表示 特願2009- 80166「高周波電極の接続方法を改善したウエハ保持体及びそれを搭載した半導体製造装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月14日出願公開、特開2010-232532〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成21年3月27日の特許出願であって、平成23年12月7日付けで拒絶の理由が通知され、平成24年2月9日に手続補正がなされ、同年5月2日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同年8月3日に本件審判の請求とともに手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ、同年9月21日付けで審尋がなされたが、指定期間内に何ら応答がなかったものである。

第2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について補正をするものであって、請求項1について、補正前後の記載は、以下のとおりである。

(1)補正前
「チャンバー内に設置され、高周波電極回路が埋設されたウエハ保持部と、該ウエハ保持部をそのウエハ載置面の反対側の面から支持する支持部材と、該支持部材に関してウエハ保持部の反対側に設けられたアース部品と、該支持部材の内部に挿通され、該高周波電極回路と該アース部品とを電気的に接続する導電性接続部品とを有するウエハ保持体であって、該導電性接続部品は鉛直方向に変形能を有し、かつ、導電性接続部品の主たる電流パスを担う各接続部分が面接触で固着していることを特徴とするウエハ保持体。」

(2)補正後
「チャンバー内に設置され、高周波電極回路が埋設されたウェハ保持部と、該ウェハ保持部をそのウェハ載置面の反対側の面から支持する支持部材と、該支持部材に関してウェハ保持部の反対側に設けられたアース部品と、該支持部材の内部に挿通され、該高周波電極回路と該アース部品とを電気的に接続する導電性接続部品とを有するウェハ保持体であって、該導電性接続部品は前記高周波電極回路に接続する鉛直方向に延在する金属製の剛性部材(金属ロッド)と、該金属ロッドの下端部に取り付けられた水平方向に延在する可とう性の金属リードからなり、該金属リードの他端がアース部品に接続され、該導電性接続部品は鉛直方向に変形能を有し、かつ、導電性接続部品の主たる電流パスを担う各接続部分が面接触で固着していることを特徴とするウェハ保持体。」

2.補正の適否
本件補正の請求項1についての補正は、導電性接続部品について、「高周波電極回路に接続する鉛直方向に延在する金属製の剛性部材(金属ロッド)と、該金属ロッドの下端部に取り付けられた水平方向に延在する可とう性の金属リードからなり、該金属リードの他端がアース部品に接続され」るという事項を付加するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か(いわゆる独立特許要件)について検討する。

(1)補正発明
補正発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、上記1.(2)のとおりのものと認める。

(2)刊行物に記載された発明
これに対し、原査定の拒絶理由で引用された刊行物である特開2006-352114号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。

(ア)段落0001?0005
「【0001】
本発明の実施形態は、基板処理チャンバ内に基板を保持する為の基板支持体に関する。
【0002】
電子回路とディスプレイ製作において、半導体、誘電体、導電材料が、シリコンウエハやガラスのような基板上に形成される。材料は、化学気相堆積(CVD)、物理的気相堆積(PVD)、イオン注入、酸化および窒化処理により形成可能である。・・・。
【0003】
処理中、基板受容面を有する基板支持体上に基板は保持される。支持体は、ガスエナジャイザの一部として機能すると共に、基板を静電的に保持する為に帯電可能な埋め込み電極を有することができる。また、支持体は、処理中、基板を加熱する為に抵抗性ヒータ、更に/又は、基板を冷却又は支持体を冷却する為にウエハ冷却システムを有することができる。そのため、支持体は、通常、複数の電気コネクタと他の導電性構造体を有し、これらは、抵抗性ヒータ、電極、他の装置に電力を供給する為に中空シャフトを通って伸びている。・・・。
【0004】
支持体内の電気コネクタ、特に、電極に電力や電気的な接地を提供するコネクタに伴う一つの問題は、支持体のシャフト内部で、コネクタを通る電流が電気的なアークやグロー放電を生じるときに発生する。例えば、電気的アークは、電極を接地する為に使用されるRFコネクタと、取り囲むシャフトの壁との間で発生可能である。・・・。
【0005】
そのため、プラズマ環境下で電気アーキングを減らす基板支持体用電気コネクタを有することが望ましい。また、交換や修理を要することなく、多数の処理サイクル中にRF電流を信頼性良く通すことができる電気コネクタを有することが望ましい。また、電気的接触を失うことなく、コネクタ構造体の熱膨張を許容する電気コネクタを有することが望ましい。更に、容易に取り外し、交換可能な電気コネクタを有することが望ましい。」

(イ)段落0012?0015
「【0012】
図1に例示されたように、本発明に従う電気コネクタ20の一実施形態は、一実施形態が図5に示されている基板処理チャンバ42内の処理領域40内のチャンバコンポーネント32の端子28に外部電源24を接続するのに有用である。・・・。典型的に、電気コネクタ20は、コンポーネント32の端子に高電圧を供給または接地する為に使用されるが、これらは、コンポーネントのアーキング、グロー放電に対する露出、他のプラズマ露光を生じ、これらは、コンポーネントを腐食または劣化させる。電気コネクタ20は、コンポーネント32との電気接触を維持する為に、コネクタ20と端子28との間の電気接触の腐食や浸食を防止または減少させるのに特に有用である。
【0013】
一変形例において、電気コネクタ20は、電極用電源44を備える外部電源24に接続する為に使用され、電極用電源44は、交流または直流という形で電力をチャンバ内の電極48の端子28に供給する。例えば、電極用電源44は、チャンバ内の第1電極と第2電極48a、b間に高周波電圧を印加することができ、チャンバ42内で処理ガスからプラズマを生成する。第1電極48aは、チャンバ42の側壁60や天井58のような包囲壁54により形成することができ、これは、導電性材料(例えば、アルミニウム)から形成され;基板支持体50内の第2電極48bから離れて配置され、基板支持体50は、電気的に接地されるかフロートされている。・・・。
【0014】
・・・。
【0015】
一変形例において、端子26は、基板支持体50の抵抗性ヒータ64或いは電極48の一又は両方から外に伸びる長いロッド68として形成される。各端子用ロッド68は、2つの端部を有し、第1端部70aは、電極48又は抵抗性ヒータ64に直接接続されるか、・・・。」

(ウ)段落0022?0024
「【0022】
図4を参照すると、外部電源24は、柔軟なワイヤストラップ124により電気コネクタ20に接地、或いは、コネクタ20を通じて電圧又は電流を端子26まで通す為に接続される。柔軟なワイヤストラップ124は、締付けアセンブリ自身がワイヤストラップ124を電気コネクタ20に結合するように、締付けアセンブリ108によりピンサーアーム74a、74b、コネクタ20に取付可能である。この変形例において、ワイヤストラップ124は、一対のストラップ穴126を有し、これらは、締付けアセンブリ108のネジやナットが通過できるように、ピンサーアーム74a内のスルーホール104a、104bと同一の距離だけ離間されて配置されている。・・・。
【0023】
・・・。
【0024】
電気コネクタ20は、コネクタ20又は端子26付近のグロー放電やアーキングを減少可能な安定した電気接続を提供するが、これは、端子用ロッド68の伸長された長さが全体のアセンブリを、プラズマが形成される処理領域40から遠く離れて位置させるからである。さらに、互いに接続されるが中空シャフト148に取り付けられない端子用ロッド68、コネクタ20、柔軟なワイヤストラップ124は、セラミック製ディスク140内の電極48bに応力を与えることなく、放射方向及び長手方向の両方向で、自由に熱膨張可能である。さらに、唯一、単一の締付けアセンブリ108だけが、端子用ロッド68を電気コネクタ20に接続する為に使用可能であり、また、ワイヤストラップ124を、包囲シャフト148内でグランドに接続する。そのため、このコネクタアセンブリは、セラミック製ディスク140内の電極48bにおける低い熱応力、低腐食という利点を提供する。」

(エ)図4?5
基板支持体50は、その基板載置面の反対側の面から、中空シャフト148により支持されること、
中空シャフト148の基板支持体50と反対側に、ワイヤストラップ124を有する電気コネクタ20が設けられ、中空シャフト148の内部には、第2電極48bと該電気コネクタ20とを電気的に接続し鉛直方向に延在する端子用ロッド68が挿通されていること、
ワイヤストラップ124の各接続部分が電気コネクタ20の外表面に固着されていること、
が看取できる。

(オ)図1
電気コネクタ20の外表面が平面であることが看取できる。

ここで、(エ)、(オ)より、ワイヤストラップ124の各接続部分は、電気コネクタ20に面接触していることは明らかである。

これらを、補正発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認める。

「基板処理チャンバ42内に設置され、高周波電圧が印加される第2電極48bが埋設された基板支持体50と、該基板支持体50をその基板載置面の反対側の面から支持する中空シャフト148と、該中空シャフト148の内部に挿通され、該第2電極48bと該電気コネクタ20とを電気的に接続し鉛直方向に延在する端子用ロッド68とを有する基板支持体50であって、該端子用ロッド68の下端部に可とう性のワイヤストラップ124が取り付けられ、該ワイヤストラップ124の他端が接地を提供するため中空シャフト148に接続され、端子用ロッド68、コネクタ20、柔軟なワイヤストラップ124は、第2電極48bに応力を与えることなく、放射方向及び長手方向の両方向で、自由に熱膨張可能であり、かつ、ワイヤストラップ124の各接続部分が面接触で固着している基板支持体50。」

(3)対比
補正発明と刊行物1発明とを、技術常識を踏まえ、対比する。
刊行物1発明の「基板処理チャンバ42」は補正発明の「チャンバー」に相当し、同様に「高周波電圧が印加される第2電極48b」は「高周波電極回路」に、「基板」は「ウェハ」に、「中空シャフト148」は「支持部材」に、「基板支持体50」は「ウェハ保持体」に、「ワイヤストラップ124」は「金属リード」に、「端子用ロッド68、コネクタ20、柔軟なワイヤストラップ124は、第2電極48bに応力を与えることなく、放射方向及び長手方向の両方向で、自由に熱膨張可能であり」は「導電性接続部品は鉛直方向に変形能を有し」に、それぞれ相当する。
刊行物1発明の「基板支持体50」の基板載置面を含み、第2電極48bが埋設された部分は、補正発明の「ウェハ保持部」に相当する。
刊行物1発明の「端子用ロッド68」と、補正発明の「金属製の剛性部材(金属ロッド)」とは、「端子ロッド」である限りにおいて一致する。
刊行物1発明の「電気コネクタ20」の「ワイヤストラップ124」と「端子用ロッド68」は全体として、補正発明の「導電性接続部品」に相当する。
刊行物1発明の「接地を提供するため中空シャフト148に接続され」と、補正発明の「アース部品に接続され」とは、「アースのために接続され」である限りにおいて一致する。

したがって、補正発明と刊行物1発明とは、次の点で一致している。
「チャンバー内に設置され、高周波電極回路が埋設されたウェハ保持部と、該ウェハ保持部をそのウェハ載置面の反対側の面から支持する支持部材と、該支持部材の内部に挿通され、該高周波電極回路と該アース部品とを電気的に接続する導電性接続部品とを有するウェハ保持体であって、該導電性接続部品は前記高周波電極回路に接続する鉛直方向に延在する端子ロッドと、該端子ロッドの下端部に取り付けられた可とう性の金属リードからなり、該金属リードの他端がアースのために接続され、該導電性接続部品は鉛直方向に変形能を有し、かつ、導電性接続部品の各接続部分が面接触で固着しているウェハ保持体。」

そして、補正発明と刊行物1発明とは、以下の点で相違している。
相違点1:アースについて、補正発明のウェハ保持体は「支持部材に関してウェハ保持部の反対側に設けられたアース部品」を有し、導電性接続部品が「アース部品」に接続されるが、刊行物1発明のウェハ保持体は導電性接続部品が「接地を提供するため中空シャフト148(支持部材)に接続」される点。
相違点2:端子ロッドについて、補正発明は「金属製の剛性部材(金属ロッド)」であるが、刊行物1発明は「端子用ロッド68」である点。
相違点3:金属リードについて、補正発明は「水平方向に延在する」ものであるが、刊行物1発明はそのように言えるものであるか明らかでない点。
相違点4:接続部分について、補正発明は「主たる電流パスを担う」ものであるが、刊行物1発明は明らかでない点。

(4)相違点の検討
相違点1について検討する。
刊行物1発明の「中空シャフト(支持部材)」は、「接地を提供するため」のものであるから、「アース部品」といえるものであり、この点は、実質的相違点ではない。
仮に、相違点であるとしても、刊行物1発明も、接地(アース)を行うことから、そのための「アース部品」を設けることは、設計的事項にすぎない。

相違点2について検討する。
刊行物1発明の「端子用ロッド」は導電性のものであるところ、導電性物質として「金属」は例示するまでもなく周知である。
よって、刊行物1発明の「端子用ロッド」を「金属製の剛性部材(金属ロッド)」とすることに、困難性は認められない。

相違点3について検討する。
刊行物1発明の「ワイヤストラップ(金属リード)」も、図4を参照すると、ワイヤストラップ124は、ロッド68の下端部に取り付けられ、そこから水平方向にも延びており、「水平方向に延在する」ものと解しうるから、この点は、実質的相違点ではない。
仮に、相違点であるとしても、面接触する接続部品を「水平方向に延在する」ように設けることは、特開2008-147142号公報の板ばね6、特開2000-230553号公報の板ばね25、特開平11-16639号公報の接地用板ばね13にみられるごとく周知であるから、接続部品を「水平方向に延在する」ようにすることに困難性は認められない。

相違点4について検討する。
刊行物1発明の接続部分も「面接触」であって、確実な導通が可能な構造であるから、「主たる電流パスを担う」ようにすることは、必要に応じてなしうる設計的事項にすぎない。

また、これら相違点を総合しても、格別な技術的意義が生じるとは認められない。

以上のことから、補正発明は、刊行物1発明、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし5に係る発明は、平成24年2月9日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2.1.(1)に示す請求項1に記載されたとおりである。

2.刊行物等
これに対して、原査定の際にあげられた刊行物及びその記載内容は、上記第2.2.(2)に示したとおりである。

3.対比・検討
本願発明は、補正発明において付加された事項を削除するものである。
そうすると、本願発明も、上記第2.2.(4)と同様の理由により、刊行物1発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-10 
結審通知日 2013-01-16 
審決日 2013-01-29 
出願番号 特願2009-80166(P2009-80166)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 浅野 麻木  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 長屋 陽二郎
千葉 成就
発明の名称 高周波電極の接続方法を改善したウエハ保持体及びそれを搭載した半導体製造装置  
代理人 小村 修  
代理人 中野 稔  
代理人 緒方 大介  
代理人 田川 昌宏  

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