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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02P
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02P
管理番号 1271634
審判番号 不服2011-10940  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-24 
確定日 2013-03-19 
事件の表示 特願2007-310609「モーターの制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年12月18日出願公開、特開2008-306915〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成19年11月30日(特許法第43条の2第1項に規定するパリ条約の例による優先権主張 2007年6月7日、台湾)の出願であって、平成22年8月19日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成22年8月23日)、これに対し、平成22年11月15日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年1月17日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成23年1月24日)、これに対し、平成23年5月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成24年1月12日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成24年1月17日)、これに対し、平成24年7月17日付で意見書が提出されたものである。


2.本願
平成22年11月15日付手続補正書の特許請求の範囲には、以下の事項が記載されている。

『【請求項1】
モーターの制御装置であって、
前記モーターが回転する時の磁極の変化を検出し、且つ180度の位相差を有する第一サブ検出信号と第二サブ検出信号を発生する検出回路と、
前記検出回路と電気接続され、前記第一サブ検出信号を受けて、該第一サブ検出信号に基づいて、この第一サブ検出信号と位相角度がずれた第一サブ移相信号を発生する第一位相調整ユニット,及び前記第二サブ検出信号を受けて、該第二サブ検出信号に基づいて、この第二サブ検出信号と位相角度がずれた第二サブ移相信号を発生する第二位相調整ユニットを含む移相回路と、
前記移相回路と電気接続され、180度の位相差を有する前記第一サブ移相信号と前記第二サブ移相信号を受けて、該第一サブ移相信号と前記第二サブ移相信号を比較し、比較信号を発生する比較回路と、
前記比較回路及び前記モーターと電気接続され、前記比較信号を受けて、該比較信号に基づいて、制御信号を発生し、該制御信号によって前記モーターの回転速度を制御する制御回路とを含むことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記検出回路は、ホールセンサを含むことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第一位相調整ユニットは、
その一端が前記検出回路と電気接続され、前記第一サブ検出信号を受ける第一レジスタと、
その一端が前記第一レジスタの前記一端と電気接続され、その他端が前記第一レジスタの他端と電気接続される第一コンデンサと、
その一端が前記第一レジスタの前記他端と電気接続され、且つ前記第一サブ移相信号を伝送する第二レジスタと、
その一端が前記第二レジスタの前記一端と電気接続され、その他端が前記第二レジスタの他端と電気接続される第二コンデンサと、
その一端が前記第二レジスタの前記他端と電気接続され、その他端が接地する第三レジスタとを含むことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第二位相調整ユニットは、
その一端が前記検出回路と電気接続され、前記第二サブ検出信号を受ける第四レジスタと、
その一端が前記第四レジスタの前記一端と電気接続され、その他端が前記第四レジスタの他端と電気接続される第三コンデンサと、
その一端が前記第四レジスタの前記他端と電気接続され、且つ前記第二サブ移相信号を伝送する第五レジスタと、
その一端が前記第五レジスタの前記一端と電気接続され、その他端が前記第五レジスタの他端と電気接続される第四コンデンサと、
その一端が前記第五レジスタの前記他端と電気接続され、その他端が接地する第六レジスタとを含むことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記比較回路は、第一入力端子と、第二入力端子と、出力端子とを有する演算増幅器を含み、前記第一入力端子と前記第二入力端子とは、前記移相回路にそれぞれ電気接続されて前記第一サブ移相信号と前記第二サブ移相信号を受け、前記出力端子は、前記比較信号を伝送することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記比較信号の波形は方形波であることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記検出信号及び前記第一サブ移相信号と第二サブ移相信号の位相差は、前記検出信号及び前記比較信号の位相差と等しいことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御回路は、プログラム可能なチップ、集積回路、プロセッサ、デジタル信号処理器、マイクロコントローラ、或いはマイクロプロセッサチップであることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。』


3.当審の拒絶の理由
当審で平成24年1月12日付で通知した拒絶の理由の概要は以下のとおりである。

『本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。


(1)この出願の発明の構成が不明である。例えば、図1に符号12で示されるモーターは、固定子であるのか回転子であるのか不明(通常、ホール素子を用いるモータは永久磁石型同期モータであり、回転子が永久磁石である。図1のモーター12は、巻線用のヨーク部と思われる箇所及び積層鉄心固定用の穴と思われる箇所があることから判断して固定子であると考えられるが判然としない。仮に、モーター12が固定子であるとすると、通常ホール素子は回転子の磁場の変化を検出するが、何故固定子の磁場を検出するのか不明である。)であり、仮に固定子であるならば、回転子がどの様な形状で固定子に対してどの様に配置されるのか不明であり、仮に回転子であるならば、モーター12の形状を永久磁石でどの様にすれば形成できるのか不明であり、固定子がどの様な形状で回転子に対してどの様に配置されるのか不明である。
更に、【0009】に、「前記移相回路及び前記比較回路を増加し」とあるから、従来の制御装置は単純に図2の制御装置2から移相回路及び比較回路を無くしたものと考えられるが、従来の制御装置はどの様な構成であったのか特定できず不明であり、仮に従来の制御装置が単純に図2の制御装置2から移相回路及び比較回路を無くしたものであるとすると、検出回路の出力が制御回路の入力となり、比較回路の出力を制御回路の入力とする本願発明とは制御回路の入力信号が異なるが、入力信号が異なる従来の制御回路と本願の制御回路を何故同じ構成とするのか不明であり、その際制御回路はどの様な制御を行うのか不明であり、しかも、本願発明のように制御回路が高レベルと低レベルしか認識しない(1と0しか認識しない)のであれば、従来技術のようにサージがあったとしても、図2のサージ部分は1または0と認識し、従来のモータの制御装置による制御にサージは何等影響しないものと考えるがこの点不明である。
更に、【0007】に、「センサの設置位置を考慮する必要のないモーターの制御装置」とあるが、例えば図1において、ホール素子はモーター12の周囲であれば何処でも良いのか否か不明(P1、P2の位置に限られず、モーター12の周囲360°何処でも良いのか)であり、モーター12の形状は図1のものに限られないから、如何なる形状のものでもホール素子の配置は任意となるのか否か不明(例えば図1の一点鎖線上のT字型磁路のうちTの横棒がないものでも良いのか)である。
更に、図5において、位相角度θはどの様な物理的意義があるのか記載がないため全く不明であり、位相角度θの大きさはどの様にして決定するのか不明であり、しかも、本願発明のモータの回転速度は任意であるから、回転速度の設定値は運転時に様々な値を採るが、θを作り出す移相回路は抵抗とコンデンサから構成されるため、定まった一定の値しか採れず、回転速度の設定値が任意に変化した際どの様に対処するのか不明である。
更に、【0004】に、背景技術として「サージ(SURGE)を発生しやすくなり(図2に図示)」とあり、サージを生じやすい状態を改善することが本願発明の課題と考えられるが、図5S1にあるように、本願発明はホール素子の出力を2出力としたことでサージが発生していないからサージを生じやすい状態を改善しているにもかかわらず、何故移相回路を用いて図5S2のようにサージをわざわざ発生させているのか不明であり、しかもサージが発生していない検出回路の出力をRとCから構成される移相回路に入力されることで何故図5S2のようにサージが発生するのか不明である。
更に、請求項1において、モーターの制御装置とあるから、ブラシと整流子を有する直流機や誘導機でも適用可能となるが、何故直流機や誘導機に適用するのか、又どの様に適用するのか不明であり、また、ホール素子を有していないから、そもそもサージ発生という従来の課題が存在しないものと考えるが、従来の課題はホール素子の排除で解決したのか否か不明である。』


4.当審の判断
平成24年7月17日付意見書も含めて検討したが、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が以下の点で不備である。

(1)図1に符号12で示されるモーターは、所謂モーターの全てを示しておらず、固定子であるのか回転子であるのか不明であり、仮に固定子であるならば、回転子がどの様な形状で固定子に対してどの様に配置されるのか図面さえ示されておらず不明であり、又、通常ホール素子は回転子の磁場の変化を検出するが、何故固定子の磁場を検出するのか物理的根拠が不明であり、仮に回転子であるならば、モーター12の形状を永久磁石でどの様にすれば形成できるのか不明であり、又、固定子がどの様な形状で回転子に対してどの様に配置されるのか図面さえ示されておらず不明である。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1-8に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、このモーターを用いる請求項1-8の記載は明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(2)【0009】に、「本発明の前記モーターの制御装置は、前記移相回路及び前記比較回路を増加し」とあるから、従来の制御装置は図3の制御装置2から移相回路及び比較回路を無くしたものと考えられるが、従来の制御装置はどの様な構成であったのか何ら開示が無いので構成を特定できず不明である。仮に従来の制御装置が図3の制御装置2から移相回路及び比較回路を無くしたものであるとすると、検出回路21の出力が制御回路24の入力となるが、検出回路21の出力は2出力であり、比較回路23の出力は1出力であるから、検出回路21の2出力が制御回路24の入力となる従来技術と、比較回路23の1出力が制御回路24の入力となる本願発明とは、制御回路の入力信号が異なるが、入力信号が異なる従来の制御回路と本願の制御回路を何故同じ構成とするのか不明であり、その際制御回路はどの様な制御を行うのか不明である。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1-8に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、これら検出回路、移相回路、比較回路、制御回路を用いる制御装置が記載された請求項1-8の記載は明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(3)【0007】に、「センサの設置位置を考慮する必要のないモーターの制御装置」とあるが、例えば図1において、ホール素子はモーター12の周囲であればモーター12の周囲360°の何処でも良いのか否か不明(例えば、モータの凸極形固定子に発生させる磁場は、永久磁石回転子型の場合、永久磁石回転子が回転し、永久磁石回転子の磁場が固定子凸極の中心で最高となる直前までの位置にホール素子を配置しなければ、固定子巻線の適切な転流が実現できない。)であり、また、モーター12の形状は図1のものに限られるとの記載はないから、如何なる形状のモーターでもホール素子の配置は任意となるのか否か不明である。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1-8に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、このホール素子を用いる制御装置が記載された請求項1-8の記載は明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(4)図5において、位相角度θはどの様な物理的意義があるのか記載がないため不明であり、又、位相角度θの大きさはどの様にして決定するのか記載がないため不明である。また、本願発明のモータの回転速度は、特許請求の範囲、【0006】等の記載から判断して任意であるから、回転速度は運転時に様々な値となるが、θを作り出す移相回路は抵抗とコンデンサから構成されるため、定まった一定の値しか採れず、回転速度の設定値が任意に変化した際、当該移相回路でどの様に対処して、モーターをどの様に制御して当該設定値に対応するのか記載が無く不明である。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1-8に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、このホール素子を用いる制御装置が記載された請求項1-8の記載は明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(5)図5S1にあるように、ホール素子の2出力からサージが発生していないにもかかわらず、何故移相回路を用いて図5S2のようにサージをわざわざ発生させているのか不明であり、しかもサージが発生していない検出回路の出力をRとCから構成される移相回路に入力されることで何故図5S2のようにサージが発生するのか不明である。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1-8に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、このホール素子を用いる制御装置が記載された請求項1-8の記載は明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(6)請求項1に「モーターの制御装置」とあり、モーターの種類を特定していないから、ブラシと整流子を有する直流機や誘導機でも適用可能となるが、何故ブラシと整流子を有する直流機や誘導機に適用するのか不明であり、又、ブラシと整流子を有する直流機や誘導機にどの様に適用するのか不明である。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1-8に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、このホール素子を用いる制御装置が記載された請求項1-8の記載は明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(7)「前記モーター12の回転速度が上った時、仮に、前記ホール素子11が前記位置P1に設置されている場合、前記駆動電流121が反転点に接近した時にサージ(SURGE)を発生しやすくなり(図2に図示)」(【0004】)、「上述の状態を改善するために、前記ホール素子11を位置P2に設置することで、前記モーター12が高速回転している時に、前記駆動電流121と駆動電圧との間の位相差、及び前記駆動電流121が反転点に接近する時に、サージを生じやすい状態を改善することができる。」(【0005】)との記載から判断して、ホール素子を有することによりサージが発生しているが、請求項1に記載された発明はホール素子を有していないから、そもそもサージ発生という従来の課題が存在せず、ホール素子の設置位置を考慮する必要の無いモーター制御装置との課題解決手段が反映されていない。
よって、請求項1、3-8には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えているので、請求項1、3-8の記載は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない

5.むすび
したがって、請求項1、3-8の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、請求項1-8の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
 
審理終結日 2012-10-02 
結審通知日 2012-10-09 
審決日 2012-10-30 
出願番号 特願2007-310609(P2007-310609)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H02P)
P 1 8・ 537- WZ (H02P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武市 匡絋  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 川口 真一
槙原 進
発明の名称 モーターの制御装置  
復代理人 高橋 知之  
代理人 牛木 護  
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