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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1271650
審判番号 不服2012-11268  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-15 
確定日 2013-03-19 
事件の表示 特願2006-343731「エッチング耐性ウェーハ加工装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月 5日出願公開、特開2007-173828〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成18年12月21日(パリ条約による優先権主張2005年12月21日、2005年12月30日 アメリカ合衆国)の特許出願であって、同21年11月6日に特許請求の範囲について手続補正書が提出され、同23年9月8日付けで拒絶の理由が通知され、同23年11月18日に意見書とともに特許請求の範囲についてさらに手続補正書が提出されたが、同24年4月6日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。これに対し、平成24年6月15日に本件審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし15に係る発明は、平成23年11月18日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、その請求項1の記載は以下のとおりである。
「 【請求項1】
様々な寸法の加工品を載置するためのプラットホームを備えるウェーハ加工装置であって、上記プラットホームが、
グラファイト、高融点金属、遷移金属、希土類金属及びこれらの合金の少なくとも1種を含んでなるベース基板と、前記ベース基板上に堆積した電気絶縁層であって、Al、B、Si、Ga、高融点硬金属、遷移金属及びこれらの組合せからなる群から選択される元素の酸化物、窒化物及び酸窒化物の少なくとも1種を含んでなる電気絶縁層と、前記電気絶縁層上に設けられたフィルム電極と、を有する構造と、
前記構造の全体を被覆するコーティング層であって、B、Al、Si、Ga、高融点硬金属、遷移金属及びこれらの組合せからなる群から選択される元素の窒化物、炭化物、炭窒化物及び酸窒化物の少なくとも1種を含んでなり、ハロゲン含有環境でのエッチング速度が少なくとも1000Å/min未満であるコーティング層と
を備えており、
前記フィルム電極が前記電気絶縁層及び前記コーティング層各々の熱膨張係数の0.75?1.25倍の熱膨張係数を有しており、
前記電気絶縁層と前記コーティング層とが同一又は異なる材料からなり、
前記フィルム電極が、スクリーン印刷、スピンコーティング、プラズマ溶射、溶射熱分解、反応性溶射、ゾル-ゲル、燃焼トーチ、電気アーク、イオンプレーティング、イオンインプランテーション、スパッタリング、レーザーアブレーション、蒸着、電気メッキ及びレーザー表面合金化の少なくとも1つの方法で堆積したものであり、
前記コーティング層が膨張熱プラズマ(ETP)、化学気相堆積(CVD)、プラズマ励起化学気相堆積、有機金属化学気相堆積、有機金属気相エピタキシ、スパッタリング、電子ビーム及びプラズマ溶射の少なくとも1つの方法でフィルム電極上に堆積したものである、
ウェーハ加工装置。」(以下請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。

第3 引用刊行物記載の発明
これに対して、原審の平成23年9月8日付け拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である以下の文献には、以下の発明が記載されていると認められる。

刊行物1:特開平4-34953号公報

1 刊行物1記載の事項
刊行物1には、「静電チャック板」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。
ア 特許請求の範囲
「1.基材(6)表面に絶縁層(5)を介して導体層(3)を設け、かつ導体層(3)を絶縁層(5)と同種の絶縁層(2)で被覆してなる構造を有し、しかも上記絶縁層(5)と(2)は化学気相蒸着法により形成されてなることを特徴とする静電チャック板。」

イ 第1ページ左下欄第12?14行
「本発明は、導電材料や半導体材料からなるシリコンウェハ等の試料を電気的に吸着固定する静電チャック板に関する。」

ウ 第2ページ左上欄第14行?右上欄第2行
「本発明における基材6は、絶縁体、導体いずれでもよいが、製作時あるいは使用時の温度変化等によって絶縁層との界面での亀裂や剥離を生じにくくするため、熱膨張率が絶縁層に近いことが望ましい。さらに使用時にウェハ等の試料に発生した熱を速やかに外部へ放散させるため、熱伝導率が高いことが望ましい。このような基材の例としては、AlN、Si_(3)N_(4)、BN等の焼結体や特に熱膨張率が絶縁層に近い黒鉛成形体等があげられる。」

エ 第2ページ右上欄第3?13行
「本発明における導体層3は、電圧を印加して吸着力を発生させるためのものであり、絶縁層と熱膨張率がほぼ等しいことが望ましい。その理由は、両者の差があまりにも大きいと、製作時あるいは使用時の温度変化等によって絶縁層との界面で亀裂や剥離を生じてチャック力が低下してしまうからである。また、導体層は、化学気相蒸着(CVD)工程において変形、変質しないものでなければならない。このような導体層の例としては、W、Mo等の高融点金属やNi、ガラス状炭素等があげられる。」

オ 第2ページ右上欄第14行?左下欄第1行
「導体層の厚さは、使用時にウェハ等の試料に発生した熱を速かに基材側へ放散させるために小さいほど良く、1mm以下が適切である。このような導体層の形成方法はW、Moではプラズマ溶射法・・・(中略)・・・があげられる。」

カ 第2ページ左下欄第2?9行
「本発明における絶縁層5及び2はCVD法によって形成される。CVD法では、高純度の成形体が比較的容易に製造できるので、ウェハ等の試料と接触してもそれを汚染することがない。
絶縁層5と2は、絶縁耐力が高く、高温絶縁性に優れ、かつ高熱伝導率であることが望まし。このことから、絶縁層を構成する物質としては、AlN、Si_(3)N_(4)、BN等が望ましい。」

キ 第2ページ左下欄第10?右上欄第2行
「絶縁層2はウェハ等の試料1と直接接触するのに対し、絶縁層5は導体層3を挟んで絶縁層2と対峙している。絶縁層5と絶縁層2の熱膨張率が異なると、静電チャック板製造時あるいは使用時における加熱・冷却の繰り返しにより、導体層の両面で異なる応力が発生して絶縁層や導体層に剥離や亀裂が生じ、チャック力が低下する。従って、本発明では絶縁層5と絶縁層2の熱膨張率は等しいことが必要であり、そのためには、絶縁層5と2は同一材質によるCVD法で形成させる。このように絶縁層5を形成させることにより、従来使用が困難であった黒鉛などの導電性物質を基材として用いることが可能となる。」

ク 第5ページ左上欄第2?6行
「本発明の静電チャック板は、基材上に絶縁層、導体層、絶縁層の3層を順に積層してなる構造であり、該絶縁層が同一の物質でありしかも化学気相蒸着法で形成されているため、熱膨張率の違いによる層間の剥離や亀裂が生じにくく」

2 刊行物1記載の発明
まず、摘記事項イに「本発明は、・・・シリコンウェハ等の試料を電気的に吸着固定する静電チャック板に関する」とあることなどから、技術常識を踏まえると、刊行物1に示された静電チャック板を含めた装置全体を、様々な寸法の加工品を載置するための静電チャック板を備えるウェハ加工装置、ということができる。
次に、摘記事項ウに「基材の例としては、・・・熱膨張率が絶縁層に近い黒鉛成形体等」とあることから、「基材6」は、黒鉛成形体からなる基材6、といえる。
また、摘記事項オに「導体層の厚さは、・・・小さいほど良く、1mm以下が適切」とあることから、「導体層3」は、フィルム導体層3、といえる。
次に、摘記事項カに「絶縁層5と2は、・・・絶縁層を構成する物質としては、AlN、Si_(3)N_(4)、BN等が望ましい。」とあることから、「絶縁層5」及び「絶縁層2」は、ぞれぞれ、AlNからなる絶縁層5及び絶縁層2ということができる。
そして、摘記事項エに「導体層3は、電圧を印加して吸着力を発生させるためのものであり、絶縁層と熱膨張率がほぼ等しいことが望ましい。」とあり、また摘記事項キに「絶縁層5と絶縁層2の熱膨張率が異なると、・・・加熱・冷却の繰り返しにより、導体層の両面で異なる応力が発生して絶縁層や導体層に剥離や亀裂が生じ、チャック力が低下する。」とあることから、フィルム導体層3が絶縁層5及び絶縁層2各々の熱膨張係数とほぼ等しい熱膨張係数を有しているものと認められる。
そこで、上記摘記事項アないしクを、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて本願発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。
「様々な寸法の加工品を載置するための静電チャック板を備えるウェハ加工装置であって、上記静電チャック板が、
黒鉛成形体からなる基材6と、前記基材6上に積層した絶縁層5であって、AlNからなる絶縁層5と、前記絶縁層5上に設けられたフィルム導体層3と、を有する構造と、
前記フィルム導体層3を被覆する絶縁層2であって、AlNからなる絶縁層2と
を備えており、
前記フィルム導体層3が前記絶縁層5及び前記絶縁層2各々の熱膨張係数とほぼ等しい熱膨張係数を有しており、
前記絶縁層5と前記絶縁層2とが同一材料からなり、
前記フィルム導体層3が、プラズマ溶射で積層したものであり、
前記絶縁層2が化学気相蒸着(CVD)の方法でフィルム導体層3上に積層したものである、
ウェハ加工装置。」(以下「刊行物1発明」という。)

第4 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比すると以下のとおりである。
まず、刊行物1発明の「ウェハ加工装置」が本願発明の「ウェーハ加工装置」に相当することは、技術常識に照らして明らかであり、同様に、「黒鉛成形体」は「グラファイト」に、「基材6」は「ベース基板」に、「積層」は「堆積」に、「絶縁層5」は「電気絶縁層」に、「AlN」は「Al」「から」(選択される)「元素の」「窒化物」に、「フィルム導体層3」は「フィルム電極」に、「化学気相蒸着(CVD)」は「化学気相堆積(CVD)」に相当することも明らかである。
次に、刊行物1発明の「静電チャック板」は、その機能及び構造からして、本願発明の「プラットホーム」に相当するといえる。
また、刊行物1発明の「絶縁層2」は、フィルム導体層3を被覆して最外層に位置するものであるから、本願発明の「コーティング層」に相当するものと認められる。そして、刊行物1発明の絶縁層2(コーティング層)はフィルム電極を被覆するものであり、本願発明のコーティング層は(ベース基板、電気絶縁層及びフィルム電極からなる)構造の全体を被覆するものであるところ、両者は、少なくとも構造の一部を被覆するコーティング層、である限りにおいて共通する。

したがって、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「様々な寸法の加工品を載置するためのプラットホームを備えるウェーハ加工装置であって、上記プラットホームが、
グラファイトを含んでなるベース基板と、前記ベース基板上に堆積した電気絶縁層であって、Alからなる元素の窒化物を含んでなる電気絶縁層と、前記電気絶縁層上に設けられたフィルム電極と、を有する構造と、
少なくとも前記構造の一部を被覆するコーティング層であって、Alからなる元素の窒化物を含んでなるコーティング層と
を備えており、
前記電気絶縁層と前記コーティング層とが同一材料からなり、
前記フィルム電極が、プラズマ溶射で堆積したものであり、
前記コーティング層が化学気相堆積(CVD)の方法でフィルム電極上に堆積したものである、
ウェーハ加工装置。」

そして、本願発明と刊行物1発明とは、以下の3点で相違している。
<相違点1>
本願発明のコーティング層は、(ベース基板、電気絶縁層及びフィルム電極からなる)構造の全体を被覆するのに対し、刊行物1発明の絶縁層2(コーティング層)は、フィルム導体層3(フィルム電極)を被覆するものである点。
<相違点2>
本願発明のコーティング層は、ハロゲン含有環境でのエッチング速度が少なくとも1000Å/min未満であるのに対し、刊行物1発明の絶縁層2(コーティング層)は、AlNからなるものの、そのハロゲン含有環境でのエッチング速度は不明である点。
<相違点3>
本願発明においては、フィルム電極が電気絶縁層及びコーティング層各々の熱膨張係数の0.75?1.25倍の熱膨張係数を有しているのに対し、刊行物1発明においては、フィルム導体層3(フィルム電極)が絶縁層5(電気絶縁層)及び絶縁層2(コーティング層)各々の熱膨張係数とほぼ等しい熱膨張係数を有している点。

第5 相違点の検討
1 <相違点1>について
まず、刊行物1発明のような静電チャック板において、電極部分のみならず、電極を含む構造全体を絶縁膜等で被覆することは、例えば、特開2004-265991号公報(段落【0017】、図4等参照)、特開2004-349612号公報(段落【0058】等参照)、特開2002-246454号公報(図1等参照)に示されるように従来周知の事項である
そして、一般に対象物を被覆するにおいては、「被覆」という性質上、一部分のみを覆うのではなく、対象物全体を覆うのが通常であり、また、その方が被覆工程上簡便であることが多い。
そうしてみると、刊行物1発明に同じ技術分野の上記従来周知の事項を適用して、フィルム導体層3のみならず、(ベース基板、電気前縁層及びフィルム電極からなる)構造の全体を絶縁層等のコーティング層で被覆して相違点1に係る発明特定事項を本願発明のものとすることは、当業者が容易に想到し得るところというべきである。

2 <相違点2>について
刊行物1発明の絶縁層2(コーティング層)は、AlNからなるところ、原審の拒絶査定において指摘されているように、AlNの耐ハロゲン性が高い点については広く知られていることである(原審の拒絶査定にて例示された、特開2004-224610号公報の段落【0002】等、特開2005-191581号公報の段落【0026】等を参照)。
また、低エッチング速度として1000Å/min未満程度とすることは、例えば、特開2005-8447号公報(段落【0023】等参照)、特開2000-86212号公報(段落【0039】、図5等参照)に示されるように、ごく一般的なものである。
したがって、刊行物1発明のAlNからなる絶縁層2(コーティング層)も、実質的にはハロゲン含有環境でのエッチング速度が少なくとも1000Å/min未満である蓋然性がきわめて高く、相違点2は実質的な差異ではない。

3 <相違点3>について
本件出願の明細書全体を参酌しても、0.75?1.25倍という値に格別臨界的意義はなく、0.75?1.25倍という範囲は、(刊行物1発明の)約1.0倍、すなわち、フィルム電極と電気絶縁層及びコーティング層各々の熱膨張係数をほぼ等しくすることを含む。したがって、相違点3は実質的な差異ではない。

4 本願発明の効果について
本願発明によってもたらされる効果も、刊行物1発明及び上記従来周知の事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。

5 したがって、本願発明は、刊行物1発明及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって本願はその余の請求項2ないし15に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-15 
結審通知日 2012-10-22 
審決日 2012-11-02 
出願番号 特願2006-343731(P2006-343731)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金丸 治之  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 長屋 陽二郎
刈間 宏信
発明の名称 エッチング耐性ウェーハ加工装置及びその製造方法  
代理人 伊藤 信和  
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