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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A23J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23J
管理番号 1271833
審判番号 不服2010-23398  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-18 
確定日 2013-02-13 
事件の表示 特願2006-549806「新規なキャノーラタンパク質単離物」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月28日国際公開、WO2005/067729、平成19年 7月12日国内公表、特表2007-518409〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2005年1月20日(外国庁受理、パリ条約による優先権主張2004年1月20日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成18年7月20日付けで特許法第184条の5第1項に規定する書面が提出され、同年9月20日に特許法第184条の4第1項に規定する明細書、請求の範囲、図面及び要約の翻訳文が提出され、平成20年1月21日付けで手続補正書が提出され、平成21年10月28日付けで拒絶理由が通知され、平成22年5月6日付けで意見書が提出され、同年6月8日付けで拒絶査定がなされ、同年10月18日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、同年11月26日付けで審判請求書の請求の理由を変更する手続補正書(方式)が提出され、その後、当審において平成23年9月5日付けで審尋がなされ、平成24年1月10日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成22年10月18日付けの手続補正について
1 本件補正の内容
平成22年10月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についての補正であって、本件補正により補正される前の(すなわち、平成20年1月21日付け手続補正書により補正された)下記(1)に示す特許請求の範囲の記載を下記(2)に示す特許請求の範囲の記載へと補正するものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
大部分が2Sキャノーラタンパク質からなり、かつキャノーラタンパク質のミセルの生成および沈殿によって上澄み水溶液から得られたキャノーラタンパク質単離物と比較して、乾燥重量ベース(d.b.)(N×6.25)で少なくとも90重量%のタンパク質含量を有し、2Sキャノーラタンパク質の割合が増大しており、かつ7Sキャノーラタンパク質の割合が減少している、大部分が2Sキャノーラタンパク質からなるキャノーラタンパク質単離物。
【請求項2】
前記上澄み水溶液を加熱処理して得られる請求項1に記載のキャノーラタンパク質単離物。
【請求項3】
キャノーラ油糧種子粗粉から得られ、かつ12S、7Sおよび2Sキャノーラタンパク質を含むキャノーラタンパク質水溶液に、12Sおよび7Sキャノーラタンパク質を選択的に残留液中に保持し2Sタンパク質を透過液として膜を通過させる第1の選択的膜技術を施し、前記透過液に、2Sキャノーラタンパク質を選択的に保持し低分子量汚染物質を透過液として膜を通過させる第2の選択的膜技術を施し、第2の選択的膜技術による前記残留液を乾燥させる選択的膜手順から得られる請求項1または2に記載のキャノーラタンパク質単離物。
【請求項4】
乾燥重量ベース(d.b.)で少なくとも90重量%(N×6.25)のタンパク質含量を有し、単離物中に存在するキャノーラタンパク質の少なくとも85重量%の2Sキャノーラタンパク質と15重量%未満の7Sキャノーラタンパク質を含むキャノーラタンパク質単離物。
【請求項5】
単離物中に存在するキャノーラタンパク質の少なくとも90重量%の2Sキャノーラタンパク質と10重量%未満の7Sキャノーラタンパク質を含む請求項4に記載のキャノーラタンパク質単離物。
【請求項6】
少なくとも100重量%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する請求項1
から5のいずれかに記載のキャノーラタンパク質単離物。
【請求項7】
2Sキャノーラタンパク質の割合が増大しているキャノーラタンパク質単離物の調製方法であって、
(a)大部分が2Sタンパク質からなる、2Sタンパク質および7Sタンパク質の水溶液を用意するステップと、
(b)前記水溶液を加熱処理して7Sキャノーラタンパク質の沈殿するステップと、
(c)前記水溶液から沈殿した7Sタンパク質を除去するステップと、
(d)少なくとも90重量%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有し、2Sキャノーラタンパク質の割合が増大しているキャノーラタンパク質単離物を回収するステップと
を含む方法。
【請求項8】
前記加熱処理ステップを、前記水溶液中に存在する7Sキャノーラタンパク質の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%を沈殿するのに十分な温度と時間の条件下で実施する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記加熱処理ステップを、70℃?100℃、好ましくは75℃?95℃の温度で、2?30分間、好ましくは5?15分間、水溶液を加熱することによって実施する請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
2Sおよび7Sキャノーラタンパク質の前記水溶液が、キャノーラタンパク質のミセルの生成および沈殿によって濃縮された上澄み液であって、該キャノーラタンパク質ミセルの生成を、
(a)キャノーラ油糧種子粗粉を少なくとも5℃の温度で抽出し、前記キャノーラ油糧種子粗粉中のタンパク質を可溶化してタンパク質水溶液を形成するステップと、
(b)前記タンパク質水溶液を残留油糧種子粗粉から分離するステップと、
(c)前記タンパク質水溶液の濃度を少なくとも200g/Lに増大させ、同時に、選択的膜技術によってイオン強度を実質的に一定に保持して濃縮タンパク質溶液を提供するステップと、
(d)前記濃縮タンパク質溶液を約15℃未満の温度の冷水中に入れて希釈してタンパク質ミセルを生成させるステップと、
(e)沈降したタンパク質ミセルの集団から上澄み液を分離するステップと
によって実施する請求項7から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記加熱処理の前に、前記上澄み液を100?400g/L、好ましくは200?300g/Lのタンパク質濃度まで濃縮する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記濃縮ステップを、分子量カットオフ約3,000?約100,000ダルトンを有する膜を用いた限外濾過によって実施し、前記加熱処理ステップの前に、限外濾過により得られた濃縮上澄み液をダイアフィルトレーションし、該ダイアフィルトレーションステップを、約3,000?約100,000ダルトンの分子量カットオフを有する膜を使用して、2?20容、好ましくは5?10容の水を用いて実施する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
キャノーラタンパク質単離物の調製方法であって、
(a)キャノーラ油糧種子粗粉から得られ、12S、7Sおよび2Sキャノーラタンパク質を含むキャノーラタンパク質水溶液を用意するステップと、
(b)7Sおよび12Sキャノーラタンパク質を残留液中に保持し2Sタンパク質を透過液として膜通過させて、濃縮タンパク質溶液を提供するのに効果的な選択的な膜技術を用いて水溶液のタンパク質濃度を増大させるステップと、
(c)ステップ(b)からの残留液を乾燥させて、大部分が7Sキャノーラタンパク質からなり、乾燥重量ベース(d.b.)で少なくとも90重量%(N×6.25)、好ましくは少なくとも100wt%のタンパク質含量を有するキャノーラタンパク質単離物を提供するステップと、
(d)2Sキャノーラタンパク質を残留液中に保持し、低分子量汚染物質を膜を通して透過液中で通過させるのに効果的な選択的膜技術を用いてステップ(a)からの透過液の濃度を増大させるステップと、
(e)ステップ(d)からの残留液を乾燥して、大部分が2Sタンパク質からなり、少なくとも90重量%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有するキャノーラタンパク質単離物を提供するステップと
を含む方法。
【請求項14】
前記キャノーラタンパク質水溶液を、少なくとも5℃の温度でキャノーラ油糧種子粗粉を抽出し、前記キャノーラ油糧種子粗粉中のタンパク質を可溶化して、5?40g/Lのタンパク質含量と5?6.8のpHを有するタンパク質水溶液を生成するステップと、残留油糧種子粗粉から該タンパク質水溶液を分離するステップとによって提供する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(b)を、前記水溶液を少なくとも200g/Lのタンパク質含量に濃縮し、同時に、約30,000?約150,000ダルトン、好ましくは約50,000?約100,000ダルトンの分子量カットオフを有する限外濾過膜を用いて、イオン強度を実質的に一定に保持することによって実施して濃縮タンパク質溶液を提供し、該濃縮タンパク質溶液を2?20、好ましくは5?10容のダイアフィルトレーション溶液を用いたダイアフィルトレーションのステップにかける請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(d)を、約3,000?約30,000ダルトン、好ましくは約5,000?約10,000ダルトンの分子量カットオフを有する膜を用いて、透過液の濃度を100?400g/L、好ましくは200?300g/Lのタンパク質濃度に増大させることによって実施して残留液を提供し、該残留液を、2?20、好ましくは5?10容のダイアフィルトレーション溶液を用いたダイアフィルトレーションのステップにかける請求項13から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
大部分が2Sキャノーラタンパク質からなる前記キャノーラタンパク質単離物が、少なくとも100重量%のタンパク質含量を有する請求項7から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
請求項1から6のいずれかに記載のキャノーラタンパク質単離物の水溶液、好ましくは該キャノーラタンパク質で強化したソフトドリンクの水溶液。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
大部分が2Sキャノーラタンパク質からなり、乾燥重量ベース(d.b.)で少なくとも90重量%(N×6.25)のタンパク質含量を有し、かつキャノーラタンパク質のミセルの生成および7Sキャノーラタンパク質の沈殿による上澄み水溶液を加熱処理して得られるキャノーラタンパク質単離物であって、該キャノーラタンパク質単離物が、大部分が2Sキャノーラタンパク質からなり、キャノーラタンパク質のミセル生成および沈殿による上澄み水溶液を加熱処理すること無く得られるキャノーラタンパク質単離物と比較して2Sキャノーラタンパク質の割合が増加することを特徴とする、キャノーラタンパク質単離物。
【請求項2】
キャノーラ油糧種子粗粉から得られ、かつ12S、7Sおよび2Sキャノーラタンパク質を含むキャノーラタンパク質水溶液に、12Sおよび7Sキャノーラタンパク質を選択的に残留液中に保持し2Sタンパク質を透過液として膜を通過させる第1の選択的膜技術を施し、前記透過液に、2Sキャノーラタンパク質を選択的に保持し低分子量汚染物質を透過液として膜を通過させる第2の選択的膜技術を施し、第2の選択的膜技術による前記残留液を乾燥させる選択的膜手順から得られる、大部分が2Sキャノーラタンパク質からなり乾燥重量ベース(d.b.)で少なくとも90重量%(N×6.25)のタンパク質含量を有する、キャノーラタンパク質単離物。
【請求項3】
乾燥重量ベース(d.b.)で少なくとも90重量%(N×6.25)のタンパク質含量を有し、単離物中に存在するキャノーラタンパク質の少なくとも85重量%の2Sキャノーラタンパク質と15重量%未満の7Sキャノーラタンパク質を含むキャノーラタンパク質単離物。
【請求項4】
単離物中に存在するキャノーラタンパク質の少なくとも90重量%の2Sキャノーラタンパク質と10重量%未満の7Sキャノーラタンパク質を含む請求項3に記載のキャノーラタンパク質単離物。
【請求項5】
少なくとも100重量%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する請求項1から4のいずれかに記載のキャノーラタンパク質単離物。
【請求項6】
2Sキャノーラタンパク質の割合が増大しているキャノーラタンパク質単離物の調製方法であって、
(a)(i)キャノーラ油糧種子粗粉を少なくとも5℃の温度で抽出し、前記キャノーラ油糧種子粗粉中のタンパク質を可溶化してタンパク質水溶液を形成するステップと、
(ii)前記タンパク質水溶液を残留油糧種子粗粉から分離するステップと、
(iii)前記タンパク質水溶液の濃度を少なくとも200g/Lに増大させ、同時に、選択的膜技術によってイオン強度を実質的に一定に保持して濃縮タンパク質溶液を提供するステップと、
(iv)前記濃縮タンパク質溶液を約15℃未満の温度の冷水中に入れて希釈してタンパク質ミセルを生成させるステップと、
(v)沈降したタンパク質ミセルの集団から上澄み液を分離するステップと、により、大部分が2Sタンパク質からなる、2Sおよび7Sキャノーラタンパク質の水溶液を用意するステップと、
(b)前記水溶液を70?100℃の温度で2?30分間加熱処理して7Sキャノーラタンパク質を沈殿するステップと、
(c)前記水溶液から沈殿した7Sタンパク質を除去するステップと、
(d)少なくとも90重量%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有し、前記(v)の2Sタンパク質および7Sタンパク質の水溶液と比較して2Sキャノーラタンパク質の割合が増大しているキャノーラタンパク質単離物を回収するステップと
を含む方法。
【請求項7】
前記加熱処理ステップを、前記水溶液中に存在する7Sキャノーラタンパク質の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%を沈殿するのに十分な温度と時間の条件下で実施する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記加熱処理ステップを、75℃?95℃の温度で5?15分間、前記水溶液を加熱することによって実施する請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記加熱処理の前に、前記上澄み液を100?400g/L、好ましくは200?300g/Lのタンパク質濃度まで濃縮する請求項6から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記濃縮ステップを、分子量カットオフ約3,000?約100,000ダルトンを有する膜を用いた限外濾過によって実施し、前記加熱処理ステップの前に、限外濾過により得られた濃縮上澄み液をダイアフィルトレーションし、該ダイアフィルトレーションステップを、約3,000?約100,000ダルトンの分子量カットオフを有する膜を使用して、2?20容、好ましくは5?10容の水を用いて実施する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
キャノーラタンパク質単離物の調製方法であって、
(a)キャノーラ油糧種子粗粉から得られ、12S、7Sおよび2Sキャノーラタンパク質を含むキャノーラタンパク質水溶液を用意するステップと、
(b)7Sおよび12Sキャノーラタンパク質を残留液中に保持し2Sタンパク質を透過液として膜通過させて、濃縮タンパク質溶液を提供するのに効果的な選択的な膜技術を用いて水溶液のタンパク質濃度を増大させるステップと、
(c)ステップ(b)からの残留液を乾燥させて、大部分が7Sキャノーラタンパク質からなり、乾燥重量ベース(d.b.)で少なくとも90重量%(N×6.25)、好ましくは少なくとも100重量%のタンパク質含量を有するキャノーラタンパク質単離物を提供するステップと、
(d)2Sキャノーラタンパク質を残留液中に保持し、低分子量汚染物質を膜を通して透過液中で通過させるのに効果的な選択的膜技術を用いてステップ(a)からの透過液の濃度を増大させるステップと、
(e)ステップ(d)からの残留液を乾燥して、大部分が2Sタンパク質からなり、少なくとも90重量%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有するキャノーラタンパク質単離物を提供するステップと
を含む方法。
【請求項12】
前記キャノーラタンパク質水溶液を、少なくとも5℃の温度でキャノーラ油糧種子粗粉を抽出し、前記キャノーラ油糧種子粗粉中のタンパク質を可溶化して、5?40g/Lのタンパク質含量と5?6.8のpHを有するタンパク質水溶液を生成するステップと、残留油糧種子粗粉から該タンパク質水溶液を分離するステップとによって提供する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(b)を、前記水溶液を少なくとも200g/Lのタンパク質含量に濃縮し、同時に、約30,000?約150,000ダルトン、好ましくは約50,000?約100,000ダルトンの分子量カットオフを有する限外濾過膜を用いて、イオン強度を実質的に一定に保持することによって実施して濃縮タンパク質溶液を提供し、該濃縮タンパク質溶液を2?20、好ましくは5?10容のダイアフィルトレーション溶液を用いたダイアフィルトレーションのステップにかける請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(d)を、約3,000?約30,000ダルトン、好ましくは約5,000?約10,000ダルトンの分子量カットオフを有する膜を用いて、透過液の濃度を100?400g/L、好ましくは200?300g/Lのタンパク質濃度に増大させることによって実施して残留液を提供し、該残留液を、2?20、好ましくは5?10容のダイアフィルトレーション溶液を用いたダイアフィルトレーションのステップにかける請求項11から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
大部分が2Sキャノーラタンパク質からなる前記キャノーラタンパク質単離物が、少なくとも100重量%のタンパク質含量を有する請求項6から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
請求項1から5のいずれかに記載のキャノーラタンパク質単離物の水溶液、好ましくは該キャノーラタンパク質で強化したソフトドリンクの水溶液。」
(なお、下線は、補正箇所を示すためのものである。)

2 本件補正の目的
本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1を引用する請求項2に対応するものであり、本件補正前の請求項2が本件補正前の請求項1を引用するものであったのを独立請求項とし、さらに、本件補正前は「キャノーラタンパク質のミセルの生成および沈殿によって上澄み水溶液から得られたキャノーラタンパク質単離物と比較して」「2Sキャノーラタンパク質の割合が増大しており、かつ7Sキャノーラタンパク質の割合が減少している」であったのを、「キャノーラタンパク質のミセル生成および沈殿による上澄み水溶液を加熱処理すること無く得られるキャノーラタンパク質単離物と比較して2Sキャノーラタンパク質の割合が増加する」と限定するものであるから、本件補正は、請求項1については、請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
本件補正後の請求項2は、本件補正前の請求項3に対応するものであり、本件補正前の請求項3が本件補正前の請求項1または2を引用するものであったのを独立請求項とし、その際に、項番を繰り上げるとともに記載を整理したものであるから、本件補正は、請求項2については、明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
本件補正後の請求項3ないし5は、本件補正前の請求項4ないし6にそれぞれ対応するものであり、項番を繰り上げるとともに引用する請求項の項番を補正したものであるから、本件補正は、請求項3ないし5については、明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
本件補正後の請求項6は、本件補正前の請求項7を引用する請求項10に対応するものであり、項番を繰り上げて独立請求項とするとともに本件補正前は「(b)前記水溶液を加熱処理して7Sキャノーラタンパク質の沈殿するステップと、
(c)前記水溶液から沈殿した7Sタンパク質を除去するステップと、
(d)少なくとも90重量%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有し、2Sキャノーラタンパク質の割合が増大しているキャノーラタンパク質単離物を回収するステップと
を含む方法」であったのを、「(b)前記水溶液を70?100℃の温度で2?30分間加熱処理して7Sキャノーラタンパク質を沈殿するステップと、
(c)前記水溶液から沈殿した7Sタンパク質を除去するステップと、
(d)少なくとも90重量%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有し、前記(v)の2Sタンパク質および7Sタンパク質の水溶液と比較して2Sキャノーラタンパク質の割合が増大しているキャノーラタンパク質単離物を回収するステップと
を含む方法」と限定するものであるから、本件補正は、請求項6については、請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
本件補正後の請求項7は、本件補正前の請求項8に対応するものであり、項番を繰り上げるとともに引用する請求項の項番を補正したものであるから、本件補正は、請求項7については、明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
本件補正後の請求項8は、本件補正前の請求項9に対応するものであり、項番を繰り上げるとともに引用する請求項の項番を補正し、さらに、本件補正前は「70℃?100℃、好ましくは75℃?95℃の温度で、2?30分間、好ましくは5?15分間、水溶液を加熱する」であったのを、「75℃?95℃の温度で5?15分間、前記水溶液を加熱する」と限定するものであるから、本件補正は、請求項8については、特許請求の範囲の減縮及び明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
本件補正後の請求項9ないし16は、本件補正前の請求項11ないし18に対応するものであり、項番を繰り上げるとともに引用する請求項の項番を補正したものであるから、本件補正は、請求項9ないし16については、明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1、2及び4号に規定する請求項の削除、特許請求の範囲の減縮及び明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

第3 本願発明
そこで、明りようでない記載の釈明を目的とする補正がされた本願の特許請求の範囲の請求項2及び3に係る発明が、特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。
本願の特許請求の範囲の請求項2及び3に係る発明は、平成22年10月18日付け手補正書の特許請求の範囲の請求項2及び3に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項2及び3に係る発明(以下、順に、「本願発明2」及び「本願発明3」という。)は、上記「第2 1(2)」の【請求項2】及び【請求項3】に記載されたとおりである。

第4 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に外国において頒布された刊行物である国際公開第2003/088760号(以下、「引用文献」という。なお、訳として、ファミリー文献である特表2005-522522号公報(以下、「翻訳文」という。)の記載を援用する。)には、図面とともに下記1ないし7の事項が記載されている(以下、順に、「摘記事項1」ないし「摘記事項7」という。)。

1 「We have also now found that the relative proportions of the 12S, 7S and 2S proteins differ as between protein micellar mass-derived canola protein isolate and supernatant-derived canola protein isolate, prepared using the above-described procedures. In particular, it has been found that PMM-derived canola protein isolate having a protein content of at least about 90 wt% (N x 6.25), preferably at least about 100 wt%, has a protein component content of about 60 to about 98 wt% of 7S protein, about 1 to about 15 wt% of 12S protein and 0 to about 25 wt% of 2S protein. By way of contrast, the supernatant-derived canola protein isolate having a protein content of at least about 90 wt% (N x 6.25), preferably at least about 100 wt%, has a protein component content of 0 to about 5 wt% of 12S protein, about 5 to about 40 wt% of the 7S protein and about 60 to about 95 wt% of 2S protein.」(段落【0011】)(訳:また、本発明者らは、上記方法を用いて調製すると、タンパク質ミセル集積物から得られる(ミセル集積物由来)カノーラタンパク質単離物と上澄液から得られる(上澄液由来)カノーラタンパク質単離物では、12S、7Sおよび2Sタンパク質の相対比率が異なることを見出すに至った。詳細には、タンパク質含有量が少なくとも約90wt%(N×6.25)、好ましくは少なくとも約100wt%である、PMM由来カノーラタンパク質単離物のタンパク質成分含有量は、7Sタンパク質が約60?約98wt%、12Sタンパク質が約1?約15wt%、および2Sタンパク質が0?約25wt%であることが見出された。これと対照的に、タンパク質含有量が少なくとも約90wt%(N×6.25)、好ましくは少なくとも約100wt%である、上澄液由来カノーラタンパク質単離物のタンパク質成分含有量は、12Sタンパク質が0?約5wt%、7Sタンパク質が約5?約40wt%、および2Sタンパク質が約60?約95wt%である。)(翻訳文の段落【0011】)

2 「The supernatant-derived isolate is a novel canola protein isolate.Accordingly, in another aspect of the present invention, there is provided a canola protein isolate having a protein content of at least about 90 wt%, preferably at least about 100 wt%, on a dry weight basis and at a Kjeldahl nitrogen conversion of N x 6.25 and which exhibits a protein profile which is about 60 to about 95 wt% of 2S protein, about 5 to about 40 wt% of 7S protein and 0 to about 5 wt% of 12S protein. Preferably, the supernatant-derived canola protein isolate preferably exhibits a protein profile which is about 70 to about 95 wt% of 2S protein, about 5 to about 30 wt% of 7S protein and 0 to about 2 wt% of 12S protein.」(段落【0015】)(訳:上澄液由来単離物は新規なカノーラタンパク質単離物である。従って、本発明の他の態様では、乾燥重量基準およびN×6.25のケルダール窒素換算で少なくとも約90wt%、好ましくは少なくとも約100wt%のタンパク質含有量を有し、2Sタンパク質が約60?約95wt%、7Sタンパク質が約5?約40 wt%、および12Sタンパク質が0?約5wt%であるタンパク質プロフィールを示すカノーラタンパク質単離物が提供される。上澄液由来カノーラタンパク質単離物は、好ましくは2Sタンパク質が約70?約95wt%、7Sタンパク質が約5?約30wt%、12Sタンパク質が0?約2wt%である。)(翻訳文の段落【0015】)

3 「The procedure for the isolating and purifying an individual canola proteins from a canola protein isolate containing a mixture of at least two different canola proteins selected from the group consisting of the 2S, 7S and 12S proteins, including the PMM-derived canola protein isolate and the supernatant-derived canola protein isolate described herein, constitutes a further aspect of the invention.」(段落【0020】)(訳:本明細書に記載のPMM由来カノーラタンパク質単離物および上澄液由来カノーラタンパク質単離物を含め、2S、7Sおよび12Sタンパク質からなる群から選択される少なくとも2種の異なるカノーラタンパク質の混合物を含むカノーラタンパク質単離物から個々のカノーラタンパク質を単離、精製する方法は、本発明の更なる態様を構成する。)(翻訳文の段落【0020】)

4 「The initial step of the process of providing the canola protein isolates involves solubilizing proteinaceous material from canola oil seed meal. 」(段落【0030】)(訳:カノーラタンパク質単離物を準備する過程の最初の段階としては、カノーラ油糧種子粗粉からタンパク質系物質を溶出させることを含む。)(翻訳文の段落【0027】)

5 「The supernatant from the PMM formation and settling step contains significant amounts of canola protein, not precipitated in the dilution step, and is processed to recover canola protein isolate therefrom. The supernatant from the dilution step, following removal of the PMM, is concentrated to increase the protein concentration thereof. Such concentration is effected using any convenient selective membrane technique, such as ultrafiltration, using membranes with a suitable molecular weight cut-off permitting low molecular weight species, including the salt and other non- proteinaceous low molecular weight materials extracted from the protein source material, to pass through the membrane, while retaining canola protein in the solution. ・・・(略)・・・
The concentrated supernatant may be dried by any convenient technique, such as spray drying, freeze drying or vacuum drum drying, to a dry form to provide a further canola protein isolate. Such further canola protein isolate has a high protein content, in excess of about 90 wt%, preferably at least about 100 wt% protein (calculated as Kjeldahl N x 6.25) and is substantially undenatured (as determined by differential scanning calorimetry).
The dried supernatant predominantly consists of the 2S canola protein with minor quantities of the 7S canola protein and optionally small quantities of the 12S canola protein. In general, the supernatant-derived canola protein isolate contains:
about 60 to about 95 wt% of 2S protein
about 5 to about 40 wt% of 7S protein
0 to about 5 wt% of 12S protein
The supernatant-derived canola protein isolate preferably contains:
about 70 to about 95 wt% of 2S protein
about 5 to about 30 wt% of 7S protein
0 to about 2 wt% of 12S protein 」(段落【0066】ないし【0068】)(訳:PMM形成および沈降の段階からの上澄液には、希釈段階で沈殿しなかったかなりの量のカノーラタンパク質が含まれているので、上澄液を処理してカノーラタンパク質を回収する。希釈段階からの上澄液を、PMMを取り出した後に濃縮してそのタンパク質濃度を高める。このような濃縮は、塩、およびタンパク質原料から抽出されたその他の非タンパク質系低分子量物質を含む低分子量種を通過させ、一方、カノーラタンパク質を溶液内に留めるような適切な分画分子量をもつ膜を用いる限外濾過など、任意の都合のよい選択膜技術を使用して実施される。・・・(略)・・・
濃縮上澄液を、噴霧乾燥、凍結乾燥または真空ドラム乾燥など、任意の都合のよい技術によって、乾固して乾燥形とし、更なるカノーラタンパク質単離物を提供できる。このような更なるカノーラタンパク質単離物は、高いタンパク質含有量、約90wt%、好ましくは少なくとも約100wt%を超えるタンパク質(ケルダールN×6.25として計算)を含有し、実質的に未変性である(示差走査熱量測定法で判定)。
乾燥した上澄は、主として少量の7Sカノーラタンパク質および場合によっては少量の12Sカノーラタンパク質を伴った2Sタンパク質から構成される。一般に、上澄液由来カノーラタンパク質単離物は、
約60?約95wt%の2Sタンパク質、
約5?約40wt%の7Sタンパク質、
0?約5wt%の12Sタンパク質を含有する。
上澄液由来カノーラタンパク質単離物は、
約70?約95wt%の2Sタンパク質、
約5?約30wt%の7Sタンパク質、
0?約2wt%の12Sタンパク質を含有するのが好ましい。)(翻訳文の段落【0063】ないし【0065】)

6 「The individual 2S, 7S and 12S proteins may be isolated and purified from the respective protein isolates by any conventional procedure, including analytical - high pressure liquid chromatography (HPLC) for smaller quantities of protein and preparative HPLC for larger quantities. Other procedures achieving composition on the basis of molecular mass may be used. The 2S protein generally is isolated and purified from the supernatant-derived canola protein isolate while the 7S and 12S proteins generally are isolated and purified from the PMM-derived canola protein isolate. The canola protein isolate is solubilized, such as by using saline, and then passed through the HPLC column. The HPLC separated proteins contained in fractions of eluant containing one of the proteins, usually are subjected to ultrafiltration to reduce the volume of eluant followed by protein isolate dialysis to reduce the residual salt content in the proteins. The dialyzed material may be dried to provide dried isolated and purified individual canola protein.」(段落【0079】)(訳:それぞれのタンパク質単離物から、少量タンパク質用の分析高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、大量用の分取HPLCを含む任意の通常方法によって、個々の2S、7Sおよび12Sタンパク質を単離および精製できる。分子質量に基づいて組成を明らかにするその他の方法を使用してもよい。2Sタンパク質は一般に上澄液由来カノーラタンパク質単離物から単離、精製され、7Sおよび12Sタンパク質は一般にPMM由来カノーラタンパク質単離物から単離、精製される。塩水を用いるなどによりカノーラタンパク質単離物を可溶化してからHPLCカラムに通す。1種類のタンパク質を含む溶出液の分画に含まれるHPLCで分離したタンパク質を、通常、限外濾過に付して溶出液の容積を減容し、続いてタンパク質単離物の透析によってタンパク質中の残存塩含有量を減少させる。透析物を乾燥して、単離、精製、乾燥した個々のカノーラタンパク質を提供できる。)(翻訳文の段落【0076】)

7 「Referring to Figure 1 , there is illustrated schematically a flow sheet of a batch process for the preparation of canola protein isolates. Canola oil seed meal and aqueous extraction medium are fed by line 10 to an extraction vessel 12 wherein the oil seed meal is extracted and an aqueous protein solution is formed. The slurry of aqueous protein solution and residual oil seed meal is passed by line 14 to a vacuum filter belt 16 for separation of the residual oil seed meal which is removed by line 18. The aqueous protein solution then is passed by line 20 to a clarification operation 22 wherein the aqueous protein solution is centrifuged and filtered to remove fines, which are recovered by line 24.
The clarified aqueous protein solution is pumped by line 26 through ultrafiltration membrane 28 to produce a concentrated protein solution as the retentate in line 30 with the permeate being recovered by line 32. The concentrated protein solution is passed into a precipitation vessel 34 containing cold water fed by line 36. Protein micellar mass formed in the precipitation vessel 34 is removed by line 38 and passed through a spray dryer 40 to provide dry canola protein isolate 42.
Supernatant from the precipitation vessel 34 is removed by line 44 and pumped through ultrafiltration membranes 46 to produce a concentrated protein solution as the retentate in line 48 with the permeate being removed by line 50. The concentrated protein solution is passed through a spray dryer 52 to provide further dry canola protein isolate 54.」(段落【0080】ないし【0082】)(訳:図1を参照にして、カノーラタンパク質単離物を調製するためのバッチ法に関するフローシートを概略的に説明する。カノーラ油糧種子粗粉および水性抽出媒体をライン10を経由して抽出槽12に供給し、その中で油糧種子粗粉を抽出に付し、タンパク質水溶液を形成させる。タンパク質水溶液と油糧種子粗粉残渣とのスラリーを、ライン14を経由して油糧種子粗粉残渣を分離するための真空濾過機ベルト16を通過させ、油糧種子粗粉残渣はライン18を経由して除去する。次いで、タンパク質水溶液を、ライン20を経由して清澄操作部22に通し、その中でタンパク質水溶液を遠心分離および濾過して微紛を除去し、微粉はライン24を経由して回収する。
清澄タンパク質水溶液を、ライン26を経由してポンプで限外濾過膜28に通液し、ライン30中に保持液としての濃縮タンパク質溶液を生成させ、透過液はライン32を経由して回収する。濃縮タンパク質溶液を、ライン36を経由して供給される冷水が入っている沈殿槽34に送り込む。沈殿槽34内で形成されるタンパク質ミセル集積物をライン38を経由して取り出し、噴霧乾燥機40に通して乾燥カノーラタンパク質分離物42を得る。
沈殿槽34からの上澄液をライン44を経由して取り出し、ポンプで限外濾過膜46に通液し、ライン48中に保持液としての濃縮タンパク質溶液を生成させ、透過液はライン50を経由して除去する。濃縮タンパク質溶液を噴霧乾燥機52に通して更なる乾燥カノーラタンパク質単離物54を得る。)(翻訳文の段落【0077】ないし【0079】)

第5 引用文献に記載された発明
1 引用発明1
引用文献の摘記事項3の「PMM由来カノーラタンパク質単離物および上澄液由来カノーラタンパク質単離物を含め、2S、7Sおよび12Sタンパク質からなる群から選択される少なくとも2種の異なるカノーラタンパク質の混合物を含むカノーラタンパク質単離物から個々のカノーラタンパク質を単離、精製する方法」、引用文献の摘記事項4の「最初の段階としては、カノーラ油糧種子粗粉からタンパク質系物質を溶出させることを含む。」及び引用文献の摘記事項7の「カノーラ油糧種子粗粉および水性抽出媒体をライン10を経由して抽出槽12に供給し、その中で油糧種子粗粉を抽出に付し、タンパク質水溶液を形成させる。」という記載によると、引用文献には、カノーラ油糧種子粗粉から得られ、かつ12S、7Sおよび2Sカノーラタンパク質を含むカノーラタンパク質水溶液からカノーラタンパク質単離物を得ることが記載されている。
引用文献の摘記事項5の「PMM形成および沈降の段階からの上澄液には、希釈段階で沈殿しなかったかなりの量のカノーラタンパク質が含まれているので、上澄液を処理してカノーラタンパク質を回収する。希釈段階からの上澄液を、PMMを取り出した後に濃縮してそのタンパク質濃度を高める。このような濃縮は、塩、およびタンパク質原料から抽出されたその他の非タンパク質系低分子量物質を含む低分子量種を通過させ、一方、カノーラタンパク質を溶液内に留めるような適切な分画分子量をもつ膜を用いる限外濾過など、任意の都合のよい選択膜技術を使用して実施される。」及び「濃縮上澄液を、噴霧乾燥、凍結乾燥または真空ドラム乾燥など、任意の都合のよい技術によって、乾固して乾燥形とし、更なるカノーラタンパク質単離物を提供できる。」並びに引用文献の摘記事項7の「沈殿槽34からの上澄液をライン44を経由して取り出し、ポンプで限外濾過膜46に通液し、ライン48中に保持液としての濃縮タンパク質溶液を生成させ、透過液はライン50を経由して除去する。濃縮タンパク質溶液を噴霧乾燥機52に通して更なる乾燥カノーラタンパク質単離物54を得る。」という記載によると、引用文献には、カノーラタンパク質水溶液に、タンパク質ミセル集積物を沈殿させて取り出す処理を施し、上澄液に、塩、およびタンパク質原料から抽出されたその他の非タンパク質系低分子量物質を含む低分子量種を通過させ、カノーラタンパク質を溶液内に留めるような限外濾過膜などの選択膜技術を施し、カノーラタンパク質が留められた溶液を得、カノーラタンパク質が留められた溶液を噴霧乾燥などの技術により乾燥させることにより、カノーラタンパク質水溶液からカノーラタンパク質単離物を得ることが記載されている。
引用文献の摘記事項1の「タンパク質含有量が少なくとも約90wt%(N×6.25)、好ましくは少なくとも約100wt%である、上澄液由来カノーラタンパク質単離物のタンパク質成分含有量は、12Sタンパク質が0?約5wt%、7Sタンパク質が約5?約40wt%、および2Sタンパク質が約60?約95wt%である。」、引用文献の摘記事項2の「乾燥重量基準およびN×6.25のケルダール窒素換算で少なくとも約90wt%、好ましくは少なくとも約100wt%のタンパク質含有量を有し、2Sタンパク質が約60?約95wt%、7Sタンパク質が約5?約40 wt%、および12Sタンパク質が0?約5wt%であるタンパク質プロフィールを示すカノーラタンパク質単離物が提供される。上澄液由来カノーラタンパク質単離物は、好ましくは2Sタンパク質が約70?約95wt%、7Sタンパク質が約5?約30wt%、12Sタンパク質が0?約2wt%である。」及び引用文献の摘記事項5の「上澄液由来カノーラタンパク質単離物は、
約70?約95wt%の2Sタンパク質、
約5?約30wt%の7Sタンパク質、
0?約2wt%の12Sタンパク質を含有するのが好ましい。」という記載によると、引用文献には、カノーラタンパク質水溶液から、2Sタンパク質が約70?約95wt%、7Sタンパク質が約5?約30wt%、12Sタンパク質が0?約2wt%であり、乾燥重量基準およびN×6.25のケルダール窒素換算で少なくとも約90wt%のタンパク質含有量を有するカノーラタンパク質単離物を得ることが記載されている。

したがって、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認める。

「カノーラ油糧種子粗粉から得られ、かつ12S、7Sおよび2Sカノーラタンパク質を含むカノーラタンパク質水溶液に、タンパク質ミセル集積物を沈殿させて取り出す処理を施し、上澄液に、塩、およびタンパク質原料から抽出されたその他の非タンパク質系低分子量物質を含む低分子量種を通過させ、カノーラタンパク質を溶液内に留めるような選択膜技術を施し、該選択膜技術によるカノーラタンパク質が留められた溶液を乾燥させることから得られる、2Sタンパク質が約70?約95wt%、7Sタンパク質が約5?約30wt%、12Sタンパク質が0?約2wt%であり、乾燥重量基準およびN×6.25のケルダール窒素換算で少なくとも約90wt%のタンパク質成分含有量を有するカノーラタンパク質単離物。」

2 引用発明2
引用文献の摘記事項2の「乾燥重量基準およびN×6.25のケルダール窒素換算で少なくとも約90wt%、好ましくは少なくとも約100wt%のタンパク質含有量を有し、2Sタンパク質が約60?約95wt%、7Sタンパク質が約5?約40wt%、および12Sタンパク質が0?約5wt%であるタンパク質プロフィールを示すカノーラタンパク質単離物が提供される。上澄液由来カノーラタンパク質単離物は、好ましくは2Sタンパク質が約70?約95wt%、7Sタンパク質が約5?約30wt%、12Sタンパク質が0?約2wt%である。」という記載によると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認める。

「乾燥重量基準およびN×6.25のケルダール窒素換算で少なくとも約90wt%のタンパク質含有量を有し、2Sタンパク質が約70?約95wt%、7Sタンパク質が約5?約30wt%、12Sタンパク質が0?約2wt%のタンパク質成分含有量を有するカノーラタンパク質単離物。」

第6 本願発明と引用文献に記載された発明との対比・判断
1 本願発明2について
(1)対比
本願発明2と引用発明1を対比する。
引用発明1における「カノーラ」は、本願発明2における「キャノーラ」に相当する。
引用発明1における「2Sタンパク質が約70?約95wt%、7Sタンパク質が約5?約30wt%、12Sタンパク質が0?約2wt%であり」は、本願明細書の段落【0006】において、2Sタンパク質が約60?95重量%のタンパク質成分含量を有する単離物を大部分が2Sタンパク質であるとしていることからみて、本願発明2における「大部分が2Sタンパク質からなり」に相当する。
引用発明1における「乾燥重量基準およびN×6.25のケルダール窒素換算で少なくとも約90wt%」は、本願発明2における「乾燥重量ベース(d.b.)で少なくとも90重量%(N×6.25)」に相当する。
引用発明1における「タンパク質含有量」は、本願発明2における「タンパク質含量」に相当する。
引用発明1における「カノーラタンパク質が留められた溶液」が、本願発明2における「低分子量汚染物質を透過液として膜を通過させ」た後の「残留液」に相当することから、引用発明1における「タンパク質ミセル集積物を沈殿させて取り出す処理を施し、上澄液に、塩、およびタンパク質原料から抽出されたその他の非タンパク質系低分子量物質を含む低分子量種を通過させ、カノーラタンパク質を溶液内に留めるような選択膜技術を施し、該選択膜技術によるカノーラタンパク質が留められた溶液を乾燥させること」は、本願発明2における「12Sおよび7Sキャノーラタンパク質を選択的に残留液中に保持し2Sタンパク質を透過液として膜を通過させる第1の選択的膜技術を施し、前記透過液に、2Sキャノーラタンパク質を選択的に保持し低分子量汚染物質を透過液として膜を通過させる第2の選択的膜技術を施し、第2の選択的膜技術による前記残留液を乾燥させる選択的膜手順」と、「選択的膜技術を施した残留液を乾燥する手順」である限りで一致する。

したがって、本願発明2と引用発明1は、以下の点で一致する。

「キャノーラ油糧種子粗粉から得られ、かつ12S、7Sおよび2Sキャノーラタンパク質を含むキャノーラタンパク質水溶液に、選択的膜技術を施した残留液を乾燥する手順から得られる、大部分が2Sキャノーラタンパク質からなり乾燥重量ベース(d.b.)で少なくとも90重量%(N×6.25)のタンパク質含量を有する、キャノーラタンパク質単離物。」

そして、以下の点で相違する

<相違点1>
「選択的膜技術を施した残留液を乾燥する手順」が、本願発明2では、「12Sおよび7Sキャノーラタンパク質を選択的に残留液中に保持し2Sタンパク質を透過液として膜を通過させる第1の選択的膜技術を施し、前記透過液に、2Sキャノーラタンパク質を選択的に保持し低分子量汚染物質を透過液として膜を通過させる第2の選択的膜技術を施し、第2の選択的膜技術による前記残留液を乾燥させる選択的膜手順」であるのに対し、引用発明1では、「タンパク質ミセル集積物を沈殿させて取り出す処理を施し、上澄液に、塩、およびタンパク質原料から抽出されたその他の非タンパク質系低分子量物質を含む低分子量種を通過させ、カノーラタンパク質を溶液内に留めるような選択膜技術を施し、該選択膜技術によるカノーラタンパク質が留められた溶液を乾燥させること」である点。

(2)相違点1についての判断
そこで、上記相違点1について検討する。
本願発明2は、上記「第2 1(2)」の【請求項2】末尾に「キャノーラタンパク質単離物」と記載されているとおり、「キャノーラタンパク質単離物」という「物」に係る発明である。即ち本願発明2は、「キャノーラ油糧種子粗粉から得られ、かつ12S、7Sおよび2Sキャノーラタンパク質を含むキャノーラタンパク質水溶液」に「12Sおよび7Sキャノーラタンパク質を選択的に残留液中に保持し2Sタンパク質を透過液として膜を通過させる第1の選択的膜技術を施し、前記透過液に、2Sキャノーラタンパク質を選択的に保持し低分子量汚染物質を透過液として膜を通過させる第2の選択的膜技術を施し、第2の選択的膜技術による前記残留液を乾燥させる選択的膜手順」によって得られた「キャノーラタンパク質単離物」自体である。
そして、本願発明2における「12Sおよび7Sキャノーラタンパク質を選択的に残留液中に保持し2Sタンパク質を透過液として膜を通過させる第1の選択的膜技術」は、キャノーラタンパク質単離物中の12Sおよび7Sキャノーラタンパク質の割合を減少させ、2Sキャノーラタンパク質の割合を増大させるものであり、同じく「2Sキャノーラタンパク質を選択的に保持し低分子量汚染物質を透過液として膜を通過させる第2の選択的膜技術」は、キャノーラタンパク質単離物中の低分子量汚染物質の割合を減少させるものであり、しかも、第1及び第2の選択的膜技術による「膜を通過」させることや、「選択的に保持」するという処理によっては、個々のタンパク質自体(及び低分子量汚染物質)の構造や性質が変化するわけではないから、結局、本願発明2は、キャノーラ油糧種子粗粉から得られ、かつ12S、7Sおよび2Sキャノーラタンパク質を含むキャノーラタンパク質水溶液について、12Sおよび7Sキャノーラタンパク質の割合を減少させ、2Sキャノーラタンパク質の割合を増大させ、かつ低分子量汚染物質の割合を減少させ、さらに乾燥させることで得られた「大部分が2Sキャノーラタンパク質からなり乾燥重量ベース(d.b.)で少なくとも90重量%(N×6.25)のタンパク質含量を有する、キャノーラタンパク質単離物」の発明である。
他方、引用文献の摘記事項6の「2Sタンパク質は一般に上澄液由来カノーラタンパク質単離物から単離、精製され、7Sおよび12Sタンパク質は一般にPMM由来カノーラタンパク質単離物から単離、精製される。」という記載によると、タンパク質ミセル集積物からは7S及び12Sタンパク質が得られ、上澄液からは2Sタンパク質が得られることから、引用発明1は、「タンパク質ミセル集積物を沈殿させて取り出す処理を施」すことによって、12Sおよび7Sキャノーラタンパク質の割合を減少させ、2Sキャノーラタンパク質の割合を増大させるものである。また、引用発明1は、「上澄液に、塩、およびタンパク質原料から抽出されたその他の非タンパク質系低分子量物質を含む低分子量種を通過させ、カノーラタンパク質を溶液内に留めるような選択膜技術を施」すものであるから、水溶液中の低分子量汚染物質の割合を減少させていることは明らかである。
したがって、引用発明1も、キャノーラ油糧種子粗粉から得られ、かつ12S、7Sおよび2Sキャノーラタンパク質を含むキャノーラタンパク質水溶液について、12Sおよび7Sキャノーラタンパク質の割合を減少させ、2Sキャノーラタンパク質の割合を増大させ、かつ低分子量汚染物質の割合を減少させ、さらに乾燥させることで得られた「大部分が2Sキャノーラタンパク質からなり乾燥重量ベース(d.b.)で少なくとも90重量%(N×6.25)のタンパク質含量を有する、キャノーラタンパク質単離物」の発明である。
よって、相違点1は、物の発明である本願発明2と引用発明1との実質的な相違点ではない。

(3)小括
したがって、本願発明2は、引用発明1と同一であり、即ち引用文献1に記載された発明である。

2 本願発明3について
(1)対比
本願発明3と引用発明2を対比する。
引用発明2における「乾燥重量基準およびN×6.25のケルダール窒素換算で少なくとも約90wt%」は、本願発明3における「乾燥重量ベース(d.b.)で少なくとも90重量%(N×6.25)」に相当する。
引用発明2における「タンパク質含有量」は、本願発明3における「タンパク質含量」に相当する。
引用発明2における「カノーラ」は、本願発明3における「キャノーラ」に相当する。
引用発明2における「2Sタンパク質が約70?約95wt%、7Sタンパク質が約5?約30wt%、12Sタンパク質が0?約2wt%のタンパク質成分含有量を有するカノーラタンパク質単離物」は、本願発明3における「単離物中に存在するキャノーラタンパク質の少なくとも85重量%の2Sキャノーラタンパク質と15重量%未満の7Sキャノーラタンパク質を含むキャノーラタンパク質単離物」と、「単離物中に存在するキャノーラタンパク質が2Sキャノーラタンパク質と7Sキャノーラタンパク質を含むキャノーラタンパク質単離物」である限りで一致する。

したがって、本願発明3と引用発明2は、以下の点で一致する。

「乾燥重量ベース(d.b.)で少なくとも90重量%(N×6.25)のタンパク質含量を有し、単離物中に存在するキャノーラタンパク質が2Sキャノーラタンパク質と7Sキャノーラタンパク質を含むキャノーラタンパク質単離物。」

そして、以下の点で相違する。

<相違点2>
「単離物中に存在するキャノーラタンパク質が2Sキャノーラタンパク質と7Sキャノーラタンパク質を含むキャノーラタンパク質単離物」が、本願発明3では、「単離物中に存在するキャノーラタンパク質の少なくとも85重量%の2Sキャノーラタンパク質と15重量%未満の7Sキャノーラタンパク質を含むキャノーラタンパク質単離物」であるのに対し、引用発明2では、「2Sタンパク質が約70?約95wt%、7Sタンパク質が約5?約30wt%、12Sタンパク質が0?約2wt%のタンパク質成分含有量を有するカノーラタンパク質単離物」である点。

(2)相違点2についての判断
引用文献の摘記事項1の「上澄液由来カノーラタンパク質単離物のタンパク質成分含有量は、12Sタンパク質が0?約5wt%、7Sタンパク質が約5?約40wt%、および2Sタンパク質が約60?約95wt%である。」、摘記事項2の「上澄液由来カノーラタンパク質単離物は、好ましくは2Sタンパク質が約70?約95wt%、7Sタンパク質が約5?約30wt%、12Sタンパク質が0?約2wt%である。」及び引用文献の摘記事項5の「一般に、上澄液由来カノーラタンパク質単離物は、
約60?約95wt%の2Sタンパク質、
約5?約40wt%の7Sタンパク質、
0?約5wt%の12Sタンパク質を含有する。
上澄液由来カノーラタンパク質単離物は、
約70?約95wt%の2Sタンパク質、約5?約30wt%の7Sタンパク質、0?約2wt%の12Sタンパク質を含有するのが好ましい。」という記載は、引用発明2において、2Sの含有量は高く、7Sの含有量は低い方が好ましいことを示唆するものである。
また、引用文献の摘記事項5の「PMM形成および沈降の段階からの上澄液には、希釈段階で沈殿しなかったかなりの量のカノーラタンパク質が含まれているので、上澄液を処理してカノーラタンパク質を回収する。」及び「乾燥した上澄は、主として少量の7Sカノーラタンパク質および場合によっては少量の12Sカノーラタンパク質を伴った2Sタンパク質から構成される。」並びに引用文献の摘記事項7の「濃縮タンパク質溶液を、ライン36を経由して供給される冷水が入っている沈殿槽34に送り込む。沈殿槽34内で形成されるタンパク質ミセル集積物をライン38を経由して取り出し、噴霧乾燥機40に通して乾燥カノーラタンパク質分離物42を得る。」及び「沈殿槽34からの上澄液をライン44を経由して取り出し、ポンプで限外濾過膜46に通液し、ライン48中に保持液としての濃縮タンパク質溶液を生成させ、透過液はライン50を経由して除去する。濃縮タンパク質溶液を噴霧乾燥機52に通して更なる乾燥カノーラタンパク質単離物54を得る。」という記載によると、引用文献では、タンパク質溶液を、冷水が入っている沈殿槽に送り込むことによって、タンパク質ミセル集積物を形成し、該タンパク質ミセル集積物を取り出すことによって、2Sタンパク質の含有量を高く、7Sタンパク質の含有量を低くしているが、例えば、この方法を繰り返せば、2Sタンパク質の含有量をより高く、7Sタンパク質の含有量をより低くできることは、当業者にとって明らかである。
したがって、引用発明2において、2Sタンパク質の含有量を約70?約95wt%の内の少なくとも85重量%以上とし、7Sタンパク質の含有量を約5?約30wt%内の15重量%未満として、相違点2に係る本願発明3の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、2Sタンパク質は7Sタンパク質より質量及びサイズの小さいものであるから、2Sタンパク質は7Sタンパク質より可溶性があること及び2Sタンパク質の割合が高く7Sタンパク質の割合が低い水溶液が2Sタンパク質の割合が低く7Sタンパク質の割合が高い水溶液よりも光を散乱させない、即ち透明度が高いことは、当業者に明らかであり、2Sタンパク質の割合をより高く、7Sタンパク質の割合をより低くすれば、溶解性や透明度が高まることも当業者に予測可能である。したがって、「広い範囲のpH値にわたって水溶液中に可溶性であり、一般に、大部分が2Sタンパク質からなり、かつ調製の同一実験条件下でのキャノーラタンパク質のミセルの生成および沈殿による上澄み液から得られるキャノーラタンパク質単離物より高い溶解性を有している。」及び「大部分が2Sタンパク質からなり、かつ調製の同一実験条件下でのキャノーラタンパク質のミセルの生成および沈殿による上澄み液から得られるキャノーラタンパク質単離物から作製されるそうした水溶液より高い透明度を有している。」(本願明細書の段落【0019】等を参照。)という効果は、格別なものではなく、本願発明3により、引用発明2からみて、格別顕著な効果が奏されるとはいえない。

(3)小括
したがって、本願発明3は、引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明2は、引用発明1と同一であり、即ち引用文献に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
また、本願発明3は、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-12 
結審通知日 2012-09-18 
審決日 2012-10-01 
出願番号 特願2006-549806(P2006-549806)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A23J)
P 1 8・ 121- Z (A23J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨士 良宏  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 田村 耕作
加藤 友也
発明の名称 新規なキャノーラタンパク質単離物  
復代理人 太田 顕学  
代理人 宮崎 昭夫  
代理人 緒方 雅昭  
代理人 石橋 政幸  

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