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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1272006
審判番号 不服2012-7808  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-27 
確定日 2013-03-28 
事件の表示 特願2005-233299号「食品包装容器」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 2月22日出願公開、特開2007- 45488号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成17年8月11日の出願であって、平成23年3月22日付けの拒絶理由通知に対し同年6月2日付けで手続補正がされたが、平成24年1月18日付けで拒絶査定がされ、その後、平成24年4月27日付けで拒絶査定不服審判の請求がされると同時に特許請求の範囲及び明細書についての手続補正がされたものである。


II.平成24年4月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成24年4月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「【請求項1】
外周部にフランジ部を有する合成樹脂製の容器本体と蓋材とからなり、前記容器本体の底部は、容器本体の中央部に山状の凸部を有し、凸部の周囲に環状の内容物収容部が形成されており、前記容器本体内には内容物が充填された状態で、蓋材がかぶせられ、蓋材とフランジ部の間がベタシールされ、かつ、蓋材と前記凸部の頂面の外周部分の間が環状シール部でベタシールされており、かつ、前記環状シール部の内側の非シール部において、容器本体及び蓋材の少なくともいずれか一方に線状の切込みが開口しており、かつ蓋材のヒートシール層と容器本体のフランジ部との間のシール強度が、2?30N/15mm幅の範囲にあることを特徴とする電子レンジ用食品包装容器」
(なお、下線は、補正箇所を明示するために付したものである。)

2 補正の目的及び新規事項の追加の有無
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された、発明を特定するために必要な事項である「蓋材とフランジ部の間がベタシールされ」「ていることを特徴とする食品包装容器」について、そのシール強度として「蓋材のヒートシール層と容器本体のフランジ部との間のシール強度が、2?30N/15mm幅の範囲にある」と限定し、また、その用途として「電子レンジ用」との限定を付加するのもであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反しないか)について以下に検討する。

3-1 引用例の記載事項
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用され、この出願前に頒布された刊行物である実願平1-119324号(実開平3-60279号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。
1a:「1.側壁上端にフランジ部を連設したプラスチツク製の容器内に、容器裏面側に開口する中空殻体状の突起を立設し、この突起の頂面に該頂面より小面積の穴を穿設したことを特徴とする食品包装容器。
2.側壁上端にフランジ部を連設したプラスチツク製の容器内に、容器裏面側に開口する中空殻体状の突起を立設し、この突起の頂面に該頂面より小面積の穴を穿設した容器と、
前記容器内に収容した調理加工食品と、
縁部が前記フランジ部に熱接着され中間部が前記突起の頂面に前記穴を被覆する大きさで熱接着されたプラスチツクフイルム製のカバーと
から成る包装容器入り食品。
3.カバーに、突起の頂面の穴に連通する通気穴を穿設してある請求項1記載の包装容器入り食品。」(第1頁第5行?第2頁第1行)

1b:「以下第1図乃至第5図によりこの考案の第1実施例を説明する。
第1図および第2図において、1は半硬質プラスチツクで成形された容器で、底板2の四周に立設した側壁3の上端にフランジ部4を連設した浅い箱状を呈する。5は底板2と一体に成形した仕切を兼ねた突起で、容器1の裏面側に向つて開口するコ字状断面を有し、その中央の交差部5aの頂面6には、小さな穴7を穿設してある。
第3図乃至第5図は、容器1に食品8を収容した状態を示す。9は熱接着性を有するプラスチツクラミネートフイルムから成るカバー(トツプフイルム)で、容器1内に食品8を装入後、縁部を全周にわたつてフランジ部4に熱接着されており、10はその熱シール部を示す。またカバー9の中央部は、突起5の頂面6に点状(この実施例では円形)に熱接着され、11はその熱接着部(スポツト接着部)を示す。熱接着部11の面積は、穴7より大きく、頂面6の面積より小さく選定してあり、これにより突起5の穴7は、カバー9によりシールされている。この熱接着部11の形成は、熱シール部10の形成と同時におこなつてもよいし、別工程でおこなつてもよい。
上記構成の包装容器入り食品12を電子レンジにより加熱すると、食品8の温度上昇に伴う包装容器内の気体の膨張および食品8からの水蒸気の発生により、主としてカバー9が膨張する。この膨張により突起5への熱接着部11の近辺のカバー9が、第5図に矢印Xで示すように内圧を受けて強く引張られ、熱接着部11が剥離して穴7が開き、内部の気体がこの穴7から吹出して包装容器の内圧を下げ、カバー9が破裂しあるいは容器1が過大変形するのを防止する。なおこの吹出しにより、食品8が内部まで充分加熱されたことを知ることもでき、この時点で加熱を終えることにより食品8の過熱を防止することができる。」(第6頁第7行?第8頁第2行)

1c:「次に第6図および第7図はこの考案の他の実施例を示し、カバー9を突起5の頂面6に熱接着部11により熱接着後、あるいは熱接着と同工程で、カバー9に突起5の穴7に連通する通気穴21を穿設した点のみが、前記実施例と異なる。この通気穴21は細い刃物あるいは加熱工具の押付により形成できる。なお図中第1実施例と同一部分には同一符号を付してある。(以下他の実施例においても同様とする。)
この構成の包装容器入り食品を電子レンジにより加熱すると、第1実施例と同様にカバー9が矢印X方向に引張られて熱接着部11が剥離すると、穴7と共に通気穴21も開くので、容器内部の気体はこれら両方の穴から吹出して確実に内圧を下げるという効果が得られる。」(第8頁第3?17行)

1d:「この考案は上記各実施例に限定されるものではなく、たとえば突起5としては、容器1内に設けた仕切りを兼用する上記実施例のもののほか、仕切の高さが低い場合や仕切を設けない場合等は、第9図に示すように下向きに開口する円柱状の突起5などを底板2に立設して、あるいは仕切の上に連設して、用いてもよい。」(第10頁第7?13行)

1e:上記記載事項1dの「仕切を設けない場合等は、第9図に示すように下向きに開口する円柱状の突起5などを底板2に立設して」なる記載及び第9図の図示内容から、容器1の中央部に円柱状の突起5を底板2に立設していることが分かる。
第9図及び第3図を併せみれば、「仕切を設けない場合」、円柱状の突起5の周囲には、食品8を収容する連続した空間が形成されているものといえる。
また、第9図及び第1図を併せみれば、上記記載事項1bの「底板2の四周に立設した側壁3の上端にフランジ部4を連設」における「フランジ部4」は、底板2の四周に立設した側壁3の上端外側に連設されていることも分かる。

1f:第7図及び第8図には、穴7(第7図に円形破線で示されている。)と通気穴21(第7図に円形実線で示されている。)が略同軸に配置され、穴7は通気穴21よりも大径であること、また、熱接着部11は穴7の周囲にリング状に形成されていることが図示されている。そして、これら穴7、通気穴21及び熱接着部11の各配置を総合すれば、通気穴21の周囲には、少なくとも穴7と通気穴21との径差に相当する幅を有するリング状の非接着部が存在することが読み取れる。

よって、これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「半硬質プラスチックで成形された容器1であって、
底板2の四周に立設した側壁3の上端外側にフランジ部4を連設した浅い箱状を呈し、容器1の中央部に円柱状の突起5を底板2に立設し、その頂面6には、小さな穴7を穿設し、円柱状の突起5の周囲には、食品8を収容する連続した空間が形成され、
カバー9は、容器1内に食品8を装入後、縁部を全周にわたつてフランジ部4に熱接着されており、カバー9の中央部は、突起5の頂面6に円形に熱接着され、カバー9に、突起の頂面の穴7に連通する通気穴21を穿設し、通気穴21の周囲には、リング状の非接着部が存在し、
電子レンジにより加熱すると、熱接着部が剥離して、穴7と共に通気穴21も開くので、容器内部の気体はこれら両方の穴から吹出して確実に内圧を下げる、
容器1。」

(2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用され、この出願前に頒布された刊行物である特開2001-301802号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

2a:「本明細書にて言う気孔とは、ガス(水蒸気や空気など)を透過させる機能を有していれば、どのような形態であってもよい。その一例としては、切れ目(間隙が実質上ゼロ)やスリット(僅かな間隙あり)、円孔など比較的大きな開口、更にはピンホール(細孔)群などが挙げられる。」(段落【0023】)

2b:「本容器は、図1から判るように、開口1aを有するカップ状の容器本体1と、この容器本体1の開口1aを閉塞するよう、接着により、この容器本体1の開口縁部に配設された蓋2とからなる。なお蓋2には、その周縁の一部を延在させることで、つまみ2aが形成されている。」(段落【0034】)

2c:「そして本実施形態では、カバー体12における上記非接着部15に対応した領域部分に、切れ目(気孔)17を形成している。」(段落【0039】)

2d:「上記のごとく構成された容器は、食材Fが収容されたまま電子レンジにより加熱されることになるわけであるが、その際、上記蓋2は次のように機能する。
すなわち、加熱によって内圧が増大し、それが規定値に達すると、上記接着層13が上下に離断される。つまり、蓋2におけるカバー体12の一部が、蓋基板11から自然剥離する。この結果、ガス抜き用の孔11aから、ガス(水蒸気や容器内にもともと存在していた空気)が、蓋基板11とカバー体12との間に侵入する。そして最終的に、このガスは、カバー体12の切れ目17から外に排出される(図4参照)。」(段落【0042】?【0043】)

よって、これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「容器本体1と、蓋2とからなる容器であって、蓋2におけるカバー体12に、切れ目(気孔)17を形成し、食材Fが収容されたまま電子レンジにより加熱される容器」

(3)引用例3
原査定の拒絶の理由に引用され、この出願前に頒布された刊行物である特開昭62-235080号公報(以下「引用例3」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

3a:「(1)剥離可能なヒートシール帯を有する密封容器であって、該ヒートシール帯の少なくとも1ケ所が容器の内側方向に突出するように形成されているとともに、該突部に対応するヒートシール帯の外縁であって最も容器の内側方向に位置する部分が、容器の内縁にある該突部形成開始点を結んだ線よりも容器の内側方向に形成されていることを特徴とする加熱調理用密封容器。
(2)加熱調理用容器が開口部にフランジを有する容器本体と蓋とから構成され、ヒートシール帯がフランジ部に形成される特許請求の範囲第(1)項記載の容器。」(第1頁左下欄第4?15行)

3b:「次に本発明におけるヒートシールの形態について第2図に基づいて説明する。
第2図は容器本体と蓋部との接合部であって、該接合部が容器本体の口部上端側部にはり出したフランジ部1に形成されている。この部分に形成されたヒートシール帯2には、容器の内側方向に突出した突部3が形成されている。そしてこの際該突部3に対応するヒートシール帯の外縁4であって容器の最も内側方向に位置する部分5がヒートシール帯の内縁にある該突出部形成開始点6、6′を結んだ線7よりも容器の内側方向になるように形成する。このようなヒートシールを形成するに際し、ヒートシール強度が0.1?5kg/15mm好ましくは0.5?2.5kg/15mmとなるようにするのがよい。」(第3頁左上欄第10行?右上欄第4行)

3c:「本発明は、上述したようにヒートシール帯に容器の内側方向に突出する突出部を設けるとともに、該突部に対応するヒートシール帯の外縁であって最も容器の内側方向に位置する部分が、容器の内側方向にある該突出部形成開始点を結んだ線よりも容器の内側方向に形成させることが重要なのである。すなわち、通常内圧の上昇による剥離は、第2図に示す線7の近傍で剥離現象が止まるため所望巾Tの小孔を加熱調理時に開孔させるためには、突部の先端5が、ヒートシール帯内縁にある突部形成始点6、6′を結ぶ線より容器内方向にあることが必須だからである。
本発明における上記形態のヒートシールは公知の方法により容易に行なうことができる。
〔発明の効果〕
本発明の容器を用いれば次の利点が得られる。
(i) 電子レンジ等で加熱する際、内圧の上昇によって、ヒートシール帯の突部を介して容器が部分的に開口するので、容器の破裂や変形あるいは容器の破裂による内容物の吹きこぼれを防止し得る。
(ii) 容器の流通、保管に際しては、容器密封性の維持が可能であり、容器の加熱殺菌時に於いても密封性維持が可能である。
(iii) 容器が一部開口した状態で加熱調理されるため、内容物に対する蒸し効果を奏し得る。
(iv) 従来の自動開口容器に比べて、容器の製造が容易であり、製造コストの低減が図れる。又、加熱時の自動開口が確実に図れ、容器の加熱殺菌も実施可能である。
従って本発明の密封容器は、冷凍スープ、調理ずみ冷凍食品その他各種食品用の加熱調理容器として広範囲に使用される。又本発明容器は、レトルト殺菌等の加熱殺菌等にもその密封性が維持し得るため、種々のレトルト食品にも好適に適用し得る。」(第4頁左上欄第6行?右上欄第19行)

よって、これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されている。
「加熱調理用容器が開口部にフランジを有する容器本体と蓋とから構成され、ヒートシール帯がフランジ部に形成され、ヒートシール強度が好ましくは0.5?2.5kg/15mmとなるようにする、食品用の加熱調理用容器」

3-2 対比
本願補正発明と引用発明1を対比する。
(ア)引用発明の「半硬質プラスチックで成形された」は、文言の意味、形状又は機能等からみて本願補正発明の「合成樹脂製の」に相当し、以下同様に、「容器1」は「容器本体」に、「底板2の四周に立設した側壁3の上端外側に」は「外周部に」に、「フランジ部4」は「フランジ部」に、「円柱状の」は「山状の」に、「突起5」は「凸部」に、「底板2」は「底部」に、「頂面6」は「頂面」に、「食品8」は「内容物」に、「食品8を収容する連続した空間」は「環状の内容物収容部」に、「カバー9」は「蓋材」に、それぞれ相当する。
また、引用発明1の「カバー9は、容器1内に食品8を装入後、縁部を全周にわたつてフランジ部4に熱接着され」るのであるから、引用発明1では、容器1内に食品8が充填された状態で、カバー9がかぶせられることは明らかである。
さらに、引用発明1の容器1及びカバー9は、両者によって食品8を包装しているといえるので、容器1及びカバー9を組み合わせたものは、一の包装容器を成すものである。そして、容器1及びカバー9を組み合わせから成るこの一の包装容器は、「電子レンジにより加熱」されるのであるから、引用発明1は「電子レンジ用食品包装容器」を具備するものといえる。
そうすると、引用発明1は、「外周部にフランジ部を有する合成樹脂製の容器本体と蓋材とからなり、前記容器本体の底部は、容器本体の中央部に山状の凸部を有し、凸部の周囲に環状の内容物収容部が形成されており、前記容器本体内には内容物が充填された状態で、蓋材がかぶせられ」る「電子レンジ用食品包装容器」の点で、本願補正発明と一致する。

(イ)引用発明1では、「カバー9は、容器1内に食品8を装入後、縁部を全周にわたつてフランジ部4に熱接着されており、カバー9の中央部は、突起5の頂面6に円形に熱接着され」ているところ、「頂面6には、小さな穴7を穿設し」ているのであるから、「突起5の頂面6に円形に熱接着され」た領域は、「円形」内から「小さな穴7」部分を除いた環状の領域といえる。
そして、「フランジ部4に熱接着」、「円形に熱接着」の各「熱接着」が、少なくとも「電子レンジにより加熱する」以前において容器1内の食品8を密封するためのものであることは明らかであり、また、「カバー9は、・・・フランジ部4に熱接着され」ることにより、カバー9とフランジ部4との間には、ある所定範囲のシール強度が生じているものといえる。
よって、引用発明1は、“蓋材とフランジ部の間がシールされ、かつ、蓋材と前記凸部の頂面の間が環状シール部でシールされており”の点、及び“蓋材のヒートシール層と容器本体のフランジ部との間のシール強度が、所定の範囲にある”点で、本願補正発明と共通する。

(ウ)引用発明1では、「カバー9に、突起の頂面の穴7に連通する通気穴21を穿設し、通気穴21の周囲には、リング状の非接着部が存在し」ているところ、上記(イ)で検討したように「突起5の頂面6に円形に熱接着され」た領域は、環状の領域であることを踏まえると、この環状の領域の内側に「リング状の非接着部が存在し」ているものといえ、また、「通気穴21を穿設し」た結果、カバー9に穴形状の切込みが開口しているものといえる。
よって、引用発明1は、「環状シール部の内側の非シール部において、容器本体及び蓋材の少なくともいずれか一方に」「切込みが開口しており」の点で、本願補正発明と一致する。

以上の(ア)?(ウ)によれば、本願補正発明と引用発明1との一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
外周部にフランジ部を有する合成樹脂製の容器本体と蓋材とからなり、前記容器本体の底部は、容器本体の中央部に山状の凸部を有し、凸部の周囲に環状の内容物収容部が形成されており、前記容器本体内には内容物が充填された状態で、蓋材がかぶせられ、蓋材とフランジ部の間がシールされ、かつ、蓋材と前記凸部の頂面の間が環状シール部でシールされており、かつ、前記環状シール部の内側の非シール部において、容器本体及び蓋材の少なくともいずれか一方に切込みが開口しており、かつ蓋材のヒートシール層と容器本体のフランジ部との間のシール強度が、所定の範囲にある電子レンジ用食品包装容器。

(相違点1)
蓋材とフランジ部の間及び蓋材と凸部の頂面の間のシールについて、本願補正発明では「ベタシール」であるのに対し、引用発明1ではどのようなシールであるのか不明な点。

(相違点2)
蓋材と凸部の頂面の間のシールについて、本願補正発明では、「蓋材と前記凸部の頂面の外周部分の間が」シールされているのに対し、引用発明1では、蓋材と前記凸部の頂面の外周部分の間がシールされているのか否か不明な点。

(相違点3)
本願補正発明では、「環状シール部の内側の非シール部において、容器本体及び蓋材の少なくともいずれか一方に線状の切込みが開口して」いるのに対し、引用発明1では、環状シール部の内側の非シール部において、蓋材に切込みが開口しているものの、その切り込みは線状ではなく穴である点。

(相違点4)
本願補正発明では、「蓋材のヒートシール層と容器本体のフランジ部との間のシール強度が、2?30N/15mm幅の範囲にある」のに対し、引用発明1では、シール強度の具体的な数値が不明な点。

3-3 相違点の判断
上記各相違点について検討する。
(相違点1について)
容器本体と蓋材との間のシールは、容器本体内部の食品を密封包装するためのものであるから、そのシールをどのような形態とするかは、食品の密封を妨げない範囲で適宜に採用可能な設計上の選択事項である。
してみると、シールの形態として普通に用いられるベタシールを採用して、相違点1における本願補正発明の特定事項とすることは、当業者であれば適宜なし得たことである。

(相違点2について)
引用例1に「熱接着部11の面積は、穴7より大きく、頂面6の面積より小さく選定してあり、これにより突起5の穴7は、カバー9によりシールされている。」(記載事項1b参照)と記載されるように、引用発明1は、凸部の頂面における、穴7よりも外側であって、かつ頂面の外縁よりも内側の領域に、シールがされるものである。
そして、引用発明1において、頂面のどの範囲にシールを行うかは、穴7をシールするという機能を損なわない限りにおいて、穴7よりも外側かつ頂面の外縁よりも内側の領域の内から適宜に定め得るところであるから、その範囲を凸部の頂面の外周部分を含む範囲とし、相違点2における本願補正発明の特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

(相違点3について)
引用例2には上記引用発明2が記載され、引用発明2における「容器本体1と蓋2とからなる容器」は「容器本体と蓋材とからなる電子レンジ用食品包装容器」といえるものである。
また、引用例2の「気孔とは、ガス(水蒸気や空気など)を透過させる機能を有していれば、どのような形態であってもよい。その一例としては、切れ目(間隙が実質上ゼロ)やスリット(僅かな間隙あり)、円孔など比較的大きな開口、更にはピンホール(細孔)群などが挙げられる。」(記載事項2a)、「このガスは、カバー体12の切れ目17から外に排出される」(記載事項2d)の記載によれば、電子レンジによる加熱中に、切れ目は円孔などの開口と同様に、ガス(水蒸気や空気など)を透過させる機能を有するものである。
そうすると、引用発明1と引用発明2は、いずれも電子レンジ用食品包装容器という共通の技術分野に属すると共に、電子レンジによる加熱中に水蒸気等を開口を介して外部へ排出するという機能でも共通するのであるから、引用発明1において蓋材に開口する切り込みとして引用発明2の切れ目ないしスリットを適用し、相違点3における本願補正発明の特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

(相違点4について)
引用例3には、上記引用発明3が記載され、引用発明3の「食品用の加熱調理用容器」、「蓋」は、それぞれ「電子レンジ用食品包装容器」、「蓋材」といえるので、引用発明3は、「容器本体と蓋とからなり、容器本体のフランジ部と蓋材とのヒートシール強度が0.5?2.5kg/15mm、即ち、約5?25N/15mmである電子レンジ用食品包装容器」と把握できる。
そして、引用発明3は、このようなシール強度により、「通常内圧の上昇による剥離は、第2図に示す線7の近傍で剥離現象が止ま」(記載事項3c)り、突部を除くヒートシール帯の剥離を防ぐものといえる。
引用発明1も、「包装容器入り食品12を電子レンジにより加熱すると、・・・熱接着部11が剥離して穴7が開き、内部の気体がこの穴7から吹出して包装容器の内圧を下げ、カバー9が破裂しあるいは容器1が過大変形するのを防止する。」(記載事項1b)のであるから、電子レンジによる加熱中は、蓋材の容器本体フランジ部からの剥離を防止しているものである。
そうすると、引用発明1において、蓋材と容器本体のフランジ部との間のシール強度についてその数値範囲を、電子レンジによる加熱中のシール性や加熱調理後のイージーピール性等を踏まえて好適化するに当たり、引用発明3のシール強度を採用することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明の効果も、引用発明1?引用発明3から当業者が予測し得た程度のものであって格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2及び引用発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4 むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


III.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年6月2日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
外周部にフランジ部を有する合成樹脂製の容器本体と蓋材とからなり、前記容器本体の底部は、容器本体の中央部に山状の凸部を有し、凸部の周囲に環状の内容物収容部が形成されており、前記容器本体内には内容物が充填された状態で、蓋材がかぶせられ、蓋材とフランジ部の間がベタシールされ、かつ、蓋材と前記凸部の頂面の外周部分の間が環状シール部でベタシールされており、かつ、前記環状シール部の内側の非シール部において、容器本体及び蓋材の少なくともいずれか一方に線状の切込みが開口していることを特徴とする食品包装容器。」


IV.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び引用例2並びにその記載事項は、上記II.3-1に記載したとおりである。


V.対比・判断
上記II.3-2の検討を踏まえつつ本願発明と引用発明1とを対比すると、両者は、上記の相違点1?3で相違し、その余の点で一致している。
そして、相違点1?3については、上記II.3-3で検討したとおりである。
また、本願発明の効果も、引用発明1及び引用発明2から当業者が予測し得た程度のものであって格別のものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-23 
結審通知日 2013-01-31 
審決日 2013-02-13 
出願番号 特願2005-233299(P2005-233299)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
P 1 8・ 575- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 戸田 耕太郎  
特許庁審判長 山口 直
特許庁審判官 蓮井 雅之
関谷 一夫
発明の名称 食品包装容器  
代理人 金山 聡  

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