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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1272011
審判番号 不服2012-10069  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-31 
確定日 2013-03-28 
事件の表示 特願2007- 50890「菓子包装用積層体および菓子包装用袋」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月18日出願公開、特開2008-213861〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成19年3月1日の特許出願であって、平成23年11月15日付けで拒絶の理由が通知され、平成24年1月11日に手続補正がなされ、同年2月29日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同年5月31日に本件審判の請求とともに手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ、同年10月17日付けで審尋がなされ、同年12月13日に回答書が提出されたものである。

第2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲及び明細書について補正をするものであって、請求項1について、補正前後の記載は、以下のとおりである。

(1)補正前
「表面に粘着性がある菓子を包装する包装用積層体であって、前記包装用積層体が、少なくとも、基材層、接着剤又はアンカーコート剤からなる接着層、ポリオレフィン系樹脂層が順次積層され、
前記ポリオレフィン系樹脂層が、前記接着層側となる非イオン性界面活性剤を含まない樹脂層と、最内層となる非イオン性界面活性剤を含有する樹脂層を備えていることを特徴とする菓子包装用積層体。」

(2)補正後
「表面に粘着性がある菓子を包装する包装用積層体であって、前記包装用積層体が、少なくとも、基材層、接着剤又はアンカーコート剤からなる接着層、ポリオレフィン系樹脂層が順次積層され、
前記ポリオレフィン系樹脂層が、前記接着層側となる非イオン性界面活性剤を含まない樹脂層と、最内層となる非イオン性界面活性剤を含有する樹脂層を備えてなり、
前記非イオン性界面活性剤を含まない樹脂層にエチレン・α-オレフィンコポリマーが含まれていることを特徴とする菓子包装用積層体。」

2.補正の適否
本件補正の請求項1についての補正は、非イオン性界面活性剤を含まない樹脂層について、「エチレン・α-オレフィンコポリマーが含まれている」なる事項を付加するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か(いわゆる独立特許要件)について検討する。

(1)補正発明
補正発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、上記1.(2)のとおりのものと認める。

(2)刊行物に記載された発明
これに対し、本件出願前に頒布され、審尋で引用された刊行物である特開2001-48229号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【請求項1】 熱収縮性の基材層とポリオレフィン系樹脂のシーラント層とを有する積層フィルムより、前記シーラント層が最内側となるように製袋されて、内部に粘稠物を充填した後積層フィルムを熱収縮してなる包装体において、粘稠物の接するシーラント層の表面に、非イオン系界面活性剤の膜を形成してなる粘稠物の充填収縮包装体。」

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は粘稠物である練り餡、またフラワーペーストなどのショートニングをプラスチック積層フィルムの袋に充填封止してなる粘稠物の充填収縮包装体および粘稠物の充填収縮包装用積層フィルムに関する。」

「【0019】本発明において介在層とは、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンα-オレフィン共重合体、あるいは上記各樹脂に不飽和カルボン酸などの有機酸を付加あるいは共重合体させた樹脂、またはアイオノマー樹脂である。介在層を構成することにより基材層とシーラント層との熱収縮率のギャップによる層間剥離を防止したり、シール強度の低下やシール部に異常なシワが発生して外観不良となることを防止することができる。」

「【0022】本発明において非イオン系界面活性剤とは、ソルビタン脂肪酸エルテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン、オキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル等である。このうち脂肪酸エステルの酸基にについてはラウリン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、オレイン酸等である。なお、本発明においては基本的に極性基をもたないポリオレフィン系樹脂に配合してフィルム内面と粘稠物との好適な剥離性を得るため界面活性剤は非イオン系に特定される。特に、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルおよびプロピレングリコール脂肪酸エステルからなる群より選択された界面活性剤は、フィルム内面と粘稠物との好適な剥離性に優れ、かつ食品添加剤として認可された乳化剤と組成が同一であることから、練り餡やフラワーペースト等のショートニングまたはジャムやマヨネーズからなる食品粘稠物の包装体に好適に使用できる。
【0023】シーラント表面に構成される膜は充填包装体としての機能である、充填包装機に対する機械適性、ロール巻き取り時のブロッキング性、充填包装体のシール強度の維持を満足し、且つ、取出し時の剥離性を向上するためには、特定薄膜構造が必要となる。膜の形成手段としては、シーラント層に界面活性剤を配合し、その界面活性剤が包装体の内面に移行して膜を形成させることができる。配合に際してシーラント層はポリオレフィン系樹脂100重量部当り0.03重量部?5重量部の非イオン系界面活性剤を配合するのが好ましい。非イオン系界面活性剤が0.03重量部未満であるとフィルムと粘稠物との剥離性を満足させることができず、5重量部を超えると界面活性剤の接着面へのブリードアウトのため、シーラント層同志の接着強度が低下し収縮時包装体にピンホールや剥離のおそれがある。」

「【0029】図3は包装用積層フィルム1の層構成を示す拡大断面図であり、5は収縮性を有する基材層、6は柔軟性を有する介在層、7は熱融着性を有するシーラント層である。シーラント層7の内表面には界面活性剤の膜8が形成されている。」

「【0032】
【実施例および比較例】(実施例)収縮性を有する厚さ17μmの二軸延伸ポリアミドフィルムからなる基材層に、イソシアネート系のプライマー処理をしながら押出しラミネーターにて、厚さ25μmの低密度ポリエチレンからなる介在層を介して、厚さ70μmの線状低密度ポリエチレンと上記線状低密度ポリエチレン100重量部当り、0.6重量部のグリセリン脂肪酸エステルを配合したシーラント層をサンドイッチ加工して積層フィルムを得た。界面活性剤の練り混みに際しては、ブレンドミキサーで混合後に、押出し機にてコンウンドしてペレット化した後、Tダイフィルムキャスト装置にて、フィルム状のシーラント層を得た。」

これらを、補正発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認める。

「練り餡などの粘稠物を包装する充填収縮包装用積層フィルムであって、前記充填収縮包装用積層フィルムが、基材層5、基材層5にイソシアネート系のプライマー処理された部分、介在層6、シーラント層7が順次積層され、シーラント層7は内表面側であり、
前記介在層6は柔軟性を有し層間剥離を防止するためのエチレンα-オレフィン共重合体であり、
前記シーラント層7はポリオレフィン系樹脂に非イオン性界面活性剤が配合されている、
粘稠物充填収縮包装用積層フィルム。」

(3)対比
補正発明と刊行物1発明とを、技術常識を踏まえ、対比する。
刊行物1発明の「練り餡などの粘稠物」は補正発明の「表面に粘着性がある菓子」に相当し、同様に「充填収縮包装用積層フィルム」は「包装用積層体」に、「基材層5にイソシアネート系のプライマー処理された部分」は「接着剤又はアンカーコート剤からなる接着層」に、それぞれ相当する。
刊行物1発明のシーラント層7は「非イオン性界面活性剤が配合され」た「ポリオレフィン系樹脂」層であり、介在層6は「エチレンα-オレフィン共重合体」であるから「ポリオレフィン系樹脂」である。
よって、刊行物1発明のシーラント層7、介在層6は、両者ともに「ポリオレフィン系樹脂層」に相当する。
刊行物1発明の介在層6は、「シーラント層7」と「イソシアネート系のプライマー処理された部分」との間にあり、「エチレンα-オレフィン共重合体」であるから、「接着層側となる樹脂層」で「エチレン・α-オレフィンコポリマーを含む」という限りにおいて、補正発明の「接着層側となる非イオン性界面活性剤を含まない樹脂層」であり「エチレン・α-オレフィンコポリマーが含まれている」層と一致する。
刊行物1発明のシーラント層7は、「内表面側」に配置され、「非イオン性界面活性剤が配合され」ているから、補正発明の「最内層となる非イオン性界面活性剤を含有する樹脂層」に相当する。

したがって、補正発明と刊行物1発明とは、次の点で一致している。
「表面に粘着性がある菓子を包装する包装用積層体であって、前記包装用積層体が、基材層、接着剤又はアンカーコート剤からなる接着層、ポリオレフィン系樹脂層が順次積層され、
前記ポリオレフィン系樹脂層が、前記接着層側となる樹脂層と、最内層となる非イオン性界面活性剤を含有する樹脂層を備えてなり、
前記接着層側となる樹脂層にエチレン・α-オレフィンコポリマーが含まれている菓子包装用積層体。」

そして、補正発明と刊行物1発明とは、以下の点で相違している。
接着層側となる樹脂層について、補正発明は、「非イオン性界面活性剤を含まない」もので「エチレン・α-オレフィンコポリマーが含まれている」ものであるが、刊行物1発明は、「非イオン性界面活性剤」の有無が明らかでなく、「エチレン・α-オレフィンコポリマー」である点。

(4)相違点の検討
相違点について検討する。
刊行物1において、「非イオン性界面活性剤」に関し、以下の記載がある。
「上記のような用途に供される包装体にあっては、粘稠物を取り出す際に剥離性が要求される」(段落0005)
「フイルムに粘稠物が付着する量をさらに少なくすべく剥離性の向上が要求されていた。」(段落0009)
「取出し時の剥離性を向上するためには、特定薄膜構造が必要となる。膜の形成手段としては、シーラント層に界面活性剤を配合し、その界面活性剤が包装体の内面に移行して膜を形成させることができる。配合に際してシーラント層はポリオレフィン系樹脂100重量部当り0.03重量部?5重量部の非イオン系界面活性剤を配合するのが好ましい。」(段落0023)
すなわち、刊行物1発明において、「非イオン性界面活性剤」は、「剥離性の向上」のために配合されるものである。そして、「接着層側となる樹脂層」は、粘着性がある菓子に接することはないから、剥離性とは無関係である。
よって、「接着層側となる樹脂層」を「非イオン性界面活性剤を含まない」ものとすることに、困難性は認められない。
次に、「エチレン・α-オレフィンコポリマー」の技術的意義について検討する。
補正発明においては、「非イオン性界面活性剤を含まないポリオレフィン系樹脂層にはエチレン・α-オレフィンコポリマーをブレンドすることができ、非イオン性界面活性剤を含有するポリオレフィン系樹脂層との接着向上に効果がある」(段落0020)と記載されているとおり、「エチレン・α-オレフィンコポリマー」は、「接着向上」のためのものである。
刊行物1発明においては、「介在層とは、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンα-オレフィン共重合体、あるいは上記各樹脂に不飽和カルボン酸などの有機酸を付加あるいは共重合体させた樹脂、またはアイオノマー樹脂である。介在層を構成することにより基材層とシーラント層との熱収縮率のギャップによる層間剥離を防止したり、シール強度の低下やシール部に異常なシワが発生して外観不良となることを防止することができる」(段落0019)と記載されているとおり、「層間剥離を防止」するためのものである。
してみると、「エチレン・α-オレフィンコポリマー」の技術的意義は、補正発明、刊行物1発明ともに、実質的に同一である。
さらに、刊行物1には、段落0019に、「エチレン・α-オレフィンコポリマー」に「不飽和カルボン酸などの有機酸を付加あるいは共重合体させた樹脂」でも良いと記載されている。
刊行物1発明において、「接着層側となる樹脂層」に、他の樹脂を配合するか否かは「接着向上」効果との関係で適宜選択すべきものであるから、「エチレン・α-オレフィンコポリマー」「を含む」「接着層側となる樹脂層」とすることは、必要に応じてなしうる設計的事項にすぎない。
以上のことから、補正発明は、刊行物1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人は、回答書で、補正案を示しているが、補正案には、法的根拠がない。
仮に、補正案を採用したとしても、他の樹脂として周知なものであり、格別な技術的意義が生じるとは認められないから、結論に変わりはない。

3.むすび
したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし3に係る発明は、平成24年1月11日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2.1.(1)に示す請求項1に記載されたとおりである。

2.刊行物等
これに対して、原査定の拒絶理由で引用された刊行物である特開2004-284315号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【請求項1】
基材上に、少なくともシーラント層を設けた易剥離性包装材料であって、
前記シーラント層の表面が微細な凹凸からなり、かつ、該表面の濡れ指数が34dyne以下であることを特徴とする易剥離性包装材料。
【請求項2】
・・・。
【請求項3】
前記シーラント層が、該表面の濡れ性を改質する添加剤が添加されてなることを特徴とする請求項1または2記載の易剥離性包装材料。
【請求項4】
前記表面の濡れ性を改質する添加剤が、界面活性剤、滑剤のいずれかもしくはその混合物からなる添加剤であって、その添加量が、100?10000ppmの範囲であることを特徴とする請求項3記載の易剥離性包装材料。」

「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材上に少なくともシーラント層を設けた易剥離性包装材料およびその包装材料を用いた易剥離性包装袋に係わり、さらに詳細には、該シーラント層の易剥離性を改良し、高粘稠物もしくは高粘稠体の食品や非食品を包装するのに好適な易剥離性包装材料および易剥離性包装袋に関する。」

「【0003】
マヨネーズやクリームなどの粘度の高い粘稠物の場合は袋から内容物を素早く、袋に残らないように取り出すために、また、チョコレートやチーズなどの粘度の高い粘稠体の場合は・・・。」

「【0005】
かかるシーラントフィルム(シーラント層)には、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン・α-オレフィン共重合体(L-LDPE)、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン等の主としてポリオレフィン系樹脂を使用したフィルムが使用されている。・・・。」

「【0023】
本発明において使用される界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤であるグリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の混合物や、イオン性界面活性剤であるアルキルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸ソーダ、アルキルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフォスフェート、N?アシルザルコシン、ソジウムジアルキルスルフォサクシネート等を挙げることができる。」

これらを、本願発明に照らして整理すると、刊行物2には以下の発明(以下、「刊行物2発明」という。)が記載されていると認める。

「チョコレートなどの高粘稠体の食品を包装する易剥離性包装材料であって、前記易剥離性包装材料が、基材、シーラント層が順次積層され、
前記シーラント層が、非イオン性界面活性剤が添加されたポリオレフィン系樹脂である易剥離性包装材料。」

3.対比
本願発明と刊行物2発明とを、技術常識を踏まえ、対比する。
刊行物2発明の「チョコレートなどの高粘稠体の食品」は本願発明の「表面に粘着性がある菓子」に相当し、同様に「易剥離性包装材料」は「包装用積層体」に、「基材」は「基材層」に、相当する。
刊行物2発明の「シーラント層」は「非イオン性界面活性剤が添加されたポリオレフィン系樹脂」からなるから、本願発明の「ポリオレフィン系樹脂層」に相当する。

したがって、本願発明と刊行物2発明とは、次の点で一致している。
「表面に粘着性がある菓子を包装する包装用積層体であって、前記包装用積層体が、基材層、ポリオレフィン系樹脂層が順次積層され、
前記ポリオレフィン系樹脂層が、非イオン性界面活性剤を含有する樹脂層を備えている菓子包装用積層体。」

そして、本願発明と刊行物2発明とは、以下の点で相違している。
相違点2:積層構造について、本願発明は基材層とポリオレフィン系樹脂層の間に「接着剤又はアンカーコート剤からなる接着層」を有するが、刊行物2発明は明らかでない点。
相違点3:ポリオレフィン系樹脂層について、本願発明は「接着層側となる非イオン性界面活性剤を含まない樹脂層と、最内層となる非イオン性界面活性剤を含有する樹脂層」の2層であるが、刊行物2発明は「非イオン性界面活性剤を含有する樹脂層」の1層である点。

4.相違点の検討
相違点2について検討する。
基材層とポリオレフィン系樹脂層の間に、「接着剤からなる接着層」を設ける点は、上記刊行物1にみられるごとく周知である。
そして、これにより両層の接着性の向上が期待されることから、刊行物2発明に、かかる周知技術を適用し、相違点2に係るものとすることは、必要に応じてなしうる設計的事項にすぎない。

相違点3について検討する。
オレフィン系樹脂に界面活性剤を添加した系からなるヒートシール層を備えた包装材において、当該包装材に備えた基材層に、非イオン性界面活性剤を無添加としたオレフィン系樹脂からなる層を介して、オレフィン系樹脂に非イオン性界面活性剤を添加した系からなるヒートシール層を設け、オレフィン系樹脂層を2層とすることは、上記刊行物1、原査定で引用した特開平11-43175号公報の段落0022に示されるように、周知である。
そして、「非イオン性界面活性剤」は、「剥離性の向上」のために配合されるものであり、接着性には寄与しないことから、非イオン性界面活性剤を含む層を包装対象物に接する側とし、非イオン性界面活性剤を含まない層を接着層側とすることは、各層の特性を踏まえた当然の選択にすぎない。

また、これら相違点を総合勘案しても、格別の技術的意義が生じるとは認められない。

5.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-23 
結審通知日 2013-01-31 
審決日 2013-02-13 
出願番号 特願2007-50890(P2007-50890)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B65D)
P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 種子島 貴裕  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 栗林 敏彦
▲高▼辻 将人
発明の名称 菓子包装用積層体および菓子包装用袋  
代理人 金山 聡  

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