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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1272038
審判番号 不服2011-10311  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-17 
確定日 2013-03-27 
事件の表示 特願2008-550411「テキストの識別」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月26日国際公開、WO2007/084336、平成21年 6月25日国内公表、特表2009-524131〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2007年1月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年1月13日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成20年7月11日に特許法第184条の5第1項に規定される書面が提出され、同年8月27日付けで特許法第184条の4第1項の規定による国際出願日における明細書、請求の範囲、図面(図面の中の説明に限る。)及び要約の翻訳文が提出され、同日付けで審査請求が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、平成21年2月13日付けで手続補正がなされ、平成22年10月20日付けで拒絶理由通知(同年10月22日発送)がなされ、平成23年1月18日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、同年2月18日付けで拒絶査定(同年2月22日謄本送達)がなされ、これに対して、同年5月17日付けで審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。
そして、平成23年8月30日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、平成24年4月24日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(同年5月2日発送)がなされ、同年7月18日付けで回答書の提出があったものである。


第2 平成23年5月17日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成23年5月17日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容

平成23年5月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成23年1月18日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項33の記載

「 【請求項1】
文書の電子複写、写真複写、又は走査中にテキストの一部が複写されたかどうかを判定する方法であって、
処理デバイスによって、前記テキストの標的断片からキー記号ストリングを識別する工程と、
処理デバイスによって、前記テキストの前記標的断片の中で前記キー記号ストリングが生起する位置を識別する工程と、
処理デバイスによって、前記テキストの前記標的断片の中で前記キー記号ストリングの位置のそれぞれの隣接する同士の間の距離を判定する工程と、
処理デバイスによって、前記キー記号ストリングおよび前記距離に基づいて標的符号を生成する工程と、
処理デバイスによって、テキストの試料断片が前記標的符号を含むかどうかを判定する工程と、
処理デバイスによって、テキストの前記試料断片が前記標的符号を含むと判定されると、行動の制御を開始する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
一つまたは複数の文字の単一の固定ストリングを前記キー記号ストリングとして使用する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
アルファベット、記号、またはスペースのうち少なくとも1つを、1つ又は複数の文字として使用する工程をさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
アルファベット、記号、またはスペースのうち少なくとも1つの別々の配列を、1つまたは複数の文字として使用する工程をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
アルファベット、記号、またはスペースのうち少なくとも1つの同一の配列を、1つまたは複数の文字として使用する工程をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項6】
1つまたは複数の文字の可変長ストリングを前記キー記号ストリングとして使用する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
アルファベット、記号、またはスペースのうち少なくとも1つを、1つまたは複数の文字として使用する工程をさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
アルファベット、記号、またはスペースのうち少なくとも1つの別々の配列を、1つまたは複数の文字として使用する工程をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
アルファベット、記号、またはスペースのうち少なくとも1つの同一の配列を、1つまたは複数の文字として使用する工程をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
複数のストリングを前記キー記号ストリングとして使用する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
固定ストリングおよび可変長ストリングを前記複数のストリングとして使用する工程をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
別々のストリングを前記複数のストリングとして使用する工程をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記複数のストリングの中の各ストリング間の間隔を使用する工程をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項14】
1つまたは複数の文字を前記間隔として使用する工程をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
固定のまたは可変長の間隔を前記間隔として使用する工程をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項16】
複数のキー記号ストリングを前記キー記号ストリングとして使用する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
アルファベット、記号、スペース、またはその他の文字のうち少なくとも1つを計数して、前記キー記号ストリングの各隣接位置の間の前記距離を判定する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
単一または複数の文字スペースを計数して、前記キー記号ストリングの各隣接位置の間の前記距離を判定する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
改行を表すために距離計測法を使用して、前記キー記号ストリングの各隣接位置の間の前記距離を判定する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
テキストの前記試料断片における前記標的符号の部分的一致を、テキストの前記試料断片が前記標的符号を含む判定として使用する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項21】
テキストの前記試料断片における前記標的符号の完全一致を、テキストの前記試料断片が前記標的符号を含む判定として使用する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項22】
前記行動は、通知を出力する工程、イメージングデバイスを動作不能にする工程、可視信号を生成する工程、可聴信号を生成する工程、項目をログへ書き込む工程、メッセージを遠隔システムへ送る工程、または使用料の自動的請求書を生成する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項23】
イメージングデバイス上で文書を画像化する工程、
処理デバイスによって、文書の少なくとも一部をデジタルデータへ変換する工程、
によって、テキストの前記試料断片を生成する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項24】
文書の画像を生成するように構成されたイメージングデバイス、
前記文書の前記画像の一部をデジタルデータへ変換するように構成された変換デバイス、
解析デバイスであって、
デジタルデータの標的断片からキー記号ストリングを識別し、
前記テキストの前記標的断片の中で前記キー記号ストリングが生起する位置を識別し、
前記テキストの前記標的断片の中で前記キー記号ストリングの位置のそれぞれの隣接する同士の間の距離を判定し、
前記キー記号ストリングおよび前記距離に基づいて標的符号を生成し、
前記テキストの試料断片が前記標的符号を含むかどうかを判定する、
解析デバイスと、
前記試料の一部が前記標的符号を含むと判定されると行動の制御を開始するように構成されたコントローラ
を備えた、システム。
【請求項25】
前記標的符号を記憶するように構成されたメモリデバイスをさらに備えた、請求項24記載のシステム。
【請求項26】
前記行動は、イメージングデバイスを動作不能にすること、可視信号を生成すること、可聴信号を生成すること、項目をログへ書き込むこと、メッセージを遠隔システムへ送ること、または使用料の自動的請求書を生成することを含む、請求項24記載のシステム。
【請求項27】
前記遠隔システムが、前記標的符号を記憶するように構成されたメモリデバイスを備えた、請求項26記載のシステム。
【請求項28】
前記遠隔システムが、一致信号を受信した場合に行動を開始するように構成されたコントローラを備えた、請求項26記載のシステム。
【請求項29】
前記行動が、使用料の自動的請求書を生成することを含む、請求項28記載のシステム。
【請求項30】
前記文書の前記画像の物理的コピーを作成する、前記コントローラへ接続されたプリンタをさらに備えた、請求項24記載のシステム。
【請求項31】
前記変換デバイスが光学式文字認識(OCR)デバイスである、請求項24記載のシステム。
【請求項32】
プロセッサによって実行された場合に、
前記テキストの標的断片からキー記号ストリングを識別する工程と、
前記テキストの前記標的断片の中で前記キー記号ストリングが生起する位置を識別する工程と、
前記テキストの前記標的断片の中で前記キー記号ストリングの位置のそれぞれの隣接する同士の間の距離を判定する工程と、
前記キー記号ストリングおよび前記距離に基づいて標的符号を生成する工程と、
前記テキストの試料断片が前記標的符号を含むかどうかを判定する工程と、
前記テキストの試料断片が前記標的符号を含むと判定されると、行動の制御を開始する工程と、
を含む方法をプロセッサに遂行させるコンピュータプログラムコードが記録された、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項33】
テキストの標的断片からキー記号ストリングを識別する手段と、
前記テキストの前記標的断片の中で前記キー記号ストリングが生起する位置を識別する手段と、
前記テキストの前記標的断片の中で前記キー記号ストリングの位置のそれぞれの隣接する同士の間の距離を判定する手段と、
前記キー記号ストリングおよび前記距離に基づいて標的符号を生成する手段と、
前記テキストの試料断片が前記標的符号を含むかどうかを判定する手段と、
前記テキストの試料断片が前記標的符号を含むと判定されると、行動の制御を開始する手段と
を備えたシステム。
」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)

を、

「 【請求項1】
文書の電子複写、写真複写、又は走査中にテキストの一部が複写されたかどうかを判定する方法であって、
処理デバイスによって、前記テキストの標的断片から特定のキー記号ストリングを識別する工程と、
処理デバイスによって、前記テキストの前記標的断片の中で前記特定のキー記号ストリングが繰り返し生起する位置を識別する工程と、
処理デバイスによって、識別された前記特定のキー記号ストリングの位置に基づいて、前記テキストの前記標的断片の中で隣り合う前記特定のキー記号ストリング同士の間のそれぞれの距離を判定する工程と、
処理デバイスによって、前記特定のキー記号ストリングおよび前記判定されたそれぞれの距離に基づいて標的符号を生成する工程と、
処理デバイスによって、テキストの試料断片が前記標的符号を含むかどうかを判定する工程と、
処理デバイスによって、テキストの前記試料断片が前記標的符号を含むと判定されると、行動の制御を開始する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
一つまたは複数の文字の単一の固定ストリングを前記特定のキー記号ストリングとして使用する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
アルファベット、記号、またはスペースのうち少なくとも1つを、1つ又は複数の文字として使用する工程をさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
アルファベット、記号、またはスペースのうち少なくとも1つの別々の配列を、1つまたは複数の文字として使用する工程をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
アルファベット、記号、またはスペースのうち少なくとも1つの同一の配列を、1つまたは複数の文字として使用する工程をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項6】
1つまたは複数の文字の可変長ストリングを前記特定のキー記号ストリングとして使用する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
アルファベット、記号、またはスペースのうち少なくとも1つを、1つまたは複数の文字として使用する工程をさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
アルファベット、記号、またはスペースのうち少なくとも1つの別々の配列を、1つまたは複数の文字として使用する工程をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
アルファベット、記号、またはスペースのうち少なくとも1つの同一の配列を、1つまたは複数の文字として使用する工程をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
複数のストリングを前記特定のキー記号ストリングとして使用する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
固定ストリングおよび可変長ストリングを前記複数のストリングとして使用する工程をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
別々のストリングを前記複数のストリングとして使用する工程をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記複数のストリングの中の各ストリング間の間隔を使用する工程をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項14】
1つまたは複数の文字を前記間隔として使用する工程をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
固定のまたは可変長の間隔を前記間隔として使用する工程をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項16】
複数のキー記号ストリングを前記キー記号ストリングとして使用する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
アルファベット、記号、スペース、またはその他の文字のうち少なくとも1つを計数して、前記特定のキー記号ストリング同士の間の前記それぞれの距離を判定する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
単一または複数の文字スペースを計数して、前記特定のキー記号ストリング同士の間の前記それぞれの距離を判定する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
改行を表すために距離計測法を使用して、前記特定のキー記号ストリング同士の間の前記それぞれの距離を判定する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
テキストの前記試料断片における前記標的符号の部分的一致を、テキストの前記試料断片が前記標的符号を含む判定として使用する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項21】
テキストの前記試料断片における前記標的符号の完全一致を、テキストの前記試料断片が前記標的符号を含む判定として使用する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項22】
前記行動は、通知を出力する工程、イメージングデバイスを動作不能にする工程、可視信号を生成する工程、可聴信号を生成する工程、項目をログへ書き込む工程、メッセージを遠隔システムへ送る工程、または使用料の自動的請求書を生成する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項23】
イメージングデバイス上で文書を画像化する工程、
処理デバイスによって、文書の少なくとも一部をデジタルデータへ変換する工程、
によって、テキストの前記試料断片を生成する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項24】
文書の画像を生成するように構成されたイメージングデバイスと、
前記文書の前記画像の一部をデジタルデータへ変換するように構成された変換デバイスと、
解析デバイスであって、
デジタルデータの標的断片から特定のキー記号ストリングを識別し、
前記デジタルデータの前記標的断片の中で前記特定のキー記号ストリングが繰り返し生起する位置を識別し、
前記デジタルデータの前記標的断片の中で隣り合う前記特定のキー記号ストリング同の間のそれぞれの距離を判定し、
前記特定のキー記号ストリングおよび前記それぞれの距離に基づいて標的符号を生成し、
前記デジタルデータの試料断片が前記標的符号を含むかどうかを判定する、
解析デバイスと、
前記試料の一部が前記標的符号を含むと判定されると行動の制御を開始するように構成されたコントローラと
を備えた、システム。
【請求項25】
前記標的符号を記憶するように構成されたメモリデバイスをさらに備えた、請求項24記載のシステム。
【請求項26】
前記行動は、イメージングデバイスを動作不能にすること、可視信号を生成すること、可聴信号を生成すること、項目をログへ書き込むこと、メッセージを遠隔システムへ送ること、または使用料の自動的請求書を生成することを含む、請求項24記載のシステム。
【請求項27】
前記遠隔システムが、前記標的符号を記憶するように構成されたメモリデバイスを備えた、請求項26記載のシステム。
【請求項28】
前記遠隔システムが、一致信号を受信した場合に行動を開始するように構成されたコントローラを備えた、請求項26記載のシステム。
【請求項29】
前記行動が、使用料の自動的請求書を生成することを含む、請求項28記載のシステム。
【請求項30】
前記文書の前記画像の物理的コピーを作成する、前記コントローラへ接続されたプリンタをさらに備えた、請求項24記載のシステム。
【請求項31】
前記変換デバイスが光学式文字認識(OCR)デバイスである、請求項24記載のシステム。
【請求項32】
プロセッサによって実行された場合に、
テキストの標的断片から特定のキー記号ストリングを識別する工程と、
前記テキストの前記標的断片の中で前記特定のキー記号ストリングが繰り返し生起する位置を識別する工程と、
前記テキストの前記標的断片の中で隣り合う前記特定のキー記号ストリング同士の間のそれぞれの距離を判定する工程と、
前記特定のキー記号ストリングおよび前記それぞれの距離に基づいて標的符号を生成する工程と、
前記テキストの試料断片が前記標的符号を含むかどうかを判定する工程と、
前記テキストの試料断片が前記標的符号を含むと判定されると、行動の制御を開始する工程と、
を含む方法をプロセッサに遂行させるコンピュータプログラムコードが記録された、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項33】
テキストの標的断片から特定のキー記号ストリングを識別する手段と、
前記テキストの前記標的断片の中で前記特定のキー記号ストリングが繰り返し生起する位置を識別する手段と、
前記テキストの前記標的断片の中で隣り合う前記特定のキー記号ストリング同士の間のそれぞれの距離を判定する手段と、
前記特定のキー記号ストリングおよび前記それぞれの距離に基づいて標的符号を生成する手段と、
前記テキストの試料断片が前記標的符号を含むかどうかを判定する手段と、
前記テキストの試料断片が前記標的符号を含むと判定されると、行動の制御を開始する手段と
を備えたシステム。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)

に補正するものである。

そして、本件補正は、補正前の請求項1、2、6、10、17ないし19、24、32、33に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2.独立特許要件

以上のように、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、補正前の請求項1に対して、限定的減縮を行ったものと認められる。そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)以下に検討する。

(1)補正後の発明

本件補正により、本願補正発明は、前記「1.補正の内容」の補正後の請求項1に記載されたとおりのものである。

(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

本願の出願前に頒布され、原審の拒絶の査定の理由である上記平成22年10月20日付けの拒絶理由通知において引用された、特開平11-110414号公報(平成11年4月23日出願公開。以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

A 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コンピュータ化された情報の捜索および検索システムの技術分野に関する。特に本発明は、ドキュメントデータベースの中に生起する類似または同一の節をユーザが効率よくその存在場所を見つけて検索することができるようにするための方法および装置に関する。」

B 「【0002】
【従来の技術】ドキュメントは、ますますデジタルビットからなるデータとして表され、電子的なデータベースに記憶されている。これらのドキュメントは、しばしば新聞、雑誌、機関誌、百科事典、本およびその他の印刷物の電子版として現われる。そのような電子的な「テキスト」は、文字、単語、文、段落、または不確定すなわち種々の長さの列から構成され得て、しかも英数字、記号、グラフィックス、または如何なる部類のビット列でもよいような広範囲のデータ分類を含んでいてもよい。これらの電子的なテキストから抽出さる節は、コンピュータを用いてアクセスされることができ、そして極めて容易かつ適切にさらに再発行され得る。
【0003】著者と発行人は、自分達が作成した原文の節(例えば、新聞や雑誌の論文)に対してかなりの所有権的な価値を置く。しかしながら原文の節が電子的な記憶媒体の中で容易に複写され得るため、そのような節がオリジナルの著者に対して適切な承諾や報酬がなされることなくコピーされたり、より大きなドキュメントに組み入れられ得るという問題がある。この複製は、オリジナルの節に対して無修正で、またはわずかな修正のみで生じ得るため、オリジナルの著述は相応に論争され得ない。
【0004】そのような節の無許可の再発行を警戒するために、著者および発行人は、無許可の再発行が起こった特定の事実の場所を突き止める目的のために、例えば、インターネット、LEXIS(登録商標)、NEXIS(登録商標)、DIALOG(登録商標)、および同様のもののようなドキュメントデータベースにおける自分達のオリジナルの作品を探すことができることを要求する。同様に、発行人には、出版のために提示された全ての原稿がそっくりそのまま著者のオリジナルの作品であることを有無を言わさずに保証する必要がある。大学もまた、著作物に対して履修単位を与える前に、学生論文に盗作の事実が含まれていないことを確認するために学生論文と学位論文とを検証することを望んでもよい。」

C 「【0025】図1は本発明による一実施の形態のブロック図であり、この実施の形態は、公知の節と、ドキュメントからなるデータベース内に存在するドキュメントの1または2以上の節との署名の類似性および同一性の一方または両方に基づいて、関連のあるドキュメントを検索するための装置10からなる。その装置10は、例えば、イメージスキャナー(光学式または電子式)、キーボード、触感スクリーン、マウスなどを含んでいてもよいユーザ入力装置12を備えている。メージスキャナーは、独立した装置、またはファクシミリ機もしくはドキュメント複製機(例えば、複写機)の一部であり得る。
【0026】プロセッサ14は、公知の節およびデータベースのドキュメントの1または2以上の節の署名を生成して、それらを比較する目的のためにユーザ入力装置12に連結されている。プロセッサ14は、読出し専用メモリ(ROM)16またはディスク記憶装置20から受け取った情報および命令に従い、かつランダムアクセスメモリ(RAM)18を利用することによって、これらの機能を実行するために処理を行う。処理結果およびユーザの入力情報は、例えば、CRT表示装置22上でモニターされ得る。プロセッサ14がドキュメントを処理するタスクを完了した後、その結果は出力装置24に出力され得る。出力装置24には、例えば、記憶媒体(ハードディスクまたはフロッピーディスク)、プリンター、ドキュメント複製機(例えば、複写機)、ファクシミリ機またはCRT表示装置22が含まれる。」

D 「【0027】図2は、公知の節およびデータベースのドキュメントの両方を符号化するための一連の工程を示している。一般的な概観として、節の中に出現する「マーカ」が「マーカの連続体」を生成するために識別され、用いられる。これらのマーカの連続体は、節全体に対する「署名」を生成するために結合される。」

E 「【0032】例えば、つぎの文が与えられたテキストに現われると仮定する。
The meal is delicious, isn't it?
上記文には、3つの句読点の例があり、すなわち「, 」と「' 」と「? 」である。ユーザがマーカパラメータを、その節の中の全ての句読点要素とそれら句読点要素の直前に置かれる英数字の文字からなるように選択する場合、上記例においてステップ38で生成される3つのマーカは、「s,」と「n 」「t?」である。それからこれらのマーカは後述するように、マーカの連続体を生成するために利用され得る。」

F 「【0036】上記例の「The meal is delicious, isn't it?」は、ステップ40で模範的なマーカの連続体が生成される方法を示すために用いられる。マーカ「s,」の前に17個の非停止文字が出現するので、ステップ40で生成される第1マーカ連続体は<,17>>のように表され得る。同様にマーカ「n'」とその前のマーカ「s,」との間に非停止文字が2つのみ生じているので、ステップ40で生成される第2マーカ連続体は<,2>> として表され得る。」

G 「【0037】同じ理由で、ステップ40で生成される第3マーカの連続体は<,2>> のように表され得る。ステップ40で生成されるこれらの3つのマーカ連続体は、ステップ44で上記節に対する合成の「署名」を生成するためにつぎのように結合され得る。 <,17>>,<,2>>,<,2>>
説明されるように、公知の節に対してステップ40で生成されたマーカ連続体のこの列は、ステップ44で生成される類似または同一の署名を有するデータベースの節を特定するために、ドキュメントからなるデータベースの中に存在する同様に符号化されてなる節に対して評価され得る。」

H 「【0068】これらの共有されたマーカ連続体が上記順序で存在することは、類似(多分同一)の内容があるという良い証拠である。それから節2が検索され、例えば、節2が本当に節1と類似または同一であるか否かを確認する目的のために節2がCRT表示装置22上に表示され得る。以上より明らかなように、与えられた節の原文の構成要素を壊すことによって、種々の長さでかつ多種多様なタイプのテキストが比較されることが可能となる。」

(ア)上記Aの「本発明は、ドキュメントデータベースの中に生起する類似または同一の節をユーザが効率よくその存在場所を見つけて検索することができるようにするための方法」との記載、上記Bの「著者と発行人は、自分達が作成した原文の節(例えば、新聞や雑誌の論文)に対してかなりの所有権的な価値を置く。しかしながら原文の節が電子的な記憶媒体の中で容易に複写され得るため、そのような節がオリジナルの著者に対して適切な承諾や報酬がなされることなくコピーされたり、より大きなドキュメントに組み入れられ得るという問題がある。」、「そのような節の無許可の再発行を警戒するために、著者および発行人は、無許可の再発行が起こった特定の事実の場所を突き止める目的のために、…(中略)…ドキュメントデータベースにおける自分達のオリジナルの作品を探すことができることを要求する。」との記載からすると、引用文献には、
複写されたドキュメントが存在するかどうかを検索するための方法
が記載されている。

(イ)上記Cの「図1は本発明による一実施の形態のブロック図であり、この実施の形態は、公知の節と、ドキュメントからなるデータベース内に存在するドキュメントの1または2以上の節との署名の類似性および同一性の一方または両方に基づいて、関連のあるドキュメントを検索するための装置10からなる。」との記載、上記Dの「図2は、公知の節およびデータベースのドキュメントの両方を符号化するための一連の工程を示している。一般的な概観として、節の中に出現する「マーカ」が「マーカの連続体」を生成するために識別され、用いられる。」との記載からすると、引用文献には、
関連のあるドキュメントを検索するための装置(以下、「ドキュメント検索装置」という。)によって、節からマーカを識別する工程
が記載されている。

(ウ)上記Eの「例えば、つぎの文が与えられたテキストに現われると仮定する。
The meal is delicious, isn't it?
上記文には、3つの句読点の例があり、すなわち「, 」と「' 」と「? 」である。ユーザがマーカパラメータを、その節の中の全ての句読点要素とそれら句読点要素の直前に置かれる英数字の文字からなるように選択する場合、上記例においてステップ38で生成される3つのマーカは、「s,」と「n 」「t?」である。それからこれらのマーカは後述するように、マーカの連続体を生成するために利用され得る。」との記載からすると、引用文献には、
ドキュメント検索装置によって、節の中でマーカが出現する位置を識別する工程
が記載されている。

(エ)上記Fの「上記例の「The meal is delicious, isn't it?」は、ステップ40で模範的なマーカの連続体が生成される方法を示すために用いられる。マーカ「s,」の前に17個の非停止文字が出現するので、ステップ40で生成される第1マーカ連続体は<,17>>のように表され得る。同様にマーカ「n'」とその前のマーカ「s,」との間に非停止文字が2つのみ生じているので、ステップ40で生成される第2マーカ連続体は<,2>> として表され得る。
」との記載からすると、引用文献には、
ドキュメント検索装置によって、識別されたマーカの位置に基づいて、節の中で隣り合うマーカ同士の間の非停止文字の個数をカウントする工程
が記載されている。

(オ)上記Gの「同じ理由で、ステップ40で生成される第3マーカの連続体は<,2>> のように表され得る。ステップ40で生成されるこれらの3つのマーカ連続体は、ステップ44で上記節に対する合成の「署名」を生成するためにつぎのように結合され得る。<,17>>,<,2>>,<,2>>
」との記載からすると、引用文献には、
ドキュメント検索装置によって、マーカ及びカウントされた非停止文字の個数に基づいてマーカ連続体の列を生成する工程
が記載されている。

(カ)上記Gの「生成されたマーカ連続体のこの列は、ステップ44で生成される類似または同一の署名を有するデータベースの節を特定するために、ドキュメントからなるデータベースの中に存在する同様に符号化されてなる節に対して評価され得る。」との記載からすると、引用文献には、
ドキュメント検索装置によって、ドキュメントの中に同一のマーカ連続体の列が存在するかどうか評価する工程
が記載されている。

(キ)上記Cの「処理結果およびユーザの入力情報は、例えば、CRT表示装置22上でモニターされ得る。」との記載、上記Hの「これらの共有されたマーカ連続体が上記順序で存在することは、類似(多分同一)の内容があるという良い証拠である。それから節2が検索され、例えば、節2が本当に節1と類似または同一であるか否かを確認する目的のために節2がCRT表示装置22上に表示され得る。」との記載からすると、引用文献には、
ドキュメント検索装置によって、ドキュメントが同一のマーカ連続体の列を含むと評価されると、同一であるか否かを確認する目的のためにCRT表示装置上に表示される工程
が記載されている。

以上、(ア)ないし(キ)で指摘した事項から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

複写されたドキュメントが存在するかどうかを検索するための方法であって、
ドキュメント検索装置によって、節からマーカを識別する工程と、
ドキュメント検索装置によって、前記節の中で前記マーカが出現する位置を識別する工程と、
ドキュメント検索装置によって、識別された前記マーカの位置に基づいて、前記節の中で隣り合う前記マーカ同士の間の非停止文字の個数をカウントする工程と、
ドキュメント検索装置によって、前記マーカ及び前記カウントされた非停止文字の個数に基づいてマーカ連続体の列を生成する工程と、
ドキュメント検索装置によって、ドキュメントの中に前記同一のマーカ連続体の列が存在するかどうか評価する工程と、
ドキュメント検索装置によって、前記ドキュメントが前記同一のマーカ連続体の列を含むと評価されると、同一であるか否かを確認する目的のためにCRT表示装置上に表示される工程と
を含む、方法。

(3)参考文献に記載されている技術的事項及び周知技術の認定

本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平9-134372号公報(平成9年5月20日出願公開。以下、「参考文献」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

J 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子文書管理の分野に関し、より詳細には、目的文書をその文書の内容例を用いて検索する文書管理システムに関する。」

K 「【0047】例えば、処理中のテキストを、“A sample sentence appears here.”とすると、スペースのパターンは、“S-----S-----S-----S-----S”となる。ここで、‘-’はワード内スペースで‘S’はワード間スペースである。文章の終わりの‘.’は囲みボックスの対象とはならず、従って、考慮されず、各行の最後に続くワード間スペースを推定する。もし、‘-’と‘S’のラベルを非ワード終端文字及びワード終端文字に各々書き添えると、同じパターンが現れる。‘-’を‘0’で、‘S’を‘1’とする2値で表現すると、前記パターンは、“100000100000010000001000”となる。この2値パターンは、ランレングス符号化によって正確にワード長パターンである“16874”にまで圧縮することができる。」

(4)本願補正発明と引用発明との対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

(4-1)上記Gに「生成されたマーカ連続体のこの列は、ステップ44で生成される類似または同一の署名を有するデータベースの節を特定するために、ドキュメントからなるデータベースの中に存在する同様に符号化されてなる節に対して評価され得る。」と記載されるように、引用発明の「複写されたドキュメントが存在するかどうかを検索するための方法」における「検索」は、検索して同一のものが存在するかどうか評価することを含むものであることから、本願補正発明の「判定」に相当するものである。
してみると、引用発明の「複写されたドキュメントが存在するかどうかを検索するための方法」は、本願補正発明の「文書の電子複写、写真複写、又は走査中にテキストの一部が複写されたかどうかを判定する方法」に相当するといえる。

(4-2)引用発明の「ドキュメント検索装置」、「節」、及び「マーカ」は、それぞれ、本願補正発明の「処理デバイス」、「テキストの標的断片」、及び「キー記号ストリング」に相当する。
したがって、引用発明の「ドキュメント検索装置によって、節からマーカを識別する工程」と、本願補正発明の「処理デバイスによって、前記テキストの標的断片から特定のキー記号ストリングを識別する工程」とは、ともに、“処理デバイスによって、前記テキストの標的断片からキー記号ストリングを識別する工程”である点で共通する。

(4-3)引用発明の「(マーカが)出現する位置」は、本願補正発明の「(キー記号ストリングが)生起する位置」に相当する。
したがって、引用発明の「ドキュメント検索装置によって、前記節の中で前記マーカが出現する位置を識別する工程」と、本願補正発明の「処理デバイスによって、前記テキストの前記標的断片の中で前記特定のキー記号ストリングが繰り返し生起する位置を識別する工程」とは、ともに、“処理デバイスによって、前記テキストの前記標的断片の中で前記キー記号ストリングが生起する位置を識別する工程”である点で共通する。

(4-4)引用発明の「マーカ同士の間の非停止文字の個数をカウントする」とは、マーカ同士の間のそれぞれの距離を判定していることに他ならないから、本願補正発明の「キー記号ストリング同士の間のそれぞれの距離を判定する」に相当するといえる。
したがって、引用発明の「ドキュメント検索装置によって、識別された前記マーカの位置に基づいて、前記節の中で隣り合う前記マーカ同士の間の非停止文字の個数をカウントする工程」と、本願補正発明の「処理デバイスによって、識別された前記特定のキー記号ストリングの位置に基づいて、前記テキストの前記標的断片の中で隣り合う前記特定のキー記号ストリング同士の間のそれぞれの距離を判定する工程」とは、ともに、“処理デバイスによって、識別された前記キー記号ストリングの位置に基づいて、前記テキストの前記標的断片の中で隣り合う前記キー記号ストリング同士の間のそれぞれの距離を判定する工程”である点で共通する。

(4-5)上記(4-4)から、引用発明の「カウントされた非停止文字の個数」は、本願補正発明の「判定されたそれぞれの距離」に相当する。そして、引用発明の「マーカ連続体」は、複写されたドキュメントが存在するか否かを確認するためのものであることから、本願補正発明の「標的符号」に相当する。
したがって、引用発明の「ドキュメント検索装置によって、前記マーカ及び前記カウントされた非停止文字の個数に基づいてマーカ連続体の列を生成する工程」と、本願補正発明の「処理デバイスによって、前記特定のキー記号ストリングおよび前記判定されたそれぞれの距離に基づいて標的符号を生成する工程」とは、ともに、“処理デバイスによって、前記キー記号ストリングおよび前記判定されたそれぞれの距離に基づいて標的符号を生成する工程”である点で共通する。

(4-6)引用発明の「ドキュメント」及び「存在するかどうか評価する」は、それぞれ、本願補正発明の「テキストの試料断片」及び「含むかどうかを判定する」に相当する。
したがって、引用発明の「ドキュメント検索装置によって、ドキュメントの中に前記同一のマーカ連続体の列が存在するかどうか評価する工程」は、本願補正発明の「処理デバイスによって、テキストの試料断片が前記標的符号を含むかどうかを判定する工程」に相当するといえる。

(4-7)引用発明の「同一であるか否かを確認する目的のためにCRT表示装置上に表示される」は、複写されたかどうかを判定した後に開始した行動に他ならないから、本願補正発明の「行動の制御を開始する」に相当する。
したがって、引用発明の「ドキュメント検索装置によって、前記ドキュメントが前記同一のマーカ連続体の列を含むと評価されると、同一であるか否かを確認する目的のためにCRT表示装置上に表示される工程」は、本願補正発明の「処理デバイスによって、テキストの前記試料断片が前記標的符号を含むと判定されると、行動の制御を開始する工程」に相当するといえる。

以上から、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)

文書の電子複写、写真複写、又は走査中にテキストの一部が複写されたかどうかを判定する方法であって、
処理デバイスによって、前記テキストの標的断片からキー記号ストリングを識別する工程と、
処理デバイスによって、前記テキストの前記標的断片の中で前記キー記号ストリングが生起する位置を識別する工程と、
処理デバイスによって、識別された前記キー記号ストリングの位置に基づいて、前記テキストの前記標的断片の中で隣り合う前記キー記号ストリング同士の間のそれぞれの距離を判定する工程と、
処理デバイスによって、前記キー記号ストリングおよび前記判定されたそれぞれの距離に基づいて標的符号を生成する工程と、
処理デバイスによって、テキストの試料断片が前記標的符号を含むかどうかを判定する工程と、
処理デバイスによって、テキストの前記試料断片が前記標的符号を含むと判定されると、行動の制御を開始する工程と
を含む、方法。

(相違点)

標的符号を生成するためのテキスト中の識別対象として、本願補正発明が、「特定のキー記号ストリング」を用いているのに対して、引用発明は、マーカを用いている点。
(すなわち、引用発明は、特定の記号を用いているのではなく、句読点要素と英数字文字の組み合わせである「マーカ」を用いている点。)

(5)当審の判断

上記相違点について検討する。

特定の記号の出現間隔に基づいて検索のための符号を生成する技術については、周知技術(上記J及びK参照)であり、そして、如何なる文字列(単一/複数のアルファベットや所定の記号を用いるか等)を基準とするかは、設計の際に当業者が適宜選択すべき事項にすぎない。
してみると、引用発明においても、当該周知技術を適用し、検索で用いる符号を生成する際に、マーカに替えて、特定の記号とするように構成すること、すなわち、上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点は格別なものではない。

そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、当業者であれば当然に予測可能なものにすぎず格別なものとは認められない。

したがって、本願補正発明は、上記引用発明及び上記参考文献等に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)むすび

以上のとおり、補正後の請求項1に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1.本願発明の認定

平成23年5月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年1月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「文書の電子複写、写真複写、又は走査中にテキストの一部が複写されたかどうかを判定する方法であって、
処理デバイスによって、前記テキストの標的断片から特定のキー記号ストリングを識別する工程と、
処理デバイスによって、前記テキストの前記標的断片の中で前記特定のキー記号ストリングが繰り返し生起する位置を識別する工程と、
処理デバイスによって、識別された前記特定のキー記号ストリングの位置に基づいて、前記テキストの前記標的断片の中で隣り合う前記特定のキー記号ストリング同士の間のそれぞれの距離を判定する工程と、
処理デバイスによって、前記特定のキー記号ストリングおよび前記判定されたそれぞれの距離に基づいて標的符号を生成する工程と、
処理デバイスによって、テキストの試料断片が前記標的符号を含むかどうかを判定する工程と、
処理デバイスによって、テキストの前記試料断片が前記標的符号を含むと判定されると、行動の制御を開始する工程と
を含む、方法。」

2.引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献およびその記載事項は、前記「第2 平成23年5月17日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.独立特許要件」の「(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、前記「第2 平成23年5月17日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.独立特許要件」で検討した本願補正発明から、「特定の」、「繰り返し」、「識別された前記特定のキー記号ストリングの位置に基づいて、」、「隣り合う」、及び「判定されたそれぞれの」を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、上記「第2 平成23年5月17日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.独立特許要件」の「(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」ないし「(5)当審の判断」に記載したとおり、引用文献に記載された発明及び上記参考文献等に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-26 
結審通知日 2012-10-30 
審決日 2012-11-12 
出願番号 特願2008-550411(P2008-550411)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久々宇 篤志野崎 大進  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 原 秀人
田中 秀人
発明の名称 テキストの識別  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
復代理人 濱中 淳宏  

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