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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B23K
管理番号 1272264
審判番号 不服2011-6764  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-03-31 
確定日 2013-04-04 
事件の表示 特願2000-599922「耐摩耗性および減摩性のシリンダ摺動面を製作する方法と装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 8月24日国際公開、WO00/49200、平成14年11月 5日国内公表、特表2002-537121〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2000年2月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年2月19日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は、以下のとおりである。
平成13年 8月17日 特許協力条約第34条補正の翻訳文提出
平成21年 6月19日 拒絶理由通知
平成21年11月11日 意見書及び手続補正書提出
平成22年 1月26日 拒絶理由通知
平成22年 4月 7日 意見書及び誤訳訂正書提出
平成22年11月 4日 補正の却下の決定及び拒絶査定
平成23年 3月31日 審判請求書及び誤訳訂正書提出
平成23年 7月11日 審尋
平成24年 2月 1日 回答書提出
平成24年 2月13日 拒絶理由通知
平成24年 7月 5日 意見書及び手続補正書提出
平成24年 8月 3日 上申書提出
平成24年 9月19日 面接


2.本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成24年7月5日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、その請求項8に係る発明(以下、「本願発明」という。)の記載は以下のとおりである。
「 【請求項8】 レーザ(10)と、粉末供給装置(12)を備え、この粉末供給装置がレーザ(10)のレーザビーム(22)を通って粉末材料の噴射流(13)を案内する、内燃機関のクランクケースのシリンダ(20)内を走行するピストンのための耐摩耗性および減摩性のシリンダ摺動面(16)を製作するための装置において、粉末供給装置(12)がレーザ(10)を通って延びるように配置され、レーザビーム(22)用のビーム方向変更装置(24)がレーザビーム(22)を、シリンダ摺動面(16)における粉末材料の噴射流(13)の衝突点(14)に案内するように配置されていることを特徴とする装置。」


3.刊行物の記載事項及び刊行物記載の発明
当審で通知した平成24年2月13日付け拒絶理由通知書で引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である欧州特許出願公開第837152号明細書(以下、「刊行物」という。)には、以下の事項及び発明が記載されている。なお、記載箇所を表示する行数は、空白行を含む。また、ドイツ語の表記において、aウムラウトはaeで代替表記し、同様にuウムラウトをue、oウムラウトをoe、エスツェットをssで代替表記する。また、括弧内に、当審での翻訳文を併記する。
(1)第1欄第3ないし8行
「Die Erfindung betrifft ein Verfahren zum Beschichten eines insbesondere aus einer Aluminium-Legierung bestehenden Bauteils einer Brennkraftmaschine, insbesondere eines Brennkraftmaschinen-Zylinders, mit Silicium durch einen Hochenergiestrahl, insbesondere einen Laserstrahl. 」
(この発明は、内燃エンジンのアルミニウム合金で形成される部品、特に内燃エンジンシリンダーに、高エネルギー光線、特にレーザー光線を用いて、シリコンを被膜する方法に関する。)

(2)第1欄第10ないし16行
「Aluminium-Bauteile von Brennkraftmaschinen, insbesondere die Zylinder-Laufbahnen von Brennkraftmaschinen-Kurbelgehaeusen aus einer Aluminium-Legierung sind in Abhaengigkeit von der Verschleissqualitaet der Legierung mit einer Verschleissschutzschicht zu versehen, welche ueblicherweise als Legierungsbestandteil Silicium enthaelt.」
(内燃エンジンのアルミニウム部品、特にアルミニウム合金で形成されている内燃エンジンのクランクケース用のシリンダライナーは、耐摩耗性の被膜を備えた合金の磨耗品質に依存して提供されており、この耐摩耗性の被膜は、一般的に合金元素としてシリコンを含んでいる。)

(3)第4欄第33ないし41行
「Mit der Bezugsziffer 1 ist eine unterschiedlich positionierbare Beschichtungslanze bezeichnet, die bspw. mittels eines Roboters in einen auf nicht dargestellte Weise temperierbaren, insbesondere kuehlbaren Brennkraftmaschinen-Zylinder eingefuehrt wird. Bei diesem Brennkraftmaschinen-Zylinder handelt es sich um das Bauteil 2, dessen (in diesem Anwendungsfall innere) Oberflaeche 2' nach dem erfindungsgemaessen Verfahren beschichtet werden soll.」
(符号1は、任意の位置に配置可能な長槍状成膜装置を示し、この長槍状成膜装置は、例えば具体的には図示しないロボット手段で、温度調節可能な、特に冷却可能な内燃エンジンシリンダーに挿入される。この内燃エンジンシリンダーにおいては、部品2の(この実施例では内側の)表面2’が、本発明の方法に従って被膜することができる。)

(4)第4欄第42ないし49行
「An der Beschichtunslanze 1 ist eine Anordnung zur Bereitstellung von letzlich das Schichtmaterial 9 auf der Bauteil-Oberflaeche 2' bildendem Aluminium-Silicium-Pulver vorgesehen. Diese besteht aus einer Pulver-Austrittsduese 8, die ueber eine entlang der Beschichtungslanze 1 verlaufende und an dieser befestigte Zufuhrleitung 8' mit einer nicht gezeigten Pulverfoerdereinrichtung verbunden ist. 」
(長槍状成膜装置1は、アルミニウム・シリコン粉末を供給して、最終的に部品表面2’の被膜材料9を形成するように配置されている。これは、粉末噴出ノズル8、長槍状成膜装置1に沿って延びて図示しない粉末搬送装置に接続される供給管8’から構成される。)
なお、「Beschichtunslanze」の記載は、「Beschichtungslanze」の誤記と認める。

(5)第4欄第56行ないし第5欄第10行
「Was nun die Bereitstellung des Hochenergiestrahles 10 bzw. Laserstrahles 10 betrifft, so wird mittels eines Lichtleiters 3 die Laserleistung eines Nd-YAG Lasers ( vorzugsweise mit einer Leistung in der Groessenordnung von 3 kW ) in die Beschichtungslanze 1 eingespeist. Ueber eine geignete Strahlaufweitung in Form einer Kollimatorlinse 4 sowie einer Fokussierlinse 5 wird diese Laserleistung als Laserstrahl 10 ueber einen Umlenkspiegel 6 durch ein Austrittsfenster 7 aus der Beschichtungslanze 1 auf die Bauteil-Oberflaeche 2' projiziert und dabei derart fokusiert, dass die Flaeche des Brennfleckes auf der zu beschichtenden Oberflaeche 2' ca. 5 - 15 mm^(2 )betraegt.」
(高エネルギー光線10、詳しくいえばレーザー光線10が、光導体3により供給されることで、Nd-YAGレーザーの(好ましくは3kWの出力を伴う)レーザー出力は、長槍状成膜装置1に供給される。コリメーターレンズ4の形での適切なビーム拡大と集束レンズ5とで、レーザー光線10のようなレーザー出力は、方向転換鏡6を介して射出窓7を通って長槍状成膜装置1から部品表面2’へと投射され、そしてその際に集束して、被膜された表面2’上の高熱箇所の面積は、約5-15mm^(2)に達する。)
なお、「geignete」の記載は、「geeignete」との誤記であり、「fokusiert」の記載は「fokussiert」の誤記と認める。

(6)第5欄第11ないし14行
「Die Pulverzufuehrung in den Laserstrahl 10 bzw. auf die Bauteil-Oberflaeche 2' erfolgt ausserhalb der Beschichtungslanze 1, und zwar ueber die bereits erwaehnte Austrittsduese 8. 」
(レーザー光線10、あるいは部品表面2’への粉末供給は、長槍状成膜装置1の外で、既に述べた排出ノズル8を通って生じる。)

(7)図面の図示
図面には、粉末噴出ノズル8から排出された粉末が、レーザー光線10を通過していることの図示があり、また、粉末噴出ノズル8から排出された粉末がシリンダー表面2’の被膜に当たる位置と、レーザー光線10がシリンダー表面2’の被膜に当たる位置とが、一致していることの図示がある。

(8)刊行物記載の発明
上記(1)、(3)ないし(5)でいう「被膜」は、上記(2)の記載からみて、耐摩耗性の被膜であることは、明らかである。
以上の記載事項を、技術常識をふまえて本願発明の記載に沿って整理すると、刊行物には、以下の発明(以下、「刊行物記載の発明」という。)が開示されていると認める。
「長槍状成膜装置1と、粉末噴出ノズル8及び供給管8’を備え、この粉末噴出ノズル8及び供給管8’が長槍状成膜装置1のレーザー光線10を通って粉末を供給する、内燃エンジンのクランクケース用のシリンダー2の耐摩耗性の被膜を製作するための装置において、供給管8’が長槍状成膜装置1に沿って延びるように配置され、レーザー光線10用の方向転換鏡6がレーザー光線10を、シリンダー表面2’の耐摩耗性の被膜における粉末の衝突点に案内するように配置されている装置。」


4.対比
本願発明と、刊行物記載の発明とを対比すると、刊行物記載の発明の「レーザー光線10」が、本願発明の「レーザビーム」に相当することは明らかである。
また、刊行物記載の発明の「長槍状成膜装置1」は、上記3.(5)に摘示するように、「レーザー光線10」、すなわちレーザビームを照射する装置であるから、「レーザビーム照射装置」という点で、本願発明の「レーザ」と共通している。
また、刊行物記載の発明の「粉末噴出ノズル8」や「供給管8’」は、粉末を供給するための装置を構成しているから、本願発明の「粉末供給装置」に相当する。
また、刊行物記載の発明の「粉末を供給する」ことが、本願発明の「粉末材料の噴射流を案内する」ことに相当することは明らかであって、同様に、「内燃エンジンのクランクケース用のシリンダー2の耐摩耗性の被膜」が、「内燃機関のクランクケースのシリンダ内を走行するピストンのための耐摩耗性および減摩性のシリンダ摺動面」に相当する。
また、刊行物記載の発明において、「供給管8’が長槍状成膜装置1に沿って延びるように配置され」ていることは、「粉末供給装置がレーザビーム照射装置の延びる方向と同じ方向に延びるように配置され」ているという点で、本願発明において、「粉末供給装置がレーザを通って延びるように配置され」ていることと、共通する。
さらに、刊行物記載の発明において、「レーザー光線10用の方向転換鏡6がレーザー光線10を、シリンダー表面2’の耐摩耗性の被膜における粉末の衝突点に案内するように配置されている」ことが、本願発明において、「レーザビーム用のビーム方向変更装置がレーザビームを、シリンダ摺動面における粉末材料の噴射流の衝突点に案内するように配置されている」ことに相当することは、明らかである。

以上から、本願請求項1に係る発明と刊行物記載の発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「レーザビーム照射装置と、粉末供給装置を備え、この粉末供給装置がレーザビーム照射装置のレーザビームを通って粉末材料の噴射流を案内する、内燃機関のクランクケースのシリンダ内を走行するピストンのための耐摩耗性および減摩性のシリンダ摺動面を製作するための装置において、粉末供給装置がレーザビーム照射装置の延びる方向と同じ方向に延びるように配置され、レーザビーム用のビーム方向変更装置がレーザビームを、シリンダ摺動面における粉末材料の噴射流の衝突点に案内するように配置されている装置。」

<相違点>
レーザビーム照射装置が、本願発明では「レーザ」であるのに対して、刊行物記載の発明では「長槍状成膜装置1」であり、また、粉末供給装置がレーザビーム照射装置の延びる方向と同じ方向に延びるように配置することについて、本願発明では「粉末供給装置がレーザを通って延びるように配置」しているのに対して、刊行物記載の発明では、「供給管8’が長槍状成膜装置1に沿って延びるように配置」している点。


5.相違点についての検討及び判断
上記相違点について検討すると、刊行物記載の発明では、「供給管8’が長槍状成膜装置1に沿って延びるように配置」しており、供給管8’と長槍状成膜装置1とは、一体的に構成されている。
機械装置の技術分野において、相互に異なる機能を有する装置を一体的に構成する際に、それらの装置を共通の一つのケーシングでまとめて、一つの装置として取り扱うことは、ごく普通に行われている程度の技術的事項である。
そして、そのようなごく普通に行われている程度の技術的事項を刊行物1記載の発明に適用して、一体的な構成である供給管8’と長槍状成膜装置1とを共通の一つのケーシングでまとめて、「レーザ」と呼称する一つの装置として取り扱うことは、当業者が格別の困難性を有することなく想到できる事項といえるし、そのように、供給管8’と長槍状成膜装置1とを共通するケーシングでまとめて、レーザという一つの装置として構成すれば、供給管8’、すなわち粉末供給装置は、レーザを通って延びるように配置されることになる。
以上から、本願発明は、刊行物記載の発明、及び機械装置の技術分野において、ごく普通に行われている程度の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。


6.意見書及び上申書における請求人の主張について
平成24年7月5日付けの意見書において、請求人は、刊行物記載の発明は、「レーザの外側に粉末供給導管がある点」で、本願発明と相違し、当該相違点は、当業者も導き出すことはできない旨、主張しているが、上記5.に説示したとおりであるから、請求人の当該主張は採用できない。
また、請求人は、刊行物記載の発明は、被覆される面を溶解していないことに関する差異を主張しているようであるが、本願発明は方法の発明ではなく、被覆される面を溶解するか否かについての特定がないから、当該主張は、特許請求の範囲の記載に基づくものではなく、採用できない。
そして、平成24年8月3日付けの上申書において、請求人は、請求項6の記載に誤記がある旨を主張し、当該誤記を正した補正案を提示しているが、当該誤記にかかわらず、本願発明は上記2.記載のとおりに認定できるし、当該補正案を検討しても、上記5.に説示する判断を覆すことにはならない。


7.むすび
したがって、本願請求項8に係る発明は、上記刊行物記載の発明、及び機械装置の技術分野において、ごく普通に行われている程度の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-25 
結審通知日 2012-10-16 
審決日 2012-10-29 
出願番号 特願2000-599922(P2000-599922)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 正博  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 長屋 陽二郎
刈間 宏信
発明の名称 耐摩耗性および減摩性のシリンダ摺動面を製作する方法と装置  
代理人 江崎 光史  
代理人 江崎 光史  
代理人 鍛冶澤 實  
代理人 鍛冶澤 實  
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