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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02M
管理番号 1272295
審判番号 不服2012-6735  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-13 
確定日 2013-04-04 
事件の表示 特願2008- 62095「内燃機関の制御システム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 9月24日出願公開、特開2009-216023〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年3月12日の出願であって、平成23年9月22日付けの拒絶理由通知に対し、平成23年11月8日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成24年1月10日付けで拒絶査定がなされ、平成24年4月13日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。
そして、本願の請求項1に係る発明は、平成23年11月8日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲並びに願書に添付された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「 【請求項1】
内燃機関の吸気通路に設けられたスロットル弁と、
内燃機関の気筒内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁と、
内燃機関の排気通路に一端が接続されており前記吸気通路における前記スロットル弁よりも下流側に他端が接続されたEGR通路と、
該EGR通路に設けられており前記吸気通路に導入されるEGRガスの流量を制御するEGR弁と、を備え、
少なくとも前記スロットル弁の開度を調整することによって吸入空気量を制御することで成層燃焼と均質燃焼とを選択的に実施可能な内燃機関の制御システムであって、
前記EGR弁が開弁状態で固着したか否を判別する開固着判定手段と、
前記開固着判定手段によって前記EGR弁が開弁状態で固着したと判定されたときの前記EGR弁の開度を取得する開度取得手段と、をさらに備え、
該開固着判定手段によって前記EGR弁が開弁状態で固着したと判定された場合、内燃機関において成層燃焼を実施し、
前記開固着判定手段によって前記EGR弁が開弁状態で固着したと判定された場合に内燃機関において成層燃焼を実施するときに、内燃機関の目標トルクと前記開度取得手段によって取得された前記EGR弁の開度とに基づいて、前記スロットル弁の開度と前記燃料噴射弁からの燃料噴射時期及び燃料噴射量とを決定するものであって、
前記開固着判定手段によって前記EGR弁が開弁状態で固着したと判定された場合に、内燃機関の機関負荷が所定負荷以上のとき又は内燃機関の機関回転数が所定回転数以上のときは、内燃機関において均質燃焼を実施することを特徴とする内燃機関の制御システム。」

2.引用文献
(1)引用文献の記載
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特表2003-519750号公報(以下、「引用文献」という。)には、次の記載がある。

(ア)「 【請求項7】 特に自動車の内燃機関(1)に用いられる制御装置(18)であって、内燃機関(1)が燃焼室(4)を備えており、該燃焼室(4)内へ燃料が、第1の運転モードでは圧縮行程中に、第2の運転モードでは吸込み行程中に、それぞれ噴射可能であり、当該制御装置(18)が、前記各運転モードの間での切換のために設けられており、しかも内燃機関(1)が、排ガス再循環弁(14)を備えた排ガス再循環装置を備えている形式のものにおいて、排ガス再循環弁(14)が開いた状態のままひっかかった場合に、内燃機関(1)が、制御装置(18)によって第1の運転モードに切換可能であることを特徴とする、特に自動車の内燃機関に用いられる制御装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項7】)

(イ)「 【0001】
背景技術
本発明は、燃料を第1の運転モードでは圧縮行程中に、第2の運転モードでは吸込み行程中に、それぞれ燃焼室内へ噴射し、各運転モードの間で切換を行い、ただし、内燃機関は排ガス再循環弁を備えた排ガス再循環装置を有しているものとする、特に自動車の内燃機関を運転するための方法に関する。さらに、本発明は、相応する形式の内燃機関ならびにこのような内燃機関のための相応する形式の制御装置にも関する。
【0002】
このような方法、このような形式の内燃機関およびこのような形式の制御装置は、たとえば「ガソリン直接噴射」により知られている。ガソリン直接噴射では、燃料が均質燃焼運転では吸込み行程中に、そして成層燃焼運転では圧縮行程中に、それぞれ内燃機関の燃焼室内へ噴射される。均質燃焼運転は有利には内燃機関の全負荷運転のために設定されており、それに対して成層燃焼運転はアイドリング運転および部分負荷運転のために適している。
【0003】
このような内燃機関では、誤機能が生じる恐れがある。すなわち、たとえば排ガス再循環弁がひっかかって固着し、もはや運動され得なくなる事態が起こり得る。この場合には、内燃機関が臨界的な運転状態に陥らないことが保証されていなければならない。
【0004】
発明の課題および利点
本発明の課題は、排ガス再循環装置の誤機能が内燃機関の臨界的な運転状態を招かないことが保証されるような、内燃機関を運転するための方法を提供することである。
【0005】
この課題は、冒頭で述べたような方法において、排ガス再循環弁が開いた状態のままひっかかった場合に、内燃機関を第1の運転モードに切り換えることにより解決される。冒頭で述べた形式の内燃機関および制御装置においても、上記課題は本発明によれば相応して解決される。
【0006】
排ガス再循環弁が開いた状態のままひっかかった場合、内燃機関は本発明によれば成層燃焼運転に切り換えられる。成層燃焼運転では、内燃機関の開ループ制御および/または閉ループ制御において、開いた排ガス再循環弁を問題なく考慮することができる。これによって、臨界的な状態は生じ得なくなる。したがって、非常運転として成層燃焼運転を選択することにより、内燃機関の確実な運転が保証される。成層燃焼運転では減じられたトルクしか内燃機関により形成され得ないという欠点は、確実な運転が得られるという利点によって十分に埋め合わされる。」(段落【0001】ないし【0006】)

(ウ)「 【0012】
発明の実施例
図1には、自動車の内燃機関1が示されている。この内燃機関1では、ピストン2がシリンダ3内で往復運動可能である。シリンダ3は燃焼室4を備えており、この燃焼室4は特にピストン2と、吸気弁5と、排気弁6とによって仕切られている。吸気弁5には、吸気管7が連結されており、排気弁6には、排気管8が連結されている。
【0013】
吸気弁5および排気弁6の範囲では、噴射弁9と点火プラグ10とが燃焼室4内に突入している。噴射弁9を介して、燃料を燃焼室4内に噴射することができる。点火プラグ10を用いて、燃焼室4内の燃料に点火することができる。
【0014】
吸気管7には、旋回可能なフラップ式のスロットルバルブ11が収納されており、このスロットルバルブ11を介して吸気管7に空気が供給可能となる。供給される空気の量はスロットルバルブ11の角度位置に関連している。排気管8には触媒12が収納されており、この触媒12は、燃料の燃焼により発生した排ガスを浄化するために働く。
【0015】
排気管8からは、排ガス再循環管13が再び吸気管7に戻されている。排ガス再循環管13には、排ガス再循環弁(EGRバルブ)14が収納されており、この排ガス再循環弁14を用いて、吸気管7内へ戻される排ガスの量を調節することができる。排ガス再循環管13と排ガス再循環弁14とは、「排ガス再循環装置(EGR装置)」を形成している。」(段落【0012】ないし【0015】)

(エ)「 【0018】
制御装置18は、内燃機関1の、複数のセンサによって測定された運転量を表す入力信号19で負荷されている。たとえば、制御装置18は空気質量センサ、λセンサ(O2センサ)、回転数センサ等に接続されている。さらに、制御装置18はアクセルペダルセンサにも接続されている。このアクセルペダルセンサは、運転者により操作可能なアクセルペダルの位置、ひいては要求されるトルクを表す信号を発生させる。制御装置18は出力信号20を発生させる。これらの出力信号20によってアクチュエータもしくは作動装置を介して内燃機関1の特性に影響を与えることができる。たとえば、制御装置18は噴射弁9、点火プラグ10、スロットルバルブ11等に接続されていて、これらを制御するために必要となる信号を発生させる。
【0019】
とりわけ制御装置18は、内燃機関1の運転量を開ループ制御および/または閉ループ制御により制御するために設けられている。たとえば、噴射弁9により燃焼室4内へ噴射された燃料質量は制御装置18によって、特に燃料消費量が減少するようにかつ/または有害物質発生量が減少するように、開ループ制御および/または閉ループ制御により制御される。この目的のために制御装置18はマイクロプロセッサを備えており、このマイクロプロセッサは記憶媒体、特にフラッシュメモリ内に、上で述べたような開ループ制御および/または閉ループ制御を実施するために適したプログラムを記憶している。
【0020】
図1に示した内燃機関1は多数の運転モードで運転され得る。すなわち、内燃機関1を均質燃焼運転、成層燃焼運転、均質リーン燃焼運転等で運転することが可能である。
【0021】
均質燃焼運転では、燃料が吸込み行程中に噴射弁9によって内燃機関1の燃焼室4内にへ直接に噴射される。これにより、燃料には点火時までなお十分に渦流が付与されるので、燃焼室4内には、ほぼ均質な燃料・空気混合物が生じる。発生させたいトルクはこの場合、主としてスロットルバルブ11の角度位置を介して制御装置18によって調節される。均質燃焼運転では、内燃機関1の運転量は、λ(空気過剰率)=1となるように開ループ制御および/または閉ループ制御により制御される。均質燃焼運転は特に全負荷時に使用される。
【0022】
均質リーン燃焼運転は、ほぼ均質燃焼運転に相当しているが、ただしλは1よりも大きな値に調節される。
【0023】
成層燃焼運転では、燃料が圧縮行程中に噴射弁9によって内燃機関1の燃焼室4内へ直接に噴射される。これによって、点火プラグ10による点火時に、燃焼室4内には均質な混合気が存在するのではなく、燃料層状化が存在する。スロットルバルブ11は、たとえば排ガス再循環および/またはキャニスタパージの要求は別として、完全に開放され得る。これによって内燃機関1は絞られずに運転され得る。発生させたいトルクは成層燃焼運転では、燃料質量により十分に調節される。内燃機関1は特にアイドリング運転時および部分負荷時に成層燃焼運転によって運転され得る。
【0024】
内燃機関1の上記各運転モードの間では、自由に切換を行うことができる。このような切換は制御装置18によって実施される。」(段落【0018】ないし【0024】)

(オ)「 【0025】
内燃機関1の運転時では、排ガス再循環装置に故障が発生する恐れがあり、このような故障は種々異なる誤反応を生ぜしめる。この場合、少なくとも3つの事例が区別される。
【0026】
1)排ガス再循環弁14が、開いた状態でひっかかって固着し、これによって排ガス再循環弁14をもはや閉鎖することができなる(当審注:「できなくなる」の誤記と認められる。)。開いた状態のままひっかかった排ガス再循環弁14が、たとえば位置センサまたはその他の手段により検知されると、内燃機関1は成層燃焼運転に切り換えられる。成層燃焼運転では、内燃機関1は制限されたエンジン出力において、開いた排ガス再循環弁14を用いても運転され得るので、この場合には非常運転が可能になる。この場合、排ガス限界値を維持することができる。」(段落【0025】及び【0026】)

(カ)「 【0029】
排ガス再循環装置または排ガス再循環弁14における故障の検知は、制御装置18によって直接に、またはセンサを用いて間接的に行うことができ、かつ/または排ガス再循環弁14を制御するアクチュエータの診断またはその他の方法技術的な手段により行うことができる。次いで、検知された故障に関連して、制御装置18によって前記事例に相応して、対応する非常運転が選び出され、かつ調節される。次いで、制御装置18の故障メモリへのエントリ(Eintrag)が行われる。」(段落【0029】)

(2)引用文献に記載された事項
上記(1)(ア)ないし(カ)及び図1から、以下の事項が分かる。

(キ)上記(1)(ア)ないし(エ)及び図1から、引用文献には、内燃機関1の吸気管7に設けられたスロットルバルブ11と、内燃機関1のシリンダ3の燃焼室4内に燃料を噴射する噴射弁9と、内燃機関の排気管8に一端が接続されており前記吸気管7における前記スロットルバルブ11よりも下流側に他端が接続された排ガス再循環管13と、該排ガス再循環管13に設けられており前記吸気管7内へ戻される排ガスの量を調節する排ガス再循環弁14とを備え、前記スロットルバルブ11の角度位置を調整することで成層燃焼運転と均質燃焼運転とを選択的に実施可能な内燃機関の制御システムが記載されていることが分かる。

(ク)上記(1)(ア)ないし(カ)及び図1から、引用文献に記載された内燃機関の制御システムは、前記排ガス再循環弁14が開いた状態でひっかかって固着したことを、位置センサ又は制御装置18によって検知する手段を有し、該手段によって前記排ガス再循環弁14が開いた状態でひっかかって固着したと検知された場合、内燃機関1において成層燃焼に切換可能であることが分かる。

(3)引用文献に記載された発明
上記(1)及び(2)並びに図1を参酌すると、引用文献には次の発明(以下、「引用文献に記載された発明」という。)が記載されているといえる。

「内燃機関1の吸気管7に設けられたスロットルバルブ11と、
内燃機関1のシリンダ3の燃焼室4内に燃料を噴射する噴射弁9と、
内燃機関の排気管8に一端が接続されており前記吸気管7における前記スロットルバルブ11よりも下流側に他端が接続された排ガス再循環管13と、
該排ガス再循環管13に設けられており前記吸気管7内へ戻される排ガスの量を調節する排ガス再循環弁14とを備え、
前記スロットルバルブ11の角度位置を調整することで成層燃焼運転と均質燃焼運転とを選択的に実施可能な内燃機関の制御システムであって、
前記排ガス再循環弁14が開いた状態でひっかかって固着したことを、位置センサ又は制御装置18によって検知する手段を有し、
該手段によって前記排ガス再循環弁14が開いた状態でひっかかって固着したと検知された場合、内燃機関1において成層燃焼運転に切換可能である内燃機関の制御システム。」

3.対比
本願発明と引用文献に記載された発明とを対比すると、引用文献に記載された発明における「内燃機関1」は、その機能及び構成からみて、本願発明1における「内燃機関」に相当し、以下同様に「吸気管7」は「吸気通路」に、「スロットルバルブ11」は「スロットル弁」に、「シリンダ3の燃焼室4内」は「気筒内」に、「噴射弁9」は「燃料噴射弁」に、「排気管8」は「排気通路」に、「排ガス再循環管13」は「EGR通路」に、「排ガス再循環弁14」は「EGR弁」に、それぞれ相当する。
また、引用文献に記載された発明が成層燃焼運転を行うことを考慮すれば、噴射弁9がシリンダ3の燃焼室4内に燃料を直接噴射するものであることは明らかであるから、引用文献に記載された発明において「内燃機関1のシリンダ3の燃焼室4内に燃料を噴射する」ことは、本願発明において「内燃機関の気筒内に燃料を直接噴射する」ことに相当する。
そして、引用文献に記載された発明において「排ガス再循環弁14」によって「吸気管7内へ戻される排ガスの量を調節する」ことは、本願発明において「EGR弁」によって「吸気通路に導入されるEGRガスの流量を制御する」ことに相当する。
また、「少なくとも前記スロットル弁の開度を調整することによって吸入空気量を制御することで成層燃焼と均質燃焼とを選択的に実施可能」であるという限りにおいて、引用文献に記載された発明において「スロットルバルブ11の角度位置を調整することで成層燃焼運転と均質燃焼運転とを選択的に実施可能」であることは、本願発明において「少なくとも前記スロットル弁の開度を調整することによって吸入空気量を制御することで成層燃焼と均質燃焼とを選択的に実施可能」であることに相当する。
さらに、引用文献に記載された発明において「前記排ガス再循環弁14が開いた状態でひっかかって固着したことを、位置センサ又は制御装置18によって検知する」ことは、その技術的意義からみて、本願発明において「前記EGR弁が開弁状態で固着したか否かを判別する」ことに相当し、同様に「前記排ガス再循環弁14が開いた状態でひっかかって固着したことを、位置センサ又は制御装置18によって検知する手段」は、「前記EGR弁が開弁状態で固着したか否かを判別する開固着判定手段」及び「開固着判定手段」に相当する。
また、引用文献に記載された発明において「成層燃焼運転に切換」えることは、その技術的意義からみて、本願発明において「成層燃焼を実施」することに相当するから、引用文献に記載された発明において「該手段によって前記排ガス再循環弁14が開いた状態でひっかかって固着したと検知された場合、内燃機関1において成層燃焼運転に切換」えることは、本願発明において「該開固着判定手段によって前記EGR弁が開弁状態で固着したと判定された場合、内燃機関において成層燃焼を実施」することに相当する。

したがって両者は、
「 内燃機関の吸気通路に設けられたスロットル弁と、
内燃機関の気筒内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁と、
内燃機関の排気通路に一端が接続されており前記吸気通路における前記スロットル弁よりも下流側に他端が接続されたEGR通路と、
該EGR通路に設けられており前記吸気通路に導入されるEGRガスの流量を制御するEGR弁を備え、
少なくとも前記スロットル弁の開度を調整することによって吸入空気量を制御することで成層燃焼と均質燃焼とを選択的に実施可能な内燃機関の制御システムであって、
前記EGR弁が開弁状態で固着したか否を判別する開固着判定手段と、をさらに備え、
該開固着判定手段によって前記EGR弁が開弁状態で固着したと判定された場合、内燃機関において成層燃焼を実施する内燃機関の制御システム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
<相違点1>本願発明においては、「前記開固着判定手段によって前記EGR弁が開弁状態で固着したと判定されたときの前記EGR弁の開度を取得する開度取得手段」を備え、「前記開固着判定手段によって前記EGR弁が開弁状態で固着したと判定された場合に内燃機関において成層燃焼を実施するときに、内燃機関の目標トルクと前記開度取得手段によって取得された前記EGR弁の開度とに基づいて、前記スロットル弁の開度と前記燃料噴射弁からの燃料噴射時期及び燃料噴射量とを決定するものであ」るのに対し、
引用文献に記載された発明においては、前記排ガス再循環弁14が開いた状態でひっかかって固着したと検知されたときの前記排ガス再循環弁14開度を取得する手段を備えるか不明であり、成層燃焼運転をするときに、内燃機関1の目標トルクと前記排ガス再循環弁14の開度を取得する手段によって取得された前記排ガス再循環弁14の開度とに基づいて、前記スロットルバルブ11の角度位置と前記噴射弁9からの燃料噴射時期及び燃料噴射量とを決定するものであるか否か不明である点(以下、「相違点1」という。)。

<相違点2>本願発明においては「前記開固着判定手段によって前記EGR弁が開弁状態で固着したと判定された場合に、内燃機関の機関負荷が所定負荷以上のとき又は内燃機関の機関回転数が所定回転数以上のときは、内燃機関において均質燃焼を実施する」のに対し、引用文献に記載された発明においては「前記排ガス再循環弁14が開いた状態でひっかかって固着したと検知された場合」に、内燃機関1の機関負荷が所定負荷以上のとき又は内燃機関1の機関回転数が所定回転数以上のときは、内燃機関において均質燃焼運転をするか否か不明である点(以下、「相違点2」という。)。

4.判断
上記相違点1について検討する。
内燃機関の制御システムにおいて、EGR弁の開度センサを有し、内燃機関の目標トルクとEGR弁の開度とに基づいて、スロットル弁の開度と燃料噴射弁からの燃料噴射時期及び燃料噴射量とを決定することは、周知技術(以下、「周知技術」という。例えば、特開2003-222043号公報の段落【0026】、【0042】及び【0043】等参照。)である。
そして、引用文献に記載された発明において、排ガス再循環弁14が開いた状態でひっかかって固着したと検知された場合に、内燃機関1において成層燃焼運転をするにあたり、上記周知技術を適用して、固着した排ガス再循環弁の開度を取得し、内燃機関1の目標トルクと排ガス再循環弁の開度とに基づいて、スロットルバルブ11の角度位置と噴射弁9からの燃料噴射時期及び燃料噴射量とを決定することにより、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に想到することができたことである。

次に、上記相違点2について検討する。
引用文献に記載された発明は、排ガス再循環弁14が開いた状態でひっかかって固着した場合に、成層燃焼運転に切換可能であることによって、「成層燃焼運転では、内燃機関1は制限されたエンジン出力において、開いた排ガス再循環弁14を用いても運転され得るので」、非常運転が可能になるものである(上記2.(1)(オ)段落【0026】)。
その一方、引用文献に記載された発明は、特に全負荷時において、均質燃焼運転を行うものである(上記2.(1)(エ)段落【0021】)。
してみれば、引用文献に記載された発明において、排ガス再循環弁14が開いた状態でひっかかって固着した場合であっても、内燃機関1の機関負荷が所定負荷以上のとき又は機関回転数が所定回転数以上のときに、非常運転が必要でなければ、均質燃焼運転を行うことによって、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に想到することができたことである。

しかも、本願発明は、引用文献に記載された発明及び上記周知技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許受けることができないものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-29 
結審通知日 2013-02-05 
審決日 2013-02-18 
出願番号 特願2008-62095(P2008-62095)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 島倉 理  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 久島 弘太郎
柳田 利夫
発明の名称 内燃機関の制御システム  
代理人 平川 明  
代理人 関根 武彦  
代理人 川口 嘉之  
代理人 今堀 克彦  
代理人 宮下 文徳  
代理人 世良 和信  

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