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審決分類 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 B27M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B27M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B27M
管理番号 1272419
審判番号 不服2010-24501  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-29 
確定日 2013-04-03 
事件の表示 特願2006-507902「構造用木材製品」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月23日国際公開、WO2004/080713、平成18年 9月21日国内公表、特表2006-521229〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,2004年 3月10日(パリ条約による優先権主張2003年 3月10日,新国)を国際出願日とする出願であって,平成22年 6月22日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年10月29日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。
その後,平成23年10月 6日付けで拒絶理由を通知したところ,平成24年 4月11日付けで意見書とともに手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1?10に係る発明は,平成24年 4月11日付けの手続補正書により明りょうでない記載の釈明を目的として補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,そのうち,請求項1に係る発明は,以下のとおりのものである(以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。
「【請求項1】
正方形もしくは矩形の断面,及び2.4mよりも大きな長さLを縦軸において有する長手の構造用木材製品であって,
前記木材製品は,同一の矩形断面をもった少なくとも4つのラミナをそれらのラミナの広い面と広い面とを合わせて得た集成材であり,
前記ラミナは,
(a)それぞれ,矩形の断面を有する前記構造用木材製品の少なくとも略全横寸法に相当する幅をその広い面で有しており,
(b)連続的に積み重ねられていて,互いに接合せしめられたラミナによりもたらされた累積された断面厚さとともに,矩形の断面を有する前記構造用木材製品の少なくともその他の全横寸法を提供しており,
(c)少なくとも長さLを有しており,
(d)端が接合されたときに長さが長さLよりも小さく,矩形断面が17mm厚よりも大きくなくかつ幅が前記広い面の幅である,端が接合されていて均一なラミナ厚さをもった,ここでスティックと呼称する板から得たものであり,
(e)それぞれ,端が接合されるべき前記スティックの等級区分されたクラスから得たものであり,その際,それぞれの前記クラスのスティックは,強度もしくは剛性あるいはその両方の特性を等級区分グレードにおさめるために各スティックを乾燥後に試験することによって等級付けしたものであり,
(f)それぞれ,上記の1つもしくはそれ以上の特性を少なくとも3つの等級区分グレードにおさめることによって等級付けされた同一グレードの前記スティックから得たものであり,そして
前記ラミナが,その広い面と広い面とをあわせて,プロフィール設定されて積み重ねられており,そのプロフィール設定による積み重ねは,該構造用木材製品に求められている強度もしくは剛性あるいはその両方の特性についてのプロフィールをもたらすためのものであり,それぞれ前記スティックの等級区分されたクラスから得られたラミナを前記グレードを参照して配置することによって行われていることを特徴とする構造用木材製品。」

3 引用刊行物
(1)刊行物1
平成23年10月 6日付けの拒絶理由通知書の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,特開2002-67010号公報(以下「刊行物1」という。)には,図面とともに以下の記載がある(下線は当審にて付与。)
(1-a)「【請求項1】
入荷された丸太を短尺に切断し,切断された短尺丸太から短尺ラミナを製材した後,各短尺ラミナのヤング係数を測定し,短尺ラミナのヤング係数に基づいて区分された略同等強度の短尺ラミナ同士をフィンガージョイントにて接合して長尺ラミナを製造し,次いで,各長尺ラミナの引張強度試験を行った後,設定された許容範囲内のヤング係数の短尺ラミナから製造された長尺ラミナを順に積層するとともに,これらの長尺ラミナの外層に,設定された許容範囲を超えるヤング係数の短尺ラミナから製造された長尺ラミナを積層することを特徴とする集成材の製造方法。」

(1-b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,集成材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に,厚さ2.5?5cmの木材の板を,繊維方向を長さ方向に平行に組み合わせ,接着剤を介して順に積層して一つの材とした構造用集成材が知られている。
【0003】このような集成材は,通常,入荷された丸太から長さ約4m程度のラミナを直接製材し,これらのラミナを順に積み重ねることによって製造されている。」

(1-c)「【0010】本発明によれば,入荷された丸太を短尺に切断し,短尺丸太から短尺ラミナを製材するため,通常の製材では背板として排除される部分を短尺ラミナとして活用することが可能となり,背板として排除される部分を可及的に少なくして丸太を有効に利用することができる。特に,これまで利用されることなく放置されていた曲がりを有する丸太であっても活用することができる。
【0011】しかも,短尺丸太から製材された短尺ラミナは,材長方向の材質のばらつきが相対的に小さくなり,ほぼ一定の材質を有している。このため,各短尺ラミナのヤング係数を測定することにより,材長方向の強度のばらつきをその測定値によって区分することができるとともに,区分された略同等強度の短尺ラミナ同士を接合して製造された長尺ラミナもまた材長方向にほぼ同等強度を有することになり,強度のばらつきが小さく,品質が安定したものとなる。」

(1-d)「【0034】図1のフローチャートにおいて,まず,丸太M(図2参照)が入荷されると(ステップS1),丸太Mを設定長さ,例えば,1m間隔に切断し(ステップS2),図3に示す短尺丸太M1を製材する。次いで,短尺丸太M1の最小末口径から決定される木取り(図4参照)にしたがって図5に示す短尺ラミナL1を製材する(ステップS3)。
【0035】具体的には,短尺ラミナL1としては,厚さ37mm×幅120mm,厚さ37mm×幅140mm,厚さ37mm×幅170mmの3種類が設定されているとともに,短尺丸太M1の最小末口径から対応する短尺ラミナL1の木取りテーブルが用意されており,短尺丸太M1の最小末口径と,製材する短尺ラミナL1の種類から決定されるテーブルに基づいて木取りされる。図4の木取りは,短尺丸太M1の最小末口径が30cmの場合に厚さ37mm×幅170mmの短尺ラミナL1を製材する場合を示している。
【0036】次いで,製材された短尺ラミナL1を乾燥させた後(ステップS4),各短尺ラミナL1をグレーディングマシンに供給し,各短尺ラミナL1のヤング係数を測定する(ステップS5)。」

(1-e)「【0039】なお,グレーディングマシンには,予めヤング係数のテーブルが用意されており,演算された短尺ラミナL1のヤング係数と,テーブルのヤング係数とを比較演算し,搬送装置によって短尺ラミナL1を搬送する過程において,演算されたヤング係数に基づいて,対応する色彩のマークを付すようにしている。例えば,設定された上限以上のヤング係数の短尺ラミナL1に一の色彩のマークを付し,また,設定された上限未満かつ下限以上のヤング係数の短尺ラミナL1に他の色彩のマークを付し,さらに,設定された下限未満のヤング係数の短尺ラミナL1にもう一つの色彩のマークを付すように設定されており,このマークを読み取ることによって短尺ラミナL1をヤング係数によって分類することができる。
【0040】一方,グレーディングマシンによって短尺ラミナL1のヤング係数が演算されると,短尺ラミナL1の外観が観察され,木口に節や割れが認められる場合,その部分がカットされた後(ステップS6),図6に示すように,短尺ラミナL1をフィンガージョイントにて接合して長尺ラミナL(図7参照)を製造する(ステップS7)。この場合,グレーディングマシンによって付されたマークに基づいて仕分けされた同等強度(ヤング係数)の短尺ラミナL1同士を接合する。」

(1-f)「【0044】この場合,相対的にヤング係数の小さな短尺ラミナL1同士を接合して製造された長尺ラミナLを順に接着剤を介して積層するとともに,これらの外層に,相対的にヤング係数の大きな短尺ラミナL1同士を接合して製造された長尺ラミナLを1枚または複数枚接着剤を介して積層することにより,集成材Gの曲げ強度を確保することができる。
【0045】なお,前述したステップS5において,グレーディングマシンによって設定された下限以上のヤング係数を認めることができなかった短尺ラミナL1については,ラミナ不適材として後工程に送られることなく処分され(ステップS10),また,ステップS8において,プルーフローダーによって一定の引張強度を認めることができなかった長尺ラミナLについても,強度不足材として集成材の製造工程に送られることなく処分される(ステップS11)。」

(1-g)「【0047】しかも,短尺丸太M1から製材された短尺ラミナL1は,材長方向の材質のばらつきが相対的に小さくなり,ほぼ一定の材質を有しているため,各短尺ラミナL1のヤング係数を測定することにより,材長方向の強度のばらつきをその測定値によって区分することができるとともに,区分された同等強度の短尺ラミナL1同士を接合して製造された長尺ラミナLもまた材長方向にほぼ同等強度を有することになり,強度のばらつきが小さく,品質が安定したものとなる。
【0048】この結果,相対的にヤング係数の小さな短尺ラミナL1同士を接合して製造された長尺ラミナLを順に積層するとともに,これらの長尺ラミナLの外層に,相対的にヤング係数の大きな短尺ラミナL1同士を接合して製造された長尺ラミナLを積層して製造された集成材Gは,一定の曲げ強度が確保されるとともに,強度のばらつきが小さく,品質が安定したものとなる。」

(1-h)図8には,略矩形の断面及び縦軸方向に所定の長さを有する長手の集成材Gについて,集成材Gは,略同一の略矩形断面をもった5つの長尺ラミナLをそれら長尺ラミナLの広い面と広い面とを合わせたものであり,
それぞれの前記長尺ラミナLの広い面の幅は,略矩形の断面を有する前記集成材Gの略全横寸法に相当する幅であり,
長尺ラミナLは連続的に積み重ねられ,接着剤を介して積み重ねられた長尺ラミナLの累積された断面厚さと,前記集成材Gの全横寸法とで,略矩形の断面を提供しており,
長尺ラミナLは,前記集成材Gの長さと同様の長さを有しており,
長さが前記集成材Gの長さよりも短く,略矩形断面を有し,その幅が前記長尺ラミナLの広い面と同様の幅であり,長手方向の端部同士を接合することで長尺ラミナLとし得るものであって,略均一な厚さを有する板状の短尺ラミナL1から長尺ラミナLが構成される様子が,図示されている。

上記記載事項(1-a)?(1-h)からみて,刊行物1には,以下の発明が記載されていると認められる(以下,「刊行物1記載の発明」という。)。
「略矩形の断面及び縦軸方向に所定の長さを有する長手の構造用の集成材Gについて,
集成材Gは,略同一の略矩形断面をもった5つの長尺ラミナLをそれら長尺ラミナLの広い面と広い面とを合わせたものであり,
それぞれの前記長尺ラミナLの広い面の幅は,略矩形の断面を有する前記集成材Gの略全横寸法に相当する幅であり,
長尺ラミナLは連続的に積み重ねられ,積み重ねられた長尺ラミナLの累積された断面厚さと,前記集成材Gの全横寸法とで,略矩形の断面を提供しており,
長尺ラミナLは,前記集成材Gの長さと同様の長さを有しており,
長さが前記集成材Gの長さよりも短く,略矩形断面を有し,厚さが37mmで,その幅が前記長尺ラミナLの広い面と同様の幅であり,長手方向の端部同士を接合することで長尺ラミナLとし得るものであって,略均一な厚さを有する板状の短尺ラミナL1から長尺ラミナLが構成され,
短尺ラミナL1を乾燥させた後,各短尺ラミナL1をグレーディングマシンに供給し,各短尺ラミナL1のヤング係数を測定し,
設定された上限以上のヤング係数の短尺ラミナL1に一の色彩のマークを付し,また,設定された上限未満かつ下限以上のヤング係数の短尺ラミナL1に他の色彩のマークを付し,さらに,設定された下限未満のヤング係数の短尺ラミナL1にもう一つの色彩のマークを付すように設定されており,このマークを読み取ることによって短尺ラミナL1をヤング係数によって分類し,
下限以上のヤング係数を認めることができなかった短尺ラミナL1については,ラミナ不適材として後工程に送られることなく処分し,
グレーディングマシンによって付されたマークに基づいて仕分けされた同等強度(ヤング係数)の短尺ラミナL1同士を接合して長尺ラミナLを製造し,
相対的にヤング係数の小さな短尺ラミナL1同士を接合して製造された長尺ラミナLを順に積層するとともに,これらの長尺ラミナLの外層に,相対的にヤング係数の大きな短尺ラミナL1同士を接合して製造された長尺ラミナLを積層して製造した集成材G。」

4 本願発明と刊行物1記載の発明との対比
<一致点>
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると,
刊行物1記載の発明の木材の板からなる「構造用集成材」は,本願発明の「構造用木材製品」に相当し,以下同様に,
「長尺ラミナL」は,「ラミナ」に,
「短尺ラミナL1」は,「スティック」に,
「ヤング係数」は,「強度」に,
「ヤング係数を測定」することは,「試験すること」に,
それぞれ相当する。

刊行物1記載の発明の「それぞれの前記長尺ラミナLの広い面の幅は,略矩形の断面を有する前記集成材Gの略全横寸法に相当する幅であ」ることと,本願発明のラミナが「それぞれ,矩形の断面を有する前記構造用木材製品の少なくとも略全横寸法に相当する幅をその広い面で有して」いることとは,ラミナが「それぞれ,略矩形の断面を有する前記構造用木材製品の少なくとも略全横寸法に相当する幅をその広い面で有して」いる点で共通する。

刊行物1記載の発明の「長尺ラミナLは連続的に積み重ねられ,積み重ねられた長尺ラミナLの累積された断面厚さと,前記集成材Gの全横寸法とで,略矩形の断面を提供して」いることと,本願発明の「連続的に積み重ねられていて,互いに接合せしめられたラミナによりもたらされた累積された断面厚さとともに,矩形の断面を有する前記構造用木材製品の少なくともその他の全横寸法を提供し」ていることとは,「連続的に積み重ねられていて,互いに接合せしめられたラミナによりもたらされた累積された断面厚さとともに,略矩形の断面を有する前記構造用木材製品の少なくともその他の全横寸法を提供して」いる点で共通する。

本願発明のラミナが「端が接合されたときに長さが長さLよりも小さく,矩形断面が17mm厚よりも大きくなくかつ幅が前記広い面の幅である,端が接合されていて均一なラミナ厚さをもった,ここでスティックと呼称する板から得たものであ」るところ,「端が接合されたときに長さが長さLよりも小さく」なるとすると,「前記ラミナは,・・・(c)少なくとも長さLを有して」いることと矛盾することになることから,「端が接合されたときに」との記載は,「長さが長さLよりも小さく」との記載ではなく,「矩形断面が17mm厚よりも大きくなくかつ幅が前記広い面の幅である,端が接合されていて均一なラミナ厚さをもった」との記載に係るものであると解するのが合理的である。
してみると,刊行物1記載の発明の「長さが前記集成材Gの長さよりも短く,略矩形断面を有し,厚さが37mmで,その幅が前記長尺ラミナLの広い面と同様の幅であり,長手方向の端部同士を接合することで長尺ラミナLとし得るものであって,略均一な厚さを有する板状の短尺ラミナL1から長尺ラミナLが構成され」ていることと,本願発明のラミナが「端が接合されたときに長さが長さLよりも小さく,矩形断面が17mm厚よりも大きくなくかつ幅が前記広い面の幅である,端が接合されていて均一なラミナ厚さをもった,ここでスティックと呼称する板から得たものであ」ることとは,ラミナが「端が接合されたときに長さが長さLよりも小さく,略矩形断面の幅が前記広い面の幅であり,端が接合されていて略均一なラミナ厚さをもった,ここでスティックと呼称する板から得たものであ」る点で共通する。

刊行物1記載の発明の「短尺ラミナL1を乾燥させた後,各短尺ラミナL1をグレーディングマシンに供給し,各短尺ラミナL1のヤング係数を測定し,設定された上限以上のヤング係数の短尺ラミナL1に一の色彩のマークを付し,また,設定された上限未満かつ下限以上のヤング係数の短尺ラミナL1に他の色彩のマークを付し,さらに,設定された下限未満のヤング係数の短尺ラミナL1にもう一つの色彩のマークを付すように設定されており,このマークを読み取ることによって短尺ラミナL1をヤング係数によって分類」することは,本願発明の「それぞれ,端が接合されるべき前記スティックの等級区分されたクラスから得たものであり,その際,それぞれの前記クラスのスティックは,強度もしくは剛性あるいはその両方の特性を等級区分グレードにおさめるために各スティックを乾燥後に試験することによって等級付け」することに相当する。

刊行物1記載の発明の「設定された上限以上のヤング係数の短尺ラミナL1に一の色彩のマークを付し,また,設定された上限未満かつ下限以上のヤング係数の短尺ラミナL1に他の色彩のマークを付し,さらに,設定された下限未満のヤング係数の短尺ラミナL1にもう一つの色彩のマークを付すように設定されており,このマークを読み取ることによって短尺ラミナL1をヤング係数によって分類し,下限以上のヤング係数を認めることができなかった短尺ラミナL1については,ラミナ不適材として後工程に送られることなく処分し,グレーディングマシンによって付されたマークに基づいて仕分けされた同等強度(ヤング係数)の短尺ラミナL1同士を接合して長尺ラミナLを製造」することと,本願発明のラミナを「それぞれ,上記の1つもしくはそれ以上の特性を少なくとも3つの等級区分グレードにおさめることによって等級付けされた同一グレードの前記スティックから得たもの」とすることとは,ラミナを「それぞれ,上記の1つもしくはそれ以上の特性を複数の等級区分グレードにおさめることによって同等強度の前記スティックから得たもの」である点で共通する。

「プロフィール」は,平成24年4月11日付けの意見書で請求人も主張しているように「強度,剛性あるいはその両方」であると解されることから,刊行物1記載の発明の「集成材Gは,略同一の略矩形断面をもった少なくとも5つの長尺ラミナLをそれら長尺ラミナLの広い面と広い面とを合わせたもので」,「マークを読み取ることによって短尺ラミナL1をヤング係数によって分類し,グレーディングマシンによって付されたマークに基づいて仕分けされた同等強度(ヤング係数)の短尺ラミナL1同士を接合して長尺ラミナLを製造し,相対的にヤング係数の小さな短尺ラミナL1同士を接合して製造された長尺ラミナLを順に積層するとともに,これらの長尺ラミナLの外層に,相対的にヤング係数の大きな短尺ラミナL1同士を接合して製造された長尺ラミナLを積層して製造」することは,本願発明の「前記ラミナが,その広い面と広い面とをあわせて,プロフィール設定されて積み重ねられており,そのプロフィール設定による積み重ねは,該構造用木材製品に求められている強度もしくは剛性あるいはその両方の特性についてのプロフィールをもたらすためのものであり,それぞれ前記スティックの等級区分されたクラスから得られたラミナを前記グレードを参照して配置することによって行われていること」とに相当する。

したがって,両者は以下の点で一致している。
「略矩形の断面,及び長さLを縦軸において有する長手の構造用木材製品であって,
前記木材製品は,略同一の略矩形断面をもった少なくとも4つのラミナをそれらのラミナの広い面と広い面とを合わせて得た集成材であり,
前記ラミナは,
(a)それぞれ,略矩形の断面を有する前記構造用木材製品の少なくとも略全横寸法に相当する幅をその広い面で有しており,
(b)連続的に積み重ねられていて,互いに接合せしめられたラミナによりもたらされた累積された断面厚さとともに,略矩形の断面を有する前記構造用木材製品の少なくともその他の全横寸法を提供しており,
(c)少なくとも長さLを有しており,
(d)端が接合されたときに長さが長さLよりも小さく,略矩形断面の幅が前記広い面の幅であり,端が接合されていて略均一なラミナ厚さをもった,ここでスティックと呼称する板から得たものであり,
(e)それぞれ,端が接合されるべき前記スティックの等級区分されたクラスから得たものであり,その際,それぞれの前記クラスのスティックは,強度もしくは剛性あるいはその両方の特性を等級区分グレードにおさめるために各スティックを乾燥後に試験することによって等級付けしたものであり,
(f)それぞれ,上記の1つもしくはそれ以上の特性を複数の等級区分グレードにおさめることによって同等強度の前記スティックから得たものであり,そして
前記ラミナが,その広い面と広い面とをあわせて,プロフィール設定されて積み重ねられており,そのプロフィール設定による積み重ねは,該構造用木材製品に求められている強度もしくは剛性あるいはその両方の特性についてのプロフィールをもたらすためのものであり,それぞれ前記スティックの等級区分されたクラスから得られたラミナを前記グレードを参照して配置することによって行われていることを特徴とする構造用木材製品。」

そして,以下に示す点で相違している。
<相違点>
[相違点1]
断面形状について,
本願発明の木材製品,ラミナ,スティックの断面形状が,それぞれ正方形もしくは矩形,矩形,矩形であるのに対して,
刊行物1記載の発明ではいずれも略矩形である点。

[相違点2]
木材製品の長さについて,
本願発明では2.4mよりも大きなものとしているのに対して,
刊行物1記載の発明では,木材製品の長さについて明記がない点。

[相違点3]
スティックの厚さについて,
本願発明では,17mm厚よりも大きくなく,均一な厚さとしているのに対して,
刊行物1記載の発明では,厚さが37mmで,略均一なものである点。

[相違点4]
ラミナの製造の際に,
本願発明では,強度もしくは剛性についての特性において,少なくとも3つの等級区分グレードにおさめることによって等級付けされた同一グレードのスティックから得たものとしているのに対して,
刊行物1記載の発明では,強度が上限以上,上限未満かつ下限以上,下限未満の3つに分類していているものの,下限未満の強度のものは処分し,残りの2つの等級のものから,同等強度のスティック同士を接合してラミナを製造している点。

5 各相違点についての判断
[相違点1について]
「略矩形」の最も代表的な形状として「矩形」が挙げられ,木材製品,ラミナ,スティックの断面形状は,最終製品である木材製品の用途等に応じて当業者が適宜決定するものであり,木材製品,ラミナ,スティックの断面形状をいずれも「矩形」とすることにより格別の効果を奏するものではないから,刊行物1記載の発明の「略矩形」の木材製品,ラミナ,スティックの断面形状を「矩形」とすることは当業者が適宜行う設計的事項である。
さらに,木材製品の断面形状を正方形とすることも,同様に,最終製品である木材製品の用途等に応じて当業者が適宜決定するものであり,木材製品の断面形状を「正方形」とすることにより格別の効果を奏するものではないから,刊行物1記載の発明の「略矩形」の木材製品の断面形状を「正方形」とすることは当業者が適宜行う設計的事項である。
してみると,刊行物1記載の発明に当業者が適宜なし得る設計変更を行い,相違点1に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点2について]
木材製品の長さは,最終製品である木材製品の用途等によって決定されるものである。
また,刊行物1の段落【0003】には木材製品の長さと等しいラミナの長さを4m程度とする点が従来例として記載されている。
ここで,木材製品の用途等に応じて,木材製品の長さを決定することは,当業者が適宜なしうることである。
そして,木材製品の長さを2.4mよりも大きなものとすることにより格別の効果を奏するものではないから,木材製品の長さを2.4mよりも大きくすることは,当業者が適宜なしうる設計的事項にすぎない。
してみると,刊行物1記載の発明に当業者が適宜なし得る設計変更を行い,相違点2に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点3について]
スティックの矩形断面の厚みは,最終製品である木材製品の用途,木材製品の必要強度,丸太の形状,製造工程の簡便性等によって決定されるものである。
また,刊行物1の段落【0002】には,木材製品のスティックを本願発明1と近似の厚さ2.5cmとする点が従来例として記載されている。
ここで,スティックの厚さを薄くするほど,丸太の端材が少なくなる一方,多層に積層することが必要になることは明らかであることを踏まえれば,木材製品の用途,木材製品の必要強度,丸太の形状,製造工程の簡便性等を勘案してスティックの厚さを決定することは,当業者が適宜なしうることである。
そして,スティックの厚さを17mm以下の均一なものとすることにより格別の効果を奏するものではないから,スティックの厚さを17mm以下の均一なものとすることは,いずれも当業者が適宜なしうる設計的事項にすぎない。
してみると,刊行物1記載の発明に当業者が適宜なし得る設計変更を行い,相違点3に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点4について]
同等強度のスティック同士を接合してラミナを製造する刊行物1記載の発明において,スティックをどの程度の数の等級に区分するかは,製品内での材質のばらつき抑制や製造コスト等を考慮して,当業者が適宜決定する設計的事項であり,スティックを3つ以上の等級に区分し,同等強度のスティックからなるラミナを同一グレードのスティックから得たものとすることに格別の困難性はない。
してみると,刊行物1記載の発明に当業者が適宜なし得る設計変更を行い,相違点4に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

そして,本願発明の作用効果は,刊行物1記載の発明から予測できる程度のものである。

したがって,本願発明は,刊行物1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

また,請求人は審判請求書において,主として(1)「第1の相異点は,積層に先がけて実施しなければならない,フィンガージョイントによって接合して得た長尺ラミナをさらに引張強度試験に供しなければならないということです(請求項1?3)。すなわち,引用発明1では,小さなヤング係数を有する長尺ラミナが内層,大きなヤング係数を有する長尺ラミナが外層となるように長尺ラミナを積層して,一定の曲げ強度を確保しながら,品質の安定した集成材を製造することの必要上,積層工程に先がけて引張強度試験を実施することが必要になるのです。本願発明では,かかる引張強度試験を実施することを必要としません。本願発明では,接合後のラミナは,それに破損等の欠陥が存在しない限り,そのまま使用することができるのです。」,(2)「第2の相異点は,短尺ラミナ同士をフィンガージョイントによって接合する前,略同等強度の短尺ラミナのみを使用することが必要であるため,一群の短尺ラミナから所定のヤング係数を有しない短尺ラミナを排除しなければならないということです(請求項1?3)。すなわち,引用発明1では,小さなヤング係数を有する長尺ラミナが内層,大きなヤング係数を有する長尺ラミナが外層となるように長尺ラミナを積層することの必要上,略同等強度の短尺ラミナ同士を選択して使用することが必要になるのです。本願発明では,略同等強度の短尺ラミナのみを選択して使用することを必要としません。」と主張しているので検討する。

<(1)について>
本願発明に引張強度試験を実施しないとの記載や示唆は存在せず,むしろ,本願発明は,強度もしくは剛性あるいはその両方で等級付けする際に,引張強度試験によりヤング係数を算出して,それに基づき強度を基準に等級付けするもの,をも含むものと認められる。
さらに,本願の明細書又は図面をみても,引張強度試験を実施しないものであることが記載も示唆もされていない。
してみると,本願発明は,引張強度試験を実施しないものに限定されているとは認められず,当該主張は請求の範囲に基づくものではない。
また,刊行物1記載の発明において,引張強度試験に基づく等級付けに換えて,引張強度試験を実施しない,目視による等級付けを行うことは当業者が適宜なし得ることに過ぎない。

<(2)について>
本願発明と刊行物1記載の発明は,先にも示したように同等強度のスティックを用いている点で共通しているところ,刊行物1に所定のヤング係数を有しない短尺ラミナを排除する旨が記載されていることが,「木材製品」としてみたときに,どのように相違する旨の主張であるのかは明らかでないものの,本願発明に,全てのスティックを使用するとの記載や示唆は存在しないことからみて,本願発明は,木材製品の材料として適さないスティックを排除するもの,をも含むものと認められる。
してみると,本願発明は,所定のヤング係数を有しない短尺ラミナを排除しないものに限定されているとは認められず,当該主張は請求の範囲に基づくものではない。
また,刊行物1には,段落【0008】に「丸太を余すことなく有効に活用する」との記載などもあるように,できるだけ排除するものを少なくしたい旨の示唆もあることから,木材製品の用途等に応じて(例えば,木材製品に求められる強度が小さい場合に),スティックを排除する基準を緩やかなものとして,スティックを排除しない,もしくはほとんど排除しないものとすることは当業者が適宜行う設計的事項である。

以上のことから,審判請求書の上述の主張によって,本願発明が,刊行物1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない,ということはできない。

6 むすび
以上のとおり,本願発明は特許を受けることができないものであることから,本願の他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。


[ 付 言 ]

平成24年 4月11日付けの補正は,明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるとして判断したが,仮に限定的減縮を目的とするものであるとしても,上述したのと同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
そのため,平成24年 4月11日付けの補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
そして,補正前の本願発明は,平成22年 4月26日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものであり,補正前の本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当することとなる本願発明が,上述したとおり,刊行物1記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,補正前の本願発明も同様の理由により,刊行物1記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
以上のとおり,限定的減縮を目的とするものであるとしても,補正前の本願発明は特許を受けることができないものであることから,本願は拒絶されるべきものである。
 
審理終結日 2012-10-25 
結審通知日 2012-10-30 
審決日 2012-11-16 
出願番号 特願2006-507902(P2006-507902)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B27M)
P 1 8・ 121- Z (B27M)
P 1 8・ 574- Z (B27M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 隆一  
特許庁審判長 鈴野 幹夫
特許庁審判官 横井 巨人
中川 真一
発明の名称 構造用木材製品  
代理人 出野 知  
代理人 永坂 友康  
代理人 古賀 哲次  
代理人 青木 篤  
代理人 石田 敬  
代理人 蛯谷 厚志  

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