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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B43K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B43K
管理番号 1272441
審判番号 不服2012-8056  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-02 
確定日 2013-04-03 
事件の表示 特願2004-314170「筆記具用摩擦体及びそれを備えた筆記具、筆記具セット」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 5月18日出願公開、特開2006-123324〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年10月28日の出願であって、平成22年12月17日及び平成23年9月28日付けで手続補正がなされたが、平成23年9月28日付け手続補正は平成24年1月25日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年5月2日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、その請求と同時に手続補正がなされたものである。
これに対して、平成24年10月1日付けで審尋を行い、期間を指定して回答書の提出を求めたが、請求人からは何らの応答もなかった。

第2 平成24年5月2日付け手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成24年5月2日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1 補正の内容
(1)平成24年5月2日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び明細書についてするもので、特許請求の範囲については、本件補正前に、

「 【請求項1】
可逆熱変色性インキを用いて形成された筆跡を、摩擦熱により第1の発色状態から第2の発色状態、発色状態から消色状態、又は消色状態から発色状態に変色させる筆記具用摩擦体であって、前記摩擦体がスチレン-ブタジエン-スチレン共重合体又はスチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体からなり、JIS K6253Aにおけるショア硬度Aが55度以上であることを特徴とする筆記具用摩擦体。
【請求項2】
前記摩擦体が着色剤を含有することを特徴とする請求項1記載の筆記具用摩擦体。
【請求項3】
前記着色剤が摩擦体全量中0.1?1.0重量%含有されることを特徴とする請求項2記載の筆記具用摩擦体。
【請求項4】
可逆熱変色性インキを内蔵する筆記具であって、前記筆記具により形成された筆跡を摩擦熱により第1の発色状態から第2の発色状態、発色状態から消色状態、又は消色状態から発色状態に変色させる請求項1乃至3のいずれかに記載の筆記具用摩擦体を少なくとも一部に備えることを特徴とする筆記具。
【請求項5】
前記摩擦体と、筆記具本体又は筆記具部材とが二色成形により一体に成形されることを特徴とする請求項4記載の筆記具。
【請求項6】
前記摩擦体が筆記具に嵌着されることを特徴とする請求項4記載の筆記具。
【請求項7】
前記摩擦体が筆記具部材であることを特徴とする請求項4記載の筆記具。
【請求項8】
少なくとも可逆熱変色性インキを内蔵する筆記具と、該筆記具により形成された筆跡を摩擦熱により第1の発色状態から第2の発色状態、発色状態から消色状態、又は消色状態から発色状態に変色させる請求項1乃至3のいずれかに記載の筆記具用摩擦体とからなる筆記具セット。
【請求項9】
前記可逆熱変色性インキが、少なくとも25℃?95℃の範囲に高温側変色点を有するマイクロカプセル顔料を含有することを特徴とする請求項4乃至8のいずれかに記載の筆記具、筆記具セット。
【請求項10】
前記可逆熱変色性インキが、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態又は消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、又は、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型のいずれかであるか、或いは、それらの任意の組合せであることを特徴とする請求項4乃至8のいずれかに記載の筆記具、筆記具セット。」
とあったものを、

「 【請求項1】
可逆熱変色性インキを内蔵する筆記具であって、前記可逆熱変色性インキが36℃?90℃の範囲に高温側変色点を有するマイクロカプセル顔料を含有しており、前記可逆熱変色性インキを用いて形成された筆跡を、摩擦熱により発色状態から消色状態に変色させる筆記具用摩擦体を少なくとも一部に備え、前記摩擦体がスチレン-ブタジエン-スチレン共重合体又はスチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体からなり、JIS K6253Aにおけるショア硬度Aが55度以上であることを特徴とする筆記具。」
とするものである(以下、本件補正前の請求項を「旧請求項」、本件補正後の請求項を「新請求項」という。下線は審決で付した。以下同じ。)。

(2)上記(1)の特許請求の範囲に係る本件補正は、次の補正事項からなる。
ア 旧請求項1ないし3及び5ないし10を削除する。
イ 旧請求項1を引用する旧請求項4の発明特定事項である「筆跡」につき、「前記筆記具により形成された」から「前記可逆熱変色性インキを用いて形成された」とする。
ウ 同じく、旧請求項1を引用する旧請求項4の発明特定事項である「可逆熱変色性インキ」を、「36℃?90℃の範囲に高温側変色点を有するマイクロカプセル顔料を含有する」ものに限定するとともに、「筆記具用摩擦体」を、「前記筆記具により形成された筆跡を摩擦熱により第1の発色状態から第2の発色状態、発色状態から消色状態、又は消色状態から発色状態に変色させる」ものから、「前記可逆熱変色性インキを用いて形成された筆跡を、摩擦熱により発色状態から消色状態に変色させる」ものに限定する。

2 補正の目的
上記イの補正事項は実質な意味を変更するものでなく、上記ウの補正事項は、旧請求項1を引用する旧請求項4の発明特定事項を限定して新請求項1とするものであるから、本件補正は、全体として、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「旧特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3 独立特許要件
上記2のとおり、新請求項1に係る本件補正は、全体として、旧特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、新請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(旧特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1(1)に本件補正後の請求項1として記載したとおりのものである。

(2)引用刊行物及び引用発明
原査定に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-206432号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【請求項1】 25℃?65℃の範囲に高温側変色点を有し、平均粒子径が0.5?5μmの範囲にある可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を水性媒体中に分散させた可逆熱変色性インキを用い、前記高温側変色点以下の任意の温度における第1の状態から、摩擦体による摩擦熱により第2の状態に変位し、前記第2の状態からの温度降下により、第1の状態に互変的に変位する熱変色性筆跡を形成する特性を備えた摩擦熱変色性筆記具。
…(略)…
【請求項3】 前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、低温側変色点が、-30℃?+10℃の範囲にあり、高温側変色点が、36℃?65℃の範囲にある請求項1又は2記載の摩擦熱変色性筆記具。
【請求項4】 第1の状態と第2の状態は、有色と無色の互変性、又は有色(1)と有色(2)の互変性を有する請求項1記載の摩擦熱変色性筆記具。」
(イ)「【0017】摩擦体2は、任意形象の消しゴム、エラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が弾性感に富み、使い勝手がよいが、プラスチック成形体、金属類、布帛、紙類や、手指等であってもよい。前記における弾性の摩擦体は、キャップの頂部に装着(図13)、或いは筆記具軸胴の後部に装着させて実用に供することができる。又、摩擦体2として、筆記具本体、例えば、軸胴自体の後部2c(尾栓を含む)、又はキャップの一部(例えば、キャップの頂部2a、クリップ2b)を機能させることができる(図14参照)。前記軸胴の後部形状は、図示例に限らず、フラット状のもの、多辺形状のもの、半球状のもの等、使い勝手に応じて任意の形状のものが適用できる。更には、キャップの一部、或いは軸胴の一部に任意形象の小突部を設けたもの等であってもよい。」
(ウ)「【0021】実施例1
…(略)…
筆記具の作製
0.8mmのステンレス鋼ボールを用い、ボール収容部の内径とボール外径との差が約20μm、軸方向の移動可能な距離が約70μmに設定した切削型ボールペンチップ11aを用いた。前記剪断減粘系可逆熱変色性インキ11b(可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aが発色状態で青色を呈する)を内径3.3mmのポリプロピレン製パイプに0.8g吸引充填し、樹脂製ホルダーを介して前記ボールペンチップ11aと連結させた。次いで、前記ポリプロピレン製パイプの尾部より、ポリブテンベースの粘弾性を有するインキ追従体11c(液栓)を充填し、軸胴、キャップ、口金、尾栓を組み付けた後、遠心処理により脱気処理を行ない、剪断減粘系熱変色ボールペンを11を得た(図3に要部を示す)。前記ボールペン11によりレポート用紙に筆記したところ、長時間の筆記または速記によっても筆跡が消色することがなく、安定した濃度の青色の鮮明な熱変色性筆跡4が得られた。
筆跡の変色挙動
前記ボールペン11による熱変色性筆跡4は、室温(25℃)で青色の発色状態から、加温すると40℃以上の温度で完全に消色して無色となり、この変色状態から冷却すると13℃以下の温度で再び発色し青色となる変色挙動を示し、前記変色挙動は繰り返し再現することができた。前記ボールペン11により通常の浸透性を有する紙に筆記した熱変色性筆跡4を消しゴム2で数回擦過したところ、擦過部分が直ちに消色して視認不能となり、この状態は室温で維持することができた。次いで、前記熱変色性筆跡4を冷蔵庫(約5℃)の中に放置したところ、前記消色部分が再び青色に発色し擦過前の状態に戻った。また、前記熱変色性筆跡4上に無色透明ポリエステル製シート5(厚み:100μm)を密接状態に重ね、前記シート5上を消しゴム2(又はエラストマー成形体)で数回擦過したところ、前記と同様に筆跡を消色させることができた。」
(エ)「【0027】実施例7
…(略)…
【0030】…(略)…
前記ボールペンの形態としては、摩擦体2としてポリスチレン系エラストマー成形体を頂部に装着したキャップ(図13参照)を適用したもの…(略)…を用意した。。前記したボールペンによりレポート用紙に筆記したところ、長時間の筆記または速記によっても筆跡が変色或いは消色することがなく、安定した黒色の筆跡が得られた。また、前記筆跡は吐息や指触等の体温で変化することなく、黒色状態を保つことができた。前記ボールペンによる筆跡は室温で黒色の変色状態(第1の状態)から、46℃以上の温度に加温すると完全に変色或いは消色して温時の変色状態(第2の状態)となり、この状態から1℃以下に冷却すると再び元の黒色の変色状態(第1の状態)となる変色挙動を示し、前記変色挙動は繰り返し再現することができた。前記ボールペンのキャップの頂部の摩擦体2で、前記各筆跡の一部分を数回擦過したところ、擦過部分が温時の変色状態(第2の状態)となり、室温に放置してもこの変色状態を保持することができた。また、この変色状態から前記各筆跡を冷凍庫(約-15℃)の中に放置したところ、擦過部分が再び黒色に変色し、擦過前の変色状態に戻った。」
(オ)上記(ウ)及び図3から、剪断減粘系熱変色ボールペン11(摩擦熱変色性筆記具)が、剪断減粘系可逆熱変色性インキ11b(可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aが発色状態で青色を呈する)を内蔵することが見て取れる。
(カ)上記(ア)ないし(オ)から、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「可逆熱変色性インキを内蔵する摩擦熱変色性筆記具であって、36℃?65℃の範囲に高温側変色点を有し、平均粒子径が0.5?5μmの範囲にある可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を水性媒体中に分散させた可逆熱変色性インキを用い、前記高温側変色点以下の任意の温度における第1の状態から、摩擦体による摩擦熱により第2の状態に変位し、前記第2の状態からの温度降下により、第1の状態に互変的に変位する熱変色性筆跡を形成する特性を備えた摩擦熱変色性筆記具において、第1の状態と第2の状態は、有色と無色の互変性を有し、熱変色性筆跡は、室温(25℃)で青色の発色状態から、加温すると40℃以上の温度で完全に消色して無色となり、摩擦体としてポリスチレン系エラストマー成形体を頂部に装着したキャップを適用した摩擦熱変色性筆記具。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「可逆熱変色性インキ」、「可逆熱変色性マイクロカプセル顔料」、「『可逆熱変色性インキを用い』て形成された『熱変色性筆跡』」、「摩擦体」、「摩擦体による摩擦熱」及び「摩擦熱変色性筆記具」は、それぞれ、本願補正発明の「可逆熱変色性インキ」、「マイクロカプセル顔料」、「記可逆熱変色性インキを用いて形成された筆跡」、「筆記具用摩擦体」、「『筆記具用摩擦体』による『摩擦熱』」及び「筆記具」に相当する。
イ 引用発明の「マイクロカプセル顔料(可逆熱変色性マイクロカプセル顔料)」は、36℃?65℃の範囲に高温側変色点を有するものであるから、引用発明は、本願補正発明の「36℃?90℃の範囲に高温側変色点を有するマイクロカプセル顔料を含有しており」との事項を備える。
ウ 引用発明の「筆記具(摩擦熱変色性筆記具)」は、可逆熱変色性インキを内蔵するものであり、高温側変色点以下の任意の温度における第1の状態から、摩擦体による摩擦熱により第2の状態に変位し、前記第2の状態からの温度降下により、第1の状態に互変的に変位する熱変色性筆跡を形成する特性を備え、第1の状態と第2の状態は、有色と無色の互変性を有し、熱変色性筆跡は、室温(25℃)で青色の発色状態から、加温すると40℃以上の温度で完全に消色して無色となり、摩擦体としてポリスチレン系エラストマー成形体を頂部に装着したキャップを適用したものであるから、本願補正発明の「『可逆熱変色性インキを内蔵』し、『可逆熱変色性インキを用いて形成された筆跡を、摩擦熱により発色状態から消色状態に変色させる筆記具用摩擦体を少なくとも一部に備え』」との事項を備える。
エ 引用発明の「筆記具用摩擦体(摩擦体)」は、ポリスチレン系エラストマー成形体からなるものであり、本願補正発明の「筆記具用摩擦体」はスチレン-ブタジエン-スチレン共重合体又はスチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体からなるものであり、前記スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体又はスチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体がポリスチレン系エラストマーであることが当業者に自明であるから、引用発明の「筆記具用摩擦体」と本願補正発明の「筆記具用摩擦体」とはポリスチレン系エラストマーからなる点で一致する。

オ 上記アないしカから、本願補正発明と引用発明とは、
「可逆熱変色性インキを内蔵する筆記具であって、前記可逆熱変色性インキが36℃?90℃の範囲に高温側変色点を有するマイクロカプセル顔料を含有しており、前記可逆熱変色性インキを用いて形成された筆跡を、摩擦熱により発色状態から消色状態に変色させる筆記具用摩擦体を少なくとも一部に備え、前記摩擦体がポリスチレン系エラストマーからなる筆記具。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点:
摩擦体が、本願補正発明では、「スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体又はスチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体からなり、JIS K6253Aにおけるショア硬度Aが55度以上である」であるのに対して、引用発明では、そのようなものか否か明らかでない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
ア 引用例には、「摩擦体2は、任意形象の消しゴム、エラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が弾性感に富み、使い勝手がよい」と記載されている(上記(2)イ参照。)。
イ スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体又はスチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体からなるポリスチレン系熱可塑性エラストマー系消しゴムは、本願の出願前に周知である(以下「周知技術1」という。例.特開平5-124390号公報特に【0010】、特開平11-334288号公報特に【0004】、特開2004-244540号公報【0009】及び【0010】、特開2004-244541号公報【0009】及び【0010】参照。)。
ウ スチレン系エラストマー及びスチレン-エチレン・ブチレン-スチレン系エラストマーが高い摩擦係数を示す熱可塑性エラストマーであることは、本願の出願前に周知である(以下「周知技術2」という。例.特開平11-301909号公報特に【0019】、特開2001-198968号公報特に【0031】及び【0033】、特開平11-327108号公報特に【0017】、特開平11-327109号公報特に【0024】参照。)。
エ 所定の硬度以上の熱可塑性エラストマーは摩擦係数が高く(例.上記特開2001-198968号公報特に【0009】参照。)、摩擦係数の高い材料は大きな摩擦熱を生ずること(例.特開2004-174508号公報特に【0027】及び【0028】参照。)は当業者に自明である。
オ JISA硬度で55?85程度の消しゴムは、本願の出願前に周知であって(以下「周知技術3」という。例.上記特開平11-334288号公報特に【0006】、特開平11-334289号公報特に【0005】参照。)、55?85程度のJISA硬度が60?90程度のショア硬度Aに相当することが当業者に自明であり(例.特開2002-52926号公報【図8】参照)、ショア硬度AがJIS K6253Aに準拠し測定された[度]を単位とする値であることは、本願の出願前に周知である(以下「周知事項」という。例.特開2003-323781号公報特に【0040】及び【0066】、特開2003-156837号公報特に【請求項7】、【0053】及び【0059】参照。)から、JIS K6253Aにおけるショア硬度Aが60?90度程度の消しゴムは、本願の出願前に周知であるといえる。
カ 上記アないしエからみて、引用発明において、摩擦体が高い摩擦熱を得ることにより、有色状態から無色状態への移行を素速く実現できるよう、摩擦体であるポリスチレン系エラストマー成形体として、所定値以上の硬度を有するスチレン-ブタジエン-スチレン共重合体又はスチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体を用いることは、当業者が、引用例に記載された事項、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易になし得たことであり、その際、上記オからみて、前記所定値をJIS K6253Aにおけるショア硬度Aで60?90度程度となすことは、当業者が周知技術3及び周知事項に基づいて適宜なし得た設計事項である。
キ そして、上記カの「前記所定値をJIS K6253Aにおけるショア硬度Aで60?90度程度となすこと」は、本願補正発明の「JIS K6253Aにおけるショア硬度Aが55度以上」に相当する。
ク 上記カ及びキから、引用発明において、上記相違点に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が、引用例に記載された事項、周知技術1、周知技術2、周知技術3及び周知事項に基づいて容易になし得たことである。
ケ 効果について
本願補正発明の奏する効果は、当業者が、引用発明の奏する効果、周知技術1の奏する効果、周知技術2の奏する効果、周知技術3の奏する効果、引用例に記載された事項及び周知事項から予測できた程度のものである。
コ まとめ
したがって、本願補正発明は、当業者が、引用例に記載された発明、引用例に記載された事項、周知技術1、周知技術2、周知技術3及び周知事項に基づいてに基づいて容易に発明をすることができたものである。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、旧特許法第17条の2第5項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成22年12月17日付け手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項によってそれぞれ特定されるものであるところ、請求項1を引用する請求項4に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2〔理由〕1(1)に、本件補正前の請求項1を引用する本件補正前の請求項4として記載したとおりのものである。

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記第2〔理由〕3(2)に記載したとおりのものである。

3 対比・判断
本願発明は、本願補正発明において、その発明特定事項である「可逆熱変色性インキ」につき、「36℃?90℃の範囲に高温側変色点を有するマイクロカプセル顔料を含有する」との限定を省くとともに、同じくその発明特定事項である「筆記具用摩擦体」を、「前記可逆熱変色性インキを用いて形成された筆跡を、摩擦熱により発色状態から消色状態に変色させる」から「前記筆記具により形成された筆跡を摩擦熱により第1の発色状態から第2の発色状態、発色状態から消色状態、又は消色状態から発色状態に変色させる」に拡張したものに相当する(上記第2〔理由〕1(2)参照。)。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに上記限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2〔理由〕3に記載したとおり、当業者が、引用例に記載された発明、引用例に記載された事項、周知技術1、周知技術2、周知技術3及び周知事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が、引用例に記載された発明、引用例に記載された事項、周知技術1、周知技術2、周知技術3及び周知事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が、引用例に記載された事項、周知技術1、周知技術2、周知技術3及び周知事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-29 
結審通知日 2013-02-05 
審決日 2013-02-18 
出願番号 特願2004-314170(P2004-314170)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B43K)
P 1 8・ 121- Z (B43K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 洋允  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 菅野 芳男
東 治企
発明の名称 筆記具用摩擦体及びそれを備えた筆記具、筆記具セット  

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