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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B21D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21D
管理番号 1272750
審判番号 不服2012-9890  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-28 
確定日 2013-03-21 
事件の表示 特願2011-524038「ハイドロフォーム加工方法及びハイドロフォーム加工装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 8月18日国際公開、WO2011/099592〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、平成23年2月7日(優先権主張平成22年2月9日、日本国)を国際出願日とする特許出願であって、同23年9月26日付けで拒絶の理由が通知され、同23年12月5日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同24年2月23日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、これに対し、同24年5月28日に本件審判の請求がされ、同時に特許請求の範囲及び明細書を補正対象書類とする手続補正(以下「本件補正」という。)がされ、その後、当審の平成24年10月9日付け審尋に対して同24年12月11日付けで回答書が提出されたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容の概要
本件補正は、特許請求の範囲を含む明細書について補正をするものであって、補正前後の請求項4の記載を、補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
(1) 補正前の請求項4
「 【請求項4】
ハイドロフォーム金型内に予め軸芯の曲げを含むように形成された金属管が装着され、該装着された金属管の一方の管端部の側に軸押しシリンダが配置されず、他方の管端部の側にのみ軸押しシリンダが配置され、前記軸押しシリンダにより前記金属管を管軸方向に押し込むとともに、両方の管端部がシールされた当該金属管内部に圧力媒体を供給して内圧を負荷するためのハイドロフォーム加工装置において、
前記ハイドロフォーム金型内に前記金属管と共に前記金属管の一方の管端側に装着される独立パンチを備え、
前記ハイドロフォーム金型を閉める際に、前記ハイドロフォーム金型を閉める力を利用して前記独立パンチが管軸方向に前進されて、前記独立パンチにより前記金属管の一方の管端部がシールされつつ前記金属管が管軸方向に押し込まれることを特徴とするハイドロフォーム加工装置。」
(2) 補正後の請求項4
「 【請求項4】
C型フレーム内に配置されたハイドロフォーム金型内に予め軸芯の曲げを含むように形成された鋼管が装着され、該装着された鋼管の一方の管端部の側に軸押しシリンダが配置されず、他方の管端部の側にのみ軸押しシリンダが配置され、前記軸押しシリンダにより前記鋼管を管軸方向に押し込むとともに、両方の管端部がシールされた当該鋼管内部に圧力媒体を供給して内圧を負荷するためのハイドロフォーム加工装置において、
前記ハイドロフォーム金型内に前記鋼管と共に前記鋼管の一方の管端側に装着される独立パンチを備え、
前記ハイドロフォーム金型を閉める際に、前記ハイドロフォーム金型を閉める力を利用して前記独立パンチが管軸方向に前進されて、前記独立パンチにより前記鋼管の一方の管端部がシールされつつ前記鋼管が管軸方向に押し込まれることを特徴とするハイドロフォーム加工装置。」
2 補正の適否
請求項4における補正は、ハイドロフォーム金型を「C型フレーム内に配置された」ものと特定するとともに、ハイドロフォーム加工装置により加工される材料を補正前の「金属管」から補正後の「鋼管」に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項4に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。
(1) 補正発明
補正発明は、本件補正により補正がされた明細書の記載からみて、上記1の(2)の補正後の請求項4に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
(2) 引用例記載事項
この出願の優先日前に頒布された刊行物である実願昭62-33087号(実開昭63-145523号)のマイクロフィルム(以下「刊行物1」という。)及び特開2002-143938号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下のとおり記載されている。
ア 刊行物1
(ア) 第4ページ第2行?第6行
「[産業上の利用分野]
この考案は、パイプを上型及び下型によりクランプさせた状態で、パイプ内部から液圧を作用させることにより、所定の形状に塑性変形させる、パイプの液圧バルジ成形装置に関する。」
(イ) 第8ページ第17行?第10ページ第11行
「第1図に示すように、金属製パイプ10の液圧バルジ成形装置12は、図示しない土台上に固定された下型14と、この下型14の上方に配設された上型16とを備えている。この下型14及び上型16の互いの接合面には、互いに連設可能な状態で、キヤビテイ18、20が夫々形成されている。
これらキヤビテイ18、20は、下型14及び上型16の互いの接合面が接合された状態において、バルジ成形されるパイプ10の形状を規定する内周面を有するように形成されている。即ち、下型14のキヤビテイ18は、パイプ10の下側部分を規定し、上型16のキヤビテイ20は、パイプ10の上側部分を規定するように形成されている。
上述した上型16は、上下動可能に設けられており、図示しない上下動機構により、下型14上に接合する成形位置と、下型14の上方に離間された待機位置との間で上下動するように構成されている。この上型16は、実質的にバルジ成形されるパイプ10の部分を規定する本体部分16aと、この本体部分16aの下面に下方に突出可能に取り付けられ、パイプ10の両端部をクランプするクランプ部16bとを備えている。
この上型16において、本体部分16aは、上述した上下動機構に接続され、これにより上下動するよう構成されている。一方、この本体部分16aの取り付けられた各クランプ部16bは、この本体部分16aに対して、上下方向に沿つて摺動可能に取り付けられている。ここで、両クランプ部16bは、上下動機構に対して、図示しないクラツチ機構を介して接続されており、このクラツチ機構が切断された状態においては、本体部分16aの駆動とは独立して停止し、その位置を保持するように構成されている。」
(ウ) 第11ページ第3行?第13ページ第6行
「尚、下型14及び上型16が互いに接合された状態において、パイプ10の他方の端面側に形成されるキヤビテイ18、20の開口部の側方には、パイプ10内に液圧を作用させるための液圧機構のノズル24が配設されている。このノズル22(当審注:「24」の誤り)の端面には、クランプされたパイプ10の他端部の内周面に摺接する外周面を有する突出部22a(当審注:「24a」の誤り)が形成されている。また、突出部22a(当審注:「24a」の誤り)の外周面には、シールリング22b(当審注:「24b」の誤り)が装着されていて、このシールリング22b(当審注:「24b」の誤り)を介してパイプ10の他端部の内周面とノズル22(当審注:「24」の誤り)の突出部22a(当審注:「24a」の誤り)の外周面との間のシールが確実となるようになされている。
また、下型14において、パイプ10が載置されるキヤビテイ18の、パイプ10の一方の端面に対向する部分には、パイプ10の一端部を閉塞(シール)可能にスライダカム部材26が取り付けられている。このスライダカム部材26は、パイプ10の一端部の延出方向に沿つて摺動自在に構成されている。このスライダカム部材26は、キヤビテイ18内で摺動自在なカム本体26aと、このカム本体26aの先端面(パイプ10側の端面)に一体に取り付けられ、パイプ10の一端部の内周面に摺接可能な外周面を有する突出部26bとを備えている。
また、この突出部26bの外周面には、シールリング26cが装着されていて、このシールリング26cを介してパイプ10の一端部の内周面とスライダカム部材26の突出部26bの外周面との間のシールが確実となるようになされている。一方、カム本体26aの後端面(パイプ10が配設されている側とは反対側の端面)は、パイプ10側に傾斜した傾斜面から形成されており、この傾斜面は従動カム面26dとして規定されている。
また、このスライダカム部材26の上方に位置する上型16の下面の部分には、上型16の下降に応じて、このスライダカム部材26に係合して、これをパイプ10に向けて摺動させるためのドライバカム部材28が一体に取り付けられている。このドライバカム部材28の、スライダカム部材26における従動カム面26dに対向する部分には、これに係合するように斜面からなる駆動カム面28aが形成されている。」
(エ) 第13ページ第14行?第17ページ第19行
「以上のように構成される液圧バルジ成形装置12において、バルジ成形動作を以下に説明する。
先ず、第1図に示すように、図示しない上下動機構により、上型16は、下型14の上方に離間した状態に位置するようにもたらされている。この状態において、バルジ成形されるパイプ10が、これら下型14及び上型16の間に挿入され、下型14上のキヤビテイ18内に収容される。尚、この初期状態において、クランプ部16bは、これの副キヤビテイ部20bが本体部分16aの主キヤビテイ部20aより下方に位置するように、本体部分16aより予め下げられている。
この後、図示しないクラツチ機構が接続された状態において、上下動機構が起動して、上型16は全体的に下降される。ここで、上述したように、上型16においては、クランプ部16bは、本体部分16aより下方に位置しているので、この下降動作により、本体部分16aが下型14に接合する前に、クランプ部16bが下型14に接合することになる。
このようにして、第2図に示すように、先ず、クランプ部16bが下型14に接合して、パイプ10の両端部がクランプ部16b及び下型14によりクランプされることになる。このクランプ動作が実行される際に、即ち、上型16が下降されている際において、上型16に一体に取り付けられたドライバカム部材28の駆動カム面28aが、スライダカム部材26の従動カム面26dに係合し、互いのカム面の摺接により、戻りばね30の付勢力に抗して、パイプ10の一端部に向けてキヤビテイ18内を摺動される。
このようにパイプ10の両端部がクランプされた状態において、クラツチ機構は切断され、その後、上型16においては、本体部分16aのみが下降することになる。そして、この本体部分16aが下型14に接合した時点において、両キヤビテイ18、20は上下方向に関して閉じられ、パイプ10の中間部は、プレス作用により、第3図に示すように、所望の形状に概略近い形状に形成されることになる。換言すれば、この状態においては、パイプ10の外周面は、正確にキヤビテイ18、20の内周面に密着した状態とはなされていない。
ここで、このプレス加工が実行される際において、即ち、第2図に示す状態から更に上型16が下降される際において、スライダカム部材26は、更に駆動カム面30aに押されてパイプ10の一端部に向けて摺動され、この結果、スライダカム部材26の突起部26bは、パイプ10の一端部内に挿入され、この突起部26bの外周面は、パイプ10の内周面に摺接して、シールリング26dを介して、パイプ10の一端部はスライダカム部材26により、完全に閉塞(シール)されることになる。
一方、パイプ10のプレス下降による塑性変形に応じて、所謂肉が寄せられて、パイプ10の端面には、これが傾斜するように偏倚する力が内的に作用して、パイプ10の各端面は傾斜することになる。しかしながら、この一実施例においては、パイプ10の一端部においては、これの内周面とスライダカム部材26の突起部26bとの間が、シールリング26dを介してシールされているので、例えパイプ10の一端面が傾斜しようとも、このパイプ10の一端部における閉塞状態が損なわれることは、確実に防止される。
この後、第3図に示す状態から、液圧機構のノズル24が、パイプ10の他端部に向けて移動される。この結果、ノズル24の突起部24aは、パイプ10の他端部内に挿入され、突起部24aの外周面は、パイプ10の内周面に摺接することになる。このようにして、ノズル24とパイプ10の他端部との間は、シールリング24bにより閉塞(シール)されることになる。即ち、パイプ10の内部と液圧機構とが連通状態になされる。
このようにパイプ10と液圧機構とが連通状態になされた後、この液圧機構から高圧の液圧が、ノズル24の連通孔24cを介して、パイプ10内に作用する。この液圧により、パイプ10の外周面は、キヤビテイ18、20の内周面に押し付けられ、第4図に示すように、バルジ成形後のパイプ10の形状を規定するキヤビテイ18、20により、パイプ10は、所望の形状に成形加工されることになる。」
(オ) ここで、図面の第1図乃至第4図を参照すると、パイプ10の他方の端面には、ノズル24が配置され、一方の端面には、スライダカム部材26が配置され、ノズル24は配置されないことが見て取れる。
(カ) 刊行物1記載の発明
上記(ア)乃至(エ)の摘記事項、及び(オ)の認定事項より、刊行物1には、次の発明が記載されていると認める。
「バルジ成形装置12の下型14と上型16の互いの接合面に形成されたキヤビテイ18、20に金属製パイプ10が装着され、該装着されたパイプ10の一方の端面に液圧機構のノズル24が配置されず、他方のパイプ10の端面にのみノズル24が配置され、シールリング24bを有するノズル24の突起部24aとシールリング26cを有するスライダカム部材26の突起部26bをパイプ10の両端部に挿入して両端面が閉塞された当該パイプ10内に液圧機構から高圧の液圧が作用し、この液圧により、パイプ10のバルジ成形を行うバルジ成形装置12において、
前記下型14のキヤビテイ18にパイプ10が載置され、前記パイプ10の一方の端面の対向する部分にはスライダカム部材26が取り付けられ、
上型16が下降されている際において、先ず、上型16のクランプ部16bが下型14に接合して、パイプ10の両端部がクランプ部16b及び下型14によりクランプされ、次に、上型16の本体部分16aのみが下降することにより、キヤビテイ18、20は上下方向に関して閉じられ、パイプ10の中間部は、プレス作用により、所望の形状に概略近い形状に形成されると共に、上型16に一体に取り付けられたドライバカム部材28の駆動カム面28aが、スライダカム部材26の従動カム面26dに係合して互いのカム面の摺接により、スライダカム部材26が、戻りばね30の付勢力に抗してパイプ10の一端部に向けて摺動し、スライダカム部材26の突起部26bがパイプ10の一端部内に挿入され、パイプ10の一端部を閉塞するバルジ成形装置。」(以下「刊行物1記載の発明」という。)
イ 刊行物2
(ア) 段落【0001】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パイプ体の両端部を素材寸法としたまま中央部を拡管して所望の形状に成形するパイプ体の拡管成形方法および拡管成形装置に関する。」
(イ) 段落【0018】?【0023】
「【0018】図1乃至図3に示すパイプ体の拡管成形装置は、図9に示すデッドアクスルケース1を成形するものである。図1に示すように、プレス装置11の上台12(パンチ)と下台13(ベッド)との間には、これら上台12と下台13との近接に連動して水平方向に近接する一対のホルダ14、14が設けられている。これらホルダ14、14は、素材である丸形パイプ体2を挟持するものであり、下台13に形成された溝15に係合して水平方向に移動する。
【0019】各ホルダ14は、パイプ体2の外径が丁度嵌まる内径に成形されたストレート穴16と、このストレート穴16に繋げて成形され図9に示すデッドアクスルケース1のテーパー部1cが転写されたテーパー穴17とを有する。ストレート穴16は、後述するようにパイプ体2の両端開口部を液密に栓した状態で保持する。各ホルダ14は、カム機構18によって上台12と下台13との近接に伴って水平方向に近接するようになっている。
【0020】カム機構18は、各ホルダ14,14の側面に上壺まりとなるように形成された第1傾斜面部18aと、上台12に設けられた上金型19に第1傾斜面部18aに合わせて下広がりとなるように形成された第2傾斜部18bとからなり、図2に示すように上台12と下台13との近接によって各ホルダ14、14を近接させる。近接するホルダ14、14は、下台13に設けられた下金型20の側面20aに当接し、近接が規制される。すなわち、下金型20の側面20aがストッパとなる。
【0021】上台12と下台13との間には、これらの近接に伴って液体10を加圧するピストン・シリンダ機構21が設けられている。ピストン・シリンダ機構21は、下台13に設けられたシリンダ22と、上台12に設けられたブロック23と、ブロック23により下方に押圧されるピストン24と、シリンダ22内に収容され下降するピストン24によって加圧される液体10(水やオイル等)とからなる。
【0022】シリンダ22とホルダ14との間には、上台12と下台13との近接に伴って加圧された液体10を、ホルダ14で密栓されたパイプ体2の内部に導く加圧配管25が設けられている。加圧配管25には、リリーフ配管26が接続されており、リリーフ配管26には、リリーフ弁27が設けられている。リリーフ弁27は、パイプ体2の内部の液圧を所定のリリーフ圧にレギュレートする。
【0023】この構成によれば、図1に示す上台12を下台13に近接させると、ハイプ体2は、カム機構18によって水平方向に近接するホルダ14、14による軸力と、ピストン・シリンダ機構21から注入される液体10の液圧とによって、ホルダ14のストレート穴16に保持された両端部2aが素材寸法のまま、中央部2bが図3(a) に示す円断面から図3(b) に示す楕円断面に拡管される。」
(ウ) 段落【0028】?【0031】
「【0028】以上の構成からなるパイプ体の拡管成形装置を用いてパイプ体の拡管成形方法を説明する。
【0029】先ず、図1に示すように、素材である丸形パイプ体2を一対のホルダ14、14の間に挟持させる。この挟持は、上台12を図1に示す位置より更に上方に移動させ、各ホルダ14、14を下台13に形成された溝15に沿ってさらに離間させて実現する。次に、充填配管28を介してパイプ体2の内部に液体10(水やオイル等)を充填し、パイプ体2の内部が液体10で満たされたなら開閉弁29を閉じ、パイプ体2の内部に液体10を密閉した状態とする。
【0030】そして、上台12(ラム)を下台13(ベッド)へ向けて近接させる。すると、カム機構18によって各ホルダ14、14が近接すると共に、ピストン・シリンダ機構21によって生成された加圧液体10が加圧配管25を通ってパイプ体2の内部に注入される。このとき、軸方向に移動するホルダ14、14がパイプ体2の開口端部に強く当たり始めると、その開口端部がシールされ、液体10が完全にパイプ体2の内部に封じ込められる。よって、その後、上台12の下台13への近接に伴ってパイプ体2の内部液圧が上昇する。
【0031】そして、パイプ体2の内部の液圧の上昇とホルダ14、14による軸力とによって、パイプ体2の変形が始まる。詳しくは、パイプ体2は、ホルダ14のストレート穴16に挿入された両端部2aが素材寸法(素材径)のまま、下金型20の角溝状の凹部20bに収容された中央部2bのみが図3(a) の素材状態(丸断面)から圧力の上昇に伴って徐々に図3(b) に示すように楕円断面に膨張拡径変形してくる。」
(エ) 段落【0033】
「【0033】本実施形態では、パイプ体2の内圧上昇に図7に示すような高圧ポンプ8(高価)は必要ない。上台12の下降によってピストン・シリンダ機構21からパイプ体2の内部に液体10が注入されると共に近接するホルダ14、14によってパイプ体2が軸方向に圧縮されて内部の容積が減少するため、パイプ体2の内圧は上昇する一方だからである。そして、パイプ体2の内圧をリリーフ弁27によって所定圧力値P1に制限しているのである。」
(オ) 段落【0044】
「【0044】また、本実施形態による工法は、プレス装置を1ストロークさせることで成形できる。すなわち、上台12の下台13への下降に伴って、カム機構18によってホルダが14、14が近接されてパイプ体2に軸力が付与されると共に、ピストン・シリンダ機構21によって液体10が加圧されてパイプ体2の内部に注入されて内圧が高められ、これにより膨張拡径したパイプ体2の中央部2bが上台12と下台13とに設けた金型19、20によって押圧されてリストライク成形されるので、プレス装置を1ストロークさせれば自動的にパイプ体2からデッドアクスルケース1が成形されるのである。」
(カ) ここで、図面の図1を参照すると、下金型20の両側、すなわち、パイプ体2の管軸方向両側にはホルダ14が設けられているのが見て取れる。また、上金型19の両側、すなわち、パイプ体2の管軸方向両側にも第2傾斜部18bが設けられているのが見て取れる。
(キ) 刊行物2記載の技術的事項
上記(ア)乃至(オ)の摘記事項、及び(カ)の認定事項より、刊行物2には、次の事項が記載されていると認める。
「パイプ体2の内部の液体10の液圧によるパイプ体2の拡管成形装置において、パイプ体2の管軸方向両側に、第1傾斜部18aを有するホルダ14を設けるとともに、上金型19においても、パイプ体2の管軸方向両側に第2傾斜部18bを設け、該第1傾斜部18aと第2傾斜部18bとによるカム機構18により、上台12の下台13への下降に伴って、ホルダ14、14が近接されてパイプ体2に軸力が付与されると共に、ピストン・シリンダ機構21によって液体10が加圧されてパイプ体2の内部に注入されて内圧が高められ、膨張拡径したパイプ体2の中央部2bが上台12と下台13とに設けた金型19、20によってリストライク成形されるパイプ体2の拡管成形装置。」(以下「刊行物2記載の技術的事項」という。)
(3) 対比
補正発明と刊行物1記載の発明とを対比する。
刊行物1記載の発明の「バルジ成形装置12の下型14と上型16の互いの接合面に形成されたキヤビテイ18、20」及び「バルジ成形装置12」は、補正発明の「ハイドロフォーム金型内」及び「ハイドロフォーム加工装置」にそれぞれ相当している。
刊行物1記載の発明の「金属製パイプ10」と補正発明の「鋼管」とは、「金属管」であることに限り一致している。
刊行物1記載の発明の「(パイプ10の)一方の端面」、「他方の(パイプ10の)端面」は、それぞれ、補正発明の「一方の管端部」、「他方の管端部」に相当する。
刊行物1記載の発明の「液圧機構のノズル24」は、「液圧管軸方向移動部材」という限りで、補正発明の「軸押しシリンダ」と共通する。
刊行物1記載の「スライダカム部材26」は、「管軸方向移動部材」という限りで、補正発明の「独立パンチ」と共通する。
刊行物1記載の発明の「上型16に一体に取り付けられたドライバカム部材28の駆動カム面28aが、スライダカム部材26の従動カム面26dに係合して互いのカム面の摺接により、スライダカム部材26が戻りばね30の付勢力に抗してパイプ10の一端部に向けて摺動」することは、補正発明の「ハイドロフォーム金型を閉める力を利用して」、「(独立パンチが)管軸方向に前進され」ることに相当する。
以上に加えて技術常識を考慮すると、両者は、次の「ハイドロフォーム加工装置」で一致している。
「ハイドロフォーム金型内に金属管が装着され、該装着された金属管の一方の管端部の側に液圧管軸方向移動部材が配置されず、他方の管端部の側にのみ液圧管軸方向移動部材が配置され、両方の管端部がシールされた当該金属管内部に圧力媒体を供給して内圧を負荷するためのハイドロフォーム加工装置において、
前記ハイドロフォーム金型内に前記金属管と共に前記金属管の一方の管端側に装着される管軸方向移動部材を備え、
前記ハイドロフォーム金型を閉める際に、前記ハイドロフォーム金型を閉める力を利用して前記管軸方向移動部材が管軸方向に前進されて、前記管軸方向移動部材により前記金属管の一方の管端部がシールされるハイドロフォーム加工装置。」
そして、両者は、次の点で相違している。
ア <相違点1>
ハイドロフォーム金型の配置に関して、補正発明では、「C型フレーム内」であると特定しているのに対し、刊行物1記載の発明では、下型14と上型16がどこに配置されるものであるのか不明な点。
イ <相違点2>
加工される材料に関して、補正発明では、「予め軸芯の曲げを含むように形成された鋼管」であると特定しているのに対し、刊行物1記載の発明では、予め軸芯の曲げを含むように形成された管ではなく、上型16が下降されている際において、パイプ10の中間部は、プレス作用により、所望の形状に概略近い形状に形成されるものであって、材料も単に金属であるとしている点。
ウ <相違点3>
管軸方向両端に配置される部材に関して、補正発明では、「一方の管端部の側に軸押しシリンダが配置されず、他方の管端部にのみ軸押しシリンダが配置され、前記軸押しシリンダにより鋼管を管軸方向に押し込む」ものであって、かつ、「一方の管端側に装着される独立パンチを備え、ハイドロフォーム金型を閉める際に、前記ハイドロフォーム金型を閉める力を利用して前記独立パンチが管軸方向に前進されて、前記独立パンチにより前記鋼管の一方の管端部がシールされつつ前記鋼管が管軸方向に押し込まれる」ものであるの対して、刊行物1記載の発明では、パイプ10の一方の端面に液圧機構のノズル24が配置されず、他方のパイプ10の端面にのみノズル24が配置され、シールリング24bを有するノズル24の突起部24aとシールリング26cを有するスライダカム部材26の突起部26bをパイプ10の両端部に挿入して両端面が閉塞されるものであって、上型16が下降されている際において、上型16に一体に取り付けられたドライバカム部材28の駆動カム面28aが、スライダカム部材26の従動カム面26dに係合して互いのカム面の摺接により、スライダカム部材26が、戻りばね30の付勢力に抗してパイプ10の一端部に向けて摺動し、スライダカム部材26の突起部26bがパイプ10の一端部内に挿入され、パイプ10の一端部を閉塞するものである点。
(4) 相違点の検討
上記各相違点について、以下検討する。
ア <相違点1>について
ハイドロフォーム金型、すなわち、バルジ成形金型をC型フレーム内に配置してハイドロフォーム加工することは、たとえば、特開2002-66663号公報(明細書の段落【0051】?【0053】及び図面の図4?7を参照。)に記載されているように従来周知の事項であることからすれば、刊行物1記載の発明におけるバルジ成形装置においても、その下型14及び上型16を閉塞状態においてC型フレーム内に配置するように構成することは、当業者にとって格別困難なことではない。
イ <相違点2>について
ハイドロフォーム加工される材料として予め軸芯の曲げを含むように形成された鋼管は、例えば特開2006-272451号公報(明細書の段落【0016】?【0022】参照。)、特開2005-152914号公報(明細書の段落【0011】?【0012】参照。)に記載されているように従来周知の事項であり、ハイドロフォーム加工される材料の形状や材質は、製造したい製品の材料や形状に応じて適宜選定すればよいことであることからすれば、刊行物1記載の発明において、金属管の素材を鋼とし、ハイドロフォーム加工される前の金属管の形状として予め軸芯の曲げを含むように形成されたものを用いるようにすることは、当業者にとって格別困難なことではない。
ウ <相違点3>について
刊行物2記載の技術的事項は、「パイプ体2の内部の液体10の液圧によるパイプ体2の拡管成形装置において、パイプ体2の管軸方向両側に、第1傾斜部18aを有するホルダ14を設けるとともに、上金型19においても、パイプ体2の管軸方向両側に第2傾斜部18bを設け、該第1傾斜部18aと第2傾斜部18bとによるカム機構18により、上台12の下台13への下降に伴って、ホルダ14、14が近接されてパイプ体2に軸力が付与されると共に、ピストン・シリンダ機構21によって液体10が加圧されてパイプ体2の内部に注入されて内圧が高められ、膨張拡径したパイプ体2の中央部2bが上台12と下台13とに設けた金型19、20によってリストライク成形されるパイプ体2の拡管成形装置。」である。ここで、「液体10の液圧によるパイプ体2の拡管成形装置」は、「ハイドロフォーム加工装置」であることは明らかであり、また、「パイプ体2」が「管」であることは明らかであり、さらに、「上台12の下台13への下降に伴って、ホルダ14、14が近接されてパイプ体2に軸力が付与される」ことは、パイプ体2に軸力が付与されるのであるから、「ハイドロフォーム金型を閉める際に、ハイドロフォーム金型を閉める力を利用して独立パンチを管軸方向に前進させる」ものであるということができる。してみると、刊行物2記載の技術的事項は、「ハイドロフォーム加工装置において、ハイドロフォーム金型を閉める際に、ハイドロフォーム金型を閉める力を利用してカム機構により独立パンチを管軸方向に前進させること。」と言い換えることができる。
ところで、刊行物1記載の発明は、パイプ10の他方のパイプ10の端面にのみ液圧機構のノズル24が配置され、一方の端面の対向する部分にはスライダカム部材26が取り付けられ、上型16が下降されている際において、上型16に一体に取り付けられたドライバカム部材28の駆動カム面28aが、スライダカム部材26の従動カム面26dに係合して互いのカム面の摺接により、スライダカム部材26が、戻りばね30の付勢力に抗してパイプ10の一端部に向けて摺動し、スライダカム部材26の突起部26bがパイプ10の一端部内に挿入され、パイプ10の一端部を閉塞するものではあるが、ノズル24がパイプ10の他方の端面を管軸方向に押し込むものではなく、スライダカム部材26がパイプ10の一方の端面を管軸方向に押し込むものでもない。
しかしながら、一般に、ハイドロフォーム加工、すなわちバルジ成形加工において、管の管軸方向端部にシリンダを設け、当該シリンダにより管を管軸方向に押し込むことは、たとえば、上記特開2002-66663号公報(明細書の段落【0051】及び図面の図1を参照。)、同じく上記特開2006-272451号公報(明細書の段落【0020】及び図面の図1参照。)、同じく上記特開2005-152914号公報(明細書の段落【0011】及び図面の図1参照。)に記載されているように従来周知の事項であり、また、カム機構により管を管軸方向に押し込むことは刊行物2に記載されている。してみると、刊行物1記載の発明においても、パイプ10の両端部を管軸方向に押し込むように構成すること、すなわち、パイプ10の片側に設けられているノズル24にシリンダを取り付け、ノズル24によりパイプ10を管軸方向に押し込むようにするとともに、スライダカム部材26によりパイプ10を管軸方向に押し込むように構成することは、刊行物2記載の技術的事項及び従来周知の事項を用いることにより、当業者が容易になし得たものであるとするのが相当である。
エ 請求人の平成24年12月11日付け回答書における主張について
請求人は、平成24年12月11日付け回答書において、「本願発明は、軸芯が曲げを含むような複雑形状のハイドロフォーム加工品を得るにあたって、鋼管の一方の管端側に軸押しシリンダを配置することが不要となって、従来のように一組の軸押しシリンダを互いの軸芯が斜めとなるように配置する必要がなくなり、その分、加工装置を小型化させることが可能となり、また、一組の軸押しシリンダのうちの一方が不要となる分、加工装置を実現するためのコスト低減を図ることが可能となる効果を奏します。(本願明細書段落〔0018〕、参照)。即ち、本願発明は、軸芯が曲げを含むような複雑形状のハイドロフォーム加工品でも容易に得ることが可能となり、ハイドロフォーム加工品の適用範囲が広がり、部品統合や軽量化が実現できる効果を奏します(本願明細書段落〔0067〕、参照)。」(2.(4)参照。)と主張している。
しかしながら、ハイドロフォーム加工する管の端部に軸押しシリンダを設けることが前記したように従来周知の事項であり、ハイドロフォーム加工装置において、ハイドロフォーム金型を閉める際に、ハイドロフォーム金型を閉める力を利用してカム機構により独立パンチを管軸方向に前進させることが刊行物2に記載されているところ、刊行物1記載の発明が管の一方の端部のみにカム機構を設けるものである上、刊行物2には、カム機構を利用することにより高価な高圧ポンプが必要なくなることが記載されている(刊行物2における摘記事項エ参照。)以上、刊行物1記載の発明において、管の一方の端部のみに設けられたカム機構により管軸方向に管を押し込むようにするとともに、管の他方の端部に設けられたシリンダにより管を管軸方向に押し込むように構成することは、当業者が容易になし得たものであると判断せざるをえない。
したがって、請求人の上記主張は採用することができない。
オ 補正発明の作用効果について
補正発明が奏する作用効果は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術的事項及び上記従来周知の事項から当業者が予測できる程度のものであって格別のものではない。
(5)まとめ
したがって、補正発明は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術的事項及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 むすび
以上のとおりであるので、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、この出願の請求項1乃至6に係る発明は、平成23年12月5日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲及び明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認めるところ、請求項4に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1の(1)の補正前の請求項4に示したとおりである。
2 引用例記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に上記刊行物1及び2が引用されており、その記載事項は、上記第2の2の(2)に示したとおりである。
3 対比・判断
本願発明は、上記第2の2で述べたとおり、補正発明の発明特定事項から、上記限定事項が省かれたものである。
そうすると、上記第2の2の(4)で検討したとおり、補正発明は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術的事項及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、補正発明の発明特定事項から上記限定事項が省かれた本願発明についても、同様の理由により、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術的事項及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術的事項及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、この出願の請求項1乃至3、5乃至6に係る発明について判断するまでもなく、この出願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-18 
結審通知日 2013-01-22 
審決日 2013-02-04 
出願番号 特願2011-524038(P2011-524038)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B21D)
P 1 8・ 121- Z (B21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宇田川 辰郎  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 刈間 宏信
長屋 陽二郎
発明の名称 ハイドロフォーム加工方法及びハイドロフォーム加工装置  
代理人 青木 篤  
代理人 中村 朝幸  
代理人 石田 敬  
代理人 古賀 哲次  
代理人 永坂 友康  
代理人 亀松 宏  

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