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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1272768
審判番号 不服2012-3029  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-16 
確定日 2013-04-12 
事件の表示 特願2006- 74780「撮像装置、撮像方法および撮像プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 9月27日出願公開、特開2007-249000〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年(2006年)3月17日に出願された特願2006-74780号であって、平成23年3月3日付けで拒絶理由が通知され、同年4月5日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年7月1日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年7月26日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年12月6日付けで同年7月26日付けの手続補正に対する補正の却下の決定がなされ、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成24年2月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において平成24年8月1日付けで前置報告書の内容につて請求人に事前に意見を求める審尋をなし、同年10月22日付けで回答書が提出された。

第2 平成24年2月16日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成24年2月16日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成23年4月5日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載の、

「撮像画像のコントラストを検出してオートフォーカスを行う撮像装置であって、
撮影対象である被写体を認知する認知手段と、
前記認知手段によって認知された被写体の種類を識別する被写体種類識別手段と、
前記被写体種類識別手段によって識別された被写体の種類に基づいてオートフォーカスエリアサイズを決定するオートフォーカスエリアサイズ決定手段と、
前記オートフォーカスエリアサイズ決定手段によって決定されたオートフォーカスエリアサイズにてサンプリングされた信号からコントラスト検出を行うコントラスト検出手段と、
前記コントラスト検出手段によって検出されたコントラストに基づいて被写体に合焦させるオートフォーカスを実行するオートフォーカス手段と
を具備することを特徴とする撮像装置。」が

「撮像画像のコントラストを検出してオートフォーカスを行う撮像装置であって、
撮影対象である被写体を認知する認知手段と、
前記認知手段によって認知された被写体の種類を識別する被写体種類識別手段と、
前記被写体種類識別手段によって識別された被写体の種類、及び前記認知された被写体の画角上の占有面積に基づき、予め被写体の種類毎に該被写体の画角上の占有面積に対応して決められている値を用いてオートフォーカスエリアサイズを決定するオートフォーカスエリアサイズ決定手段と、
前記オートフォーカスエリアサイズ決定手段によって決定されたオートフォーカスエリアサイズにてサンプリングされた信号からコントラスト検出を行うコントラスト検出手段と、
前記コントラスト検出手段によって検出されたコントラストに基づいて被写体に合焦させるオートフォーカスを実行するオートフォーカス手段と
を具備することを特徴とする撮像装置。」と補正された。(下線は補正箇所を示す。)

そして、この補正は、「オートフォーカスエリアサイズを決定」するのに用いる要因として、補正前から特定されていた「被写体の種類」に加えて「認知された被写体の画角上の占有面積に基づき、予め被写体の種類毎に該被写体の画角上の占有面積に対応して決められている値」をも用いることを特定して限定する補正事項であり、特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮を目的とする補正であるといえる。
すなわち、本件補正における請求項1に係る発明の補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものである。

2 独立特許要件違反についての検討
そこで、次に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反しないか)について検討する。

(1)特許法第29条第1項第3号の規定(発明の新規性)違反について
ア 本願補正発明
本願補正発明は、平成24年2月16日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定されるものである。(上記の「1 本件補正について」の記載参照。)

イ 引用例
(ア)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-320286号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、下記「(イ)引用例1に記載された発明の認定」において直接引用した記載に下線を付した。)

「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、人物の特徴点を識別し、その識別結果に応じて動作するデジタルカメラに関する。」

「【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明のデジタルカメラについてその主要な機能を説明したブロック
【0016】
撮影レンズ101はその焦点距離を連続的に変えるためのズームレンズ、ピントを調整するフォーカシングレンズ、撮影時の手ブレを補正するVR(Vibration Reduction)レンズから構成されている。これらのレンズはドライバ113により駆動される。ここでドライバ113はズームレンズのズーム駆動機構及びその駆動回路と、フォーカシングレンズのフォーカス駆動機構及びその駆動回路と、VRレンズ駆動機構及びその駆動回路とを備えていて、それぞれCPU112により制御される。検出器121はフォーカシングレンズの位置およびズームレンズ位置を検出しCPU112にそれぞれのレンズ位置を伝える。」

「【0021】
バンドパスフィルタ(BPF)1124は、撮像領域に設けられた焦点検出エリア内の撮像信号に基づいて、所定帯域の高周波成分を抽出する。BPF1124の出力は次の評価値演算部1125に入力され、ここで高周波成分の絶対値を積分し焦点評価値として算出される。AF演算部1126はこれらの焦点評価値に基づいてコントラスト法によりAF演算を行う。CPU112はAF演算部1126の演算結果を用いて撮影レンズ101のフォーカシングレンズを調整し、合焦動作を行わせる。
【0022】
CPU112に接続された操作部116には、カメラの電源をオンオフする電源スイッチ1161、レリーズ釦に連動してオンオフする半押しスイッチ1162及び全押しスイッチ1163、撮影モードの各種の内容を選択するための設定釦1164、再生画像等を更新するアップダウン(U/D)釦1165等が設けられている。設定釦1164では抽出した特徴点に対して名称を付けるためにU/D釦1165を併用してアルファベットやひらがな、カタカナ、簡単な漢字等を選択して設定することもできる。U/D釦1165はこれ以外にも、複数抽出された人物から所望の人物を選択したり、撮影時には手動でズームレンズをテレあるいはワイド側に駆動するためにも使用される。
【0023】
被写体輝度が低い場合にはストロボ122を発光させる。このストロボにはストロボ使用時に撮影した人物の瞳が赤く撮影されるのを防止あるいは軽減する赤目防止のためや低輝度時に被写体輝度を予め測定するために撮影前に予め補助光を発光するプリ発光機能も備わっている。123はカメラの何らかの異常時に音声で警告するためのブザー等の発音体である。記憶部1127には前述した特徴点情報以外にAF演算の結果から検出される評価値のピーク値や対応するレンズ位置等も記憶される。デジタル信号処理回路106で各種処理が施された画像データは、一旦バッファメモリ105に記憶された後に、記録・再生信号処理回路110を介してメモリカード等の外部記憶媒体111に記録される。画像データを記憶媒体111に記録する際には、一般的に所定の圧縮形式、例えば、JPEG方式でデータ圧縮が行われる。記録・再生信号処理回路110では、画像データを外部記憶媒体111に記録する際のデータ圧縮及び外部記憶媒体111や他のカメラから転送されてきた圧縮された画像データの伸長処理を行う。121はそれぞれデジタルカメラ等の他の外部機器と無線あるいは有線で接続してデータ通信を行うインタフェース回路である。これら各インタフェースは同時に複数個備わっていても良い。
【0024】
モニタ109は撮像された被写体画像を表示したり撮影や再生させる際に各種の設定メニューを表示するための液晶(LCD)表示装置である。ここでは記憶媒体111に記録されている画像データや他のカメラから転送されてきた画像データを再生表示する際にも用いられる。モニタ109に画像を表示する場合には、バッファメモリ105に記憶された画像データを読み出し、D/A変換器108によりデジタル画像データをアナログ映像信号に変換する。そして、そのアナログ映像信号を用いてモニタ109に画像を表示する。
【0025】
このカメラで採用しているAF制御方式のコントラスト法について説明する。この方式では、像のボケの程度とコントラストの間には相関があり、焦点があったときに像のコントラストは最大になることを利用して焦点あわせを行う。コントラストの大小は撮像信号の高周波成分の大小により評価することが出来る。すなわち、BPF1124により撮像信号の高周波成分を抽出し、評価値演算部1125で高周波成分の絶対値を積分した物を焦点評価値とする。前述したように、AF演算部1126はこの焦点評価値に基づいてAF演算を行う。CPU112はAF演算部1126の演算結果を用いて撮影レンズ101のフォーカシングレンズ位置を調整し、合焦動作を行わせる。
【0026】
図2、図3に顔認識機能を備えたデジタルカメラの全体の動作フローを示す。図2においてまずステップS101でデジタルカメラの電源が電源SW1161によりオンされたことを検出するとステップS102でデジタルカメラの動作モードを確認する。ここでは設定釦S1164によって被写体を撮影する撮影モードに設定されているかメモリカードに記録されている画像データを再生表示する再生モードに設定されているかを判別する。再生モードに設定されていたならば図3ステップS117に進み、撮影モードに設定されていたならばステップS103に進む。ステップS103ではLCDモニタ109に撮影する被写体画像を動画で表示する。ステップS104では表示されている画像に対して所定のアルゴリズムに従って特徴点を抽出する特徴点抽出処理を行うよう設定されているかどうか判別する。この設定には設定釦1164を使用する。特徴点抽出処理をするように設定されていなかったならばステップS113に進み通常の撮影動作をする。特徴点抽出処理をするよう設定されていたならばステップS105に進んでLCDモニタ109に表示している動画像データの1コマあるいは2?3コマ毎に表示画像から特徴点とその位置情報を抽出する。この抽出される特徴点としては人物の顔、眼、瞳、眉、鼻、口、耳、手、足、眼鏡等の輪郭やその向き、位置、大きさがある。さらに、髪型、骨格、着衣の種類も抽出することによって、男女の性別や人種を判別したり、年齢についても判断することが出来る。また、人間だけでなく、犬、猫、鳥等の動物や家屋、自動車等一般の被写体に対しても抽出することが出来る。以下の説明では主として人間に対して特徴点を抽出する。
【0027】
ステップS106では抽出した複数の特徴点に対して、予めデジタルカメラの記憶部1127に登録されている特徴点と一致するものがあるかどうか判別する。一致する特徴点がなかったならばステップS107でLCDモニタ109に表示している画像に対して特徴点が検出されたことを示すマーカを重畳して表示する。もし登録してある特徴点と一致する特徴点が検出された場合にはステップS108で登録済みであることを区別出来るように他の特徴点と異なるマーカで重畳表示する。図15に表示結果の1例を示す。ここでは画面内の5名の人物のうち1名は遠くにいて小さすぎるため顔としての特徴点が検出されず、残り4名に対して顔の特徴点が検出され、さらにそのうち1名が登録済みであることが判別されたことを示している。単に特徴点が検出されただけの3名に対してはそれぞ
れの顔を波線で囲っていて、既に登録済みの1名に対しては実線で囲っている。さらに、特徴点に対応した人名等の個人名情報も特徴点情報として同時に登録されていた場合には図15に示すようにそれも同時に表示する。これにより被写体の確認をより一層確実にすることが出来る。」

「【0041】
《撮影条件の設定》
図2ステップS111の撮影条件の設定について図6?図8を使って説明する。図6は複数被写体が抽出されたときにそれぞれの被写体までの距離に応じて絞り値を変えて最適な焦点深度を設定するフローである。ステップS201で人物の顔の輪郭あるいは眼が検出されたかどうか判別する。どちらも検出されなかった場合にはステップS208に進み、風景等の遠景撮影であると判断してステップS208に進んで絞り値を大きく設定して焦点深度を深くする。ステップS201で顔の輪郭あるいは眼が検出された場合にはステップS202に進む。ステップS202ではそのときのズームレンズ位置(焦点距離)を検出器121で検出し、記憶部1127に記憶する。ステップS203では前述したように抽出された顔の輪郭の大きさあるいは眼幅と記憶部1127に記憶されたズームレンズ位置とから被写体までの距離を演算して記憶部1127に記憶する。ステップS204では撮影画面内の全ての人物に対して距離演算が終了したか判別する。もし終了していなかったならばステップS203に戻ってそれぞれの人物に対して距離演算して記憶部1127に記憶する。
【0042】
抽出した全ての人物に対して距離演算が終了したならばステップS205に進み抽出した人物の数を判別する。ステップS205で人物の数が所定値以上であると判別されたならば集合写真と判断してステップS208に進んで焦点深度を深くして全ての人物に対して焦点が合うように絞り値を大きく設定する。具体的には、ステップS203で検出された各人物までの距離に基づいて全ての人物に対して焦点が合うための最適の焦点深度を求め、それに相当する絞り値を設定する。ステップS205で人物の数が所定値以下であると判別されたならば、ステップS206に進んでここでそれぞれの顔の大きさを判別する。もし顔の大きさが所定の大きさ以上であると判別されたならばステップS207に進み、ポートレート撮影と判断して絞り値を小さくすることで焦点深度を浅く設定する。ステップS206で顔の大きさが所定の大きさ以下であると判断されたならば風景を含めた記念写真と判断してステップS208に進み絞り値を大きくして焦点深度を深くする。ここで所定の人数とは3ないし4名程度に予め設定する。
【0043】
この様にすることにより、ユーザが撮影モードを予め風景撮影用のモードに設定していた場合に撮影画面内に人物が検出されたならば自動的に人物撮影に適した深度の浅いポートレート撮影用のモードで撮影することが出来る。逆にポートレート撮影用のモードに設定していたときに人物が検出されなかったならば自動的に深度の深い風景撮影用のモードに変更して撮影することが出来る。なお、ここで説明した被写体までの距離の演算方法において、顔の大きさや眼幅は大人や子供で異なり大人同士、子供同士であっても個人差がある。それ故、あくまでも大人あるいは子供の平均の顔の大きさ、眼幅から求めたおおよその距離である。正確な合焦位置は前述したコントラスト法によるピーク位置に基づいて決定される。
【0044】
次に図7、図16、図17、図18を使用してAFエリアあるいはAEエリアの設定について説明する。図7においてはAFエリアの設定ということで説明しているがAEエリアの設定についても全く同様である。図7ステップS221においてまず撮影画面内の所定の範囲内に人物がいるかどうか判別する。人物の有無の判別方法としてはここでは顔の輪郭が抽出されたかどうかで判別するものとする。もし人物がいなかったならばステップS222に進んで予め設定された中央部等の固定のエリアをAFエリアとする。これは、もしも人物が抽出されたとしてもその人物が画面の隅の方にいた場合には撮影者は人物に重点を置いて撮影しようとしてはいないと判断し、これを排除するためである。図16にこの場合の撮影画面例を示す。図において太い波線でマーカ表示されている人物は画面内の細い波線で示す範囲外にいるのでその場合には予め設定された画面中央の太い実線枠内をAFエリアに設定する。多点測距可能な場合にはこのAFエリアは画面中央以外にも設定可能である。
【0045】
ステップS221で画面所定範囲内に人物が抽出された場合にはステップS223に進み、抽出された人物の顔の数が複数かどうか判別する。複数でなかった場合にはステップS228に進み、複数だった場合にはステップS224に進む。ステップS224では抽出された顔のうち最大の顔を選択してそこをAFエリアとして設定しAFエリアであるという表示をする。図17にこの場合の撮影画面の表示例を示す。ここでは抽出された実線で表示されている最大顔部分がAFエリアとして設定されていることを示している。ステップS225では自動的に設定されたAFエリア以外の人物位置をAFエリアに設定するかどうか判別する。もし撮影者が設定釦1164を操作して波線で表示されている他の人物のいずれかを選択したならばその操作に従ってAFエリアを順に移動させる。この場合の選択の順番としては、もし前述した優先順が記憶されている人物であったならばその優先順に従って選択されるがそれ以外に抽出された顔の大きさの順に選択されるようにしても良い。ステップS227で選択が終了したならばステップS228に進み抽出された顔の面積の大きさが第1の所定値以上かどうか判別する。もし第1の所定値以下だった場合にはステップS229に進んで抽出した顔を内側に含む所定の大きさ(例えば第1の所定値)にAFエリアを設定する。これは抽出された顔の面積が小さすぎる場合には前述したAF演算の際の精度が悪くなるからである。図18にこの場合の表示例を示す。
【0046】
ステップS228で抽出された顔の面積が第1の所定値以上だった場合にはステップS230に進んでここで更に第2の所定値以上かどうか判別する。もし第2の所定値以上だった場合にはポートレート撮影であると判断してステップS231に進んで顔全体をAFエリアに設定するのでなく更に抽出した目の位置をAFエリアに設定する。図19にこの場合の表示例を示す。第2の所定値以下だった場合にはステップS232に進み、先に抽出された顔の面積をAFエリアに設定する。ここで第1および第2の所定値とは各種被写体を撮影した上で予め最適の値が設定されている。」

「【図1】



(イ)引用例1に記載された発明の認定
引用例1に記載されたデジタルカメラは、【0026】の記載から、特徴点を抽出する手段を備えることは明らかであり、また、【0027】から、抽出した特徴点と登録されている特徴点を判別する手段を備えることは明らかであり、さらに、【0045】【0046】からAFエリアを設定する手段を備えることは明らかであるから、上記記載から、引用例1には、
「AF制御方式のコントラスト法を採用しているデジタルカメラにおいて、
表示画像から特徴点を抽出する手段であって、人物の顔、眼、瞳、眉、鼻、口、耳、手、足、眼鏡等の輪郭を抽出し、また、人間だけでなく、犬、猫、鳥等の動物や家屋、自動車等一般の被写体に対しても抽出する手段、
抽出した複数の特徴点に対して、予めデジタルカメラの記憶部1127に登録されている特徴点と一致するものがあるかどうか判別する手段、
主として人間に対して特徴点を抽出する場合において、まず撮影画面内の所定の範囲内に人物がいるかどうか判別し、画面所定範囲内に人物が抽出された場合には抽出された顔の面積の大きさが第1の所定値以上かどうか判別し、もし第1の所定値以下だった場合には、抽出した顔を内側に含む所定の大きさにAFエリアを設定し、抽出された顔の面積が第1の所定値以上だった場合には更に第2の所定値以上かどうか判別し、もし第2の所定値以上だった場合には更に抽出した目の位置をAFエリアに設定し、第2の所定値以下だった場合には、先に抽出された顔の面積をAFエリアに設定する手段、
を備えるとともに、
撮像領域に設けられたAFエリア内の撮像信号に基づいて、所定帯域の高周波成分を抽出するBPF1124、及び、BPF1124の出力が入力され、ここで高周波成分の絶対値を積分して算出された焦点評価値に基づいてコントラスト法によりAF演算を行うAF演算部1126、
並びに、AF演算部1126の演算結果を用いて撮影レンズ101のフォーカシングレンズを調整し、合焦動作を行わせるCPU112、
を備えるデジタルカメラ。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

ウ 対比及び当審の判断
(ア)本願補正発明と引用発明との対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「AF制御方式のコントラスト法を採用しているデジタルカメラ」が、本願補正発明の「撮像画像のコントラストを検出してオートフォーカスを行う撮像装置」に相当する。

引用発明において「表示画像から特徴点を抽出する手段であって、人物の顔、眼、瞳、眉、鼻、口、耳、手、足、眼鏡等の輪郭を抽出し、また、人間だけでなく、犬、猫、鳥等の動物や家屋、自動車等一般の被写体に対しても抽出する手段」が、本願補正発明の「撮影対象である被写体を認知する認知手段」に相当する。

引用発明の「抽出した複数の特徴点に対して、予めデジタルカメラの記憶部1127に登録されている特徴点と一致するものがあるかどうか判別する手段」は、「抽出した複数の特徴点」が「登録されている特徴点」を備える種類のものであるか否かを識別するものであるといえるから、本願補正発明の「前記認知手段によって認知された被写体の種類を識別する被写体種類識別手段」に相当する。

引用発明の「主として人間に対して特徴点を抽出する場合において、まず撮影画面内の所定の範囲内に人物がいるかどうか判別し、画面所定範囲内に人物が抽出された場合には抽出された顔の面積の大きさが第1の所定値以上かどうか判別し、もし第1の所定値以下だった場合には、抽出した顔を内側に含む所定の大きさにAFエリアを設定し、抽出された顔の面積が第1の所定値以上だった場合には更に第2の所定値以上かどうか判別し、もし第2の所定値以上だった場合には更に抽出した目の位置をAFエリアに設定し、第2の所定値以下だった場合には、先に抽出された顔の面積をAFエリアに設定する手段」は、被写体が人間(の顔)という「種類」であった場合に、当該抽出された顔の「面積」が、第1の所定値以下の値か、第1の所定値と第2の所定値の間の値か、第2の所定値以上の値かに応じて、(第1の所定値以下の値の場合は)「所定の大きさ」の値を用いてAFエリアを決定し、(第1の所定値と第2の所定値の間の値の場合は、先に抽出された顔の面積に)1(100%)という所定の値を乗じてAFエリアを決定するものといえるから、本願補正発明の「前記被写体種類識別手段によって識別された被写体の種類、及び前記認知された被写体の画角上の占有面積に基づき、予め被写体の種類毎に該被写体の画角上の占有面積に対応して決められている値を用いてオートフォーカスエリアサイズを決定するオートフォーカスエリアサイズ決定手段」に相当する。

引用発明の「撮像領域に設けられたAFエリア内の撮像信号に基づいて、所定帯域の高周波成分を抽出するBPF1124」、及び、「BPF1124の出力が入力され、ここで高周波成分の絶対値を積分して算出された焦点評価値に基づいてコントラスト法によりAF演算を行うAF演算部1126」が、本願補正発明の「前記オートフォーカスエリアサイズ決定手段によって決定されたオートフォーカスエリアサイズにてサンプリングされた信号からコントラスト検出を行うコントラスト検出手段」に相当する。

引用発明の「AF演算部1126の演算結果を用いて撮影レンズ101のフォーカシングレンズを調整し、合焦動作を行わせるCPU112」が、本願補正発明の「前記コントラスト検出手段によって検出されたコントラストに基づいて被写体に合焦させるオートフォーカスを実行するオートフォーカス手段」に相当する。

(イ)一致点及び相違点
よって、本願補正発明と引用発明は、
「撮像画像のコントラストを検出してオートフォーカスを行う撮像装置であって、
撮影対象である被写体を認知する認知手段と、
前記認知手段によって認知された被写体の種類を識別する被写体種類識別手段と、
前記被写体種類識別手段によって識別された被写体の種類、及び前記認知された被写体の画角上の占有面積に基づき、予め被写体の種類毎に該被写体の画角上の占有面積に対応して決められている値を用いてオートフォーカスエリアサイズを決定するオートフォーカスエリアサイズ決定手段と、
前記オートフォーカスエリアサイズ決定手段によって決定されたオートフォーカスエリアサイズにてサンプリングされた信号からコントラスト検出を行うコントラスト検出手段と、
前記コントラスト検出手段によって検出されたコントラストに基づいて被写体に合焦させるオートフォーカスを実行するオートフォーカス手段と
を具備する撮像装置。」の発明である点で一致し、両者に、格別、相違するところが存在しない。

(ウ)当審の判断
よって、本願補正発明は引用発明であるということができるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができない。

(2)特許法第36条第4項第1号の規定(明細書の記載要件)の違反について
ア 上記「(1)特許法第29条第1項第3号の規定(発明の新規性)違反について」においては、「ウ 対比及び当審の判断」の「(ア)本願補正発明と引用発明との対比」で、本願補正発明を請求項の記載に基づいて認定し、引用発明の「主として人間に対して特徴点を抽出する場合において、まず撮影画面内の所定の範囲内に人物がいるかどうか判別し、画面所定範囲内に人物が抽出された場合には抽出された顔の面積の大きさが第1の所定値以上かどうか判別し、もし第1の所定値以下だった場合には、抽出した顔を内側に含む所定の大きさにAFエリアを設定し、抽出された顔の面積が第1の所定値以上だった場合には更に第2の所定値以上かどうか判別し、もし第2の所定値以上だった場合には更に抽出した目の位置をAFエリアに設定し、第2の所定値以下だった場合には、先に抽出された顔の面積をAFエリアに設定する手段」が、本願補正発明の「前記被写体種類識別手段によって識別された被写体の種類、及び前記認知された被写体の画角上の占有面積に基づき、予め被写体の種類毎に該被写体の画角上の占有面積に対応して決められている値を用いてオートフォーカスエリアサイズを決定するオートフォーカスエリアサイズ決定手段」に相当するとした。
本願補正発明の認定を請求項の記載に基づいて行うことは特許庁の審査基準に沿った手法であって正しい認定のしかたであるものと認められるから、上記の認定及び対比に問題はないものと思われるが、仮に、本願補正発明の上記の「前記被写体種類識別手段によって識別された被写体の種類、及び前記認知された被写体の画角上の占有面積に基づき、予め被写体の種類毎に該被写体の画角上の占有面積に対応して決められている値を用いてオートフォーカスエリアサイズを決定するオートフォーカスエリアサイズ決定手段」における「前記認知された被写体の画角上の占有面積に基づき、予め被写体の種類毎に該被写体の画角上の占有面積に対応して決められている値」が、発明の詳細な説明の実施形態に記載されたものに限定して解釈すべきとした場合について検討する。

イ 発明の詳細な説明には、上記の「前記認知された被写体の画角上の占有面積に基づき、予め被写体の種類毎に該被写体の画角上の占有面積に対応して決められている値」については、【0041】?【0043】及び【図13】に次のように記載されている。

「【0041】
B-1.第2実施形態の構成
図11は、本第2実施形態によるデジタルカメラの構成を示すブロック図である。なお、前述した図1に対応する部分には同一の符号を付けて説明を省略する。図において、画像認識部40は、デジタル信号処理部28で処理された画像データを用いて、色相や面積、その造形などから被写体を認知するとともに、該被写体が「(人)の顔」、「風景」、「花(植物)」のいずれであるかを認識するようになっている。制御部20は、上記画像認識部40の認識結果に従って、撮影条件に最適なフォーカスエリアサイズを特定する。
【0042】
より具体的には、被写体が「(人)の顔」であると認識した場合には、中程度のサイズのフォーカスエリアとする。また、被写体が「風景」であると認識した場合には、大面積のサイズのフォーカスエリアとする。さらに、被写体が「花(植物)」であると認識した場合には、小面積のサイズのフォーカスエリアとする。さらに、上記特定したフォーカスエリアに対して、認識した被写体の面積から、フォーカスエリアサイズ補正係数を算出し、「フォーカスエリア」×「フォーカスエリアサイズ補正係数」を算出し、最終的なフォーカスエリアを決定するようになっている。
【0043】
上記処理を行うために、RAM35には、図12に示すフォーカスエリアテーブル35-3と図13に示すフォーカスエリアサイズ補正係数テーブル35-4とが記憶されている。フォーカスエリアテーブル35-3には、被写体の種類と、その被写体であった場合に選択すべきフォーカスエリアのサイズとが記憶されている。また、フォーカスエリアサイズ補正係数テーブル35-4には、被写体の種類毎に、被写体の面積S1-0?S1-n、S2-0?S2-n、S3-0?S3-nに対応するフォーカスエリアサイズ補正係数K1-0?K1-n、K2-0?K2-n、K3-0?K3-nが記憶されている。」

「【図13】



ウ 当審の判断
(ア)本願補正発明における上記の「前記認知された被写体の画角上の占有面積に基づき、予め被写体の種類毎に該被写体の画角上の占有面積に対応して決められている値」についての発明の詳細な説明及び図面の記載が、当業者がその発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものかについて検討する。
(イ)まず、【図13】には、例えば、「風景」の「被写体面積」について「S2-0」?「S2-n」と記載されている。一般に、画面に写っているもの全体で風景を構成するものと考えることが通常といえるところ、上記の「S2-0」?「S2-n」は、風景をどのようなものと捉えて規定したものかの説明がなされておらず、しかも具体的数値も示されていないことから、発明の詳細な説明は、風景の被写体面積(「S2-0」?「S2-n」)について当業者が理解し、実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものということができない。同様に、【図13】の「フォーカスエリアサイズ補正係数」についても、風景の被写体面積(「S2-0」?「S2-n」)の規定のしかたが不明である以上、その技術的意義が不明であり、しかも具体的数値も示されていないことから、発明の詳細な説明は、「フォーカスエリアサイズ補正係数」(「K2-0」?「K2-n」)について当業者が理解し、実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものということができない。
(ウ)また、【図13】には、「顔」及び「花」について、それぞれ「被写体面積」(「S1-0」?「S1-n」及び「S3-0」?「S3-n」)に対する、「フォーカスエリアサイズ補正係数」(「K1-0」?「K1-n」及び「K3-0」?「K3-n」)が示されているが、「K1-0」?「K1-n」と「K3-0」?「K3-n」とで、どのように異なるのかについて何等も記載されておらず、しかも具体的数値も示されていないことから、発明の詳細な説明は、「顔」及び「花」についての「フォーカスエリアサイズ補正係数」(「K1-0」?「K1-n」及び「K3-0」?「K3-n」)について当業者が理解し、実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものということができない。
(エ)よって、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願補正発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものいうことができないから、特許法第36条第4項第1号に規定する発明に該当し、本願補正発明は特許を受けることができない。

(3) むすび
上記(1)から、本願補正発明は引用発明であるということができるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができず、また、(2)から、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願補正発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものいうことができないから、特許法第36条第4項第1号に規定する発明に該当し、本願補正発明は特許を受けることができない。
よって、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるということができないから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成24年2月16日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年4月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 平成24年2月16日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「1 本件補正について」の記載参照。)

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項及び引用発明については、上記「第2 平成24年2月16日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(1)特許法第29条第1項第3号の規定(発明の新規性)違反について」の「イ 引用例」に記載したとおりである。

3 対比・判断
上記「第2 平成24年2月16日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「1 本件補正について」に記載したように、本願発明に対して、「オートフォーカスエリアサイズを決定」するのに用いる要因として、補正前から特定されていた「被写体の種類」に加えて「認知された被写体の画角上の占有面積に基づき、予め被写体の種類毎に該被写体の画角上の占有面積に対応して決められている値」も用いることを特定して限定したものが本願補正発明である。
そうすると、上記「第2 平成24年2月16日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(1)特許法第29条第1項第3号の規定(発明の新規性)違反について」の「ウ 対比及び当審の判断」において記載したとおり、本願発明の発明特定事項をすべて含み、本願発明をさらに限定したものに相当する本願補正発明が引用発明であるといえるから、本願発明も、同様に、引用発明であるといえる。
(なお、本願発明は、本願補正発明の発明特定事項である「前記認知された被写体の画角上の占有面積に基づき、予め被写体の種類毎に該被写体の画角上の占有面積に対応して決められている値」の特定事項を有するものではなから、上記「第2 平成24年2月16日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「2 独立特許要件違反についての検討」で検討した、「(2)特許法第36条第4項第1号の規定(明細書の記載要件)の違反について」の検討が不要となったことを付言する。)

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-27 
結審通知日 2013-01-29 
審決日 2013-02-12 
出願番号 特願2006-74780(P2006-74780)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 536- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾齋藤 卓司  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 北川 清伸
川俣 洋史
発明の名称 撮像装置、撮像方法および撮像プログラム  

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