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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G01C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1272868
審判番号 不服2012-3849  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-28 
確定日 2013-04-09 
事件の表示 特願2009-518011「適応ナビゲーション命令を使用するナビゲーション装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 1月10日国際公開,WO2008/004857,平成21年12月 3日国内公表,特表2009-543047〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,2006年7月6日を国際出願日とする出願であって,平成23年10月20日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成24年2月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同日付け手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由I]
(1)補正の内容
本件補正前の特許請求の範囲は,以下のとおりである。
「【請求項1】
出発地から目的地までのルートを判定するルート計算モジュール(41)と,運転者が前記判定されたルートを進行できるように前記運転者に対しての基本命令の集合を生成する命令モジュール(42)と,少なくとも1つのプロファイルを構築するプロファイルモジュール(44,45,46)とを具備し,車両の運転者にナビゲーション命令を与えるナビゲーション装置(10)であって,
前記少なくとも1つのプロファイルに基づいて前記基本命令の集合を出力命令の集合に変換するプロファイル/命令翻訳プログラム(48)
を具備することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記基本命令の集合の基本命令各々は,
K個の出力命令に変換され,Kはゼロ以上の整数であり且つ前記少なくとも1つのプロファイル中のデータに基づいている
ことを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記プロファイル/命令翻訳プログラムは,
前記少なくとも1つのプロファイルに基づいて前記出力命令を発するために使用される音声を決定する
ことを特徴とする請求項1又は2記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記プロファイル/命令翻訳プログラムは,
前記少なくとも1つのプロファイルに基づいて前記出力命令を発するために使用される音量を決定する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記プロファイル/命令翻訳プログラムは,
前記少なくとも1つのプロファイルに基づいて前記出力命令のタイミングを決定する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記プロファイル/命令翻訳プログラムは,
前記少なくとも1つのプロファイルに基づいて前記出力命令が与えられる地点と前記出力命令と関連する前記ルートの地点との間の距離を決定する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記プロファイルモジュールは,
運転者パラメータを含む運転者プロファイルを構築する運転者プロファイラ(44)
を具備することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のナビゲーション装
置。
【請求項8】
前記運転者プロファイラ(44)は,
事前設定された運転者プロファイルを適応させることにより前記運転者プロファイルを構築する
ことを特徴とする請求項7記載のナビゲーション装置。
【請求項9】
前記運転者プロファイルは,
自宅の住所,
運転者ID,
誕生日,
複数の所定の区域毎に管理区域を訪れた回数,
特定の目的地まで運転した回数,
運転者が無視した出口の比率,
運転者が左を右と間違えたか又は右を左と間違えた曲がり角の比率,
攻撃性の度合い,
移動電話番号,
少し先の出力命令が計画された時に運転者が電話をしている,
運転状況の困難さのレベル,
運転者が居住地又は最近の目的地において各目的地に対して構成されるナビゲーション命令を希望しない,
現在の曜日による運転者の影響の受け易さ,
時間帯による運転者の影響の受け易さ,
のうち少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項7又は8記載のナビゲーション装置。
【請求項10】
前記ナビゲーション装置(10)は,
少なくとも1つの運転者運転挙動パラメータを記録し,前記少なくとも1つのパラメータを前記運転者プロファイラ(44)に送出する運転者レコーダ(62)
を具備することを特徴とする請求項9記載のナビゲーション装置。
【請求項11】
前記運転者運転挙動パラメータは,
所定の最大加速度により除算された前記車両の加速度の移動平均である加速係数,所定の最大減速度により除算された前記車両の減速度の移動平均である減速係数,所定の最大カーブ加速度により除算されたカーブの間のカーブ加速度の移動平均であるカーブ攻撃性係数,前記運転者が特定の管理区域を運転した回数,のうち少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項10記載のナビゲーション装置。
【請求項12】
前記ナビゲーション装置は,
前記運転者が出力命令を無視する度に,分かり難い場所のリストに少なくとも場所及び時間に関するデータを格納する
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項13】
前記プロファイルモジュールは,
環境パラメータを含む環境プロファイルを構築する環境プロファイラ(45)
を具備することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項14】
前記環境パラメータは,天候状況を含む
ことを特徴とする請求項13記載のナビゲーション装置。
【請求項15】
前記環境パラメータは,道路状況を含む
ことを特徴とする請求項13記載のナビゲーション装置。
【請求項16】
前記プロファイルモジュールは,
前記判定されたルートの交通状況を含むルートプロファイルを構築するルートプロファイラ(46)
を具備することを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項17】
前記ナビゲーション装置は,
前記ユーザが自動車のハンドルの前に座っている時に運転者を認識する運転者認識モジュール(52)
を具備することを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれか1項に記載のナビゲーション装置(10)を具備する車両。
【請求項19】
出発地から目的地までのルートを判定するステップと,ユーザが前記判定されたルートを進行できるように前記ユーザに対しての基本命令の集合を生成するステップと,少なくとも1つのプロファイルを構築するステップとを含み,ナビゲーション装置を使用してナビゲーション指示を提供する方法であって,
前記少なくとも1つのプロファイルに基づいて前記基本命令の集合を出力命令の集合に変換するステップ
を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
コンピュータ構成にロードされた時に請求項19に記載の方法を実行する機能を前記コンピュータ構成に与えるコンピュータプログラム。
【請求項21】
請求項20に記載のコンピュータプログラムを含むデータ記憶媒体。」

本件補正により,特許請求の範囲は,以下のように補正された。
「【請求項1】
車両の運転者にナビゲーション命令を与えるナビゲーション装置であって,
出発地から目的地までのルートを判定するルート計算モジュールと,
運転者が前記判定されたルートを進行できるように前記運転者に対しての基本命令の集合を生成する命令モジュールと,
少なくとも1つのプロファイルを構築するプロファイルモジュールと
を具備し,
前記ナビゲーション装置は,
前記運転者が出力命令を無視したイベントを記録するとともに,当該イベントに関連するデータを格納し,
前記ナビゲーション装置は,
前記少なくとも1つのプロファイルと,前記運転者が出力命令を無視したイベントに関連する前記格納されたデータとに基づいて前記基本命令の集合を出力命令の集合に変換するプロファイル/命令翻訳プログラム
を更に具備することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記プロファイル/命令翻訳プログラムは,
前記基本命令の集合の基本命令各々をK個の出力命令に変換し,
前記Kは,ゼロ以上の整数であり且つ,前記少なくとも1つのプロファイルと,前記運転者が出力命令を無視したイベントに関連する前記格納されたデータとに基づいている
ことを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記プロファイル/命令翻訳プログラムは,前記少なくとも1つのプロファイルと,前記運転者が出力命令を無視したイベントに関連する前記格納されたデータとに基づいて
(i)前記出力命令を発するために使用される音声,
(ii)前記出力命令のタイミング
(iii)前記出力命令が与えられる地点と前記出力命令と関連する前記ルートの地点との間の距離
の少なくとも1つを決定することを特徴とする請求項1又は2記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記プロファイルモジュールは,
運転者パラメータを含む運転者プロファイルを構築する運転者プロファイラ
を具備することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記運転者プロファイラは,
事前設定された運転者プロファイルを適応させることにより前記運転者プロファイルを構築する
ことを特徴とする請求項4記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記運転者プロファイルは,
自宅の住所,
運転者ID,
誕生日,
複数の所定の区域毎に管理区域を訪れた回数,
特定の目的地まで運転した回数,
運転者が無視した出口の比率,
運転者が左を右と間違えたか又は右を左と間違えた曲がり角の比率,
攻撃性の度合い,
移動電話番号,
少し先の出力命令が計画された時に運転者が電話をしている,
運転状況の困難さのレベル,
運転者が居住地又は最近の目的地において各目的地に対して構成されるナビゲーション命令を希望しない,
現在の曜日による運転者の影響の受け易さ,
時間帯による運転者の影響の受け易さ,
のうち少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項4又は5記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記ナビゲーション装置は,
少なくとも1つの運転者の運転者運転挙動パラメータを記録し,前記少なくとも1つのパラメータを前記運転者プロファイラに送出する運転者レコーダ
を具備することを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの運転者運転挙動パラメータは,
所定の最大加速度により除算された前記車両の加速度の移動平均である加速係数,
所定の最大減速度により除算された前記車両の減速度の移動平均である減速係数,
所定の最大カーブ加速度により除算されたカーブの間のカーブ加速度の移動平均であるカーブ攻撃性係数,
のうち少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項7記載のナビゲーション装置。
【請求項9】
前記プロファイルモジュールは,
環境パラメータを含む環境プロファイルを構築する環境プロファイラ
を具備することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項10】
前記環境パラメータは,
(i)天候状況,
(ii)道路状況
の少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項9記載のナビゲーション装置。
【請求項11】
前記プロファイルモジュールは,
前記判定されたルートの交通状況を含むルートプロファイルを構築するルートプロファイラ
を具備することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項12】
前記ナビゲーション装置は,
前記ユーザが自動車のハンドルの前に座っている時に運転者を認識する運転者認識モジュール
を具備することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のナビゲーション装置を具備する車両。
【請求項14】
前記運転者が出力命令を無視したイベントに関連する前記格納されたデータは,
(i)前記イベントの場所,
(ii)前記イベントの時間,
(iii)前記イベントの重要度,
(iv)前記運転者が前記判定されたルートに戻るか否かを示すデータ
の少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項15】
車両の運転者にナビゲーション命令を与えるように構成されたナビゲーション装置に内蔵されたコンピュータを,
出発地から目的地までのルートを判定する判定手段,
運転者が前記判定されたルートを進行できるように前記運転者に対しての基本命令の集合を生成する生成手段,
少なくとも1つのプロファイルを構築する構築手段,
前記運転者が出力命令を無視したイベントを記録するとともに,当該イベントに関連するデータを格納する格納手段,
前記少なくとも1つのプロファイルと,前記運転者が出力命令を無視したイベントに関連する前記格納されたデータとに基づいて前記基本命令の集合を出力命令の集合に変換する変換手段
として機能させるためのコンピュータプログラム。」
と補正された。

(2)補正事項の検討
本件補正前の請求項と補正後の請求項との関係は,その記載内容から判断して,補正前の請求項1?3が補正後の請求項1?3に対応し,補正前の請求項7?11が補正後の請求項4?8に,補正前の請求項13?14が補正後の請求項9?10に,補正前の請求項16?18が補正後の請求項11?13に,それぞれ対応し,補正後の請求項14,15は新たに追加された請求項であると認められる。なお,これらの関係については,請求人も審判請求書で認めている(4頁1?12行)。
そうすると,少なくとも請求項14については,対応する補正前の請求項が存在せず,特許請求の範囲の減縮を目的としたものとはいえず,また,請求項の削除,誤記の訂正ないし明りょうでない記載の釈明を目的としたものでないことが明らかである。
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,単に「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項に規定するいずれの目的にも適合しないものである。

(3)むすび
以上のとおりであって,本件補正は,改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[理由II]
上記のとおり,本件補正は,改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるが,仮に,本件補正が特許請求の範囲の減縮及び請求項の削除を目的とするものに該当し,改正前の特許法第17条の2第4項の規定に適合すると解釈される場合,本件補正後の前記請求項1を引用する請求項9に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)についても検討しておくこととする。

(1)引用文献
(1-1)前置報告書で提示された特開2004-333467号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0001】
本発明は,目的地までの経路を探索し,探索された経路に従い目的地までの誘導を行うナビゲーション装置に関し,特に,誘導経路から車両が運転者の過誤等により逸脱したときの交差点案内に関する。」

・「【0004】
経路誘導時において,運転者がその誘導経路から逸脱することがある。一つは,運転者の過誤により交差点の右左折等を見逃してしまう場合と,もう一つは,運転者の意図によりその誘導経路とは別の経路を走行する場合がある。」

・「【0008】
しかしながら,従来のナビゲーション装置には次のような課題がある。上記特許文献1あるいは特許文献2は,運転者の過誤により経路を逸脱した場合には元の経路に復帰させ,また,意図的に逸脱した場合には,経路探索範囲を変えて新たな経路の探索を行わせるものである。運転者が過誤により経路を逸脱した場合に,それを次回あるいはその後の経路探索に活用する試みがなされていない。つまり,運転者が過誤により経路を逸脱した場合に,その過誤を適正に予防すべく処置は何ら考慮されていない。
【0009】
さらに従来のナビゲーション装置では,複雑で間違い易い交差点でも,分かり易い交差点でもほとんど表現に差がないため,例えば分岐が多数あるジャンクションなどで,どちらに進めばよいか判断のつかないことがあり,ユーザーが良く間違えるポイントについての案内表示が未だ不十分であった。
【0010】
そこで本発明は,上記従来技術の課題を解決し,運転者が誘導経路から逸脱した場合に,その逸脱された交差点情報を活用し,その後の経路誘導に活用することができる,ナビゲーション装置およびその方法を提供することを目的とする。
さらに本発明は,運転者が間違いを生じ易そうな交差点についてわかり易い表示を行うことができる,ナビゲーション装置およびその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るナビゲーション装置は,以下の構成を有する。目的地までの誘導経路から車両が逸脱したことを検出する検出手段と,前記逸脱が検出されたとき,逸脱された交差点に関する交差点情報を記憶する記憶手段と,前記記憶された交差点情報に基づき,誘導経路上に,前記逸脱された交差点と同一もしくは類似する交差点がある場合に,当該交差点についての案内を強調する交差点案内強調手段とを有する。」

・「【0015】
本発明によれば,誘導経路からの車両の逸脱が運転者の過誤による場合には,逸脱した交差点に関する情報をメモリに記憶し,その記憶された交差点情報をもとに,逸脱した交差点と同一もしくは類似の交差点について,通常と異なる強調した交差点案内を行う。これにより,運転者の注意が喚起され,同じような交差点において間違いによる経路の逸脱が繰り返されるのを防止することができる。このような交差点情報を蓄えることで,運転者に適したナビゲーションを提供することができる。さらに,間違え易い交差点において非誘導経路に対しては積極的に進行禁止のマークを表示することで,ユーザーへの注意をより喚起させ,ユーザーによる間違いを減らさせることが期待される。」

・「【0017】
図1は本発明の第1の実施例に係るナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置1は,GPS受信機10,自立航法用センサ11,VICS・FM多重レシーバ12,操作パネル20,音声入力部21,リモコン操作部22,入力インターフェース23,地図データ等を記憶する記憶装置30,音声出力部40,スピーカ41,表示制御部50,ディスプレイ51,プログラムメモリ60,データメモリ70,車両の状態に関する情報を含む車両状態情報源90と,これに接続される車両バス91,および各部を制御する制御部80を含む。」

・「【0021】
記憶装置30は,ハードディスクドライブ(HDD),DVD,CD-ROM等の記録媒体であって,ナビゲーション装置に必要とされる地図データ,住所,電話,施設等のデータベース等を記憶する。さらに,記憶装置30は,ナビゲーション装置の各種の機能を実行させるためのプログラムを記憶することができ,ナビゲーション装置がオーディオ機能を有する場合には,楽曲データを記憶する。」

・「【0023】
音声出力部40はスピーカ41を含み,制御部80の制御によりスピーカ41から音声を出力させる。例えば,目的地に到達するまでの情報として交差点の手前で進路方向の注意を促す音声を出力をしたり,あるいは,ユーザーがナビゲーション装置に対して対話形式により入力を行うときに,ユーザーに操作入力の音声指示を出力する。さらに,音声出力部40は,ナビゲーション装置がオーディオ機能を実行するとき,楽曲を出力する。
【0024】
表示制御部50は,ディスプレイ51に接続され,制御部80の制御下において,記憶装置30またはデータメモリ70から読み出されたデータに基づき,ディスプレイ51に地図を表示したり,あるいは地図上に,車両の現在位置を示す車両マーク,目的地までのルート,交差点等の分岐点での案内表示および車両の移動軌跡等を合成させる。さらに,ユーザーによって操作パネル20等から入力された指示や操作に関する情報が地図上にあるいはそれとは別の画面上に表示される。表示制御部50は,好ましくはFIFO等のVRAMを含み,記憶装置30やデータメモリ70から読み出された地図,道路,案内表示に関するデータをVRAMに記憶し,VRAMから読み出された地図データに各種データを合成させる。ディスプレイ51は,例えば,液晶やプラズマを用いた横長のワイド画面であり,表示制御部50の制御下において,2画面表示をすることも可能である。
【0025】
プログラムメモリ60は,ナビゲーション装置において実行される各種プログラムを記憶し,これらのプログラムは制御部80によって実行される。プログラムメモリ60は,例えば書き換え可能なRAMを用いて構成され,記憶装置30に記憶されたプログラムを読み出すようにしても良い。あるいは,予めプログラムを記憶したROMを用いることもできる。プログラムの内容は,例えば,目的地までの経路を探索するプログラム61,ディスプレイ51上に表示される地図の設定・変更を行うプログラム62等を含む。さらに,本発明では,誘導経路を案内中に,運転者が誘導経路を逸脱した否かを検出したり,その逸脱が過誤によるものか故意によるものかを判断するための経路逸脱検出プログラム63を含む。この動作については後述する。
【0026】
データメモリ70は,制御部80によって処理された各種演算の処理結果や記憶装置30から読み出された地図のデータ71等を記憶する。さらに,データメモリ70は,制御部80により目的地までの経路の探索処理が行われたとき,その探索された誘導経路データ72や,VICS・FM多重レシーバ12から受信した道路交通情報73を記憶する。さらに,本発明のデータメモリ70は,上述した経路逸脱検出プログラム63が実行されたとき,経路の逸脱が行われた交差点情報74を記憶する。この交差点情報は,その後の経路誘導において,逸脱された交差点と同一もしくは類似の交差点を判別するために用いられる。データメモリ70は,DRAM,SRAM,フラッシュメモリ等を用いることができるが,好ましくは不揮発性のメモリを用い,ナビゲーション装置の電源がオフされても,上述した交差点情報74が保存されるようにする。また,ナビゲーション装置1に装着可能な外部メモリ75をデータメモリ70と併用するものであってもよい。」

・「【0028】
記憶装置30に記憶される地図データについて説明する。地図データは,図2に示すように,所定の経度および緯度で区切られた図葉を単位としており,各図葉の地図データは,図葉番号を指定することにより特定され,読み出すことが可能となる。各図葉毎の地図データは,(1)地図表示に必要な各種のデータからなる描画ユニットと,(2)マップマッチングや経路探索,経路誘導等の各種の処理に必要なデータからなる道路ユニットと,(3)交差点の詳細データからなる交差点ユニットが含まれている。
【0029】
描画ユニットには,VICSセンタから送られてくる道路交通情報に基づいて対応する道路を特定するために必要なVICS変換レイヤのデータと,建物あるいは河川等を表示するために必要な背景レイヤのデータと,市町村名や道路名等を表示するために必要な文字レイヤのデータが含まれている。道路ユニットには,道路上のある交差点と隣接する他の交差点等とを結ぶ線をリンクと,2本以上のリンクを結ぶ点をノードに関する情報が含まれている。例えば,ノードの経度・緯度情報,ノードの標高,ノードが交差点ノードであるか否かを示すノードの属性フラグ等である。交差点ユニットには,例えば,交差点を構成する道路の各車線に関するデータが含まれる交差点車線情報,交差点の拡大映像表示に用いられる交差点形状コード,交差点が何差路であるかを示す交差点の差路数等の情報が含まれる
【0030】
次に第1の実施例に係るナビゲーション装置の動作を,図3のフローチャートを参照しながら説明する。ナビゲーション装置がオンされ,ユーザーにより目的地までの設定が成されると(ステップS101),目的地までの経路探索が行われる(ステップS102)。探索は,例えば,目的地までのコストが最小となるようなダイクストラ法を用いる。目的地までの探索された経路データは,データメモ70の誘導経路データ72に格納される(ステップS103)。制御部80は,車両の走行に伴い,誘導経路データ72を読出し,ディスプレイ51およびスピーカ51を介して,運転者に経路案内を行う(ステップS104)。
【0031】
誘導経路の案内中,運転者が誘導経路を逸脱したか否かをチェックする(ステップS105)。GPS受信機10等により検出された自車位置と,誘導経路上のリンクに含まれる緯度,経度によって特定される位置とが,所定の閾値を越える場合には,誘導経路から逸脱していると判定する。」

・「【0037】
上記情報に基づき,意図的であると判定された場合以外は,結果として,運転者の過誤あるいは間違いであると判定する。また,上記した情報は,それ単独で判定するよりも,それらを組み合わせて判定する方が,より精度を向上させることができる。
【0038】
再び図3のフローに戻り,誘導経路からの逸脱が運転者の過誤であると判定された場合には,その逸脱された交差点に関する情報が,データメモリ70の交差点情報74に記録される。交差点情報74は,誘導経路からの逸脱がある度に蓄積され保存される。交差点情報74を参照することで,再び似たような交差点に差し掛かったときに,運転者に同じ間違いを繰り返させないようにする。」

・「【0045】
再び図3の動作フローに戻り,データメモリ70に記憶された交差点情報74は,その後の誘導経路の案内に活用される。すなわち,交差点情報に記憶された各種データを用いて,それと同一か,あるいは類似の交差点が,誘導経路に含まれるか否かをチェックする(ステップS108)。交差点が類似するか否かは,例えば,交差点情報のいずれか一つのコードが一致する場合には,交差点が類似すると判定することができる。
【0046】
類似の交差点があると判定された場合,制御部80は,通常の交差点についての案内表示と異なり,運転者により注意を促すような,強調した案内を行う(ステップS109)。その一例を,図8に示す。同図(a)では,ディスプレイ51に,縮尺の小さい画面51aと,拡大画面51bと表示させ,拡大画面51bに,交差点の手前500mからその右左折の案内201の表示を行う例を示している。通常の交差点の場合には,右左折の案内は300m手前から行うが,それよりも早いタイミングで案内することで,運転者の注意を喚起させる。同図(b)では,交差点におけるレーン情報202を強調して表示させる。誘導経路を含むレーン部分を,他の画像より目立つように色を変えたり,コントラストを高くしたり,あるいは,アイコンを大きくしたり,点滅させたりし,運転者に明瞭にわかり易くする。同図(c)では,交差点にある目印となる施設や建物203を強調して表示させる。右折の場合には,進行方向の右側に存在する施設を,左折の場合には左側の施設を強調するようにする。これとともに,“交差点の施設Dが目印です”あるいは“交差点の施設Eが目印です”の音声案内をすることで,より効果的に運転者に注意を促すことができる。勿論,図8(a),(b)の場合にも音声ガイドを併用することが望ましい。」

・「【0050】
さらに,第1の実施例では,誘導経路からの逸脱が運転者の過誤による場合に,交差点情報を記憶するようにしたが,これに限らず,誘導経路から逸脱した場合には,それが過誤か意図的かを問わず,すべての交差点情報を記憶するようにしてもよい。そして,その交差点情報と同一または類似の交差点が誘導経路上にあるときに,運転者に注意を促すようにしてもよい。運転者が,誘導経路から故意に逸脱したか否かを完全に見極めることは困難だからである。」

・引用例1のものにおいて,目的地までの経路を探索するプログラム61は,「経路」を探索する以上,何らかの方法で出発地を設定していることは明らかであるから,出発地から目的地までの経路を探索するものといえる。

上記記載事項及び図示内容を総合すると,引用例1には,以下の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「車両の運転者に探索された経路に従い目的地までの誘導を行うナビゲーション装置であって,出発地から目的地までの経路を探索するプログラム61と,目的地に到達するまでの情報として交差点の手前で進路方向の注意を促す音声を出力したり,交差点等の分岐点での案内表示をする制御部80を具備し,前記ナビゲーション装置は,運転者が過誤により誘導経路を逸脱したと判定すると,逸脱された交差点に関する情報をデータメモリ70の交差点情報74に記録し,前記ナビゲーション装置は,誘導している経路上の交差点が,交差点情報74に記憶された交差点と類似すると判定した場合,通常の交差点についての案内と異なり,運転者に注意を促すような強調した案内を行うようにしたナビゲーション装置。」

(1-2)原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-280990号公報(以下「引用例2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】 移動体位置を検出する位置検出手段と,その移動体位置から目的地に到るまでの経路を探索する経路探索手段と,探索経路上における交差点に関する案内を音声により行う音声案内手段と,処理情報を記憶する記憶手段と,これ等の各手段を制御する制御手段と,上記交差点での音声案内頻度を変更設定する音声案内頻度設定手段とを備えたナビゲーション装置。
・・・・・
【請求項3】 交差点での音声案内頻度を,案内する経路の走行回数に応じて変更することを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。
・・・・・
【請求項5】 交差点での音声案内頻度を,天候によって変更することを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。」

・「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は車両等の移動体位置を検出し,この移動体位置を道路地図上に表示しながら,その移動体位置から目的地に至るまでの経路を探索して走行案内を行うナビゲーション装置に関するものである。」

・「【0008】
【発明が解決しょうとする課題】従来のナビゲーション装置は以上のように構成されているので,常に決められた頻度の交差点案内が行われる。このため,過去の何度か走行した経路で交差点案内を必要としないのに,その案内が行われ,この交差点案内がラジオ,CD等の別音声を聞いているときには邪魔になる。また,交差点の手前で案内情報が出されるタイミングが一定していると,運転者の運転技術によっては交差点案内のタイミングが適切でない場合がある等の課題があった。
【0009】この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので,音声による交差点案内の頻度を,運転者の意志により,あるいは運転環境に応じて任意に変更設定することができるようにしたナビゲーション装置を得ることを目的とする」

・「【0019】
【発明の実施の形態】以下,この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.図1はこの発明のナビゲーション装置の構成を示すブロック図であり,図において,1はGPS(全世界測位システム,Global Positioning System),自立航法センサー,マップマッチング等を用いて移動体位置を逐次演算によって求める位置検出手段,2は制御手段3が動作するためのプログラム,処理情報および,経路の走行回数等を記憶する記憶手段,4は地図データを記憶した地図データベース,5は現在の移動体位置から目的地までの経路を探索する経路探索手段,6は探索経路上における交差点に関する案内を音声により行う音声案内手段,7は道路地図上に探索経路および移動体位置を表示する表示手段,8は音声案内頻度設定手段である。」

・「【0025】実施の形態3.この発明の実施の形態3は,探索経路上における過去の走行回数に応じて音声案内頻度の設定を行うようにしたもので,図6に示すフローチャートについて説明する。まず,記憶手段2から読み出した探索経路における過去の走行回数はK回以上かを判断し(ステップST21),NOならば,あまり知らない道と判断して案内頻度HIGH(多い,例えば5回)を採用し(ステップST22),YESならば,よく知っている道と判断して案内頻度LOW(少ない,例えば2回)を採用する(ステップST23)。案内頻度HIGH,LOWの設定は,標準で決めておいてもよいし,あらかじめユーザが設定しておいてもよい。又,距離においても同様に,標準で決めておいてもよいし,あらかじめユーザが設定しておいてもよい。
【0026】以上のように,この実施の形態3によれば,交差点での音声案内頻度を,案内する経路の走行回数に応じて変更するように構成したので,交差点での音声案内頻度を,運転者の熟練度に応じて適切に設定することができ,運転の妨げを抑制し,運転に集中できるという効果が得られる。
【0027】実施の形態4.この発明の実施の形態4は,昼夜の別によって音声案内頻度の設定を行うようにしたもので,図7に示すフローチャートについて説明する。まず,現在は昼間の時間帯かを例えば時間データ,ヘッドライトの点灯等で判断し(ステップST31),NOならば案内頻度HIGH(多い)を採用し(ステップST32),YESならば案内頻度LOW(少ない)を採用する(ステップST33)。
【0028】以上のように,この実施の形態4によれば,交差点での音声案内頻度を,昼夜によって変更するように構成したので,見通しの悪い夜間の走行においても,交差点における音声案内が適切に行われる。その結果,運転者は運転にゆとりを持つことができ,運転に集中でき,安全な運転を行うことができるという効果が得られる。
【0029】実施の形態5.この発明の実施の形態5は,天候の状態によって音声案内頻度の設定を行うようにしたもので,図8に示すフローチャートについて説明する。まず,FM多重放送による天候データ,ワイパーの作動データ,雨センサのデータ等によって現在の天候は晴天であるか否かを判断し(ステップST41),NOならば案内頻度HIGH(多い)を採用し(ステップST42),YESならば案内頻度LOW(少ない)を採用する(ステップST43)。
【0030】以上のように,この実施の形態5によれば,交差点での音声案内頻度を,天候によって変更するように構成したので,見通しの悪い雨天時の走行においても,交差点における音声案内が適切に行われる。その結果,運転者は運転にゆとりを持つことができ,運転に集中でき,安全な運転を行うことができるという効果が得られる。」

上記記載事項及び図示内容を総合すると,引用例2には,以下の事項からなる発明(以下,「引用例2記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
「現在の移動体位置から目的地までの経路を探索する経路探索手段5と,運転者が前記探索された経路を走行する際に探索経路上における交差点に関する案内を音声により行う音声案内手段6と,経路の走行回数等を記憶する記憶手段2とを具備し,車両の運転者に案内情報を提供するナビゲーション装置であって,交差点での音声案内頻度を,案内する経路の走行回数に応じて変更するように構成したナビゲーション装置。」

また,引用例2には,以下の2つの事項が記載されていると認められる。
「車両の運転者に走行経路の走行案内を行うナビゲーション装置において,天候と交差点での音声案内頻度との関係を予め設定しておき,現在の天候に応じた頻度で音声案内を行うプログラムを備えたナビゲーション装置。」(以下「引用例2の記載事項1」という。)
「車両の運転者に走行経路の走行案内を行うナビゲーション装置において,昼夜の別と交差点での音声案内頻度との関係を予め設定しておき,現在の昼夜の別に応じた頻度で音声案内を行うプログラムを備えたナビゲーション装置。」(以下「引用例2の記載事項2」という。)

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると,後者の「探索された経路に従い目的地までの誘導を行う」態様は,前者の「ナビゲーション命令を与える」態様に相当し,以下同様に,「出発地から目的地までの経路を探索するプログラム61」は,「出発地から目的地までのルートを判定するルート計算モジュール」に相当する。
次に,本願補正発明における「基本命令」に関して,明細書の段落【0036】に,「基本命令の一例は『20mRIGHT』であり,運転者は20メートル先を右折する必要があることを意味する。」と記載されていることを勘案すると,後者の「交差点の手前で進路方向の注意を促す音声」や「交差点の分岐点での案内表示」は,いずれも前者の「基本命令」に相当し,後者の制御部80は,探索された経路に沿ってそのような「基本命令」を複数(すなわち,基本命令の集合を)生成する機能を有するから,後者の「目的地に到達するまでの情報として交差点の手前で進路方向の注意を促す音声を出力したり,交差点等の分岐点での案内表示をする制御部80」と前者の「運転者が判定されたルートを進行できるように前記運転者に対しての基本命令の集合を生成する命令モジュール」とは,「運転者が判定されたルートを進行できるように前記運転者に対しての基本命令の集合を生成する手段」との概念で共通する。
また,本願補正発明における「運転者が出力命令を無視したイベント」に関して,本願明細書の段落【0038】に,「一実施形態において,運転者が命令を無視するという事象は,タイムスタンプ及び場所等の追加のデータと共に記録される。ナビゲーション装置10は,運転者が実際の状況又は可能性として地図データの誤りにより混乱したと考えられる『分かり難い場所のリスト』を作成及び格納するように構成される。・・・運転者がそのようなリストされた場所を運転する場合,ナビゲーション命令は,その場所がリストされた回数に基づいて更なる間違いを回避するように適応される。」と記載されていることから,「運転者が命令を無視する」とは,運転者が誤って走行経路を外れた場合も含むものと解される。そうすると,後者の「運転者が過誤により誘導経路を逸脱したと判定すると,逸脱された交差点に関する情報をデータメモリ70の交差点情報74に記録する」態様は,前者の「運転者が出力命令を無視したイベントを記録するとともに,当該イベントに関連するデータを格納」する態様に相当する。
さらに,後者の「誘導している経路上の交差点が,交差点情報74に記憶された交差点と類似すると判定した場合,通常の交差点についての案内と異なり,運転者に注意を促すような強調した案内を行う」ことは,通常の交差点についての案内,すなわち「基本命令」を別の出力命令に変換しているということができるから,後者の「誘導している経路上の交差点が,交差点情報74に記憶された交差点と類似すると判定した場合,通常の交差点についての案内と異なり,運転者に注意を促すような強調した案内を行う」態様と,前者の「少なくとも1つのプロファイルと,運転者が出力命令を無視したイベントに関連する格納されたデータとに基づいて基本命令の集合を出力命令の集合に変換する」態様とは,「少なくとも運転者が出力命令を無視したイベントに関連する格納されたデータに基づいて基本命令の集合を出力命令の集合に変換する」との概念で共通する。
そして,後者のナビゲーション装置も,当該「変換する」機能を実現するためには,何らかの手段を有していることは当然であるから,結局,後者の「誘導している経路上の交差点が,交差点情報74に記憶された交差点と類似すると判定した場合,通常の交差点についての案内表示と異なり,運転者に注意を促すような強調した案内を行うようにした」ものと,前者の「少なくとも1つのプロファイルと,運転者が出力命令を無視したイベントに関連する格納されたデータとに基づいて基本命令の集合を出力命令の集合に変換するプロファイル/命令翻訳プログラム」とは,「少なくとも運転者が出力命令を無視したイベントに関連する格納されたデータに基づいて基本命令の集合を出力命令の集合に変換する手段」との概念で共通する。

したがって,両者は,
「車両の運転者にナビゲーション命令を与えるナビゲーション装置であって,
出発地から目的地までのルートを判定するルート計算モジュールと,
運転者が前記判定されたルートを進行できるように前記運転者に対しての基本命令の集合を生成する手段と,
を具備し,
前記ナビゲーション装置は,
前記運転者が出力命令を無視したイベントを記録するとともに,当該イベントに関連するデータを格納し,
前記ナビゲーション装置は,
少なくとも前記運転者が出力命令を無視したイベントに関連する前記格納されたデータに基づいて前記基本命令の集合を出力命令の集合に変換する手段
を更に具備するナビゲーション装置。」の点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点1]
運転者が判定されたルートを進行できるように前記運転者に対しての基本命令の集合を生成する手段に関し,本願補正発明では,運転者が判定されたルートを進行できるように前記運転者に対しての基本命令の集合を生成する「命令モジュール」であるのに対し,引用発明では,命令モジュールであることは特定されていない点。

[相違点2]
本願補正発明は,少なくとも1つのプロファイルを構築するプロファイルモジュールを具備し,前記プロファイルモジュールは,環境パラメータを含む環境プロファイルを構築する環境プロファイラを具備しているのに対し,引用発明は,そのようなものを具備していない点。

[相違点3]
少なくとも運転者が出力命令を無視したイベントに関連する格納されたデータに基づいて基本命令の集合を出力命令の集合に変換する手段に関し,本願補正発明では,「少なくとも1つのプロファイルと,運転者が出力命令を無視したイベントに関連する格納されたデータに基づいて基本命令の集合を出力命令の集合に変換するプロファイル/命令翻訳プログラム」であるのに対し,引用発明では,運転者が出力命令を無視したイベントに関連する格納されたデータ(データメモリに記録された交差点情報)に基づいて基本命令の集合を出力命令の集合に変換する手段であるが,「少なくとも1つのプロファイルと,」運転者が出力命令を無視したイベントに関連する格納されたデータに基づいて基本命令の集合を出力命令の集合に変換する「プロファイル/命令翻訳プログラム」は備えていない点。

(3)判断
そこで,上記各相違点につき,以下に検討する。
・相違点1について
引用例1には,目的地に到達するまでの情報として交差点の手前で進路方向の注意を促す音声を出力したり,交差点等の分岐点での案内表示をする(すなわち,基本命令の集合を生成する)制御部80に関して,ナビゲーション装置において実行される各種プログラムがプログラムメモリ60に記憶され,これらのプログラムは制御部80によって実行されること(【0025】)が記載されている。
そして,ナビゲーション装置等の電子機器の制御において,制御装置の備える各機能を実行するプログラムをモジュールとして構成することは常套手段であるから,引用発明において,基本命令の集合を生成する機能をモジュールとして構成し,「命令モジュール」とすることは,当業者が適宜採用し得る程度の事項に過ぎない。
したがって,引用発明において,上記常套手段を考慮して,相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。

・相違点2,3について
プロファイラとは,一般に「プロファイラ(英: Profiler)は性能解析ツールであり,プログラム実行時の各種情報を収集する。」もの(wikipedia)であり,本願明細書の段落【0052】には,「図4に示す環境プロファイラ45は,環境パラメータと呼ばれる可能な関連した環境データを継続的にサンプリングする。可能な環境パラメータ及びそれらの値は以下の通りである。
A.進路の道路状況,値:(乾燥,濡れている,滑りやすい)
B.天候状況,値:(降雨なし/雨/雹/雪)及び(強風0?100)(100は8Bft以上)
C.日光,値:(明るい,薄明かり,暗い)
D.時間帯,値:(午前,午後,夕方,夜間)
E.季節,値:(春,夏,秋,冬)
F.曜日,値:0?6」と記載されていることから判断すると,本願補正発明における「環境プロファイラ」とは,天候等の環境データを継続的に取得し,それらのデータの集合からなる環境プロファイルを構築するプログラムないしソフトウエアをいうものと解される。
ところで,引用例2には,引用例2の記載事項1として,
「車両の運転者に走行経路の走行案内を行うナビゲーション装置において,天候と交差点での音声案内頻度との関係を予め設定しておき,現在の天候に応じた頻度で音声案内を行うプログラムを備えたナビゲーション装置。」
及び,引用例2の記載事項2として,
「車両の運転者に走行経路の走行案内を行うナビゲーション装置において,昼夜の別と交差点での音声案内頻度との関係を予め設定しておき,現在の昼夜の別に応じた頻度で音声案内を行うプログラムを備えたナビゲーション装置。」が記載されている。
また,引用例2には,「この発明によれば,音声による交差点案内頻度を,運転者の意志により,あるいは運転環境に適した頻度に変更設定できるように構成したので,運転者の嗜好や熟練度に応じた案内ができる。又,夜間,雨天における運転の安全性を確保できる・・等の効果が得られる。」(【0039】)と記載されており,音声案内頻度を設定するための環境要因として,天候と昼夜の別とを組み合わせて用いることも記載ないし示唆されているといえる(例えば,天候が晴天でも,夜の場合は,音声案内頻度をHIGHに設定する,あるいは,昼間の場合でも,天候が雨の場合は,該頻度をHIGHにする等)。
加えて,引用例2には,このような環境要因を検出するために,FM多重放送による天候データ,ワイパーの作動データ,雨センサのデータ等から天候を判断したり,時間データやヘッドライトの点灯等で昼夜を判断したりすることが記載されており,このような種々のデータを随時検出して記憶し,必要に応じてこれらデータを使用すべくデータベースとして構成すること,すなわち「環境プロファイル」を構成することは,当業者が普通に採用すべき事項であり,環境プロファイルを構成するために,その生成手段として環境プロファイラを設けることも,当業者が適宜採用し得る設計的事項に過ぎない。
なお,運転者の挙動や天候等の車両の周辺環境等の情報を検出して記憶し,データベースを構築すること(各種プロファイルをプロファイラで構築すること)は,例えば,特開2001-188992号公報(「挙動履歴データベース」,「周辺環境履歴データベース」等を参照)にも記載されるように,ナビゲーション装置の分野において周知の技術でもある。
そして,引用発明1と引用例2の記載事項1,2とは,ナビゲーション装置において,案内経路の状況に応じて経路案内の表現に差を設けて案内をより効果的とする点で共通するものといえるから,引用発明において,引用例2の記載事項1,2及び上記設計的事項を採用して,相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。

また,引用発明においても,通常の交差点での案内(基本命令)を,逸脱された交差点に関する情報(運転者が出力命令を無視したイベントに関連する情報)に基づいて基本命令と異なる命令(案内)に変更しており,基本命令をこれと異なる命令(案内)に変更するための手段(プログラム等)を備えていることは技術常識である。
そして,相違点2について検討したように,引用発明にさらに環境プロファイラを設けて環境プロファイルを構築することにより天候や昼夜の別等の環境要因をも用いて,案内経路における案内を通常の案内(基本命令)と異なるものとすることは,当業者が容易になし得る事項であるから,引用発明における基本命令をこれと異なる命令に変更するための手段(プログラム等)を,運転者が出力命令を無視したイベントに関連するデータと環境プロファイルとに基づいて,基本命令の集合を出力命令の集合に変換するよう改変することは,当業者が容易に想到し得ることであり,その際,該変換する手段(プログラム等)を「プロファイル/命令翻訳プログラム」と称することは,任意に選択し得る事項に過ぎない。
したがって,引用発明において,相違点2,3に係る本願補正発明の構成とすることは,引用例2に記載の事項1,2,上記設計的事項,上記周知の技術,及び上記技術常識を採用することにより,当業者が容易に想到し得たことである。

よって,本願補正発明は,引用発明,上記常套手段,引用例2に記載の事項1,2,上記設計的事項,上記周知の技術,及び上記技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(4)むすび
以上のとおり,本件補正は,改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,同項記載の発明を「本願発明」という。)は,平成20年10月22日付け国際出願翻訳文提出書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「出発地から目的地までのルートを判定するルート計算モジュール(41)と,運転者が前記判定されたルートを進行できるように前記運転者に対しての基本命令の集合を生成する命令モジュール(42)と,少なくとも1つのプロファイルを構築するプロファイルモジュール(44,45,46)とを具備し,車両の運転者にナビゲーション命令を与えるナビゲーション装置(10)であって,
前記少なくとも1つのプロファイルに基づいて前記基本命令の集合を出力命令の集合に変換するプロファイル/命令翻訳プログラム(48)
を具備することを特徴とするナビゲーション装置。」

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献,及び,その記載事項は,前記「2.[理由II](1)(1-2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明と上記の引用例2記載の発明とを対比すると,後者における「現在の移動体位置」は前者の「出発地」に相当し,以下同様に,「経路」は「ルート」に,「現在の移動体位置から目的地までの経路を探索する経路探索手段5」は「出発地から目的地までのルートを判定するルート計算モジュール(41)」に,「交差点に関する案内」は「基本命令の集合」に,それぞれ相当している。
次に,後者の「運転者が前記探索された経路を走行する際に探索経路上における交差点に関する案内を音声により行う音声案内手段6」と前者の「運転者が判定されたルートを進行できるように前記運転者に対しての基本命令の集合を生成する命令モジュール(42)」とは,「運転者が判定されたルートを進行できるように前記運転者に対しての基本命令の集合を生成する生成手段」との概念で共通する。
また,本願発明におけるプロファイルモジュールとは,本願明細書の段落【0037】の「1又は複数のプロファイルモジュールが提供され,それらは以下に更に詳細に説明するように1又は複数のプロファイルを構築するように構成される。本実施形態において,プロファイルモジュールは,運転者プロファイルを構築する運転者プロファイル44,環境プロファイルを構築する環境プロファイラ45,ルートプロファイルを構築するルートプロファイラ46を含む。」との記載を参酌すると,プロファイルを構築するプロファイラを意味するものと解される。
そして,「運転者プロファイル」に関して,本願明細書の段落【0041】の「運転者プロファイルを構築するために記録され,運転者プロファイラ44に送信されてもよい可能な運転挙動パラメータは,以下の通りである。
1.加速係数・・・
・・・・
4.運転者が特定の管理区域(例えば,・・・地区)を運転した回数。」との記載を参酌すると,引用例2記載の発明における「経路の走行回数」を記憶したものは,本願発明における運転者プロファイルに相当するといえるとともに,経路の走行回数を記憶する以上,「運転者プロファイル」を構築する手段を備えていることは明らかといえるから,後者の「経路の走行回数等を記憶する記憶手段2」と前者の「少なくとも1つのプロファイルを構築するプロファイルモジュール(44,45,46)」とは,「少なくとも1つのプロファイルを構築する手段」との概念で共通する。
加えて,後者の「車両の運転者に案内情報を提供する」態様は,前者の「車両の運転者にナビゲーション命令を与える」態様に相当する。
さらに,後者の「交差点での音声案内頻度を,案内する経路の走行回数に応じて変更する」態様は,前者の「少なくとも1つのプロファイルに基づいて基本命令の集合を出力命令の集合に変換する」態様に相当し,後者の「交差点での音声案内頻度を,案内する経路の走行回数に応じて変更するように構成した」ものと,前者の「少なくとも1つのプロファイルに基づいて基本命令の集合を出力命令の集合に変換するプロファイル/命令翻訳プログラム(48)」とは,「少なくとも1つのプロファイルに基づいて基本命令の集合を出力命令の集合に変換する手段」との概念で共通する。
したがって,両者は,
「出発地から目的地までのルートを判定するルート計算モジュールと,運転者が前記判定されたルートを進行できるように前記運転者に対しての基本命令を生成する生成手段と,少なくとも1つのプロファイルを構築する手段とを具備し,車両の運転者にナビゲーション命令を与えるナビゲーション装置であって,
前記少なくとも1つのプロファイルに基づいて前記基本命令の集合を出力命令の集合に変換する手段
を具備するナビゲーション装置。」
の点で一致し,以下の点で相違する。
[相違点1]
基本命令の集合を生成する生成手段に関し,本願発明は,「命令モジュール」であるのに対し,引用例2記載の発明は,そのような特定はなされていない点。
[相違点2]
少なくとも1つのプロファイルを構築するプロファイルモジュールに関し,本願発明は,「プロファイルモジュール」であるのに対し,引用発明は,そのような特定はなされていない点。
[相違点3]
基本命令の集合を出力命令の集合に変換する手段に関し,本願発明は,「プロファイル/命令翻訳プログラム」であるのに対し,引用発明は,そのような特定はなされていない点。

以下に,上記各相違点につき検討する。
・相違点1について
引用例2には,記憶手段2に,制御手段3が動作するためのプログラム等が記憶されることが記載されており,プログラムを用いて制御するものであることが明らかである。そして,ナビゲーション装置等の電子機器の制御において,制御装置の備える各機能を実行するプログラムをモジュールとして構成することは常套手段である。
したがって,引用例2記載の発明において,上記常套手段を採用して基本命令の集合を生成する機能をモジュールとして構成し「命令モジュール」とすることは,当業者が適宜採用し得る程度の事項に過ぎない。
よって,引用例2記載の発明において,相違点1に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。

・相違点2について
引用例2記載の発明が,プログラムを用いて制御するものであることは,上記のとおりであり,また,ナビゲーション装置等の電子機器の制御において,制御装置の備える各機能を実行するプログラムをモジュールとして構成することは,上記のとおり常套手段である。
したがって,引用例2記載の発明において,上記常套手段を採用してプロファイルを構築する機能をモジュールとして構成し「プロファイルモジュール」とすることは,当業者が適宜採用し得る程度の事項に過ぎない。
よって,引用例2記載の発明において,相違点2に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。

・相違点3について
引用例2記載の発明が,プログラムを用いて制御するものであることは,上記のとおりであるから,基本命令の集合を出力命令の集合に変換する手段を,プログラムにより構成することは,当業者が容易になし得ることであり,これを「プロファイル/命令翻訳プログラム」と称することは任意に選択し得る事項に過ぎない。
したがって,引用例2記載の発明において,相違点3に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。

なお,仮に,引用例2記載の発明における「現在の移動体位置」と本願発明における「出発地」とが相違するとしても(以下「相違点4」という。),ナビゲーション装置において,経路探索の始点を現在の移動体位置ではなく,任意の地点を選択可能とすることは,周知の技術である(必要であれば,特開平8-77491号公報,特開平7-198401号公報を参照されたい。)
したがって,引用例2記載の発明において,相違点4に係る本願発明の構成とすることは,上記周知の技術を採用して当業者が容易になし得たことである。

そして,本願発明により奏される作用効果は,引用例2記載の発明及び上記常套手段から当業者が予測し得る程度のものである。
よって,本願発明は,引用例2記載の発明及び上記常套手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例2記載の発明及び上記常套手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため,本願は,同法第49条第2号の規定に該当し,拒絶をされるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-01 
結審通知日 2012-11-06 
審決日 2012-11-26 
出願番号 特願2009-518011(P2009-518011)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (G01C)
P 1 8・ 575- Z (G01C)
P 1 8・ 121- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 根本 徳子  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 川口 真一
藤井 昇
発明の名称 適応ナビゲーション命令を使用するナビゲーション装置  
代理人 高柳 司郎  
代理人 木村 秀二  
代理人 下山 治  
代理人 大塚 康徳  
代理人 大塚 康弘  

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