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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02M
管理番号 1272871
審判番号 不服2012-10103  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-31 
確定日 2013-04-10 
事件の表示 特願2009-542239「チャージポンプ回路およびその動作方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月 3日国際公開,WO2008/078120,平成22年 9月 9日国内公表,特表2010-530726〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は,2007年12月21日(パリ条約による優先権主張2006年12月22日,英国)を国際出願日とする出願であって,その請求項14に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成23年11月8日付けの手続補正書により補正された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項14に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「複数の分割レール電圧を生成するための方法であって,
第1出力電圧端子(N12)および第2出力電圧端子(N13)を,入力電圧端子(N10),第1フライングキャパシタ端子および第2フライングキャパシタ端子,ならびに共通端子(N11)に相互接続し,それぞれが前記入力電圧の大きさに実質的に大きさが等しい第1正出力電圧および第1負出力電圧,あるいはそれぞれ前記入力電圧の前記大きさの半分に実質的に大きさが等しい第2正出力電圧および第2負出力電圧のいずれかを生成するステップを含み,前記方法は,前記第1フライングキャパシタ端子および前記第2フライングキャパシタ端子のうち少なくとも1つを前記共通端子に相互接続するステップを含む,方法。」

2.引用例
(1)これに対して,原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-165482号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電圧変換回路及びそれに用いる多相クロック発生回路に関し,特に単一供給電源から大きさの異なる正または負の電圧を発生させるチャージポンプ型の電圧変換回路及びチャージポンプ駆動用の多相クロック発生回路に関する。」

・「【0072】(2)降圧回路
図6及び図7はそれぞれ本発明の第4の実施例である降圧回路の回路図,及び動作を説明するための模式図である。
【0073】図6に示す降圧回路においては,負極端が接地端子84に接続された供給電源80の正極端81が充電用スイッチ89の一端に接続され,充電用スイッチ89の他端は正極降圧用スイッチ92の一端,他端が接地端子84に接続された負極降圧用スイッチ96の一端,及び転送容量87の一端に接続されており,正極降圧用スイッチ92の他端は正極出力端子83,他端が接地端子84に接続された正極用蓄積容量82の一端,正極降圧用スイッチ94の一端にそれぞれ接続され,転送容量87の他端は充電用スイッチ90の一端,他端が接地端子84に接続された正極降圧用スイッチ93の一端,負極降圧用スイッチ97の一端にそれぞれ接続されている。そして,充電用スイッチ90の他端は正極降圧用スイッチ94の他端,転送容量88の一端,及び他端が接地端子84に接続された負極降圧用スイッチ98の一端に接続され,負極降圧用スイッチ97の他端は負極降圧用スイッチ99の一端,負極出力端子86,及び他端が接地端子84に接続された負極用蓄積容量85の一端に接続されている。さらに,負極降圧用スイッチ99の他端は転送容量88の他端,他端が接地端子84に接続された正極降圧用スイッチ95の一端,及び他端が接地端子84に接続された充電用スイッチ91の一端にそれぞれ接続されている。
【0074】次に動作について説明する。
【0075】本実施例の降圧回路においては,充電用スイッチ89,90,91及び正極降圧用スイッチ92,93,94,95及び負極降圧用スイッチ96,97,98,99はそれぞれ,タイミング信号φ_(1)及びφ_(2)及びφ_(3)がハイレベルである期間にオンとなり,かつタイミング信号φ_(1),φ_(2),φ_(3)は時間的に重なり合うことなく,φ_(1),φ_(2),φ_(1),φ_(3)の順序でハイレベルとなり,これを1サイクルとして以下同じ動作を繰り返す。
【0076】図7(a),(b),(c),(d)はそれぞれタイミング信号φ_(1),φ_(2),φ_(1),φ_(3)によってスイッチが動作したときの各回路素子の接続状態を示している。
【0077】まず,図7(a)に示すように,正極降圧用スイッチ92,93,94,95及び負極降圧用スイッチ96,97,98,99がオフとなっている状態で,タイミング信号φ_(1)によって充電用スイッチ89,90,91がオンとなり,転送容量87,88は供給電源80の正極端81と接地端子84との間に直列接続される。このとき,転送容量87及び88の容量値は互いに等しいものとしてあるので,転送容量87,88は共に,共給電源電圧V_(DD)の2分の1である電圧1/(2V_(DD))に充電される。
【0078】そして,図7(b)に示すように充電用スイッチ89,90,91がオフとなった後,タイミング信号φ_(2)によって正極降圧用スイッチ92,93,94,95がオンとなり,転送容量87,88は正極用蓄積容量82の一端と接地端子84との間に並列に接続され,正極用蓄積容量82を電圧1/(2V_(DD))に充電するとともに,正極出力端子83は電圧1/(2V_(DD))を出力する。
【0079】次に,図7(c)に示すように,正極降圧用スイッチ92,93,94,95がオフとなった後,再びタイミング信号φ_(1)によって充電用スイッチ89,90,91がオンとなり,転送容量87,88は共に電圧1/(2V_(DD))に充電される。
【0080】このとき,正極用蓄積容量82が接地端子84と正極出力端子83の間に接続されているので,正極出力端子83は電圧1/(2V_(DD))を出力する。
【0081】そして,図7(d)に示すように,充電用スイッチ89,90,91がオフとなった後,タイミング信号φ_(3)によって負極降圧用スイッチ96,97,98,99がオンとなり,転送容量87,88は負極用蓄積容量85の一端と接地端子84との間に並列に接続され,負極用蓄積容量85を電圧-1/(2V_(DD))に充電するとともに,負極出力端子86は電圧-1/(2V_(DD))を出力する。
【0082】このときも,正極用蓄積容量82の充電電圧によって,正極出力端子83は電圧1/(2V_(DD))を出力しているが,図7(a),(c),(d)に示す接続状態においては,正極出力端子83に接続される外部負荷によっては,正極用蓄積容量82の電圧が変化し,従って正極出力端子83の出力電圧が変動する場合があり得る。
【0083】しかし,正極用蓄積容量82の電圧が変化したとしても,図7(a),(b)に示すように,次のサイクルのタイミング信号φ_(1)によって電圧1/(2V_(DD))に充電された転送容量87及び88が,タイミング信号φ_(2)によって,再び正極用蓄積容量82を電圧1/(2V_(DD))に充電して正極出力端子83の出力電圧を電圧1/(2V_(DD))に回復する。そしてこの間,正極出力端子83の出力電圧の変動が,負極出力端子86の出力電圧の変動を引き起こすことはない。
【0084】同様に,図7(a),(b),(c)に示す回路の接続状態において,負極出力端子86の出力電圧が変動したとしても,図7(d)に示すように,電圧1/(2V_(DD))に充電された転送容量がタイミング信号φ_(3)によって再び負極出力端子86の出力電圧を1-/(2V_(DD))とし,かつこの間負極出力端子86の出力電圧の変動が,正極出力端子83の出力電圧の変動を引き起こすことはない。」

・図6及び図7には,正極出力端子83および負極出力端子86を,供給電源80の正極端81,転送容量87の一端ないし転送容量88の一端および転送容量87の他端ないし転送容量88の他端,ならびに接地端子84に相互接続し,それぞれ電圧1/(2V_(DD))および電圧-1/(2V_(DD))を発生するステップを含み,前記転送容量87の一端ないし転送容量88の一端および前記転送容量87の他端ないし転送容量88の他端のうち少なくとも1つを前記接地端子84に相互接続するステップを含む方法が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用例1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「電圧1/(2V_(DD))および電圧-1/(2V_(DD))を発生するための方法であって,
正極出力端子83および負極出力端子86を,供給電源80の正極端81,転送容量87の一端ないし転送容量88の一端および転送容量87の他端ないし転送容量88の他端,ならびに接地端子84に相互接続し,それぞれ前記供給電源80の供給電源電圧V_(DD)の2分の1である電圧1/(2V_(DD))および電圧-1/(2V_(DD))を発生するステップを含み,前記方法は,前記転送容量87の一端ないし転送容量88の一端および前記転送容量87の他端ないし転送容量88の他端のうち少なくとも1つを前記接地端子84に相互接続するステップを含む,方法。」

(2)同じく,引用された特開2006-60939号公報(以下「引用例2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0001】
本発明は,制御信号に応じて出力電圧の値を変化させる出力可変型電源回路に関する。」

・「【0002】
従来の電源回路として,ドロッパ型コンバータ,バックコンバータ,スイッチトキャパシタコンバータ等,種々の方式のものが知られている。
【0003】
一方,目的回路の低消費電力化のためには複数の電源電圧が必要であり,かつ集積回路内に低電圧配線を引き回すことは消費電力の面から好ましくない。このため,複数の値の出力電圧の間を高速に変化できる電源回路が必要とされている。」

・「【0007】
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり,その目的は,出力を高電圧から低電圧に,低電圧から高電圧にそれぞれ高速に変化させることができる出力可変型電源回路を提供することである。」

・「【0048】
(第3の実施の形態)
図7は,本発明の出力可変型電源回路をスイッチトキャパシタ方式のものに実施した場合の概略的な回路構成を示すブロック図である。本実施形態の出力可変型電源回路において,図1中の電源回路10は,PMOSトランジスタ24及び25,NMOSトランジスタ26?29,キャパシタ30?32,PMOSトランジスタ及びNMOSトランジスタのゲート制御を行う制御回路33を含む。また,図1中の第1のスイッチ素子13は放電用のNMOSトランジスタ17からなり,このNMOSトランジスタ17のゲートは制御回路33から出力される制御信号により制御される。図1中の第2のスイッチ素子14は充電用のPMOSトランジスタ18からなり,このPMOSトランジスタ18のゲートも制御回路33から出力される制御信号により制御される。
【0049】
図8は,図7中の制御回路33の具体的な回路構成の一例をNMOSトランジスタ17およびPMOSトランジスタ18等と共に示している。
【0050】
制御回路33は,図3中に示した遅延回路48,53,フリップフロップ回路47,52,第2及び第3の電圧比較回路45,50,NORゲート回路46,51,及びドライバ49,54の他に,インバータ回路59,発振回路60及びANDゲート回路61を含む。
【0051】
制御信号Selectはインバータ回路59によって反転されてANDゲート回路61の一方の入力端子に供給される。ANDゲート回路61の他方の入力端子には発振回路60の発振信号が供給される。ANDゲート回路61の出力信号は制御信号S1として,電源回路10内のPMOSトランジスタ24,25の各ゲート及びNMOSトランジスタ27?29の各ゲートに供給される。NMOSトランジスタ26のゲートには制御信号Selectが供給される。
【0052】
次に,図8の出力可変型電源回路の動作を説明する。制御信号Selectが“H”レベルのとき,電源回路10内のNMOSトランジスタ26のゲートには“H”レベルの信号が供給され,電源回路10内の他のPMOSトランジスタ24,25及びNMOSトランジスタ27?29の各ゲートには“L”レベルの信号が供給される。この結果,PMOSトランジスタ24及びNMOSトランジスタ26を介して,電圧源11の電圧VDDが電圧出力ノード12に出力され,この電圧出力ノード12には電圧VDDとほぼ同じ値の高電圧VDDHが出力電圧Voutとして得られる。このとき,制御回路33内のフリップフロップ回路47はセット状態にされており,その出力信号Q1は“H”レベルとなっている。この場合,NORゲート回路46の出力信号は“L”レベル,ドライバ49の出力信号Son1も“L”レベルとなり,放電用のNMOSトランジスタ17は非導通状態となっている。また制御回路33内のフリップフロップ回路52はセット状態にされており,その出力信号Q2は“H”レベルとなっている。この場合,NORゲート回路51の出力信号は“L”レベル,ドライバ54の出力信号Son2は“H”レベルとなり,充電用のPMOSトランジスタ18は非導通状態となっている。
【0053】
次に,電圧出力ノード12の出力電圧Voutの値をVDDHからVDDLに変化させるために,制御信号Selectが“L”レベルに下げられる。すると,図3で説明した場合と同様に,フリップフロップ回路47がリセットされ,その出力信号Q1が“L”レベルに反転する。このとき,出力電圧VoutはまだVDDHであり,リファレンス電圧VDDL+αよりも高いので,第2の電圧比較回路45の出力信号Comp1は“L”レベルになっている。従って,フリップフロップ回路47の出力信号Q1が“L”レベルに反転した後に,NORゲート回路46の出力信号が“H”レベルに反転し,ドライバ49の出力信号Son1も“H”レベルに反転して,放電用のNMOSトランジスタ17が導通する。これにより,キャパシタ32に蓄えられているエネルギーが高速に接地電位ノードに放出される。
【0054】
一方,制御信号Selectが“L”レベルになると,NMOSトランジスタ26が非導通となる。また,ANDゲート回路61を介して発振回路60の発振信号が制御信号S1として電源回路10に供給され,電源回路10が動作を開始する。この場合,電源回路10はほぼVDD/2の値の低電圧VDDLをVoutとして出力する。
【0055】
そして,出力電圧Voutの値がリファレンス電圧VDDL+αよりも低くなると,前述したように,NORゲート回路46の出力信号及びドライバ49の出力信号Son1が“L”レベルに反転し,放電用のNMOSトランジスタ17の導通状態が解除されて非導通状態となり,電圧出力ノード12からの放電が停止する。
【0056】
次に,電圧出力ノード12の出力電圧Voutの値をVDDLからVDDHに変化させるために,制御信号Selectが“H”レベルに上げられる。すると,図3で説明した場合と同様に,フリップフロップ回路52がリセットされ,その出力信号Q2が“L”レベルに反転する。このとき,出力電圧VoutはまだVDDLであり,リファレンス電圧VDDH-αよりも低いので,第3の電圧比較回路50の出力信号Comp2は“L”レベルになっている。従って,フリップフロップ回路52の出力信号Q2が“L”レベルに反転した後に,NORゲート回路51の出力信号が“H”レベルに反転し,ドライバ54の出力信号Son2が“L”レベルに反転して,充電用のPMOSトランジスタ18が導通する。これにより,キャパシタ32が高速に充電される。
【0057】
一方,制御信号Selectが“H”レベルになると,NMOSトランジスタ26も導通し,VoutとしてVDDHが出力される。この場合,NMOSトランジスタ26とPMOSトランジスタ18とは共に導通し,電圧出力ノード12をVDDに充電するために寄与する。
【0058】
このように,本実施形態の出力可変型電源回路では,電源回路10の出力が高電圧(VDDH)から低電圧(VDDL)に変化する際に,NMOSトランジスタ17が導通を開始するため,電圧出力ノード12に接続されているキャパシタ32に蓄えられたエネルギーが接地電位ノードに放出され,出力が高電圧から低電圧に高速に変化する。また電源回路10の出力が低電圧(VDDL)から高電圧(VDDH)に変化する際に,PMOSトランジスタ18が導通を開始するため,電圧出力ノード12に接続されているキャパシタ32が充電され,出力が低電圧から高電圧に高速に変化する。本発明者等が,図8に示す実施形態の回路をデザインルールが0.18μmのCMOSプロセスを用いてシミュレーションした結果,1nSの期間に出力電圧が50%昇降することが確認された。」

3.対比
そこで,本願発明と引用発明とを対比する。

まず,後者の「電圧1/(2V_(DD))および電圧-1/(2V_(DD))」は前者の「分割レール電圧」に,後者の「発生」は前者の「生成」にそれぞれ相当するから,後者の「電圧1/(2V_(DD))および電圧-1/(2V_(DD))を発生するための方法」と前者の「複数の分割レール電圧を生成するための方法」とは,「分割レール電圧を生成するための方法」との概念で共通している。

次に,後者の「正極出力端子83」は前者の「第1出力電圧端子」に,後者の「負極出力端子86」は前者の「第2出力電圧端子」に,後者の「供給電源80の正極端81」は前者の「入力電圧端子」に,後者の「転送容量87の一端ないし転送容量88の一端」は前者の「第1フライングキャパシタ端子」に,後者の「転送容量87の他端ないし転送容量88の他端」は前者の「第2フライングキャパシタ端子」に,後者の「接地端子84」は前者の「共通端子」に,それぞれ相当するから,結局,後者の「正極出力端子83および負極出力端子86を,供給電源80の正極端81,転送容量87の一端ないし転送容量88の一端および転送容量87の他端ないし転送容量88の他端,ならびに接地端子84に相互接続」する態様は前者の「第1出力電圧端子および第2出力電圧端子を,入力電圧端子,第1フライングキャパシタ端子および第2フライングキャパシタ端子,ならびに共通端子に相互接続」する態様に相当している。

また,後者の「供給電源80の供給電源電圧V_(DD)」は前者の「入力電圧」に,後者の「2分の1である」態様は前者の「大きさの半分に実質的に大きさが等しい」態様に,後者の「電圧1/(2V_(DD))」は前者の「第2正出力電圧」に,後者の「電圧-1/(2V_(DD))」は前者の「第2負出力電圧」にそれぞれ相当するから,結局,後者の「それぞれ供給電源80の供給電源電圧V_(DD)の2分の1である電圧1/(2V_(DD))および電圧-1/(2V_(DD))を発生するステップ」と前者の「それぞれが入力電圧の大きさに実質的に大きさが等しい第1正出力電圧および第1負出力電圧,あるいはそれぞれ前記入力電圧の前記大きさの半分に実質的に大きさが等しい第2正出力電圧および第2負出力電圧のいずれかを生成するステップ」とは,「それぞれ入力電圧の大きさの半分に実質的に大きさが等しい第2正出力電圧および第2負出力電圧を生成するステップ」との概念で共通している。

さらに,後者の「転送容量87の一端ないし転送容量88の一端および転送容量87の他端ないし転送容量88の他端のうち少なくとも1つを接地端子84に相互接続」する態様は前者の「第1フライングキャパシタ端子および第2フライングキャパシタ端子のうち少なくとも1つを共通端子に相互接続」する態様に相当している。

したがって,両者は,
「分割レール電圧を生成するための方法であって,
第1出力電圧端子および第2出力電圧端子を,入力電圧端子,第1フライングキャパシタ端子および第2フライングキャパシタ端子,ならびに共通端子に相互接続し,それぞれ前記入力電圧の大きさの半分に実質的に大きさが等しい第2正出力電圧および第2負出力電圧を生成するステップを含み,前記方法は,前記第1フライングキャパシタ端子および前記第2フライングキャパシタ端子のうち少なくとも1つを前記共通端子に相互接続するステップを含む,方法。」
である点で一致し,次の点で相違する。

[相違点1]
分割レール電圧に関し,本願発明は,「複数の」分割レール電圧であるのに対し,引用発明は,かかる特定がなされていない点。
[相違点2]
それぞれ入力電圧の大きさの半分に実質的に大きさが等しい第2正出力電圧および第2負出力電圧を生成するステップに関し,本願発明が「それぞれが入力電圧の大きさに実質的に大きさが等しい第1正出力電圧および第1負出力電圧,あるいは」それぞれ前記入力電圧の前記大きさの半分に実質的に大きさが等しい第2正出力電圧および第2負出力電圧「のいずれか」を生成するものであるのに対し,引用発明は,「それぞれが入力電圧の大きさに実質的に大きさが等しい第1正出力電圧および第1負出力電圧」を生成することについて明確にされていない点。

4.判断
上記相違点1及び2について以下検討する。

例えば,引用例2にも開示されているように,入力電圧の大きさの半分に実質的に大きさが等しい出力電圧(「ほぼVDD/2の値の低電圧VDDL」が相当)と,入力電圧の大きさに実質的に大きさが等しい出力電圧(「電圧VDDとほぼ同じ値の高電圧VDDH」が相当)とを生成する(「Voutとして出力する」態様が相当)ことで,負荷に応じた大きさの異なる電圧を選択し得る(「出力を変化する」態様が相当)ようにすることは,スイッチトキャパシタ方式の電圧生成技術の分野における周知技術である。

それぞれ入力電圧の大きさの半分に実質的に大きさが等しい第2正出力電圧および第2負出力電圧(電圧1/(2V_(DD))および電圧-1/(2V_(DD) ))からなる分割レール電圧を生成するスイッチトキャパシタ方式の電圧生成技術の分野に属する引用発明においても,負荷に応じた大きさの異なる分割レール電圧を選択し得ることが望ましいのは明らかであるから,かかる課題の下に,上記周知技術を踏まえ,上記第2正出力電圧および第2負出力電圧からなる分割レール電圧の他に,それぞれが入力電圧の大きさに実質的に大きさが等しい第1正出力電圧および第1負出力電圧(電圧V_(DD)および電圧-V_(DD))からなる分割レール電圧をも選択し得るように改変することは,当業者が創作活動の一環として適宜試みる程度の事項であり,また,引用例1の図6に示された実施例のものにおいて,第1フライングキャパシタ端子(転送容量87の一端ないし転送容量88の一端)および第2フライングキャパシタ端子(転送容量87の他端ないし転送容量88の他端)のうち少なくとも1つを共通端子(接地端子84)に相互接続するステップを含むように,スイッチ89?99を所定のタイミングでオン・オフ制御することにより,第1出力電圧端子(正極出力端子83)および第2出力電圧端子(負極出力端子86)から,それぞれが入力電圧の大きさに実質的に大きさが等しい第1正出力電圧および第1負出力電圧からなる分割レール電圧を生成(出力)し得ることも明らかである。

そうすると,引用発明において,上記周知技術を踏まえることで,相違点1及び2に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものというべきである。

そして,本願発明の全体構成により奏される効果も,引用発明及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって,本願発明は,引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため,本願は,同法第49条第2号の規定に該当し,拒絶をされるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-31 
結審通知日 2012-11-06 
審決日 2012-11-26 
出願番号 特願2009-542239(P2009-542239)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今井 貞雄  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 川口 真一
田村 嘉章
発明の名称 チャージポンプ回路およびその動作方法  
代理人 高岡 亮一  

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