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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01G
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A01G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01G
管理番号 1272920
審判番号 不服2012-691  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-13 
確定日 2013-04-11 
事件の表示 特願2005-127471号「チシャ栽培方法及びチシャ栽培装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月 9日出願公開、特開2006-304610号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年4月26日の出願であって、平成23年11月8日付けで拒絶査定がされ、この査定に対し、平成24年1月13日に本件審判が請求されるとともに、審判請求と同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成24年7月4日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、回答書は提出されなかった。

第2 平成24年1月13日付けの手続補正(及び平成24年1月24日受付の手続補正(方式))についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年1月13日付けの手続補正(及び平成24年1月24日受付の手続補正(方式))(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲の【請求項1】は、
「【請求項1】
LEDを有した光射出部から光をチシャに照射し、生育させるチシャ栽培方法であって、
実質的に470nm±15nmの青色光のみを前記光射出部からチシャに照射して、チシャの主茎部の伸長を抑制しながら地上部の重量を増加させる工程を備えていることを特徴とするチシャ栽培方法。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である470nm±15nmの青色が優勢なスペクトルの光について、「実質的に470nm±15nmの青色光のみ」と限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

[特許法第29条第2項に関して]
2.引用刊行物とその記載事項
(1)本願出願前に頒布された刊行物である青色光の夜間補光がサニーレタスの着色と成長に及ぼす効果,電力中央研究所報告,財団法人 電力中央研究所,2001年7月,U01009(以下「刊行物1」という。)には、青色光の夜間補光がサニーレタスの着色と成長に及ぼす効果に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「サニーレタス・・の種子をウレタンキューブに播種し、白色蛍光ランプ下・・7日間育成した後、たん液式水耕栽培装置に定植し、14日間育成させた苗を実験材料とした。」(第2頁左欄第12?17行)
(イ)「ガラス温室の4列の栽培架台にそれぞれ調光照明装置(横浜機工)を設置し、40W青色蛍光ランプ(FLR1250T6型、出力波長域:400?500nm、ピーク波長:454nm、ニッポ電機製)を15本取り付けて夜間補光を行った(写真1)。」(第2頁左欄第27?31行)
(ウ)「青色光の補光強度を120μmol/m^(2)/sに設定し、夜間補光の時間長を0時間(無補光)、3時間、6時間および12時間(18:00?6:00)の4区を設定した。実験は2回繰り返して行った・・・処理期間は7日間とした。」(第2頁右欄第21?32行)
(エ)「以上の結果をまとめると、温室の水耕栽培において、サニーレタスの着色と成長を促進し、徒長を抑制する青色光の夜間補光条件は、120μmol/m^(2)/sで6時間以上の連続補光であることが明らかになった。」(第10頁右欄第8?12行)

(オ)記載事項(イ)の夜間補光は、「40W青色蛍光ランプ」を光源とし、他の光源を併用するものでないので、青色蛍光ランプの光のみを照射するものといえる。

すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものということができる。
「青色蛍光ランプを有した調光照明装置から光をサニーレタスに夜間補光するサニーレタス水耕栽培方法であって、
青色蛍光ランプの光のみを調光照明装置からサニーレタスに夜間補光して、サニーレタスの徒長を抑制しながら栽培するサニーレタス水耕栽培方法。」

(2)本願出願前に頒布された刊行物である特開平8-103167号公報(以下「刊行物2」という。)には、植物栽培用光源に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】青色光を放射する発光ダイオードと赤色光を放射する発光ダイオードを1つまたは複数の基板(ボード)上に混合配置し、これらの発光ダイオードを同時もしくは交互に点灯することにより、植物の培養、生育、栽培、組織培養のための光エネルギーを照射することを特徴とする光源。ただし、本特許出願においては、青色光とは400nm(ナノメータ)から480nmまでの光波長領域にある光とし、赤色光とは620nmから700nmまでの光波長領域にある光とする。」

(3)本願出願前に頒布された刊行物である特開平8-205677号公報(以下「刊行物3」という。)には、植物体の栄養成分含有量の調節方法に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、人工光源を用いる植物の施設栽培において、照射光の波長分布を調節して植物体の栄養成分含有量を調節する方法提供することである。本発明の上記の目的は、人工光源を用いて植物を栽培する方法において、人工光源に含まれる青色光、赤色光及び遠赤色光それぞれの強度を調節することにより達せられる。
【0007】人工光源からの照射光に含まれる青色光は、400?500nmの波長範囲が適当である。また、赤色光としては、600?700nm、さらに、遠赤色光としては670?760nmの波長範囲の光がそれぞれ適当である。本発明方法で用いられる人工光源として特に制限されず、従来用いられている光源に適当なフィルターを組み合わせたものでよいが、光半導体装置、特に発光ダイオードを用いるのが好ましい。
・・・
【0009】400?500nmの青色光を発光する光半導体装置としては、例えばZnSSe系、GaN系の材料を用いたものが光出力が大であり好ましい。600?700nm及び670?760nmの赤色系及び遠赤色光を発光する光半導体装置としては、例えば、Zn-OドープGaP、GaAlAs系材料を用いたものが好ましい。」
(イ)「【0012】本発明の適用対象として好ましい植物は、例えば、リーフレタス、結球レタス、サラダナ等のキク科植物、或いは、コマツナ、チンゲンサイ、キャベツ、白菜等のアブラナ科植物などの葉菜類、苺、キュウリなどの果菜類、ミカン、キウイなどの果実類が挙げられる。」

3.本願補正発明と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
(a)引用発明の「調光照明装置」は、本願補正発明の「光射出部」に相当し、以下同様に、
「サニーレタス」は、「チシャ」に、
「夜間補光」は、「照射」に、
「サニーレタス水耕栽培方法」は、「生育させるチシャ栽培方法」に、
「徒長を抑制」は、「主茎部の伸長を抑制」に、それぞれ相当する。
(b)引用発明の「青色蛍光ランプ」と、本願補正発明の「LED」とは、「光源」で共通する。
(c)引用発明の「青色蛍光ランプの光のみを調光照明装置からサニーレタスに夜間補光して、サニーレタスの徒長を抑制しながら栽培する」こと、本願補正発明の「実質的に470nm±15nmの青色光のみを前記光射出部からチシャに照射して、チシャの主茎部の伸長を抑制しながら地上部の重量を増加させる工程を備えている」ことは、前者の栽培が地上部の重量を増加させるものであることが自明であるので、「青色光源からの光のみを光射出部からチシャに照射して、チシャの主茎部の伸長を抑制しながら地上部の重量を増加させる工程を備えている」点で共通する。

(2)両発明の一致点
「光源を有した光射出部から光をチシャに照射し、生育させるチシャ栽培方法であって、
青色光源からの光のみを前記光射出部からチシャに照射して、チシャの主茎部の伸長を抑制しながら地上部の重量を増加させる工程を備えている(ことを特徴とする)チシャ栽培方法。」

(3)両発明の相違点
ア.光源が、本願補正発明は「LED」であるのに対して、引用発明は「青色蛍光ランプ」である点。
イ.青色光源からの光が、本願補正発明は「実質的に470nm±15nmの青色光のみ」であるのに対して、引用発明は「青色蛍光ランプの光のみ」である点。

4.容易想到性の検討
(1)相違点ア.について
植物栽培における青色光の光源としてLEDを用いることは、例えば刊行物2,3に記載されている様に周知技術であるので、引用発明の光源である「青色蛍光ランプ」を、周知のLEDからなる光源として、相違点ア.に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点イ.について
「470nm」は、周知の青色光LEDの発光波長として代表的なもののうちの1つである。
そうすると、上記(イ)の「青色蛍光ランプ」に代えて、LEDからなる光源を使用する際に、青色光LEDの代表的一態様で有る、波長470nmのものを用いて、相違点イ.に係る本願補正発明の構成とすることも当業者が容易に想到し得たことである。

(3)総合判断
そして、本願補正発明の作用効果は、引用発明、刊行物2,3記載の事項、及び周知の事項から、当業者であれば予測できた範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明、刊行物2,3記載の事項、及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


[特許法第36条第6項第2号に関して]
5.補正後の請求項2?5に記載された発明
特許請求の範囲の【請求項2】?【請求項5】記載の発明は、
「【請求項2】
全光量の20%以上が青色の光であることを特徴とする請求項1記載のチシャ栽培方法。」
「【請求項3】
青色の光に、更に赤色及び/又は緑色の光を加えて照射することを特徴とする請求項1又は2記載のチシャ栽培方法。」
「【請求項4】
青色の光の光量が20?600μmol・s-1・m-2PPFDであることを特徴とする請求項1?3のいずれか1項記載のチシャ栽培方法。」
「【請求項5】
青色の光の光量が70?400μmol・s-1・m-2PPFDであることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項記載のチシャ栽培方法。」
であって、それぞれ、【請求項1】を引用するものであるところ、本件補正により【請求項1】が「【請求項1】
LEDを有した光射出部から光をチシャに照射し、生育させるチシャ栽培方法であって、
実質的に470nm±15nmの青色光のみを前記光射出部からチシャに照射して、チシャの主茎部の伸長を抑制しながら地上部の重量を増加させる工程を備えていることを特徴とするチシャ栽培方法。」と補正されたことにより、実質的に補正された。

6.特許を受けようとする発明が明確であるかについて
そこで、補正後の請求項に記載された発明について、発明が明確であるかについて検討する。
補正後の【請求項1】には「実質的に470nm±15nmの青色光のみを前記光射出部からチシャに照射して」と記載されているのに対して、該【請求項1】を引用する【請求項2】には「全光量の20%以上が青色の光である」と、さらに【請求項3】には「青色の光に、更に赤色及び/又は緑色の光を加えて照射する」とそれぞれ記載されており、いずれも【請求項1】の上記記載と整合しない。
そうすると、補正後の請求項2?3に記載された発明は、発明特定事項として相矛盾する内容を含んだものであり、発明が明確であるとは認められない。
したがって、本件補正で補正された本願特許請求の範囲の記載は、特許法36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

7.補正却下のむすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、また、補正後の請求項2?3に記載された発明は、特許法第36条第6項第2号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成24年1月13日付けの手続補正(及び平成24年1月24日受付の手続補正(方式))は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?6に係る発明は、平成23年5月6日受付で補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
LEDを有した光射出部から光をチシャに照射し、生育させるチシャ栽培方法であって、
470nm±15nmの青色が優勢なスペクトルの光を前記光射出部からチシャに照射して、チシャの主茎部の伸長を抑制しながら地上部の重量を増加させる工程を備えていることを特徴とするチシャ栽培方法。」

2.引用刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平1-304828号公報(以下「刊行物4」という。)には、植物の促成栽培方法および植物栽培用放電灯に関して、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「たとえば完全に栽培条件を制御した環境下でサラダ菜やサニーレタスなどの洋菜類を低放射強度で栽培すると、高放射強度で栽培するようも、葉の長さが細長く従長傾向になり、固さも低下し軟弱化して問題となる。したがって放射強度をあまり低下させることができないといも問題点があった。
この発明は上記の問題点を解消するためになされたものであり、光のスペクトル分布と植物の成長度の関係を詳細に検討し、低放射強度でも効率よく植物を育成できる栽培方法とその光を効率よく放射する放電灯を提供することを目的とする。」(第2頁左上欄第20行?右上欄第11行)
(イ)「[作 用]
この発明おける植物の促成栽培方法および植物栽培用放電灯は、光の低放射エネルギー時の植物の光合成メカニズムと形態形成メカニズムに対応するように、光の分光エネルギー比率を選択したので、従来の照射エネルギー強度より低い状態でも良好な栽培ができるものである。」(第2頁左下欄第12?18行)
(ウ)「この混合蛍光体を用いてなる蛍光ランプ(4)の分光エネルギー分布は第3図に示すものとなり、その分光エネルギー比は400nm以上?500nm未満間の青成分が37%、500nm以上?600nm未満間の緑成分が32%、600nm以上?700nm未満間の赤成分が31%であり、また400?700nmにおけるランプの放射効率は40ワツトランプで0.26W/ランプWであった。
この実施例のように構成された蛍光ランプと、従来の植物育成用蛍光ランプすなわち400?500nm間の青成分と、600?700nm間の赤成分光を500?600nm間の緑成分光より増加するように製作された従来ランプとを用い、完全人工環境制御下で種々照射強度を変えてサラダ菜の栽培比較を行った。」(第3頁左上欄第7行?右上欄第1行)
(エ)「この表において照射強度の高い場合、従来ランプは従長度、軟弱度とも適当なものが得られるが、低くなると問題が起きる。これに対して、この発明の実施例の場合には照射強度が高いと、従長度、軟弱度ともやや過度になり、やや固く丸みを帯び問題となるが、低くなると良好な成長を示す。また、低すぎるとエネルギー不足となり、従長しかつ成長度が低下する。換言すると、この発明の実施例の場合には従来の場合と比較して低照射条件、すなわち光量子照射強度で80?150μE/m^(2)・Secの範囲で栽培するのに適しているものであることがわかる。」(第3頁右上欄第6行?左下欄第8行)
(オ)記載事項(ウ)の「サラダ菜の栽培」は、「実施例のように構成された蛍光ランプ・・を用い・・行」うものであって、蛍光ランプ等の光源からの光は、照明器具等の光源を有する光射出部で、被照射物に照射されるのが普通であるので、蛍光ランプを有した光射出部から光をサラダ菜に照射するサラダ菜栽培方法といえ、さらに、その蛍光ランプは「その分光エネルギー比は400nm以上?500nm未満間の青成分が37%、500nm以上?600nm未満間の緑成分が32%、600nm以上?700nm未満間の赤成分が31%」のものであるので、400nm以上?500nm未満間の青成分が37%、500nm以上?600nm未満間の緑成分が32%、600nm以上?700nm未満間の赤成分が31%の光を光射出部からサラダ菜に照射して、栽培する工程を備えているサラダ菜栽培方法といえる。

すると、刊行物4には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が開示されているものということができる。
「蛍光ランプを有した光射出部から光をサラダ菜に照射するサラダ菜栽培方法であって、
400nm以上?500nm未満間の青成分が37%、500nm以上?600nm未満間の緑成分が32%、600nm以上?700nm未満間の赤成分が31%の光を光射出部からサラダ菜に照射して、栽培する工程を備えているサラダ菜栽培方法。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された刊行物2,3とその記載事項は、前記の「第2 2.」に記載したとおりである。

3.本願発明と引用発明2との対比
(1)両発明の対応関係
(a)引用発明2の「蛍光ランプ」と、本願発明の「LED」とは、「光源」で共通し、以下同様に、
「サラダ菜」と、「チシャ」とは、「葉菜」で、
「光をサラダ菜に照射するサラダ菜栽培方法」と、「光をチシャに照射し、生育させるチシャ栽培方法」とは、前者の栽培が、生育させるものであることが自明であるので、「光を葉菜に照射し、生育させる葉菜栽培方法」で、
「400nm以上?500nm未満間の青成分が37%、500nm以上?600nm未満間の緑成分が32%、600nm以上?700nm未満間の赤成分が31%の光」と、「470nm±15nmの青色が優勢なスペクトルの光」とは、「青色が優勢なスペクトルの光」で、
「光を光射出部からサラダ菜に照射して、栽培する工程」と、「光を前記光射出部からチシャに照射して、チシャの主茎部の伸長を抑制しながら地上部の重量を増加させる工程」とは、前者の栽培が地上部の重量を増加させるものであることが自明であるので、「光を光射出部から葉菜に照射して、葉菜の地上部の重量を増加させる工程」で、それぞれ共通する。

(2)両発明の一致点
「光源を有した光射出部から光を葉菜に照射し、生育させる葉菜栽培方法であって、
青色が優勢なスペクトルの光を光射出部から葉菜に照射して、葉菜の地上部の重量を増加させる工程を備えている葉菜栽培方法。」

(3)両発明の相違点
ア.光源が、本願発明は「LED」であるのに対して、引用発明2は「蛍光ランプ」である点。
イ.葉菜が、本願発明は「チシャ」であるのに対して、引用発明2は「サラダ菜」である点。
ウ.青色が優勢なスペクトルの光が、本願発明は「470nm±15nmの青色が優勢なスペクトルの光」であるのに対して、引用発明2は「400nm以上?500nm未満間の青成分が37%、500nm以上?600nm未満間の緑成分が32%、600nm以上?700nm未満間の赤成分が31%の光」である点。
エ.葉菜の地上部の重量を増加させる工程が、本願発明は「主茎部の伸長を抑制しながら」地上部の重量を増加させる工程であるのに対して、引用発明2はそのようなものであるか不明な点。

4.容易想到性の検討
(1)相違点ア.について
植物栽培における光源としてLEDを用いることは、例えば刊行物1,2に記載されている様に周知技術であるので、引用発明2の光源である「蛍光ランプ」を、周知のLEDからなる光源として、相違点ア.に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点イ.について
刊行物3の記載事項(ア)には、引用発明2が課題とする問題点に関して、引用発明2の「サラダ菜」と本願発明の「チシャ」に相当する「サニーレタス」とが並記する形で記載されており、葉菜の種類を、引用発明2の「サラダ菜」に代えて、それに並記された「サニーレタス」として、相違点イ.に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(3)相違点ウ.について
「470nm」は、周知の青色光LEDの発光波長として代表的なもののうちの1つである。
そうすると、上記(1)の「蛍光ランプ」に代えて、LEDからなる光源を使用する際に、青色光の光源として、青色光LEDの代表的一態様で有る、波長470nmのものを用いて、相違点ウ.に係る本願発明の構成とすることも当業者が容易に想到し得たことである。

(4)相違点エ.について
刊行物3の記載事項(ア)には、「光のスペクトル分布・・を・・検討」して解決しようとする引用発明2の課題の1つとして、「従長」が記載されており、記載事項(エ)には、「発明の実施例の場合には照射強度が高いと、従長度、軟弱度ともやや過度に・・なるが、低くなると良好な成長を示す。また、低すぎると・・従長しかつ成長度が低下する。換言すると、この発明の実施例の場合には・・光量子照射強度で80?150μE/m^(2)・Secの範囲で栽培するのに適している」と、当該課題が解決されることが記載されている。
そして、「従長」を防止、換言すると、栽培を「主茎部の伸長を抑制しながら」行うことは、引用発明2の意図する課題であって、実施例の光のスペクトル分布で当該課題が解決されるものであるので、引用発明2の栽培を「従長」を防止、換言すると、栽培を「主茎部の伸長を抑制しながら」行うものとして、相違点エ.に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(5)総合判断
そして、本願発明の作用効果は、引用発明2、刊行物2,3記載の事項、及び周知の事項から、当業者であれば予測できた範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明2、刊行物2,3記載の事項、及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
したがって、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-06 
結審通知日 2013-02-12 
審決日 2013-02-26 
出願番号 特願2005-127471(P2005-127471)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01G)
P 1 8・ 575- Z (A01G)
P 1 8・ 537- Z (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂田 誠  
特許庁審判長 高橋 三成
特許庁審判官 中川 真一
鈴野 幹夫
発明の名称 チシャ栽培方法及びチシャ栽培装置  
代理人 齊藤 真大  
代理人 佐藤 明子  
代理人 西村 竜平  

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