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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1272931
審判番号 不服2012-7563  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-24 
確定日 2013-04-11 
事件の表示 特願2006-152227「合成樹脂製容器」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月13日出願公開、特開2007-320612〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成18年5月31日の特許出願であって、原審の平成23年8月17日付けの拒絶理由に対して平成23年10月31日付け手続補正書が提出された後、平成24年1月10日付けで拒絶査定がなされ、同年4月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年10月31日付け手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲、及び、図面によれば、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。
「液状の内容物を充填、密封した状態で凍結させて使用する口部、胴部、及び底部を備えた合成樹脂製容器であって、
前記胴部の所定の高さ位置を絞り込んでなるウェスト部を設け、
前記胴部の側面には、前記ウェスト部を間に挟んで上下に位置する内圧調整パネルをそれぞれ設けるとともに、上方に位置する前記内圧調整パネルの下縁と、下方に位置する前記内圧調整パネルの上縁とを高さ方向に沿ってほぼ直線的に結ぶ稜線が現れるような立体形状を付与し、
前記内圧調整パネルのパネル面には、横ビードを形成することを特徴とする合成樹脂製容器。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-238736号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「【0004】このような形状のペットボトル50に高温の内容物51を充填し密封する場合は、高温の内容物51が常温になるとペットボトル50内が減圧、すなわち負圧状態となるから、周壁52の各平面部57全体が内容物51側に撓むことにより、ペットボトル50内の負圧を分散吸収し、外観不良となる局部的な凹みを防止している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記従来例による1.5リットルや2.0リットルのペットボトル50では、高温の内容物51を充填し密封後常温になっても、全体の容量に対する負圧による容積の減少率は少ないから、周壁52全体のたわみ量が少なく、周壁52の肉厚に余程の不均一が無い限り、局部的な凹みが生じて外観不良となることは比較的発生しにくい。
【0006】しかしながら、容量が500ミリリットルあるいはそれ以下のペットボトルの場合は、負圧による容積の減少量は1.5リットルや2.0リットルの場合と同じであるから、例えば、500ミリリットル容積の容器の減少率は3倍(1.5リットル/0.5リットル=3)ないし4倍(2.0リットル/0.5リットル=4)となり、周壁52の各平面部57全体の撓み量が相対的に多くなり、周壁52の各平面部57の肉厚に微妙な不均一部分があると、薄肉の平面部57に撓みが集中し易く、その平面部57に位置する環状溝部53が内容物51側に折れて著しい外観不良を起こすことになる。
【0007】そこで、本発明の目的は、負圧による容器の変形を所定の箇所を起点として発生させ、容器全体を均等に変形させることによって、外観不良をもたらさないプラスチック製容器を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであって、下記の構成からなることを特徴とするものである。すなわち、本発明によれば、周壁に少なくとも2個の凹部を有する角筒形状のプラスチック容器において、前記それぞれの凹部を区画する壁面部に溝部を設けたことを特徴とするプラスチック製容器が提供される。
【0009】また、本発明によれば、前記凹部の間に環状溝部が形成されるとともに、溝部が、該環状溝部を介して凹部を区画するそれぞれの壁面部に形成されている上記プラスチック製容器が提供される。
【0010】また、本発明によれば、前記溝部が、縦方向に2本並列に形成されている上記プラスチック製容器が提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】以下に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。この実施の形態では、一例として、断面4角形状のプラスチック製容器について説明する。図1は本発明の実施の形態を示すプラスチック製容器の正面図、図2は図1のII-II線に沿う断面図である。両図において、プラスチック製容器1は、角筒形状の容器本体2にその周壁3の各壁面部4に溝部5を1以上設けたものであり、この溝部が負圧による変形開始の起点となる。
【0012】前記容器本体2は、上部に口部10及びフランジ11があり、その下部の周壁3の断面が図1,2では4角形の例を示しており、その角に面取り12が設けられている。したがって、周壁3には、4つの壁面部4があり、これら壁面部4の間に4つの面取り12が設けられていることになる。なお、この周壁3の断面形状は4角形に限定されるものではなく、3角形、5角形、6角形、8角形などの任意の多角形であっても良い。
【0013】上記周壁3の4つの壁面部4には、減圧を吸収するための凹部13,14がそれぞれ設けられ、凹部13,14の間の壁面部にこれらをつなぐような形状の前記溝部5が2本設けられている。この溝部5は、上述のように負圧変形吸収用のものであり、容器本体2の口部10を蓋により密封した状態で、容器本体2内が減圧、すなわち、負圧状態になった時、折れ目のきっかけとなり、凹部13,14全体が内容物51側に撓み、周壁3全体を変形し易くして、各壁面部4を均等に変形するように働くものである。溝部5の数や方向は、図1,2に示すように縦方向に2本である必要はなく、1本でも、あるいは3本以上でもよいが、壁面部4のほぼ中央部に縦方向に2本並列に設けられているものが負圧吸収効果が最も優れている。
【0014】また、前記プラスチック製容器1を構成する材料は特に限定されるものではないが、二軸延伸ブロー成形で製造する場合であれば、これが可能なプラスチック材料、例えば、ポリエチレンテレフタレート、共重合ポリエステル等のポリエステル樹脂を例示することが出来る。また、このプラスチック製容器1の容積も、特に限定されないが、200ないし900ミリリットル、特に350ミリリットルや500ミリリットルの場合にその効果を有効に発揮する。なお、上記容器の構造は、無菌充填システム(アセプティック充填)の容器にも適用できることはもちろんである。
【0015】次に、上記構成のプラスチック製容器1の使用方法を説明する。まず、容器本体2の口部10から90℃程度の内容物15を投入し、所定のヘッドスペース16を確保して、口部10に蓋(図示せず)をして密封する。内容物15が常温となると、90℃の時の蒸気が液体となり、その分プラスチック製容器1内の圧力は減圧され、負圧状態となってプラスチック製容器1は変形することになる。その際、周壁3の4つの壁面部4には、溝部5が設けられていることにより、この溝部が折れ目のきっかけとなり、凹部13,14全体が内容物51側に撓み、周壁3全体を変形し易くして、各壁面部4を均等に変形させるため局部的に外観不良を起こすことがない。
【0016】図3,4は本発明の他の実施形態のプラスチック製容器を示す図面であり、このプラスチック製容器1aと図1,2の実施形態との相違点は、周壁3の4つの凹部13と凹部14を区画する壁面部4に、溝部5が1本設けられている点にある。その他の構成、作用は図1,2の実施形態と同様なので図面に符号を付してその説明を省略する。
【0017】図5,6は本発明の他の実施形態のプラスチック製容器を示す図面であり、このプラスチック製容器1bと図1,2の実施形態との相違点は、周壁3に環状溝部20を形成すると共に、周壁3の各壁面部4に、環状溝部20を介して各壁面部4に、溝部21を2本設けた点にある。この際溝部21は、環状溝部の底壁までは達していなくてもよい。
【0018】したがって、容器本体2内部が負圧状態になって内容積が減少しようとすると、溝部21が折れ目のきっかけとなり、凹部13,14全体が内容物51側に撓み、周壁3の各壁面部4全体が変形し易くなって、周壁3に環状溝部20を形成してあっても、各壁面部4が略均等に変形し環状溝部20の折れによる外観不良を起こさずかつ内部の負圧度も低下し、その変形が各壁面部4に分散する結果負圧による容積減少の吸収量が多くなる。換言すれば、外観不良を起こすまでの変形許容量が多くなるものである。その他の構成、作用は図1,2の実施形態と同様なので図面に符号を付してその説明を省略する。」

・「【0030】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、プラスチック製容器内部が負圧状態になって内容積が減少しようとすると、壁面部に形成した溝部が折れ目のきっかけとなり、凹部全体が内容物側に撓み、周壁の各平面部全体が変形し易くなって、各平面部が略均等に変形し外観不良を起こさずかつ容器内部の負圧度も低下し、その変形が各平面部に分散する結果負圧による容積減少の吸収量が多くなり、換言すれば外観不良を起こすまでの変形許容量が多くなる。したがって、外観不良を起こすことなく、容積の減少の吸収量を多くし、かつ減圧度を低下させて、内容物の充填温度幅やヘッドスペース量の設定幅を拡大して、製造工程上の制約を減らことが出来る効果がある。」

・図5には、プラスチック製容器が、口部10、胴部、及び底部を備えたものにおいて、周壁3に環状溝部20を設けて、絞り込んだウェスト部が示されている。また、同図には、胴部の側面には、前記ウェスト部を間に挟んで上下に位置する凹部13及び14をそれぞれ設ける点が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「高温の内容物15を充填し密封した後で、高温の内容物15が常温になると減圧して負圧状態となる、口部10、胴部、及び底部を備えたプラスチック製容器であって、
周壁3に環状溝部20を設けて、絞り込んだウェスト部を設け、
前記胴部の側面には、前記ウェスト部を間に挟んで上下に位置する凹部13及び14をそれぞれ設けるとともに、
前記凹部13及び14全体が内容物15側に撓むプラスチック製容器。」

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。

(ア)後者の「プラスチック製容器」の内容物が液状であることは技術常識といえ、後者の「高温の内容物15を充填し密封した後で、高温の内容物15が常温になると減圧して負圧状態となる」態様と前者の「液状の内容物を充填、密封した状態で凍結させて使用する」態様とは、「液状の内容物を充填、密封した状態で容積が変化されて使用する」との概念で共通することから、
後者の「高温の内容物15を充填し密封した後で、高温の内容物15が常温になると減圧して負圧状態となる、口部10、胴部、及び底部を備えたプラスチック製容器」と
前者の「液状の内容物を充填、密封した状態で凍結させて使用する口部、胴部、及び底部を備えた合成樹脂製容器」とは、
「液状の内容物を充填、密封した状態で容積が変化されて使用する口部、胴部、及び底部を備えた合成樹脂製容器」なる概念で共通する。

(イ)後者の「周壁3に環状溝部20を設けて、絞り込んだウェスト部」が前者の「胴部の所定の高さ位置を絞り込んでなるウェスト部」に相当する。

(ウ)後者の「凹部13及び14」が前者の「内圧調整パネル」に相当し、後者の「胴部の側面には、ウェスト部を間に挟んで上下に位置する凹部13及び14をそれぞれ設ける」点と
前者の「胴部の側面には、ウェスト部を間に挟んで上下に位置する内圧調整パネルをそれぞれ設けるとともに、上方に位置する前記内圧調整パネルの下縁と、下方に位置する前記内圧調整パネルの上縁とを高さ方向に沿ってほぼ直線的に結ぶ稜線が現れるような立体形状を付与し」た点とは、
「胴部の側面には、ウェスト部を間に挟んで上下に位置する内圧調整パネルをそれぞれ設ける」との概念で共通する。

(エ)後者の「凹部13及び14全体が内容物51側に撓む」点と
前者の「内圧調整パネルのパネル面には、横ビードを形成する」点とは、
「内圧調整パネルのパネル面には、剛性が存在する」との概念で共通する。

(オ)後者の「プラスチック製容器」が、
前者の「合成樹脂製容器」に相当する。

したがって、両者は、
「液状の内容物を充填、密封した状態で容積が変化されて使用する口部、胴部、及び底部を備えた合成樹脂製容器であって、
前記胴部の所定の高さ位置を絞り込んでなるウェスト部を設け、
前記胴部の側面には、前記ウェスト部を間に挟んで上下に位置する内圧調整パネルをそれぞれ設けるとともに、
前記内圧調整パネルのパネル面には、剛性が存在する合成樹脂製容器。」
の点で一致し、以下の各点で相違している。

[相違点1]
液状の内容物を充填、密封した状態で容積が変化する状態に関し、本願発明では「凍結」させて使用するのに対し、引用発明では、高温の内容物51を充填し密封した後で、高温の内容物51が常温になると減圧して負圧状態となるものであるが、「凍結」である点は特定されていない点。

[相違点2]
胴部の側面の形状に関し、本願発明では、「上方に位置する前記内圧調整パネルの下縁と、下方に位置する前記内圧調整パネルの上縁とを高さ方向に沿ってほぼ直線的に結ぶ稜線が現れるような立体形状を付与し」ているのに対し、引用発明では、そのような特定はなされていない点。

[相違点3]
内圧調整パネルのパネル面の剛性が存在する形態に関し、本願発明では、「横ビードを形成」するのに対し、引用発明では、そのような構成は特定されていない点。

5.判断
[相違点1]について
本願発明において、液状の内容物を充填、密封した状態で凍結させて使用する口部、胴部、及び底部を備えた合成樹脂製容器としたことによる技術的な意義は、出願当初の明細書の【0004】の「飲料品のような水を含む液状の内容物を充填、密封した状態で容器を凍結させると、凍結に伴って内容物の体積が増加し、これによって、容器が破損してしまったり、膨出変形したりするおそれがある。特許文献1は、このような不具合を防止するために、凍結による体積増加を容器の形状変化によって吸収しようとするものである。」なる記載によると、凍結による体積増加を容器の形状変化によって吸収しようとするものと解することができる。
一方、引用例の【0030】には、「本発明によれば、プラスチック製容器内部が負圧状態になって内容積が減少しようとすると、壁面部に形成した溝部が折れ目のきっかけとなり、凹部全体が内容物側に撓み、周壁の各平面部全体が変形し易くなって、各平面部が略均等に変形し外観不良を起こさずかつ容器内部の負圧度も低下し、その変形が各平面部に分散する結果負圧による容積減少の吸収量が多くなり、換言すれば外観不良を起こすまでの変形許容量が多くなる。したがって、外観不良を起こすことなく、容積の減少の吸収量を多くし、かつ減圧度を低下させて、内容物の充填温度幅やヘッドスペース量の設定幅を拡大して、製造工程上の制約を減らことが出来る効果がある。」と記載されているように、引用発明は、内容物の体積変化による変形許容量を大きくする(「容器の形状変化によって吸収しようとする」態様に相当)ものである。
そして、体積変化が本願発明では「凍結による体積増加」であるのに対し、引用発明では「高温の内容物15を充填し密封した後で、高温の内容物15が常温になると減圧して負圧状態となる」態様に対応するためのものである点で相違するが、両者は、体積変化を容器の形状変化によって吸収しようとする点で共通するといえる。
そして、飲料が収容されたペットボトルを冷凍することは原査定の拒絶の理由に引用された、特開2002-104358号公報に例示されるように通常行われることであり、冷凍すれば容器が変形することは技術常識である(現に、特開2003-95398号公報の【0003】に「ペットボトルが変形」することが課題であること、登録実用新案第3101714号公報の【0007】に冷凍されて使用する場合に容器が変形して液体の体積変化を吸収する点が記載されている。)し、プラスチック製容器において内容物の体積が減少した場合と増加した場合とでその変形は内容物側への変形であるか、外部への変形であるかのみで相違し、体積が増加した場合の変形の状態は減少している場合の変形から想定可能な範囲内といえることから、引用例の上記記載は当業者にとって、内容物が増加した場合の変形に対処することを示唆しているといえる。
そうすると、引用発明において、上記の技術常識を踏まえ、相違点1に係る本願発明の構成とすることが当業者にとって格別なものとは認められない。

[相違点2]について
本願発明において、胴部の側面には、ウェスト部を間に挟んで上下に位置する内圧調整パネルをそれぞれ設けるとともに、上方に位置する内圧調整パネルの下縁と、下方に位置する内圧調整パネルの上縁とを高さ方向に沿ってほぼ直線的に結ぶ稜線が現れるような立体形状を付与したことによる技術的な意義は、出願当初の明細書の【0047】の「前述した実施形態では、内圧調整パネル62の幅方向両端近傍どうしをそれぞれ結ぶ領域に縦ビード7を形成するとともに、ウェスト部5の溝底部の幅方向ほぼ中央に隆起部51を設け、この隆起部51の両端に形成される稜線が、縦ビート7とほぼ同一直線上に位置するようにすることで、上方に位置する内圧調整パネル61の下縁と、下方に位置する内圧調整パネル62の上縁とを高さ方向に沿ってほぼ直線的に結ぶ稜線が現れるような立体形状としているが、凍結に伴う内容物の体積増加による押圧力が内圧調整パネルに集中したとしても、このときに作用する押圧力が、上下に位置する内圧調整パネルを高さ方向に沿ってほぼ直線的に結ぶ稜線により、ウェスト部の近傍にも伝達されるように分散されるようにすることができる限り、当該立体形状の具体的な態様は特に制限されない。」なる記載によれば、内圧調整パネル62の幅方向両端近傍どうしをそれぞれ結ぶ領域に縦ビード7を形成するとともに、ウェスト部5の溝底部の幅方向ほぼ中央に隆起部51を設け、この隆起部51の両端に形成される稜線が、縦ビート7とほぼ同一直線上に位置することであると解される。
一方、引用例の【0018】には、「容器本体2内部が負圧状態になって内容積が減少しようとすると、溝部21が折れ目のきっかけとなり、凹部13,14全体が内容物51側に撓み、周壁3の各壁面部4全体が変形し易くなって、周壁3に環状溝部20を形成してあっても、各壁面部4が略均等に変形し環状溝部20の折れによる外観不良を起こさずかつ内部の負圧度も低下し、その変形が各壁面部4に分散する結果負圧による容積減少の吸収量が多くなる。換言すれば、外観不良を起こすまでの変形許容量が多くなるものである。」と記載されているように、引用例にも、内圧調整パネル62の幅方向両端近傍どうしをそれぞれ結ぶ領域に縦ビード(溝部21)を形成することが開示されている。

してみると、上記の[相違点1」についてで検討したように、引用発明の液体の体積変化が生じる場合に、凍結による体積増加とすることにより相違点1に係る本願発明の構成とすることも任意であることを踏まえると、同様に、引用発明において、上記の技術常識を踏まえ、相違点2に係る本願発明の構成とすることが当業者にとって格別なものとは認められない。

[相違点3]について
本願発明において、内圧調整パネルのパネル面には、横ビードを形成することによる技術的な意義は出願当初の明細書の【0028】の「内圧調整パネル61,62は、内圧調整機能が発揮されるものであれば、その具体的な態様は特に限定されない。しかし、内圧調整パネル61,62に作用した内容物の体積増加による押圧力が、内圧調整パネル61,62を結ぶ領域に形成された稜線により伝達、分散されるようにする上で、当該稜線と直交する方向に沿って内圧調整パネル61,62が撓むように変形するのは好ましくない。このため、内圧調整パネル61,62のパネル面には、図示するような横ビード60を形成するのが好ましい。」との記載を踏まえると、内圧調整パネル61,62が撓むように変形するのを防止するものと解することができる。
剛性を向上するために、「横ビード」を合成樹脂製容器に設けることは周知の技術にすぎない(横ビード自体は引用例にも各種採用されているものであり、横ビートが剛性を向上させるものであることは、特開2004-67128号公報の【0025】及び特開2002-193230号公報の【0004】及び【0005】に記載され、特に剛性を向上する際には、その深さ等の形状が重要であることが記載されているので参照されたい。)。
そして、「内圧調整パネルのパネル面が全体として変形する」ものである引用発明は、パネル面が剛性を有するものであることから、剛性を有するための形状を示唆しているといえる。
また、横ビートは周知の構成にすぎず、引用発明においてそのような構成を採用することに阻害要因があるとも解されない。

そうすると、引用発明において剛性を増加するという一般的な課題を解決するために、引用発明に上記周知の技術を採用することにより相違点3に係る本願発明の構成とすることも任意であり、また、そのために格別の技術的困難性が伴うものとも認められない。

そして、本願発明の全体構成により奏される作用効果も引用発明、上記周知の技術、及び、上記技術常識から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用発明、上記周知の技術、及び、上記技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-06 
結審通知日 2013-02-12 
審決日 2013-02-25 
出願番号 特願2006-152227(P2006-152227)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 宏之  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 紀本 孝
河原 英雄
発明の名称 合成樹脂製容器  
代理人 渡辺 喜平  
代理人 中山 真一  

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