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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 F16K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16K
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 F16K
管理番号 1272935
審判番号 不服2012-10304  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-04 
確定日 2013-04-11 
事件の表示 特願2007-103157「電動弁」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月 1日出願公開、特開2008-101765〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成19年4月10日(優先権主張 平成18年9月20日)の出願であって、平成24年4月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。


2.平成24年6月4日付けの手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「弁室及びその内部に形成された弁座を有する弁本体と、前記弁座に接離して流体の通過流量を調整する弁体と、ロータ及び該ロータを回転駆動するステータを有する駆動部と、前記ロータの回転を前記弁体の前記弁座に対する接離動作に変換する送りねじ機構と、前記送りねじ機構に内在するバックラッシュ除去のため、前記弁体を前記弁座から離れる方向に付勢するコイルばねとを備え、該コイルばねを前記弁室内に配置してなる電動弁であって、
前記コイルばねは、前記弁体に嵌装される円筒状コイルばねであり、該円筒状コイルばねの前記弁座側端部を受けるばね受けを兼ねて前記円筒状コイルばねに嵌装される円筒状ばね覆い部材を設けるとともに、該円筒状ばね覆い部材は、前記弁本体の弁室内に垂下するが内底面からは離間して設けてあることを特徴とする電動弁。」と補正された。(なお、下線は、請求人が補正箇所を明示するために付したものである。)
上記補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「コイルばね」について「弁体に嵌装される円筒状コイルばねであり」との限定を付加し、さらに、「ばね覆い部材」について「円筒状」との限定、「円筒状コイルばねに嵌装される」との限定、及び、「弁本体の弁室内に垂下するが内底面からは離間して設けてある」との限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではないから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)先願発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願2006-191598号(特開2008-019957号)(以下「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「先願明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。
・「【0019】
図2に示すように、エンジンの吸気装置1は、スロットルボデー2と、そのスロットルボデー2の一側(図2において右側)に着脱可能に設けられたデバイスユニット3とにより構成されている(図1参照。)。説明の都合上、スロットルボデー2を説明し、その後でデバイスユニット3を説明する。
図3に示すように、スロットルボデー2は、その主体をなすボデー本体5を備えている。ボデー本体5は、例えば樹脂製で、前後方向(図3において紙面表裏方向)に貫通するほぼ中空円筒状のボア壁部6を有している。ボア壁部6内の中空部がボア7となっている。」

・「【0024】
図3に示すように、前記ボア壁部6には、左側の軸受ボス部10の外周部に連続するフランジ状のユニット装着部26が一体形成されている。ユニット装着部26には、左側の軸受ボス部10の開口端面と同一平面をなしかつ前記スロットルシャフト9の軸線9Lに直交する外端面からなる装着面26aが形成されている(図2参照。)。この装着面26aに、後述するデバイスユニット3が着脱可能となっている。なお、スロットルシャフト9の軸線9Lは、スロットルバルブ14の回動軸線に相当する。
【0025】
図4に示すように、前記ユニット装着部26には、バイパス入口孔28及びバイパス出口孔30が形成されている。バイパス入口孔28は、ボア壁部6及びユニット装着部26を左右方向(図4において紙面表裏方向)に貫通するストレート状の円形孔により形成されている。バイパス入口孔28のボア側の開口端は、全閉状態の前記スロットルバルブ14の上流側でかつ上部寄りの位置においてボア7の通路壁面に開口されている。また、バイパス入口孔28の反ボア側の開口端は、ユニット装着部26の装着面26aに開口されている(図5参照。)。
【0026】
前記バイパス出口孔30は、図4のほか、図6及び図7に表されている。なお、図6はバイパス通路を示す平断面図、図7は図6のVII-VII線矢視断面図である。
図7に示すように、前記バイパス出口孔30は、前記ユニット装着部26の上部において縦方向に延びる縦孔部31と、その縦孔部の上端部から左方(図7において右方)へ水平状に延びる横孔部32とにより逆L字状に形成されている。図4に示すように、縦孔部31のボア側の開口端は、全閉状態の前記スロットルバルブ14の下流側においてボア7の通路壁面の上側部に開口されている。しかして、縦孔部31は、上部が前方に傾斜しかつ下部が後方へ傾斜する直線31Lに沿って延びる有底ストレート状の円形孔により形成されている(図4参照。)。
【0027】
また、図7に示すように、前記横孔部32は、前記縦孔部31の上端部近くにおいてその縦孔部31の直線31Lに直交する直線32Lに沿って延びるストレート状の段付円形孔により形成されている。横孔部32は、ユニット装着部26の装着面26aに開口する大径側の孔部32aと、大径側の孔部32aと縦孔部31とを連通する小径側の孔部32bとを有している。小径側の孔部32bにおける大径側の孔部32a側の口縁部が、後述するアイドルスピードコントロールバルブ(以下、「ISCバルブ」という。)51の弁体110に対応する弁シート部33となっている。しかして、縦孔部31の上端部である孔底部は、小径側の孔部32bより上方へ延出する異物溜め部35となっている。これにより、エンジン側から縦孔部31内へ吹き返される排ガス中に含まれるデポジット等の異物を、縦孔部31の突き当たりに形成された異物溜め部35に受け止めて溜めることができ、横孔部32の上流側への逆流を防止あるいは低減することができる。
【0028】
前記横孔部32における大径側の孔部32a内には、後述するデバイスブロック50の弁体嵌合部74が嵌合される。このため、横孔部32における大径側の孔部32aを、「弁体嵌合部用孔部」という。
また、図5に示すように、前記ユニット装着部26の装着面26aには、前記バイパス入口孔28とバイパス出口孔30(詳しくは、大径側の孔部32a)とを連絡するバイパス通路溝37が形成されている(図6参照。)。」

・「【0032】
図5に示すように、前記ユニット装着部26の外周部には、適数個(図5では上側に1個、下側に前後2個の計3個を示す。)の締結ボス部44が形成されている。締結ボス部44には、ねじ孔44aが形成されている。ねじ孔44aには、後述するデバイスユニット3のデバイスブロック50を締結するための締結用ボルト45(図2参照。)が締着可能となっている。」

・「【0038】
図14に示すように、前記デバイスブロック50の取付面50a上には、バイパス通路溝68が形成されている。バイパス通路溝68は、前記ユニット装着部26の装着面26aのバイパス通路溝37(図5参照。)に対応して形成されている(図6参照。)。図6に示すように、バイパス通路溝68は、ユニット装着部26の装着面26aにデバイスブロック50の取付面50aを面接触させた際に、バイパス通路溝37と協働して閉断面をなすバイパス通路70を形成するものである。バイパス通路70は、前記バイパス入口孔28及び前記バイパス出口孔30と連通することにより、スロットルバルブ14を迂回する一連の通路を形成する。なお、バイパス通路70は、本明細書でいう「補助吸気通路」、「流体通路」に相当する。また、バイパス通路70を流れる吸入空気は、本明細書でいう「補助吸気」あるいは「流体」に相当する。
【0039】
図17はISCバルブ及び圧力センサの周辺部を示す分解断面図である。図17に示すように、前記デバイスブロック50には、前後方向(図17において上下方向)に貫通する中空円筒状のモータ嵌合部72が形成されている。モータ嵌合部72の前端部内には、口径を小さくする段部73が形成されている。モータ嵌合部72は、後述するISCバルブ51のステップモータ108がその後方(図17において上方)から嵌合可能に形成されている。
【0040】
前記デバイスブロック50の取付面50aには、前記モータ嵌合部72を取り囲みかつその段部73と連続する円筒状をなす弁体嵌合部74が形成されている。また、弁体嵌合部74の先端部の内周面には、環状に張り出すフランジ部75が形成されている。弁体嵌合部74内には、後述するISCバルブ51の弁体110及びバルブスプリング138がその後方(図17において上方)から嵌合可能となっている。また、弁体嵌合部74は、前記ユニット装着部26のバイパス出口孔30の弁体嵌合部用孔部32a内に嵌合可能に形成されている(図6及び図7参照。)。また、弁体嵌合部74の内周面には、適数個(図17では1個を示す。)の位置決め凸部76が等間隔すなわち180°間隔で形成されている。位置決め凸部76は、弁体嵌合部74の軸方向(図17において上下方向)に延びている。」

・「【0050】
次に、前記デバイスブロック50の収容凹部58内に組込まれるISCバルブ51を説明する。図17に示すように、ISCバルブ51は、ステップモータ(ステッピングモータ、ステッパモータ等とも呼ばれている。)108と、そのステップモータ108により軸方向に進退移動される弁体110とを備えている。本実施例のステップモータ108には、バイポーラ型のステップモータが用いられている。なお、ステップモータ108は、本明細書でいう「アクチュエータ」に相当する。また、図19はISCバルブを示す断面図、図20はISCバルブを弁体の先端側から見た正面図である。
【0051】
図19に示すように、前記ステップモータ108は、強磁性体からなる有底円筒状のモータハウジング112内に収容されたステータ113と、ステータ113内で回転するモータロータ114とを備えている。ステータ113は、樹脂製のボビン115を備えている。ボビン115は、4個のヨーク116及び4本の端子117(図20参照。)をインサート成形したものである。また、ヨーク116は、2個1組として軸方向に積層状に配置されている。ボビン115には、ヨーク116を被覆する被覆部118のほか、モータハウジング112の開口側にフランジ状に形成された端板部119、端板部119の外周面に平行状に突出する一対の端子支持部120,121(図17参照。)が一体形成されている。各端子支持部120,121には、それぞれ2本ずつの端子117の基端部が埋設されている(図11参照。)。各端子117は、各端子支持部120,121より段違い状に引き出されている。また、図20に示すように、ステップモータ108の計4本の端子117のうち、A相用の2本の端子117に符号、(S1)、(S2)を付し、B相用の2本の端子117に符号、(S3)、(S4)を付す。なお、ステータ113は、本明細書でいう「固定側部材」に相当する。
【0052】
図19に示すように、前記ボビン115の外周部には、コイル線122が上下2段に巻装されている。コイル線122の端末部は各端子117(図17参照。)にそれぞれ接続されている。また、ボビン115の端板部119上には、前記モータハウジング112の開口端面を閉鎖する金属製のカバープレート123が重合されている。
また、前記モータハウジング112の底板部112aには、例えば金属製のドライベアリング125が一体的に設けられている。ドライベアリング125は、円環状に形成されており、例えば、底板部112aに形成された軸孔112bに圧入することにより、底板部112aに装着されている。なお、モータハウジング112の底板部112aは、本明細書でいう「金属部」に相当する。
また、前記ボビン115の端板部119には、例えば金属製のドライベアリング124が一体的に設けられている。ドライベアリング124は、円環状に形成されており、例えば、端板部119にインサート成形したり、端板部119に嵌合して接着したり、端板部119に圧入したりして、端板部119に装着されている。なお、ボビン115の端板部119は、本明細書でいう「樹脂部」に相当する。
また、両ドライベアリング124,125は、ステータ113に対して同一軸線上に配置されている。なお、ドライベアリング124,125は、本明細書でいう「滑り軸受」に相当する。また、説明の都合上、弁体110側(図19において下側)のドライベアリング124を「前側のドライベアリング124」といい、反弁体側(図19において上側)のドライベアリング124を「後側のドライベアリング124」という。
【0053】
前記モータロータ114は、金属製の丸棒状のロータシャフト127と、ロータシャフト127の外周部に設けられた円筒状のマグネット130とを備えている。ロータシャフト127は、前記一対のドライベアリング124,125に挿通した状態で回転可能に支持されている。マグネット130は、ロータシャフト127における両ドライベアリング124,125の相互間における軸部分を取り巻くように設けられている。また、マグネット130は、前記ヨーク116の内周面に対して所定の隙間を隔ててて対応し、かつ、ヨーク116の各磁極歯に対応する数のN極、S極が交互に着磁されている。また、前記モータハウジング112外へ突出するロータシャフト127の先端部には、ねじ軸部129が形成されている。なお、ロータシャフト127は、本明細書でいう「作動部材」に相当する。また、両ドライベアリング124,125により軸支されたロータシャフト127は軸移動をきたすことから、そのロータシャフト127の軸移動を規制するために設けられている軸移動規制手段250,252については後で詳しく説明することにする。
【0054】
前記弁体110は、例えば樹脂製で、中空円筒状をなす筒状部132と、その筒状部132の先端部(図19において下端部)に形成された先細りをなすテーパ面133aを有する円柱状の弁先部133と、前記筒状部132の基端部(図19において上端部)の外周部に環状に突出されたフランジ部134とを有している。また、図20に示すように、フランジ部134の外周面には、適数個(図20では4個を示す。)の位置決め溝134aが等間隔すなわち90°間隔で形成されている。
【0055】
図19に示すように、前記弁体110の筒状部132内の有底孔状の凹孔254は、開口側半部(図19において上半部)を大径孔部254aとしかつ底部側半部(図19において下半部)を小径孔部254bとする段付孔状に形成されている。その大径孔部254a内には、ねじ孔を有するナット部材136が圧入(例えば、熱圧入)により一体化されている。ナット部材136(詳しくは、ねじ孔)内には、前記ロータシャフト127のねじ軸部129が螺合されている。また、筒状部132の小径孔部254bは、ロータシャフト127のねじ軸部129を遊嵌可能に形成されている。したがって、前記モータロータ114の回転(正転及び逆転)により、ねじ軸部129とナット部材136との螺合を介して、弁体110が軸方向に進退移動可能(図19において上下動可能)となっている。なお、ロータシャフト127のねじ軸部129とナット部材136とは、「ねじ機構」を構成している。
【0056】
図21はISCバルブ及び温度センサを搭載したデバイスブロックのデバイスカバー取付側を示す側面図、図22はデバイスブロックに対するISCバルブの搭載状態を示す断面図である。図22に示すように、前記ISCバルブ51は、前記デバイスブロック50の収容凹部58内に搭載されている。詳しくは、前記弁体110が前記弁体嵌合部74内に嵌合されるととともに、前記ステップモータ108が前記モータ嵌合部72内に嵌合されている。このとき、弁体110のフランジ部134と弁体嵌合部74のフランジ部75との間には、コニカルスプリングからなるバルブスプリング138が介装されている。バルブスプリング138は、小径側の端部を弁体110のフランジ部134に当接させるとともに、大径側の端部を弁体嵌合部74のフランジ部75に当接させている。バルブスプリング138の小径側の端部は、弁体110のフランジ部134に環状に形成された環状凹部134b内に嵌合されている。バルブスプリング138は、弁体110とともに前記モータロータ114を後退方向(図22において上方)へ弾性的に付勢している。これにより、ロータシャフト127がカバープレート123に当接する状態に弾性的に保持されている。
【0057】
また、前記弁体110のフランジ部134の位置決め溝134a(図17参照。)は、前記デバイスブロック50の弁体嵌合部74内の位置決め凸部76(図17参照。)にスライド可能に嵌合される。これにより、弁体110が軸回り方向に回り止めされる。このとき、位置決め溝134aが位置決め凸部76の倍数(本実施例では2倍)をもって形成されているので、弁体110をデバイスブロック50の弁体嵌合部74内に容易に嵌合することができる。また、弁体110の弁先部133は、デバイスブロック50の弁体嵌合部74のフランジ部75内に挿通されており、そのフランジ部75より先方(図22において下方)へ突出されている。
【0058】
図22に示すように、前記モータ嵌合部72内に前記ステップモータ108が嵌合されることにより、そのステップモータ108の各端子117が、前記デバイスブロック50の収容凹部58の底面上に配置されている各端子板99a,99b上にそれぞれ載置される(図21参照。)。この状態で、各端子117が各端子板99a,99b上に抵抗溶接等により接続される。なお、ステップモータ108は、デバイスブロック50に設けられるデバイスカバー60によって抜け止めされる(図19参照。)。」

・「【0079】
次に、前記デバイスユニット3を前記スロットルボデー2に取付ける手順について説明する。すなわち、図2に示すように、デバイスユニット3をスロットルボデー2のユニット装着部26に対応させる(図2中、二点鎖線3参照。)。この状態から、デバイスブロック50のデバイスブロック50の取付面50aを、スロットルボデー2のユニット装着部26の装着面26aに面接触させる。そして、ユニット装着部26の各締結ボス部44のねじ孔44a(図5参照。)と、デバイスブロック50の各取付ボス部62のボルト挿通孔62a(図29参照。)とが整合する状態で、締結用ボルト45を各ボルト挿通孔62aを通して各ねじ孔44aに締め付けることにより、スロットルボデー2にデバイスブロック50がスロットルバルブ14の回動軸線(9L(図3参照。))方向に着脱可能に取付けられる(図1?図3参照。)。」

・「【0081】
図6に示すように、前記デバイスブロック50を前記ユニット装着部26に面接触させた際には、デバイスブロック50のバイパス通路溝68が、ユニット装着部26のバイパス通路溝37に整合する。これにより、閉断面をなしかつバイパス入口孔28とバイパス出口孔30とを連通することにより、スロットルバルブ14を迂回するバイパス通路70が形成される。これにより、ボア7内を流れる吸入空気は、バイパス入口孔28からバイパス通路70を通じてバイパス出口孔30からボア7に流出する。また、バイパス出口孔30において、吸入空気(補助吸気)は、横孔部32の大径側の孔部32a、小径側の孔部32bを経て、縦孔部31からボア7の下流側の中心部に向けて流出される(図4及び図7参照。)。
【0082】
また、デバイスブロック50の弁体嵌合部74が、ユニット装着部26のバイパス出口孔30における横孔部32の弁体嵌合部用孔部32a内に嵌合される(図6及び図7参照。)。これにともない、ISCバルブ51の弁体110が、横孔部32の小径側の孔部32bの弁シート部33に対して同一軸線上に整合し、弁体110の弁先部133が弁シート部33に対向する。これにより、スロットルシャフト9の軸線9Lと平行をなす方向に
進退移動可能に配置される(図7参照。)。また、ISCバルブ51のステップモータ108は、エンジンのアイドル時において、制御手段102(図1参照。)により駆動制御される。なお、図9はスロットルボデーの弁シート部に対するISCバルブの開弁状態を示す断面図、図10は同じくISCバルブの閉弁状態を示す断面図である。
【0083】
前記ISCバルブ51の作動を説明する。いま、図10に示すように、ISCバルブ51の弁体110により弁シート部33が閉鎖された状態すなわち閉弁状態にあるものとする。この閉弁状態おいて、制御手段102(図1参照。)からステップモータ108に開弁信号が出力されると、モータロータ114(図19参照。)が開弁方向に回転(例えば、正転)される。このため、モータロータ114のロータシャフト127の回転により、そのロータシャフト127のねじ軸部129とナット部材136との螺合を介して、弁体110が後退(図10において上動)されることにより、弁シート部33が開かれる(図9参照。)。また、ISCバルブ51の開弁状態(図9参照。)において、制御手段102(図1参照。)からステップモータ108に閉弁信号が出力されると、モータロータ114(図19参照。)が閉弁方向に回転(例えば、逆転)される。このため、モータロータ114のロータシャフト127の回転により、そのロータシャフト127のねじ軸部129とナット部材136との螺合を介して、弁体110が進出(図9において下動)されることにより、弁シート部33が閉じられる(図10参照。)。上記したように、ステップモータ108の駆動制御に基づいて、弁体110が進退移動されることにより、バイパス通路70を流れる吸入空気量が調整すなわち制御される。なお、ISCバルブ51は、本明細書でいう「流量制御弁」に相当する。また、弁シート部33を備えるスロットルボデー2とISCバルブ51とにより、補助吸気量制御装置51Aが構成されている。」

・「【0092】
図38に示すように、前記ロータシャフト127の後端面(図38において上端面)は、凸型球面状のバルブストッパ部257として形成されている。バルブストッパ部257は、前記カバープレート123に点接触状に当接可能となっている。しかして、前に述べたように、モータロータ114は、前記バルブスプリング138の弾性力により弁体110とともに後退方向(図36において上方)へ付勢されている。このため、ロータシャフト127のバルブストッパ部257は、バルブスプリング138の弾性力をもって、常にカバープレート123に点接触状に当接する状態に保持されている。また、ステップモータ108の閉作動により弁体110が開状態(図35参照。)から閉じていくと、最終的に、弁体110がスロットルボデー2のユニット装着部26の弁シート部33に当接することで、バイパス通路70が閉鎖されるとともに、弁体110のそれ以上の閉動作が規制されることにより、弁体110の最大全閉位置が規定される(図36参照。)。このとき、ロータシャフト127が後退方向(図36において上方)への反力を受けるが、バルブストッパ部257がカバープレート123に点接触状に当接しているため、ステップモータ108のステータ113に対するロータシャフト127の反弁体側への後退移動(図36において上方への移動)が規制される。なお、カバープレート123は、ステップモータ108の閉作動時におけるロータシャフト127の軸移動方向の端部に当接する部材に相当する。
【0093】
上記したISCバルブ51(図35参照。)によると、ステップモータ108のロータシャフト127により弁体110が作動されることでバイパス通路70が開閉される。そして、ステップモータ108の開作動時におけるロータシャフト127の前方(図35において下方)への軸移動が、そのロータシャフト127の前端部のバルブストッパ部256と弁体110との当接によって規制される(図37参照。)。このため、ステップモータ108の開作動時におけるロータシャフト127の軸移動に起因するステップモータ108の作動不良を防止あるいは低減することができる。」

・図6、7、9及び10には、バルブスプリング138を横孔部32の弁体嵌合部用孔部32a内に配置してなる態様が示されている。

・段落【0040】における「前記デバイスブロック50の取付面50aには、前記モータ嵌合部72を取り囲みかつその段部73と連続する円筒状をなす弁体嵌合部74が形成されている。」との記載、段落【0056】における「このとき、弁体110のフランジ部134と弁体嵌合部74のフランジ部75との間には、コニカルスプリングからなるバルブスプリング138が介装されている。バルブスプリング138は、小径側の端部を弁体110のフランジ部134に当接させるとともに、大径側の端部を弁体嵌合部74のフランジ部75に当接させている。」との記載、図6、7、9、10、35及び36の各断面図、並びに、図14のデバイスブロックを示す正面図によれば、コニカルスプリング(バルブスプリング138)の弁シート部33側である大径側の端部をフランジ部75に当接させて前記コニカルスプリングに嵌装される円筒状をなす弁体嵌合部74を設ける態様が示されている。

・段落【0040】における「また、弁体嵌合部74は、前記ユニット装着部26のバイパス出口孔30の弁体嵌合部用孔部32a内に嵌合可能に形成されている(図6及び図7参照。)。」との記載、並びに、図6、7、9及び10によれば、円筒状をなす弁体嵌合部74は、ボデー本体5のユニット装着部26の弁体嵌合部用孔部32a内に垂下するが内底面からは離間して設けてある態様が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、先願明細書等には、次の事項からなる発明(以下「先願発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「横孔部32の大径側の弁体嵌合部用孔部32a及び前記横孔部32の小径側の孔部32bにおける前記弁体嵌合部用孔部32a側の口縁部に形成された弁シート部33を有するボデー本体5のユニット装着部26と、前記弁シート部33に進退移動して吸入空気量を調整する弁体110と、モータロータ114及び該モータロータ114を回転駆動するステータ113を有するステップモータ108と、前記モータロータ114の回転を前記弁体110の前記弁シート部33に対する進退移動動作に変換する、ロータシャフト127のねじ軸部129と前記弁体110に一体化されたナット部材136とで構成されたねじ機構と、前記弁体110とともに前記モータロータ114を後退方向へ弾性的に付勢するバルブスプリング138とを備え、該バルブスプリング138を前記横孔部32の弁体嵌合部用孔部32a内に配置してなるアイドルスピードコントロールバルブ51であって、
前記バルブスプリング138は、前記弁体110のフランジ部134と弁体嵌合部74のフランジ部75との間に介装されるコニカルスプリングであり、前記コニカルスプリングの前記弁シート部33側である大径側の端部を前記フランジ部75に当接させて前記コニカルスプリングに嵌装される円筒状をなす弁体嵌合部74を設けるとともに、該円筒状をなす弁体嵌合部74は、前記ボデー本体5の前記ユニット装着部26の前記弁体嵌合部用孔部32a内に垂下するが内底面からは離間して設けてあるアイドルスピードコントロールバルブ51。」

(3)対比
本願補正発明と先願発明とをその機能・作用からみて対比する。
・前者の「弁室」の定義については、本願明細書中に説明をする記載がない。そこで、本願明細書における「弁本体120には、弁本体120の底面から下方に延出したパイプ120aと、弁本体120の側面から水平方向に延出したパイプ120bとが設けられており、これらのパイプ120a,120bによって弁室121内に冷媒が導入され、弁室121内の冷媒が外部に導出される。」(段落【0002】)との記載、「弁本体10は、その内部に弁室12が形成されるとともに、その底部15には弁本体10の底面に開口するオリフィス14が形成されている。弁本体10には、弁室12の側面に連通するパイプ18a、及びオリフィス14の下端に連通するパイプ18bが固着されている。」(段落【0022】)との記載及び「弁室12が広い程、冷凍サイクルの運転中に冷媒の弁室12への出入りに伴う弁室12内の状態変化が少なくなり、冷媒の通過音が低減されるということが経験上判明しているが、本実施例の弁本体10の構造においても、そうした通過音の低減を実現することができる。」(段落【0043】)との記載、並びに、本願の図1、図2及び図12?14の記載を参照すると、「弁室」は「弁本体に設けられ、通路に連通して流体が導入されるとともに導出される空間」を意味するものと認められる。
そうすると、後者の「横孔部32の大径側の弁体嵌合部用孔部32a」は前者の「弁室」に相当する。
また、後者の「弁シート部33」は前者の「弁座」に、後者の「ボデー本体5のユニット装着部26」は前者の「弁本体」にそれぞれ相当する。
そして、後者の「横孔部32の大径側の弁体嵌合部用孔部32a及び前記横孔部32の小径側の孔部32bにおける前記弁体嵌合部用孔部32a側の口縁部に形成された弁シート部33を有するボデー本体5のユニット装着部26」と、前者の「弁室及びその内部に形成された弁座を有する弁本体」は、「弁室及び弁座を有する弁本体」との概念で共通する。

・後者の「進退移動」は前者の「接離」に、後者の「吸入空気量を調整する」態様は前者の「流体の通過流量を調整する」態様に、後者の「弁体110」は前者の「弁体」にそれぞれ相当する。
そして、後者の「弁シート部33に進退移動して吸入空気量を調整する弁体110」は前者の「弁座に接離して流体の通過流量を調整する弁体」に相当する。

・後者の「モータロータ114」は前者の「ロータ」に、後者の「ステータ113」は前者の「ステータ」に、後者の「ステップモータ108」は前者の「駆動部」にそれぞれ相当する。
そして、後者の「モータロータ114及び該モータロータ114を回転駆動するステータ113を有するステップモータ108」は前者の「ロータ及び該ロータを回転駆動するステータを有する駆動部」に相当する。

・後者の「進退移動動作」は前者の「接離動作」に相当し、後者の「モータロータ114の回転を弁体110の弁シート部33に対する進退移動動作に変換する」態様は前者の「ロータの回転を弁体の弁座に対する接離動作に変換する」態様に相当する。
また、後者の「ロータシャフト127のねじ軸部129と弁体110に一体化されたナット部材136とで構成されたねじ機構」は前者の「送りねじ機構」に相当する。

・後者の「弁体110とともにモータロータ114を後退方向へ弾性的に付勢する」態様は、弁体110を弁シート部33から離れる方向に付勢しているといえることから、前者の「弁体を弁座から離れる方向に付勢する」態様に相当する。
また、後者の「バルブスプリング138」は前者の「コイルばね」に相当する。

・後者の「バルブスプリング138を横孔部32の弁体嵌合部用孔部32a内に配置してなる」態様は前者の「コイルばねを弁室内に配置してなる」態様に相当する。
また、後者の「アイドルスピードコントロールバルブ51」は、電動機であるステップモータ108を有するから、前者の「電動弁」に相当する。

・後者の「バルブスプリング138は、弁体110のフランジ部134と弁体嵌合部74のフランジ部75との間に介装される」態様は前者の「コイルばねは、弁体に嵌装される」態様に相当する。
また、後者の「コニカルスプリング」と、前者の「円筒状コイルばね」とは、「コイルばね」との概念で共通する。
また、後者の「コニカルスプリングの弁シート部33側である大径側の端部」と、前者の「円筒状コイルばねの弁座側端部」とは、「コイルばねの弁座側端部」との概念で共通し、後者の「コニカルスプリングの弁シート部33側である大径側の端部をフランジ部75に当接させ」る態様と、円筒状をなす弁体嵌合部74のフランジ部75がコニカルスプリングの大径側の端部を受けるものといえるから、これと前者の「円筒状コイルばねの弁座側端部を受けるばね受けを兼ね」る態様とは、「コイルばねの弁座側端部を受けるばね受けを兼ね」るとの概念で共通する。
また、後者の「コニカルスプリングに嵌装される」と、前者の「円筒状コイルばねに嵌装される」とは、「コイルばねに嵌装される」との概念で共通する。
また、後者の「円筒状をなす弁体嵌合部74」は前者の「円筒状ばね覆い部材」に相当する。
さらに、後者の「円筒状をなす弁体嵌合部74は、ボデー本体5のユニット装着部26の弁体嵌合部用孔部32a内に垂下するが内底面からは離間して設けてある」態様は前者の「円筒状ばね覆い部材は、弁本体の弁室内に垂下するが内底面からは離間して設けてある」態様に相当する。
そして、後者の「バルブスプリング138は、弁体110のフランジ部134と弁体嵌合部74のフランジ部75との間に介装されるコニカルスプリングであり、前記コニカルスプリングの弁シート部33側である大径側の端部を前記フランジ部75に当接させて前記コニカルスプリングに嵌装される円筒状をなす弁体嵌合部74を設けるとともに、該円筒状をなす弁体嵌合部74は、ボデー本体5のユニット装着部26の弁体嵌合部用孔部32a内に垂下するが内底面からは離間して設けてある」態様と、前者の「コイルばねは、弁体に嵌装される円筒状コイルばねであり、該円筒状コイルばねの弁座側端部を受けるばね受けを兼ねて前記円筒状コイルばねに嵌装される円筒状ばね覆い部材を設けるとともに、該円筒状ばね覆い部材は、弁本体の弁室内に垂下するが内底面からは離間して設けてある」態様とは、「コイルばねは、弁体に嵌装されるコイルばねであり、該コイルばねの弁座側端部を受けるばね受けを兼ねて前記コイルばねに嵌装される円筒状ばね覆い部材を設けるとともに、該円筒状ばね覆い部材は、弁本体の弁室内に垂下するが内底面からは離間して設けてある」との概念で共通する。

したがって、両者は、
「弁室及び弁座を有する弁本体と、前記弁座に接離して流体の通過流量を調整する弁体と、ロータ及び該ロータを回転駆動するステータを有する駆動部と、前記ロータの回転を前記弁体の前記弁座に対する接離動作に変換する送りねじ機構と、前記弁体を前記弁座から離れる方向に付勢するコイルばねとを備え、該コイルばねを前記弁室内に配置してなる電動弁であって、
前記コイルばねは、前記弁体に嵌装されるコイルばねであり、該コイルばねの前記弁座側端部を受けるばね受けを兼ねて前記コイルばねに嵌装される円筒状ばね覆い部材を設けるとともに、該円筒状ばね覆い部材は、前記弁本体の弁室内に垂下するが内底面からは離間して設けてある電動弁。」
の点で一致し、次の点で一応相違している。
[相違点1]
弁座が形成される箇所に関し、本願補正発明では、弁室の内部であるのに対して、先願発明では、「横孔部32の小径側の孔部32bにおける弁体嵌合部用孔部32a側の口縁部」であって、そのような特定はされていない点。
[相違点2]
コイルばねに関し、本願補正発明では、送りねじ機構に内在するバックラッシュ除去のために備えたものであるのに対して、先願発明ではそのような特定はされていない点。
[相違点3]
コイルばねに関し、本願補正発明では、円筒状であるのに対して、先願発明では、コニカルスプリングであって、円錐状である点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
[相違点1について]
先願発明の弁座(弁シート部33)が形成される「横孔部32の小径側の孔部32bにおける弁体嵌合部用孔部32a側の口縁部」については、先願明細書等の図6、7、9、10、35及び36に示されているところ、本願の図1と比較すると、本願補正発明の弁座が形成される「弁室の内部」と実質的に同じ箇所と認められる。(現に、請求人の出願に係る特開2004-316718号公報には、先願発明の弁座(弁シート部33)が形成された箇所と同様の箇所に形成された弁座(弁座62)について、「主弁室61内の弁座62」(段落【0016】)と記載されている。)
よって、上記相違点1は実質的な相違ではない。

[相違点2について]
先願発明において、バルブスプリング138は、弁体110とともに前記モータロータ114を後退方向へ弾性的に付勢するものであるが、これにより、弁体110に一体化されたナット部材136からロータシャフト127のねじ軸部129に常に上方に力が作用し、上記ナット部材136のねじの面と上記ねじ軸部129のねじの面とが当接した状態を保つことになるから、先願発明においても送りねじ機構(ねじ機構)に内在するバックラッシュ除去が図られるものと認められる。(必要であれば、本願明細書の段落【0016】に特許文献2として提示された特開平8-226564号公報(特に、段落【0014】?【0015】)を参照のこと。)
よって、上記相違点2は実質的な相違ではない。

[相違点3について]
本願補正発明において、コイルばねを円筒状とした点については、本願明細書にはその技術的意義について何ら説明をする記載がなく、格別な技術的意義を認めることができない。
そして、弁体を付勢するコイルばねとして、円筒状コイルばねを用いることは本願の優先日前に周知技術(必要であれば、特開平8-226564号公報(特に、段落【0014】?【0015】及び図1のスプリング190)及び特開2005-48779号公報(特に、段落【0015】、図1及び図2)を参照。)であり、上記相違点3は上記周知技術を適用したものか否かの相違であって、上記周知技術の適用によって当業者の予測を越える新たな効果を奏するものではなく、コイルばねを円筒状とするか円錐状とするかは、コイルばねに求められるばねの特性や寸法に応じて当業者が任意に選択する事項であるから、設計上の微差といえ、実質的な相違ではない。

なお、請求人は、平成24年10月2日付けの回答書の4頁20?23行において「上記したような本願発明による電動弁に対し、先願発明におけるコイルばねは、台形円錐状のバルブスプリング138であって、円柱状の弁体110の外表面と、円筒状の弁体嵌合部74の内表面との間に大きな空間部を必要とするものでありますので、先願発明による電動弁は、本願発明による電動弁における前掲要件B、C及びDを併せ満たす構成を備えたものではありません。」との主張をする。
しかしながら、「要件D:前記円筒状ばね覆い部材(73)は、弁軸(60)の外周面を下端部を残して覆う筒状の周壁(74)と、該周壁(74)の上端に外側に屈曲する態様で形成された外向きフランジ部(75)と、前記筒状の周壁(74)の下端に屈曲し、かつ前記弁軸(60)が貫通可能な孔(77)を残す態様で形成された内向きフランジ部(76)とを有していること」は、上記回答書に示された請求項1の補正案に記載された事項であって、請求人の上記主張は、本件補正発明の発明特定事項に基づくものではないから、採用することができない。

よって、本願補正発明は、先願明細書等に記載された先願発明と実質的に同一であり、しかも、本願補正発明の発明者が先願発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が先願の出願人と同一であるとも認められないので、特許法第29条の2の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成23年11月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「弁室及びその内部に形成された弁座を有する弁本体と、前記弁座に接離して流体の通過流量を調整する弁体と、ロータ及び該ロータを回転駆動するステータを有する駆動部と、前記ロータの回転を前記弁体の前記弁座に対する接離動作に変換する送りねじ機構と、前記送りねじ機構に内在するバックラッシュ除去のため、前記弁体を前記弁座から離れる方向に付勢するコイルばねとを備え、該コイルばねを前記弁室内に配置してなる電動弁であって、
前記コイルばねの前記弁座側端部を受けるばね受けを兼ねて前記コイルばねを覆うばね覆い部材を設けたことを特徴とする電動弁。」

(1)先願発明
原査定の拒絶の理由に引用された先願及び先願明細書等の記載事項は、前記「2.[理由](2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.[理由](1)」で検討した本願補正発明から「コイルばね」について「弁体に嵌装される円筒状コイルばねであり」との限定を省き、さらに、「ばね覆い部材」について「円筒状」との限定、「円筒状コイルばねに嵌装される」との限定、及び、「弁本体の弁室内に垂下するが内底面からは離間して設けてある」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.[理由](3)及び(4)」に記載したとおり、先願明細書等に記載された先願発明と実質的に同一であるから、本願発明も、同様の理由により、先願明細書等に記載された先願発明と実質的に同一である。

よって、本願発明は、先願明細書等に記載された先願発明と実質的に同一であり、しかも、本願発明の発明者が先願発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が先願の出願人と同一であるとも認められないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、本願は、同法第49条第2号の規定に該当し、拒絶をされるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-06 
結審通知日 2013-02-12 
審決日 2013-02-26 
出願番号 特願2007-103157(P2007-103157)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (F16K)
P 1 8・ 161- Z (F16K)
P 1 8・ 575- Z (F16K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐伯 憲一  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 川口 真一
槙原 進
発明の名称 電動弁  
代理人 特許業務法人第一国際特許事務所  

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