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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1272936
審判番号 不服2012-12193  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-28 
確定日 2013-04-11 
事件の表示 特願2010- 49733「電子商取引システムおよび電子商取引方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月22日出願公開,特開2011-186660〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は平成22年3月5日の出願であって,平成23年12月5日付けの拒絶理由の通知に対し,平成24年2月2日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ,同年3月14日付けの拒絶理由の通知に対し,同年3月26日に意見書が提出されたが,同年5月2日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年6月28日に審判請求がなされるとともに手続補正がなされ,同年12月11日付けで拒絶理由が通知され,これに対し,平成25年1月17日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

2 本願発明について
(1)本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は,平成25年1月17日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,補正された明細書及び図面の記載からみて,その請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。
「通信ネットワークにそれぞれ接続する決済サーバと,商品販売サイトを管理する販売サーバと,ユーザ携帯端末を備える,プリペイドのネットワーク型電子マネーを商品代金の決済に用いる電子商取引システムであって,
電子マネーの購入時に使用されたユーザ携帯端末の機種固有情報を,電子マネーの残高と対応付けて電子マネー毎に記憶する電子マネー残高記憶手段を備え,
前記ユーザ携帯端末は,
前記商品販売サイトにて購入を希望する商品を特定する商品特定情報を入力する入力手段と,
前記販売サーバに対して前記入力された商品特定情報を送信すると同時に該ユーザ携帯端末の機種固有情報を自動送信する送信手段とを備え,
前記決済サーバは,
前記販売サーバからユーザ携帯端末の機種固有情報と販売価格を受信すると,前記電子マネー残高記憶手段から前記機種固有情報に対応する残高を取り出し,この残高が販売価格以上であれば決済可能と,販売価格未満であれば決済不可と回答する決済可否応答手段と,
前記の決済可能の場合に,前記電子マネー残高記憶手段に記憶される残高を,これから前記受信した販売価格を減じた値に更新する電子マネー残高更新手段と
を備え,
前記販売サーバは,
販売商品の商品特定情報と価格とを対応付けて記憶する商品情報記憶手段と,
前記ユーザ携帯端末から購入希望の商品を特定する商品特定情報とともに,前記ユーザ携帯端末の機種固有情報を受信する購入申込受付手段と,
前記商品情報記憶手段を参照して商品の販売価格を算出し,この価格と前記機種固有情報を前記決済サーバに送信する決済可否照会手段と,
前記決済サーバからの決済可能あるいは決済不可の回答に応じた通知を前記ユーザ携帯端末に送信する商品提供可否通知手段と
を備え,
前記電子マネー残高記憶手段に同一の機種固有情報と対応づけられた残高を有する複数の電子マネーが記憶されている場合,決済の可否はこれら複数の電子マネーの残高の合算値と前記販売価格との比較によって判定することを特徴とする電子商取引システム。」

(2)平成24年12月11日付けの拒絶理由の概要
当審において平成24年12月11日付けで通知した拒絶理由の概要は,本願の請求項1ないし3に係る発明は,本願の出願日前に頒布された,下記引用文献(以下,「引用例1」などという。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献等一覧
1.特開2001-357329号公報
2.特開2009-129080号公報
3.特開2005-250899号公報
4.国際公開第01/97118号
5.特開2009- 75985号公報
6.特開2010- 33546号公報
7.特開2002- 63517号公報

(3)引用例
ア 引用例1(特開2001-357329号公報)には,以下の記載がある。

a 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,ショッピング等の支払に好適なプリペイド決済方法及び資金管理センタに関する。」
b 「【0002】【従来の技術】従来,プリペイド決済を実現するものとしては,プリペイドカードを用いた決済システムが一般的であった。このような決済システムとして,例えば,残高等の情報を記憶するプリペイドカードを使用するシステムや,残高等の情報はプリペイドカードに記憶せずにセンタ等で管理するシステム等があった。
【0003】【発明が解決しようとする課題】しかし,上記のようなシステムでは,前者の場合にはプリペイドカードに記憶される残高が改竄等されるおそれがあり,また,後者の場合には残高の改竄等の問題は発生しないが,プリペイドカードが盗難又は紛失された場合には他者に不正使用されてしまうおそれがある。
【0004】本発明は,上述した事情に鑑みてなされたもので,プリペイドカードを用いずにプリペイド決済を可能とするプリペイド決済方法及び資金管理センタを提供することを目的とする。また,本発明は,安全性の高いプリペイド決済方法及び資金管理センタを提供することを目的とする。」
c 「【0005】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため,本発明の第1の観点に係るプリペイド決済方法は,識別コードと資金の残高を含む残高データを各利用者について記憶するデータベースを残高管理元において管理し,取引時に利用者から取得した識別コードと,取引金額と,を含む取引データをショッピングサイトから前記残高管理元に供給し,前記残高管理元で,前記取引データにおける識別コードをキーとして前記データベースから該当する残高データを特定し,該残高データの残高を前記取引データにおける取引金額に基づいて更新する,ことを特徴とする。」
d 「【0008】前記識別コードは電話番号を含んでもよく,ショッピングサイトにおいて利用者からの取引要求を受け付けるとき,交換機から通知される発信元の電話番号を,前記利用者の識別コードとして取得してもよい。これにより,利用者が識別コードを入力する手間を省くことができる。」
e 「【0012】【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態に係るプリペイド決済システムを図面を参照して説明する。本発明の実施の形態に係るプリペイド決済システムのシステム構成図を図1に示す。図示されるように,このプリペイド決済システムは,入出金端末1と,電話機3と,残高管理センタ5と,ショッピングサイト7と,を備える。
【0013】入出金端末1は,コンビニエンスストア等の小売店に設置され,残高管理センタ5と通信回線により接続される端末である。・・・
【0014】入出金端末1は,利用者が入金を行う際に,利用者の電話番号(認証用電話番号),入金額(プリペイド金額),暗証番号等の入力を入力用端末等から受け付け,入力されたデータを所定の入金要求とともに残高管理センタ5に送信する。このとき入力される認証用電話番号は,利用者の認証に使用されるものであり,例えば,利用者が保有する携帯電話機の電話番号でもよく,また加入電話の電話番号等でもよい。・・・
【0015】電話機3は,利用者の操作に従ってショッピングサイト7に接続し,ショッピングに関する入力を行うためのものである。
【0016】残高管理センタ5は,各利用者の資金の管理等を行うコンピュータであり,例えば図2に示すように,認証用電話番号,残高,暗証番号等の情報を含む残高データを記憶する残高データベース51等を備える。・・・
【0017】残高管理センタ5は,入出金端末1から,入金要求とともに入金に関するデータ(認証用電話番号,入金額,暗証番号)を受信すると,そのうちの認証用電話番号をキーとして残高データベース51から該当する残高データを検出する。そして,該当する残高データの暗証番号と,受信した暗証番号の照合等を行い,残高に入金額を加算する。このとき,残高データベース51に該当する残高データが存在しない場合には,入出金端末1からの入力データに基づいて新たに残高データを作成して,残高データベース51に登録する。
【0018】また,残高管理センタ5は,入金要求の送信元の店舗の金融機関口座から残高管理センタ5の金融機関口座への入金額についての資金移動をバッチ又はリアルタイムで所定の決済機関に要求する。
【0019】また,残高管理センタ5は,ショッピングサイト7から,残高問い合わせ要求とともに認証用電話番号と暗証番号等のデータを受信すると,認証用電話番号をキーとして残高データベース51から該当する残高データを検出し,暗証番号の照合等を行った後,その残高データにおける残高をショッピングサイト7に送信する。また,残高管理センタ5は,ショッピングサイト7から,残高更新要求とともに認証用電話番号と金額等のデータを受信すると,認証用電話番号をキーとして残高データベース51から該当する残高データを検出し,その残高を受信した金額に書き換える。
【0020】また,残高管理センタ5(又は,ショッピングサイト7)は,残高管理センタ5の金融機関口座とショッピングサイト7の金融機関口座との間の商品等の代金についての資金移動をバッチ又はリアルタイムで所定の決済機関に要求する。
【0021】ショッピングサイト7は,商品又はサービスの購入要求を受け付けるためのコンピュータから構成され,例えば図3に示すような,認証用電話番号,各利用者から受け付けた注文内容(商品コード,数量,代金等)等の情報を含む取引データを記憶する取引データベース71等を備える。また,ショッピングサイト7は,電話機3との通信を行うための音声応答機能を備える。
【0022】ショッピングサイト7は,電話機3からの接続に応じて,例えば音声ガイダンスにより,認証用電話番号と暗証番号の入力を受け付け,入力されたデータを残高問い合わせ要求とともに残高管理センタ5に送信する。そして,残高管理センタ5から,先に送信した入力データに対応する残高の情報を受信して保持する。次に,ショッピングサイト7は,例えば音声ガイダンスにより,注文内容(購入対象の商品等の商品コード,数量,代金等)の入力を電話機3から受け付ける。商品の代金については,例えば,各商品等について商品コードと単価が対応付けられているテーブルを参照し,入力された商品コードと数量に基づいて代金を算出して求めても良い。ショッピングサイト7は,商品の代金が,先に取得した残高以下である場合に注文取引を成立させ,認証用電話番号と注文内容から取引データを作成して取引データベース71に登録するとともに,残高から代金を差し引いた金額を残高更新要求とともに残高管理センタ5に送信する。・・・」
f 「【0036】なお,電話機3はインターネット等を介して通信を行う機能を有する携帯電話機,携帯端末等を含んでもよい。そして,ショッピングサイト7は,電話機3からの要求をインターネットを介して受け付ける機能を有してもよい。例えば,インターネット機能を有する携帯電話機3aから商品の注文を行う場合での注文処理について説明する。まず,利用者は,携帯電話機3aからインターネット等を介してショッピングサイト7に接続し,ショッピングサイト7から,認証用電話番号と暗証番号の入力を要求する画面情報を受信し,表示部(図示せず)に表示する。利用者は,認証用電話番号と暗証番号を携帯電話機3aに入力し,携帯電話機3aは,入力されたデータをインターネット等を介してショッピングサイト7に送信する。ショッピングサイト7は,携帯電話機3aから受信した認証用電話番号と暗証番号を残高問い合わせ要求とともに残高管理センタ5に送信し,利用者の残高を取得する。次に,ショッピングサイト7は,注文内容の入力を要求する旨を表示する画面の情報をインターネット等を介して携帯電話機3aに送信する。
【0037】携帯電話機3aは,受信した画面情報を表示し,これに応じて,利用者は,商品の商品コード,数量,代金等の注文内容を入力する(代金はショッピングサイト7が求めるようにしてもよい)。携帯電話機3aは入力された取引データをショッピングサイト7に送信する。ショッピングサイト7は,取引データに基づいて,代金と残高を比較する残高チェックを行い,代金が残高以下である場合には注文取引を成立させる。そして,受け付けた注文内容と認証用電話番号から取引データを作成し,取引データベース71に登録する。そして,利用者の残高についての残高更新要求を残高管理センタ5に送信する。残高管理センタ5は,残高データベース51の該当する残高データを更新し,更新完了信号をショッピングサイト7に送信する。ショッピングサイト7は,注文の受付が完了した旨のメッセージを表示する画面の情報を携帯電話機3aに送信し,携帯電話機3aに表示させる。このようにして,携帯電話機3aからショッピングサイト7に商品等の注文を行うことができる。・・・」
g 「【0039】また,入金時において,例えば,利用者が無線通信機能を備えた携帯端末(携帯電話機を含む)に入金に関する情報を入力して,入力データを小売店の入出金端末1に送信し,現金をレジに渡すようにしてもよい。・・・
【0040】また,上記説明では,入金に関するデータとして,認証用電話番号と入金額と暗証番号の入力を受け付けているが,これに限定されず任意であり,例えば,認証用電話番号と入金額だけにしてもよい。
【0041】また,注文手段は上記説明に限定されず,他の手段により実現してもよい。例えば,利用者が商品等の注文を行う際,入金時に入出金端末1に入力した電話番号を持つ電話機・携帯電話機等を用いてショッピングサイト7にアクセスし,ショッピングサイト7は,発信者番号通知機能により発信元の電話番号を取得し,取得した電話番号を,残高問い合わせ要求とともに残高管理センタ5に送信するようにしてもよい。そして,残高管理センタ5は,受信した電話番号をキーとして残高データベース51から該当する残高データの残高を読み出してショッピングサイト7に供給してもよい。この場合,利用者による認証用電話番号の入力は不要である。」
h 「【0045】また,上記説明では電話番号をキーとして各利用者の資金を管理しているが,これに限定されず,識別可能な他のコードを用いてもよい。・・・」

イ 上記記載によれば,引用例1には,次の技術的事項が記載されている。
(ア)引用例1に記載された技術は,ショッピング等の支払に好適なプリペイド決済システムに関する技術であり(【0001】,【0012】),プリペイドカードを用いずにプリペイド決済を可能とすることを目的とした技術である(【0004】)。
(イ)引用例1に記載されたプリペイド決済システムは,入出金端末1と,電話機3と,残高管理センタ5と,ショッピングサイト7とを備える。電話機3には,インターネット等を介して通信を行う機能を有する携帯電話機,携帯端末等が含まれ,ショッピングサイト7には,電話機3からの要求をインターネットを介して受け付ける構成が含まれる(【0036】)。
(ウ)入出金端末1は,利用者が入金を行う際に,利用者の携帯電話機の電話番号,プリペイド金額等の入力を受け付け,入力されたデータを所定の入金要求とともに残高管理センタ5に送信する(【0014】)。また,携帯電話機等の電話機3は,利用者の操作に従ってショッピングサイト7に接続し,ショッピングに関する入力を行うためのものである(【0015】)。
(エ)残高管理センタ5は,電話番号,残高等の情報を含む残高データを記憶する残高データベース51を備える(【0016】)。残高データベース51には,入出時に入力された電話番号をキーとして残高データが登録されており,入出金端末1から,入金要求とともに入金に関するデータを受信すると,電話番号をキーとして残高データベース51から該当する残高データを検出し,残高に入金額を加算する(【0017】)。一方,ショッピングサイト7から,残高問い合わせ要求とともに電話番号等のデータを受信すると,電話番号をキーとして残高データベース51から該当する残高データを検出し,ショッピングサイト7に送信し,一方,ショッピングサイト7から,残高更新要求とともに電話番号と金額等のデータを受信すると,電話番号をキーとして残高データベース51から該当する残高データを検出し,その残高を受信した金額に書き換える(【0019】)。
(オ)ショッピングサイト7は,商品又はサービスの購入要求を受け付けるためのコンピュータから構成され,電話番号,各利用者から受け付けた注文内容(商品コード,数量,代金等)等の情報を含む取引データを記憶する取引データベース71を備える(【0021】)。また,電話機3から電話番号,注文内容等の入力を受け付け,入力されたデータを残高問い合わせ要求とともに残高管理センタ5に送信し,残高管理センタ5から残高の情報を受信し,各商品等について商品コードと単価が対応付けられているテーブルを参照して,入力された商品コードと数量に基づいて代金を算出し,商品の代金が,先に取得した残高以下である場合に注文取引を成立させ,残高から代金を差し引いた金額を残高更新要求とともに残高管理センタ5に送信する(【0022】)。
(カ)上記構成において,利用者が,携帯電話機3aからインターネット等を介してショッピングサイト7に接続し,電話番号等を入力してショッピングサイト7に送信すると,ショッピングサイト7は,携帯電話機3aから受信した電話番号等を残高問い合わせ要求とともに残高管理センタ5に送信し,利用者の残高を取得する(【0036】)。利用者が,携帯電話機3aから注文内容を含む取引データをショッピングサイト7に送信すると,ショッピングサイト7は,取引データに基づいて,代金と残高を比較する残高チェックを行い,代金が残高以下である場合には注文取引を成立させ,利用者の残高についての残高更新要求を残高管理センタ5に送信する。残高管理センタ5は,残高データベース51の該当する残高データを更新する。このようにして,携帯電話機3aからショッピングサイト7に商品等の注文を行うことができる(【0037】)。
(キ)さらに引用例1には,入金に関するデータとして,電話番号と入金額だけにしてもよいこと(【0040】),ショッピングサイトは,利用者からの取引要求を受け付けるとき,交換機から通知される発信元の電話番号(発信者番号通知機能)により発信元の電話番号を取得するようにしてもよいこと(【0008】,【0041】),及び残高管理センタは,受信した電話番号をキーとして残高データベースから該当する残高データの残高を読み出してショッピングサイトに供給してもよいこと(【0041】)が記載されている。

ウ 以上のことから,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「インターネット等にそれぞれ接続する残高管理センタ及びショッピングサイトと,インターネット等を介して通信を行う機能を有する携帯電話機,携帯端末を含む電話機を備える,プリペイド決済システムであって,
電話機は,利用者が購入を希望する商品の商品コード,数量,代金等の注文内容を入力すると,入力された注文内容をショッピングサイトに送信し,
残高管理センタは,入金時に使用された電話機の電話番号と残高とが対応づけられた残高データを記憶する残高データベースを備え,入出金端末から,入金要求とともに入金に関するデータを受信すると,電話番号をキーとして残高データベースから該当する残高データを検出し,残高に入金額を加算し,一方,ショッピングサイトから残高問い合わせ要求とともに電話番号を受信すると,電話番号をキーとして残高データベースから該当する残高データの残高を読み出してショッピングサイトに送信し,
ショッピングサイトは,各商品等について商品コードと単価が対応付けられているテーブルを備え,利用者からの取引要求を受け付けるとき,交換機からの通知により発信元の電話機の電話番号を取得し,電話機から注文内容及び電話番号を受信すると,残高問い合わせ要求とともに電話番号を残高管理センタに送信して利用者の残高を取得し,注文内容に基づいて代金を算出し,代金と残高を比較する残高チェックを行い,代金が残高以下である場合には注文取引を成立させ,残高から代金を差し引いた金額を残高更新要求とともに残高管理センタに送信し,
残高管理センタは,残高データベースに記憶される残高を,ショッピングサイトから受信した金額に更新し,残高データの更新完了信号をショッピングサイトに送信し,
ショッピングサイトは,注文の受付が完了した旨のメッセージを表示する画面の情報を電話機に送信する,
プリペイド決済システム。」

(4)対比
ア 本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明は,プリペイド決済システムであって,プリペイドカードを用いずにプリペイド決済を可能とすることを目的としたものであり,注文取引に用いられる価値情報は,「プリペイドの電子マネー」にほかならない。
引用発明の「インターネット等」,「携帯電話機,携帯端末を含む電話機」,「ショッピングサイト」,「残高データベース」,「購入を希望する商品の商品コード,数量,代金等の注文内容」,は,本願発明の「通信ネットワーク」,「ユーザ携帯端末」,「商品販売サイト」,「電子マネー残高記憶手段」,「購入を希望する商品を特定する商品特定情報」に相当する。
引用発明における「残高管理センタ」及び「ショッピングサイト」は,後記の点で相違するものの,それぞれ本願発明における「決済サーバ」及び「販売サーバ」に対応するものである。
引用発明は,インターネットを利用した「プリペイド決済システム」であって,電子マネーは,「プリペイドのネットワーク型電子マネー」ということができるから,本願発明と同様,「プリペイドのネットワーク型電子マネーを商品代金の決済に用いる電子商取引システム」ということができる。
これらのことから,引用発明と本願発明とは,「通信ネットワークにそれぞれ接続する決済サーバと,商品販売サイトを管理する販売サーバと,ユーザ携帯端末を備える,プリペイドのネットワーク型電子マネーを商品代金の決済に用いる電子商取引システム」である点で共通する。

(イ)引用発明における携帯電話機の「電話番号」と,本願発明におけるユーザ携帯端末の「機種固有情報」とは,いずれもユーザ携帯端末(携帯電話機)が備える固有の情報であって,ユーザ(利用者)を特定するための情報であるから,両者は,「ユーザ携帯端末の固有情報」である点で共通し,引用発明の「残高データベース」は,本願発明の「電子マネー残高記憶手段」に対応するものであるから,引用発明と本願発明とは,「電子マネーの購入時に使用されたユーザ携帯端末の固有情報を,電子マネーの残高と対応付けて記憶する電子マネー残高記憶手段を備える」点で共通する。

(ウ)引用発明の「購入を希望する商品の商品コード,数量,代金等の注文内容」は,本願発明の「購入を希望する商品を特定する商品特定情報」に相当し,電話機が注文内容を入力する手段を備えることは自明である。
引用発明のショッピングサイトは,電話機により利用者からの取引要求を受け付けるとき,交換機からの通知により発信元の電話番号を取得することから,実質的に,電話機がショッピングサイトに取引要求等を送信すると同時に,電話機から電話番号が自動送信されるということができる。
これらのことから,引用発明と本願発明とは,「ユーザ携帯端末」が,「商品販売サイトにて購入を希望する商品を特定する商品特定情報を入力する入力手段と,販売サーバに対して入力された商品特定情報を送信すると同時に該ユーザ携帯端末の固有情報を自動送信する送信手段とを備える」点で共通する。

(エ)引用発明の「残高管理センタ」は,「入金時に使用された電話機の電話番号と残高とが対応づけられた残高データを記憶する残高データベースを備え,ショッピングサイトから残高問い合わせ要求とともに電話番号を受信すると,電話番号をキーとして残高データベースから該当する残高データの残高を読み出してショッピングサイトに送信」する機能,及びショッピングサイトにおいて注文取引が成立し,ショッピングサイトから残高から代金を差し引いた金額が残高更新要求とともに送信されると,「残高データベースに記憶される残高を,ショッピングサイトから受信した金額に更新」する機能を備えることから,本願発明の「決済サーバ」が備える「販売サーバからユーザ携帯端末の固有情報を受信すると,電子マネー残高記憶手段から固有情報に対応する残高を取り出」す機能,及び「決済可能の場合に,電子マネー残高記憶手段に記憶される残高を,これから受信した販売価格を減じた値に更新する電子マネー残高更新手段」に相当する構成を備える。
一方,引用発明の「ショッピングサイト」は,「各商品等について商品コードと単価が対応付けられているテーブルを備え,利用者からの取引要求を受け付けるとき,交換機からの通知により発信元の電話機の電話番号を取得し,電話機から注文内容及び電話番号を受信すると,残高問い合わせ要求とともに電話番号を残高管理センタに送信して利用者の残高を取得し,注文内容に基づいて代金を算出し,代金と残高を比較する残高チェックを行い,代金が残高以下である場合には注文取引を成立させ,残高から代金を差し引いた金額を残高更新要求とともに残高管理センタに送信」する機能,及び「注文の受付が完了した旨のメッセージを表示する画面の情報を電話機に送信する」機能を備えることから,本願発明の「販売サーバ」が備える「販売商品の商品特定情報と価格とを対応付けて記憶する商品情報記憶手段」,「ユーザ携帯端末から購入希望の商品を特定する商品特定情報とともに,ユーザ携帯端末の固有情報を受信する購入申込受付手段」,「商品情報記憶手段を参照して商品の販売価格を算出し,この価格と固有情報を決済サーバに送信する」する機能,「決済可能あるいは決済不可の回答に応じた通知をユーザ携帯端末に送信する商品提供可否通知手段」に相当する構成を備えるとともに,「決済サーバ」が備える「残高が販売価格以上であれば決済可能と,販売価格未満であれば決済不可と回答する」機能を備える。
これらのことから,引用発明と本願発明とは,「決済サーバは,販売サーバからユーザ携帯端末の固有情報を受信すると,電子マネー残高記憶手段から固有情報に対応する残高を取り出す機能と,決済可能の場合に,電子マネー残高記憶手段に記憶される残高を,これから受信した販売価格を減じた値に更新する電子マネー残高更新手段とを備え」る点,「販売サーバは,販売商品の商品特定情報と価格とを対応付けて記憶する商品情報記憶手段と,ユーザ携帯端末から購入希望の商品を特定する商品特定情報とともに,ユーザ携帯端末の固有情報を受信する購入申込受付手段と,商品情報記憶手段を参照して商品の販売価格を算出し,この価格と固有情報を決済サーバに送信する機能と,決済可能あるいは決済不可の回答に応じた通知をユーザ携帯端末に送信する商品提供可否通知手段とを備え」る点,及び「決済サーバ又は販売サーバが,残高が販売価格以上であれば決済可能と,販売価格未満であれば決済不可と回答する機能を備え」る点で共通する。

イ 一致点及び相違点
(ア)以上のことから,本願発明と引用発明との一致点は,次のとおりである。
[一致点]
通信ネットワークにそれぞれ接続する決済サーバと,商品販売サイトを管理する販売サーバと,ユーザ携帯端末を備える,プリペイドのネットワーク型電子マネーを商品代金の決済に用いる電子商取引システムであって,
電子マネーの購入時に使用されたユーザ携帯端末の固有情報を,電子マネーの残高と対応付けて記憶する電子マネー残高記憶手段を備え,
前記ユーザ携帯端末は,
前記商品販売サイトにて購入を希望する商品を特定する商品特定情報を入力する入力手段と,
前記販売サーバに対して前記入力された商品特定情報を送信すると同時に該ユーザ携帯端末の固有情報を自動送信する送信手段とを備え,
前記決済サーバは,
前記販売サーバからユーザ携帯端末の固有情報と販売価格を受信すると,前記電子マネー残高記憶手段から前記固有情報に対応する残高を取り出す機能と,
決済可能の場合に,前記電子マネー残高記憶手段に記憶される残高を,これから前記受信した販売価格を減じた値に更新する電子マネー残高更新手段と
を備え,
前記販売サーバは,販売商品の商品特定情報と価格とを対応付けて記憶する商品情報記憶手段と,
前記ユーザ携帯端末から購入希望の商品を特定する商品特定情報とともに,前記ユーザ携帯端末の固有情報を受信する購入申込受付手段と,
前記商品情報記憶手段を参照して商品の販売価格を算出し,この価格と前記固有情報を前記決済サーバに送信する機能と,
決済可能あるいは決済不可の回答に応じた通知を前記ユーザ携帯端末に送信する商品提供可否通知手段と
を備え,
前記決済サーバ又は前記販売サーバは,残高が販売価格以上であれば決済可能と,販売価格未満であれば決済不可と回答する機能を備える,
電子商取引システム。」

(イ)また,本願発明と引用発明との相違点は,「機能」や「手段」の呼称は任意に決定できる事項であることを考慮すれば,実質的には,次のとおりである。
[相違点1]
本願発明は,「決済サーバ」が,「残高が販売価格以上であれば決済可能と,販売価格未満であれば決済不可と回答する機能」を備え,当該「決済可能あるいは決済不可の回答」を「販売サーバ」に送信するのに対し,引用発明は,「販売サーバ」であるショッピングサイト自体が,「残高が販売価格以上であれば決済可能と,販売価格未満であれば決済不可と回答する機能」を備える点。
[相違点2]
ユーザ携帯端末の「固有情報」が,本願発明は,ユーザ携帯端末の「機種固有情報」であるのに対し,引用発明は,ユーザ携帯端末(電話機)の「電話番号」である点。
[相違点3]
本願発明は,「電子マネー残高記憶手段に同一のユーザと対応づけられた残高を有する複数の電子マネーが記憶されている場合,決済の可否はこれら複数の電子マネーの残高の合算値と販売価格との比較によって判定する」に対し,引用発明は,「入出金端末から,入金要求とともに入金に関するデータを受信すると,電話番号をキーとして残高データベースから該当する残高データを検出し,残高に入金額を加算」し,決済の可否は,「電子マネーの残高と販売価格との比較によって判定する」,すなわち,「決済の可否は入金額が加算された電子マネーの残高と販売価格との比較によって判定する」点。
[相違点4]
「電子マネー残高記憶手段」が,本願発明は,「電子マネーの購入時に使用されたユーザ携帯端末の固有情報を,電子マネーの残高と対応付けて電子マネー毎に記憶する」に対し,引用発明は,「電子マネーの購入時に使用されたユーザ携帯端末の固有情報を,電子マネーの残高と対応付けて記憶する」ものの,「電子マネー毎に」記憶することは特定されていない点。

(5)判断
ア 相違点1について
(ア)プリペイドのネットワーク型電子マネーを商品代金の決済に用いる電子商取引システムにおいて,「決済サーバ」が,残高を管理するとともに,残高と販売価格とに基づき,決済可能か否かを判断する構成は,例えば,引用例2,3に記載されているように周知である。

[引用例2]
引用例2(特開2009-129080号公報)には,次の記載がある。
「【0041】ユーザ端末18からプリペイド番号を受信したオンライン通販処理部30は(S40),プリペイド番号及び代金情報を決済サーバ14に送信し,決済を依頼する(S42)。これを受けた決済サーバ14の決済処理部38は(図6のS80),電子マネーDB40から当該プリペイド番号の残高を取得し(S81),今回の代金と比較する(S82)。そして,代金以上の残高がある場合には(S83:Y),残高から代金分を差し引いた後(S84),決済完了の通知をモールサーバに送信する(S85)。これに対し,残高が代金に満たない場合には(S83:N),決済不可の通知がモールサーバに対して送信される(S86)。」

[引用例3]
引用例3(特開2005-250899号公報)には,次の記載がある。
「【0029】プリペイド決済装置30は,決済機関によって運用されるコンピュータである。プリペイド決済装置30は,利用者から予めプリペイド口座に支払われている資金の残高(以下,プリペイド残高という)の管理を行い,プリペイド残高の範囲において,ショッピングサイトで販売される商品の代金決済を行う。」
「【0041】・・・図3は,プリペイド決済装置30の機能ブロック図である。図3に示すように,プリペイド決済装置30は,プログラム記憶部301,利用者情報記憶部302,販売企業情報記憶部303,プリペイド残高記憶部304,支払残高記憶部305,利用者情報受信部311,決済要求受信部312,認証情報入力要求送信部313,認証情報受信部314,認証処理部315,認証要求送信部316,決済可否判断部317,決済可否送信部318,決済処理部319,補充処理部320,自払要求送信部321,支払処理部322,振込要求送信部323,設定情報更新部324を備えている。これらの機能部のうち,プログラム記憶部301,利用者情報記憶部(設定情報記憶部)302,販売企業情報記憶部303,プリペイド残高記憶部304,及び支払残高記憶部305は,プリペイド決済装置30が備えるメモリやハードディスクドライブなどの記憶装置に設けられる。その他の機能部は,プリペイド決済装置30のCPUがプログラム記憶部301に記憶されているプログラムを実行することにより実現される。
【0042】利用者情報記憶部302には,利用者IDや利用者の口座を特定する情報等が設定される後述の利用者情報が記憶される。販売企業情報記憶部303には,販売企業の企業IDや販売企業の口座を特定する情報等が設定される後述の販売企業情報が記憶される。プリペイド残高記憶部304には,利用者IDと対応付けて,利用者のプリペイド残高が記憶される。支払残高記憶部305には,販売企業の企業IDと対応付けて,販売企業に対して支払われるべき代金の残高(以下,支払残高という)が記憶される。
【0043】利用者情報受信部311は,利用者端末10から送信される利用者情報を受信し,受信した利用者情報を利用者情報記憶部302に登録する。
【0044】決済要求受信部312は,販売サーバ装置20から送信される決済要求を受信する。認証情報入力要求送信部313は,利用者ID及びパスワードの入力を要求する認証情報入力要求を利用者端末10に送信する。認証情報受信部314は,利用者端末10から認証情報入力要求に応じて送信される認証情報を受信する。認証処理部315は,認証情報受信部314が受信した認証情報に設定されている利用者IDとパスワードとを設定した認証要求を生成する。認証要求送信部316は,認証処理部315が生成した認証要求を認証サーバ装置40に送信する。認証処理部315は,認証サーバ装置40から認証要求に対する応答を受信し,利用者の認証が成功したかどうかの判断を行う。
【0045】決済可否判断部317は,決済要求受信部312が受信した決済要求に設定されている決済金額が,利用者のプリペイド残高以下であるかどうかによって,プリペイド決済を行うことができるかどうかを判断する。決済可否送信部318は,決済可否判断部317が判断した結果を利用者端末10や販売サーバ装置20に送信する。決済処理部319は,決済要求受信部312が受信した決済要求に設定されている決済金額に応じて,プリペイド残高記憶部304に記憶されている利用者のプリペイド残高を減額し,支払残高記憶部305に記憶されている販売企業の支払残高を増額する。」

(イ)上記のとおり,「決済サーバ」が,残高を管理するとともに,残高と販売価格とに基づき決済可能か否かを判断する構成が周知であったことからすれば,引用発明において,「残高が販売価格以上であれば決済可能と,販売価格未満であれば決済不可と回答する機能」を「販売サーバ」(ショッピングサイト)と「決済サーバ」(残高管理センタ)のいずれにおいて実行する構成とするかは,当業者が適宜選択できる設計事項というべきである。
相違点1は,格別のことではない。

イ 相違点2について
(ア)引用発明におけるユーザ携帯端末(電話機)の「電話番号」は,一般に電話機ごとに設定された情報であり,ユーザを認証し同定するために用いられる情報であるから,その機能からみて,本願発明における「機種固有情報」に相当する情報ということができる。
また,「機種固有情報」として,装置ごとのシリアル番号,機体ID等を用いることは,引用例3ないし6に記載されているように周知の技術手段である。

[引用例3]
引用例3(特開2005-250899号公報)には,次の記載があり,「メモリカード11のシリアル番号」は,ユーザ携帯端末の「機種固有情報」にほかならない。
「【0026】利用者端末10は,例えば,デスクトップ型のパーソナルコンピュータやゲーム機等の据え置き型のコンピュータ,あるいは,ノート型パソコンや携帯電話,PDA(Personal Digital Assistant)等の携帯機器である。利用者端末10は,メモリカード11に対するデータの読み書きを行うリーダライタ12を備えている。利用者端末10は,リーダライタ12を用いてメモリカード11に設定されているシリアル番号を読み出すことができる。本実施形態では,メモリカード11のシリアル番号を,利用者を特定する利用者IDとして用いる。・・・」

[引用例4]
引用例4(国際公開第01/97118号)には,次の記載があり,「携帯電話機メーカが携帯電話機を製造する際に製造番号や各携帯電話機固有の管理番号」である「キーコード」は,ユーザ携帯端末の「機種固有情報」にほかならない。
「キーコードは,携帯電話機メーカが携帯電話機を製造する際に製造番号や各携帯電話機固有の管理番号(サブスクライバID(識別子),機体ID,端末IDなどと呼ばれる)などをEEPROMのようなROM133に予めプログラムする。したがって,携帯電話番号は利用者12に固有のもので,携帯電話機13を買い換えた場合でも同じ携帯電話番号を登録することができる。ただし,利用者12自身は携帯電話番号を書き換えることはできず,利用者12の依頼に応じて携帯電話会社10が書き換えることになる。これに対し,キーコードは携帯電話機13に固有のものである。キーコードに製造番号を用いた場合,利用者12はもちろん,携帯電話会社10さえも書き換えることができない。キーコードに上述したサブスクライバIDのような管理番号を用いた場合,携帯電話会社10は書き換えることができるが,利用者12は書き換えることができない。」(16頁10行?20行)

[引用例5]
引用例5(特開2009-75985号公報)には,次の記載があり,「携帯電話10の供給メーカ出荷時に設定される製造番号」及び「携帯電話購入時に携帯電話サービスプロバイダーによって設定される固有番号」は,ユーザ携帯端末の「機種固有情報」にほかならない。
「【0025】図5はICチップ80が保持するデータの例を示す説明図である。同図(a)において61は携帯電話固有番号であり,携帯電話10の供給メーカ出荷時に設定される製造番号であってもよいし,携帯電話購入時に携帯電話サービスプロバイダーによって設定される固有番号であってもよく,あるいは,電子マネー利用登録時に電子マネー発行事業者によって採番,発行された番号でもよい。62は携帯電話購入時に決定される携帯電話番号である。63は電子マネー管理サーバの電話番号であり,あらかじめ携帯電話サービスプロバイダーによって設定される。これらは図8において後述するICチップ80の携帯電話固有番号等格納部85に格納される。」
「【0028】図7は同じく電子マネー管理サーバ7の前記入出金履歴マスタ55の記憶内容を示す説明図である。64は携帯電話固有番号インデックステーブルであり,65は入出金履歴テーブルである。携帯電話固有番号インデックステーブル64は携帯電話10毎に入出金履歴テーブル65へのポインターを記憶する。従って当該入出金履歴テーブル65は,携帯電話固有番号61毎に取引日付66,入金額67,出金額68及び残高69を記録する。」

[引用例6]
引用例6(特開2010-33546号公報)には,次の記載があり,「携帯電話機の個体識別情報」は,ユーザ携帯端末の「機種固有情報」にほかならない。
「【0084】・・・なお,カード情報記憶部9に,当該カード識別情報に対応づけて携帯電話機の個体識別情報を更に記憶させておき,当該携帯電話機からウェブサイトへのアクセスの際に,その携帯電話機の個体識別情報を取得することによって,カード識別情報の入力がなくてもその残高などを抽出することが出来る。つまり,プリペイドカード3を紛失した場合にはそのカード識別情報が分からないこともあるので,アクセスする携帯電話機をカード情報記憶部9に登録しておけば,カード識別情報が不明の場合であってもその残高を保護することが出来る。」

上記周知例に記載された「機種固有情報」のそれぞれの特徴は,当業者にとって周知であり,ユーザを認証し同定するためにいずれの「機種固有情報」を採用するかは,当業者が適宜選択できる事項である。

(イ)なお,請求人は,本願発明は,個人の特定が困難な「機種固有情報」のみである旨主張するが,当業者にとって各「機種固有情報」の特徴は,上記のとおり周知であるとともに,「機種固有情報」を1つ又は複数使用した場合の作用効果,例えば,ユーザを認証し同定するための情報として,1つの「機種固有情報」のみ使用した場合,複数の「機種固有情報」を使用する場合やパスワードと併用する場合と比較して処理が簡単になる等の作用効果を奏することは,当業者にとって自明である。
相違点2は,格別のことではない。

ウ 相違点3,4について
(ア)プリペイドの電子マネーを商品代金の決済に用いる電子商取引システムにおいて,プリペイドカードごとに残高の情報を記憶して決済に用いるシステムは,引用発明のように,残高に入金ごとの入金額を加算した残高の情報を記憶して決済に用いるシステムとともに周知である。(例えば,引用例1の段落【0002】参照。)

(イ)一方,引用例7には,「仮想プリペイドカードを用いた決済システムにおいて,電子マネー残高記憶手段に仮想プリペイドカードごとの残高を格納し,複数の仮想プリペイドカードの残高の合算値に基づいて決済を行う発明」が記載されており,当該発明は,上記プリペイドカードごとに残高の情報を記憶して決済に用いるシステムを,プリペイドのネットワーク型電子マネーを商品代金の決済に用いる電子商取引システムに適用したものということができる。
ここで,プリペイドのネットワーク型電子マネーを商品代金の決済に用いる電子商取引システムにおいて,電子マネー残高と取り引き金額との比較によって決済の可否を判定することは,技術常識であり,引用例7に記載されたものにおいても,当然,複数の仮想プリペイドカードの残高の合算値と取り引き金額との比較によって決済の可否を判定する処理が行われていると認められる。

[引用例7]
引用例7(特開2002-63517号公報)には次の記載がある。
「【請求項1】仮想プリペイドカードの発券者のサーバ装置と,仮想プリペイドカードの利用者のクライアント装置とを,ネットワークを介して通信可能に接続して構成された仮想プリペイドカード決済システムであって,上記サーバ装置は,仮想プリペイドカード毎に付与されたID番号と,仮想プリペイドカード毎の残高とを,相互に関連付けて格納する決済管理手段と,所定の通常発券条件が満たされた場合に,上記ID番号を発行し,このID番号と所定方法にて決定された仮想プリペイドカードの残高とを上記決済管理手段に格納する発券処理手段と,上記ID番号および取り引き金額を特定した仮想プリペイドカードの利用要求があった場合に,この特定されたID番号に対応する残高を上記決済管理手段から呼び出し,この残高の範囲内で上記取り引き金額の決済を行なう発券後利用処理手段と,を備えることを特徴とする仮想プリペイドカード決済システム。」
「【請求項7】上記サーバ装置は,発券済みの複数の仮想プリペイドカードのID番号を特定して,当該複数の仮想プリペイドカードの併合要求が行なわれた場合に,所定方法にて決定した併合後の仮想プリペイドカードのID番号と,所定方法にて決定した併合後の仮想プリペイドカードの残高とを,相互に関連付けて上記決済管理手段に格納し,
上記併合対象となる複数の仮想プリペイドカードの各々の残高を上記特定されたID番号に基づいて上記決済管理手段から呼び出し,これら残高から上記併合後の仮想プリペイドカードの残高を減算することにより,上記併合対象となる仮想プリペイドカードの残高を更新する併合処理手段,を備えたことを特徴とする請求項1?6のいずれか一つに記載の仮想プリペイドカード決済システム。」

(ウ)上記のとおり,プリペイドの電子マネーを商品代金の決済に用いる電子商取引システムにおいて,残高に入金ごとの入金額を加算した残高の情報を記憶して決済に用いるシステムとともに,プリペイドカードごとに残高の情報を記憶して決済に用いるシステムが周知であり,さらに引用例7には,プリペイドカードごとに残高の情報を記憶して決済に用いるシステムを,プリペイドのネットワーク型電子マネーを商品代金の決済に用いる電子商取引システムに適用した,「電子マネー残高記憶手段に仮想プリペイドカードごとの残高を格納し,複数の仮想プリペイドカードの残高の合算値に基づいて決済を行う発明」が記載されていることに鑑みれば,同様にプリペイドのネットワーク型電子マネーを商品代金の決済に用いる電子商取引システムである引用発明において,「入出金端末から,入金要求とともに入金に関するデータを受信すると,電話番号をキーとして残高データベースから該当する残高データを検出し,残高に入金額を加算し」,すなわち,入金ごとに,残高データベースに電話番号をキーとして格納された残高データの残高に入金額を加算し,利用者から取引要求があったとき,残高データベースから電話番号をキーとして残高を読み出して決済を行うことに換えて,引用例7に記載された発明の構成を採用し,入金ごとに,残高データベースに電話番号をキーとして「入金に関するデータ」(引用例7における「仮想プリペイドカード」に相当)を格納し,利用者から取引要求があったとき,残高データベースから電話番号をキーとして複数の「入金に関するデータ」を読み出し,その残高の合算値に基づいて決済を行う構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
この結果,残高データベースに,入金時に使用された電話機の固有情報である電話番号が,残高と対応付けて入金ごとに記憶され,残高データベースに同一の電話番号と対応付けられた残高を有する複数の「入金に関するデータ」が記憶されている場合,決済の可否はこれら複数の残高データの残高の合算値と代金との比較によって判定することとなること,すなわち相違点3及び相違点4に係る構成となることは,必然である。

(エ)なお,請求人は意見書において,引用例7に記載されたものは,合算機能を利用するためには,利用者による合算処理の要求及び複数のID番号の入力が必要になるのに対し,本願発明は,機種固有情報に基づいて自動的に合算される旨主張する。
しかしながら,引用発明は,ID番号の入力を必要とすることなく,電話番号をキーとして残高データベースから該当する残高データを取得して決済の可否を判断し決済を行うものであり,一方,プリペイドの電子マネーを商品代金の決済に用いる電子商取引システムにおいて,複数のプリペイドカードの残高の合算値に基づいて決済を行うことが一般に行われていることに鑑みれば,引用発明に引用例7に記載された上記発明を適用した場合,特段の事情がない限り,利用者による合算処理の要求やID番号の入力を必要とすることなく,電話番号をキーとして残高データベースから読み出された複数の残高の合算値に基づいて決済の可否を判断し決済を行う構成となることは明らかである。請求人の主張は採用できない。

エ そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本願発明の奏する作用効果は,引用発明及び引用例2ないし7に記載された発明ないし周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,本願発明は,上記拒絶理由のとおり,引用例1ないし7に記載された発明ないし周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-13 
結審通知日 2013-02-14 
審決日 2013-02-28 
出願番号 特願2010-49733(P2010-49733)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 雅士  
特許庁審判長 西山 昇
特許庁審判官 金子 幸一
清田 健一
発明の名称 電子商取引システムおよび電子商取引方法  
代理人 佐藤 壽見子  

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