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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01G 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A01G |
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管理番号 | 1273057 |
審判番号 | 不服2012-803 |
総通号数 | 162 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-06-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-01-16 |
確定日 | 2013-04-18 |
事件の表示 | 特願2001-257876「緑化用ユニットおよび緑化壁」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月 4日出願公開、特開2003- 61459〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成13年8月28日の出願であって,平成23年10月7日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成24年1月16日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?5に係る発明は,本願の出願当初の特許請求の範囲に記載されたとおりのものであるところ,請求項1に係る発明は以下のとおりのものである。 「【請求項1】 揚水性を有する板状部材と,受けた水を前記板状部材へ供給するための水受け用部材とを備えることを特徴とする緑化用ユニット。」(以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。) 第3 引用刊行物 (1)刊行物1 原査定の拒絶理由通知で引用した,本願出願前に頒布された刊行物である,特開平1-43140号公報(以下「刊行物1」という。)には,以下の記載がある(下線は当審にて付与。)。 (1a)「第1図に示す環境緑化調和装置1は,コンクリート製構造物2,すなわち,・・・各種道路両側に設けられた側壁,・・・飛行場,競技施設,堤防レジャー遊戯施設,都市建造物,家屋,煙突等の建造物の当該壁面等を形成する構造物2の壁面2aに対して,縦,横各方向にそれぞれ列設配置された所要数の耐水性を有する壁面保護部材3と,この壁面保護部材3に対し着脱可能に取付けられた含水性及び植物の根保持機能を有する植物植付用基体4と,この植物植付用基体4に植付けた例えば緑色の葉を有する植物5と,この植物5の外周を保護すべく植物5を外側から包むような状態で各隅部及び辺部を前記植物植付用基体4に取付けた保護部材6と,注液手段を構成する通水パイプ12とを有して構成されている。 前記壁面保護部材3は,例えばステンレススチール製材料により第1図及び第2図に示すように縦0.9m,横1.8m程度の長方形状に形成され,かつ同図において上下両辺部にL字状の突出辺部3a,3bを相対向配置に具備している。そして,両突出辺部3a,3bに通水用の孔7が任意個数穿設されている。また,この壁面保護部材3の底板部3cはボルト8により前記壁面2aに密接状態に取付けられている。 前記植物植付用基体4は,第2図にも示すように一方の側面に先端が尖った多数の突起部9aを有する合成樹脂製の板状体9と,この板状体9の突起部9aに一方の側面を嵌着した平板状で,かつ,含水性を有し植物5の根保持機能をも有する根保持体10とを具備している。この根保持体10としては,ロックウールの板状体,セラミックスの板状体等を用いることができる。 前記植物植付用基体4は,前記壁面保護部材3に対応させて縦0.8m,横1.7m程度の長方形状に形成され,この植物植付用基体4を壁面保護部材3に対しまずその上辺部を突出辺部3aの内側に挿入し,次いで下辺部を突出辺部3bの内側に挿入することにより,第2図に示すようにこの植物植付用基体4の上辺部と壁面保護部材3の突出辺部3aとの間に通水パイプ用スペース11が形成されるようになっている。 そして,このスペース11に第1図に示すような多数の通水孔12aを穿設した注液手段を構成する通水パイプ12を挿通配置し,この通水パイプ12に水や液体肥料を供給することにより,通水孔12aから根保持体10に給水または給液するようになっている。また,根保持体10から下方に流下する水または液体肥料は,前記突出辺部3bの孔7,さらには下段に配置されている壁面保護部材3の上側の突出辺部3aに設けられている孔7を流下して下段の植物植付用基体4に流れ込むようになっている。」(2ページ右上欄17行?3ページ左上欄10行) そうすると,刊行物1には以下の発明が記載されている。 「構造物2の壁面2aに対して,縦,横各方向にそれぞれ列設配置された壁面保護部材3と, この壁面保護部材3に対し着脱可能に取付けられた含水性及び植物の根保持機能を有する植物植付用基体4と, この植物植付用基体4に植付けた緑色の葉を有する植物5と, 注液手段を構成する通水パイプ12とを有する環境緑化調和装置1であって, 壁面保護部材3は,上下両辺部にL字状の突出辺部3a,3bを相対向配置に具備し, 両突出辺部3a,3bに通水用の孔7が任意個数穿設され, 植物植付用基体4は,含水性を有し植物5の根保持機能をも有する,ロックウールの板状体,セラミックスの板状体等の根保持体10を具備し, 根保持体10から下方に流下する水または液体肥料は,突出辺部3bの孔7,さらには下段に配置されている壁面保護部材3の上側の突出辺部3aに設けられている孔7を流下して下段の植物植付用基体4に流れ込むようになっている 環境緑化調和装置1。」 第4 対比・判断 (1)本願発明と刊行物1記載の発明との対比 本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると, 刊行物1記載の発明の「根保持体10」は,「ロックウールの板状体,セラミックスの板状体等」であるから板状であり,本願発明の「板状部材」に相当し, 刊行物1記載の発明の「突出辺部3b」は,その「孔7」,「さらには下段に配置されている壁面保護部材3の上側の突出辺部3aに設けられている孔7を流下して下段の植物植付用基体4に流れ込むようになっている」から,本願発明の「水受け用部材」に相当し, 刊行物1記載の発明の「環境緑化調和装置1」は,本願発明の「緑化用ユニット」に相当する。 したがって,両者は以下の点で一致している。 「板状部材と,受けた水を前記板状部材へ供給するための水受け用部材とを備える緑化用ユニット。」 そして,次の点で一応相違している。 <相違点> 板状部材が,本願発明では「揚水性を有する」のに対し,刊行物1記載の発明では「含水性を有」するものの「揚水性を有する」か不明である点。 (2)相違点についての検討・判断 そこで,上記相違点について検討する。 刊行物1記載の発明における「根保持体10」は含水性を有したロックウールの板状体とセラミックの板状体が例示されており,含水性を有したロックウールの繊維間や含水性を有したセラミックには水を保有する小さな隙間があることは明らかである。そして,そのような隙間があれば,表面の「濡れ」により水を吸い上げることも技術常識から明らかであるから,刊行物1記載の発明のロックウールの板状体やセラミックの板状体による根保持体10は揚水性を有するものであり,当該相違点は実質的に相違点ではない。 ここで,請求人は平成24年1月16日の審判請求書において,ロックウールは毛細管現象は生じないため,揚水性を有することはないと主張しているが,水耕栽培等で使用されるロックウールが毛細管現象を生じることは,例えば特開2000-23581号公報の【0016】段落,特開平9-56281号公報の【0012】段落,特開平4-8238号公報の3ページ左欄5行?7行に記載されていることからも明らかなように,当業者に周知である。 また,請求人は同請求書において,セラミックに関して,「毛細管張力を生じさせる連続気孔は含んでいるものの,鉛直方向に連続しておらず,揚水性を有しないものが多い。」として,添付資料(岡田清,他3名,”高揚水性レンコン型多孔質セラミックス材料の作成とその蒸発冷却効果”,日本ヒートアイランド学会論文集,2007,Vol.2,1?5ページ)の2ページ左欄11?13行の記載を挙げている。しかしながら,当該箇所の「セラミックスには乏しかった揚水能」との記載は揚水性がないことを意味しておらず,むしろ揚水性があることを示すものである。そしてこのことは,当該添付資料の3ページの図3における最も低い揚水高さでも15cm(0.15m)程度を示し,図4で「本資料」と比較している「久保田ら」の資料は60cm(600mm)程度の揚水高さを示しており,レンコン型多孔質セラミック材料である「本資料」には及ばなくても,揚水性があることからも明らかである。 よって,請求人の上記主張は採用できるものではない。 上記では上記相違点は実質的に相違点でない旨を示したが,仮に実質的に相違点であったとしても,上記例示したように含水性を有するロックウールとして毛細管現象による揚水性がある物は一般的に用いられているものであり,また,含水性を有するセラミックスとしても揚水性があるものが一般に使用されるものであるから,また,一般的に水を含むことができるセラミックスに揚水性があることも当業者に周知であるから,ロックウールの板状体やセラミックスの板状体等の「板状部材」を「揚水性を有する」ものとして本願発明の相違点に係る構成とすることは,当業者が容易に想到したことである。 そして,本願発明の作用効果も,刊行物1記載の発明から予測できる程度のものである。 4 まとめ したがって,本願発明は,刊行物1記載の発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。仮にそうでないとしても,本願発明は,刊行物1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第5 むすび 以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第1項第3号,または特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-02-14 |
結審通知日 | 2013-02-19 |
審決日 | 2013-03-07 |
出願番号 | 特願2001-257876(P2001-257876) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(A01G)
P 1 8・ 121- Z (A01G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 草野 顕子 |
特許庁審判長 |
鈴野 幹夫 |
特許庁審判官 |
高橋 三成 中川 真一 |
発明の名称 | 緑化用ユニットおよび緑化壁 |
代理人 | 一色国際特許業務法人 |