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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C12N
管理番号 1273086
審判番号 不服2009-10353  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-05-27 
確定日 2013-04-19 
事件の表示 特願2005-518651「重亜硫酸塩処理の改良された方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月12日国際公開、WO2004/067545、平成18年 7月 6日国内公表、特表2006-516391〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯・本願発明
本願は,平成16年1月28日を国際出願日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年1月29日 EP,2003年5月2日 EP)とする出願であって,その請求項6に係る発明は,平成24年9月14日付手続補正書の特許請求の範囲請求項6に記載された,以下のとおりのものである。

「核酸中のシトシン塩基が,重亜硫酸イオンの存在下でウラシル塩基に変換される反応における,5.25?5.75のpH値を有し,3 M?6.25 Mの濃度で重亜硫酸塩を含み,任意にヒドロキノンを含む溶液の75?90℃の反応温度での使用。」(以下,「本願発明」という。)

第2.引用例
1.引用例1
当審による拒絶の理由で引用文献1として引用された,本願優先日前の2001年に頒布された刊行物であるNucleic Acids Research, 29 (13), p.E65-1 - E65-7,2001(以下,「引用例1」という。)には,下記の事項が記載されている。

(i)「重亜硫酸塩ゲノムシークエンシングは1塩基解明のメチル化マップを作成する方法である。その方法は,重亜硫酸塩処理によるシトシンからウラシルへの選択的脱アミノ化及びそれに続くPCR産物のシークエンシングに基づく。シトシンとは対照的に,5メチルシトシンは重亜硫酸塩と反応せず,それゆえに区別することができる。その方法の最適化の可能性を探り,決定的な実験パラメーターを決定するために,我々は,インキュベーション時間及び温度の脱アミノ化への影響を決定し,重亜硫酸処理の間のDNA分解の程度を測定した。」(第1頁要旨第1行?第14行)

(ii)「脱アミノ化。脱アミノ化ステップのために,2種類の異なる濃度の重亜硫酸ナトリウム溶液が使用された。最初に,以前の研究と比較できる結果を得るために溶液I(3.87-4.26M HSO_(3)^(-))が用いられた。シトシン脱アミノ化の反応速度論は重亜硫酸塩濃度に依存するので,飽和重亜硫酸溶液(溶液II)が続く実験で用いられた。溶液I:4.05gの重亜硫酸ナトリウム(ACS試薬グレードSigma S-8890)は強く振とうすることなく8mlの水に溶解させ,400μlの10M NaOHを用いて最終pHが5.0に調整された。ヒドロキノン(0.22g;Sigma H-9003)が10mlの水に溶解され,この溶液の500μlが亜硫酸溶液に追加され,以前に最適なものとして決定された最終濃度10mMとした(18)。重亜硫酸ナトリウムを完全に溶解した後,容量は10mlに合わせられ,溶液は,0.45μmのフィルター膜を通した。」(第2頁左欄下から3行?右欄第14行)

(iii)「脱スルホン化。 DNAはQIAexII(Qiagen)あるいはWizard DNAクリーンアップシステム(Promega)のいずれかを用いて製造者により提供されたプロトコールに従い脱塩化,pH8の1mM Tris-Cl 110μlに溶解させた。この溶液100μlは3M NaOH溶液11μlと混合され,37℃で20分間インキュベートした。」(第2頁右欄第27行?第32行)

(iv)「表1 重亜硫酸塩-ヒドロキノン溶液を用いた,シトシン脱アミノ化率と,インキュベーション温度及び時間との関係の要約」と表題し,温度が0,15,35,55,80,85,95℃に対する,インキュベーション時間1,4,18時間の評価結果が示されており,温度80℃で1時間において,シトシン脱アミノ化率が92.69±9.22であるという結果が示されている。(第3頁Table 1)

(v)「この一連の実験の結果は,重亜硫酸溶液Iを用いて得られた。これに続く全ての実験は,飽和重亜硫酸溶液IIが用いられた。」(第4頁左欄第17行?第20行)

(vi)「これらの条件でDNAはずっとより早く分解することから,温度を95℃に上げることは十分量のDNAがある場合にのみ推奨される。」(第5頁右欄第12行?第15行)

(vii)「DNA分解は時間と共に増加するから,インキュベーション時間を可能な限り短くすることは自明であり,24時間以上の反応についてはそれ以上調べなかった。」(5頁右欄下から第6行?下から第4行)

引用例1の記載事項(v)より,(iv)のTable1に示された結果は,溶液Iを用いて得られた結果といえる。

2.引用例2
当審の拒絶の理由で引用文献2として引用された,本願優先日前の1995年に頒布された刊行物であるAnalytical Biochemisty,226, p.161-166,1995(以下,「引用例2」という。)には,下記の事項が記載されている。

(i)「重亜硫酸法はDNAを指数関数的に増幅するポリメラーゼ連鎖反応の能力を利用した5メチルシトシンマッピングへの感受性の高いアプローチである。」(第161頁要旨第1行?第4行)

(ii)「これらのデータは,ビスルファイト処理中に生じるDNA分解が大部分酸性のpHに起因することを示している。
テンプレート分解の問題はpH,温度及び反応時間の3つの変数を操作することで克服し得る。我々は,増加されたpH及びより低い温度で重亜硫酸反応を試みたが,脱アミノ化効率が著しく低下する結果となった。」(第163頁右欄第2行?第11行)

3.引用例3
当審の拒絶の理由で引用文献3として引用された,本願優先日前の1994年に頒布された刊行物であるNucleic Acids Research,22(15), p.2990-2997,1994(以下,「引用例3」という。)には,下記の事項が記載されている。

(i)「この方法において,重亜硫酸ナトリウムが5メチルシトシンが反応しない条件下で1本鎖DNAにおいてシトシン残基をウラシル残基に変換するのに用いられた。」(第2990頁要旨第9行?第12行)

(ii)「溶解した亜硫酸塩のモル数(3.0-4.0M)及び試験した溶液のpH範囲(4.8-5.8)はPCR増幅にあまり影響しなかった。」(第2993頁左欄第2?4行)

(iii)「酸性のpHで脱プリン化が増幅されるから,PCR増幅に先立ってウラシル残基からSO_(3)付加物を除去するため重亜硫酸処理DNA溶液を強アルカリで調製する際にランダムな鎖破壊が起こり得る。」(第2993頁左欄第13行?第17行)

第3 対比・判断
1.本願発明
本願明細書段落【0019】には,「本発明の方法によって,相対的に短い反応時間の重亜硫酸塩反応が可能になり,DNAアッセイを1作業日で行う可能性が提供される。反応を速める1つのパラメータは温度である。DNA分解過程を減少させるために,低いpH値が有利である。5.5のpH値の5 M重亜硫酸塩溶液をおよそ80℃の温度で使用することにより,例えば120?180分の間の反応時間が可能である。さらに,本発明の条件下の反応は,標準条件下で,16時間後のような5-メチルシトシンと比較して,よりシトシンに特異的である。ヒドロキノンのような,重亜硫酸塩試薬の安定化のための添加物が可能である。」(下線は,合議体が付与した。)と記載され,また,本願発明の「3M?6.25Mの濃度で重亜硫酸塩を含み」という条件を満たす実施例(段落【0036】?【0052】)においては,本願発明の条件を満たす「T=80℃ pH5.5」を,「T=50℃ pH=5.0」(「標準条件」)と比較していることから,本願発明は,従来法「T=50℃ pH=5.0」に比して主に温度を高めることで,反応時間を短縮できたことに基づく発明といえる。

2.対比
本願発明と引用例1に記載された事項とを比較すると,引用例1の溶液IのHSO_(3)^(-)の濃度3.87-4.26M は,本願発明の3 M?6.25 Mの範囲に含まれるから,引用例1の溶液Iは,本願発明の「3 M?6.25 Mの濃度で重亜硫酸塩を含み,任意にヒドロキノンを含む溶液」に相当し,また,引用例1の80℃のインキュベーション温度(記載事項(iv))は,本願発明の「75?90℃の反応温度」に相当するから,両者は,
「核酸中のシトシン塩基が,重亜硫酸イオンの存在下でウラシル塩基に変換される反応における,特定のpH値を有し,3 M?6.25 Mの濃度で重亜硫酸塩を含み,任意にヒドロキノンを含む溶液の75?90℃の反応温度での使用。」という点で一致する。

ここで,引用例1記載の溶液Iは,その調製方法からみて(記載事項(ii)参照),最終的な溶液の濃度を測定してpH=5.0と決定したものではないことから,pH値が正確には「5.0」とまではいえないにせよ,5.0程度といえる。
したがって,本願発明のpHが「5.25?5.75」であるのに対し,引用例1に記載された方法では5.0程度である点,で両者は相違する。

3.判断
化学反応において,その実験条件を調節し最適化を試みることは,本願優先日当時の当業者にとって自明の技術的課題である。実際に,引用例1においては,シトシンの脱アミノ化工程における,温度及び時間の最適条件の探索がなされている(Table.1)。そして,引用例1には,その実験条件としてpH値についても明記されているのだから,引用例1に接した当業者であれば,シトシンをウラシルに変換する化学反応において,インキュベーション温度80℃の脱アミノ化工程における最適なpHを探索することを目的として,pHについても,高めたり低めたりと調節しようとすることは,自然な発想である。
したがって,引用例1に記載の,核酸中のシトシン塩基をウラシル塩基に変換するための,80℃における脱アミノ化反応において,より適したpH値を探索することを目的として、重亜硫酸塩溶液のpHを,5.0から,それより多少高められた5.25?5.75程度に変更することは,当業者が容易に想到し得たことである。
また,引用例1には,DNAの分解という技術的課題が示されているところ((vi)(vii)参照),重亜硫酸塩を用いたシトシンのウラシル化という同じ技術分野に属する引用例2,3には,pHが低いことで鋳型となるDNAの切断がなされることが言及され(引用例2の記載事項(ii),引用例3の記載事項(iii)),さらには,pHを検討するという技術思想も開示されているのであるから(引用例2の記載事項(ii),引用例3の記載事項(ii)),引用例1?3に接した当業者であれば,シトシンのウラシルへの変換反応において,望ましくない現象である,鋳型となるDNAの切断を減じることを目的として,pHを多少高めて5.25?5.75程度とすることは,容易に想到することであるともいえる。
そして,pHをそのように高めることによる,「5.25?5.75」という範囲全般で,引用例1,あるいは,引用例1?3より,予測しない顕著な効果を奏するとは認められない。

したがって,本願発明は,引用例1に記載された発明,あるいは,引用例1?3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.請求人の主張
審判請求人は,平成21年8月5日付け審判請求書の手続補正書の請求の理由において,以下の主張をしている。

(1)「本発明の方法の条件でシトシン塩基をウラシル塩基に変換する反応を行うと,該変換反応の特異性が向上します。即ち,本願明細書段落0047?0052に記載されているように,段落0050のpH=5.5,T=80℃,t=2時間の条件(本発明の方法の条件に含まれる)で5'-T5CMeT5-3'を5Mの重亜硫酸塩と反応させると,5'-T11-3'に変換される(所望されない副反応)割合が,約2.9%(表4の試料1の値を用いて計算した:2.65/[89.9+2.65])であったのに対して,段落0048のpH=5.0,T=50℃,t=16時間の条件(本発明の方法の条件に含まれない)で5'-T5CMeT5-3'を5Mの重亜硫酸塩と反応させると,5'-T11-3'に変換される割合が,約5.9%(表3の試料1の値を用いて計算した:5.20/[82.4+5.20])でした。従って,本発明の方法で規定する条件では,そうでない条件に比べて,副反応の割合が低下している(特異性が向上している)といえます。これは,本発明の格別の効果であり,文献1には開示も示唆もされていません。」

しかしながら,引用例1においては,既に本願発明と同じ80℃の条件による脱アミノ化反応が開示されているから,本願明細書に比較の対象として記載されている50℃による反応に比して本願発明が特異性が高いという実験結果をもって,引用例1記載の発明と若干pHが異なる本願発明が,引用例1記載の発明と比較して特異性が向上していると認めることはできない。さらに,明細書に記載される上記の特異性に関する実験結果は,反応時間が,2時間(本願発明),及び16時間(比較例)と,顕著に異なるのであって,時間の条件を発明特定事項に含まない本願発明の有利な効果を参酌するための実験としては適さないものである。

(2)「本願の実施例では,オリゴヌクレオチドを重亜硫酸塩と反応させ,得られた不完全に変換されたオリゴヌクレオチド,副産物,および完全に変換されたオリゴヌクレオチドをHPLCで分離し,ピーク下面積の%を測定します(段落0047?0052)。従って,変換効率,副産物生成効率が定量的に得られます。
一方,文献1では,重亜硫酸塩処理による変換効率は,直接決定されず,代わりに,PCR増幅が行われ,PCR産物がクローニングされ,配列決定されます。このPCR増幅は,プライマー内のシトシンがウラシルに変換された場合に増幅が生じるプライマーを使用するため(2頁左欄9?13行),完全に変換されたDNA分子のみが増幅され,濃縮されます。また,文献1では,55℃(4-18時間)や95℃(1時間)の条件では,DNAが84?96%も分解されます。従って,文献1の方法では,変換されていないものと変換されたものとの比を正確に求めることはできず,文献1からは,特異性は得られません。
従って,文献1の特異性を,本願の実施例で得られる特異性と比較することはできません。従って,文献1は,前記(3)でご説明した本発明の効果を開示も示唆もしていないといえます。」

確かに,シトシンのウラシルへの変換効率を測定する手法に関し,本願明細書に記載の手法(HPLC)と引用例1記載の手法(PCR増幅及びそれに続く配列決定)は異なるものの,シトシンのウラシルへの変換効率を測定する手段が異なることにより両者を比較できないことをもって,本願発明が引用例より有利な効果を奏すると推認することはできない。

(3)平成20年11月25日付け意見書に添付して提出した比較実験データを示し,「このように,文献1に記載されていない温度で比較的短時間反応させることによって,シトシンの高い変換効率が得られ,所望されない分解反応が抑えられているのが,本発明の方法なのであります。このような本発明の効果は,予想外のものであり,文献1には開示も示唆もされていません。」と主張している。

本願発明は,時間条件が特定されていないが,当該比較実験データをみると,例えばt=1hでは,本願発明の実施例(pH=5.5)に対応するS1及びS2が,本願発明の範囲外であるpH=5.0に比して,ウラシルへの変換効率が低いことが具体的に示されている。したがって,当該データをもって,本願発明が有利な効果を奏するとは認められないことは明らかである。さらにいえば,S1及びS2と,S3及びS4とは,シトシンのウラシルへの変換反応における重要な因子である重亜硫酸ナトリウムの濃度,及びハイドロキノンの濃度が顕著に異なることから,そもそも,pHの相違による本願発明の有利な効果を実証するための実験として,不適切である。

(4)「文献1には,DNAの分解に関連する感度の問題を,DNAまたは細胞全体をアガロースに包埋することによって解決した旨記載されています(5頁右欄22?25行)。
従って,文献1は,感度の問題を,本願とは全く異なる方針で解決することを示唆するものであり,温度を上昇させ,反応時間を短くすることによって,高いシトシン-ウラシル変換効率を得た本発明の解決手段は,文献1からは全く予測されないものであります。」

しかし,例え引用例1において,請求人の指摘するような記載があったとしても,繰り返し述べるように,本願発明と,同じ温度条件が引用例1には記載され,かつ本願発明は反応時間の特定がなされていないのだから,本願発明が,温度を上昇させ,反応時間を短くすることによって,高いシトシン-ウラシル変換効率を得たという請求人の主張は採用することができない。


さらに,審判請求人は,平成24年9月14日付け意見書において,以下の点についても主張している。

(1)「このように,引用文献1の表1のような一定の傾向が全く見られないデータについては信頼性に疑義が生じ,このようなデータに基づいては,この表1で測定されていない条件ではどのような変換効率になるかは全く予測できず,本発明に係る反応条件について何ら示唆されることはありません。」,「従って,55℃で4h,55℃で18h,95℃で1hの3つの条件に非常に高い変換効率を示す条件として当業者は選択し,他の条件の検索の動機付けはないものと思料します。」

しかし,引用例1の表1には,80℃による反応が具体的に記載されているのだから,表1に示される実験結果のうち,55℃で4h,55℃で18h,及び,95℃で1hの3つの条件が最適であることが示され、また表1全体が一定の傾向を有していないとしても,通常の創作性を備えた当業者であれば,80℃における変換反応において「第3.3.」で述べたように,pHを多少高める程度のことは容易に想到し得たことである。

(2)「引用文献2には,pH5.0よりpHを上げ,温度を下げると変換効率がかなり下がったことが開示されています(163頁右欄7?11行)。この部分には,さらに
「これらの変数を変更すると脱アミノ化の効率がかなり減少した」
と記載されています。してみると,引用文献1に引用文献2を適用するとすれば,当業者にとってpHを5.0より上げることは強く阻害され,ましてや,pHを上げることが動機付けられるとは到底言えません。」

請求人の指摘する箇所の記載をみると,pHを上げ,温度を下げると脱アミノ化効率がかなり下がったことが記載されているものの,これは,pHのみを上げた条件での結果を示すものとはいえないし,引用例2には,DNAの断片化が主に酸性pHによることが,実験結果(Fig.2)を示しながら言及されているのだから,引用例2の,テンプレート分解の問題はpH,温度及び反応時間の3つの変数を操作することで克服し得るという記載(記載事項(ii))と合わせて考えれば,当業者は,pHを多少高める程度のことは,試みることといえる。

(3)「引用文献3には,重亜硫酸塩反応のpHが4.8?5.8では,PCR増幅の効率に大きな効果はなかったと記載されており(2993頁左欄2?4行),・・・(略)・・,引用文献3の上記開示は,本発明に係るpH範囲(pH=5.25?5.75)で,pHを変化させても変換効率は,ほとんど変わらないことを示唆しているところ,引用文献2の前記の記載を考慮すると,当業者としてpHを5より高くすることの動機付けは生じません。」

しかし,PCR増幅の効率に大きな効果がなかったという引用例3の記載は,効率が全く変化しなかったことを意味するわけでもないから,引用例3のpHが4.8?5.8の範囲で重亜硫酸塩反応を行うとの記載にふれた当業者であれば,少しでも変換効率を高められることを期待しながら,pHの範囲を調節することは試みるといえる。

よって、請求人の主張は採用できない。

5.小括
したがって,本願発明は,引用例1に記載された発明,又は,引用例1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

第5.むすび
以上のとおりであるから,本願請求項6に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので,他の請求項に係る発明については検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。
よって,結論の通り審決する。
 
審理終結日 2012-11-26 
結審通知日 2012-11-27 
審決日 2012-12-10 
出願番号 特願2005-518651(P2005-518651)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松原 寛子深草 亜子  
特許庁審判長 鵜飼 健
特許庁審判官 田中 晴絵
鈴木 恵理子
発明の名称 重亜硫酸塩処理の改良された方法  
代理人 細田 芳徳  

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