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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02J 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J |
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管理番号 | 1273132 |
審判番号 | 不服2011-27342 |
総通号数 | 162 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-06-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-12-19 |
確定日 | 2013-04-17 |
事件の表示 | 特願2009-502716「電気エネルギを発生させるためのシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月 4日国際公開、WO2007/111546、平成21年 9月 3日国内公表、特表2009-532014〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、2006年3月29日を国際出願日とする出願であって、平成20年9月25日付けで特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出され、平成20年11月19日付けで特許法第184条の4第1項に規定する翻訳文が提出され、平成22年5月31日付けで拒絶理由が通知され、平成22年11月8日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年8月23日付けで拒絶査定がなされ、平成23年12月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に同日付けで特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、さらに、当審において平成24年6月14日付けで書面による審尋がなされ、平成24年9月12日付けで回答書が提出されたものである。 第2.平成23年12月19日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成23年12月19日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正 (1)本件補正の内容 平成23年12月19日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成23年11月8日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1の下記(a)を、下記(b)と補正するものである。 (a)本件補正前の特許請求の範囲 「 【請求項1】 海中に配置された複数の発電装置集合体(4a?6c)および海中に配置された複数の開閉装置(1a?1c)を含み、各開閉装置(1a?1c)が複数の前記発電装置集合体(4a?4c)に接続されて成る、再生可能なエネルギ源から電気エネルギを発生させるためのシステムであって、前記システムは複数の1次中間ステーション(17a?17c)および少なくとも1つの2次中間ステーション(19;19a?19c)を含み、各1次中間ステーション(17a?17c)は複数の前記開閉装置(1a?1c)に接続され、前記複数の1次中間ステーション(17a?17c)の少なくとも一部が海中に配置され、少なくとも1つの2次中間ステーション(19;19a?19c)は複数の前記1次中間ステーション(17a?17c)および陸上電気ネットワークに接続され、前記2次中間ステーション(19;19a?19c)の少なくとも1つが海中に配置され、前記システムは少なくとも1つの2次中間ステーション(19;19a?19c)を電気ネットワーク内の種々の場所(193、194、195;213、214、215)に選択的に接続することを可能にする開閉手段(192、212)を含むことを特徴とする、システム。」 (b)本件補正後の特許請求の範囲 「 【請求項1】 海中に配置された複数の発電装置集合体(4a?6c)および海中に配置された複数の開閉装置(1a?1c)を含み、各開閉装置(1a?1c)が複数の前記発電装置集合体(4a?6c)に接続されて成り、前記発電装置集合体(4a?6c)の少なくとも一部が波、風、または水流によって動力を供給される、再生可能なエネルギ源から電気エネルギを発生させるためのシステムであって、前記システムは複数の1次中間ステーション(17a?17c)および少なくとも1つの2次中間ステーション(19;19a?19c)を含み、各1次中間ステーション(17a?17c)は複数の前記開閉装置(1a?1c)に接続され、前記複数の1次中間ステーション(17a?17c)の少なくとも一部が海中に配置され、少なくとも1つの2次中間ステーション(19;19a?19c)は複数の前記1次中間ステーション(17a?17c)および陸上電気ネットワークに接続され、前記2次中間ステーション(19;19a?19c)の少なくとも1つが海中に配置され、前記システムは少なくとも1つの2次中間ステーション(19;19a?19c)を電気ネットワーク内の種々の場所(193、194、195;213、214、215)に選択的に接続することを可能にする開閉手段(192、212)を含み、前記1次中間ステーション(17a?17c)の各々および前記2次中間ステーション(19;19a?19c)の各々は水密コンテナ(171、172)を含み、前記水密コンテナは複数のステーション構成要素(173?179)を収容し、前記複数のステーション構成要素(173?179)は、整流器、インバータ、制御および統制システム用の機器、変圧器、リレー保護装置、測定システム用の機器、および、信号システム用の機器、からなる群に属する複数の電気的構成要素を含むことを特徴とする、システム。」(なお、下線は、請求人が補正箇所を明示するために付した。) (2)本件補正の目的 本件補正は、請求項1について、本件補正前の発明特定事項である「発電装置集合体」について「少なくとも一部が波、風、または水流によって動力を供給される」との限定を付加するとともに、「1次中間ステーションの各々および2次中間ステーションの各々」について「水密コンテナを含」むとの限定を付加し、さらに、「水密コンテナ」について「複数のステーション構成要素を収容し、複数のステーション構成要素は、整流器、インバータ、制御および統制システム用の機器、変圧器、リレー保護装置、測定システム用の機器、および、信号システム用の機器、からなる群に属する複数の電気的構成要素を含む」との限定を付加する補正を含むものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 2.本件補正の適否についての判断 本件補正における特許請求の範囲の補正は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 2.-1 引用文献 (1)引用文献の記載 原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特表2005-531707号公報(以下、「引用文献」という。)には、例えば、次のような記載がある。 (ア)「【0107】 図1は、本発明に係る波力装置の原理を示す。浮体3は海面2に浮くように構成される。波は往復上下運動を浮体3に伝える。リニア発電機5は、底が固定された台板8を介して海底に固定される。台板はコンクリート製とすることができる。リニア発電機のステータ6a、6cは台板8に固定される。ステータは四つの垂直柱状積層スタックから成り、そのうちの二つだけが図示されている。発電機のロータ7は積層スタック間に配設され、ケーブル4によって浮体3に接続される。ロータ7は永久磁石を材料とする。 【0108】 台板8は中心に配置された穴10を有し、これと同心状に底凹所9が海底に形成される。凹所9は適切にライニングすることができる。引張りばね11が凹所9の下端に固定され、ばねの他端はロータ7の下端に取り付けられる。台板8の穴10及び凹所9の直径は、ロータ7がその中を自由に移動できるようにする。 【0109】 各積層スタック6a、6cは複数のモジュールから構成される。図示した例では、積層スタック6aは、それが縦方向に配設された三つのモジュール61、62、63にいかに分割されるかを示すように印が付いている。 【0110】 海面2の波の運動のため、浮体3が上下に移動すると、この動きはケーブル4を介してロータ7に伝達され、したがってそれは積層スタック間で同等の往復運動を獲得する。したがってステータ巻線に電流が発生する。凹所9は、ロータが下降運動時にステータ全体を通過することを可能にする。引張りばね11は、ケーブル4が常にピンと張った状態に維持されるように、下降運動に力を加える。 【0111】 ばねはまた、特定の状況で上向きの力を与えることもできるように設計することもできる。ばねのばね率は、できるだけ多くの時間に共振が実現されるように、制御手段28によって制御することができる。 【0112】 ステータは、塩水に耐えることができるように、完全に又は部分的にVPI又はシリコンを含浸させることができる。 【0113】 図2は、図1の線II-IIに沿った断面図である。この例では、ロータ7は正方形断面を持ち、積層スタック6a?6dはロータ7の各辺に配設される。12a?12dはそれぞれの積層スタックの巻線を表わす。各積層スタックのプレートの向きも図から明らか である。ロータと隣接する積層スタックとの間の空隙は数mm程度である。 【0114】 対応する断面図で、図3は、ロータ7の横断面が八面体の形状であり、したがって積層スタックの数が8個である代替実施形態を示す。 【0115】 ロータの横断面の形状は任意の数の辺を持つ多角形とすることができることを理解されたい。多角形は正多角形であることが好ましいが、必ずしもそうである必要は無い。ロータは円形にすることもできる。積層スタックをロータの周囲全体で様々な方向に向けて配設することによって、できるだけ多くの磁界が電流を誘導するために利用される。 【0116】 図4は、積層スタックの一つのモジュール61を斜視図で示す。該モジュールは、ボルト14によって一つに保持され、巻線12用のスロット15を設けた、階層状のプレート13から成る。極間距離a、すなわち巻線層間の距離は、特定のステータの長さに対してできるだけ多くの極を得、それによって誘導電流に高い周波数を得るために、できるだけ小さくする必要がある。実用的に適切な極間距離は約8mmであり、スロット幅は約4mmであり、したがってプレートの歯の幅も4mmである。 【0117】 積層スタックは、一つ又はそれ以上のそのようなモジュールから構成することができる。各モジュールは、図4に示すように、通常複数の極を有する。しかし、各モジュールに極が一つしか無いモジュールも選択肢である。 【0118】 ステータ巻線12は、図5に示すように、様々な積層スタック6a?6dに共通することができる。 【0119】 図6は、各積層スタックが個別の巻線を有する代替例を示す。この図は、二つの極を持つモジュールを示す。 【0120】 巻線の絶縁は、塩水に耐性を持つ一つの層を含み、それは最高6kVまでの電圧に耐えることができる。この層は、PVC又は類似物のようなポリマとすることができる。代替的に、エナメル線を使用することができる。導体はアルミ二ウム又は銅から構成される。 【0121】 空隙をできるだけ小さくすることができるように、ロータ7の運動は注意深く規制することが重要である。リニア発電機の略断面図である図7は、これを単純かつ信頼できる方法でいかに実現できるかを示す。この場合、ロータは、隅を面取りした正方形の横断面を有する。各隅にガイド16a?16bが配設される。各ガイドは、その下端を台板8(図1参照)に固定され、積層スタック6a?6dと平行に縦方向に上向きに延在する。4個のガイドはロータの運動の厳密に中心を合わせた規制を確実にする。 【0122】 代替実施形態を図8に示す。この場合、ロータ7は、その中を長手方向に貫通する中央の方形穴を持ち、そこに中央ガイド16が配設される。 【0123】 図1に示した発電機は、ロータより約2倍の長さのステータ部を有する。図9は、代わりにロータ7がステータ6の約2倍の長さである代替実施形態を示す。 【0124】 本発明に係る波力プラントは、二台又はそれ以上の上記の型の装置から構成される。図10は、これらがいかに連結されて給電網にエネルギを供給するかを示す。図示した例では、発電プラントは20a-20cで象徴的に示す3台の装置から構成される。各装置は遮断機又は接触器21及び整流器22を介して、図ではバイポーラ接続でインバータ23に接続される。装置20aの回路図だけが示されている。他の装置20b、20cが同様の仕方で接続されることは理解されるであろう。インバータ23は、おそらく変圧器24及び/又はフィルタを介して、三相電流を給電網25に供給する。整流器は、制御することができ、IGBT型、GTO型、又はサイリスタ型とすることができ、制御バイポーラ部品を含むダイオード、あるいは制御できないダイオードとすることができる。 【0125】 DC側の電圧は、並列もしくは直列で、又はそれらを組み合せて接続することができる。」(段落【0107】ないし【0125】) (イ)「【0136】 図20は、連結された幾つかの発電機20、20b、20cを有する波力プラントを示す。整流器が各発電機に配設され、DC電流は、海底に配設されたケーブル39を介して、インバータ23、変圧器24、及びフィルタ41を装備した陸上のステーションに伝送され、そこから電力は配電又は送電網に供給される。 【0137】 図21は、本発明の別の有利な実施形態を示す基本レイアウトスケッチである。開閉所は、海底Bに載置して配設される。開閉所101は、例えばコンクリート製とすることができるハウジング102及び底板103によって形成される水密容器から成る。開閉所101は海底Bに固定される。複数の波力装置の発電機104?109は開閉所に接続される。 【0138】 各波力装置104?109は、ハウジング102の引込み線を介して開閉所内の構成要素に接続されるケーブル110?105によって、開閉所101と電気的に接続される。電圧は各装置から低電圧の直流又は交流電圧として供給される。 【0139】 開閉所101の構成要素は従来型であり、図には示さない。これらの構成要素は変圧器だけでなく、半導体、変換器、遮断機、測定装置、リレー保護、サージダイバータ、及び他の過電圧保護装置、接地手段、負荷連結器又は断路器をも含むことができる。 【0140】 開閉所は、送電ケーブル116を介して、好ましくは高電圧の送電直流又は交流電圧を供給する。交流電圧は低周波数を持ち、三相又は多相とすることができる。50又は60Hzの標準周波数を使用することもできる。 【0141】 受電低電圧は、開閉所の変圧器によって送電高電圧に変換される。開閉所の変換器又はインバータは、DC-AC変換又はその逆の変換に必要なときに使用される。 【0142】 電圧は、おそらく中間所を介して陸上に位置する受電所に供給され、給電網に送り出される。 【0143】 図22は、複数は発電装置がシステムに含まれる場合に得策な本発明に係るシステムの一例を示す。この図は、鳥瞰図で示したシステムの象徴的な表現であり、図の左側に海洋領域Hを、右側に陸上領域Lを示す。図の左側の構成要素は部分的に水面下に配置され、部分的に水面上に配置される。 【0144】 システムは、第一群の発電装置104a?106a、第二群の発電装置104b?106b、及び第三群の発電装置104c?106cを含む。第一群の発電装置104a?106aは水中ケーブルを介して、水面下に位置する第一開閉所111aに接続される。同様に、他の二群の発電機104b?106b及び104c?106cは、第二開閉所111b及び第三回閉所111cにそれぞれ接続される。開閉所101a?101cの各々は、水中ケーブル116a?116cを介して、同じく水面下に位置する中間所117に接続される。電圧は中間所117から低周波三相交流電圧として水中ケーブル118を介して、陸上に位置する受電所119に伝送される。電圧は受電所で50又は60Hzのような標準周波数に変換される。 【0145】 発電装置と中間所との間の距離は1キロメートルから数十キロメートルまでに及ぶことがある。システムが図22に示すように構成された場合、片側の開閉所及び中間所から反対側の中間所及び受電所までの距離は最適化することができる。 【0146】 発電装置から陸上の受電所までの伝送は、様々な電圧変換器により様々な方法で行なうことができる。図23ないし26は、これの幾つかの例を概略的に示す。各例で、発電装置は図の左側に、陸上Lの受電所は右側に配設される。121は変換器/インバータを表わし、122は昇圧器を表わす。図23及び24で、発電装置は直流電圧を供給し、それは図23では交流電圧として陸上に伝送され、図24では直流電圧として伝送される。 【0147】 図25及び26で、発電装置は交流電圧を供給し、それは直流電圧に変換される。図25でそれは陸上に交流電圧として伝送され、図26では直流電圧として伝送される。 【0148】 本発明の範囲内で他の多くの代替例が実現可能である。例えば、図27に示した型の全波整流器を使用することができる。 【0149】 エネルギ貯蔵装置及びフィルタも各開閉所101、及び/又は中間所117に収容することができる。エネルギ貯蔵装置は例えばバッテリ、コンデンサ、SMES型、フライホイール、又はそれらの組合せから構成することができる。フィルタは、変換器と同様に可動部品を含むことができる。受動LCフィルタ、及びフライホイール変換器又は同期コンデンサのような電子機械的部品も可能である。」(段落【0136】ないし【0149】) (2)引用文献記載の事項 上記(1)(ア)、(イ)及び図面の記載から、以下の事項が分かる。 (ウ)図22から、発電装置(104a?c、105a?c、106a?c)及び開閉所(101a?c)は海中に配置されていることが分かる。 (エ)システムに含まれる発電装置(104a?c、105a?c、106a?c)は波力装置であり、波力は再生可能なエネルギ源であるから、 発電装置(104a?c、105a?c、106a?c)の少なくとも一部が波、風、または水流によって動力を供給される、再生可能なエネルギ源から電気エネルギを発生させるためのシステムであることが分かる。 (3)引用発明 上記(1)(ア)、(イ)及び図面の記載、並びに、(2)(ウ)及び(エ)から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「 海中に配置された複数の発電装置(104a?c、105a?c、106a?c)および海中に配置された複数の開閉所(101a?c)を含み、各開閉所(101a?c)が複数の前記発電装置(104a?c、105a?c、106a?c)に接続されて成り、前記発電装置(104a?c、105a?c、106a?c)の少なくとも一部が波、風、または水流によって動力を供給される、再生可能なエネルギ源から電気エネルギを発生させるためのシステムであって、中間所117は複数の前記開閉所101に接続され、前記中間所117の少なくとも一部が水面下に配置され、中間所117は陸上の送電網に接続されたシステム。」 2.-2 対比・判断 本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明における「発電装置(104a?c、105a?c、106a?c)」は、その機能及び構成からみて、本願補正発明における「発電装置集合体」に相当し、以下同様に、「開閉所(101a?c)」は「開閉装置」に、「システム」は「システム」に、「中間所117」は「1次中間ステーション」に、「水面下」は「海中」に、「陸上の送電網」は、「陸上電気ネットワーク」に、それぞれ相当する。また、引用発明における「中間所117は陸上の送電網に接続され」た態様と、本願補正発明における「2次中間ステーション」は「陸上電気ネットワークに接続され」た態様は、「中間ステーションは陸上電気ネットワークに接続され」た態様という限りにおいて相当する。 したがって、両者は、 「 海中に配置された発電装置集合体および海中に配置された複数の開閉装置を含み、各開閉装置が複数の前記発電装置集合体に接続されて成り、前記発電装置集合体の少なくとも一部が波、風、または水流によって動力を供給される、再生可能なエネルギ源から電気エネルギを発生させるためのシステムであって、1次中間ステーションは複数の前記開閉装置に接続され、前記1次中間ステーションの少なくとも一部が海中に配置され、中間ステーションは陸上電気ネットワークに接続されたシステム。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) (1)本願補正発明においては、システムは複数の1次中間ステーションおよび少なくとも1つの2次中間ステーションを含み、少なくとも1つの2次中間ステーションは複数の1次中間ステーションおよび陸上電気ネットワークに接続され、2次中間ステーションの少なくとも1つが海中に配置されるのに対して、引用発明においては、システムは1次中間ステーションは含んでおり、1次中間ステーションが陸上電気ネットワークに接続されているものの、複数の1次中間ステーションおよび少なくとも1つの2次中間ステーションを含む構成を有しているか不明な点(以下、相違点1という。)。 (2)本願補正発明においては、システムは少なくとも1つの2次中間ステーションを電気ネットワーク内の種々の場所に選択的に接続することを可能にする開閉手段を含むのに対して、引用発明においては、そのような構成であるか不明な点(以下、相違点2という。)。 (3)本願補正発明においては、1次中間ステーションの各々および2次中間ステーションの各々は水密コンテナを含み、水密コンテナは複数のステーション構成要素を収容し、複数のステーション構成要素は、整流器、インバータ、制御および統制システム用の機器、変圧器、リレー保護装置、測定システム用の機器、および、信号システム用の機器、からなる群に属する複数の電気的構成要素を含むのに対して、引用発明においては、そのような構成であるか不明な点(以下、相違点3という。)。 相違点について検討する。 (1)相違点1について 複数の発電装置集合体を多段層に構成して接続することで、システム全体の出力レベルを高めることは、当業者に良く知られた一般的な周知の技術(例えば、特開2006-32501号公報(特に、段落【0038】、【0039】、【0069】ないし【0071】等を参照。)等を参照のこと。以下、「周知技術」という。)であることを参酌すれば、引用発明において、上記周知技術を適用して、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。 なお、審判請求人は審判請求書において、特開2006-32501号公報に記載された発明は、発電装置を直列に接続したものであり、発電装置の集合体の域を出ていない旨主張しているが、段落【0069】ないし【0071】の記載を参酌すると、太陽光発電システム90は、第1、第2の太陽電池サブモジュール群4a、4bを並列接続して複数の太陽電池モジュール40を構成し、太陽電池モジュール40同士が並列接続されてストリング91が構成され、パワーコンディショナー95にストリング91が並列接続された構成であり、複数の発電装置集合体を多段層に構成していることは明らかであるから、請求人の上記主張は認められない。 (2)相違点2について 複数の発電装置により構成されたシステムにおいて、複数の発電装置から発電した電力を電気ネットワーク内の種々の場所に選択的に接続することで電力を供給する開閉手段を設けることは常套手段(例えば、特開2004-44508号公報(特に、段落【0019】ないし【0021】及び、【0029】等参照。)等を参照のこと。以下、「常套手段」という。)であることを参酌すれば、引用発明において、上記常套手段を適用して、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に推考し得るものである。 (3)相違点3について 引用文献の段落【0137】には、「開閉所は、海底Bに載置して配設される。開閉所101は、例えばコンクリート製とすることができるハウジング102及び底板103によって形成される水密容器から成る。」と記載されており、図22には、中間所117(中間ステーションに相当)が海中に配置されていることが示されているのであるから、中間ステーションが水密コンテナを含むことは、当業者であれば容易に想到し得ることである。また、引用文献の段落【0146】には、「発電装置は図の左側に、陸上Lの受電所は右側に配設される。121は変換器/インバータを表わし、122は昇圧器を表わす。図23及び24で、発電装置は直流電圧を供給し、それは図23では交流電圧として陸上に伝送され、図24では直流電圧として伝送される。」と記載されており、発電装置と陸上の受電所の間に配置された中間所(中間ステーションに相当)は、インバータや変圧器を含むことが示されており、且つ、「整流器、インバータ、制御および統制システム用の機器、変圧器、リレー保護装置、測定システム用の機器、および、信号システム用の機器」は発電装置のシステムとして一般的な構成であるので、それらの群に属する複数の電気的構成要素を含むようにすることは、当業者が適宜行い得ることである。 また、本願補正発明を全体として検討しても、引用発明、引用文献に記載された事項、上記周知技術及び上記常套手段から予想される以上の格別の効果を奏するとも認められない。 以上から、本願補正発明は、引用発明、引用文献に記載された事項、上記周知技術及び上記常套手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 1.本願発明 前記のとおり、平成23年12月19日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年11月8日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲並びに、出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1(第2.の[理由]の1.(1)(a)【請求項1】)に記載された事項により特定されたとおりのものである。 2.引用文献の記載内容 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献(特表2005-531707号公報)記載の発明(引用発明)は、第2.の[理由]2.-1(3)に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記第2.の[理由]1.(2)で検討した本願補正発明から、「発電装置集合体の少なくとも一部が波、風、または水流によって動力を供給される」及び、「1次中間ステーションの各々および前記2次中間ステーションの各々は水密コンテナを含み、前記水密コンテナは複数のステーション構成要素を収容し、前記複数のステーション構成要素は、整流器、インバータ、制御および統制システム用の機器、変圧器、リレー保護装置、測定システム用の機器、および、信号システム用の機器、からなる群に属する複数の電気的構成要素を含む」との限定を省いたものに相当する。 そして、本願発明にさらに他の構成要件を付加した本願補正発明が、前記第2.の[理由]2.-2に記載したとおり、引用発明、引用文献に記載された事項、上記周知技術及び上記常套手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、相違点3についての検討が不要となるほかは、同様の理由により、引用発明、上記周知技術及び上記常套手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、上記周知技術及び上記常套手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-10-11 |
結審通知日 | 2012-10-16 |
審決日 | 2012-11-30 |
出願番号 | 特願2009-502716(P2009-502716) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H02J)
P 1 8・ 121- Z (H02J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石川 晃 |
特許庁審判長 |
大河原 裕 |
特許庁審判官 |
槙原 進 川口 真一 |
発明の名称 | 電気エネルギを発生させるためのシステム |
代理人 | 臼井 尚 |
代理人 | 吉田 稔 |
代理人 | 仙波 司 |
代理人 | 田中 達也 |
代理人 | 鈴木 泰光 |