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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F
管理番号 1273194
審判番号 不服2012-1254  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-23 
確定日 2013-04-25 
事件の表示 特願2006-118227「液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月 8日出願公開、特開2007-292879〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年4月21日の特許出願であって、平成23年6月1日付けの拒絶理由の通知に応答して手続補正がされたが、同年9月30日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成24年1月23日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審による同年11月29日付けの拒絶理由の通知に応答して、平成25年1月30日に手続補正がされるとともに意見書が提出されたものである。

第2 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。) は、平成25年1月30日に補正された本願の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「マトリクス状に配置された画素部を有する液晶表示装置において、
前記画素部に、通常のトランジスタと、データ信号配線と画素電極に接続されていない予備トランジスタとを設け、前記予備トランジスタのチャネル幅のサイズは、前記通常のトランジスタのチャネル幅のサイズより小さく、前記予備トランジスタ全体が、前記画素部へのデータ信号の書き込みを制御するゲート信号配線上に配置されていることを特徴とする液晶表示装置。」

第3 引用例の記載事項
当審による拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開平3-239230号公報(以下「引用例」という。)には、以下の1ないし8の記載がある。
1 「2.特許請求の範囲
1.絶縁性基板上にマトリクス状に形成された絵素電極と、該絵素電極に電気的に接続されたスイッチング素子と、該絵素電極に絶縁状態で近接する予備スイッチング素子と、を有するアクティブマトリクス基板であって、
該予備スイッチング素子が該基板上で占める面積が、該スイッチング素子が該基板上で占める面積より小さいアクティブマトリクス基板。」(1欄4?12行)

2 「(産業上の利用分野)
本発明は、液晶等の表示媒体と組み合わせて表示装置を構成するためのアクティブマトリクス基板に関し、特に、点欠陥修正のための予備スイッチング素子を備えたアクティブマトリクス基板に関する。」(1欄14?19行。下線は審決にて付した。以下同様。)

3 「(実施例)
本発明を実施例について以下に説明する。
第1図に本発明のアクティブマトリクス基板の一実施例の平面図を示す。絶縁性基板上に並行する多数のゲートバス配線1が形成され、ゲートバス配線1に交差して多数のソースバス配線2が形成されている。ゲートバス配線1及びソースバス配線2に囲まれた領域には、絵素電極5が形成されている。ゲートバス配線1のソースバス配線2との交点近傍から、ソースバス配線2に沿ってゲートバス支線8が分岐している。ゲートバス支線8上にはTFT3及び予備TFT4が形成されている。」(7欄16行?8欄8行)

4 「予備TFT4のゲートバス支線8の延設方向の長さは、TFT3のそれの2分の1に設定されている。また、TFT3及び予備TFT4の幅は等しいので、予備TFT4がこの基板上で占める面積は、TFT3がこの基板上で占める面積の2分の1となる。」(8欄8?13行)

5 「TFT3及び予備TFT4のソース電極はソースバス配線2に接続されている。TFT3のドレイン電極は絵素電極5に電気的に接続されている。予備TFT4のドレイン電極には、該ドレイン電極のゲートバス支線8の延設方向の幅と同じ幅の予備パッド6が電気的に接続されている。予備バッド6には、該予備パッド6より幅の小さい接続パッド7が電気的に接続されている。接続パッド7には絵素電極5が絶縁膜を挾んで重畳されている。従って、予備TFT4と絵素電極5とは電気的には接続されていない。」(8欄14?9欄4行)

6 「このような構成により、絵素電極5はTFT3のみによって駆動される。」(9欄4?5行)

7 「絵素欠陥がTFT3のON不良によって生じている場合には、接続バッド7と絵素電極5との重畳部にレーザ光を照射し、接続パッド7と絵素電極5との間に位置する絶縁膜を破壊する。絶縁膜が破壊されると、接続バッド7が絵素電極5に電気的に接続され、従って、予備TFT4は絵素電極5に電気的に接続される。このような接続により、絵素欠陥を生じている絵素電極5は予備TFT4によって駆動される。絵素欠陥がTFT3のOFF不良によって生じている場合には、上述のON不良の場合と同様に予備TFT4が絵素電極5に接続され、更にTFT3と絵素電極5との間が切断される。この切断は、例えば第1図のA-A’線に沿ってレーザ光を照射することにより行われる。以上のようにして、絵素電極5は予備TFT4のみによって駆動されることになる。」(9欄8行?10欄4行)

8 「正常なTFT3はゲートバス配線1のON信号により、所定の時間ON状態となる。TFT3がON状態となると、ソースバス配線2から映像信号が絵素電極5に印加される。」(10欄11?15行)

9 上記3で言及されている図1は次のとおりである。


第4 引用発明の認定
1 上記「第3 2」によれば、上記「第3 1」記載のアクティブマトリクス基板と液晶等の表示媒体とが組み合わされて表示装置が構成される。

2 上記「第3 3」によれば、TFT3及び予備TFT4は、ゲートバス配線1から分岐したゲートバス支線8上に形成されている。

3 上記「第3 5」によれば、予備TFT4は、ソースバス配線2と接続されており、絵素電極5と接続されていない。

4 上記「第3 8」によれば、ソースバス配線2は、絵素電極5への映像信号の書き込みを制御しているといえる。

5 上記「第3 7」及び「第3 8」によれば、TFTが正常なときは、TFTが絵素電極を駆動し、TFTが不良なときは、予備TFTが絵素電極を駆動する。

以上のことから、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「絶縁性基板上にマトリクス状に形成された絵素電極と、該絵素電極に電気的に接続された該絵素電極を駆動するTFTと、該絵素電極に絶縁状態で近接する予備TFTと、を有するアクティブマトリクス基板であって、
該予備TFTは、ソースバス配線と接続されており、該絵素電極と接続されておらず、
該TFT及び該予備TFTは、該絵素電極への映像信号の書き込みを制御するゲートバス配線から分岐したゲートバス支線上に形成されており、
該予備TFTの該ゲートバス支線の延設方向の長さは、該TFTの該ゲートバス支線の延設方向の長さの2分の1であり、
該TFTが正常なときは、該TFTが該絵素電極を駆動し、該TFTが不良なときは、該予備TFTが絵素電極を駆動する、アクティブマトリクス基板と、
液晶等の表示媒体とが組み合わされて構成された表示装置。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
1 引用発明の「アクティブマトリクス基板と、液晶等の表示媒体とが組み合わされて構成された表示装置」は、本願発明の「液晶表示装置」に相当する。

2 引用発明において、「絶縁性基板上にマトリクス状に形成された絵素電極」及び「TFT」を含み、絵素のマトリクス状の集合で画像を表示するための「絵素部」として把握できる部分は、本願発明の「マトリクス状に配置された画素部」に相当する。

3 引用発明の「絵素電極を駆動するTFT」、「ソースバス配線」、「絵素電極」、「『絵素電極と接続されていない』『該絵素電極に絶縁状態で近接する予備TFT』」及び「絵素電極への映像信号の書き込みを制御するゲートバス配線」は、それぞれ、本願発明の「通常のトランジスタ」、「データ信号配線」、「画素電極」、「画素電極に接続されていない予備トランジスタ」及び「画素部へのデータ信号の書き込みを制御するゲート信号配線」に相当する。

4 一般に、TFTにおける、ソース、ドレインの間の2つの電極間の電流通路をチャネルと称することに照らせば、引用例の図1において、予備TFT4のソースバス配線2と予備パッド6の間の部分であって、ゲートバス支線の延設方向に延びる部分がチャネルに相当するから、引用発明の「予備TFTのゲートバス支線の延設方向の長さ」は、「チャネル幅のサイズ」といえる。
よって、引用発明の「予備TFTのゲートバス支線の延設方向の長さは、TFTの該ゲートバス支線の延設方向の長さの2分の1であり」は、本願発明の「予備トランジスタのチャネル幅のサイズは、通常のトランジスタより小さく」に相当する。

してみると、本願発明と引用発明とは、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点1>及び<相違点2>で相違する。
<一致点>
「マトリクス状に配置された画素部を有する液晶表示装置において、
前記画素部に、通常のトランジスタと、画素電極に接続されていない予備トランジスタとを設け、前記予備トランジスタのチャネル幅サイズは、通常のトランジスタより小さい液晶表示装置。」

<相違点1>
本願発明は、予備トランジスタがデータ信号配線に接続されていないのに対して、引用発明は、予備トランジスタ(予備TFT)がデータ信号配線(ソースバス配線)に接続されている点。

<相違点2>
本願発明は、予備トランジスタ全体が、ゲート信号配線上に配置されているのに対して、引用発明は、予備トランジスタ(予備TFT)が、ゲート信号配線(ゲートバス配線)から分岐したゲートバス支線上に形成されており、その全体が、ゲート信号配線上に配置されているものではない点。

第6 判断
<相違点1>及び<相違点2>について検討する。
1 <相違点1>について
画素部に設ける予備トランジスタとして、接続データ信号配線に接続しないものを採用することは、本願出願前に周知の技術事項であり、その例として、原査定で引用された特開2002-182246号公報及び特開平8-271930号公報を挙げることができる。
特に、特開2002-182246号公報の
「【0184】一方、予備TFT717のドレイン電極端子717a及びソース電極端子717bはどこにも接続されていない。これは、予備TFT717がデータバスライン715及び画素電極719に接続されていると、ゲートバスライン712とデータバスライン715及び画素電極719との間に大きな負荷容量(Cqs)が発生して、表示品位の劣化の原因となるためである。」
との記載、及び
特開平8-271930号公報の
「【請求項3】複数本形成する前記ソース電極のうちの隣接する一対の間にドレイン電極を1本設け、さらにソースバスラインと接続されていないソース電極と該表示画素電極と接続されていないドレイン電極から構成される従の薄膜トランジスタを並設することを特徴とする請求項1の薄膜トランジスタの製造方法。」、
「【0063】(実施例3)実施例1と同様の膜構成ながら、図13に示すように、ドレイン電極(10)をソース接続電極(9) に接続した2本のソース電極(7) 、(8) で挟んだ構造の薄膜トランジスタを一画素当り3個設け、その内一番ソースバスライン(4) に近い主の薄膜トランジスタ(23)のみの2本のソース電極(7) 、(8) とドレイン電極(10)をそれぞれソースバスライン(4)及び表示画素電極(15)に接続しておき他の従の薄膜トランジスタ(24)のソース・ドレイン電極は電気的に絶縁した状態にして作成した。」
との記載参照。

よって、引用発明において、本願発明の<相違点1>に係る構成を備えることは、当業者が、周知の技術事項に基づいて容易に想到し得たことである。

2 <相違点2>について
(1) 液晶表示装置の画素部を駆動するTFTの全体が、ゲート信号配線上に配置された構成は、本願出願前に周知であって、例えば、以下のアないしウの文献を挙げることができる。
ア 特開平9-61842号公報
同公報には、「【0019】次に、本液晶表示装置の駆動方法を説明する。共通電極23には、外部より一定電圧Vcを印加する。ゲート配線24には、外部より1定周期のパルス波形を有する走査信号Vgを入力する。このパルス信号が入力された時、このゲート配線上のTFT20はオン状態となる。」との記載があり、同公報の図1を見ると、TFT20とそれにつながるソース電極9aとドレイン電極9b、つまりTFT20の全体が、ゲート配線24上にある。

イ 特開平11-119253号公報
同公報には、「【0017】・・・TFT1は、ゲート配線2上に形成されている。」との記載があり、同公報の図1を見ると、TFT1は、ゲート配線2の幅内に納まっている。

ウ 特開平2-205358号公報
同公報の第1図を見ると、ソース電極12とドレイン電極13に接続する部分を有する半導体14、すなわちTFTは、ゲート配線10の幅内に納まっている。

(2) 引用発明における、TFTが不良なときは絵素電極を駆動し、絵素電極に近接する予備TFTを、絵素電極の近傍のどこに配置するかは設計事項であるところ、上記(1)をかんがみれば、予備TFTの全体を、ゲートバス配線上に配置することは、当業者が、適宜なし得たことである。

3 まとめ
上記1及び2によれば、引用発明において、本願発明の<相違点1>及び<相違点2>に係る構成を備えることは、当業者が、周知の技術事項に基づいて容易に想到し得たことである。
また、該構成を備えることによる効果は、当業者が予測し得る程度のものである。
したがって、本願発明は、当業者が、引用発明及び周知の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 請求人の主張について
請求人は、平成25年1月30日に提出した意見書において、次の主張をしている。
「6.拒絶理由(C)について
本願発明は、例えば、図1、2、4、7等に示すように、予備トランジスタ全体をゲート配線上に配置し、予備トランジスタのドレイン電極Dやソース電極Sがゲート配線領域外の画素領域内にはみ出さないように配置するものであります。これにより、不良が生じた画素のみ予備トランジスタを画素電極に接続することで、予備TFTを設けたことに伴う全体の画素領域の開口率の減少を最小限にするという格別の効果を奏することができます。」

なお、本願発明は、「予備トランジスタのチャネル幅のサイズは、通常のトランジスタのチャネル幅のサイズより小さく」と特定されているが、本願の図1、2、4、7には、両トランジスタのチャネル幅のサイズが同じものが記載されており、本願発明に対応するのは、本願の図17(a)、図17(b)、図18の右側部分である。

しかしながら、引用発明において、本願発明の<相違点1>及び<相違点2>に係る構成を備えた際には、本願発明と同様の効果を奏するものと認められる。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

第7 むすび
したがって、本願発明は、当業者が、引用発明及び周知の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-20 
結審通知日 2013-02-26 
審決日 2013-03-11 
出願番号 特願2006-118227(P2006-118227)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 右田 昌士  
特許庁審判長 江成 克己
特許庁審判官 小松 徹三
星野 浩一
発明の名称 液晶表示装置  
代理人 特許業務法人はるか国際特許事務所  
代理人 特許業務法人はるか国際特許事務所  
代理人 小野寺 洋二  
代理人 小野寺 洋二  

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