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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01M
管理番号 1273213
審判番号 不服2012-14692  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-07-31 
確定日 2013-04-25 
事件の表示 特願2006-133491「過充電保護機能付き二次電池パック」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月22日出願公開、特開2007-305451〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は、平成18年5月12日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年7月31日付の手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「1及至複数の二次電池からなる二次電池ブロックと外部回路に接続される外部出力端子対を備える二次電池パックにおいて、前記二次電池の各々に並列に接続された定電圧制御素子と、前記外部出力端子間に並列に接続されたスイッチ素子と抵抗とからなるバイパス回路と、前記二次電池ブロックの電圧を監視し前記スイッチ素子を制御する制御手段とからなり、前記定電圧制御素子により前記二次電池の個々の電圧が前記二次電池に対する規定の電圧を超えないように制御され、前記制御手段により前記二次電池ブロックの電圧が前記二次電池ブロックに対する規定の電圧を超えたときに前記スイッチ素子が導通状態となり充電電流をバイパスするように制御され、前記二次電池ブロックの端子と前記外部出力端子の間には前記二次電池ブロックの充電あるいは放電を制御するためのスイッチ素子がいずれも挿入されていないこと特徴とする過充電保護機能付き二次電池パック。」

なお、上記手続補正書による特許請求の範囲についての補正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に適合するものである。

2.引用例
(1)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-308121号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

・「【0002】
【従来の技術】近年、電極と電解液との界面に生成される電子の電気二重層構造を利用して飛躍的に容量を増大させた電気二重層コンデンサを利用することが種々提案されている。この電気二重層コンデンサは、単一のセルで例えば約2.5Vの電圧を発生するため、車両用の電源装置として利用する場合には、図11に示す如く、複数個の単セル100を直列に接続し、コンデンサパックとして使用している。」

・「【0005】さて、ここで、各単セル100の起電力は、電解液の活性電圧によって定まるが、バイアス電圧、すなわち車載発電機104からの充電電圧がこの活性電圧を上回ると、電気二重層コンデンサからなる単セル100の寿命が急速に低下する性質がある。このため、各単セル100の定格電圧を、安全性の余裕を考慮して電解液の活性電圧よりも低く設定し、定格電圧以下で使用すれば電気二重層コンデンサの特質の一つである長寿命を確保することができる。
【0006】しかし、各単セル100は、それぞれの静電容量や内部抵抗にばらつきを生じることがある。このため、単セル100を直列接続した状態で車載発電機104から充電を行うと、静電容量や内部抵抗のばらつきによって、バイアス電圧にも差異が生じる。つまり、各単セル100を直列に接続して充電する場合、各静電容量や内部抵抗の値が各単セル100間で等しければ、該各単セル100の端子間電圧( バイアス電圧) も等しくなるが、静電容量や内部抵抗の値にばらつきがあれば、各単セル100のバイアス電圧に不均衡状態を生じる。また、このバイアス電圧の差異は、充放電の繰り返しにより積算され、拡大することがある。
【0007】従って、安全余裕を見込んで定格電圧を設定しても、各単セル100の特性のばらつきに起因して、定格電圧以上のバイアス電圧が印加される単セル100が生じる可能性があり、寿命が低下する原因ともなる。」

・「【0013】本発明は、上記のような種々の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、簡易な構造で蓄電手段のバイアス電圧をバランスさせることができ、かつ無充電状態にあっても放電を抑制するようにした蓄電手段を有する車両用電源装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的達成のため、本発明に係る蓄電手段を有する車両用電源装置は、車載発電機に接続された蓄電手段と、逆バイアス電圧が印加される向きで蓄電手段に並列接続されるツェナーダイオードと、該ツェナーダイオードに直列接続された抵抗とから構成されている。これにより、蓄電手段のバイアス電圧がツェナー電圧以上の場合には、該コンデンサの放電が許可されて、前記抵抗の値によって定まる電流がツェナーダイオードを流れるため、蓄電手段のバイアス電圧はツェナー電圧まで低下する。一方、蓄電手段のバイアス電圧がツェナー電圧よりも低い場合には、放電が許可されないため、僅かな自己放電を除き、蓄電手段の電気エネルギは保存される。従って、静電容量や内部抵抗にばらつきがある場合でも、蓄電手段のバイアス電圧を一定に保持して寿命の低下を防止することができる。」

・「【0019】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について詳細に説明する。まず、図1には、本発明の第1の実施の形態に係る蓄電手段として電気二重層コンデンサを用いた車両用電源装置の回路構成が示されている。
【0020】電気二重層コンデンサからなる各単セル10は、例えば、表面に活性炭電極がそれぞれ設けられた一対の集電体と、該各集電体間に充填された電解液と、各活性炭電極間を分離して介装されたセパレータと、内部の電解液が外部に漏れるのを防止するためのガスケット(いずれも図示せず)とから構成されている。そして、これら各単セル10は、例えば、直列接続された状態で所望の起電圧を発生するコンデンサパック12として組み立てられるようになっている。なお、鉛バッテリを用いる場合は、鉛バッテリパックとして組み立てられることとなる。
【0021】このように各単セル10を直列に接続してなるコンデンサパック12は、そのプラス側が車載発電機14に接続され、コンデンサパック12のマイナス側はアースされている。この車載発電機14は、整流器にて整流された直流電圧を出力するもので、エンジン回転数に応じた電圧を発生する。
【0022】各単セル10には、バイアス電圧を制限するためのツェナーダイオード16がそれぞれ各単セル10毎に並列接続されており、これら各ツェナーダイオード16には、抵抗18がそれぞれ各単セル10毎に直列接続されている。そして、各単セル10とツェナーダイオード16と抵抗18とからなる各回路は全体として直列に接続されている。
【0023】ここで、各ツェナーダイオード16は、カソード端子を各単セル10の正極端子側に接続し使用されるもので、図2に示したように、所定のツェナー電圧VZ以上の逆バイアス電圧-VBが印加されると、電流がカソード側からアノード側に向けて流れるのを許可する能動素子である。従って、ツェナーダイオード16は、ツェナー電圧VZ以上の逆方向のバイアス電圧VBが印加された場合にだけ電流供給を許容する。
【0024】また、各ツェナーダイオード16は、好ましくは、そのツェナー電圧VZが単セル10の定格電圧に一致、あるいは定格電圧より若干小さい値を有するように設定される。単セル10の定格電圧よりツェナー電圧VZの方を小さくした場合、その定格電圧とツェナー電圧VZとの差分は、安全性に対するマージンとなる。更に、ツェナーダイオード16は、その定格電力が例えば1W程度の小さいものが選択される。なお、図2中では、逆バイアス電圧VBにマイナス符号を付して順バイアス電圧VBと区別しているが、以下の説明では逆バイアス電圧を単に「VB」として表す。
【0025】各抵抗18は、各単セル10のバイアス電圧VBがツェナー電圧VZ以上になったときに各ツェナーダイオード16を流れる放電電流Iの値を制限するためのものである。好ましくは、ツェナーダイオード16の容量に応じてできるだけ小さい放電電流となるように、その値が設定されている。
【0026】次に、上記構成の本実施の形態の具体的作用を説明する。エンジン始動によって車載発電機14は所定の充電電圧を出力するが、各単セル10間の静電容量や内部抵抗のばらつきによって、各単セル10に印加されるバイアス電圧VBは異なる。
【0027】そして、例えば、ある特定の単セル10だけバイアス電圧VBが上昇し、ツェナー電圧VZ以上になると、該単セル10に並列接続されたツェナーダイオード16が通電を許容し、これにより、抵抗18によって制限された所定の放電電流Iが流れる。そして、この放電電流Iの分だけバイアス電圧VBが低下するため、結局、該単セル10の過大なバイアス電圧VBは、ツェナー電圧VZに一致せしめられ放電が停止する。
【0028】一方、バイアス電圧VBがツェナー電圧VZに満たない単セル10では、該単セル10に並列接続されたツェナーダイオード16が作動しないため、放電電流Iが流れない。このように構成される本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
【0029】第1に、電気二重層コンデンサからなる各単セル10にツェナーダイオード16をそれぞれ並列接続し、各ツェナーダイオード16に抵抗18を直列接続する構成であることから、ツェナー電圧VZを各単セル10の定格電圧付近に設定することにより、静電容量や内部抵抗の相違に起因する過充電を未然に防止することができる。従って、各単セル10に過大なバイアス電圧VBが印加される過充電を防止し、寿命の短縮を防止することができる。
【0030】また、かかる放電によって各単セル10のバイアス電圧VBがツェナー電圧VZまで低下した場合或いは最初からバイアス電圧VBがツェナー電圧VZに達していない場合には、ツェナーダイオード16の作動が停止して放電は行われない。従って、無駄な放電を防止して、各単セル10が蓄積した電荷を長期間維持することができるため、スタータの駆動時などの大電流を確実に安定して供給することができる。
【0031】第2に、ツェナーダイオード16の定格電力を、例えば1W程度のできるだけ小さい値に設定しているため、単セル10が放電してバイアス電圧VBの調整がなされるときに、ツェナーダイオード16に生じる発熱量を小さくすることができる。従って、冷却フィン等の放熱機構をツェナーダイオード16に付加する必要がないため、部品点数及び製造コストの増加を招くことなく、全体をコンパクトに形成することができる。
【0032】第3に、各抵抗の抵抗値は、ツェナーダイオード16の定格容量を考慮して放電電流Iができるだけ小さくなるように設定しているため、抵抗18のコストを低下させることができる。一方、放電電流Iを大きく設定した場合は、速やかにバイアス電圧VBがツェナー電圧VZまで降下するので、バイアス電圧調整時間を短縮することができる。
【0033】しかし、放電電流Iの増大によって抵抗18の発熱量も増大するため、抵抗18に定格電力の大きな高価な抵抗を用いる必要が生じる。また、過充電によって単セル10の劣化が生じない限り、バイアス電圧調整に要する時間がかかっても何らの不具合も生じない。
【0034】従って、単セル10に寿命低下の不具合が生じない限りにおいて、バイアス電圧調整時間を長く設定することにより、低コストで過充電を防止することができる。但し、抵抗18の値を大きくしてバイアス電圧調整時間を短縮可能に構成したものも、本発明の範囲に含まれる。」

・図1には、コンデンサパック12が車載発電機14に接続される接続部及びアース端部を備え、コンデンサパック12のプラス側と前記接続部の間には何等の回路素子も接続されていない回路構成が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「各単セル10を直列に接続してなるコンデンサパック12と車載発電機14に接続される接続部及びアース端部を備える蓄電手段を用いた車両用電源装置において、前記各単セル10に並列に接続されたツェナーダイオード16からなり、前記ツェナーダイオード16により前記各単セル10の電圧が前記各単セル10の定格電圧以下に調整され、前記コンデンサパック12のプラス側と前記接続部の間には何等の回路素子も接続されていない過充電保護機能付き蓄電手段を用いた車両用電源装置。」

(2)同じく、引用された特開昭61-277329号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

・「一般的な太陽光発電装置の概念図を第3図に示して説明する。同図に示すように太陽電池1から逆流防止ダイオード2を経て負荷6に電力を供給する装置において、太陽電池1は日照強度や太陽電池自身の温度の変化によってその出力が不安定となるため太陽電池1と負荷6との間に蓄電池5を並列に挿入して負荷6に対する供給電力の安定化を図っている。すなわち、太陽電池1の供給電力が負荷6の消費電力より大きい場合、両者の差の電力が蓄電池5に充電され、逆に太陽電池1の供給電力が負荷6の消費電力より小さい場合は、蓄電池5より不足電力が供給される。この場合蓄電池5の充放電の一方が連続して行なわれる場合が生じ、その場合には過充電や過放電に至り蓄電池の寿命が短くなることや特性が劣化することがあり好ましくないので、このような過充放電を防止し蓄電池に対する保護が必要となる。
まず上記過充放電防止の従来例を第4図に示して説明する。第4図は第3図に対し負荷6を遮断する半導体スイッチ16と蓄電池5を強制放電させる半導体スイッチ17およびその負荷抵抗18と、そして蓄電池電圧を検出する電圧検出回路14およびこの出力信号をもとに半導体スイッチ16、17を開閉制御するための半導体スイッチドライブ回路15とを追加したものである。正常な運転時には半導体スイッチ16は導通状態、半導体スイッチ17は非導通状態に制御されており、蓄電池5が過充電に至ると蓄電池5の端子電圧が上昇しこれを電圧検出回路14にて検出し半導体スイッチドライブ回路により半導体スイッチ17を導通状態に制御する。半導体スイッチ17が導通すると太陽電池1および蓄電池5の電力負荷抵抗18によって消費され過充電を防止できる。また過放電の場合蓄電池5の端子電圧が下がりこれを電圧検出回路14にて検出し、半導体スイッチ16、17が非導通となるように半導体スイッチドライブ回路にて制御され太陽電池1から蓄電池5への充電のみとなる。」(1頁左下欄20行?2頁左上欄17行)

・第4図には、負荷6に接続される接続部位とアース間に並列に接続された半導体スイッチ17と負荷抵抗18とからなる強制放電回路と、蓄電池5の電圧を電圧検出回路14で検出し前記半導体スイッチ17を制御する半導体スイッチドライブ回路15とを備えた過充電保護機能付き蓄電池装置が示されている。

3.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。

まず、後者の「各単セル10を直列に接続してなるコンデンサパック12」は前者の「1及至複数の二次電池からなる二次電池ブロック」に、後者の「車載発電機14に接続される接続部及びアース端部」は前者の「外部回路に接続される外部出力端子対」に、後者の「蓄電手段を用いた車両用電源装置」は前者の「二次電池パック」にそれぞれ相当する。結局、後者の「各単セル10を直列に接続してなるコンデンサパック12と車載発電機14に接続される接続部を備える蓄電手段を用いた車両用電源装置」は前者の「1及至複数の二次電池からなる二次電池ブロックと外部回路に接続される外部出力端子対を備える二次電池パック」に相当している。

次に、後者の「各単セル10に並列に接続されたツェナーダイオード16」は前者の「二次電池の各々に並列に接続された定電圧制御素子」に相当するから、結局、後者の「各単セル10に並列に接続されたツェナーダイオード16からなり」とする態様と前者の「二次電池の各々に並列に接続された定電圧制御素子と、外部出力端子間に並列に接続されたスイッチ素子と抵抗とからなるバイパス回路と、二次電池ブロックの電圧を監視し前記スイッチ素子を制御する制御手段とからなり」とする態様とは、「二次電池の各々に並列に接続された定電圧制御素子からなり」との概念で共通している。

続いて、後者の「各単セル10の電圧」は前者の「二次電池の個々の電圧」に、後者の「各単セル10の定格電圧以下」である態様は前者の「二次電池に対する規定の電圧を超えない」態様に、後者の「調整」は前者の「制御」にそれぞれ相当するから、結局、後者の「ツェナーダイオード16により各単セル10の電圧が前記各単セル10の定格電圧以下に調整され」る態様は前者の「定電圧制御素子により二次電池の個々の電圧が前記二次電池に対する規定の電圧を超えないように制御され」る態様に相当している。

さらに、後者の「コンデンサパック12のプラス側」は前者の「二次電池ブロックの端子」に、後者の「接続部」は前者の「外部出力端子」に、後者の「何等の回路素子も接続されていない」態様は前者の「二次電池ブロックの充電あるいは放電を制御するためのスイッチ素子がいずれも挿入されていない」態様にそれぞれ相当するから、結局、後者の「コンデンサパック12のプラス側と接続部の間には何等の回路素子も接続されていない」態様は前者の「二次電池ブロックの端子と外部出力端子の間には前記二次電池ブロックの充電あるいは放電を制御するためのスイッチ素子がいずれも挿入されていない」態様に相当している。

したがって、両者は、
「1及至複数の二次電池からなる二次電池ブロックと外部回路に接続される外部出力端子対を備える二次電池パックにおいて、前記二次電池の各々に並列に接続された定電圧制御素子からなり、前記定電圧制御素子により前記二次電池の個々の電圧が前記二次電池に対する規定の電圧を超えないように制御され、前記二次電池ブロックの端子と前記外部出力端子の間には前記二次電池ブロックの充電あるいは放電を制御するためのスイッチ素子がいずれも挿入されていない過充電保護機能付き二次電池パック。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
本願発明は、「外部出力端子間に並列に接続されたスイッチ素子と抵抗とからなるバイパス回路と、二次電池ブロックの電圧を監視し前記スイッチ素子を制御する制御手段と」を備え、「前記制御手段により前記二次電池ブロックの電圧が前記二次電池ブロックに対する規定の電圧を超えたときに前記スイッチ素子が導通状態となり充電電流をバイパスするように制御され」るものであるのに対し、引用発明は、かかる「バイパス回路」及び「制御手段」を備えていない点。

4.判断
上記相違点について以下検討する。

例えば、引用例2にも開示されているように、外部出力端子間(「負荷6に接続される接続部位とアース間」が相当)に並列に接続されたスイッチ素子(「半導体スイッチ17」が相当)と抵抗(「負荷抵抗18」が相当)とからなるバイパス回路(「強制放電回路」が相当)と、二次電池ブロック(「蓄電池5」が相当)の電圧を監視し(「電圧検出回路14で検出し」ている態様が相当)前記スイッチ素子を制御する制御手段(「半導体スイッチドライブ回路15」が相当)とを備え、前記制御手段により前記二次電池ブロックの電圧が前記二次電池ブロックに対する規定の電圧を超えたとき(「蓄電池5が過充電に至る電圧に上昇したとき」が相当)に前記スイッチ素子が導通状態となり充電電流をバイパスする(「強制放電する」態様が相当)ように制御することにより、二次電池ブロックとしての過充電を防止することは、二次電池パック(「蓄電池装置」が相当)の分野における周知技術である。

また、二次電池パックの過充電を防止するためには、各二次電池の端子電
圧のみならず、二次電池パック全体の電圧をも監視する必要のあることは二次電池パックの分野における一般的認識事項であり(例えば、特開平11-341693号公報(図1の実施例)、特開平8-186940号公報(図4,5の実施例)等参照)、かかる一般的認識事項は請求人も熟知しているところである(平成23年10月18日付の意見書2頁最下行?3頁2行の「一般的に、二次電池パックでは、各二次電池の過充電を防止すると同時に、二次電池ブロックの電圧が二次電池ブロックに対する規定の電圧を超えることを防止する必要があります。」なる記載参照。)。

そうすると、引用発明において、上記一般的認識事項を踏まえれば、二次電池パックの過充電を防止する上で、各二次電池の端子電圧のみならず、二次電池パック全体の電圧をも監視することは、当業者が適宜試みる程度のことであるといえるから、二次電池パック全体の電圧を監視して過充電を防止するための構成として、上記周知技術に倣い、上述した「バイパス回路」及び「制御手段」を用いることで上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

そして、本願発明の全体構成により奏される効果も、引用発明、上記周知技術及び上記一般的認識事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本願発明は、引用発明、上記周知技術及び上記一般的認識事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は、平成24年7月31日付の審判請求書(4頁19?24行)において、引用例2に記載の蓄電池保護回路には、二次電池ブロックの端子と外部出力端子との間には、充電及び放電を制御するためのスイッチ素子(即ち、逆流防止ダイオード2及び半導体スイッチ16)がいずれも挿入されている旨主張している。
しかしながら、引用例2に記載の逆流防止ダイオードは、専ら逆流を防止するための素子であり、また、半導体スイッチ16は専ら過放電を防止するための素子であるから、いずれの素子も本来の過充電防止の技術とは無関係のものであるため、引用例2から、過充電防止のための上記周知技術に係る構成が、まとまりのある1個の技術として抽出し得ることが明らかである。
したがって、請求人の上記の主張は、本願発明の進歩性を肯定する根拠としては採用できない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、上記周知技術及び上記一般的認識事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、本願は、同法第49条第2号の規定に該当し、拒絶をされるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-20 
結審通知日 2013-02-26 
審決日 2013-03-12 
出願番号 特願2006-133491(P2006-133491)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮本 秀一  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 槙原 進
藤井 昇
発明の名称 過充電保護機能付き二次電池パック  
代理人 宮崎 昭夫  
代理人 石橋 政幸  
代理人 緒方 雅昭  

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