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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H03K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03K
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H03K
管理番号 1273259
審判番号 不服2012-3301  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-21 
確定日 2013-04-22 
事件の表示 特願2008-235475「ファイバ型光電センサ」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 2月12日出願公開、特開2009- 33764〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成14年11月28日(優先権主張平成14年10月31日)に出願した特願2002-346446号の一部を平成16年 4月12日に新たな出願とした特願2004-117088号の一部を、さらに、平成18年 6月27日に新たな出願とした特願2006-176463号の一部を、さらに、平成20年 9月12日に新たな出願としたものであって、平成23年11月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年 2月21日付けで審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[結論]
平成24年 2月21日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
平成24年 2月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成23年 5月 9付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項6に記載された
「 【請求項6】
ケースの底面にレール装着部、上面に表示部と操作部、前面にファイバ挿入口、後面にコード引き出し方式又はコネクタ方式からなる出力部、をそれぞれ有するファイバ型光電センサであって、
第1、第2の検出チャンネルに対応する2組の投光回路及び受光回路と、
2つの検出チャンネルの検出動作を時分割で行う単一のCPUと、
2つの検出チャンネルに対応する2本の出力線と、
前面に配列された4個のファイバ挿入口と、
ケースの上面に設けられ、複数桁の数字をケース長手方向に並べて表示することができ、第1の検出チャンネルの受光量及び第2の検出チャンネルの受光量を数値で表示し得るように構成した表示器と、
ケースの左右両側面の同一箇所に設けられた隣接センサとの間で光通信を行うための投受光窓と、を備えることを特徴とするファイバ型光電センサ。」
という発明(以下、「本願発明」という。)を
「 【請求項5】
ケースの底面にレール装着部、上面に表示部と操作部、前面にファイバ挿入口、後面にコード引き出し方式又はコネクタ方式からなる出力部、をそれぞれ有するファイバ型光電センサであって、
第1、第2の検出チャンネルに対応する2組の投光回路及び受光回路と、
2つの検出チャンネルの検出動作を時分割で行う単一のCPUと、
2つの検出チャンネルに対応する2本の出力線と、
前面に配列された4個のファイバ挿入口と、
ケースの上面に設けられ、複数桁の数字をケース長手方向に並べて表示することができ、第1の検出チャンネルの受光量及び第2の検出チャンネルの受光量を数値で表示し得るように構成した表示器と、
ケースの左右両側面の同一箇所に設けられた隣接センサとの間で光通信を行うための投受光窓と、を備え、
第1の検出チャンネルの検出結果と第2の検出チャンネルの検出結果との間で論理演算を行う論理演算手段と、論理演算手段による論理演算結果を出力する出力線とを有することを特徴とするファイバ型光電センサ。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。(当審注:アンダーラインは補正箇所を示す。)

2.補正の適否
(1)新規事項の有無、補正の目的要件
本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、本願発明に「第1の検出チャンネルの検出結果と第2の検出チャンネルの検出結果との間で論理演算を行う論理演算手段と、論理演算手段による論理演算結果を出力する出力線とを有する」という構成を付加するものであって、本件補正により、補正後の発明は、本願発明に新たな機能を備えたものとなることから、本件補正は、特許請求の範囲を減縮するものではない。
なお、本件補正に関し、請求人は、平成24年 2月21日付け審判請求書において、補正後の請求項5が補正前の請求項6に同請求項4を付加したものである旨述べているが、補正前の請求項4は同請求項1を引用するのみで、同請求項6を引用するものではないことからも、本件補正が、特許請求の範囲を減縮するものとは認められない。
また、本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しない。

(2)独立特許要件
ここで、仮に、本件補正が特許請求の範囲を限定的に減縮するものとして、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについても、以下検討する。

[補正後の発明]
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりものである。

[引用発明]
(A)原査定の拒絶理由に引用された特開2002-139379号公報(以下、「引用例1」という。)には、「部品供給装置用センサ」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は部品供給装置用センサに関し、特に、電子部品などのワークに振動を与えながら供給する部品供給装置に用いられ、ワークの良否を検出する部品供給装置用センサに関する。」(2頁2欄)

ロ.「【0008】
【課題を解決するための手段】この発明は、部品を供給する部品供給装置において、供給される部品を判別するための部品供給装置用センサであって、部品に光を照射する発光素子と、部品で反射された光を受光する受光素子が少なくとも2組設けられ、少なくとも2組の受光素子からの受光信号の相対値を識別して部品を判別する判別回路を備えたことを特徴とする。」(3頁3欄)

ハ.「【0017】
【発明の実施の形態】図1はこの発明の一実施形態のセンサユニットを示す図である。図1において、センサユニット20にはセンサヘッド11a,11bが設けられている。各センサヘッド11a,11bはセンサユニット20内に内蔵されている発光部と受光部と光ファイバで結合され、光ファイバの先端から発光素子からの光が照射され、反射光が光ファイバの先端部で受光され、センサユニット20内の受光素子に導かれる。」(3頁4欄)

ニ.「【0021】図5はこの発明の一実施形態のセンサユニットの具体的なブロック図である。図5において、センサヘッド11aは発光素子1aからの光を受け、反射光を受光素子2aに与える。他方のセンサヘッド11bは発光素子1bからの光をワークに照射し、その反射光を受光素子2bに導く。発光素子1aは発振回路3aの発振出力に基づいてパルス光を発光し、発光素子1bは発振回路3bの発振出力に基づいてパルス光を発光する。各発振回路3a,3bは図6(a),(b)に示すように相互に干渉しないように、それぞれの位相がずらされている。受光素子2aの出力はアンプ4aに与えられて増幅され、発振回路3aの発振出力に同期してセンサ出力が取出される。受光素子2bの出力はアンプ4bに与えられて増幅され、発振回路3bの発振出力に同期してセンサ出力が取出される。
【0022】アンプ4aと4bはそれぞれ感度調整用の可変抵抗5a,5bによって利得が調整されるようにされており、それぞれの出力は差動アンプ12に与えられて差動出力が取出される。差動アンプ12は可変抵抗13によって感度調整が可能になっている。そして、差動アンプ12の出力はコンパレータ6に与えられて設定値と比較され、センサ信号が出力回路7を介して外部に導出される。
【0023】図5に示したセンサユニット20において、たとえば受光素子2aが図4に示すように特徴点ありを検出し、受光素子2bが特徴点なしを検出したとすると、差動アンプ12からは両者の差を拡大した差動アンプ出力が得られ、コンパレータ6で設定値と比較したとき、単なる絶対値の比較から、特徴点のある部分とない部分との相対値を求めることとなるので、ワークのばらつきや周囲環境の変化や検出場所の位置ずれなどに対して強くなる。」(3頁4欄?4頁5欄)

ホ.「【0036】図16はこの発明のさらに他の実施形態を示すブロック図である。この実施形態は、受光素子の出力をデジタル処理するものである。すなわち、受光素子2aの出力を増幅するアンプ4aの出力信号は、A/D変換器24aに与えられてデジタル信号に変換されてCPU25に与えられる。同様にして、受光素子2bの出力を増幅するアンプ4bの出力信号は、A/D変換器24bに与えられてデジタル信号に変換されてCPU25に与えられる。CPU25に関連してインタフェース回路26とメモリ27と表示回路28とが設けられており、インタフェース回路26には感度調整用可変抵抗に代えて操作スイッチ(図示せず)が接続されている。
【0037】CPU25はデジタル化された受光素子2a,2bの出力に基づいて、特徴点有り/無し時の受光量を操作スイッチの指示でメモリ27に記憶し、その中間点を求めるなどの演算を行なうことにより、しきい値の設定を自動で行なうことができる。また、デジタル処理することにより、受光量やしきい値をデジタル値で表示回路28に表示することができる。
【0038】また、当然に図5および図7?図13で例示された処理をプログラムによって行なうこともできる。このプログラムを切換えることで図5および図7?図13の処理を単独でも、組み合わせでも自由に行なうことが可能となる。」(5頁7?8欄))

上記引用例1の記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、
(a)上記イ.及びロ.の記載から、引用例1には、物品を判別するための「センサ」が記載され、同ハ.の記載及び図1から、当該「センサ」は、「ファイバ」に結合される「センサヘッド11a、11b」を有し、前面に4個の「ファイバ」を収納する口を配列する「センサユニット20」を有するものと認められる。
(b)上記ホ.の記載及び図16から、引用例1の「センサユニット20」は、「センサヘッド11a」、「センサヘッド11b」に「ファイバ」で結合される2組の「発光素子1a」、「発信回路3a」、「受光素子2a」、「アンプ4a」及び「発光素子1b」、「発信回路3b」、「受光素子2b」、「アンプ4b」と、1つの「CPU25」、「受光量」をデジタル値で表示する「表示回路28」、センサ信号を出力する「出力回路7」を有することが明らかである。
さらに、上記(a)を踏まえると、引用例の「センサユニット20」の前面から4個の「ファイバ」が2組の「発光素子」及び「受光素子」に接続されることから、当該「出力回路7」は「センサユニット20」の後面から信号線によりセンサ信号を出力するものと認められる。
(c)上記ハ.及び同ニ.の記載並びに図5から、引用例1には、センサヘッド11aに結合される受光素子2a及びアンプ4aからの出力とセンサヘッド11bに結合される受光素子2b及びアンプ4bからの出力との差動出力を取ること、差動出力は設定値と比較され、センサ信号として「出力回路7」から外部に出力されることが記載され、さらに、同ニ.【0021】の記載及び図6から、第1のセンサヘッドと第2のセンサヘッドによるセンサ出力の取出は時分割で行うことが記載されていると認められる。
(d)上記ホ.【0038】の記載に関し、上記(c)を踏まえると、引用例1の「センサユニット20」の「CPU25」は、「センサヘッド11a」と「センサヘッド11b」によるセンサ出力の取出を時分割で行うものと認められ、さらに、上記(b)も踏まえると、引用例1の「センサユニット20」は、センサヘッド11aに結合される受光素子からの出力とセンサヘッド11bに結合される受光素子からの出力との差動出力を取る手段と、当該差動出力を取る手段の出力から生成されるセンサ信号を外部に出力する信号線を有するものと認められる。
したがって、上記引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「センサユニット20の前面にファイバを収納する口、後面に信号線が接続される出力回路7、を有するセンサであって、
センサヘッド11a、センサヘッド11bにファイバで結合される2組の発光素子1a、1bと発信回路3a、3b及び受光素子2a、2bとアンプ4a、4bと、
2つのセンサヘッドによるセンサ出力の取出を時分割で行う1つのCPU25と、
センサユニット20の前面に配列された4個のファイバを収納する口と、
受光量をデジタル値で表示することができる表示回路28と、
センサヘッド11aにファイバで結合される受光素子2a及びアンプ4aからの出力とセンサヘッド11bにファイバで結合される受光素子2b及びアンプ4bからの出力との差動出力を取出す手段と、当該差動出力を取出す手段からセンサ信号を生成して外部に出力する信号線と、を備えるセンサ。」

また、上記引用例1には、【従来の技術】として、図面とともに以下の事項が記載されている。

ヘ.「【0003】図17(a)に示した例はワークの上面がaとbの2色に色分けされており、図17(b)は表面がaの色に塗布され、図17(c)では裏面がb色に塗布されている。このようなワークは、図18に示すセンサユニット10によって検出される。図18において、センサユニット10は光ファイバの先端部にセンサヘッド11が設けられており、センサユニット10で発光された光が光ファイバで導かれ、センサヘッド11からワークに光が照射され、その反射光がセンサヘッド11から光ファイバを介してセンサユニット10の受光素子に導かれる。受光素子では、図19に示すように、光量レベルが設定値以上であるかあるいは未満であるかによって特徴点の有無が判別される。
【0004】図20は図18に示したセンサユニット10のブロック図である。図20において、発光素子1は発振回路3からの発振出力に基づいてパルス点灯し、その光を光ファイバに導く。発光素子1がパルス点灯するのは、外乱光と区別するためである。発光素子1でパルス点灯された光はワークの特徴点で反射し、その反射光が受光素子2によって受光される。受光素子2の検出信号はアンプ4で増幅されるとともに、発振回路3の出力との同期がとれたパルス信号がコンパレータ6に与えられ、コンパレータ6で予め設定された基準値と比較され、コンパレータ6の比較出力が出力回路7を介して出力される。アンプ4には感度調整用の可変抵抗器5が設けられ、直流電源が供給される定電圧回路8から各回路に電圧が供給される。」(2頁2欄)

e)上記ヘ.の記載及び図20から、引用例1には、1つの「センサヘッド11」に「ファイバ」で結合される「受光素子1」及び「アンプ4」からの出力をセンサ信号として外部に出力する「出力回路7」が記載されており、さらに、図18から、当該「出力回路7」には信号線が接続されるものと認められる。
したがって、上記引用例1には、以下の事項(以下、「周知事項1」という。)が記載されている。

「1つのセンサヘッドにファイバで結合される受光素子及びアンプにより検出されるセンサ信号を外部に出力する信号線を備えたセンサユニット。」

(B)原査定の拒絶理由に引用された特開2001-85878号公報(以下、「引用例2」という。)には、「電子機器ユニット」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、放熱効率の良好な電子機器ユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】工場の生産ラインや検査ライン等においては、図9に示すように連装型センサ100が設置されており、連装型センサ100は、検出器としての電子機器ユニット101が多数使用されている。電子機器ユニット101は、例えば、光ファイバ102と、光ファイバ102からの信号を光電変換して信号処理を行うアンプ部103とにより構成されている。アンプ部103は、図10に示すように電子部品が実装された基板104と、基板104を外部電磁界からシールドするシールド板105とが樹脂製ケース106に収容されて構成されている。また、前記光ファイバ102の基端は、ケース106の前壁106aで挿入固定されている。電子機器ユニット101は、樹脂製ケース106の底部に設けられた装着部(図示せず)によりDINレール(以下単に「レール」という)107に載置装着されている。」(2頁1欄)

ロ.「【0012】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を図面により説明する。
(実施例1)図1及び図2に示すように電子機器ユニット1は、例えば、光ファイバ(図示せず)と、この光ファイバからの信号を光電変換して信号処理を行うアンプ部2とにより構成されており、左右に扁平な薄型の樹脂製ケース(以下単に「ケース」という)3内に投光素子4、受光素子5及び前記アンプを構成する電子部品が実装された基板6と、基板6の略全体を囲繞して外部電磁界を遮断するシールド板7とが収納されている。投光素子4及び受光素子5は、投光部及び受光部がケース3の前壁3aに装着される前記光ファイバの端面に光学的に接続される。
【0013】ケース3の底部3cにはレール20に装着するための装着部としての凹部3gが設けられており、当該凹部3gの前後両側にレール20のレール部20a、20bと対向して僅かに凹んだ凹部3h、3iが設けられている。また、凹部3gの前後両側部に当該凹部3gと協働してケース3をレール部20a、20bに着脱可能に固定する装着部としての固定爪3jと可動爪3kとが設けられている。そして、ケース3の凹部3gには放熱用金属プレート8が装着されている。」(3頁3?4欄)

ハ.「【0020】電子機器ユニット1は、上述のようにしてレール20に複数個、隣り合う電子ユニットの側壁3bが当接して並設されて、連装型センサが構成される。そして、各電子ユニット1は、それぞれケース3の一側壁3bに設けられている雌型のコネクタ9(図1)と他側壁3bに設けられている雌型のコネクタ(図示せず)とにより電気的に続される。」(4頁5欄)

上記引用例2の記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、
(a)上記イ.の記載、同ロ.【0013】の記載及び図1、2、9から、引用例2には、「電子機器ユニット」として、ケースの前面に「光ファイバ」が挿入され、ケースの底面にはレールに装着するための「装着部」を有し、「光ファイバ」からの信号からセンサ信号を生成するセンサユニットが記載されているものと認められる。
(b)上記イ.【0002】の記載及び図9、同ハ.の記載から、センサユニットを複数隣接させて連装して使用することが記載されているものと認められる。
したがって、上記引用例2には、以下の事項が記載されている。

「ケースの底面にレールに装着するための装着部を有する光ファイバからの信号からセンサ信号を生成するセンサユニット。」(以下、「周知事項2-1」という。)

「光ファイバからの信号からセンサ信号を生成するセンサユニットを複数隣接させて連装して使用すること。」(以下、「周知事項2-2」という。)

[対比・判断]
補正後の発明と引用発明とを対比すると、
(A)引用発明の「センサ」は「ファイバ」からの信号を光電変換するものであるから、補正後の発明の「ファイバ型光電センサ」と実質的な差異はない。
(B)引用発明の「センサユニット20の前面にファイバを収納する口」は補正後の発明のケースの「前面にファイバ挿入口」に相当し、引用発明の「後面に信号線が接続される出力回路7」は補正後の発明の「後面にコード引き出し方式又はコネクタ方式からなる出力部」と実質的な差異はない。
(C)引用発明の「センサヘッド11a」、「センサヘッド11b」はそれぞれ「ファイバ」で「受光素子」に結合され、独立して検出動作を行うものであるから、引用発明の「センサヘッド11a、センサヘッド11bにファイバで結合される」と補正後の発明の「第1、第2の検出チャンネルに対応する」は実質的な差異はなく、引用発明の「発光素子1a、1bと発信回路3a、3b」、「受光素子2a、2bとアンプ4a、4b」は、それぞれ補正後の発明の「投光回路」、「受光回路」に相当する。
(D)引用発明の「2つのセンサヘッドによるセンサ出力の取出を時分割で行う」と補正後の発明の「2つの検出チャンネルの検出動作を時分割で行う」は実質的な差異はなく、引用発明の「1つのCPU25」は補正後の発明の「単一のCPU」に相当する。
(E)引用発明の「センサユニット20の前面に配列された4個のファイバを収納する口」は補正後の発明の「前面に配列された4個のファイバ挿入口」に相当する。
(F)引用発明の「受光量をデジタル値で表示することができる表示回路28」と補正後の発明の「ケースの上面に設けられ、複数桁の数字をケース長手方向に並べて表示することができ、第1の検出チャンネルの受光量及び第2の検出チャンネルの受光量を数値で表示し得るように構成した表示器」とは、いずれも「受光量を数値で表示し得るように構成した表示器」という点で一致する。
(G)引用発明の「センサヘッド11aにファイバで結合される受光素子2a及びアンプ4aからの出力」、「センサヘッド11bにファイバで結合される受光素子2b及びアンプ4bからの出力」は、上記(C)での検討を踏まえると、それぞれ「第1の検出チャネルに対応する受光回路の出力」、「第2の検出チャネルに対応する受光回路の出力」ということができるので、補正後の発明の「第1の検出チャンネルの検出結果」、「第2の検出チャンネルの検出結果」と実質的な差異はない。
そして、引用発明の「差動出力を取出す手段」は、論理演算の一種を行うものであるから、補正後の発明の「論理演算を行う論理演算手段」に相当し、引用発明の「差動出力を取出す手段からセンサ信号を生成して外部に出力する信号線」と補正後の発明の「論理演算手段による論理演算結果を出力する出力線」とは実質的な差異はない。
したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「ケースの前面にファイバ挿入口、後面にコード引き出し方式又はコネクタ方式からなる出力部、を有するファイバ型光電センサであって、
第1、第2の検出チャンネルに対応する2組の投光回路及び受光回路と、
2つの検出チャンネルの検出動作を時分割で行う単一のCPUと、
前面に配列された4個のファイバ挿入口と、
受光量を数値で表示し得るように構成した表示器と、を備え、
第1の検出チャンネルの検出結果と第2の検出チャンネルの検出結果との間で論理演算を行う論理演算手段と、論理演算手段による論理演算結果を出力する出力線とを有することを特徴とするファイバ型光電センサ。」

<相違点>
イ.補正後の発明は、「ケースの底面にレール装着部」を有するのに対し、引用発明では、当該構成が明示されていない点。
ロ.補正後の発明は、「上面に表示部と操作部」を有するのに対し、引用発明では、当該構成が明示されていない点。
ハ.補正後の発明は、「2つの検出チャネルに対応する2本の出力線」を備えるのに対し、引用発明では、当該構成を有していない点。
ニ.上記「表示器」に関し、補正後の発明は、「ケースの上面に設けられ、複数桁の数字をケース長手方向に並べて表示することができ、第1の検出チャンネルの受光量及び第2の検出チャンネルの受光量を数値で表示し得る」のに対し、引用発明では、当該構成が明示されていない点。
ホ.補正後の発明は、「ケースの左右両側面の同一箇所に設けられた隣接センサとの間で光通信を行うための投受光窓」を備えるのに対し、引用発明では、当該構成が明示されていない点。

上記相違点イ.について検討する。
引用発明のようなファイバに結合されるセンサユニットをDINレール等に装着するため、センサユニットの底面にレール装着部を有する構成は、周知技術(上記周知事項2-1の他、特開2002-305433号公報(図5)、特開平4-188911号公報(2頁右下欄1?17行、図2)参照。)に過ぎず、上記相違点イ.に係る構成は、引用発明においても周知技術に基づいて適宜なし得ることである。
次に、上記相違点ロ.及びニ.について検討する。
引用発明のようなファイバに結合されるセンサユニットの上面に表示部と操作部を設け、表示部が複数桁の数字をケース長手方向に並べて表示することができる構成は、周知技術(例えば、特開2002-279871号公報(図1?3)、特開2001-222786号公報(【0051】、図1、3)、特開2001-155598号公報(【0006】、【0029】、図2、3、8、9)参照。)に過ぎないものである。
そして、引用発明では、CPU25が2つのセンサヘッドによるセンサ出力を取出していることから、引用発明の受光量を表示する表示回路28に、2つのセンサヘッドによるセンサ出力の各受光量をそのまま表示するのか、あるいは、各受光量の論理演算の結果等を表示するのかは、必要に応じて適宜なし得ることである。
よって、上記相違点ロ.及びニ.に係る構成は、引用発明においても周知技術に基づいて適宜なし得ることである。
続いて、上記相違点ハ.について検討する。
1つのセンサヘッドをファイバで結合した受光素子及びアンプにより検出されるセンサ信号を外部に出力する信号線を備えたセンサユニットの構成は、上記引用例1にも記載されるように周知技術(上記周知事項2-1の他、特開2002-305433号公報(図1、6)、特開2002-279871号公報(図2、4)参照。)に過ぎないものである。
すると、1つのセンサヘッドにより検出されるセンサ信号に対して1つの外部に出力する信号線を備える構成が周知である以上、引用発明において、2つのセンサヘッドにより検出される(2つの検出チャネルに対応する)各センサ信号に対して、それぞれ外部に出力する信号線を備えるようにすることは、必要に応じて適宜なし得ることである。
よって、上記相違点ハ.に係る構成は、引用発明においても周知技術に基づいて適宜なし得ることであり、格別なものではない。
最後に、上記相違点ホ.について検討する。
引用発明のようなファイバに結合されるセンサユニットを複数隣接させて連装して使用することは周知技術(上記周知事項2-2の他、特開2002-305433号公報(図1、5)、特開2001-222786号公報(図1、3、4、6)、特開平4-188911号公報(第2図)参照。)であり、センサユニットを複数隣接させて連装して使用する際に、隣接したセンサユニット間で同期制御をするための光通信用の投受光窓をケースの左右両側面の同一箇所に設けることも周知技術(同じく、特開2002-305433号公報(【0011】?【0013】、図1、5、6)、特開2001-222786号公報(【0053】?【0061】、【0064】?【0070】、図2、4、6)、特開平4-188911号公報(2頁右下欄1?17行、4頁右下欄10?17行、第1、4図)参照。)に過ぎないものである。
よって、上記相違点ホ.に係る構成は、引用発明においても周知技術に基づいて適宜なし得ることである。
そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、補正後の発明は、上記引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.結語
以上のとおり、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであったとしても、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しない補正を含むものであり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(補正の目的)の規定に違反している。
また、本件補正が願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされ、特許請求の範囲を減縮するものであったとしても、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反している。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成24年 2月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、「第2.補正却下の決定 [理由] 1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりのものである。

2.引用発明
引用発明及び周知事項は、上記「第2.2.(2)独立特許要件」の項中の「引用発明」の項で、引用発明及び周知事項として認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から、当該補正に係る構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に上記補正に係る構成を付加した補正後の発明が、上記「第2.2.(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、上記引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-15 
結審通知日 2013-02-20 
審決日 2013-03-05 
出願番号 特願2008-235475(P2008-235475)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (H03K)
P 1 8・ 121- Z (H03K)
P 1 8・ 575- Z (H03K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 栗栖 正和  
特許庁審判長 田中 庸介
特許庁審判官 山本 章裕
萩原 義則
発明の名称 ファイバ型光電センサ  
代理人 飯塚 信市  

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