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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C03B
管理番号 1273293
審判番号 不服2012-2993  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-16 
確定日 2013-04-24 
事件の表示 特願2009- 48962「光ファイバ用母材の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月16日出願公開、特開2010-202445〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成21年3月3日の出願であって、平成23年6月6日付けで拒絶理由が通知され、同年8月8日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年8月19日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年8月29日付けで手続補正書が提出されたが、同年11月14日付けで拒絶査定されたので、平成24年2月16日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成23年8月29日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりの発明(以下「本願発明」という。)である。
「中心ガス噴出ポートの外側に、該中心ガス噴出ポートに対して同心円状に複数のガス噴出ポートを有し、このうちの可燃性ガス噴出ポート内に、焦点距離が同一の複数の小口径ガス噴出ポートを有するガラス微粒子合成用バーナを用いて、ガラス原料ガスを火炎中で加水分解させてガラス微粒子を生成し、該ガラス微粒子を回転する出発母材上に堆積させて光ファイバ用母材を製造する方法において、ガラス原料ガスと助燃性ガスを噴出する中心ガス噴出ポートのガス流速をV_(1)、その外側の可燃性ガス噴出ポートに内包された、中心ガス噴出ポートに対して同心円状に1列に配置された助燃性ガスを噴出する8本の小口径ガス噴出ポートのそれぞれのガス流速をV_(2)、可燃性ガスを噴出する可燃性ガス噴出ポートのガス流速をV_(3)、さらにその外側の助燃性ガスを噴出する助燃性ガス噴出ポートのガス流速をV_(4)とするとき、V_(1)>V_(2)>V_(3)>V_(4)となるように、ガス流速を制御することを特徴とする光ファイバ用母材の製造方法。」

3 刊行物に記載された発明
(1)引用例1の記載事項
本願出願日前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された特開2003-165737号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「大型の母材であってもできるだけ短時間で製造しようとしても、従来のマルチノズルバーナのガラス合成速度は18g/分程度であり、合成速度を上げるために原料供給量を増やすと生成途上の母材表面に異常堆積が生じ、凹凸のある不良母材が生成する。・・・。本発明は、ガラス合成速度を向上させ、原料供給量を増加しても均質な光ファイバ母材を製造できる方法を提供することを目的とする。」(段落【0005】)
(イ)「本発明者らは上記課題に鑑み鋭意研究した結果、可燃性ガスノズル中にある小口径の助燃性ガスノズルの内径及び該ノズルから噴出する助燃性ガス流速がガラス合成速度に影響を与えること、・・・を見出し、これらの特定の範囲において均質な光ファイバ用母材を製造できることに基づき本発明をなすに至った。すなわち、本発明は、(1)原料ガス、可燃性ガス、助燃性ガス及びシールガスをバーナから噴出させ、該原料ガスを火炎中で加水分解してガラス微粒子を生成し、該ガラス微粒子をターゲットに堆積させて光ファイバ用母材を製造する方法であって、該バーナの可燃性ガスノズル中に複数の助燃性ガスノズルを持つマルチノズルバーナにおいて、助燃性ガスノズルの内径を1.3mm以上、1.7mm以下に設定することを特徴とする光ファイバ用母材の製造方法、(2)前記助燃性ガスノズルに供給する助燃性ガス流量を、噴出するガス流速が19m/秒以上、35m/秒以下となるようノズル内径に応じて調整することを特徴とする(1)に記載の光ファイバ用母材の製造方法、及び、・・・を提供するものである。」(段落【0006】)
(ウ)「・・・この小口径の助燃性ガスノズルはどのように配置されても良いが、環状に配列されるのが好ましく、その数は任意であり、後記する助燃性ガスの供給量、流速等を勘案して定められる。助燃性ガスノズルの指向する焦点は、バーナ先端から約100?300mmのところに設定されて、内側列のものと外側列のもので焦点位置が同じでも違っていてもよい。・・・」(段落【0007】)
(エ)「本発明の母材の製造方法では、使用するマルチノズルバーナの小口径の助燃性ガスノズル5の内径は、1.3mm以上1.7mm以下、好ましくは1.4mm以上1.7mm以下にする。・・・さらに、小口径ノズルの助燃性ガスの流量についても、少なすぎる場合には十分な反応が行われず、かといって多すぎても乱流の発生や流速の増大による反応時間の減少により合成速度は低下する。特にこの助燃性ガスの流量に基づく各小口径ノズルから噴出する助燃性ガスの流速がガラス合成速度を左右することがわかった。
本発明の方法では、小口径の助燃性ガスノズルへ供給される助燃性ガス流量を、噴出するガス流速が19m/秒?35m/秒となるようにするのが好ましく、更に好ましくは23m/秒?30m/秒となるようにするものである。小口径ノズルの数及びその内径に応じて助燃性ガス流量は調整でき、また、他のノズルからも助燃性ガスを供給するのが好ましく、その場合にはそれらの供給量と合わせ、可燃性ガスとの反応比率程度に調整される。」(段落【0008】)
(オ)「・・・実施例1
図4に示されるようなOVD法で、母材のターゲットとしてコアとその外周のクラッドとからなる長さ2000mm、外径35mmのガラスロッドを用いて、光ファイバ用母材を製造した。原料ガスは四塩化珪素、可燃性ガスは水素、助燃性ガスとして酸素、シールガスとしてアルゴンを供給して、図1に示される小口径の助燃性ガスノズルを内側6本(その焦点はバーナ先端から180mm)、外側8本(その焦点は180mm)有するマルチノズルバーナ1によりガラス合成を行った。小口径の助燃性ガスノズル5の内径がそれぞれ1.3mmのもの(バーナA)、・・・、を使用して、そのガラス合成速度を調べた。マルチノズルバーナの他の各ノズルサイズは次の通りである。
原料ガスノズル(2):内径3.0mm
シールガスノズル :(内側3a)内径6.5mm、(外側3b)内径32mm
可燃性ガスノズル(4) :内径27mm
助燃性ガス外側ノズル(6):内径37mm
実施例、比較例において各ノズルへ供給するガスの種類及びその流量は次の表1に示す通りである。(但し、SiCl_(4)は流量単位がg/分である。)」(段落【0011】)
(カ)

(段落【0012】)

(キ)「バーナA、バーナB、バーナCをそれぞれ使用して、酸素ノズル(5)1本当たりの酸素流速を種々変更して、酸素の噴出流速とガラス合成速度との関係を調べた。・・・バーナAの場合、酸素流量が2.1?2.8SLM(流速26?35m/秒)で合成速度の最大値20g/分であった。得られた多孔質母材には、堆積の凹凸はなくクラックが発生することもなかった。・・・」(段落【0014】)
(ク)図1には、引用例1に記載された発明で使用するマルチノズルバーナの正面図が記載されており、これによると、原料ガスノズル2を中心とし、その外側に同心円状に複数のノズルを有しており、2列の環状に配列された14本の小口径の助燃性ガスノズル5、及び該ノズル5を内包する可燃性ガスノズル4、該ノズル4の外側に助燃性ガス外側ノズル6を有していることを確認することができる。

(2)引用例1に記載された発明
ア 光ファイバ母材の製造方法
記載事項(ア)によれば、引用例1には、マルチノズルバーナを用いたガラス合成により均質な光ファイバ母材の製造方法が記載されている。この方法は、ガラス合成速度を向上させて大型母材の製造を可能にする点で、本願発明とは解決する課題が共通する。
具体的な製造方法は、同(イ)によれば、原料ガスを火炎中で加水分解してガラス微粒子を生成し、該ガラス微粒子をターゲットに堆積させて光ファイバ用母材を製造する方法であり、同(オ)によれば、実施例1にはOVD法が記載されているので、「ガラス原料ガスを火炎中で加水分解させてガラス微粒子を生成し、該ガラス微粒子を回転する出発母材上に堆積させて光ファイバ用母材を製造する方法」である。

イ マルチノズルバーナ
実施例1で使用するマルチノズルバーナは、記載事項(オ)によれば、図1に示されるバーナ(同(ク))を用い、各ノズルに供給されるガスの種類と流量は表1(同(カ))に記載されたとおりである。また、同(オ)によれば、小口径の助燃性ガスノズルは、焦点がバーナ先端から180mmで共通する2列環状に配列された14本からなり、バーナAの場合には、小口径の助燃性ガスノズルの内径は1.3mmである。
そこで、記載事項(オ)の記載を踏まえて同(カ)(ク)の記載内容を整理すると、実施例1で使用するマルチノズルバーナは次のとおりのものとなる。
すなわち、原料ガス(SiCl_(4))及び助燃性ガス(O_(2))を噴出する原料ガスノズルを中心とし、その外側に同心円状に、焦点距離が同一の2列の環状に配列された14本の助燃性ガス(O_(2))を噴出する小口径助燃性ガスノズル、該小口径助燃性ガスノズルを内包して可燃性ガス(H_(2))を噴出する可燃性ガスノズル、及び最外側に助燃性ガス(O_(2))を噴出する外側助燃性ガスノズルを有するものである。

ウ ガス流量の調整
ガラス合成速度の制御に関しては、記載事項(イ)によれば、可燃性ガスノズル中にある小口径の助燃性ガスノズルの内径及び該ノズルから噴出する助燃性ガス流速を調整することにより行われるとしている。
しかし、ガラス微粒子製造用の火炎が安定的にガラス原料ガスを加水分解するためには、小口径助燃性ガスノズルからの助燃性ガスの流れに対して、他の供給ガスの流量が特定の関係を有することが必要であることは明らかである。
これを実施例1の記載から確認すると、小口径助燃性ガスノズル5の内径が1.3mmのバーナA(記載事項(オ))を用いた場合には、同(キ)によれば、小口径助燃性ガスノズルから噴出される酸素流量が2.1?2.8SLM(流速26?35m/秒)で合成速度の最大値20g/分であったとしている。そして、同(オ)によれば、各ノズルへ供給するガスの種類及びその流量は表1に示す通りであり、表1を摘示する同(カ)によれば、小口径助燃性ガスノズルからの助燃性ガスも含めて、供給するガスは全て特定の数値又は数値範囲の流量に設定されている。
したがって、実施例1には、各ノズルから供給されるガスの流量を調整すること、すなわち、小口径助燃性ガスノズルからの助燃性ガスの流量を調節して流速を制御し、もってガラス微粒子合成速度を向上させるにあたり、併せて、原料ガス、可燃性ガス及び他のノズルからの助燃性ガスを特定の流量とする発明が記載されている。

エ ガス流速の調整
実施例1に記載された発明では、各ノズルから供給されるガスの流量を調整することを介して、該供給ガスの流速を調整しているといえる。このことは、引用例1の次の記載から明らかである。
すなわち、記載事項(イ)には、「(2)前記助燃性ガスノズルに供給する助燃性ガス流量を、噴出するガス流速が19m/秒以上、35m/秒以下となるようノズル内径に応じて調整することを特徴とする(1)に記載の光ファイバ用母材の製造方法、」と記載されており、また同(エ)にも、「特にこの助燃性ガスの流量に基づく各小口径ノズルから噴出する助燃性ガスの流速がガラス合成速度を左右することがわかった。本発明の方法では、小口径の助燃性ガスノズルへ供給される助燃性ガス流量を、噴出するガス流速が19m/秒?35m/秒となるようにするのが好ましく、更に好ましくは23m/秒?30m/秒となるようにするものである。小口径ノズルの数及びその内径に応じて助燃性ガス流量は調整でき、」と記載されている。
このことから、小口径ノズルの数や内径に応じて助燃性ガス流量が調整され、そのガス流量に基づいてガス流速が調整される。すなわち、助燃性ガス流量を調整することで、そのガス流速を調整することが記載されているといえ、このことは、1つのマルチノズルバーナに供給される他の供給ガスである以上は、他の供給ガスに関しても共通するものである
したがって、実施例1には、供給されるガスの流速を調整することが実質的に記載されているといえる。

オ 各ノズルからのガス流速
そこで、実施例1では、供給ガスの流量の調節により、実質的にどの程度に流速を調整しているかを、バーナAを使用している場合について検討する。なお、各ノズルの断面積を計算するにあたって、便宜上、該バーナを構成する板材の厚さをゼロとしている。

a 原料ガスノズルからのガス流速(本願発明のV_(1)に相当)
原料ガスノズルからは、記載事項(カ)によれば、毎分90?110gのSiCl_(4)と9.0リットルのO_(2)が原料ガスとして噴出されている。
ここで、90?110gのSiCl_(4)の体積は、11.9?14.6リットルである(90gのSiCl_(4)の計算式:(90÷(28.1+4×35.5))×22.4)=11.85)。そうすると、9.0リットルのO_(2)と併せて、毎分20.9?23.6リットルのガスが噴出されることになる。
そして、原料ガスノズルは、内径は記載事項(オ)によれば3.0mmであり、その断面積は7.1×10^(-6)m^(2)(計算式:3.0/2×10^(-3)×3.0/2×10^(-3)×3.14)であるので、原料ガスノズルからの原料ガスの流速は、49.1?55.4m/秒となる(SiCl_(4)が90gの場合の計算式:(20.9×10^(-3))÷(7.1×10^(-6)×60))。

b 小口径の助燃ガスノズルからのガス流速(本願発明のV_(2)に相当)
小口径助燃ガスノズルからは、記載事項(キ)によれば、ノズル1本あたり毎分2.1?2.8リットルのO_(2)が噴出される。
そして、該ノズルの内径は1.3mm(同(オ))であるので、流量が毎分2.1?2.8リットルの場合の流速は、26.9?35.9m/秒となる(2.1リットルの場合の計算式:(2.1×10^(-3))÷(60×(1.3/2×10^(-3)×1.3/2×10^(-3))×3.14))。算出された助燃性ガスの流速は、記載事項(キ)において、酸素流量が2.1?2.8SLMである場合に、流速は26?35m/秒としていることと対応している。

c 可燃ガスノズルからのガス流速(本願発明のV_(3)に相当)
可燃ガスノズルからは、記載事項(カ)によれば、毎分230リットルのH_(2)が噴出される。
可燃ガスノズルの内径は27mmであるが、14本の助燃ガスノズル(内径1.3mm)と内側シールガスノズル(内径6.5mm、以上同(オ))の断面積を除外する必要があるので、可燃ガスノズルの断面積は、520.5×10^(-6)m^(2)である(計算式:(27/2×10^(-3)×27/2×10^(-3)×3.14)-14×(1.3/2×10^(-3)×1.3/2×10^(-3)×3.14)-(6.5/2×10^(-3)×6.5/2×10^(-3)×3.14))。
そうすると、可燃ガスノズルからの流速は、7.4m/秒となる(計算式:(230×10^(-3))÷(520.5×10^(-6)×60))。

d 外側助燃ガスノズルからのガス流速(本願発明のV_(4)に相当)
外側助燃ガスノズルからは、毎分70リットルのO_(2)ガスが噴出される(記載事項(カ))。そして、該ノズルの断面積は、内径37mmの断面積から内径32mmの外側シールガスノズルの断面積を除外したものであるので、270.9×10^(-6)m^(2)である(37/2×10^(-3)×37/2×10^(-3)×3.14)-(32/2×10^(-3)×32/2×10^(-3)×3.14))。
そうすると、外側助燃ガスノズルからの助燃ガス流速は、4.3m/秒となる(計算式:(70×10^(-3))÷(270.9×10^(-6)×60))。

e 以上をまとめると、
原料ガスノズルからのガス流速V_(1) :49.0?55.4m/秒
小口径助燃ガスノズルからのガス流速V_(2):26.9?35.9m/秒
可燃ガスノズルからのガス流速V_(3) :7.4m/秒
外側助燃ガスノズルからのガス流速V_(4) :4.3m/秒
したがって、V_(1)>V_(2)>V_(3)>V_(4)となる。

カ 引用例1発明
以上のとおりであるので、引用例1の実施例1には、次の発明(以下「引用例1発明」という。)が記載されている。
「マルチノズルバーナを用いてガラス原料ガスを火炎中で加水分解させてガラス微粒子を生成し、該ガラス微粒子を回転する出発母材上に堆積させて光ファイバ用母材を製造する方法であって、
該マルチノズルバーナは、中心部でガラス原料ガス及び助燃性ガスを噴出する原料ガスノズルと、その外側に同心円状に、焦点距離が同一の2列の環状に配列された14本の助燃性ガスを噴出する小口径助燃性ガスノズル、該小口径助燃性ガスノズルを内包して可燃性ガスを噴出する可燃性ガスノズル、及び最外側に助燃性ガスを噴出する外側助燃性ガスノズルを有するものであり、
ガラス原料ガスと助燃性ガスを噴出する原料ガスノズルのガス流速をV_(1)、その外側の可燃性ガスノズルに内包された、原料ガスノズルに対して同心円状に配置された助燃性ガスを噴出する小口径助燃性ガスノズルのそれぞれのガス流速をV_(2)、可燃性ガスを噴出する可燃性ガスノズルのガス流速をV_(3)、さらにその外側の助燃性ガスを噴出する外側助燃性ガスノズルのガス流速をV_(4)とするとき、V_(1)>V_(2)>V_(3)>V_(4)となるように、ガス流速を制御する光ファイバ用母材の製造方法。」

4 対比・判断
4-1 対比
本願発明と引用例1発明とは、「ガラス原料ガスを火炎中で加水分解させてガラス微粒子を生成し、該ガラス微粒子を回転する出発母材上に堆積させて光ファイバ用母材を製造する方法」である点で共通する。
また、引用例1発明における「原料ガスノズル」、「小口径の助燃性ガスノズル」、「可燃性ガスノズル」及び「外側助燃性ガスノズル」は、本願発明における「中心ガス噴出ポート」、「小口径ガス噴出ポート」、「可燃性ガス噴出ポート」及び「助燃性ガス噴出ポート」に相当する。
このため、引用例1発明におけるマルチノズルバーナは、「中心ガス噴出ポートの外側に、該中心ガス噴出ポートに対して同心円状に複数のガス噴出ポートを有し、このうちの可燃性ガス噴出ポート内に、複数の小口径ガス噴出ポートを有するガラス微粒子合成用バーナ」である点で、本願発明で使用するバーナと共通する。
したがって、本願発明と引用例1発明との一致点と相違点は、次のとおりとなる。
(1)一致点
「中心ガス噴出ポートの外側に、該中心ガス噴出ポートに対して同心円状に複数のガス噴出ポートを有し、このうちの可燃性ガス噴出ポート内に、焦点距離が同一の複数の小口径ガス噴出ポートを有するガラス微粒子合成用バーナを用いて、ガラス原料ガスを火炎中で加水分解させてガラス微粒子を生成し、該ガラス微粒子を回転する出発母材上に堆積させて光ファイバ用母材を製造する方法において、
ガラス原料ガスと助燃性ガスを噴出する中心ガス噴出ポートのガス流速をV_(1)、その外側の可燃性ガス噴出ポートに内包された、中心ガス噴出ポートに対して同心円状に配置された助燃性ガスを噴出する複数の小口径ガス噴出ポートのそれぞれのガス流速をV_(2)、可燃性ガスを噴出する可燃性ガス噴出ポートのガス流速をV_(3)、さらにその外側の助燃性ガスを噴出する助燃性ガス噴出ポートのガス流速をV_(4)とするとき、V_(1)>V_(2)>V_(3)>V_(4)となるように、ガス流速を制御する光ファイバ用母材の製造方法。」

(2)相違点
助燃性ガスを噴出する小口径ガス噴出ポートが、本願発明では、焦点距離が同一で中心ガス噴出ポートに対して同心円状に1列に配置された8本からなるのに対し、引用例1発明では、焦点距離が同一で中心ガス噴出ポートに対して同心円状2列の環状に配列された14本からなる点。

4-2 判断
マルチノズルバーナにおいて、可燃性ガスノズル内に配列する小口径助燃性ガスノズルを、焦点距離を同じくして同心円状1列8本に設定することは、本願出願前に周知の技術である。この点について必要なら、例えば、特公平3-9047号公報の第4頁右欄8?24行及び図1、2、特開平10-167748号公報の第2頁右欄1?17行及び図3(A)(B)を参照されたい。
また、引用例1の記載事項(ウ)によれば、小口径の助燃性ガスノズルは、環状に配列されるのが好ましく、その数は任意であるとされ、助燃性ガスの供給量や流速等を勘案して定められるとされている。
そして、助燃性ガスの供給量や流速を適切な範囲に設定して形成する火炎を安定させることは、当業者が常に留意することであるので、実施例1に記載された助燃性ガスノズルは、焦点距離が同一の内側6本と外側8本からなるものであるが、これを、焦点距離が同一で同心円状1列8本からなる周知のバーナに変更することは、当業者が容易に想到するところである。
したがって、引用例1発明に対して、上記相違点に係る構成を採用することは、当業者が容易になしうることであり、その効果も格別のものとすることはできない。

5 結論
以上のとおりであるので、本願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-26 
結審通知日 2013-02-28 
審決日 2013-03-12 
出願番号 特願2009-48962(P2009-48962)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 直也  
特許庁審判長 真々田 忠博
特許庁審判官 國方 恭子
松本 貢

発明の名称 光ファイバ用母材の製造方法  
代理人 嶋崎 英一郎  

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