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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16H
管理番号 1273413
審判番号 不服2012-7639  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-25 
確定日 2013-05-02 
事件の表示 特願2006-63150号「インホイールモータ駆動装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年9月20日出願公開、特開2007-239886号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年3月8日の出願であって、平成24年1月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年4月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成24年4月25日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成24年4月25日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
平成24年4月25日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
ケーシングと、
モータ側回転部材を回転駆動するモータ部と、
前記モータ側回転部材の回転を減速して車輪側回転部材に伝達する減速部と、
前記車輪側回転部材に固定連結された車輪ハブと、
前記車輪ハブを前記ケーシングに対して回転自在に支持する車輪ハブ軸受とを備え、
前記車輪ハブ軸受は、
第1および第2外側軌道面が形成された外方部材と、
前記第1外側軌道面に対向する第1内側軌道面が外径面に形成された前記減速部の出力部材である前記車輪側回転部材と、
前記第2外側軌道面に対向する第2内側軌道面が外径面に形成された前記車輪ハブと、
前記外方部材に形成された前記第1外側軌道面と、前記減速部の出力部材に形成された前記第1内側軌道面との間、および前記外方部材に形成された前記第2外側軌道面と、前記車輪ハブに形成された前記第2内側軌道面との間に配置される複数の転動体とを含む、インホイールモータ駆動装置。」
と補正された。(なお、下線は補正箇所を示す。)

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である第1外側軌道面について、「前記外方部材に形成された」ことを限定するとともに、以下同様に、第1内側軌道面について、「前記減速部の出力部材に形成された」ことを限定し、第2外側軌道面について、「前記外方部材に形成された」ことを限定し、第2内側軌道面について、「前記車輪ハブに形成された」ことを限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物は、次のとおりである。

刊行物1:特開2001-315534号公報
刊行物2:特開2005-256898号公報

(1)刊行物1(特開2001-315534号公報)の記載事項
刊行物1には、「ホイールインモータ車のモータ搭載構造」に関し、図面(特に、図2)とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、車輪を回転可能に支持するアクスルに取り付けられて車輪を駆動するモータを備えたホイールインモータ車のモータ搭載構造に関する。」

イ 「【0024】図1は、この発明の実施の一形態を示すホイールインモータ車のモータ搭載構造の基本構造図である。車両前部の車輪1を回転可能に支持するアクスル3にはブレーキ4が設けられるとともに、車輪1を回転駆動するモータ5が、駆動力を減速して車輪1に伝える減速機7を介して装着されている。」

ウ 「【0030】図2は、図1の詳細構造を示している。車輪1としてタイヤ19がロードホイール21に装着され、アクスル3は、ブレーキディスク23、ハブ25、スピンドル27、アクスルベアリング29とから構成されている。ブレーキディスク23とハブ25はボルト・ナット31によりロードホイール21に固定され、スピンドル27はナット32よりハブ25に固定されている。
【0031】モータ5は、ロータ33が固定されたモータシャフト35が、一対のモータベアリング37を介してモータハウジング39に回転可能に設けられるとともに、モータハウジング39の内面にステータ41が装着されている。また、モータシャフト35の図中で左端部のモータハウジング39の外部には、モータ5の回転数を検出する回転数センサ43が設けられている。
……
【0034】減速機7は、モータハウジング39の図中で右側に突出した部分のモータシャフト35に固定されたサンギヤ49と、サンギヤ49に噛み合う複数のプラネタリギア51とを備えた遊星歯車機構で構成され、これらが減速機ハウジング53内に収容されている。減速機ハウジング53は、内周面に、複数のプラネタリギア51が噛み合うリングギア55が装着され、図示しないボルトによりモータハウジング39に固定されている。複数のプラネタリギア51相互を連結するキャリア57は、前記したスピンドル27に連結され、減速機7からの回転動力がアクスル3および車輪1に伝達される。」

エ 上記記載事項ウとともに図2の記載を参酌すると、アクスルベアリング29は、ハブ25を減速機ハウジング53に対して回転自在に支持すること及び上記アクスルベアリング29は、並列する転動体としての玉を含むことが看取される。

これら記載事項及び図面(特に、図2)の記載を総合すると、刊行物1には、
「モータハウジング39及び該モータハウジング39に固定されている減速機ハウジング53と、
モータシャフト35を回転駆動するモータ5と、
上記モータシャフト35の回転を減速してスピンドル27に連結されたキャリア57に伝達する減速機7と、
上記スピンドル27がナット32により固定されるハブ25と、
上記ハブ25を上記減速機ハウジング53に対して回転自在に支持するアクスルベアリング29とを備え、
上記アクスルベアリング29は、並列する転動体としての玉を含む、ホイールインモータ駆動装置。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(2)刊行物2(特開2005-256898号公報)の記載事項
刊行物2には、「車輪用軸受装置」に関し、図面(特に、図6)とともに次の事項が記載されている。

オ 「【0001】
本発明は車輪用軸受装置に関し、より具体的には、車輪用軸受装置におけるハブ輪など、加締め加工を行なう部品を含む車輪用軸受装置に関するものである。」

カ 「【0004】
一般に、上記車輪用軸受装置においては大きな荷重が繰り返し負荷されるため、上記熱間鍛造後に、焼入れ処理を施すことにより十分な強度を車輪用軸受装置の部品に付与している。これら車輪用軸受装置では、転動体を両側から挟む外方部材(外輪)と内方部材(内輪)とを有するが、内方部材が、第1および第2の2つの内方部材、たとえばハブ輪および内輪によって構成される。部品点数の削減等を推進するため、上記2つの内方部材を結合する結合手段として、加締め加工が用いられている。」

キ 「【0034】
図6は本発明の他の実施の形態である車輪用軸受装置10を示す、駆動用の車輪用軸受装置であり、等速自在継手50が組み合わされ、等速自在継手50が車輪用軸受装置の内輪2を兼ねる構造を示す図である。等速自在継手50は、内輪32と、外輪に相当する外側継手部33と、上記外側継手部33と内輪32との間にケージ34によって保持されるトルク伝達ボール31とを備える。等速自在継手50から回転力がハブ輪4に伝達され、さらにハブ輪4からハブボルト11によって連結されるタイヤに伝達される。等速自在継手50の外側継手部33の軸部33aの端部が拡径加締めによりハブ輪4に固定される。本実施の形態では等速自在継手50の外側継手部材33が第1内方部材であり、ハブ輪4が第2内方部材である。外側継手部材33の軸部33aのオーステナイト粒の粒度番号は6番以上である。この組み合わせにおいて、ハブ輪4、外輪3および車輪用軸受装置10の内輪2を兼ねる等速自在継手50の上記外側継手部33は、上記粒状フェライト生成鋼材により製造される。」

3 発明の対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「モータハウジング39及び該モータハウジング39に固定されている減速機ハウジング53」の「モータハウジング39」及び「減速機ハウジング53」は、その機能からみて、2つ併せて本願補正発明の「ケーシング」に相当し、以下同様に、「モータシャフト35」は「モータ側回転部材」に、「モータ5」は「モータ部」に、「スピンドル27に連結されたキャリア57」の「スピンドル27」及び「キャリア57」は2つ併せて「車輪側回転部材」に、「減速機7」は「減速部」に、「ハブ25」は「車輪ハブ」に、「アクスルベアリング29」は「車輪ハブ軸受」に、「並列する転動体としての玉」は「複数の転動体」に、「ホイールインモータ駆動装置」は「インホイールモータ駆動装置」に、それぞれ相当する。

よって、本願補正発明の用語に倣って整理すると、本願補正発明と引用発明とは、
[一致点]
「ケーシングと、
モータ側回転部材を回転駆動するモータ部と、
前記モータ側回転部材の回転を減速して車輪側回転部材に伝達する減速部と、
前記車輪側回転部材に固定連結された車輪ハブと、
前記車輪ハブを前記ケーシングに対して回転自在に支持する車輪ハブ軸受とを備え、
前記車輪ハブ軸受は、
複数の転動体を含む、インホイールモータ駆動装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
車輪ハブ軸受に関し、本願補正発明は、「前記車輪ハブ軸受は、第1および第2外側軌道面が形成された外方部材と、前記第1外側軌道面に対向する第1内側軌道面が外径面に形成された前記減速部の出力部材である前記車輪側回転部材と、前記第2外側軌道面に対向する第2内側軌道面が外径面に形成された前記車輪ハブと、前記外方部材に形成された前記第1外側軌道面と、前記減速部の出力部材に形成された前記第1内側軌道面との間、および前記外方部材に形成された前記第2外側軌道面と、前記車輪ハブに形成された前記第2内側軌道面との間に配置される複数の転動体とを含む」のに対して、引用発明は、車輪ハブ軸受に相当するアクスルベアリング29が、本願補正発明のような外輪軌道面及び内輪軌道面の構成を含むものではない点。

4 当審の判断
(1)相違点について
刊行物2の記載事項オ?キ及び図6の記載とともに、車輪用軸受装置に関する技術常識(例えば周知例として、特開2003-34105号公報の段落【0002】?【0007】及び図4、特開2003-206947号公報の段落【0002】?【0007】及び図8、特開2004-90732号公報の段落【0002】?【0007】及び図9を参照)を参酌すると、刊行物2には、
「車輪用軸受装置10は、
2つの外側軌道面が形成された外輪3と、
上記2つの外側軌道面のうちの一方の外側軌道面(図6の右側)に対向する内側軌道面が外径面に形成された、車輪用軸受装置10の内輪2を兼ねる等速自在継手50の外側継手部33と、
上記2つの外側軌道面のうちの他方の外側軌道面(図6の左側)に対向する内側軌道面が外径面に形成されたハブ輪4と、
上記外輪3に形成された上記一方の外側軌道面(図6の右側)と、上記車輪用軸受装置10の内輪2を兼ねる等速自在継手50の外側継手部33に形成された上記内側軌道面との間、および上記外輪3に形成された上記他方の外側軌道面(図6の左側)と、上記ハブ輪4に形成された上記内側軌道面との間に配置される複数の転動体とを含む、車輪用軸受装置10。」
の発明(以下「刊行物2記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

ところで、引用発明のアクスルベアリング29と刊行物2記載の発明の車輪用軸受装置10とは、ともに車輪ハブ(引用発明のハブ25、刊行物2記載の発明のハブ輪4)を回転自在に支持する車輪ハブ軸受であるという点で技術分野を共通にする。
また、上記技術常識によれば、刊行物2記載の発明においては、軽量・コンパクト化を図るために、ハブ輪4と、軸受部と、等速自在継手50とをユニット化して車輪用軸受装置10を構成しているものと認められるところ、軽量・コンパクト化という課題は、当業者が通常考慮すべき課題であって、引用発明のアクスルベアリング29を用いたハブ25の軸受装置においても内在しているものと解される。
さらに、刊行物2記載の発明の車輪用軸受装置10では、部品点数の削減等を推進するために(刊行物2の記載事項カ)、等速自在継手50の外側継手部33の軸部33aの端部が拡径加締めによりハブ輪4に固定されている。そして、引用発明においては、スピンドル27がナット32によりハブ25に固定されているが、スピンドル27とハブ25とを加締めにより固定すれば、ナット32を用いる必要がないことは、当業者が容易に予測し得ることである。

そうすると、引用発明のアクスルベアリング29に代えて刊行物2記載の発明の車輪用軸受装置10を適用する動機付けは十分にあるといえる。

そして、アクスルベアリング29は、減速機ハウジング53とスピンドル27及びハブ25の間に配置されるものであるから、刊行物2記載の発明の軸受装置の外輪3、外側継手部33及びハブ輪4の構成をそれぞれ適用して、上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)作用効果について
本願補正発明が奏する作用効果は、刊行物1及び2に記載された発明から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものとはいえない。

(3)まとめ
したがって、本願補正発明は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 むすび
以上のとおり、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成24年4月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成23年9月27日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
ケーシングと、
モータ側回転部材を回転駆動するモータ部と、
前記モータ側回転部材の回転を減速して車輪側回転部材に伝達する減速部と、
前記車輪側回転部材に固定連結された車輪ハブと、
前記車輪ハブを前記ケーシングに対して回転自在に支持する車輪ハブ軸受とを備え、
前記車輪ハブ軸受は、
第1および第2外側軌道面が形成された外方部材と、
前記第1外側軌道面に対向する第1内側軌道面が外径面に形成された前記減速部の出力部材である前記車輪側回転部材と、
前記第2外側軌道面に対向する第2内側軌道面が外径面に形成された前記車輪ハブと、
前記第1外側軌道面と前記第1内側軌道面との間、および前記第2外側軌道面と前記第2内側軌道面との間に配置される複数の転動体とを含む、インホイールモータ駆動装置。」

2 引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1及び2とその記載事項は、上記第2、2に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記第2で検討した本願補正発明から、第1外側軌道面についての限定事項である「前記外方部材に形成された」との事項を省くとともに、以下同様に、第1内側軌道面についての限定事項である「前記減速部の出力部材に形成された」との事項を省き、第2外側軌道面についての限定事項である「前記外方部材に形成された」との事項を省き、第2内側軌道面についての限定事項である「前記車輪ハブに形成された」との事項をを省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含む本願補正発明が、上記第2、3及び4に記載したとおり、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2ないし4に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-04 
結審通知日 2013-03-05 
審決日 2013-03-18 
出願番号 特願2006-63150(P2006-63150)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16H)
P 1 8・ 121- Z (F16H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大内 俊彦  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 窪田 治彦
山岸 利治
発明の名称 インホイールモータ駆動装置  
代理人 吉田 博由  
代理人 伊藤 英彦  
代理人 森下 八郎  

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