• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1273422
審判番号 不服2012-10594  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-06 
確定日 2013-05-02 
事件の表示 特願2010-500473「画像処理装置、画像処理方法および画像処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 9月 3日国際公開、WO2009/107197〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯
1.手続
本件出願の手続の概要は以下のとおりである。

特許出願(国際出願) :平成20年 2月26日
拒絶理由通知 :平成23年10月28日(起案日)
意見書 :平成23年12月19日
拒絶査定 :平成24年 2月28日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成24年 6月 6日
手続補正 :平成24年 6月 6日
前置審査報告 :平成24年 6月29日
審尋 :平成24年 8月 8日(起案日)
回答書 :平成24年 9月19日

2.査定
原査定の理由は、概略、以下のとおりである。

本願の請求項1ないし請求項4に係る発明は、いずれも、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の各刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記(刊行物)
刊行物1:特開2004-165840号公報
刊行物2:特開2000-163570号公報
刊行物3:佐藤 一睦、片桐 哲也、掃部 幸一、芹田 保明,広ダイナミックレンジ画像の高コントラスト化画像処理,KONICA MINOLTA TECHNOLOGY REPORT,日本,2007年,VOL.4,p.82-87
刊行物4:特開2002-44425号公報
刊行物5:特開2004-253909号公報

第2 補正の却下の決定
平成24年6月6日付けの手続補正について次のとおり決定する。

《結論》
平成24年6月6日付けの手続補正を却下する。

《理由》
1.補正の内容
平成24年6月6日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、請求項1についてする以下の補正事項を含むものである(アンダーラインは補正箇所)。

請求項1について、

「【請求項1】
入力画像のダイナミックレンジを圧縮する画像処理装置であって、
前記入力画像を縮小した縮小画像を生成する画像縮小処理手段と、
前記画像縮小処理手段により生成された縮小画像から、前記縮小画像のエッジ部分を保存しつつ平滑化した平滑化画像を生成する平滑化画像生成手段と、
前記平滑化画像生成手段により生成された平滑化画像を元の入力画像の大きさに拡大した拡大画像を生成する画像拡大処理手段と、
前記画像拡大処理手段により生成された拡大画像と前記入力画像との相対値に基づいて、前記入力画像のダイナミックレンジを圧縮した出力画像を生成する出力画像生成手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。」

とあるのを、

「【請求項1】
入力画像のダイナミックレンジを圧縮する画像処理装置であって、
前記入力画像を縮小した縮小画像を生成する画像縮小処理手段と、
前記画像縮小処理手段により生成された縮小画像から、前記縮小画像のエッジ部分を保存しつつ平滑化した平滑化画像を生成する平滑化画像生成手段と、
前記平滑化画像生成手段により生成された平滑化画像を元の入力画像の大きさに拡大した拡大画像を生成する画像拡大処理手段と、
前記画像拡大処理手段により生成された拡大画像と前記入力画像との相対値を用いて、前記入力画像のダイナミックレンジを圧縮した出力画像を生成する出力画像生成手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。」

と補正する。

2.本件補正の適合性
(1)補正の範囲
上記補正事項は、願書に最初に添付した明細書の記載(段落【0018】【0024】【0039】)に基づくものであり、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてする補正である。

(2)補正の目的
上記補正事項は、「相対値に基づいて」を、「相対値を用いて」と限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(3)独立特許要件
上記補正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるので、以下、独立特許要件について検討する。

ア.補正後の請求項1に係る発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正後発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
入力画像のダイナミックレンジを圧縮する画像処理装置であって、
前記入力画像を縮小した縮小画像を生成する画像縮小処理手段と、
前記画像縮小処理手段により生成された縮小画像から、前記縮小画像のエッジ部分を保存しつつ平滑化した平滑化画像を生成する平滑化画像生成手段と、
前記平滑化画像生成手段により生成された平滑化画像を元の入力画像の大きさに拡大した拡大画像を生成する画像拡大処理手段と、
前記画像拡大処理手段により生成された拡大画像と前記入力画像との相対値を用いて、前記入力画像のダイナミックレンジを圧縮した出力画像を生成する出力画像生成手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。」

イ.刊行物の記載等
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1である特開2004-165840号公報(以下「引用例1」という。)には、「画像処理プログラム」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。
「【請求項1】
Retinex処理をコンピュータに実行させる画像処理プログラムにおいて、
処理対象となる原画像の解像度を下げた画像を生成する第1ステップと、
前記原画像の解像度を下げた画像からボケ画像を生成する第2ステップと、
前記ボケ画像を前記原画像の解像度に戻す第3ステップと、
前記原画像と前記原画像の解像度に戻されたボケ画像とに基づいてRetinex処理を実行する第4ステップとをコンピュータに実行させる、画像処理プログラム。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、画像処理プログラムに関し、特にデジタルカメラやフィルムスキャナなどの出力画像の処理においてRetinex処理を行う画像処理プログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の画像処理の分野では、生体における網膜や皮質と同等の役割をモデル化した画像処理技術として、Center/Surround Retinex処理が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
Retinex処理とは、デジタルデータである画像情報を補正する方法である。Retinex処理には各種の変形例が考えられるが、ここでは、視覚をモデル化して注目画素に対して周辺情報を加味する画像の補正方法を総括してRetinex処理と呼んでいる。後述する拡張Retinexも、Retinex処理の一形態に含まれるものとする。Retinex処理では画像中の明暗部に応じて、局所局所でゲイン調整が変わるため、ダイナミックレンジを圧縮する効果がある。
【0004】
Center/Surround Retinexアルゴリズムに関して、Single Scale Retinex(SSR)、及びMulti Scale Retinex(MSR)が知られている。以下にそれぞれのアルゴリズムについて説明する。
【0005】
Single Scale Retinex(SSR)は、次の式(1)によって表される。式(1)の処理をR,G,Bの各チャンネルに対して実行し、統合することでカラー出力画像が得られる。
【0006】
Ti(x,y)= log Ii(x,y)-log{F(x,y)*Ii(x,y)} …(1)
(i=R,G,B)
ここで、「*」はコンボリューション積分を表す。また、Ti(x,y)はSSR処理後の画素値を表し、Ii(x,y)は原画像の画素値を表す。F(x,y)は、注目画素の周囲の画素を考慮してボケ画像を作成するためのフィルタに用いられる関数である。F(x,y)として例えばガウス関数を用いると、F(x,y)は、次の式(2)および(3)を満たすこととなる。
【0007】
F(x,y)=K・exp{-(x2+y2)/c2} …(2)
ΣΣF(x,y)=1 …(3)
ここで、cはガウス関数における周辺の広がりを決める定数であり、カーネル値と呼ばれる。式(3)を満たすように定数Kは定められる。一般的には、cの値が小さい程、画像処理においてエッジを強調する効果が高くなり、cの値が大きい程、ダイナミックレンジ圧縮の効果が高くなることが知られている。
【0008】
また、SSR処理後の出力画像のコントラストを向上させることを目的に、クリッピング処理が行われる。通常、ヒストグラム分布にして、上下3%前後の画素値はクリッピングしてから、線形変換によって出力ビット数(例えば8ビット)に応じたデジタル値に割り振られる。
【0009】
図18は、ボケ画像作成のためにガウス関数を用いたSSRの具体的な処理を説明するための図である。
【0010】
図を参照して、i=R,G,Bからなるオリジナル画像(処理対象画像)D2に対して処理が行われる。なお、オリジナル画像においてRGBを合成した画像を図中P2で示している。
【0011】
D2の各画素値は、Ii(x,y)として示される。ボケ画像D4を作成するためにIi(x,y)*G(x,y)の演算が行われる。ここにG(x,y)はガウス関数である。
【0012】
オリジナル画像の各画素値を、ボケ画像の各画素値で除算する処理が行われ、そのlogを求めることで、Retinex処理後の画像D5が得られる。D5の各画素値をここではRi(x,y)とする。R,G,BからなるD5を合成することで、Retinex処理後の画像P1が得られる。
【0013】
一方、Multi Scale Retinex(MSR)では、式(2)における定数cとして、異なる幾つかの値が用いられる。これにより、周辺の広がりが異なるガウス関数によるSSR処理が行われる。それぞれの結果を足し合わせて平均化することにより、エッジ強調、及びダイナミックレンジ圧縮を同時に達成している。
【0014】
図19は、ガウス関数を用いたMSR処理を説明するための図である。
図を参照して、周辺の広がりが狭いガウス関数(サイズの小さいフィルタ)により作成されたボケ画像D4-1、周辺の広がりが中位のガウス関数(サイズの中位のフィルタ)により作成されたボケ画像D4-2、および周辺の広がりが広いガウス関数(サイズの大きいフィルタ)により作成されたボケ画像D4-3がオリジナル画像D2に基づいて作成される。
【0015】
そして、オリジナル画像D2を各ボケ画像で除算し、それぞれの対数をとることで、画像D5-1?D5-3が得られる。フィルタサイズが小さい関数で処理を行った画像の方がエッジ強調効果が高く、逆にフィルタサイズが大きい関数で処理を行った画像の方がダイナミックレンジ圧縮の効果が高い。画像D5-1?D5-3を足し合わせて平均化することにより、エッジ強調、及びダイナミックレンジ圧縮を同時に達成することができる。
【0016】
ネガフィルムなどからフィルムスキャナによってデジタル化された画像データや、デジタルスチルカメラなどで撮影されたデジタル画像データに対して以上のようなSSR、およびMSR処理を適用する研究が盛んに行われている。」
「【0078】
[第6の実施の形態]
上述のように、たとえばコンボリューション積分にフーリエ変換を用いることで、演算を高速に行なうことができる。
【0079】
しかしながら、通常、画像は2次元であり、また、FFTやDFTといった処理は、実数タイプのデータに対して実行する必要があるため、式(4)内のFFT{F(x,y)}やFFT{Ii(x,y)}を実行するためには、非常に多くのメモリが必要とされる。最近の1GB程度のメモリを搭載したPCを使用した場合、比較的解像度の低い画像(例えばVGA:640×480)では、高速に問題なく処理完了できるものの、比較的解像度の高い画像(例えばFULL:2560×1920)では、メモリ不足となり処理完了できない場合もある。このため、あまり実用的とは言えないのが現状である。
【0080】
本実施の形態では、従来技術、および第1?第5の実施の形態で説明したRetinex処理において、以下の処理を行うことで、上記問題の解決を図っている。
【0081】
まず、原画像Ii(x,y)の解像度を一旦低くした低解像度の原画像Low_Ii(x,y)を作成する。そのLow_Ii(x,y)からボケ画像を生成する。
【0082】
解像度の変換手法としては、Zero Order,Bi-Linear,Quadratic,Cubic Splineなどの手法が知られており、これらのいずれかを用いればよい。
【0083】
例えば、低解像度の原画像Low_Ii(x,y)と同一の画像サイズとなる低解像度のフィルタ画像Low_F(x,y)により(例えば、Low_Ii(x,y)が640×480であれば、Low_F(x,y)も640×480)、ボケ画像生成のために、式(7)のコンボリューション積分、または、周波数領域における掛け算および逆FFT処理が実行される。
【0084】
Low_F(x,y)*Low_Ii(x,y)=FFT-1{FFT{Low_F(x,y)}・FFT{Low_Ii(x,y)}} …(7)
当然、式(7)で生成されるボケ画像は、原画像Ii(x,y)の解像度と異なるため、そのままでは式(1)の計算は実行できない。
【0085】
式(1)の計算を実行するためには、原画像とボケ画像とのお互いの解像度を合わせる必要があり、式(7)で生成されるボケ画像の解像度を、補間によって(同様にZero Order,Bi-Linear,Quadratic,Cubic Splineなどの手法を用いて)、原画像Ii(x,y)の解像度と同一とする。
【0086】
このとき、原画像Ii(x,y)の解像度を低くした際に用いた変換手法と同一のものを選択してもよいし、異なる変換手法を選択してもよい。このようなボケ画像の作成を行うことで、少ないメモリ消費で、高解像度画像のRetinex処理を高速に実行することが可能となる。
【0087】
図8は、本実施の形態の画像処理装置のRetinex処理部の構成を示す図である。
【0088】
図を参照して、Retinex処理部は、原画像D2の解像度を下げる補間演算を行う補間部401と、補間部401の出力である解像度が下げられた画像に対してフィルタを用いた処理を行うことでボケ画像を生成するボケ画像生成部403と、ボケ画像の解像度を変更し、原画像D2と同じ解像度にする補間部405とを備えている。Retinex処理部407で、原画像D2と補間部405の出力画像とに基づきRetinex処理が行われる。」
「【図8】


「【図18】



(イ)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物2である特開2000-163570公報(以下「引用例2」という。)には、「画像処理装置、方法及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

「【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。図1は、本発明の実施の形態による画像処理装置を含むX線デジタル撮影装置100を示す。図1において、このX線デジタル撮影装置100は、ダイナミックレンジ圧縮(DRC)機能を有するX線画像の画像処理装置であり、前処理回路106、CPU108、メインメモリ109、操作パネル110、画像表示器111、DRC回路112を備えており、CPUバス107を介して互いにデータ授受されるようになされている。」
「【0029】また、DRC回路112図において、112aは、階調変換回路112eで行う階調変換の階調変換曲線の微係数を計算する微係数計算回路であり、メインメモリ109は、上記計算された微係数をCPUバス107を介して記憶する。112bは、前処理回路106から出力された原画像113の平滑化画像(低周波画像)114を作成する平滑化画像作成回路、112cは、平滑化画像114と原画像113との差分を計算する高周波成分作成回路、112dは高周波成分作成回路112cで作成された高周波成分を、メインメモリ109に記憶された微係数の値に応じて原画像113に足し込む高周波成分足し込み回路、112eは、上記高周波成分を足し込まれた画像を、微係数計算回路112aで微係数を計算するための元になった階調曲線で階調変換する階調変換回路である。
【0030】次にDRC回路112の動作について図2の処理の流れに従い説明する。CPUバス107を介して前処理回路106で処理された原画像113、f0(x,y)を、CPU108の制御を介して受信したDRC回路112は、微係数計算回路112aで階調変換回路112eで用いる階調変換曲線の微係数から係数c(x)を(14)式に従い計算する。ここで係数c(x)は、階調変換曲線の傾きを1から引いた値であり、F(x)はxが入力画素値を示す階調変換曲線である。
c(x)=1/{∂F(x)/∂x}-1・・・・(14)
【0031】そして、この微係数c(x)をCPUバス107を介してメインメモリ109に記憶する(ステップS201)。
【0032】次に、平滑化画像作成回路112bは、(15)式に従い平滑化画像fus(x,y)(114)を計算する(ステップS202)。ここでx,yは画像上の座標を示し、dはマスクサイズの大きさを示す定数である。
【0033】
【数1】

【0034】次に、高周波成分作成回路112bは、(16)式で示すように原画像f0(x,y)と上記平滑化画像fus(x,y)から高周波画像fh(x,y)を計算する(ステップS203)。
fh(x,y)=f0(x,y)-fus(x,y)・・・・(16)
【0035】次に、高周波成分足し込み回路112dは、(17)式で示すように原画像f0(x,y)に上記計算した高周波成分fh(x,y)を、メインメモリ109に記憶した微係数c(x)に基づいて足し込み、足し込み処理後画像f1(x,y)を得る(ステップS204)。
f1(x,y)=f0(x,y)+a×c(f0(x,y))×fh(x,y)・・・・(17)
ここで、aは定数で、例えば1である。
【0036】また、(18)式で示すように、fus(x,y)を用いても、ほぼ同様の効果が得られることが実験で確認されている。
f1(x,y)=f0(x,y)+a×c(fus(x,y))×fh(x,y)・・・・(18)
【0037】さらに、(19)、(20)式で示すようにしても、同様の効果が得られることが実験で確認されている。
c1(x)=1/{∂F(x)/∂x}・・・・(19)
f1(x,y)=fus(x,y)+a×c1(f0(x,y))×fh(x,y)・・・・(20)
【0038】そして、階調変換回路112eは、上記足し込み処理後画像f1(x,y)を(21)式に従って階調変換を行い、最終処理済み画像fd(x,y)を得る。
fd(x,y)=F(f1(x,y))・・・・(21)
【0039】また、平滑化画像fus(x,y)を(22)?(25)式で示すように、モルフォジ演算を用いて計算してもよい。
【0040】
f2(x,y)=min{f0(x+x1,y+y1)-D(x1,y1)|x1×x1+y1×y1≦r1×r1}・・・・(22)
f3(x,y)=max{f2(x+x1,y+y1)+D(x1,y1)|x1×x1+y1×y1≦r1×r1}・・・・(23)
f4(x,y)=max{f3(x+x1,y+y1)+D(x1,y1)|x1×x1+y1×y1≦r1×r1}・・・・(24)
fus(x,y)=min{f4(x+x1,y+y1)-D(x1,y1)|x1×x1+y1×y1≦r1×r1}・・・(25)
【0041】ここで、D(x,y)を円盤状フィルタ、r1を任意の定数とし、入力画像に応じて選択される。
D(x,y)=0、 x×x+y×y≦r1×r1・・・・(26)
=-∞、 その他(26)
【0042】モルフォジ演算は、モルフォロジカルフィルタを用いて行われ、ここで得られたfus(x,y)のプロファイルは、エッジ構造を保存しているものであり、従来のダイナミックレンジ圧縮の欠点であるオーバーシュートやアンダーシュートが起きないものである。
【0043】本実施の形態によれば、入力画像の任意の階調領域の濃度分布幅を圧縮、伸張することができ、かつ階調変換後の高周波成分の振幅を、階調変換前の画像の高周波成分の振幅に保持できる効果がある。さらに、オーバーシュートやアンダーシュートが起きない効果がある。また、平滑化画像に濃度平均を用いた場合は、計算時間を短縮できる効果がある。」

ウ.引用例1に記載された発明
(ア)引用例1の段落【0078】?【0088】及び【図8】には、「Retinex処理部でRetinex処理」を行う「画像処理装置」が記載されており、また、引用例1の段落【0003】の「Retinex処理では画像中の明暗部に応じて、局所局所でゲイン調整が変わるため、ダイナミックレンジを圧縮する効果がある。」との記載からみて「Retinex処理」は、原画像のダイナミックレンジを圧縮するものといえ、更に、段落【0012】の「オリジナル画像の各画素値を、ボケ画像の各画素値で除算する処理が行われ、そのlogを求めることで、Retinex処理後の画像D5が得られる。」との記載からみて、「Retinex処理」は原画像とボケ画像との比を用いるものである。
そうすると、引用例1記載の発明は、「原画像とボケ画像との比を用いるRetinex処理によって原画像のダイナミックレンジを圧縮する画像処理装置」を対象としている。
(イ)引用例1の段落【0087】【0088】及び【図8】の記載によると、引用例1記載の発明は、「原画像の解像度を下げる補間演算を行う補間部401」を有する。
(ウ)引用例1の段落【0087】【0088】及び【図8】の記載によると、引用例1記載の発明は、「補間部401の出力である解像度が下げられた画像に対してフィルタを用いた処理を行うことでボケ画像を生成するボケ画像生成部403」を有する。
(エ)引用例1の【請求項1】,段落【0087】【0088】及び【図8】の記載によると、引用例1記載の発明は、「ボケ画像の解像度を変更し、原画像と同じ解像度にする(戻す)補間部405」を有する。
(オ)引用例1の【請求項1】,段落【0087】【0088】及び【図8】の記載によると、引用例1記載の発明は、「原画像と補間部405の出力画像(原画像の解像度に戻されたボケ画像)とに基づいてRetinex処理を実行するRetinex処理部407」を有する。

(カ)まとめ
上記(ア)ないし(オ)によれば、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「原画像とボケ画像との比を用いるRetinex処理によって原画像のダイナミックレンジを圧縮する画像処理装置であって、
原画像の解像度を下げる補間演算を行う補間部401と、
補間部401の出力である解像度が下げられた画像に対してフィルタを用いた処理を行うことでボケ画像を生成するボケ画像生成部403と、
ボケ画像の解像度を変更し、原画像と同じ解像度にする(戻す)補間部405と、
原画像と補間部405の出力画像(原画像の解像度に戻されたボケ画像)とに基づいてRetinex処理を実行するRetinex処理部407と、
を備えた画像処理装置。」

エ.対比
補正後発明と引用発明とを対比すると次のことが認められる。

(a)「入力画像のダイナミックレンジを圧縮する画像処理装置」について
引用発明の「画像処理装置」は「原画像のダイナミックレンジを圧縮する」ものであるから、補正後発明の「入力画像のダイナミックレンジを圧縮する画像処理装置」と一致する。

(b)「前記入力画像を縮小した縮小画像を生成する画像縮小処理手段」について
本願明細書の段落【0032】には、「画像縮小処理部12bは、入力画像記憶部11aに格納された入力画像を所定の大きさに縮小処理(入力画像の解像度を下げる処理)して縮小画像を生成し」と記載されており、補正後発明の「前記入力画像を縮小した縮小画像を生成する画像縮小処理」は、「入力画像の解像度を下げる処理」といえ、引用発明の「原画像の解像度を下げる補間演算を行う補間部401」は、補正後発明の「前記入力画像を縮小した縮小画像を生成する画像縮小処理手段」と一致する。

(c)「前記画像縮小処理手段により生成された縮小画像から、前記縮小画像のエッジ部分を保存しつつ平滑化した平滑化画像を生成する平滑化画像生成手段」について
本願明細書の段落【0035】には、「平滑化画像生成部12cは、エッジ部分の重み付けを小さくすることで、当該エッジ部分の平滑化(ぼかし)を抑制した平滑化画像を生成する。」と記載されており、補正後発明の「平滑化」とは、「ぼかし」ともいえ、引用発明の「ボケ画像」は、補正後発明の「平滑化画像」に相当する。
そうすると、引用発明の「補間部401の出力である解像度が下げられた画像に対してフィルタを用いた処理を行うことでボケ画像を生成するボケ画像生成部403」は、補正後発明の「前記画像縮小処理手段により生成された縮小画像から、前記縮小画像の平滑化した平滑化画像を生成する平滑化画像生成手段」といえ、その点では一致する。
もっとも、平滑化画像生成手段が、前記縮小画像の「エッジ部分を保存しつつ」平滑化した平滑化画像を生成する点は相違する。

(d)「前記平滑化画像生成手段により生成された平滑化画像を元の入力画像の大きさに拡大した拡大画像を生成する画像拡大処理手段」について、
本願明細書の段落【0036】には、「画像拡大処理部12dは、縮小平滑化画像記憶部11cに格納された縮小平滑化画像を元の入力画像と同じ解像度に拡大して拡大平滑化画像を生成して」と記載されており、補正後発明の「元の入力画像の大きさに拡大した拡大画像を生成する」とは、「元の入力画像と同じ解像度に拡大して拡大平滑化画像を生成」するといえるところ、引用発明の「ボケ画像の解像度を変更し、原画像と同じ解像度にする(戻す)補間部405」は、補正後発明でいう「前記平滑化画像生成手段により生成された平滑化画像を元の入力画像の大きさに拡大した拡大画像を生成する画像拡大処理手段」と一致する。

(e)「前記画像拡大処理手段により生成された拡大画像と前記入力画像との相対値を用いて、前記入力画像のダイナミックレンジを圧縮した出力画像を生成する出力画像生成手段」について
引用発明は「原画像とボケ画像との比を用いるRetinex処理によって、原画像のダイナミックレンジを圧縮する画像処理装置」であるから「Retinex処理」は原画像とボケ画像(平滑化画像)との比(相対値)を用いてダイナミックレンジを圧縮して出力画像を生成するものといえる。
そうすると、引用発明の「原画像と補間部405の出力画像(原画像の解像度に戻されたボケ画像)とに基づいてRetinex処理を実行するRetinex処理部407」は、補正後発明でいう「前記画像拡大処理手段により生成された拡大画像と前記入力画像との相対値を用いて、前記入力画像のダイナミックレンジを圧縮した出力画像を生成する出力画像生成手段」と一致する。

オ.一致点・相違点
以上の対比(a)ないし(e)によると、補正後発明と引用発明との[一致点]及び[相違点]は以下のとおりである。

[一致点]
入力画像のダイナミックレンジを圧縮する画像処理装置であって、
前記入力画像を縮小した縮小画像を生成する画像縮小処理手段と、
前記画像縮小処理手段により生成された縮小画像から、前記縮小画像の平滑化した平滑化画像を生成する平滑化画像生成手段と、
前記平滑化画像生成手段により生成された平滑化画像を元の入力画像の大きさに拡大した拡大画像を生成する画像拡大処理手段と、
前記画像拡大処理手段により生成された拡大画像と前記入力画像との相対値を用いて、前記入力画像のダイナミックレンジを圧縮した出力画像を生成する出力画像生成手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。

[相違点]
平滑化画像生成手段が、
補正後発明では、前記縮小画像の「エッジ部分を保存しつつ」平滑化した平滑化画像を生成するものであるのに対して、
引用発明では、エッジ部分を保存しつつ平滑化していない点。

カ.相違点の判断
上記[相違点]について
引用例2には、ダイナミックレンジ圧縮(DRC)機能を有する画像の画像処理装置であって、原画像f0us(x,y)と平滑化画像fus(x,y)との差分(補正後発明でいう「相対値」)から高周波画像fh(x,y)を計算する(ステップS203)こと、そして、そのような平滑化画像fus(x,y)を、モルフォジ演算を用いて計算してもよく、モルフォジ演算は、モルフォロジカルフィルタを用いて行われ、ここで得られたfus(x,y)のプロファイルは、エッジ構造を保存しているものであり、従来のダイナミックレンジ圧縮の欠点であるオーバーシュートやアンダーシュートが起きないものであることが記載されており(引用例2の段落【0023】?【0043】の記載参照)、それらの記載によれば、引用例2には、エッジ構造を保存して平滑化画像を生成すれば、エッジ部分における原画像と平滑化画像との差分(相対値)を小さくできオーバーシュートやアンダーシュートが起きないことが示されている。
ここで、引用発明の「ボケ画像生成部403」が行う処理、すなわち、引用例1段落【0083】【0084】に記載されるような処理はエッジ構造を保存しないものであって、引用発明は、引用例2に記載される従来のダイナミックレンジ圧縮と同様の処理を行っているものと認められる。そして、引用発明においても、引用例2に従来のダイナミックレンジ圧縮の欠点として記載されるオーバーシュートやアンダーシュートが起きることは当業者には自明であるところ、引用発明におけるこのような問題を解決しようとすることは、より良い品質の画像を得るために、当業者が自然になす程度のことにすぎないから、引用発明においてオーバーシュートやアンダーシュートが起きないようにするために、引用例2に示されるように「エッジ部分を保持しつつ」平滑化することを適用し、結局、縮小画像のエッジ部分を保存しつつ平滑化した平滑化画像を生成するようにしたことは、当業者が容易に想到し得たことにすぎない。
また、補正後発明の効果は、その構成から当業者が容易に予測し得るものであり、格別顕著なものがあるとは認められない。

キ.まとめ(独立特許要件)
以上、補正後発明は、引用例1及び引用例2に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび(補正却下)
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、補正の却下の決定の結論のとおり、決定する。

第3 本願発明について
平成24年6月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし請求項4に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載した事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
入力画像のダイナミックレンジを圧縮する画像処理装置であって、
前記入力画像を縮小した縮小画像を生成する画像縮小処理手段と、
前記画像縮小処理手段により生成された縮小画像から、前記縮小画像のエッジ部分を保存しつつ平滑化した平滑化画像を生成する平滑化画像生成手段と、
前記平滑化画像生成手段により生成された平滑化画像を元の入力画像の大きさに拡大した拡大画像を生成する画像拡大処理手段と、
前記画像拡大処理手段により生成された拡大画像と前記入力画像との相対値に基づいて、前記入力画像のダイナミックレンジを圧縮した出力画像を生成する出力画像生成手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。」

第4 検討
1.刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1である特開2004-165840号公報には、上記「第2 2.(3)イ.刊行物の記載等(ア)」で述べたとおりの記載、及び上記「第2 2.(3)ウ.引用例1に記載された発明」で述べたとおりの引用発明が記載されている。また、同じく、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物2である特開2000-163570号公報には、上記「第2 2.(3)イ.刊行物の記載等(イ)」で述べたとおりの記載がある。

2.対比
補正後発明は、本願発明に、上記「第2 1.補正の内容」の補正事項の補正をしたものである。
したがって、本願発明は、補正後発明から上記補正事項の補正を戻す関係にあり、その内容は、限定事項を戻す関係にある。
そして、本願発明と引用発明との対比は上記「第2 2.(3)エ.対比」と、上記削除される構成を除いて同様に対比される。

3.一致点・相違点
以上の対比から、本願発明と引用発明との[一致点]及び[相違点]は、以下のとおりである。

[一致点]
入力画像のダイナミックレンジを圧縮する画像処理装置であって、
前記入力画像を縮小した縮小画像を生成する画像縮小処理手段と、
前記画像縮小処理手段により生成された縮小画像から、前記縮小画像の平滑化した平滑化画像を生成する平滑化画像生成手段と、
前記平滑化画像生成手段により生成された平滑化画像を元の入力画像の大きさに拡大した拡大画像を生成する画像拡大処理手段と、
前記画像拡大処理手段により生成された拡大画像と前記入力画像との相対値に基づいて、前記入力画像のダイナミックレンジを圧縮した出力画像を生成する出力画像生成手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。

[相違点]
平滑化画像生成手段が、
補正後発明では、前記縮小画像の「エッジ部分を保存しつつ」平滑化した平滑化画像を生成するものであるのに対して、
引用発明では、エッジ部分を保存しつつ平滑化していない点。

4.判断
[相違点]について
上記「第2 2.(3)カ.相違点の判断等」の相違点についての判断と同様であって、この点は、当業者が容易に想到できることといえ、また、本願発明の効果は、その構成から当業者が容易に予測し得るものであり、格別顕著なものがあるとは認められない。


第5 むすび
以上のように、本願の請求項1に係る発明は、引用例1及び引用例2記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、残る請求項2ないし請求項6に係る発明について特に検討をするまでもなく、本件出願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-28 
結審通知日 2013-03-05 
審決日 2013-03-18 
出願番号 特願2010-500473(P2010-500473)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06T)
P 1 8・ 575- Z (G06T)
P 1 8・ 121- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 板垣 有紀  
特許庁審判長 松尾 淳一
特許庁審判官 千葉 輝久
渡邊 聡
発明の名称 画像処理装置、画像処理方法および画像処理プログラム  
代理人 酒井 宏明  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ