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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1273426
審判番号 不服2012-15471  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-09 
確定日 2013-05-02 
事件の表示 特願2001-178515「自立性袋」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月24日出願公開、特開2002-370749〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年6月13日の出願であって、平成23年12月20日付けの拒絶理由通知に対して、平成24年2月24日付けで意見書及び手続補正書の提出がなされ、平成24年5月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成24年8月9日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成24年2月24日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1の記載は次のとおりである。

「最内層にヒ-トシ-ル性樹脂層を有する積層材を2枚用意し、その一方を前板、その他方を後板とし、そして、その両者を、最内層に位置するヒ-トシ-ル性樹脂層の面を対向させて配置し、更に、上記の前板と後板との層間の下端部に、上記と同様な積層材を使用し、それを逆V字型に折り曲げ形成した底板を、そのヒ-トシ-ル性樹脂層の面を内面にして配置し、次いで、上記の前板、後板、および、底板を、その重合部分の両側端部、下端部において、そのヒ-トシ-ル性樹脂層を介してヒ-トシ-ルして、それぞれ、側縁熱接着部、底壁熱接着部を形成すると共にその上端辺に開口部を形成した構成からなる自立性袋において、
上記の自立性袋を構成する前板、後板、および、底板が、少なくとも、基材フィルムと、樹脂フィルムの一方の面に無機酸化物の蒸着膜を設けたバリア性基材と、ヒートシ-ル性樹脂層とを順次に積層した積層材から構成され、
更に、上記の積層材を構成する基材フィルムと、樹脂フィルムの一方の面に無機酸化物の蒸着膜を設けたバリア性基材と、ヒートシ-ル性樹脂層とは、それぞれの層間を、ラミネ-ト用接着剤層を介して、ドライラミネ-ト積層、または、溶融押出樹脂層を介して、溶融押出積層した積層材からなり、
また、上記の積層材を構成する樹脂フィルムの一方の面に無機酸化物の蒸着膜を設けたバリア性基材は、その無機酸化物の蒸着膜の面に、予め、プライマ-剤層を設けて積層した積層材からなること
を特徴とする自立性袋。」
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

3.刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平6-179473号公報(以下「刊行物1」という。)には、次のア?コの事項が記載されている。

ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はレトルト殺菌用の包装材料、特にパウチを形成する包装材料に関するものであって、金属箔を含まない、透明なレトルト殺菌用包装材料に関する。」

イ 「【0010】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、無機物質の薄膜層を形成したバリヤーフィルム、およびシーラント層を含む積層材料であって、シーラント層が、120℃、20分間加熱時の収縮率が、縦方向および横方向それぞれ0.5%以下で、かつ、ゴム成分を含まない無延伸ポリプロピレンであることを特徴とする、レトルト殺菌用包装材料である。
【0011】本発明の好ましい態様において、バリヤーフィルムの無機物質薄膜層とシーラント層とは、接着剤により積層されている。また、本発明の無機物質としては、酸化ケイ素が好ましい材料である。」

ウ 「【0014】図1に示すように、本発明の包装材料は、プラスチックフィルム11上に無機物質の薄膜層12を形成したバリヤーフィルム1と、無延伸ポリプロピレンからなるシーラント層2を有する包装材料である。」

エ 「【0015】まず、無機物質の薄膜層12は、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化アルミニウムなどの、透明な薄膜であり、この薄膜層12が、包装材料に、酸素や水蒸気等のガスに対するバリヤー性を与える。薄膜層12は、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、あるいはプラズマCVD法等の既知の方法によりプラスチックフィルム上に形成される。」

オ 「【0017】シーラント層2は、無延伸のポリプロピレンからなる。無延伸ポリプロピレンはレトルト殺菌時の湿熱(例えば120℃、30分)に耐えることができるとともに、パウチにする際に必要なヒートシール性に優れるからである。」

カ 「【0020】バリヤーフィルム1とシーラント層2は、接着剤4により積層される。このとき、無機物質の薄膜層12が、シーラント層2側に向くようにすることが好ましい。図示のように通常はバリヤーフィルム1のシーラント層2側と反対側には、印刷基材3などの表面層が積層されるが、無機物質の薄膜層12を印刷基材3側に向けると、理由は明らかでないが、レトルト殺菌処理後、プラスチックフィルム11と薄膜層12とが剥離してしまうことがあるのである。」

キ 「【0022】本発明の包装材料は、主としてパウチに形成されて使用される。パウチの形状は、周知の三方ないし四方シール袋、スタンディングパウチの形状が例示できる。」

ク 「【0023】また、通常、このような包装材料には絵柄等の印刷が施される。印刷層の形成位置は任意であるが、食品包装に適用する場合、印刷層はプラスチックフィルムなどで保護されて食品や他のパウチに接しない位置とされることが望ましく、図1に示すように印刷基材3の片面に印刷層31を形成し、印刷層31を食品側に向けて印刷基材3をバリヤーフィルム1に積層するようにすることが望ましい。なお、この印刷基材3とバリヤーフィルム1の積層も、前述したように耐熱性のある接着剤4による積層とすることが好ましい。」

ケ 「【0024】<実験1>ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)上に、真空蒸着法により酸化ケイ素の薄膜層(厚さ1500Å)を形成し、バリヤーフィルムを作成した。このバリヤーフィルムの薄膜層面に、二液硬化型ウレタン系接着剤を用いたドライラミネート法にて、厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(アロマーAT、昭和電工株式会社製、収縮率:MD=0.3%、TD=0.1%)を積層した。また、バリヤーフィルムのポリエチレンテレフタレートフィルム面には、絵柄印刷を施したポリエチレンテレフタレートフィルムを、印刷面がバリヤーフィルム側になるようにして、二液硬化型ウレタン系接着剤を用いたドライラミネート法にて積層し、本発明の包装材料(実施例1)を作成した。」

コ 図1に、包装材料が、印刷基材3と、プラスチックフィルム11上に薄膜層12を形成したバリヤーフィルム1と、シーラント層2とを、順次に積層した積層材料から構成され、更に、前記積層材料を構成する印刷基材3と、プラスチックフィルム11上に薄膜層12を形成したバリヤーフィルム1と、無延伸ポリプロピレンからなるシーラント層2とは、それぞれの層間を、接着剤4の層を介して、積層した積層材料からなることが図示されている。

上記ア?コから、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「スタンディングパウチにおいて、
スタンディングパウチが、印刷基材3と、プラスチックフィルム11上に真空蒸着法により酸化ケイ素の薄膜層12を形成したバリヤーフィルム1と、無延伸ポリプロピレンからなるシーラント層2とを順次に積層した積層材料から構成され、
更に、上記の積層材料を構成する印刷基材3と、プラスチックフィルム11上に真空蒸着法により酸化ケイ素の薄膜層12を形成したバリヤーフィルム1と、無延伸ポリプロピレンからなるシーラント層2とは、それぞれの層間を、接着剤4の層を介して、ドライラミネート法にて積層した積層材料からなるスタンディングパウチ。」

4.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明における「印刷基材3」、「プラスチックフィルム11」及び「無延伸ポリプロピレンからなるシーラント層2」は、それぞれ本願発明における「基材フィルム」、「樹脂フィルム」及び「ヒートシ-ル性樹脂層」に相当する。
引用発明における「真空蒸着法により」「形成」した「酸化ケイ素の薄膜層12」は、本願発明における「無機酸化物の蒸着膜」に相当し、引用発明における「プラスチックフィルム11上に真空蒸着法により酸化ケイ素の薄膜層12を形成したバリヤーフィルム1」は、本願発明における「樹脂フィルムの一方の面に無機酸化物の蒸着膜を設けたバリア性基材」に相当する。
引用発明における「接着剤4の層」及び「ドライラミネート法にて積層」は、それぞれ本願発明における「ラミネ-ト用接着剤層」及び「ドライラミネ-ト積層」に相当する。
本願発明における「ラミネ-ト用接着剤層を介して、ドライラミネ-ト積層、または、溶融押出樹脂層を介して、溶融押出積層」という記載は択一的であることを考慮すると、引用発明における「接着剤4の層を介して、ドライラミネート法にて積層した」という事項は、本願発明における「ラミネ-ト用接着剤層を介して、ドライラミネ-ト積層、または、溶融押出樹脂層を介して、溶融押出積層した」という事項に相当する。
引用発明における「積層材料」は、「印刷基材3」(基材フィルム)、「プラスチックフィルム11上に真空蒸着法により酸化ケイ素の薄膜層12を形成したバリヤーフィルム1」(樹脂フィルムの一方の面に無機酸化物の蒸着膜を設けたバリア性基材)及び「無延伸ポリプロピレンからなるシーラント層2」(ヒートシール性樹脂層)を、「接着剤4の層」(ラミネート用接着剤層)を介して、ドライラミネート積層したものである点で、本願発明における「積層材」と共通する。
引用発明における「スタンディングパウチ」は、自立性袋の一種である。

したがって、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「自立性袋において、
自立性袋が、少なくとも、基材フィルムと、樹脂フィルムの一方の面に無機酸化物の蒸着膜を設けたバリア性基材と、ヒートシ-ル性樹脂層とを順次に積層した積層材から構成され、
更に、上記の積層材を構成する基材フィルムと、樹脂フィルムの一方の面に無機酸化物の蒸着膜を設けたバリア性基材と、ヒートシ-ル性樹脂層とは、それぞれの層間を、ラミネ-ト用接着剤層を介して、ドライラミネ-ト積層、または、溶融押出樹脂層を介して、溶融押出積層した積層材からなる
自立性袋。」

[相違点1]
自立性袋の構成について、本願発明においては、「最内層にヒ-トシ-ル性樹脂層を有する積層材を2枚用意し、その一方を前板、その他方を後板とし、そして、その両者を、最内層に位置するヒ-トシ-ル性樹脂層の面を対向させて配置し、更に、上記の前板と後板との層間の下端部に、上記と同様な積層材を使用し、それを逆V字型に折り曲げ形成した底板を、そのヒ-トシ-ル性樹脂層の面を内面にして配置し、次いで、上記の前板、後板、および、底板を、その重合部分の両側端部、下端部において、そのヒ-トシ-ル性樹脂層を介してヒ-トシ-ルして、それぞれ、側縁熱接着部、底壁熱接着部を形成すると共にその上端辺に開口部を形成した構成からなる」との限定がされているのに対して、引用発明においては、そのような限定はされていない点。

[相違点2]
本願発明においては、「積層材を構成する樹脂フィルムの一方の面に無機酸化物の蒸着膜を設けたバリア性基材は、その無機酸化物の蒸着膜の面に、予め、プライマ-剤層を設けて積層した積層材からなる」との限定がされているのに対し、引用発明においては、そのような限定はされていない点。

上記相違点について検討する。

[相違点1について]
自立性袋の構成を、最内層にヒ-トシ-ル性樹脂層を有する積層材を2枚用意し、その一方を前板、その他方を後板とし、そして、その両者を、最内層に位置するヒ-トシ-ル性樹脂層の面を対向させて配置し、更に、上記の前板と後板との層間の下端部に、上記と同様な積層材を使用し、それを逆V字型に折り曲げ形成した底板を、そのヒ-トシ-ル性樹脂層の面を内面にして配置し、次いで、上記の前板、後板、および、底板を、その重合部分の両側端部、下端部において、そのヒ-トシ-ル性樹脂層を介してヒ-トシ-ルして、それぞれ、側縁熱接着部、底壁熱接着部を形成すると共にその上端辺に開口部を形成した構成からなるものとすることは、周知の技術である(例えば、実願昭59-70795号(実開昭60-182342号)のマイクロフィルム及び特開昭51-82178号公報参照。)。そして、引用発明において、スタンディングパウチの構成は当業者が適宜に設定し得る事項であり、引用発明において、上記した周知の技術を適用することを妨げる特段の事情は認められない。したがって、引用発明において、上記した周知の技術を適用して、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点2について]
自立性袋等の包装容器に使用する積層材であって、樹脂フィルムの一方の面に無機酸化物の蒸着膜を設けたバリア性基材と、ヒートシール性樹脂層とを、ラミネート用接着剤層を介して積層した積層材において、ラミネート強度を高めるために、バリア性基材の無機酸化物の蒸着膜の面に、予め、プライマ-剤層を設けて積層することは、周知の技術である(例えば、原査定で引用された特開2000-167972号公報(請求項1?5、段落0017)及び特開2000-263726号公報(請求項1及び9、段落0023)参照。これら刊行物に記載された「コーティング薄膜」は、本願発明における「プライマー剤層」に相当する)。そして、引用発明において、ラミネート強度を高めることは当業者にとって自明の課題であるから、引用発明において、当該周知の技術を適用して上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明によって、当業者が予期し得ない格別顕著な効果が奏されるとは認められない。

以上のことから、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、積層材における複数の層の積層手段として、溶融押出樹脂層を介して溶融押出積層することも、周知の技術である(例えば、上記の特開2000-263726号公報(段落0032)参照)。

5.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-27 
結審通知日 2013-03-05 
審決日 2013-03-18 
出願番号 特願2001-178515(P2001-178515)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 戸田 耕太郎  
特許庁審判長 河原 英雄
特許庁審判官 ▲高▼辻 将人
鳥居 稔
発明の名称 自立性袋  
代理人 金山 聡  

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