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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1273428
審判番号 不服2012-20097  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-12 
確定日 2013-05-02 
事件の表示 特願2006-342064「バッグインボックス用包装袋」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月 3日出願公開、特開2008-150095〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成18年12月20日を出願日とする出願であって、平成24年7月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年10月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされた。その後、平成24年11月30日付けで当審から拒絶理由を通知したところ、平成25年2月1日に意見書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1?3に係る発明は、平成24年3月9日にした手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1は次のとおり記載されている。
「【請求項1】
外装材及び少なくとも一枚の内装材を重ね合わせた多重体からなり、外側端部をヒートシールして袋状に形成し、更に注出口を備えてなるバッグインボックス用包装袋において、
外装材は、オレフィン系樹脂からなる第1層と、
エチレン-ビニル共重合体又はMXDナイロンからなるバリア性樹脂をメイン樹脂として含み、さらに、上記の第1層及び後述の第3層を構成するオレフィン系樹脂と同一であるオレフィン系樹脂、ゴム状樹脂及び上記のバリア性樹脂、オレフィン系樹脂及びゴム状樹脂の相溶化を促進する、無水マレイン酸変性のポリエチレンまたは無水マレイン酸変性のポリプロピレンからなる相溶化剤を含む樹脂組成物からなる第2層と、
オレフィン系樹脂からなる第3層とを共押出成膜法により積層してなるものであることを特徴とするバッグインボックス用包装袋。」
(以下、請求項1に係る発明を、「本願発明1」という。)

3 当審が通知した拒絶理由
当審が、平成24年11月30日付けで通知した拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。
「この出願の請求項1?3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献
1.特開平6-106687号公報
2.特開平6-106686号公報
3.特開平11-198967号公報」

4 引用文献の記載事項
当審の拒絶理由に引用された引用文献1である特開平6-106687号公報には、次の記載がある。
a「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、バッグインボックス用内容器に関するもので、詳しくは、液体注入口の打ち抜き加工性に優れ、ガスバリヤー性が長期間にわたって維持されるバッグインボックス用内容器を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下、EVOHと略記する)は、透明性、帯電防止性、耐油性、耐溶剤性、ガスバリヤー性、保香性などにすぐれているが、耐衝撃性、耐屈曲疲労性、延伸性、熱成形性、吸湿又は吸水時のガスバリヤー性は低いという欠点も有する材料である。このため、包装材料の目的とする用途においては、EVOHのフィルムの表裏両面に低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステルなどのフィルムを積層することによってガスバリヤー性、香気保持性、食品の変色防止性などのEVOHの特性を維持しながら、落下強度、熱成形性、防湿性などのEVOHの欠点を補って各種包装用途に利用されている。」
b「【0005】
【発明が解決しようとする問題点】しかしながら、上記の如きEVOHを中間層とする積層フイルムは、耐屈曲疲労性は向上しているものの、長期間の保存や輸送に耐えるだけの高度のガスバリヤー性は、未だ不充分である。この原因は、該内容器を製造するに当たっては、該内容器に液体注入口を作る必要があり、該積層フィルムに打ち抜き穴をあけるのであるが、このときEVOH層に柔軟性が少ないのでEVOH層にクラックが発生して、このクラックが輸送時等のストレスなどにより成長することにあり、最終的にガスバリヤー性を損なう結果となるのである。
【0006】
【問題点を解決するための手段】そこで、本発明者らは、上記の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、エチレン含有量が20?50モル%、酢酸ビニル成分のケン化度が90モル%以上のEVOH100重量部に対し、結晶融点が150?230℃でかつ反発弾性率が50%以上の熱可塑性のポリエステル・ポリエーテルブロック共重合体エラストマーを2?100重量部配合してなる樹脂組成物(A)を、中間層とし、該中間層の両側に接着剤層を設け、更に該接着剤層の外側に表面層を設けたバッグインボックス用内容器は、液体注入口の製造時にクラックが発生することなく、長期間にわたる輸送時等においても良好なガスバリヤー性を維持できることを見いだし本発明を完成した。」
c「【0014】また、本発明の中間層の樹脂成分として、上記のEVOH及びポリエステル-ポリエーテルブロック共重合体エラストマー以外に……更に、他の熱可塑性樹脂を適当量配合することもでき、かかる熱可塑性樹脂としてはポリオレフィン(低・中・高密度ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、エチレンと炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリブテン、ポリペンテンなど)又はこれらを不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性した変性ポリオレフィン……などが挙げられる。」
d「【0015】本発明のバッグインボックス用内容器は、少なくとも表面層/接着剤層/中間層(A)/接着剤層/表面層の5層積層体からなるもので、該表面層は、密度0.86?0.95g/cm^(3)(20℃)のエチレン-α-オレフィン共重合体が好ましい。……また、エチレン-α-オレフィンとは、エチレンとブテン-1,ペンテン-1,4-メチルペンテン-1,ヘキセン-1,オクテン-1等の炭素数18以下の共重合物である。」
e「【0019】……本発明のバッグインボックス用内容器は、主に、ヒートシール法及びブロー成形法により製造することができる。ヒートシール法では、インフレーション法又はスラットフイルム法により製膜された中間層用及び表面層用のフィルムを、接着剤層を介してドライラミした積層体又は各層を共押出法等により積層した積層体をそのまま、あるいは必要に応じて2重又は3重に重ね合わせて、液体注入口の密封栓取り付け用の穴を打ち抜き、その穴に、あらかじめ射出成形で成形した液体注入口の密封栓をヒートシール法で融着させる。そのときに、該積層体と打ち抜き処理のしていない別の積層体とを合わせて四方ヒートシールしてバッグインボックス用内容器とする。」
f「【0024】実施例1
3種5層の共押出装置を用いて、中間層がエチレン含有量が30モル%,ケン化度が99.5モル%のEVOH100部と結晶融点が178℃でかつ反発弾性率が78%の熱可塑性のポリエステル・ポリエーテルブロック共重合体エラストマー(P-1)35部を配合した樹脂組成物の層(A-1)、両外層がMI(メルトインデックス)2.5g/10分(190℃、荷重2160g),密度0.890g/cm^(3),エチレン含有量90モル%のエチレン-1-ブテンランダム共重合体LLDPE(B-1)、中間層と両外層との間の接着剤層が……変性LLDPE(C-1)とからなる(B-1)/(C-1)/(A-1)/(C-1)/(B-1)が35μ/10μ/10μ/10μ/35μの構成を有する5層共押出積層フィルムを下記の如き共押出成形条件で得た。
……
【0026】得られた積層フィルム(500mm×700mm)を2枚重ねにして、打ち抜き機により、液体注入用の穴(直径43mm)をあけた。次に、穴のあけていない積層フィルム(500mm×700mmの2枚重ね)を上記の積層フィルムと重ね合わせて四方ヒートシールしてバッグインボックス用内容器を製造した。その際に、液体注入用の穴に高密度ポリエチレン製の密封栓を取り付け回りを熱シールして密着固定した。」

上記e及びfの記載から、積層フィルムは複数枚重ね合わせられているので、この複数枚重ね合わせられた積層フィルムをまとめて多重体ということができるとともに、最も外側の積層フィルムを外装材、その他の内側の積層フィルムを内装材とそれぞれいうことができる。
上記b及びfの記載から、中間層に含まれるEVOHは、中間層全体の質量の少なくとも半分を占めるので、中間層のメイン樹脂であるといえる。
そして、引用文献1には注出口についての記載はないものの、バッグインボックス用内容器に注出口が存在しないと、バッグインボックス用内容器から液体を注出することができないことは明らかであるので、引用文献1に記載された発明のバッグインボックス用内容器は、注出口を備えていると認められる。
また、四方ヒートシールにより製造されたバッグインボックス用内容器が、袋状に形成されていることは明らかである。

以上の記載によれば、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。
「外装材及び少なくとも一枚の内装材を重ね合わせた多重体からなり、四方ヒートシールして袋状に形成し、注出口を備えてなるバッグインボックス用内容器において、
外装材は、エチレン-α-オレフィン共重合体からなる表面層と、
EVOHからなるガスバリヤー性にすぐれた樹脂をメイン樹脂として含み、さらに、ポリオレフィン及びポリエステル-ポリエーテルブロック共重合体エラストマーを含む樹脂組成物からなる中間層と、
エチレン-α-オレフィン共重合体からなる表面層とを共押出法により積層してなるものであるバッグインボックス用内容器。」

5 対比
本願発明1と引用文献1に記載された発明とを対比すると、引用文献1に記載された発明の「四方ヒートシールして」、「バッグインボックス用内容器」、「エチレン-α-オレフィン共重合体からなる表面層」、「ポリオレフィン」、「ポリエステル-ポリエーテルブロック共重合体エラストマー」、「中間層」、「共押出法」は、それぞれ本願発明1の「外側端部をヒートシールして」、「バッグインボックス用包装袋」、「オレフィン系樹脂からなる第1層」及び「オレフィン系樹脂からなる第3層」、「オレフィン系樹脂」、「ゴム状樹脂」、「第2層」、「共押出成膜法」に相当する。
また、本願発明1の「エチレン-ビニル共重合体又はMXDナイロンからなるバリア性樹脂」という記載が択一的であることを考慮すると、引用文献1に記載された発明の「EVOHからなるガスバリヤー性にすぐれた樹脂」は、本願発明1の「エチレン-ビニル共重合体又はMXDナイロンからなるバリア性樹脂」に相当する。

そうすると、両者は、
「外装材及び少なくとも一枚の内装材を重ね合わせた多重体からなり、外側端部をヒートシールして袋状に形成し、更に注出口を備えてなるバッグインボックス用包装袋において、
外装材は、オレフィン系樹脂からなる第1層と、
エチレン-ビニル共重合体又はMXDナイロンからなるバリア性樹脂をメイン樹脂として含み、さらに、オレフィン系樹脂、ゴム状樹脂を含む樹脂組成物からなる第2層と、
オレフィン系樹脂からなる第3層とを共押出成膜法により積層してなるものであることを特徴とするバッグインボックス用包装袋。」
である点で一致し、次の点で相違する。

《相違点1》
本願発明1では、第2層のオレフィン系樹脂が第1層及び第3層のオレフィン系樹脂と同一であるのに対し、引用文献1に記載された発明では、そのように特定されていない点。

《相違点2》
本願発明1では、第2層が、バリア性樹脂、オレフィン系樹脂及びゴム状樹脂の相溶化を促進する、無水マレイン酸変性のポリエチレンまたは無水マレイン酸変性のポリプロピレンからなる相溶化剤を含むのに対し、引用文献1に記載された発明では、そのように特定されていない点。

6 相違点の検討
上記相違点について検討する。

《相違点1について》
第1層?第3層のオレフィン系樹脂として、共押出成膜法に用い得る樹脂の中からどのようなものを用いるかは、当業者が適宜選択し得た事項であるところ、引用文献1に記載された発明において、第1層?第3層のオレフィン系樹脂を同一のものとすることを妨げる特段の事情があるとはいえず、また、その効果も、本願明細書の【0005】、【0018】に単に「望ましい」としか記載されておらず格別なものとはいえないので、引用文献1に記載された発明において、第1層?第3層のオレフィン系樹脂を同一のものとすることは、当業者が容易になし得たことである。

《相違点2について》
当審の拒絶理由に引用された引用文献2である特開平6-106686号公報には、バッグインボックス用包装袋を構成する積層フィルムの中間層にEVOH及びオレフィン系樹脂を用いてガスバリヤー性を高めるものにおいて、その中間層に無水マレイン酸変性のポリエチレンからなる相溶化剤を含ませる発明が記載されている(特に、【0011】、【0019】、【0027】参照)。
引用文献1に記載された発明の第2層と引用文献2に記載された発明の中間層とは、ともにEVOH及びオレフィン系樹脂を含むものであり、また、引用文献1に記載された発明と引用文献2に記載された発明とは、ガスバリヤー性を高めるという共通の課題を有するので、引用文献1に記載された発明の第2層に、無水マレイン酸変性のポリエチレンからなる相溶化剤を含ませることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明1が奏する効果は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明1は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

7 むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-26 
結審通知日 2013-03-05 
審決日 2013-03-18 
出願番号 特願2006-342064(P2006-342064)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 尾形 元  
特許庁審判長 河原 英雄
特許庁審判官 ▲高▼辻 将人
紀本 孝
発明の名称 バッグインボックス用包装袋  
代理人 金山 聡  

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