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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1273429
審判番号 不服2012-20881  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-23 
確定日 2013-05-02 
事件の表示 特願2009- 90976「写真撮影遊戯機、写真撮影遊戯方法及び写真撮影遊戯プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 3月25日出願公開、特開2010- 68507〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
1.手続きの概要
本願は,平成21年4月3日の出願であって,平成24年7月18日(起案日)付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年10月23日に審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、その後、当審において平成24年12月21日(起案日)付けで拒絶理由が通知され、平成25年2月19日付けで手続補正がなされたものである。

第2 本願発明について
1.本願発明
本願は、平成25年2月19日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1から4までに記載した事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」ともいう)は、次のとおりである。

「カメラ撮影で得られた長方形状の画像から予め定められた領域をトリミングして略正方形の写真画像を生成する写真画像生成手段と、
前記写真画像を生成するとき、前記カメラが撮影する長方形状の映像のうち、前記予め定められた領域のトリミングにより得られた所定範囲の略正方形状の映像を表示し、トリミングによりカットされた、前記略正方形状の映像以外の部分を表示しないライブ映像表示手段と、
プレイヤの操作に応じて前記略正方形の写真画像上に所望の編集画像の入力を受け付ける編集受付手段と、
前記略正方形の写真画像と前記編集画像とを合成して略正方形の合成画像を生成する合成手段と、
前記生成された合成画像を印刷する印刷手段とを備えることを特徴とする写真撮影遊戯機。」

第3 当審の判断
1.刊行物に記載された発明(引用発明)
(1)引用文献1の記載事項
当審の拒絶の理由に引用された刊行物である引用文献1(特開2005-277476号公報)には、次の事項が記載されている。
(a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】被写体の撮影を行う撮影部と、当該撮影部で撮影されている動画像をリアルタイムで表示する画像表示部と、当該撮影部によって写真撮影された撮影画像に基づいて形成される画像をプリント媒体に対して出力する画像出力部とを備えた写真撮影プリント装置であって、
上記画像表示部における所定の範囲を指定する範囲指定手段と、
上記範囲指定手段で指定された指定範囲の画像を上記撮影画像として作成する撮影画像作成手段とを備えることを特徴とする写真撮影プリント装置。
【請求項2】(略)
【請求項3】上記表示制御手段は、上記指定範囲内の画像を拡大して上記画像表示部に表示させることを特徴とする請求項2に記載の写真撮影プリント装置。」

(b)「【0001】本発明は、利用者の写真撮影を行うとともに、その写真を背景画像などと合成した上でプリント出力する写真撮影プリント装置、写真撮影プリント装置の制御方法、写真撮影プリント装置の制御プログラム、およびコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
【背景技術】【0002】従来、例えばゲームセンターなどの娯楽施設において、利用者の写真撮影を行うとともに、その写真を背景画像などと合成した上でシールプリントとして出力する写真撮影プリント装置(写真画像編集印刷装置、写真シール機)が設置されており、人気を博している。この写真撮影プリント装置には、例えば、硬貨を投入した後、利用者が筐体内に設置された背景用のカーテンから好みの色を引き出して背景を変化させ、更に、美白等の効果を施すために用意された様々なライティング効果を選択することによって、高解像度のCCD(Charge Coupled Device)カメラの性能を生かした高画質の撮影を行うことができるものがある。また、液晶パネル上に表示した撮影画像に対し、利用者が付属ペン・指・スタンプ等を用いて、任意あるいは所定の文字・図形等の書き込みや編集を行うことにより、個性的な編集画像を作成し、それをシール紙等に印刷する写真撮影プリント装置が存在している。」

(c)「【0007】本発明に係る写真撮影プリント装置は、上記課題を解決するために、被写体の撮影を行う撮影部と、当該撮影部で撮影されている動画像をリアルタイムで表示する画像表示部と、当該撮影部によって写真撮影された撮影画像に基づいて形成される画像をプリント媒体に対して出力する画像出力部とを備えた写真撮影プリント装置であって、上記画像表示部における所定の範囲を指定する範囲指定手段と、上記範囲指定手段で指定された指定範囲の画像を上記撮影画像として作成する撮影画像作成手段とを備えることを特徴としている。
【0008】(略)
【0009】上記構成および上記方法によると、画像表示部全体の撮影画像ではなく、指定したの範囲のみ撮影画像を作成することができる。ここで、画像表示部とは、撮影部で撮影されている動画像をリアルタイムで表示する画像表示装置における、いわゆる画面を指すものとする。」

(d)「【0015】本発明に係る写真撮影プリント装置では、上記構成に加え、上記表示制御手段は、上記指定範囲内の画像を拡大して上記画像表示部に表示させてもよい。
【0016】(略)
【0017】上記構成および方法によると、指定範囲内の画像を拡大して画像表示部に表示されるので、利用者は、作成される撮影画像をライブビュー画像で、拡大して確認することができる。そのため、利用者は、そのライブビュー画像を見て、表情や姿勢を変えることができるので、表情や姿勢の細かい部分まで好みに変更して写真撮影することができる。」

(e)「【0065】(全体処理の流れ)
次に、上記写真撮影プリント装置1における処理の流れについて、図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、ステップ1(以降、S1のように称する)において、硬貨の投入があるか否かの確認を行う。ここで、利用者による硬貨投入口7から硬貨の投入があることを確認すると(S1においてYES)、次のS2に進む。ここで、硬貨の投入を確認できない場合には(S1においてNO)、硬貨の投入を待つ。すなわち、客待ち状態を維持する。この客待ち状態では、例えば、タッチパネル6モ画面等を表示させておいてもよい。
【0066】S2では、撮影処理が行われる。この撮影処理では、背景シート4の選択や実際の撮影処理などが行われる。ここで、利用者は、画像表示部61に表示されるライブビュー画像を確認しながら、自分の立ち位置やポーズなどを考え、準備が整い次第、撮影開始指示を行うことによって撮影が行われる。この撮影処理については後段で詳細に説明する。
【0067】【0068】(略)
【0069】S4では、編集処理が行われる。表示制御部22は、記憶装置30から編集対象となる画像、すなわち撮影処理によって作成された画像(指定範囲の撮影画像)を読み出し、画像表示部61に編集対象となる画像、すなわち撮影処理によって生成された画像が表示される。この画像に対してタッチペン12a.12bを用いて落書きなどの編集処理が行われる。この画像には、例えば、編集処理を行うためのツール類の選択領域が表示されてもよい。ツール類としては、例えば複数の種類からなるペンおよびその色、消しゴム、および複数のスタンプなどが挙げられる。
【0070】また、編集対象となる画像には、編集対象となる画像を選択するための選択画像が表示されてもよい。利用者は、タッチペン12a・12bによって選択画像をタッチすることによって、中央に編集対象として表示される画像を切り替えることが可能となっていてもよい。なお、この選択画像は、上記の撮影処理において、複数回の撮影が行われた場合の各撮影時における画像に相当するものである。
【0071】【0072】(略)
【0073】S6では、印刷処理が行われる。S4において編集が施された画像データに基づいた画像を、プリンタ35がプリント紙42に対して出力し、このプリント紙42がプリント排出口9から排出される。
【0074】以上のシーケンスによって、写真撮影プリント装置1における一連の動作が終了する。」

(f)「【0076】(実施例1)
本実施例では、撮影処理における詳細な写真撮影プリント装置1の動作を図4を用いて説明する。
【0077】撮影処理が開始されると、S111において、タッチパネル6の画像表示部61にプレビュー画像を表示させる。ここで、プレビュー画面とは、写真撮影前のカメラユニット2で撮影されている利用者を含んだ撮影動画像、いわゆるライブビュー画像のことである。なお、ここで、プレビュー画像は、カメラユニット2に撮影されている撮影動画像と、この撮影動画像に対し前影または背景となる装飾用動画像とを合成して、この合成した動画像であってもよい。そして、S112に進む。
【0078】S112では、表示制御部22は、画像表示部61にトリミング位置を指定するためのトリミング枠をディフォルト位置に表示させる。なお、トリミング位置とは、写真撮影する際に撮影画像(静止画像)が作成される範囲のことである。このトリミング位置を指定する枠をトリミング枠と呼ぶことにする。この画像表示部61に表示されたトリミング枠の例を図5に示す。なお、トリミング枠100の形状および画像表示部61に対する大きさは図5に示したものに限定されない。そしてS113に進む。
【0079】?【0082】(略)
【0083】また、操作ボタンが複数設けられていて、これらを用いて複数の利用者がトリミング枠100を移動させたりトリミング枠100のサイズを変更させたりすることができるようになっていてもよい。また、利用者の操作により、トリミング枠の形状を、例えば、縦長、横長、星型、丸型等に変更できるようになっていてもかまわない。
【0084】【0085】(略)
【0086】S117では、範囲指定部21は、S115で利用者が決定したトリミング位置(決定されなかった場合はディフォルトのトリミング位置)を、この時点で画像表示部61に表示されているトリミング枠100の位置に固定する。そしてこの固定したトリミング位置の情報を撮影処理部23に送る。そしてS118に進む。
【0087】S118では、入力部62が写真撮影を行うための情報を取得したか否かを判断する。つまり、ここでは、利用者により写真撮影を行うための操作ボタン(撮影ボタン)が押し下された否かを判定する。撮影ボタンが押し下されたと判断した場合には(S118においてYES)、S120の写真撮影に進む。撮影ボタンが押し下されていないと判断した場合には(S118においてNO)、S119に進む。
【0088】(略)
【0089】S120では、カメラユニット2により写真撮影が行われる。この写真撮影では、撮影処理部23は、撮影画像を作成する。その際、トリミング枠100内の画像を撮影画像として作成する。これは、カメラユニット2に映り込んでいる全体画像を撮影してトリミング枠100内の画像を撮影画像として作成すればよい。つまり、ここではデジタルズームを行っていることになる。あるいは、トリミング枠100内の画像を撮影して、これを撮影画像としてもよい。後者のトリミング枠100内の画像を撮影する場合カメラユニット2をトリミング枠100内にズームするように動かす必要があるが、前者のデジタルズームの場合はその必要はない。そのため、デジタルズームの方がカメラユニット2を動かす部材や装置等が必要なく、装置のコスト削減につなげることができる。
【0090】S121では、S120で作製した撮影画像を記憶装置30(あるいは外部ディスクドライブ31)に記憶する。そしてS122に進む。
【0091】【0092】(略)
【0093】以上のように撮影処理が行われる。なお、本実施例では、トリミング位置を利用者に決定させることができるようになっているが、トリミング位置が予め固定されて変更できないようになっていてもかまわない。すなわち、上述したフローにおいてS113?S116およびS124がなくてもかまわない。また、このようにトリミング位置が予め固定されている場合等では、表示制御部22が、画像表示部61にトリミング位置を表示させなくても(つまり、S112がなくても)かまわない。
【0094】また、上記S117においてトリミング位置が固定されると、利用者による操作ボタンからのズームイン/ズームアウトの指示により、表示制御部22が、画像表示部61にトリミング枠100内の画像の拡大表示とカメラユニット2が撮影している動画像全体の表示とを交互に行うようになっていてもよい。」

(g)「【0106】(実施例2)
本実施例では、撮影処理における詳細な写真撮影プリント装置1の動作を図10を用いて説明する。
【0107】?【0112】(略)
【0113】また、図13のフローチャートに示すような別のトリミング位置移動処理が行われてもよい。ここで、乱数シードの決定からトリミング位置を表示するまで(S31?S33)は、上記で図11を用いて説明したフローと同じであるので同じステップ番号を付記し、説明は省略する。
【0114】S33で、表示制御部22が画像表示部61にトリミング枠100を表示したら、S34に進む。
【0115】S34では、ズームイン中か否か、つまり、トリミング枠100内の画像が拡大表示されているか否かを判断する。ズームイン中であると判断すると(S34においてYES)、S35に進み、ズームアウト処理をする。つまり、トリミング枠100内の拡大表示から、カメラユニット2が撮影している全体を表示する全体表示に戻す。
【0116】S34において、ズームイン中でないと判断すると(S34においてNO)S36に進み、ズームイン処理する。すなわち、トリミング枠100内の画像を画像表示部61に拡大表示する。画像表示部61における画像の例を図14(a),(b)に示す。図14(a)がズームアウト処理した場合の表示例であり、同図(b)がズームイン処理した場合の表示例である。」

(h)図5



(i)図14



(2)引用文献1に記載の発明
(a)写真撮影プリント装置
上記【請求項1】、段落【0001】からみて、引用文献1に記載の発明は「写真撮影プリント装置」に関するものである。

(b)撮影処理部23
上記【0089】からみて、引用文献1には、「カメラユニット2」を備えており、「カメラユニット2により写真撮影が行われる。」ものであって、「撮影処理部23」は、「カメラユニット2に写り込んでいる全体画像を撮影してトリミング枠100内の画像を撮影画像として作成」する点が開示されている。
また、トリミング枠100の形状は、【図5】、【図14】の太枠四角の形状からみて、ほぼ「正方形」であるといえ、さらに、「トリミング枠の形状を、例えば、縦長、横長、星型、丸型等に変更できるようになっていてもかまわない。」(段落【0083】)と「正方形」以外の形状に変更する点が言及されていることからみても、トリミング枠100の形状は、ほぼ正方形(「略正方形」)であるといえる。
さらに、引用文献1には、「画像表示部61にトリミング位置を指定するためのトリミング枠をディフォルト位置に表示させる。」「トリミング位置とは、写真撮影する際に撮影画像(静止画像)が作成される範囲のことである。」(段落【0078】)とあり、また、「トリミング位置が予め固定されて変更できないようになっていてもかまわない。」(段落【0093】)と記載されている。これは、上記トリミング枠100を予め固定された(定められた)範囲(領域)とすること意味するものである。
してみると、引用文献1には、「カメラユニット2が撮影した全体画像から予め定められた領域をトリミングして略正方形の撮影画像を生成する撮影処理部23」が開示されている。

(c)画像表示部61
上記段落【0077】からみて、引用文献1には、「撮影処理が開始されると、S111において、タッチパネル6の画像表示部61にプレビュー画像を表示させる。」点が開示されている。ここで、「プレビュー画像」とは「写真撮影前のカメラユニット2で撮影されている利用者を含んだ撮影動画像、いわゆるライブビュー画像のことである。」(段落【0077】)としている。
また、上記段落【0094】からみて、引用文献1には、「画像表示部61にトリミング枠100内の画像の拡大表示とカメラユニット2が撮影している動画像全体の表示とを交互に行う」点が開示されている。
これらの記載からみて、画像表示部61に画像を表示するのは、利用者が撮影を行う(言い換えれば、「撮影画像を生成する」)際におこなわれるものであるといえる。
さらに、上記(b)のとおり、「トリミング枠100」は「略正方形」である。

してみると、引用文献1には「撮影画像を生成するとき、カメラユニット2が撮影した映像を、予め定めた略正方形のトリミング枠内の画像の拡大表示と、カメラユニットが撮影している動画像全体の表示とを交互に行う画像表示部61」を備える点が開示されているといえる。

(d)編集処理を行う手段
上記段落【0069】、【0070】からみて、引用文献1には、撮影処理により作成された「撮影画像」を「画像表示部61」に表示し、「撮影画像」に対して利用者が「タッチペン12a、12bを用いて落書きなどの編集処理」を行う点が開示されている。また、「編集処理を行うツール類」として「複数のスタンプ」が例示されている。
当該「編集処理」は「写真撮影プリント装置」における「画像表示部61」や「タッチペン12a,12b」等からなる「手段」により行われていることは明らかであることから、引用文献1には、「利用者の操作に応じて前記撮影画像上に所望の落書きなどの編集処理を行う手段」が開示されているといえる。

(e)印刷する手段
上記段落【0073】からみて、引用文献1には、「編集が施された画像を印刷する手段」が開示されているといえる。

(f)まとめ
上記(a)?(e)をまとめると、引用文献1に記載の発明(以下「引用発明」という)として次のものが認められる。

「カメラユニット2が撮影した全体画像から予め定められた領域をトリミングして略正方形の撮影画像を生成する撮影処理部23と、
撮影画像を生成するとき、カメラユニット2が撮影した映像を、予め定めた略正方形のトリミング枠内の画像の拡大表示と、カメラユニットが撮影している動画像全体の表示とを交互に行う画像表示部61と、
利用者の操作に応じて前記撮影画像上に所望の落書きなどの編集処理を行う手段と、
編集が施された画像を印刷する手段とを備えることを特徴とする写真撮影プリント装置。」

2.対比
(1)対比
本願発明と引用発明を対比する。
(a)写真撮影遊戯機
本願発明は、「写真撮影遊戯機」である。ここで、「写真撮影遊戯機」とは、「カメラ撮影により生成された写真画像にタッチペンで落書きをし、落書きをした写真画像をシール紙に印刷することにより、写真シールを自動的に作成できるようにしたもの」(本願明細書段落【0002】)としていることから、引用発明の「写真撮影プリント装置」も「写真撮影遊戯機」であるといえる。

(b)写真画像生成手段
引用発明における「カメラユニット2が撮影した全体画像」は、カメラにより撮影された画像であることから、本願発明における「カメラ撮影で得られた」「画像」に対応する。
また、引用発明における「撮影画像」は、その後に編集処理等を経て印刷されるものであることから、本願発明における「写真画像」に対応する。
さらに、引用発明における「撮影処理部23」と本願発明における「写真画像生成手段」は、共に「カメラ撮影で得られた」「画像」から「予め定められた領域をトリミングして略正方形の写真画像を生成する」ものであり、両者は共通している。

してみると、本願発明と引用発明は、共に「カメラ撮影で得られた画像から予め定められた領域をトリミングして略正方形の写真画像を生成する写真画像生成手段」を備える点で共通している。
一方、本願発明が、「カメラ撮影で得られた長方形状の画像」とカメラが撮影する画像の形状を「長方形状」と特定しているのに対して、引用発明はカメラユニット2が撮影する画像の形状について明示されていない点で両者は相違する。

(c)ライブ映像表示手段
引用発明における「画像表示部61」と、本願発明における「ライブ映像表示手段」とは、共に「写真画像を生成するとき」に「カメラが撮影」した映像に関して「予め定めた略正方形のトリミング枠内の画像」(本願発明の「予め定められた領域のトリミングにより得られた所定範囲の略正方形状の映像」)を「表示」する点では共通している。
ここで、引用発明における「略正方形のトリミング枠内の画像の拡大表示」は、「トリミング」の意味からして「トリミング枠内の画像」のみを(拡大して)表示することを意図しているものであって、トリミング枠外の画像については表示しないような表示形態であるといえる。このことは、「トリミング位置が予め固定されている場合等では、表示制御部22が、画像表示部61にトリミング位置を表示させなくてもかまわない。」(段落【0093】)とあり、このようなトリミング位置が表示されない場合では、利用者がトリミングされた画像を確認する手段として「拡大表示」が利用され、トリミングされた画像を確認するためにはトリミング枠内の画像のみを表示するものであると理解するのが自然である。また、ズームイン(拡大表示)時の表示として例示されている【図14】(b)を見ても、太枠で示されたトリミング枠の外側には画像が表示されていないことからみても明らかである。

してみると、引用発明と本願発明とは共に、『「カメラが撮影する」「映像のうち」「トリミングにより得られた所定範囲の略正方形状の映像を表示し、トリミングによりカットされた、前記略正方形状の映像以外の部分を表示しない」』(以下、「表示形態A」という)を含む点で共通しており、本願発明が単に「表示形態A」によって画像を表示しているのに対して、引用発明は「全体画像」と「トリミング枠内の画像の拡大表示」(上記「表示形態A」に相当)とを交互に表示している点で相違している。
また、上記(b)と同様に「カメラが撮影する」画像(映像)を「長方形状」と特定する点で両者は相違する。

(d)編集受け付け手段
引用発明における「編集処理を行う手段」と、本願発明の「編集受付手段」とは、共に利用者(プレイヤ)の操作に応じて、表示された画像上に編集処理(タッチペンを用いた落書きやスタンプ)を行うことで「編集画像の入力を受け付ける」ものであることから、引用発明における「編集処理を行う手段」は、本願発明の「編集受付手段」に相当する。

(e)合成手段・印刷手段
引用発明と本願発明は、共に、「撮影画像」(本願発明の「写真画像」)に「編集」を施した後の画像が印刷される点では共通している。
一方、印刷に際して、本願発明が、「前記略正方形の写真画像と前記編集画像とを合成して略正方形の合成画像を生成する合成手段」、「生成された合成画像を印刷する印刷手段」としているのに対して、引用発明は、「編集画像の入力を受け付け」た上で、撮影画像(本願発明でいう「写真画像」)と「編集画像」とを合成して「合成画像」を生成し、当該「合成画像」を印刷するとは明示されていない点で相違する。

(f)まとめ
上記(a)?(e)をまとめると、本願発明と、引用発明とは、次の点で一致あるいは相違する。

[一致点]
カメラ撮影で得られた画像から予め定められた領域をトリミングして略正方形の写真画像を生成する写真画像生成手段と、
前記写真画像を生成するとき、前記カメラが撮影する映像のうち、前記予め定められた領域のトリミングにより得られた所定範囲の略正方形状の映像を表示し、トリミングによりカットされた、前記略正方形状の映像以外の部分を表示しないライブ映像表示手段と、
プレイヤの操作に応じて前記略正方形の写真画像上に所望の編集画像の入力を受け付ける編集受付手段と、
画像を印刷する印刷手段とを備えることを特徴とする写真撮影遊戯機。

[相違点]
(相違点1)
本願発明が、カメラが撮影する画像(映像)の形状を「長方形状」と特定しているのに対して、引用発明はカメラユニット2が撮影する画像の形状について明示されていない点。

(相違点2)
本願発明が、単に「カメラが撮影する映像のうち、前記予め定められた領域のトリミングにより得られた所定範囲の略正方形状の映像を表示し、トリミングによりカットされた、前記略正方形状の映像以外の部分を表示しない」表示形態により画像を表示しているのに対して、引用発明は「全体画像」と「トリミング枠内の拡大表示」とを交互に表示している点。

(相違点3)
印刷に際して、本願発明が、「前記略正方形の写真画像と前記編集画像とを合成して略正方形の合成画像を生成する合成手段」、「生成された合成画像を印刷する印刷手段」としているのに対して、引用発明は、「編集画像の入力を受け付け」た上で、撮影画像(本願発明でいう「写真画像」)と「編集画像」とを合成して「合成画像」を生成し、当該「合成画像」を印刷するとは明示されていない点。

3.判断
(1)上記相違点1について
引用文献1には、「カメラユニット2」が撮影した画像の形状について明示されていないものの、当該文献に記載の発明が「写真撮影プリント装置」であり、写真撮影を行う際に撮影する画像の形状を「長方形状」とすることは普通に行われている程度の事項である。また、当該装置の背景技術として「CCDカメラ」が例示(段落【0002】)されており、CCDカメラは一般的に「長方形状」の画像を出力(撮像)するものである。これらのことを勘案すれば、引用発明における「カメラユニット2」が撮影する画像を「長方形状」とすることは当業者にとって容易である。

(2)上記相違点2について
上記引用発明は、撮影を行う際に、トリミング枠内の画像の拡大表示(トリミング枠外の画像を表示しない)とカメラユニットが撮影している動画像全体画像の表示とを交互に行うものであるが、この「全体の表示」は、利用者がトリミング枠の位置や大きさを自由に移動・設定可能とした際に、その位置や大きさを確認する目的で表示されるものと解釈できる。
一方、上記1.(2)(b)のとおり、引用文献1には「トリミング枠」の位置を予め固定しておくことも記載されている。このため、「トリミング枠」の位置が固定された場合であっては、トリミング枠の位置や大きさが移動することがないため、利用者がその位置や大きさを確認する必要は低いといえる。

さらに、このトリミング枠内の画像(すなわち、撮影後に編集・印刷の対象となる画像)の拡大表示は、「利用者は、作成される撮影画像をライブビュー画像で、拡大して確認することができる。そのため、利用者は、そのライブビュー画像を見て、表情や姿勢を変えることができるので、表情や姿勢の細かい部分まで好みに変更して写真撮影する」(段落【0017】)ためのものであり、写真撮影プリント装置における表示手段は、撮影される画像(すなわち後に印刷される画像)を確認するために設けられており、撮影される画像をより見やすい形態で表示することにより利用者が画像を確認しやすくするようにすることは、当業者が普通に行うことであるといえる。

よって、上記の点を鑑みれば、引用発明における全体画像と「トリミング枠内の画像の拡大表示」とを交互に行う構成にかえて、「カメラが撮影する映像のうち、前記予め定められた領域のトリミングにより得られた所定範囲の略正方形状の映像を表示し、トリミングによりカットされた、前記略正方形状の映像以外の部分を表示しない」表示形態のみで表示を行う構成することは、当業者が容易に想到し得るもである。

(3)上記相違点3について
カメラにより撮影した写真画像上に落書き等の編集を施した上で印刷を行う際の具体的処理として、ユーザー操作により編集画像を受け付け(編集画像を生成し)、写真画像と編集画像を合成することで合成画像を生成し、合成画像を印刷することは、例示するまでもなく当該技術分野における周知慣用の技術である。
一方、引用発明において、落書き等の編集は、略正方形にトリミングされた画像に対して行われるものであることから、編集が施され印刷される画像も略正方形であるといえる。
してみると、引用発明において、略正方形にトリミングされた「撮影画像」(本願の「写真画像」)と「編集画像」とを「印刷」する際の具体的処理として、上記の周知慣用の技術を適用して、「前記略正方形の写真画像と前記編集画像とを合成して略正方形の合成画像を生成する合成手段」、「生成された合成画像を印刷する印刷手段」とを備える構成とすることは、当業者にとって容易である。

〈効果等について〉
以上のように、上記相違点は、当業者が容易に想到し得たものと認められ、本願発明全体としてみても格別のものはなく、その作用効果も、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

4.まとめ

以上、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知慣用の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知慣用の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、残る請求項2ないし4に係る発明について特に検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-04 
結審通知日 2013-03-05 
審決日 2013-03-18 
出願番号 特願2009-90976(P2009-90976)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村山 絢子  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 小池 正彦
涌井 智則
発明の名称 写真撮影遊戯機、写真撮影遊戯方法及び写真撮影遊戯プログラム  
代理人 松山 隆夫  
代理人 川上 桂子  
代理人 坂根 剛  
代理人 上羽 秀敏  
代理人 竹添 忠  

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