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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01T
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01T
管理番号 1273593
審判番号 不服2010-14287  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-29 
確定日 2013-05-10 
事件の表示 特願2004-236244「脳画像データ処理プログラム、記録媒体および脳画像データ処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 2月23日出願公開,特開2006- 53102〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成16年 8月13日に特許出願されたものであって,平成22年3月3日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年6月29日に拒絶査定に対する不服の審判請求がなされるとともに,同日付けで手続補正書を提出して補正(以下「本件補正」という)がなされたものである。さらに,同年9月21日付けで審尋がなされ,回答書が同年12月11日付けで請求人より提出されたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 補正後の請求項15に係る発明
本件補正により,補正前の特許請求の範囲の請求項15は,次のとおりに補正された。(下線は補正箇所を示す。)
「【請求項15】
脳画像データの処理をコンピュータに行わせる脳画像データ処理方法であって、
所定のフォーマットの解剖学的画像データを1つ選択させる解剖学的画像データ選択ステップと、
前記所定のフォーマットの機能画像データを2つ選択させる機能画像データ選択ステップと、
前記解剖学的画像データ選択ステップで選択させた解剖学的画像データと前記機能画像データ選択ステップで選択させた機能画像データとの位置合わせの精度を、機能画像データに合わない頸部の解剖学的画像データを除去し解剖学的画像データに機能画像データと合った部分を残す修正により高める解剖学的画像データ修正ステップと、
前記機能画像データ選択ステップで選択させた2つの機能画像データの差分画像データを求める機能画像データ差分ステップと、
前記解剖学的画像データ修正ステップで修正した解剖学的画像データと前記機能画像データ選択ステップで選択させた2つの機能画像データの各々とを重ね合わせた融合画像データ、及び前記解剖学的画像データ修正ステップで修正した解剖学的画像データと前記機能画像データ差分ステップで求めた差分画像データとを重ね合わせた融合画像データを求める融合ステップと、
前記融合ステップで求めた融合画像データを所定の形式及び/又は所定の条件で表示する表示ステップとを備えたことを特徴とする脳画像データ処理方法。」(以下「補正発明」という)

上記補正は,補正前の請求項15に係る発明を特定するために必要な事項である「解剖学的画像データの修正を行なう」を,「解剖学的画像データと前記機能画像データ選択ステップで選択させた機能画像データとの位置合わせの精度を、機能画像データに合わない頸部の解剖学的画像データを除去し解剖学的画像データに機能画像データと合った部分を残す修正により高める」と限定する(以下「補正事項1」)とともに,同様に補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記機能画像データ選択ステップで選択させた2つの機能画像データを揃えるレジストレーション処理を前記解剖学的画像データ修正ステップで修正した解剖学的画像データを用いて行なった後、該2つの機能画像データの差分画像データを求める機能画像データ差分ステップ」を「前記機能画像データ選択ステップで選択させた2つの機能画像データの差分画像データを求める機能画像データ差分ステップ」とする(以下「補正事項2」という)ものである。
そこで,検討するに,補正事項1は特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものの,補正事項2は,「レジストレーション処理を前記解剖学的画像データ修正ステップで修正した解剖学的画像データを用いて行なった後」との特定事項を削除するものであって,特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正あるいは明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当しないことは,明らかである。
そうすると,補正事項2を含む本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下「平成18年法改正前」という)の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。

また,もし仮に,補正事項2が単に自明な事項を削除するものであるとすれば,本件補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものとなるから,補正後の請求項15に記載された発明(以下「補正発明」という)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物の記載事項

(1)本願出願前に日本国内において頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である「松田 博史 H. Matsuda,特集 新しい脳の画像診断法はどのように役に立つのか?,Japanese Journal of Diagnostic lmaging,日本,須摩 春樹 株式会社秀潤社,2003年10月25日,第23巻,1296?1309頁」(以下「刊行物1」という)には,次の事項が記載されている。なお,刊行物1は,平成21年6月24日に提出された刊行物等提出書に添付された文献1「松田博史,”SPECTにおける画像統計解析”画像診断,2003,Vol.23,No.11,1296?1309頁」と同一内容ものである。

(1-ア)
「さらに,個人の異なる条件下での2回の脳血流SPECTの差分画像を統計学的に処理し,有意な部位のみを,その個人のMRI上に登録するというsubtraction ictal SPECT co-registered to MRI(SISCOM)^(5))も,てんかん領域において用いられている。」(1296頁,左欄20?24行)

(1-イ)
「4)SISCOM
^(99m)Tc-HMPAOや^(99m)Tc-ECDを用いた脳血流SPECTは,その脳内分布が投与後1?2分以内に決定し,以後,長く保たれる.この性質は,ごく短い時間の脳血流変化を捉えるのに適しており,てんかん発作時が最も良い適応である.従来は,てんかん発作時と発作間欠期の画像を視覚的に比較して,焦点における血流増加部位を推定していた.最近では,画像処理技術の進歩により,両方の画像の減算を行い,さらに統計学的に有意な血流増加部位のみをMRI上に表示するSISCOM^(5))が実用化されている.この手法の導入により,てんかん焦点とその伝播部位の血流変化を鋭敏かつ客観的に捉えることが可能となった.我々が現在用いているSISCOMの作成法の概要を以下に述べる(図1).」(1299頁,右欄5?19行)

(1-ウ)
「1)発作時SPECT像と発作間欠期SPECT像を,それぞれ平均脳SPECTカウントで正規化する.
2)SPECTカウントを正規化した発作間欠期SPECT像と発作時SPECT像を,患者のMRI像にAutomated Image Registration(AIR)^(8))を用いて登録する.
3)SPECTカウントを正規化した発作時SPECT像から発作間欠期SPECT像を差し引く.
4)差し引いた画像の平均と標準偏差を求める.
5)差し引いた画像で,2標準偏差以上離れた部位のみ統計学的に有意の部位として抽出し,MRI上に登録する.
ここで,用いられるAIR(//bishopw.loni.ucla.cdu/AIR5/)は,Woodsらにより開発された,フリーウエアであり,MRIとPET/SPECT画像を自動的に登録させることができる,てんかん症例における応用例を図2示す.」(1301頁,左欄1?17行)

上記記載事項(1-ア)?(1-ウ)および図1および2によれば,刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。
「発作時SPECT像と発作間欠期SPECT像を,それぞれ平均脳SPECTカウントで正規化するステップと,
該正規化した発作間欠期SPECT像と発作時SPECT像を,患者のMRI像にAIRを用いて登録するステップと,
該正規化した発作時SPECT像から発作間欠期SPECT像を差し引くステップと,
該差し引いた画像の平均と標準偏差を求めるステップと,
該差し引いた画像で,2標準偏差以上離れた部位のみ統計学的に有意の部位として抽出し,患者のMRI像に登録するステップとを備えたてんかん症の画像診断法。」(以下,「引用発明」という)

(2)同様に,本願出願前に日本国内において頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である「総編集 松平正明,臨床精神医学講座 精神課臨床における医学診断,日本,中山書店,2000年 7月31日,P.167-174」(以下「刊行物2」という)には,次の事項が記載されている。

(2-ア)
「PET画像とMRI画像といった異なったモダリティの画像を重ね合わせる(Coregistration)のアルゴリズムが発表された。」(172頁左欄)

(2-イ)
「この方法では、MRI画像に含まれる頭皮や筋などの軟部組織や頭蓋骨の骨髄の信号が計算結果に影響を与えるために、あらかじめ他のプログラム等を使ってこれらの組織の信号をとり除く必要があった。」(172頁右欄)

3 対比・判断
(1)対比
補正発明と引用発明1とを対比すると,引用発明1の「発作時SPECT像と発作間欠期SPECT像」および「MRI像」は,それぞれ,補正発明の「2つの機能画像」および「解剖学的画像」に相当することは明らかである。
また,上記記載事項(1-ウ)の「ここで,用いられるAIR(//bishopw.loni.ucla.cdu/AIR5/)は,Woodsらにより開発された,フリーウエアであり,MRIとPET/SPECT画像を自動的に登録させることができる。」からみて,引用発明の「てんかん症の画像診断法」は,コンピュータを用いるものであり,コンピュータにて処理するものはデータであるから,引用発明においては「発作時SPECT像」,「発作間欠期SPECT像」および「MRI像」の各データを処理していることとなり,引用発明は,脳画像データ処理方法を含むものであるといえ,視覚評価するのであるから,表示ステップを備えることも自明である。
また,引用発明のおいては,前述のとおり,「発作時SPECT像」,「発作間欠期SPECT像」および「MRI像」の各データを処理しているのであるから,それぞれの像のデータが選択されており,補正発明と同様に「所定のフォーマットの解剖学的画像データを1つ選択させる解剖学的画像データ選択ステップ」と「前記所定のフォーマットの機能画像データを2つ選択させる機能画像データ選択ステップ」を備えていることとなる。
そして,引用発明の「該正規化した発作時SPECT像から発作間欠期SPECT像を差し引くステップ」を備えることは,補正発明の「前記所定のフォーマットの機能画像データを2つ選択させる機能画像データ選択ステップ」と「前記機能画像データ選択ステップで選択させた2つの機能画像データの差分画像データを求める機能画像データ差分ステップ」とを備えることに相当し,また,引用発明の「MRI像」はAIRを用いて登録するものであり,AIRを用いて登録する場合には,何らかのデータ修正が為されるのが技術常識であるから,補正発明の「解剖学的画像データ修正ステップで修正した解剖学的画像データ」に相当するといえるから,引用発明の「該正規化した発作間欠期SPECT像と発作時SPECT像を,患者のMRI像にAIRを用いて登録するステップ」および「該差し引いた画像で,・・・・・患者のMRI像に登録するステップ」とを備えることは,補正発明の「前記解剖学的画像データ修正ステップで修正した解剖学的画像データと前記機能画像データ選択ステップで選択させた2つの機能画像データの各々とを重ね合わせた融合画像データ、及び前記解剖学的画像データ修正ステップで修正した解剖学的画像データと前記機能画像データ差分ステップで求めた差分画像データとを重ね合わせた融合画像データを求める融合ステップ」を備えることに相当するといえる。

そうすると,両者は,
(一致点)
「脳画像データの処理をコンピュータに行わせる脳画像データ処理方法であって,
所定のフォーマットの解剖学的画像データを1つ選択させる解剖学的画像データ選択ステップと,
前記所定のフォーマットの機能画像データを2つ選択させる機能画像データ選択ステップと,
前記解剖学的画像データ選択ステップで選択させた解剖学的画像データの修正を行なう解剖学的画像データ修正ステップと,
前記機能画像データ選択ステップで選択させた2つの機能画像データの差分画像データを求める機能画像データ差分ステップと,
前記解剖学的画像データ修正ステップで修正した解剖学的画像データと前記機能画像データ選択ステップで選択させた2つの機能画像データの各々とを重ね合わせた融合画像データ,及び前記解剖学的画像データ修正ステップで修正した解剖学的画像データと前記機能画像データ差分ステップで求めた差分画像データとを重ね合わせた融合画像データを求める融合ステップと,
前記融合ステップで求めた融合画像データを所定の形式及び/又は所定の条件で表示する表示ステップとを備えた脳画像データ処理方法。」
である点で一致し,次の点で相違する。

(相違点1)
「解剖学的画像データ選択ステップ」が,補正発明では「前記解剖学的画像データ選択ステップで選択させた解剖学的画像データと前記機能画像データ選択ステップで選択させた機能画像データとの位置合わせの精度を、機能画像データに合わない頸部の解剖学的画像データを除去し解剖学的画像データに機能画像データと合った部分を残す修正により高める解剖学的画像データ修正ステップ」であるのに対し,引用発明ではそのような解剖学的データ修正ステップかどうか不明である点。

(2)判断
本願明細書の段落【0052】には,「・・・・・この結果、MRI画像にはSPECT画像と合った部分が残るため、精度の高い位置合わせを行なうことができる。以上のように、不要な部分を除去することによりデータ量を減らすこともできる。」の記載されていることからみて,相違点1の技術的意義は,精度の高い位置合わせを行なうことができるとともに,データ量を減らすこともできることにあるといえる。
一方,上記記載事項(2-ア)および(2-イ)からみて,刊行物2には「解剖学的画像データと機能画像データとを重ね合わせて融合画像データとする場合に,計算結果に影響を与える,すなわち,位置合わせの精度を低くする,解剖学的画像データの組織データを予めとり除く必要がある」という技術的事項が記載されているといえる。
また,本願出願前に頒布され,原審の拒絶査定時に先行技術文献として示された刊行物である「Fast and robust registration of PET and MR images of human brain,NeuroImage,Academic Press,2004年 5月,volume 22 Issue 1,P434-442」には「全MR像ボリュームの替わりに抽出された脳を使用することは、像ボリュームの大きな減少となり、PET像における重要な対応する信号を持たない部分(例えば、頸部)の削除になるという潜在的な利点がある。」(436頁右欄12?16)と記載されているように,「レジストレーションの高速化,即ちレジストレーション時間を短くするために不要な部分として例えば、頸部を計算から排除する」ことは,本願出願前周知の事項であるといえる。
そうすると,引用発明において,レジストレーションの高速化という目的のために,解剖学的画像データから頸部のデータを取り除くようにすることは,当業者において十分動機付けがあるといえ,また,頸部のデータを取り除けば,レジストレーションの精度も高くなることは,当業者ならば予測し得る範囲のことであるといえる。
してみると,引用発明において,上記刊行物2に記載された技術的事項および上記周知の事項を適用して,相違点1における補正発明の構成とすることは,当業者ならば何ら困難性がなく,容易に想到することができたものであるというべきである。

そして,前述のとおり,相違点1により奏する効果も,刊行物1,2の記載事項および上記周知の事項から当業者ならば予測し得る範囲の事項であり,格別顕著なものとはいえない。

したがって,補正発明は,引用発明,刊行物2に記載された技術的事項および周知の事項に基づいて容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により,独立して特許を受けることができないものである。

4 回答書について
請求人は,回答書において「本願発明では、一連のプログラムステップの一つとして画像の重ね合わせ精度を高めるために、『重要な対応する信号』を持つ部分の一部も削除するような重ね合わせ精度を低下させる別のプログラムであるBETを用いることなく、MR画像の頭頂部から一定の距離を残して削除する方法により高い位置合わせ精度を実現している。・・・・・従って、引用文献2記載の技術と先行技術文献1とを組合わせて本願発明に想到することは当業者にとって想定され得ないものであるため、両者の組合せには阻害要因がある。」と主張している。
しかしながら,補正発明には「機能画像データに合わない頸部の解剖学的画像データを除去し」と特定されているのみであって,請求人の「MR画像の頭頂部から一定の距離を残して削除する方法により高い位置合わせ精度を実現している」との主張は,特許請求の範囲の記載に基づかない主張であり,また,このようなデータ削除方法は,もっとも簡便な方法として画像処理において一般的に行われている方法に過ぎず,この点において補正発明が進歩性を有するとは到底いえない。
したがって,請求人の前記主張は採用できない。

5 まとめ
以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年法改正前の特許法第17条の2第4項あるいは同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により,却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されることとなったので,本願の請求項1?27に係る発明は,平成22年1月13日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?27に記載された事項により特定されるものであって,その請求項15に係る発明は次のとおりである。

「脳画像データの処理をコンピュータに行わせる脳画像データ処理方法であって、
所定のフォーマットの解剖学的画像データを1つ選択させる解剖学的画像データ選択ステップと、
前記所定のフォーマットの機能画像データを2つ選択させる機能画像データ選択ステップと、
前記解剖学的画像データ選択ステップで選択させた解剖学的画像データの修正を行なう解剖学的画像データ修正ステップと、
前記機能画像データ選択ステップで選択させた2つの機能画像データを揃えるレジストレーション処理を前記解剖学的画像データ修正ステップで修正した解剖学的画像データを用いて行なった後、該2つの機能画像データの差分画像データを求める機能画像データ差分ステップと、
前記解剖学的画像データ修正ステップで修正した解剖学的画像データと前記機能画像データ選択ステップで選択させた2つの機能画像データの各々とを重ね合わせた融合画像データ、及び前記解剖学的画像データ修正ステップで修正した解剖学的画像データと前記機能画像データ差分ステップで求めた差分画像データとを重ね合わせた融合画像データを求める融合ステップと、
前記融合ステップで求めた融合画像データを所定の形式及び/又は所定の条件で表示する表示ステップとを備えたことを特徴とする脳画像データ処理方法。」(以下「本願発明」という)

2 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物およびその記載事項は,前記「第2 2 引用刊行物の記載事項」に記載したとおりである。

3 判断
本願発明は,補正発明において,その特定事項である「解剖学的画像データと前記機能画像データ選択ステップで選択させた機能画像データとの位置合わせの精度を、機能画像データに合わない頸部の解剖学的画像データを除去し解剖学的画像データに機能画像データと合った部分を残す修正により高める」を「解剖学的画像データの修正を行なう」とするとともに,「前記機能画像データ選択ステップで選択させた2つの機能画像データの差分画像データを求める機能画像データ差分ステップ」を「前記機能画像データ選択ステップで選択させた2つの機能画像データを揃えるレジストレーション処理を前記解剖学的画像データ修正ステップで修正した解剖学的画像データを用いて行なった後、該2つの機能画像データの差分画像データを求める機能画像データ差分ステップ」をとするものである。
そして,前者が限定を除くものであり,後者は「2つの機能画像データを揃えるレジストレーション処理を前記解剖学的画像データ修正ステップで修正した解剖学的画像データを用いて行なった後」との事項を付加するものであるから,本願発明と引用発明とを比較すると,前記「第2 3 対比・判断 (1)対比」にて述べた同様に両者は,

(一致点)
「脳画像データの処理をコンピュータに行わせる脳画像データ処理方法であって,
所定のフォーマットの解剖学的画像データを1つ選択させる解剖学的画像データ選択ステップと,
前記所定のフォーマットの機能画像データを2つ選択させる機能画像データ選択ステップと,
前記解剖学的画像データ選択ステップで選択させた解剖学的画像データの修正を行なう解剖学的画像データ修正ステップと,
前記機能画像データ選択ステップで選択させた2つの機能画像データの差分画像データを求める機能画像データ差分ステップと,
前記解剖学的画像データ修正ステップで修正した解剖学的画像データと前記機能画像データ選択ステップで選択させた2つの機能画像データの各々とを重ね合わせた融合画像データ,及び前記解剖学的画像データ修正ステップで修正した解剖学的画像データと前記機能画像データ差分ステップで求めた差分画像データとを重ね合わせた融合画像データを求める融合ステップと,
前記融合ステップで求めた融合画像データを所定の形式及び/又は所定の条件で表示する表示ステップとを備えた脳画像データ処理方法。」
である点で一致し,次の点で相違する。

(相違点2)
「機能画像データ差分ステップ」が,本願発明では「2つの機能画像データを揃えるレジストレーション処理を前記解剖学的画像データ修正ステップで修正した解剖学的画像データを用いて行なった後」に行うものであるのに対し,引用発明ではそのような解剖学的データ修正ステップかどうか不明である点。

そこで,相違点2を検討するに,
前記「第2 3 対比・判断 (3)判断」において,述べたように,刊行物2には「解剖学的画像データと機能画像データとを重ね合わせて融合画像データとする場合に,計算結果に影響を与える,すなわち,位置合わせの精度を低くする,解剖学的画像データの組織データを予めとり除く必要がある」という技術的事項が記載されているといえる。また,「レジストレーションの高速化,即ちレジストレーション時間を短くするために不要な部分として例えば、頸部を計算から排除する」ことは,本願出願前周知の事項であるといえる。
そうすると,引用発明は「正規化した発作間欠期SPECT像と発作時SPECT像を,患者のMRI像にAIRを用いて登録するステップ」と「該正規化した発作時SPECT像から発作間欠期SPECT像を差し引くステップと」とを備えており,該「患者のMRI像にAIRを用いて登録する」際に,上記刊行物2に記載された技術的事項および周知の事項を適用して,修正した「MRI像」を用いて「発作間欠期SPECT像」と「発作時SPECT像」を「レジストレーション処理」して揃え,その後,「差し引く」ようにすることは,当業者ならば容易に想到し得る程度のことであるといえる。
そして,相違点2により奏する効果も,刊行物1,2の記載事項および上記周知の事項から当業者ならば予測し得る範囲の事項であり,格別顕著なものとはいえない。

したがって,本願発明は,引用発明,刊行物2に記載された技術的事項および周知の事項に基づいて容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により,独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないから,その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-24 
結審通知日 2013-02-19 
審決日 2013-03-04 
出願番号 特願2004-236244(P2004-236244)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01T)
P 1 8・ 575- Z (G01T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小田倉 直人今浦 陽恵  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 後藤 時男
信田 昌男
発明の名称 脳画像データ処理プログラム、記録媒体および脳画像データ処理方法  
代理人 谷田 拓男  

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