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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G02F 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02F 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G02F |
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管理番号 | 1273599 |
審判番号 | 不服2012-1157 |
総通号数 | 162 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-06-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-01-20 |
確定日 | 2013-05-10 |
事件の表示 | 特願2005-357668「発色安定化エレクトロクロミックデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月 1日出願公開、特開2006-139293〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2000年8月17日に国際出願した特願2001-517209(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年8月19日、米国。以下、「原出願」という。)の一部を平成17年12月12日に新たな特許出願(特願2005-357668号)としたものであって、平成23年9月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年1月20日に拒絶査定に対する審判請求がされると同時に手続補正書が提出されて特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、これらに対し、同年5月18日付けで審尋がなされ、同年11月21日に回答書が提出されたものである。 2.平成24年1月20日付け手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)後の本願の発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1(以下、「本願発明」という。)は、 「【請求項1】 エレクトロクロミックデバイスであって: (a)第一の透明な基材であって、その第一基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第一基材; (b)第二の基材であって、その第二基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第二基材; (c)上記第一および第二基材の間に位置するチャンバー内に含まれるエレクトロクロミック媒体であって: (1)溶媒; (2)カソード電気的活性材料; (3)アノード電気的活性材料 (ここで、アノードおよびカソード電気的活性材料の少なくとも一方はエレクトロクロミック性を有する);および (4)カソード電気的活性材料よりも容易に還元されるかまたはアノード電気的活性材料よりも容易に酸化される、発色安定化添加剤 を含む当該エレクトロクロミック媒体 を含み;そして (d)エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後にΔa^(*)の絶対値として3.25未満の値を示す 上記のエレクトロクロミックデバイス。」 と補正された。 また、特許請求の範囲の請求項2ないし31は、 「【請求項2】 エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後にΔa^(*)の絶対値として2.00未満の値を示す、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項3】 エレクトロクロミックデバイスであって: (a)第一の透明な基材であって、その第一基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第一基材; (b)第二の基材であって、その第二基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第二基材; (c)上記第一および第二基材の間に位置するチャンバー内に含まれるエレクトロクロミック媒体であって: (1)溶媒; (2)カソード電気的活性材料; (3)アノード電気的活性材料 (ここで、アノードおよびカソード電気的活性材料の少なくとも一方はエレクトロクロミック性を有する);および (4)カソード電気的活性材料よりも容易に還元されるかまたはアノード電気的活性材料よりも容易に酸化される、発色安定化添加剤 を含む当該エレクトロクロミック媒体 を含み;そして (d)エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後にΔb^(*)の絶対値として6.00未満の値を示す 上記のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項4】 エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後にΔb^(*)の絶対値として3.00未満の値を示す、請求項3に記載のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項5】 エレクトロクロミックデバイスであって: (a)第一の透明な基材であって、その第一基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第一基材; (b)第二の基材であって、その第二基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第二基材; (c)上記第一および第二基材の間に位置するチャンバー内に含まれるエレクトロクロミック媒体であって: (1)溶媒; (2)カソード電気的活性材料; (3)アノード電気的活性材料 (ここで、アノードおよびカソード電気的活性材料の少なくとも一方はエレクトロクロミック性を有する);および (4)カソード電気的活性材料よりも容易に還元されるかまたはアノード電気的活性材料よりも容易に酸化される、発色安定化添加剤 を含む当該エレクトロクロミック媒体 を含み;そして (d)エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに対して周囲温度において約2,000時間暴露された後にΔEの絶対値として9.00未満の値を示す 上記のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項6】 エレクトロクロミックデバイスであって: (a)第一の透明な基材であって、その第一基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第一基材; (b)第二の基材であって、その第二基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第二基材; (c)上記第一および第二基材の間に位置するチャンバー内に含まれるエレクトロクロミック媒体であって: (1)溶媒; (2)カソード電気的活性材料; (3)アノード電気的活性材料 (ここで、アノードおよびカソード電気的活性材料の少なくとも一方はエレクトロクロミック性を有する);および (4)カソード電気的活性材料よりも容易に還元されるかまたはアノード電気的活性材料よりも容易に酸化される、発色安定化添加剤 を含む当該エレクトロクロミック媒体 を含み;そして (d)エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後にΔYの絶対値として7.50未満の値を示す 上記のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項7】 エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後にΔYの絶対値として5.00未満の値を示す、請求項6に記載のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項8】 エレクトロクロミックデバイスであって: (a)第一の透明な基材であって、その第一基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第一基材; (b)第二の基材であって、その第二基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第二基材; (c)上記第一および第二基材の間に位置するチャンバー内に含まれるエレクトロクロミック媒体であって: (1)溶媒; (2)カソード電気的活性材料; (3)アノード電気的活性材料 (ここで、アノードおよびカソード電気的活性材料の少なくとも一方はエレクトロクロミック性を有する);および (4)カソード電気的活性材料よりも容易に還元されるかまたはアノード電気的活性材料よりも容易に酸化される、発色安定化添加剤 を含む当該エレクトロクロミック媒体 を含み;そして (d)エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔa^(*)の絶対値として2.00未満の値を示す 上記のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項9】 エレクトロクロミックデバイスであって: (a)第一の透明な基材であって、その第一基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第一基材; (b)第二の基材であって、その第二基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第二基材; (c)上記第一および第二基材の間に位置するチャンバー内に含まれるエレクトロクロミック媒体であって: (1)溶媒; (2)カソード電気的活性材料; (3)アノード電気的活性材料 (ここで、アノードおよびカソード電気的活性材料の少なくとも一方はエレクトロクロミック性を有する);および (4)カソード電気的活性材料よりも容易に還元されるかまたはアノード電気的活性材料よりも容易に酸化される、発色安定化添加剤 を含む当該エレクトロクロミック媒体 を含み;そして (d)エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔb^(*)の絶対値として10.00未満の値を示す 上記のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項10】 エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔb^(*)の絶対値として5.00未満の値を示す、請求項9に記載のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項11】 エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔb^(*)の絶対値として1.00未満の値を示す、請求項9に記載のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項12】 エレクトロクロミックデバイスであって: (a)第一の透明な基材であって、その第一基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第一基材; (b)第二の基材であって、その第二基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第二基材; (c)上記第一および第二基材の間に位置するチャンバー内に含まれるエレクトロクロミック媒体であって: (1)溶媒; (2)カソード電気的活性材料; (3)アノード電気的活性材料 (ここで、アノードおよびカソード電気的活性材料の少なくとも一方はエレクトロクロミック性を有する);および (4)カソード電気的活性材料よりも容易に還元されるかまたはアノード電気的活性材料よりも容易に酸化される、発色安定化添加剤 を含む当該エレクトロクロミック媒体 を含み;そして (d)エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔEの絶対値として12.00未満の値を示す 上記のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項13】 エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔEの絶対値として5.00未満の値を示す、請求項12に記載のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項14】 エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔEの絶対値として2.00未満の値を示す、請求項12に記載のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項15】 エレクトロクロミックデバイスであって: (a)第一の透明な基材であって、その第一基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第一基材; (b)第二の基材であって、その第二基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第二基材; (c)上記第一および第二基材の間に位置するチャンバー内に含まれるエレクトロクロミック媒体であって: (1)溶媒; (2)カソード電気的活性材料; (3)アノード電気的活性材料 (ここで、アノードおよびカソード電気的活性材料の少なくとも一方はエレクトロクロミック性を有する);および (4)カソード電気的活性材料よりも容易に還元されるかまたはアノード電気的活性材料よりも容易に酸化される、発色安定化添加剤 を含む当該エレクトロクロミック媒体 を含み;そして (d)エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔYの絶対値として10.00未満の値を示す 上記のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項16】 エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔYの絶対値として5.00未満の値を示す、請求項15に記載のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項17】 エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔYの絶対値として1.00未満の値を示す、請求項15に記載のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項18】 エレクトロクロミックデバイスであって: (a)第一の透明な基材であって、その第一基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第一基材; (b)第二の基材であって、その第二基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第二基材; (c)上記第一および第二基材の間に位置するチャンバー内に含まれるエレクトロクロミック媒体であって: (1)溶媒; (2)カソード電気的活性材料; (3)アノード電気的活性材料 (ここで、アノードおよびカソード電気的活性材料の少なくとも一方はエレクトロクロミック性を有する);および (4)カソード電気的活性材料よりも容易に還元されるかまたはアノード電気的活性材料よりも容易に酸化される、発色安定化添加剤 を含む当該エレクトロクロミック媒体 を含み;そして (d)エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔa^(*)の絶対値に少なくとも60%の低下を示す 上記のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項19】 エレクトロクロミックデバイスであって: (a)第一の透明な基材であって、その第一基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第一基材; (b)第二の基材であって、その第二基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第二基材; (c)上記第一および第二基材の間に位置するチャンバー内に含まれるエレクトロクロミック媒体であって: (1)溶媒; (2)カソード電気的活性材料; (3)アノード電気的活性材料 (ここで、アノードおよびカソード電気的活性材料の少なくとも一方はエレクトロクロミック性を有する);および (4)カソード電気的活性材料よりも容易に還元されるかまたはアノード電気的活性材料よりも容易に酸化される、発色安定化添加剤 を含む当該エレクトロクロミック媒体 を含み;そして (d)エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔb^(*)の絶対値に少なくとも20%の低下を示す 上記のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項20】 エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔb^(*)の絶対値に少なくとも40%の低下を示す、請求項19に記載のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項21】 エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔb^(*)の絶対値に少なくとも60%の低下を示す、請求項19に記載のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項22】 エレクトロクロミックデバイスであって: (a)第一の透明な基材であって、その第一基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第一基材; (b)第二の基材であって、その第二基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第二基材; (c)上記第一および第二基材の間に位置するチャンバー内に含まれるエレクトロクロミック媒体であって: (1)溶媒; (2)カソード電気的活性材料; (3)アノード電気的活性材料 (ここで、アノードおよびカソード電気的活性材料の少なくとも一方はエレクトロクロミック性を有する);および (4)カソード電気的活性材料よりも容易に還元されるかまたはアノード電気的活性材料よりも容易に酸化される、発色安定化添加剤 を含む当該エレクトロクロミック媒体 を含み;そして (d)エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔEの絶対値に少なくとも20%の低下を示す上記のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項23】 エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔEの絶対値に少なくとも40%の低下を示す、請求項22に記載のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項24】 エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔEの絶対値に少なくとも50%の低下を示す、請求項22に記載のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項25】 エレクトロクロミックデバイスであって: (a)第一の透明な基材であって、その第一基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第一基材; (b)第二の基材であって、その第二基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第二基材; (c)上記第一および第二基材の間に位置するチャンバー内に含まれるエレクトロクロミック媒体であって: (1)溶媒; (2)カソード電気的活性材料; (3)アノード電気的活性材料 (ここで、アノードおよびカソード電気的活性材料の少なくとも一方はエレクトロクロミック性を有する);および (4)カソード電気的活性材料よりも容易に還元されるかまたはアノード電気的活性材料よりも容易に酸化される、発色安定化添加剤 を含む当該エレクトロクロミック媒体 を含み;そして (d)エレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔa^(*)の絶対値に少なくとも75%の低下を示す 上記のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項26】 エレクトロクロミックデバイスであって: (a)第一の透明な基材であって、その第一基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第一基材; (b)第二の基材であって、その第二基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第二基材; (c)上記第一および第二基材の間に位置するチャンバー内に含まれるエレクトロクロミック媒体であって: (1)溶媒; (2)カソード電気的活性材料; (3)アノード電気的活性材料 (ここで、アノードおよびカソード電気的活性材料の少なくとも一方はエレクトロクロミック性を有する);および (4)カソード電気的活性材料よりも容易に還元されるかまたはアノード電気的活性材料よりも容易に酸化される、発色安定化添加剤 を含む当該エレクトロクロミック媒体 を含み;そして (d)エレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔb^(*)の絶対値に少なくとも20%の低下を示す 上記のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項27】 エレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔb^(*)の絶対値に少なくとも50%の低下を示す、請求項26に記載のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項28】 エレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔb^(*)の絶対値に少なくとも75%の低下を示す、請求項26に記載のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項29】 エレクトロクロミックデバイスであって: (a)第一の透明な基材であって、その第一基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第一基材; (b)第二の基材であって、その第二基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第二基材; (c)上記第一および第二基材の間に位置するチャンバー内に含まれるエレクトロクロミック媒体であって: (1)溶媒; (2)カソード電気的活性材料; (3)アノード電気的活性材料 (ここで、アノードおよびカソード電気的活性材料の少なくとも一方はエレクトロクロミック性を有する);および (4)カソード電気的活性材料よりも容易に還元されるかまたはアノード電気的活性材料よりも容易に酸化される、発色安定化添加剤 を含む当該エレクトロクロミック媒体 を含み;そして (d)エレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔEの絶対値に少なくとも20%の低下を示す 上記のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項30】 エレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔEの絶対値に少なくとも50%の低下を示す、請求項29に記載のエレクトロクロミックデバイス。 【請求項31】 エレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔEの絶対値に少なくとも75%の低下を示す、請求項29に記載のエレクトロクロミックデバイス。」 と補正された。 ところで、本件補正は、補正前の特許請求の範囲の記載を明りょうにするものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 また、本件補正は、新規事項の追加に該当しないから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に適合する。 3.分割要件について まず、本願が原出願との関係において、特許法第44条第1項に規定する分割の要件を満たしているか否か、つまり本願の明細書、特許請求の範囲、または図面に記載された事項が、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面に記載された事項の範囲内であるか否かについて検討する。 (3-1)本願の請求項5、12、13、14、22、23、24、29、30、及び31に記載のΔEについて 「ΔE」、または「E」そのもの自身に関して、そもそも原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面には、何ら記載や示唆されておらず(例えば、定義や技術的意義)、また自明な事項ともいえない。また、「ΔEの絶対値」を発明としてのパラメータとすることも、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。 また、請求項5に記載の「エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに対して周囲温度において約2,000時間暴露された後にΔEの絶対値として9.00未満の値を示す」との事項、請求項12に記載の「エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔEの絶対値として12.00未満の値を示す」との事項、請求項13に記載の「エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔEの絶対値として5.00未満の値を示す」との事項、請求項14に記載の「エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔEの絶対値として2.00未満の値を示す」との事項、請求項22に記載の「エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔEの絶対値に少なくとも20%の低下を示す」との事項、請求項23に記載の「エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔEの絶対値に少なくとも40%の低下を示す」との事項、請求項24に記載の「エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔEの絶対値に少なくとも50%の低下を示す」との事項、請求項29に記載の「エレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔEの絶対値に少なくとも20%の低下を示す」との事項、請求項30に記載の「エレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔEの絶対値に少なくとも50%の低下を示す」との事項、及び請求項31に記載の「エレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔEの絶対値に少なくとも75%の低下を示す」との事項における各請求項の「ΔEの絶対値」の数値範囲、または数値は、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。また、請求項22、23、24、29、30、及び31に記載のΔEの「絶対値」を求めるための「発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較」するとの事項も、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。 (3-2)本願の請求項6、7、15、16、及び17に記載のΔYについて 「ΔY」、または「Y」そのもの自身に関して、そもそも原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面には、何ら記載や示唆されておらず(例えば、定義や技術的意義)、また自明な事項ともいえない。また、「ΔYの絶対値」を発明としてのパラメータとすることも、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。 また、請求項6に記載の「エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後にΔYの絶対値として7.50未満の値を示す」との事項、請求項7に記載の「エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後にΔYの絶対値として5.00未満の値を示す」との事項、請求項15に記載の「エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔYの絶対値として10.00未満の値を示す」との事項、請求項16に記載の「エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔYの絶対値として5.00未満の値を示す」との事項、及び請求項17に記載の「エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔYの絶対値として1.00未満の値を示す」との事項における各請求項の「ΔYの絶対値」の数値範囲、または数値は、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。 (3-3)本願の請求項1、2、8、18、及び25に記載のΔa^(*)について 原出願の出願当初の明細書の段落【0061】ないし段落【0090】には、「a^(*)」に関する記載があるが、「Δa^(*)」が「a^(*)」の何の変数であるのかは、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。また、「Δa^(*)の絶対値」を発明としてのパラメータとすることも、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。 また、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において「約2,000時間暴露された後にΔa^(*)の絶対値として3.25未満の値を示す」との事項、請求項2に記載のエレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において「約2,000時間暴露された後にΔa^(*)の絶対値として2.00未満の値を示す」との事項、請求項8に記載のエレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に「約2,000時間暴露された後にΔa^(*)の絶対値として2.00未満の値を示す」との事項、請求項18に記載のエレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に「約2,000時間暴露された後にΔa^(*)の絶対値として2.00未満の値を示す」との事項、及び請求項25に記載のエレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に「約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔa^(*)の絶対値に少なくとも75%の低下を示す」との事項における各請求項の「Δa^(*)の絶対値」の数値範囲、または数値は、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。また、請求項18、及び25に記載のΔa^(*)の「絶対値」を求めるための「発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較」するとの事項も、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。 また、仮に、平成23年3月7日付け意見書(第2頁第20?23行)に記載されているように、「Δa^(*)」が、「Δa^(*)= (a_(t)^(*)-a_(0) ^(*))」(なお、添字“0”はL^(*)、a^(*)、及びb^(*)に対する初期値。添字“t”はL^(*)、a^(*)、及びb^(*)に対する所定時間後の値。)」であることが、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面の記載から、自明な事項であるとしても、本願の請求項1、2、8、18、及び25の上記の記載は、以下のとおり、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。 本願の請求項1に記載の「エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後にΔa^(*)の絶対値として3.25未満の値を示す」との事項について検討する。 原出願の明細書の段落【0067】の【表4】には、添加剤として(6-(テトラ-tert-ブチルフェロセニル)ヘキシル)トリエチルアンモニウムBF_(4)(発色安定化添加剤)を含むエレクトロクロミック媒体を、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度においてなされた実験結果が示されており、【表4】の実験番号1Bの欄には、0時間、1848時間、2016時間における「a^(*)」の値が示されている。 しかしながら、原出願の明細書の段落【0067】の【表4】には、約2000時間、つまり2000時間付近の「a^(*)」の値は示されておらず、本願の請求項1に記載の「約2,000時間暴露された後にΔa^(*)の絶対値」を上記の式に当てはめて計算することはできない。 また、約2000時間の範疇に上記の2016時間(表中、2000時間に最も近傍の時間である。)が包含されるとしても、「Δa^(*)の絶対値」は1.89であり、また、上記と同じ条件でなされた実験の結果である原出願の明細書の段落【0075】の【表9】の実験番号2B、2C、及び2Dには、0時間、2016時間における「a^(*)」の値が示されており、「Δa^(*)の絶対値」を計算すると、それぞれ3.23、6.65、及び1.64となる。してみると、確かに、本願の請求項1に記載の「Δa^(*)の絶対値として3.25未満の値」が示されてはいるが、それは、単に「3.25未満」の値が示されているに過ぎず、また「3.25未満」の値を導き出す根拠ともなり得ないから、「Δa^(*)の絶対値」の数値範囲として「3.25未満の値」とすることが記載や示唆されているということにはならず、また自明な事項ともいえない。 さらに、原出願の明細書に記載された上記の実験に用いられた添加剤は、段落【0064】の【表3】、段落【0071】の【表6】、段落【0072】の【表7】、段落【0073】の【表8】に記載された添加剤であって、これらの添加剤を用いた実験結果が、段落【0067】の【表4】、段落【0075】の【表9】に示されているに過ぎず、この実験結果のみにより、本願の請求項1に係る発明に「カソード電気的活性材料よりも容易に還元されるかまたはアノード電気的活性材料よりも容易に酸化される、発色安定化添加剤」と特定される「全ての発色安定化添加剤」において、「エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後にΔa^(*)の絶対値として3.25未満の値を示す」とまで、拡張ないし一般化できるものではなく、上記の事項が発明として、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面に、記載や示唆されているとはいえず、また自明な事項ともいえない。 そして、本願の請求項2、8、18、及び25に記載のΔa^(*)についても、上記と同様のことがいえるから、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面に、記載や示唆されているとはいえず、また自明な事項ともいえない。 (3-4)本願の請求項3、4、9、10、11、19、20、21、26、27、及び28に記載のΔb^(*)について 原出願の出願当初の明細書の段落【0061】ないし段落【0090】には、「b^(*)」に関する記載があるが、「Δb^(*)」が「b^(*)」の何の変数であるのかは、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。また、「Δb^(*)の絶対値」を発明としてのパラメータとすることも、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。 また、請求項3に記載のエレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において「約2,000時間暴露された後にΔb^(*)の絶対値として6.00未満の値を示す」との事項、請求項4に記載のエレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において「約2,000時間暴露された後にΔb^(*)の絶対値として3.00未満の値を示す」との事項、請求項9に記載のエレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に「約2,000時間暴露された後にΔb^(*)の絶対値として10.00未満の値を示す」との事項、請求項10に記載のエレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に「約2,000時間暴露された後にΔb^(*)の絶対値として5.00未満の値を示す」との事項、請求項11に記載のエレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に「約2,000時間暴露された後にΔb^(*)の絶対値として1.00未満の値を示す」との事項、請求項19に記載のエレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において「約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔb^(*)の絶対値に少なくとも20%の低下を示す」との事項、請求項20に記載のエレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において「約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔb^(*)の絶対値に少なくとも40%の低下を示す」との事項、請求項21に記載のエレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において「約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔb^(*)の絶対値に少なくとも60%の低下を示す」との事項、請求項26に記載のエレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に「約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔb^(*)の絶対値に少なくとも20%の低下を示す」との事項、請求項27に記載のエレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に「約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔb^(*)の絶対値に少なくとも50%の低下を示す」との事項、及び請求項28に記載のエレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に「約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔb^(*)の絶対値に少なくとも75%の低下を示す」との事項における各請求項の「Δb^(*)の絶対値」の数値範囲、または数値は、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。また、請求項19、20、21、26、27、及び28に記載のΔb^(*)の「絶対値」を求めるための「発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較」するとの事項も、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。 また、仮に、平成23年3月7日付け意見書(第2頁第24?27行)に記載されているように、「Δb^(*)」が、「Δb^(*)= (b_(t)^(*)-b_(0) ^(*))」(なお、添字“0”はL^(*)、a^(*)、及びb^(*)に対する初期値。添字“t”はL^(*)、a^(*)、及びb^(*)に対する所定時間後の値。)」であることが、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面の記載から、自明な事項であるとしても、本願の請求項3、4、9、10、11、19、20、21、26、27、及び28の上記の記載は、以下のとおり、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。 本願の請求項3に記載の「エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後にΔb^(*)の絶対値として6.00未満の値を示す」との事項について検討する。 原出願の明細書の段落【0067】の【表4】には、添加剤として(6-(テトラ-tert-ブチルフェロセニル)ヘキシル)トリエチルアンモニウムBF_(4)(発色安定化添加剤)を含むエレクトロクロミック媒体を、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度においてなされた実験結果が示されており、【表4】の実験番号1Bの欄には、0時間、1848時間、2016時間における「b^(*)」の値が示されている。 しかしながら、原出願の明細書の段落【0067】の【表4】には、約2000時間、つまり2000時間付近の「b^(*)」の値は示されておらず、本願の請求項1に記載の「約2,000時間暴露された後にΔb^(*)の絶対値」を上記の式に当てはめて計算することはできない。 また、約2000時間の範疇に上記の2016時間(表中、2000時間に最も近傍の時間である。)が包含されるとしても、「Δb^(*)の絶対値」は10.12であり、また、上記と同じ条件でなされた(なお、発色安定化添加剤は異なる。)実験の結果である原出願の明細書の段落【0075】の【表9】の実験番号2B、2C、及び2Dには、0時間、2016時間における「b^(*)」の値が示されており、「Δb^(*)の絶対値」を計算すると、それぞれ10.12、2.47、及び8.16となる。してみると、確かに、本願の請求項1に記載の「Δb^(*)の絶対値として6.00未満の値」が示されてはいるが、それは、単に「6.00未満」の値が示されているに過ぎず、また「6.00未満」の値を導き出す根拠ともなり得ないから、「Δb^(*)の絶対値」の数値範囲として「6.00未満の値」とすることが記載や示唆されているということにはならず、また自明な事項ともいえない。 さらに、原出願の明細書に記載された上記の実験に用いられた添加剤は、段落【0064】の【表3】、段落【0071】の【表6】、段落【0072】の【表7】、段落【0073】の【表8】に記載された添加剤であって、これらの添加剤を用いた実験結果が、段落【0067】の【表4】、段落【0075】の【表9】に示されているに過ぎず、この実験結果のみにより、本願の請求項3に係る発明に「カソード電気的活性材料よりも容易に還元されるかまたはアノード電気的活性材料よりも容易に酸化される、発色安定化添加剤」と特定される「全ての発色安定化添加剤」において、「エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後にΔb^(*)の絶対値として6.00未満の値を示す」とまで、拡張ないし一般化できるものではなく、上記の事項が発明として、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面に、記載や示唆されているとはいえず、また自明な事項ともいえない。 そして、本願の請求項4、9、10、11、19、20、21、26、27、及び28に記載のΔb^(*)についても、上記と同様のことがいえるから、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面に、記載や示唆されているとはいえず、また自明な事項ともいえない。 (3-5)小括 したがって、本願の特許請求の範囲に記載された事項は、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面にに記載した事項の範囲内でないものを含んでいるから、本願は分割出願としての要件を満たしていない。 よって、本願は、適法に原出願の一部を新たな特許出願としたものではないから、本願は、原出願の時にしたものとみなすことはできない。 以上のとおりであるから、本願は、願書を提出した平成17年12月12日がその出願日とされるものである。 4.特許法第29条第1項第3号違反について (4-1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前である平成15年2月25日に頒布された「特表2003-507756号公報 」(以下「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。(なお、下線は審決で付した。以下、同じ。) ・「エレクトロクロミックデバイスを通常に操作するのに使用するためのエレクトロクロミック媒体であって、 アノード材料およびカソード材料の両方が電気的活性でありそしてアノードおよびカソード材料の少なくとも1つがエレクトロクロミックである当該アノード材料およびカソード材料、および アノード材料よりもより容易に酸化される添加剤を含を含み、前記添加剤が置換フェロセン、置換フェロセニル塩およびこれらの混合物からなる群から選択されるエレクトロクロミック媒体。」(第4頁【請求項18】) ・「エレクトロクロミックデバイスを通常に操作するのに使用するためのエレクトロクロミック媒体であって、 アノードおよびカソード材料の両方が電気的活性でありそしてアノード材料およびカソード材料の少なくとも1つがエレクトロクロミックである当該アノード材料およびカソード材料、および カソード材料よりもより容易に還元される第一の成分およびアノード材料よりも容易に酸化される第二の成分を含む添加剤を含むエレクトロクロミック媒体。」(第5頁【請求項30】) ・「エレクトロクロミックデバイスであって:(a)第一の実質的に透明な基材にして、その第一基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第一基材;(b)第二の基材にして、その第二基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第二基材;(c)上記第一および第二基材の間に位置するチャンバー内に含まれるエレクトロクロミック媒体にして:(1)溶媒;(2)カソード電気的活性材料;(3)アノード電気的活性材料(ここで、アノードおよびカソード電気的活性材料の少なくとも一方はエレクトロクロミックである);および(4)着色安定剤添加剤を含む当該エレクトロクロミック媒体を含み;そして(d)エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後にΔa^(*)の絶対値として3.25未満の値を示す上記のエレクトロクロミックデバイス。」(第70頁【請求項90】) これらの記載事項を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「エレクトロクロミックデバイスであって: (a)第一の実質的に透明な基材にして、その第一基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第一基材; (b)第二の基材にして、その第二基材に関係づけられている導電性材料を有する当該第二基材; (c)上記第一および第二基材の間に位置するチャンバー内に含まれるエレクトロクロミック媒体にして: (1)溶媒; (2)カソード電気的活性材料; (3)アノード電気的活性材料 (ここで、アノードおよびカソード電気的活性材料の少なくとも一方はエレクトロクロミックである);および (4)アノード材料よりもより容易に酸化される添加剤またはカソード材料よりもより容易に還元される第一の成分およびアノード材料よりも容易に酸化される第二の成分を含む添加剤である着色安定剤添加剤 を含む当該エレクトロクロミック媒体 を含み;そして (d)エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後にΔa^(*)の絶対値として3.25未満の値を示す 上記のエレクトロクロミックデバイス。」 (4-2)対比・判断 そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、 後者における「添加剤、着色安定剤添加剤」は、その構造、機能、作用等からみて、前者における「発色安定化添加剤」に相当し、以下同様に、「アノードおよびカソード電気的活性材料の少なくとも一方はエレクトロクロミックである」は「アノードおよびカソード電気的活性材料の少なくとも一方はエレクトロクロミック性を有する」に、相当する。 また、後者における「着色安定剤添加剤(発色安定化添加剤)」は、アノード材料よりもより容易に酸化される添加剤またはカソード材料よりもより容易に還元される第一の成分およびアノード材料よりも容易に酸化される第二の成分を含む添加剤であるから、「カソード電気的活性材料よりも容易に還元されるかまたはアノード電気的活性材料よりも容易に酸化される」ものといえる。 してみると、両者に実質的な差異はなく、本願発明の発明特定事項は、すべて引用発明が備えているから、本願発明は、引用発明と同一である。 (4-3)むすび したがって、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 5.特許法第36条第6項第1号違反について 請求項1のエレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において「約2,000時間暴露された後にΔa^(*)の絶対値として3.25未満の値を示す」との記載、請求項2のエレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において「約2,000時間暴露された後にΔa^(*)の絶対値として2.00未満の値を示す」との記載、請求項3のエレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において「約2,000時間暴露された後にΔb^(*)の絶対値として6.00未満の値を示す」との記載、請求項4のエレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において「約2,000時間暴露された後にΔb^(*)の絶対値として3.00未満の値を示す」との記載、請求項5の「エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに対して周囲温度において約2,000時間暴露された後にΔEの絶対値として9.00未満の値を示す」との記載、請求項6の「エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後にΔYの絶対値として7.50未満の値を示す」との記載、請求項7の「エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後にΔYの絶対値として5.00未満の値を示す」との記載、請求項8のエレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に「約2,000時間暴露された後にΔa^(*)の絶対値として2.00未満の値を示す」との記載、請求項9のエレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に「約2,000時間暴露された後にΔb^(*)の絶対値として10.00未満の値を示す」との記載、請求項10のエレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に「約2,000時間暴露された後にΔb^(*)の絶対値として5.00未満の値を示す」との記載、請求項11のエレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に「約2,000時間暴露された後にΔb^(*)の絶対値として1.00未満の値を示す」との記載、請求項12の「エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔEの絶対値として12.00未満の値を示す」との記載、請求項13の「エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔEの絶対値として5.00未満の値を示す」との記載、請求項14の「エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔEの絶対値として2.00未満の値を示す」との記載、請求項15の「エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔYの絶対値として10.00未満の値を示す」との記載、請求項16の「エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔYの絶対値として5.00未満の値を示す」との記載、請求項17の「エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔYの絶対値として1.00未満の値を示す」との記載、請求項18のエレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において「約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔa^(*)の絶対値に少なくとも60%の低下を示す」との記載、請求項19のエレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において「約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔb^(*)の絶対値に少なくとも20%の低下を示す」との記載、請求項20のエレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において「約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔb^(*)の絶対値に少なくとも40%の低下を示す」との記載、請求項21のエレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において「約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔb^(*)の絶対値に少なくとも60%の低下を示す」との記載、請求項22の「エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔEの絶対値に少なくとも20%の低下を示す」との記載、請求項23の「エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔEの絶対値に少なくとも40%の低下を示す」との記載、請求項24の「エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔEの絶対値に少なくとも50%の低下を示す」との記載、請求項25のエレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に「約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔa^(*)の絶対値に少なくとも75%の低下を示す」との記載、請求項26のエレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に「約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔb^(*)の絶対値に少なくとも20%の低下を示す」との記載、請求項27のエレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に「約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔb^(*)の絶対値に少なくとも50%の低下を示す」との記載、請求項28のエレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に「約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔb^(*)の絶対値に少なくとも75%の低下を示す」との記載、請求項29の「エレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔEの絶対値に少なくとも20%の低下を示す」との記載、請求項30の「エレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔEの絶対値に少なくとも50%の低下を示す」との記載、及び請求項31の「エレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔEの絶対値に少なくとも75%の低下を示す」との記載は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載や示唆されていない。 してみると、本願の請求項1ないし31に係る発明は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載したものではない。 したがって、本願は、上記のとおり、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 6.特許法第36条第4項第1号違反について (6-1)本願の請求項5、12、13、14、22、23、24、29、30、及び31に記載のΔEについて 「ΔE」、または「E」そのもの自身に関して、本願明細書の発明の詳細な説明には、何ら記載や示唆されておらず(例えば、定義や技術的意義)、また自明な事項ともいえない。 また、請求項5に記載の「エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに対して周囲温度において約2,000時間暴露された後にΔEの絶対値として9.00未満の値を示す」との事項、請求項12に記載の「エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔEの絶対値として12.00未満の値を示す」との事項、請求項13に記載の「エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔEの絶対値として5.00未満の値を示す」との事項、請求項14に記載の「エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔEの絶対値として2.00未満の値を示す」との事項、請求項22に記載の「エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔEの絶対値に少なくとも20%の低下を示す」との事項、請求項23に記載の「エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔEの絶対値に少なくとも40%の低下を示す」との事項、請求項24に記載の「エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔEの絶対値に少なくとも50%の低下を示す」との事項、請求項29に記載の「エレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔEの絶対値に少なくとも20%の低下を示す」との事項、請求項30に記載の「エレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔEの絶対値に少なくとも50%の低下を示す」との事項、及び請求項31に記載の「エレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔEの絶対値に少なくとも75%の低下を示す」との事項における各請求項の「ΔEの絶対値」の数値範囲、または数値は、本願明細書の発明の詳細な説明には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。また、請求項22、23、24、29、30、及び31に記載のΔEの「絶対値」を求めるための「発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較」するとの事項も、本願明細書の発明の詳細な説明には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。 また、上記の各請求項に特定される「ΔE」、及び「ΔEの絶対値」の技術的意義も、本願明細書の発明の詳細な説明には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえず、経済産業省令で定めるところにより記載されたものとはいえない。 したがって、本願の上記請求項に記載された「ΔE」に関する事項は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえず、出願時の技術常識を勘案しても、経済産業省令で定めるところにより、当業者が本願の上記請求項に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。 (6-2)本願の請求項6、7、15、16、及び17に記載のΔYについて 「ΔY」、または「Y」そのもの自身に関して、そもそも本願明細書の発明の詳細な説明には、何ら記載や示唆されておらず(例えば、定義や技術的意義)、また自明な事項ともいえない。 また、請求項6に記載の「エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後にΔYの絶対値として7.50未満の値を示す」との事項、請求項7に記載の「エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後にΔYの絶対値として5.00未満の値を示す」との事項、請求項15に記載の「エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔYの絶対値として10.00未満の値を示す」との事項、請求項16に記載の「エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔYの絶対値として5.00未満の値を示す」との事項、及び請求項17に記載の「エレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に約2,000時間暴露された後にΔYの絶対値として1.00未満の値を示す」との事項における各請求項の「ΔYの絶対値」の数値範囲、または数値は、本願明細書の発明の詳細な説明には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。 また、上記の各請求項に特定される「ΔY」、及び「ΔYの絶対値」の技術的意義も、本願明細書の発明の詳細な説明には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえず、経済産業省令で定めるところにより記載されたものとはいえない。 したがって、本願の上記請求項に記載された「ΔY」に関する事項は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえず、出願時の技術常識を勘案しても、経済産業省令で定めるところにより、当業者が本願の上記請求項に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。 (6-3)本願の請求項1、2、8、18、及び25に記載のΔa^(*)について 原出願の出願当初の明細書の段落【0061】ないし段落【0091】には、「a^(*)」に関する記載があるが、「Δa^(*)」が「a^(*)」の何の変数であるのかは、本願明細書の発明の詳細な説明には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。 また、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において「約2,000時間暴露された後にΔa^(*)の絶対値として3.25未満の値を示す」との事項、請求項2に記載のエレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において「約2,000時間暴露された後にΔa^(*)の絶対値として2.00未満の値を示す」との事項、請求項8に記載のエレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に「約2,000時間暴露された後にΔa^(*)の絶対値として2.00未満の値を示す」との事項、請求項18に記載の「約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔa^(*)の絶対値に少なくとも60%の低下を示す」の事項、及び請求項25に記載のエレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に「約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔa^(*)の絶対値に少なくとも75%の低下を示す」との事項における各請求項の「Δa^(*)の絶対値」の数値範囲、または数値は、本願明細書の発明の詳細な説明には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。また、請求項18、及び25に記載のΔa^(*)の「絶対値」を求めるための「発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較」するとの事項も、本願明細書の発明の詳細な説明には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。 また、仮に、平成23年3月7日付け意見書(第2頁第20?23行)に記載されているように、「Δa^(*)」が、「Δa^(*)= (a_(t)^(*)-a_(0) ^(*))」(なお、添字“0”はL^(*)、a^(*)、及びb^(*)に対する初期値。添字“t”はL^(*)、a^(*)、及びb^(*)に対する所定時間後の値。)」であることが、自明な事項であるとしても、本願の請求項1、2、8、18、及び25の上記の記載は、以下のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。 本願の請求項1に記載の「エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後にΔa^(*)の絶対値として3.25未満の値を示す」との事項について検討する。 本願明細書の段落【0068】の【表4】には、添加剤として(6-(テトラ-tert-ブチルフェロセニル)ヘキシル)トリエチルアンモニウムBF_(4)(発色安定化添加剤)を含むエレクトロクロミック媒体を、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度においてなされた実験結果が示されており、【表4】の実験番号1Bの欄には、0時間、1848時間、2016時間における「a^(*)」の値が示されている。 しかしながら、本願明細書の段落【0068】の【表4】には、約2000時間、つまり2000時間付近の「a^(*)」の値は示されておらず、本願の請求項1に記載の「約2,000時間暴露された後にΔa^(*)の絶対値」を上記の式に当てはめて計算することはできない。 また、約2000時間の範疇に上記の2016時間(表中、2000時間に最も近傍の時間である。)が包含されるとしても、「Δa^(*)の絶対値」は1.89であり、また、上記と同じ条件でなされた実験の結果である本願明細書の段落【0076】の【表9】の実験番号2B、2C、及び2Dには、0時間、2016時間における「a^(*)」の値が示されており、「Δa^(*)の絶対値」を計算すると、それぞれ3.23、6.65、及び1.64となる。してみると、確かに、本願の請求項1に記載の「Δa^(*)の絶対値として3.25未満の値」が示されてはいるが、それは、単に「3.25未満」の値が示されているに過ぎず、また「3.25未満」の値を導き出す根拠ともなり得ないから、「Δa^(*)の絶対値」の数値範囲として「3.25未満の値」とすることが記載や示唆されているということにはならず、また自明な事項ともいえない。 そして、本願の請求項2、8、18、及び25に記載のΔa^(*)についても、上記と同様のことがいえるから、本願明細書の発明の詳細な説明に、記載や示唆されているとはいえず、また自明な事項ともいえない。 また、上記の各請求項に特定される「Δa^(*)」、及び「Δa^(*)の絶対値」の技術的意義も、本願明細書の発明の詳細な説明には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえず、経済産業省令で定めるところにより記載されたものとはいえない。 したがって、本願の上記請求項に記載された「Δa^(*)」に関する事項は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえず、出願時の技術常識を勘案しても、経済産業省令で定めるところにより、当業者が本願の上記請求項に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。 (6-4)本願の請求項3、4、9、10、11、19、20、21、26、27、及び28に記載のΔb^(*)について 原出願の出願当初の明細書の段落【0061】ないし段落【0091】には、「b^(*)」に関する記載があるが、「Δb^(*)」が「b^(*)」の何の変数であるのかは、本願明細書の発明の詳細な説明には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。 また、請求項3に記載のエレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において「約2,000時間暴露された後にΔb^(*)の絶対値として6.00未満の値を示す」との事項、請求項4に記載のエレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において「約2,000時間暴露された後にΔb^(*)の絶対値として3.00未満の値を示す」との事項、請求項9に記載のエレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に「約2,000時間暴露された後にΔb^(*)の絶対値として10.00未満の値を示す」との事項、請求項10に記載のエレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に「約2,000時間暴露された後にΔb^(*)の絶対値として5.00未満の値を示す」との事項、請求項11に記載のエレクトロクロミックデバイスが摂氏85度に「約2,000時間暴露された後にΔb^(*)の絶対値として1.00未満の値を示す」との事項、請求項19に記載のエレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において「約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔb^(*)の絶対値に少なくとも20%の低下を示す」との事項、請求項20に記載のエレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において「約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔb^(*)の絶対値に少なくとも40%の低下を示す」との事項、請求項21に記載のエレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において「約2,000時間暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔb^(*)の絶対値に少なくとも60%の低下を示す」との事項、請求項26に記載のエレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に「約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔb^(*)の絶対値に少なくとも20%の低下を示す」との事項、請求項27に記載のエレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に「約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔb^(*)の絶対値に少なくとも50%の低下を示す」との事項、及び請求項28に記載のエレクトロクロミックデバイスが、摂氏85度に「約2,000時間周囲温度において暴露された後に、発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較してΔb^(*)の絶対値に少なくとも75%の低下を示す」との事項における各請求項の「Δb^(*)の絶対値」の数値範囲、または数値は、本願明細書の発明の詳細な説明には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。また、請求項19、20、21、26、27、及び28に記載のΔb^(*)の「絶対値」を求めるための「発色安定化添加剤なしの同デバイスに比較」するとの事項も、本願明細書の発明の詳細な説明には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。 また、仮に、平成23年3月7日付け意見書(第2頁第24?27行)に記載されているように、「Δb^(*)」が、「Δb^(*)= (b_(t)^(*)-b_(0) ^(*))」(なお、添字“0”はL^(*)、a^(*)、及びb^(*)に対する初期値。添字“t”はL^(*)、a^(*)、及びb^(*)に対する所定時間後の値。)」であることが、自明な事項であるとしても、本願の請求項3、4、9、10、11、19、20、21、26、27、及び28の上記の記載は、以下のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえない。 本願の請求項3に記載の「エレクトロクロミックデバイスが、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度において約2,000時間暴露された後にΔb^(*)の絶対値として6.00未満の値を示す」との事項について検討する。 本願明細書の段落【0068】の【表4】には、添加剤として(6-(テトラ-tert-ブチルフェロセニル)ヘキシル)トリエチルアンモニウムBF_(4)(発色安定化添加剤)を含むエレクトロクロミック媒体を、酸素で400p.s.i.(28.13kg/m^(2))まで加圧されたオートクレーブに周囲温度においてなされた実験結果が示されており、【表4】の実験番号1Bの欄には、0時間、1848時間、2016時間における「b^(*)」の値が示されている。 しかしながら、本願明細書の段落【0068】の【表4】には、約2000時間、つまり2000時間付近の「b^(*)」の値は示されておらず、本願の請求項1に記載の「約2,000時間暴露された後にΔb^(*)の絶対値」を上記の式に当てはめて計算することはできない。 また、約2000時間の範疇に上記の2016時間(表中、2000時間に最も近傍の時間である。)が包含されるとしても、「Δb^(*)の絶対値」は10.12であり、また、上記と同じ条件でなされた実験の結果である原出願の明細書の段落【0076】の【表9】の実験番号2B、2C、及び2Dには、0時間、2016時間における「b^(*)」の値が示されており、「Δa^(*)の絶対値」を計算すると、それぞれ10.12、2.47、及び8.16となる。してみると、確かに、本願の請求項1に記載の「Δb^(*)の絶対値として6.00未満の値」が示されてはいるが、それは、単に「6.00未満」の値が示されているに過ぎず、また「6.00未満」の値を導き出す根拠ともなり得ないから、「Δb^(*)の絶対値」の数値範囲として「6.00未満の値」とすることが記載や示唆されているということにはならず、また自明な事項ともいえない。 そして、本願の請求項4、9、10、11、19、20、21、26、27、及び28に記載のΔb^(*)についても、上記と同様のことがいえるから、本願明細書の発明の詳細な説明に、記載や示唆されているとはいえず、また自明な事項ともいえない。 また、上記の各請求項に特定される「Δb^(*)」、及び「Δb^(*)の絶対値」の技術的意義も、本願明細書の発明の詳細な説明には、何ら記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえず、経済産業省令で定めるところにより記載されたものとはいえない。 したがって、本願の上記請求項に記載された「Δb^(*)」に関する事項は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載や示唆されておらず、また自明な事項ともいえず、出願時の技術常識を勘案しても、経済産業省令で定めるところにより、当業者が本願の上記請求項に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。 (6-5)むすび したがって、本願は、上記のとおり、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 7.総括 以上のとおりであるから、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-12-11 |
結審通知日 | 2012-12-17 |
審決日 | 2012-12-25 |
出願番号 | 特願2005-357668(P2005-357668) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
Z
(G02F)
P 1 8・ 537- Z (G02F) P 1 8・ 113- Z (G02F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 河原 正 |
特許庁審判長 |
黒瀬 雅一 |
特許庁審判官 |
鈴木 秀幹 長島 和子 |
発明の名称 | 発色安定化エレクトロクロミックデバイス |
代理人 | 須田 洋之 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 西島 孝喜 |