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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1273633
審判番号 不服2010-9964  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-05-10 
確定日 2013-05-09 
事件の表示 特願2000- 22784「移植関連タンパク質をコードするコドン改変型遺伝子」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月 7日出願公開、特開2001-211882〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年1月31日の出願であって、平成21年12月2日付で特許請求の範囲について手続補正がなされたが、平成22年2月4日付で拒絶査定がなされ、平成22年5月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で特許請求の範囲について手続補正がなされたものである。

第2 平成22年5月10日付の手続補正について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1及び2は、補正前の
「【請求項1】 非ヒト哺乳動物である移植用ドナー動物中において移植関連ヒトタンパク質を高効率で発現させるようにコドン改変されたコドン改変型遺伝子であって、各アミノ酸をコードするコドンとして下記のコドンを用いて構築された、移植関連タンパク質をコードするコドン改変型遺伝子:
Ala:GCC, Arg:CGC, Asn:AAC, Asp:GAC, Cys:TGC, Gln:CAG, Glu:GAG, Gly:GGC, His:CAC, Ile:ATC, Leu:CTG, Lys:AAG, Met:ATG, Pro:CCC, Phe:TTC, Ser:AGC, Thr:ACC, Tyr:TAC, Trp:TGG, Val:GTG。
【請求項2】 請求項1に記載のコドン改変型遺伝子であって、前記移植関連ヒトタンパク質がDAFであるコドン改変型遺伝子。」
から、補正後の、
「【請求項1】 非ヒト哺乳動物である移植用ドナー動物中においてヒトDAFタンパク質を高効率で発現させるようにコドン改変されたコドン改変型遺伝子であって、各アミノ酸をコードするコドンとして下記のコドンを用いて構築された、ヒトDAFタンパク質をコードするコドン改変型遺伝子:
Ala:GCC, Arg:CGC, Asn:AAC, Asp:GAC, Cys:TGC, Gln:CAG, Glu:GAG, Gly:GGC, His:CAC, Ile:ATC, Leu:CTG, Lys:AAG, Met:ATG, Pro:CCC, Phe:TTC, Ser:AGC, Thr:ACC, Tyr:TAC, Trp:TGG, Val:GTG。」
に補正された。(なお、下線は当審で付加した。)

この補正は、補正前の請求項1を削除し、補正前の請求項2を補正後の請求項1とするものである。
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とする補正に該当する。

第3 本願発明
上記のとおり本件補正は適法であるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年5月10日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 非ヒト哺乳動物である移植用ドナー動物中においてヒトDAFタンパク質を高効率で発現させるようにコドン改変されたコドン改変型遺伝子であって、各アミノ酸をコードするコドンとして下記のコドンを用いて構築された、ヒトDAFタンパク質をコードするコドン改変型遺伝子:
Ala:GCC, Arg:CGC, Asn:AAC, Asp:GAC, Cys:TGC, Gln:CAG, Glu:GAG, Gly:GGC, His:CAC, Ile:ATC, Leu:CTG, Lys:AAG, Met:ATG, Pro:CCC, Phe:TTC, Ser:AGC, Thr:ACC, Tyr:TAC, Trp:TGG, Val:GTG。」

第4 特許法第29条第2項
(1)引用例
ア.原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された本願出願日前に頒布された刊行物である外科治療, 1997, Vol.77, No.5, pp.585-594(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は、合議体による。以下、同様。)。
(ア)「ヒトを除く、チンパンジー、ヒヒなどの霊長類の絶対数、繁殖能、倫理的問題などから霊長類をドナーとする異種移植が広く普及していくことは困難と考えられるため、最近では非霊長類、とくにブタをドナー動物として想定したdiscordant異種移植に関する基礎的研究が精力的に行われている。しかし、discordant異種移植では、まず最初にHARという大きな問題に遭遇し、続いて細胞性免疫によるDXRの問題が待ちうけている。これらを解決するために、自然抗体や補体の抑制、血液凝固系の制御、細胞性免疫の抑制など、種々の方法が行われている。」(587頁右欄19行?30行)
(イ)「2.補体活性化抑制 抗原抗体反応に引き続く補体の活性化は非常に重要な問題であり、抗原抗体反応と同様に、薬剤や遺伝子操作で抑制する試みが行われている。・・・
一方、遺伝子操作を用いた補体抑制法は、異種ドナーの持つ補体抑制物質では、レシピエントの補体を十分に抑制できない(補体と補体抑制物質の種特異性)という点に着目して考えられたものであり、具体的にはヒト補体抑制物質をドナー動物に発現させ、レシピエントの補体の活性化を抑制する方法である。この場合、レシピエント自身の補体系は正常に保たれ、細菌などの感染症に対する免疫能は確保されることになり、理想的な免疫抑制法と考えられる。しかし一方では、ヒトのABO不適合間移植では、移植臓器にヒト補体抑制物質が発現しているにもかかわらず、抗体-補体系の活性化により拒絶反応は生じるため、この理論に懐疑的な意見も存在した。しかし、異種細胞にヒトのDAF(Decay Accelerating Factor)、MCP(Membrane Cofactor Protein)、CD59などの補体抑制分子を発現させると、ヒト血清による細胞傷害性が低下し、しかも発現量が多いほど有効であることが報告され、この理論の正当性がIn vitroにおいて証明された。これらの結果をもとにして、ドナー臓器の血管内皮細胞に補体抑制物質を過剰発現させることが考えられ、実際、トランスジェニックマウス、ピッグが創出され、その機能解析が現在精力的に行われている。例えば、WhiteらはヒトDAFのトランスジェニックピッグを作成し、その心臓をカニクイザルに異所性に移植し生着時間を検討している。」(588頁2行?589頁19行)

イ.原査定の拒絶の理由で引用文献3として引用された本願出願日前である平成10年4月23日に頒布された刊行物である国際公開第98/16630号(以下、「引用例3」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「V.クローニング成長因子および成長因子レセプター遺伝子
本発明者は、非齧歯類動物細胞から得られるクローニング成長因子および成長因子レセプター遺伝子またはcDNA、そして特に、オンコスタチンM(OSM)、糖タンパク質130(GP130)、オクタマー結合転写因子4(Oct-4)、白血病抑制因子(LIF)、繊毛性神経栄養性因子(CNTF)、アポリポタンパク質E(Apo-E)、繊毛性神経栄養性レセプターα(CNTFr-α)および白血病抑制因子レセプター(LIFr)を意図する。使用することが意図される動物細胞は、限定されるものではないが、ウシ、ブタ、ヒツジおよびヤギの細胞が挙げられる。今日タンパク質製造の当業者に頻繁に使用される技術は、組換え細胞でそれを発現するいわゆる「組換え」バージョンのタンパク質を得ること、およびこのような細胞からタンパク質を得ることである。・・・
VI.遺伝子の発現が最大となるようにコドンの使用を変える
本発明において発現されるべき導入遺伝子のいずれかにおける変化は、選択される非齧歯類宿主種のコドン使用に対応するように導入遺伝子の配列を変化することで作ることができる。様々な生物におけるコドン使用の情報は、本技術分野において知られている(BennetzenおよびHall、1982年;Ikemura、1981年a、1981年b、1982年;Granthamら、1980年、1981年;Wadaら、1990年;・・・)。例えば、表5および表6は、容易に使用される形式でウシ、ブタおよびヒツジのコドン優先性に関する重要な情報を提供するが、これらに限定されるものではない。表5は、本発明の『ウシ化』、『ブタ化』および『ヒツジ化』構築物に使用するのが好ましいコドンのリストを提供する。」(101頁18行?102頁25行)

(イ)「

」(103頁表5)

ウ.原査定の拒絶の理由で引用文献4として引用された本願出願日前である平成7年2月16日に頒布された刊行物である国際公開第95/4744号(以下、「引用例4」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「特定の態様においては、本発明はヒトグロビン遺伝子を発現するトランスジェニックブタを提供する。・・・
本発明はまた、ヒトβグロビン遺伝子が野生型ヒトβグロビンのアミノ酸配列を変えることなくブタβグロビン遺伝子に類似するように遺伝子操作されて、最適化されているヒトβグロビン遺伝子を含む構築物を提供する。かかる構築物はmRNAの構造、安定性または翻訳速度に影響を及ぼすことによりトランスジェニックブタ内でのヒトβグロビンのレベルを高めることができる。」(7頁13行?8頁10行)

エ.原査定の拒絶の理由で引用文献5として引用された本願出願日前である平成10年6月11日に頒布された刊行物である国際公開第98/24884号(以下、「引用例5」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「異種抗体を生成し得るトランスジェニック非ヒト動物 本発明の1つの局面におけるトランスジェニック非ヒト動物は、本発明の免疫グロブリントランスジーン(下文に記載される)の少なくとも1つを、非ヒト動物の接合子または初期胚に導入することにより作製される。本発明において使用される非ヒト動物は、一般的に、免疫グロブリン遺伝子セグメントを再配置して、一次抗体応答を生じ得る任意の動物を含む。このような非ヒトトランスジェニック動物は、例えば、トランスジェニックブタ、トランスジェニックラット、トランスジェニックウサギ、トランスジェニックウシ、および他のトランスジェニック動物種(特に、当該分野で公知の哺乳動物種)を含み得る。特に好ましい非ヒト動物は、マウスまたは齧歯動物科の他のメンバーである。
しかし、本発明は、マウスの使用に限定されない。むしろ、一次および二次抗体応答を上げ得る任意の非ヒト動物が使用され得る。このような動物は、非ヒト霊長類(例えば、チンパンジー)、ウシ、ヒツジ、およびブタ種、齧歯動物科の他のメンバー(例えば、ラット)、ならびにウサギおよびモルモットを含む。特に好ましい動物は、マウス、ラット、ウサギ、およびモルモットであり、特に好ましくはマウスである。」(50頁8行?28行)
(イ)「免疫グロブリン発現遺伝子(すなわち再配置されたトランスジーン)の少なくとも一部と同一かまたは実質的に類似する配列を有する人工遺伝子が構築され得る。同様に、人工遺伝子は、再配置されたトランスジーンの配列決定された部位によりコードされるポリペプチドと同一であるかまたは実質的類似性を有するポリペプチドをコードできる。遺伝暗号の縮重は、複数の核酸配列により同一のポリペプチドがコードされることを可能にする。時には、例えば、制限部位を導入するために、特定の発現系を反映するためのコドン使用頻度を変更するため、またはグリコシル化部位の除去のために、核酸配列を変更することが望ましい。さらに、ハイブリドーマ配列における変更は、免疫グロブリンの特性(例えば、結合特性)を変化させるために導入され得る。例えば、特に、重鎖および軽鎖の可変領域のCDR領域において、所定の抗原に対する免疫グロブリンの親和性を増加させるために変更が導入され得る。」(113頁7行?24行)

(2)対比
引用例1の記載事項(イ)には、遺伝子操作を用いた補体活性化抑制法として、異種細胞にヒトDAFタンパク質を発現させることが記載されていることからみて、引用例1には、ヒトDAFタンパク質をコードする遺伝子が記載されているものと認められる。

本願発明と引用例1に記載された発明を対比すると、両者は、ヒトDAFタンパク質をコードする遺伝子である点で一致し、下記の点で相違する。

相違点:ヒトDAFタンパク質をコードする遺伝子が、本願発明では、非ヒト哺乳動物である移植用ドナー動物中において高効率で発現させるように、特定のコドンを用いてコドン改変されたコドン改変型遺伝子であるのに対し、引用例1に記載された発明では、特にコドンを改変することについては記載されていない点

(3)判断
引用例1には、異種移植における補体の活性化という問題を解決することを目的として、補体活性化を遺伝子操作により抑制する方法において、異種細胞におけるヒトDAFタンパク質などの補体抑制分子の発現量は多いほど有効であることが記載されている(記載事項(イ))ことから、当業者であれば、引用例1に記載された発明において、異種細胞におけるヒトDAFタンパク質をコードする遺伝子の発現量を増加させようとすることは、当業者にとって自然な発想である。
そして、ある宿主動物における遺伝子の発現量を増加させるために、当該宿主動物におけるコドン使用頻度に対応させて遺伝子のコドンを改変することは、本願出願日前の技術常識であることを考慮すれば(引用例3の記載事項(ア)、引用例4の記載事項(ア)及び引用例5の記載事項(イ)参照)、引用例1に記載されたヒトDAFタンパク質をコードする遺伝子を、非ヒト哺乳動物である移植用ドナー動物中において高効率で発現させるために、ドナー動物のコドン使用頻度に対応させてコドンを改変したヒトDAFタンパク質遺伝子を作製することは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本願発明において特定されたコドン(Ala:GCC, Arg:CGC, Asn:AAC, Asp:GAC, Cys:TGC, Gln:CAG, Glu:GAG, Gly:GGC, His:CAC, Ile:ATC, Leu:CTG, Lys:AAG, Met:ATG, Pro:CCC, Phe:TTC, Ser:AGC, Thr:ACC, Tyr:TAC, Trp:TGG, Val:GTG)は、引用例3の表5において「ウシ、ブタ、ヒツジに使用するための好ましいDNAコドン」として記載されているものであって、これらのコドンを採用することも当業者にとって格別な困難性を有するものとも認められない。

本願発明の効果について検討すると、本願明細書の実施例1及び2には、本願発明のヒトDAFタンパク質をコードするコドン改変型遺伝子の発現が、ハムスター由来のCHO細胞及びトランスジェニックマウスにおいて増加したことが示されている。
ここで、本願発明は遺伝子自体に係る発明であって、その用途として当該遺伝子を導入するドナー非ヒト哺乳動物が限定されたものではない。
そうすると、本願明細書の実施例1及び2に示された効果は、本願発明の遺伝子の様々な用途のうち、ハムスター又はマウスへの形質転換に使用するという特定の用途に用いた場合の効果であって、その用途として、当該遺伝子を導入するドナー非ヒト哺乳動物が限定がなされていない遺伝子自体に係る本願発明の進歩性の判断において、参酌することができない。

仮に参酌するとしても、本願明細書の実施例1及び2に示された、本願発明の遺伝子の発現はハムスター由来のCHO細胞及びトランスジェニックマウスにおいて増加するという効果は、引用例3?5の記載から当業者であれば予測し得る範囲内のものである。

(4)請求人の主張
ア.請求人は、審判請求の理由及び回答書において、下記のように主張する。
主張1
引用例3?5にはコドン変換についての記述はあるが、現実の遺伝子にコドン変換を適用することにより実際に発現を高めたことの実証が全く記載されていない。(回答書4頁1行?12行)

主張2
ブタ-ヒトの間であってもコドンの偏りは殆どなく、従って各コドンの頻度もあまり変わらない。本願出願時において、ブタ等の非ヒト哺乳動物のコドン頻度が一番高いものを用いたコドン変換をヒトのDAF遺伝子に対して適用したときに、ブタ等の非ヒト哺乳動物宿主中で高発現するDAF遺伝子を作製できるという保証は全くなかった。(回答書4頁13行?下から6行)
ヒトを起源とするDAFタンパク質を非ヒト哺乳動物中で発現させる場合には、起源動物および宿主動物が両者とも哺乳類であるため、両者における使用コドンにはそれほど差がなく、コドン変換を行っても発現効率の顕著な改善は見られないはずというのが当業者の共通の認識であった。その結果、ヒト起源のタンパク質を非ヒト哺乳動物宿主中で発現させる場合、発現効率を高めるための手段としてはプロモータおよびエンハンサー等の調節配列を最適化する試みが数多く行われる一方、コドン変換は、本願発明者の研究以前には全く行われたことはなかった。(審判請求書の手続補正書3.(2))

主張3
本願出願時において、方法論として「コドン変換=発現増強」といった一般的な概念が当業者間で認められていたことはない。(回答書4頁下から5行?5頁2行)

主張4
本願の発明者自身も、本願の出願後に他の幾つかのヒト遺伝子についてコドン変換による最適化を試み、非ヒト哺乳動物での発現増大を達成しようとしたが、野生型遺伝子と殆ど変わらない結果に終わったものもある。このような背景の下に、本願の発明者はヒトDAFという分子にコドン変換を適用し、当業者が誰も予測しえなかった非ヒト哺乳動物中でのヒトDAFの高発現を達成することに成功したものである。(回答書5頁3行?9行)

イ.請求人の上記主張について検討する。
主張1及び3について
引用例3の記載事項(ア)には、非齧歯類宿主動物において、導入遺伝子の発現が最大となるように、当該宿主動物のコドン使用に対応させて導入遺伝子の配列を変化させることが記載されており、引用例4の記載事項(ア)には、トランスジェニックブタにおけるヒトβグロビンの発現レベルを高めるために、野生型ヒトβグロビンのアミノ酸配列を変えることなく、ブタβグロビン遺伝子に類似するように遺伝子を最適化することが記載されており、引用例5の記載事項(イ)には、トランスジェニック非ヒト動物において異種抗体を発現させる際に、免疫グロブリン発現遺伝子は、コドンの縮重を利用して、ポリペプチドが同一となる範囲で特定の発現系におけるコドン使用頻度に変更することが記載されている。
このように、宿主動物における目的遺伝子の発現を増加させるために、当該宿主動物のコドン使用頻度に対応して、遺伝子の配列のコドン変換を行うという技術思想が複数の引用例に記載されている以上、それぞれの引用例において発現の増加を実際に確認した例が存在するか否かにかかわらず、このような発想は、本願出願日前において周知であったといえる。
よって、請求人の主張は採用できない。

主張2について
引用例4及び5には、ヒト由来タンパク質をコードする遺伝子をトランスジェニック非ヒト動物において発現する際に、当該動物のコドン使用頻度に対応させて、遺伝子の配列のコドン変換を行うことが記載されているのであるから、ヒト起源のタンパク質を非ヒト哺乳動物宿主中で発現させる場合、コドン変換は行われたことはないというという請求人の主張は採用できない。

主張4について
上記(3)で述べたとおり、上記技術常識を考慮すれば、引用例1に記載されたヒトDAFタンパク質をコードする遺伝子を、非ヒト哺乳動物である移植用ドナー動物中において高効率で発現させるために、宿主動物のコドン使用頻度に対応させてコドンを改変したヒトDAFタンパク質遺伝子を作製することは、当業者が容易に想到し得ることである。そして、このことは、本願出願後に、他のタンパク質をコードする遺伝子のコドン変換により発現増大が達成しなかったものがあったという結果に影響を受けるものではない。
そして、CHO細胞又はトランスジェニックマウスにおける発現の増加という本願発明の効果は、用途限定のない遺伝子自体に係る発明の進歩性の判断において参酌することができないものであるし、仮に参酌したとしても、引用例3?5の記載から予測し得る範囲内のものであることは、上記(3)にて述べたとおりである。

(5)小括
以上の理由により、本願発明は、引用例1、3?5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条2項の規定により、特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-06 
結審通知日 2013-03-12 
審決日 2013-03-25 
出願番号 特願2000-22784(P2000-22784)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊達 利奈  
特許庁審判長 鵜飼 健
特許庁審判官 六笠 紀子
冨永 みどり
発明の名称 移植関連タンパク質をコードするコドン改変型遺伝子  
代理人 村松 貞男  
代理人 福原 淑弘  
代理人 村松 貞男  
代理人 白根 俊郎  
代理人 福原 淑弘  
代理人 白根 俊郎  
代理人 中村 誠  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 河野 哲  
代理人 河野 哲  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 中村 誠  

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