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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04J
管理番号 1273665
審判番号 不服2012-6974  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-17 
確定日 2013-05-09 
事件の表示 特願2010-261093「移動端末」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月14日出願公開、特開2011- 78120〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、2005年8月25日を国際出願日とする特願2007-531997号の一部を平成22年11月24日に新たな特許出願としたものであって、
原審において、平成23年7月12日付けの拒絶理由通知に対し、同年9月20日に意見書並びに手続補正書が提出され、
平成23年10月6日付けの最後の拒絶理由通知に対し、同年12月12日に意見書並びに手続補正書が提出されたが、
平成24年1月11日付けで、平成23年12月12日提出の手続補正書は補正却下され、同日付けで拒絶査定がなされ、
これに対し平成24年4月17日に審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正書の提出があったものである。

なお、平成24年10月24日付けの当審よりの審尋に対し、同年12月27日に回答書の提出があった。


第2.補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成24年4月17日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の平成23年9月20日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、
「信号を受信する受信処理部と、
前記受信した信号に基づいて、隣接する複数のサブキャリアを決定し、前記決定した複数のサブキャリアを、前記受信した信号の送信元に通知する送信処理部と、
を備えたことを特徴とする移動端末。」

という発明(以下、「本願発明」という。)を、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「信号を受信する受信処理部と、
前記受信した信号に基づいて、移動端末での誤り訂正能力を考慮して隣接する複数のサブキャリアを決定し、前記決定した複数のサブキャリアを、前記受信した信号の送信元に通知する送信処理部と、
を備えたことを特徴とする移動端末。」

という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。

2.補正の適否

(1)新規事項の有無、補正の目的要件

本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の「送信処理部」において、「受信した信号に基づいて」、「隣接する複数のサブキャリアを決定」する際に、「移動端末での誤り訂正能力を考慮」するという構成を付加して限定することにより特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(補正の目的)の規定に適合している。

(2)独立特許要件について

上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて以下に検討する。

[補正後の発明]
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で、「補正後の発明」として認定したとおりである。

[引用発明]
原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-169036号公報(以下、「引用例」という。)には、「直交周波数分割多重システムおよび送受信装置」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【請求項1】 送信側から固定の送信電力で送信された直交周波数分割多重信号を、受信側において受信し、
受信された前記直交周波数分割多重信号を構成している複数のサブキャリアの受信電力値に応じて、いくつかの前記サブキャリアからなるブロックにまとめ、
該ブロックにおける特定の位置のサブキャリアの番号と、それぞれの前記ブロックにおける受信電力値の大きさに応じて決定された変調多値数の変調方式指定情報とからなる変調情報を前記送信側へ通知し、
前記変調情報を受け取った前記送信側において、直交周波数分割多重信号を構成する複数のサブキャリアを、前記変調情報の内の前記サブキャリアの番号に基づいてブロックに分割すると共に、前記変調情報の内の前記変調方式指定情報に基づいて当該ブロックのサブキャリアの変調方式を制御するようにしたことを特徴とする直交周波数分割多重システム。」(2頁1欄)

ロ.「【0002】
【従来の技術】ヨーロッパやカナダにおいて移動体向け高品質ディジタル音声放送(DSB:Digital Sound Broadcasting)の開発が進められている。この音声放送システムではマルチパス伝送路でも良好な伝送特性を有する直交周波数分割多重通信方式(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)が採用されている。このOFDM通信方式は、情報データ系列を互いに直交する多数のサブキャリアを用いて伝送するようにしている。この場合、1シンボル長を長くすることができることから、ゴースト妨害を軽減することができるようになる。さらに、ガードインターバルを設けることにより周波数選択性フェージングに強くなる。また、時間インタリーブに加えて周波数インタリーブも可能であり、誤り訂正の効果を有効に使えるようになる。さらに、各サブキャリアのスペクトルを密に配置することができ、周波数利用効率を高めることができる。さらにまた、各サブキャリアへの情報を任意に割り当てることができるため、干渉が予想されるサブキャリアは使用しない等の柔軟な情報伝送を可能とすることができる。さらにまた、各サブキャリアの変調方式を変える等により情報の階層化を容易とすることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、高速伝送を行う場合の一つの方法として多値変調を行う方法がある。OFDM通信方式においても、サブキャリアを多値変調することにより高速のデータ伝送を実現することができる。しかし、OFDM通信方式において周波数選択性フェージングを受けると、次のように受信電力が変動することになる。例えば、図19はOFDM通信方式における送信されたOFDM信号の一例である。このOFDM信号は多数のサブキャリアから構成されており、各々のサブキャリアは等しい送信電力で送信されている。このようなOFDM信号が、マルチパス環境を伝搬すると周波数選択性フェージングの影響を受けて、サブキャリア間の受信電力は図20に示すように変動するようになる。この場合、サブキャリア間の受信電力の変動特性は、伝搬路の環境により様々に変化するようになる。
【0004】このようにサブキャリア間の受信電力が変動した場合は、受信電力が最も小さいサブキャリアにおいて所要の誤り率を上昇させないために、各サブキャリアの変調多値数を低減する必要がある。すると、所定の高速伝送を実現することができないことになってしまう。これを解決するために、全てのサブキャリアに対し一律な多値数の多値変調方式を用いるのではなく受信電力が大きいサブキャリアには例えば大きな多値数の64QAM、低いサブキャリアには小さな多値数のBPSKと、サブキャリアごとの受信電力に応じて多値数の異なるシンボル変調方式に変更することが検討されている(信学論 J78-B-II, No6, pp.435-444 参照)。
【0005】しかし、サブキャリアごとにシンボル変調方式を決める方法は、送受信機間でサブキャリア毎の変調方式の通知が必要となり、そのための通知情報量、通知情報を記憶する記憶手段の記憶容量及び通知情報に基づいて実行する制御の制御量が大きくなるという問題点があった。またその制御量はサブキャリア数に依存するためサブキャリア数が多くなるに伴い制御量は増加し、その実現が困難になると考えられる。これを解決するために、サブキャリアをグループ化することにより通知情報量や制御量を削減することが検討されている(信学技報 RCS2001-109(2001-09) Yuanrun Teng 外3名「適応変調を用いたバーストモードOFDM通信方式に関する検討」参照)。しかしながら、サブキャリアをグループ化して扱うこの検討については、グループ化の有効性については述べられているものの、グループに含まれるサブキャリア数は同数とされており、伝搬路環境の変化に応じた適応的なグループ化がされていないという問題点があった。」(3頁3?4欄)

ハ.「【0017】
【発明の実施の形態】本発明の第1の実施の形態にかかる直交周波数分割多重システムの構成例を図1に示す。ただし、図1には基地局1と1つの移動局2とが示されているが、移動局は多数存在しており、その内の移動局2だけが示されている。また、移動局2は本発明の第1の実施の形態にかかる送受信装置に相当する。図1において、基地局1はOFDM変調器10とOFDM復調器16、およびシンボル変調器12における変調方式の制御を行う制御部15を備えている。このOFDM復調器16は、後述する移動局2におけるOFDM復調器20の受信電力測定部22を省略した構成とされている。送信データはOFDM変調器10における符号器11に印加されて、誤り訂正符号化や圧縮符号化等の符号化が行われる。符号器11から出力される符号化データは、シンボル変調器12において制御部15から指定された変調方式でシンボル変調される。この場合の変調方式の指定は、後述するブロックに収まる符号化データ毎に行われる。
【0018】このシンボル変調器12においては、BPSK、QPSKあるいは16QAMや64QAM等の変調方式の一つがブロック毎に指定されて、当該ブロックに収まる符号化データが指定された変調方式でシンボル変調される。シンボル変調器12から出力される変調シンボルは、直列-並列変換部(S/P変換部)13において、サブキャリア数に相当する並列数の変調シンボルに変換される。この結果、S/P変換部13から出力される変調シンボルのシンボル速度は1/サブキャリア数に低減されるようになる。S/P変換部13から出力されるサブキャリアの並列数とされる並列変調シンボルは、逆高速フーリエ変換部(IFFT)14において逆フーリエ変換されてOFDM信号とされる。IFFT14は、逆離散フーリエ変換部(IDFT)としてもよい。このOFDM信号は、所定の周波数の搬送波に乗せられて基地局1から送信される。
【0019】このOFDM信号を受信可能な移動局2は、OFDM復調器20とOFDM変調器27、および制御部26とを備えている。このOFDM変調器27は、基地局1におけるOFDM変調器10と同様の構成とされている。移動局2において受信されたOFDM信号は高速フーリエ変換部(FFT)21においてフーリエ変換が施されて、サブキャリア毎に分解される。FFT21を、離散フーリエ変換部(DFT)としてもよい。FFT部21から並列に出力されるサブキャリアの各々の受信電力が、受信電力測定部22において測定され、サブキャリアの各々の受信電力値は制御部26へ供給される。FFT部21から並列に出力されるサブキャリアは、受信電力測定部22を介して並列-直列変換部(P/S変換部)23に供給され、並列とされているサブキャリアの変調シンボルは直列の変調シンボルに変換される。このP/S変換部23から出力されるサブキャリアの変調シンボルは、シンボル復調器25において復調されて復調データとされる。シンボル復調器25においては、送信側において施されたBPSK、QPSKあるいは16QAMや64QAM等の変調に応じた復調が行われる。なお、シンボル復調器25には、制御部26に内蔵されている変調情報管理テーブル26bに保管されている各ブロックの変調方式指定情報が供給されており、この変調方式指定情報に基づいて各ブロックにおけるサブキャリアのシンボル復調が行われる。シンボル復調器25から出力される復調データは、復号器24において誤り訂正や伸長処理等が行われて受信データに復号され出力される。
【0020】制御部26は、受信電力測定部22から供給された各サブキャリアの受信電力値に応じて、いくつかのサブキャリアからなるブロックに分割する。そして、分割したブロックの先頭サブキャリアのサブキャリア番号と、当該ブロックの受信電力に適した変調方式を指定する変調方式指定情報からなる変調情報を作成する。この場合、当該ブロックにおけるサブキャリアの最小の受信電力によりシンボル変調テーブル26aを参照して、当該ブロックに適した変調多値数の変調方式を決定する。決定された変調方式を指定する変調方式指定情報と、分割したブロックの先頭サブキャリアのサブキャリア番号とは、変調情報管理テーブル26bに変調情報として保管される。この変調情報は、OFDM変調器27に供給され、変調情報が周期的に移動局2から基地局1へ送信されるようになる。この変調情報においては、先頭サブキャリア番号に替えて最後尾サブキャリア番号としてもよい。
【0021】なお、移動局2においてサブキャリアの受信電力を測定するために、基地局1は、送信電力制御が行われていないOFDM変調されたパイロット信号を周期的に送信している。このパイロット信号を送る周期は、伝搬路における周波数選択性フェージングの特性が余り変化しない周期とされる。そして、このパイロット信号の受信電力を移動局2は測定するようにする。この場合、基地局1において変調方式が制御されるチャネルは、各移動局毎に設定される通信チャネルとされる。この変調方式の制御は、移動局から送信された変調情報に従って行われるため、移動局毎に異なる変調方式の制御が行われるようになる。」(5頁7欄?6頁9欄)

上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、まず、引用例記載の「直交周波数分割多重システム」は、上記ロ、【0002】にあるように、「互いに直交する多数のサブキャリア」を用いてデータを伝送する「直交周波数分割多重通信方式」(OFDM)のシステムであって、上記イ.ハ.【0017】,図1を参酌すると、「送信側から固定の送信電力で送信された直交周波数分割多重信号を、受信側において受信」するものであり、システムの受信側である「移動局2」に、「信号を受信する受信手段」があることは自明である。

また、上記イ.によれば、引用例記載の「移動局2」は、「受信された前記直交周波数分割多重信号を構成している複数のサブキャリアの受信電力値に応じて、いくつかの前記サブキャリアからなるブロックにまとめ」るものであり、「該ブロックにおける特定の位置のサブキャリアの番号と、それぞれの前記ブロックにおける受信電力値の大きさに応じて決定された変調多値数の変調方式指定情報とからなる変調情報を前記送信側へ通知」する手段を備えたものである。

したがって、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

[引用発明]
「送信側から固定の送信電力で送信された直交周波数分割多重信号を受信する受信手段と、
受信された前記直交周波数分割多重信号を構成している複数のサブキャリアの受信電力値に応じて、いくつかの前記サブキャリアからなるブロックにまとめ、
該ブロックにおける特定の位置のサブキャリアの番号と、それぞれの前記ブロックにおける受信電力値の大きさに応じて決定された変調多値数の変調方式指定情報とからなる変調情報を前記送信側へ通知する手段と
を備えた移動局2。」

[対比]
引用発明と補正後の発明を対比すると、
まず、引用発明の「移動局2」は、補正後の発明の「移動端末」に相当し、引用発明の「基地局1」は、補正後の発明の「送信元」に相当し、引用発明の「信号を受信する受信手段」は、補正後の発明の「信号を受信する受信処理部」に相当する。

また、引用発明の「受信電力値に応じて」動作することは、「受信した信号に基づいて」動作することと言える。
さらに、引用発明においても、サブキャリアをブロックにまとめる際に、「受信した信号に基づいて隣接する複数のキャリアを決定」していることは引用例の図4にもあるように自明であり、引用発明の「受信電力値に応じていくつかのサブキャリアからなるブロックにまとめ」ることは、補正後の発明の「受信した信号に基づいて、隣接する複数のサブキャリアを決定し」に相当する。

そして、引用発明においても、「該ブロックにおける特定の位置のサブキャリアの番号」などの「変調情報」を送信しており、引用発明の「変調情報を前記送信側へ通知する手段」は、補正後の発明の「決定した複数のサブキャリアを、受信した信号の送信元に通知する送信処理部」に対応している。

したがって、両者は以下の点で一致ないし相違する。

[一致点]
信号を受信する受信処理部と、
前記受信した信号に基づいて、隣接する複数のサブキャリアを決定し、
前記決定した複数のサブキャリアを、前記受信した信号の送信元に通知 する送信処理部とを備えた移動端末。

[相違点]
上記「受信した信号に基づいて、隣接する複数のサブキャリアを決定する」際に、補正後の発明が、「移動端末での誤り訂正能力を考慮する」のに対して、引用発明には、そのような構成がない点。

[判断]
上記相違点について検討する。
一般に、情報の誤りが問題とされるデータ送信において、受信側で誤り訂正を行う「誤り訂正能力」を備えることは、特に例示するまでもなく周知の技術であって、通信の相手方との関係において、自身の受信能力を通信相手に伝えて、該能力に応じた通信方式を決定することも、ネゴシエーション、トレーニング等として通常行われることであるから、引用発明において、サブキャリアを決定する際に、自身の「誤り訂正能力」を間接的にせよ考慮することは、当然に行い得ることであって、当業者であれば容易に成し得ることにすぎない。

また、引用例には、以下のような記載もある。(下線は、当審において付した。)
ホ.「【0023】すると、移動局2における受信電力測定部22において測定されたサブキャリアSC1?サブキャリアSC23の受信電力値は、図4に示す先に矢印を付したスペクトルの長さで示されるようになる。この受信電力値を{E1,E2,・・・,En}と表す。ただし、E1はサブキャリアSC1の受信電力値、E2はサブキャリアSC2の受信電力値であり、Enは最後のサブキャリア(図示する場合はサブキャリアSC23、すなわちn=23)の受信電力値である。この場合、隣接するサブキャリアは周波数相関が高く、一定の相関帯域幅内のサブキャリアにおける周波数選択性フェージングの影響による受信電力の変動はほぼ同等とみなすことができる。そこで、これを利用して次に、サブキャリアSC1?サブキャリアSC23を制御部26においていくつかのサブキャリアからなるブロックに分割する。制御部26でブロックに分割する場合、先頭のサブキャリアの受信電力値の±ΔEに収まる連続するサブキャリアを1ブロックとする。すなわち、|Eh-Ei|<ΔEを演算して、与式を満足する受信電力値Eiに対応する連続するサブキャリアをそのブロックのサブキャリアとする。ただし、Ehはブロックの先頭のサブキャリアに対応する受信電力値である。また、最小受信電力のしきい値Emod1に満たないサブキャリアは、まとめて1つのブロックとされる。」

へ.「【0029】また、第5ブロックB5は最小受信電力のしきい値Emod1に満たないサブキャリアSC15,SC16のブロックとされているため、第5ブロックB5のサブキャリアSC15,SC16は送信されない変調方式指定情報とされる。これは、しきい値Emod1が移動局2における受信側の背景ノイズのレベルの近傍のレベルとされているため、第5ブロックB5のサブキャリアSC15,SC16を変調した符号化データを誤ることなく復号することが困難になるからである。また、第5ブロックB5のサブキャリアSC15,SC16を送信しないことにより、その送信電力を他のブロックに振り分けることができるようになるからである。」

上記ホ.へ.の記載によれば、「最小受信電力のしきい値Emod1」は、移動局2における受信側の背景ノイズのレベルの近傍のレベルとされており、「端末の受信能力」の限界を示す値と言え、このレベルよりも低いときには、 サブキャリアを変調した「符号化データを誤ることなく復号することが困難になる」のであるから「端末の誤り訂正能力」に関連した値でもある。
このことは、引用例記載の移動局2においても、端末の誤り訂正の能力の限界を考慮して、利用するに都合のいい複数のサブキャリアを決定していることを示唆している。
すると上記相違点は、上記周知技術又は引用例の記載により、さしたる困難性もなく、当業者が必要に応じて行い得た程度のことであって、引用発明に基づいて、補正後の発明のように構成することは、当業者にとって容易に発明し得たものである。

そして、補正後の発明が奏する効果も引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものである。
また、当審の審尋に対する回答書を参酌、検討しても、上記判断を覆すに
足りるものは見あたらない。

よって、補正後の発明は、引用発明、引用例の記載及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正法の附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する同法第126条第5項の規定に適合していない。

したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について

1.本願発明
平成24年4月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の[引用発明]で認定したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は上記補正後の発明から本件補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、引用発明、引用例の記載及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例の記載及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-01 
結審通知日 2013-03-05 
審決日 2013-03-26 
出願番号 特願2010-261093(P2010-261093)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橘 均憲  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 山中 実
田中 庸介
発明の名称 移動端末  
代理人 高田 大輔  
代理人 平川 明  

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