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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1273716
審判番号 不服2011-14906  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-11 
確定日 2013-05-08 
事件の表示 特願2005-175176「電子ドキュメント内のドキュメントパーツを作成、挿入、および再利用するための方法、システム、およびコンピュータ可読媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 4月20日出願公開、特開2006-107435〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2005年6月15日(パリ条約による優先権主張2004年9月30日 米国)を出願日とする出願であって,平成17年8月15日付けで特許法第36条の2第2項に規定する外国語明細書,外国語特許請求の範囲,外国語図面及び外国語要約書の翻訳文が提出され,平成20年6月13日付けで審査請求がなされ,平成22年6月24日付けで審査官により拒絶理由が通知(同年6月29日発送)され,これに対して同年9月29日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成23年3月9日付けで拒絶査定(同年3月11日謄本送達)がなされ,これに対して同年7月11日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,同年9月30日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ,平成24年5月23日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(同年5月29日発送)がなされ,同年8月28日付けで回答書の提出があったものである。

第2 平成23年7月11日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成23年7月11日付けの手続補正を却下する。


[理由]

1.本件補正

平成23年7月11日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,特許請求の範囲について,本件補正前に,

「【請求項1】
ワードプロセッシングアプリケーションプログラム内で作成された電子ドキュメント内のドキュメントパーツを挿入および再利用するための方法であって,
ドキュメントパーツカテゴリの選択を受け取ることと,
前記選択されたドキュメントパーツカテゴリに関連付けられたドキュメントパーツのギャラリを表示することであって,少なくとも2つのドキュメントパーツは,同じ内容を有さず,および少なくとも2つのドキュメントパーツは,同じレイアウトを有さない,表示することと,
前記ギャラリからのドキュメントパーツの選択を受け取ることと,
前記選択されたドキュメントパーツを前記電子ドキュメント内に挿入することと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
ユーザデータを受け取ることと,
前記受け取ったユーザデータで前記選択されたドキュメントパーツを修正することとをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記受け取ったユーザデータで前記選択されたドキュメントパーツを修正することは,前記ユーザデータを前記選択されたドキュメントパーツ用の事前に存在するフォーマットに変換することを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記選択されたドキュメントパーツ内のユーザインターフェースから新しいドキュメントパーツを選択することをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ドキュメント要素カテゴリに関連付けられたドキュメントパーツのギャラリを表示することは,
前記ギャラリ内の各ドキュメントパーツのプレビューを表示することと,
前記ギャラリ内の各ドキュメントパーツの説明を表示することと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ドキュメントパーツの前記ギャラリは,前記電子ドキュメント用のページレイアウトを定義することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記選択されたドキュメントパーツを前記電子ドキュメント内に挿入することは,前記選択されたドキュメントパーツが周囲のテキストの事前に存在するフォーマットにマッチするように前記選択されたドキュメントパーツを挿入することをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
データを消費するためにアプリケーションプログラムを実行するように動作するクライアントコンピュータを含む,電子ドキュメント内のドキュメントパーツを挿入および再利用するためのシステムであって,
前記アプリケーションプログラムは,
ドキュメントパーツカテゴリの選択を受け取ることと,
前記選択されたドキュメントパーツカテゴリに関連付けられたドキュメントパーツのギャラリを表示することであって,少なくとも2つのドキュメントパーツは,同じ内容を有さず,および少なくとも2つのドキュメントパーツは,同じレイアウトを有さない,表示することと,
前記ギャラリからのドキュメントパーツの選択を受け取ることと,
前記選択されたドキュメントパーツを前記電子ドキュメント内に挿入することと
を行うことを特徴とするシステム。
【請求項9】
前記アプリケーションプログラムは,ユーザデータを受け取り,前記受け取ったユーザデータで前記選択されたドキュメントパーツを修正することをさらに行うことを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記受け取ったユーザデータで前記選択されたドキュメントパーツを修正することは,前記ユーザデータを前記選択されたドキュメントパーツ用の事前に存在するフォーマットに変換することを含むことを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記アプリケーションプログラムは,前記選択されたドキュメントパーツ内のユーザインターフェースから新しいドキュメントパーツを選択することをさらに行うことを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記ドキュメント要素カテゴリに関連付けられたドキュメントパーツのギャラリを表示することは,
前記ギャラリ内の各ドキュメントパーツのプレビューを表示することと,
前記ギャラリ内の各ドキュメントパーツの説明を表示することと
を含むことを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
ドキュメントパーツの前記ギャラリは,前記電子ドキュメント用のページレイアウトを定義することを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
前記選択されたドキュメントパーツを前記電子ドキュメント内に挿入することは,前記選択されたドキュメントパーツが周囲のテキストの事前に存在するフォーマットにマッチするように前記選択されたドキュメントパーツを挿入することをさらに含むことを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
前記アプリケーションプログラムは,さらに前記電子ドキュメントの前記レイアウトを定義するドキュメントパーツを作成するためにユーザデータを受け取るためのユーザインターフェースを作成することと,前記受け取ったユーザデータに基づいて前記ドキュメントパーツを作成し,前記作成したドキュメントパーツを保存することとをさらに行うことを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項16】
前記アプリケーションプログラムは,以前に作成されたドキュメントパーツギャラリを検索することと,以前に作成されたドキュメントパーツのギャラリからの選択を受け取ることと,前記ギャラリからの前記選択されたドキュメントパーツを前記ユーザによって作成されたドキュメントパーツに挿入することとをさらに行うことを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記ユーザによって作成されたドキュメントパーツは,複数のデータフォーマットで前記ドキュメントパーツギャラリに保存されることを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記受け取ったユーザデータに基づいて前記ドキュメントパーツを作成することは,ユーザによって選択されたフォーマットを前記ユーザデータに適用することと,前記ユーザデータに説明を適用することと,前記ユーザデータ用のドキュメントギャラリの選択を受け取ることとを含むことを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
コンピュータによって実行されると,ワードプロセッシングアプリケーションプログラム内で作成された電子ドキュメント内のドキュメントパーツを挿入および再利用するための方法を前記コンピュータに実行させるコンピュータ実行可能命令をその上に格納しているコンピュータ可読媒体であって,前記方法は,
ドキュメントパーツカテゴリの選択を受け取ることと,
前記選択されたドキュメントパーツカテゴリに関連付けられたドキュメントパーツのギャラリを表示することであって,少なくとも2つのドキュメントパーツは,同じ内容を有さず,および少なくとも2つのドキュメントパーツは,同じレイアウトを有さない,表示することと,
前記ギャラリからのドキュメントパーツの選択を受け取ることと,
前記選択されたドキュメントパーツを前記電子ドキュメント内に挿入することと,
ユーザデータを受け取ることと,
前記受け取ったユーザデータで前記選択されたドキュメントパーツを修正することであって,前記選択されたドキュメントパーツは,前記電子ドキュメント用のページレイアウトを定義することと
を含むことを特徴とするコンピュータ可読記録媒体。
【請求項20】
前記受け取ったユーザデータで前記選択されたドキュメントパーツを修正することは,前記ユーザデータを前記選択されたドキュメントパーツ用の事前に存在するフォーマットに変換することを含むことを特徴とする請求項19に記載のコンピュータ可読記録媒体。
【請求項21】
前記選択されたドキュメントパーツ内のユーザインターフェースから新しいドキュメントパーツを選択することをさらに含むことを特徴とする請求項19に記載のコンピュータ可読記録媒体。
【請求項22】
前記ドキュメント要素カテゴリに関連付けられたドキュメントパーツのギャラリを表示することは,
前記ギャラリ内の各ドキュメントパーツのプレビューを表示することと,
前記ギャラリ内の各ドキュメントパーツの説明を表示することと
を含むことを特徴とする請求項19に記載のコンピュータ可読記録媒体。
【請求項23】
前記選択されたドキュメントパーツを前記電子ドキュメント内に挿入することは,前記選択されたドキュメントパーツが周囲のテキストの事前に存在するフォーマットにマッチするように前記ドキュメントパーツを挿入することをさらに含むことを特徴とする請求項19に記載のコンピュータ可読記録媒体。」(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)
とあったものを,

「【請求項1】
ワードプロセッシングアプリケーションプログラム内で作成された電子ドキュメント内のドキュメントパーツを挿入および再利用するための方法であって,
ドキュメントパーツカテゴリの選択を受け取ることと,
前記選択されたドキュメントパーツカテゴリに関連付けられたドキュメントパーツのギャラリを表示することであって,少なくとも2つのドキュメントパーツは,同じ内容を有さず,および少なくとも2つのドキュメントパーツは,同じレイアウトを有さない,表示することと,
前記ギャラリからのドキュメントパーツの選択を受け取ることと,
前記選択されたドキュメントパーツを前記電子ドキュメント内に挿入することと
を含み,
前記ドキュメントパーツカテゴリに関連付けられたドキュメントパーツのギャラリを表示することは,
前記ギャラリ内の各ドキュメントパーツのプレビューを表示することと, 前記ギャラリ内の各ドキュメントパーツの説明を表示することと,
前記電子ドキュメント用のページレイアウトの定義を表示することを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
ユーザデータを受け取ることと,
前記受け取ったユーザデータで前記選択されたドキュメントパーツを修正することと
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記受け取ったユーザデータで前記選択されたドキュメントパーツを修正することは,前記ユーザデータを前記選択されたドキュメントパーツ用の事前に存在するフォーマットに変換することを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記選択されたドキュメントパーツ内のユーザインターフェースから新しいドキュメントパーツを選択することをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記選択されたドキュメントパーツを前記電子ドキュメント内に挿入することは,前記選択されたドキュメントパーツが周囲のテキストの事前に存在するフォーマットにマッチするように前記選択されたドキュメントパーツを挿入することをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
データを消費するためにアプリケーションプログラムを実行するように動作するクライアントコンピュータを含む,電子ドキュメント内のドキュメントパーツを挿入および再利用するためのシステムであって,
前記アプリケーションプログラムは,
ドキュメントパーツカテゴリの選択を受け取ることと,
前記選択されたドキュメントパーツカテゴリに関連付けられたドキュメントパーツのギャラリを表示ことであって,少なくとも2つのドキュメントパーツは,同じ内容を有さず,および少なくとも2つのドキュメントパーツは,同じレイアウトを有さない,表示することと,
前記ギャラリからのドキュメントパーツの選択を受け取ることと,
前記選択されたドキュメントパーツを前記電子ドキュメント内に挿入することと
を行い,
前記ドキュメントパーツカテゴリに関連付けられたドキュメントパーツのギャラリを表示することは,
前記ギャラリ内の各ドキュメントパーツのプレビューを表示することと, 前記ギャラリ内の各ドキュメントパーツの説明を表示することと,
前記電子ドキュメント用のページレイアウトの定義を表示することを含む ことを特徴とするシステム。
【請求項7】
前記アプリケーションプログラムは,ユーザデータを受け取り,前記受け取ったユーザデータで前記選択されたドキュメントパーツを修正することをさらに行うことを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記受け取ったユーザデータで前記選択されたドキュメントパーツを修正することは,前記ユーザデータを前記選択されたドキュメントパーツ用の事前に存在するフォーマットに変換することを含むことを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記アプリケーションプログラムは,前記選択されたドキュメントパーツ内のユーザインターフェースから新しいドキュメントパーツを選択することをさらに行うことを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記選択されたドキュメントパーツを前記電子ドキュメント内に挿入することは,前記選択されたドキュメントパーツが周囲のテキストの事前に存在するフォーマットにマッチするように前記選択されたドキュメントパーツを挿入することをさらに含むことを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
前記アプリケーションプログラムは,さらに前記電子ドキュメントの前記レイアウトを定義するドキュメントパーツを作成するためにユーザデータを受け取るためのユーザインターフェースを作成することと,前記受け取ったユーザデータに基づいて前記ドキュメントパーツを作成し,前記作成したドキュメントパーツを保存することとをさらに行うことを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項12】
前記アプリケーションプログラムは,以前に作成されたドキュメントパーツギャラリを検索することと,以前に作成されたドキュメントパーツのギャラリからの選択を受け取ることと,前記ギャラリからの前記選択されたドキュメントパーツを前記ユーザによって作成されたドキュメントパーツに挿入することとをさらに行うことを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記ユーザによって作成されたドキュメントパーツは,複数のデータフォーマットで前記ドキュメントパーツギャラリに保存されることを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記受け取ったユーザデータに基づいて前記ドキュメントパーツを作成することは,ユーザによって選択されたフォーマットを前記ユーザデータに適用することと,前記ユーザデータに説明を適用することと,前記ユーザデータ用のドキュメントギャラリの選択を受け取ることとを含むことを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
コンピュータによって実行されると,ワードプロセッシングアプリケーションプログラム内で作成された電子ドキュメント内のドキュメントパーツを挿入および再利用するための方法を前記コンピュータに実行させるコンピュータ実行可能命令をその上に格納しているコンピュータ可読媒体であって,前記方法は,
ドキュメントパーツカテゴリの選択を受け取ることと,
前記選択されたドキュメントパーツカテゴリに関連付けられたドキュメントパーツのギャラリを表示することであって,少なくとも2つのドキュメントパーツは,同じ内容を有さず,および少なくとも2つのドキュメントパーツは,同じレイアウトを有さない,表示することと,
前記ギャラリからのドキュメントパーツの選択を受け取ることと,
前記選択されたドキュメントパーツを前記電子ドキュメント内に挿入することと,
ユーザデータを受け取ることと,
前記受け取ったユーザデータで前記選択されたドキュメントパーツを修正することであって,前記選択されたドキュメントパーツは,前記電子ドキュメント用のページレイアウトを定義することと
を含み, 前記ドキュメントパーツカテゴリに関連付けられたドキュメントパーツのギャラリを表示することは,
前記ギャラリ内の各ドキュメントパーツのプレビューを表示することと, 前記ギャラリ内の各ドキュメントパーツの説明を表示することと,
前記電子ドキュメント用のページレイアウトの定義を表示することを含む ことを特徴とするコンピュータ可読記録媒体。
【請求項16】
前記受け取ったユーザデータで前記選択されたドキュメントパーツを修正することは,前記ユーザデータを前記選択されたドキュメントパーツ用の事前に存在するフォーマットに変換することを含むことを特徴とする請求項15に記載のコンピュータ可読記録媒体。
【請求項17】
前記選択されたドキュメントパーツ内のユーザインターフェースから新しいドキュメントパーツを選択することをさらに含むことを特徴とする請求項15に記載のコンピュータ可読記録媒体。
【請求項18】
前記選択されたドキュメントパーツを前記電子ドキュメント内に挿入することは,前記選択されたドキュメントパーツが周囲のテキストの事前に存在するフォーマットにマッチするように前記ドキュメントパーツを挿入することをさらに含むことを特徴とする請求項15に記載のコンピュータ可読記録媒体。」(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)
と補正しようとするものである。

2.補正の目的要件

本件補正は,平成17年8月15日付け翻訳文提出書に添付した外国語明細書,外国語特許請求の範囲,外国語図面及び外国語要約書の翻訳文に記載した事項の範囲内においてなされており,特許法第17条の2第3項の規定に適合している。

そして,本件補正は,実質的に,補正前の請求項1を引用する請求項5,補正前の請求項8を引用する請求項12,及び補正前の請求項19を引用する請求項22に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記ドキュメント要素カテゴリに関連付けられたドキュメントパーツのギャラリを表示することは,前記ギャラリ内の各ドキュメントパーツのプレビューを表示することと,前記ギャラリ内の各ドキュメントパーツの説明を表示することとを含む」を「前記ドキュメントパーツカテゴリに関連付けられたドキュメントパーツのギャラリを表示することは,前記ギャラリ内の各ドキュメントパーツのプレビューを表示することと,前記ギャラリ内の各ドキュメントパーツの説明を表示することと,前記電子ドキュメント用のページレイアウトの定義を表示することを含む」に,それぞれ限定するものであって,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件

そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)以下に検討する。


(1)引用文献等

1)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された,特開平10-232947号公報(平成10年9月2日出願公開,以下,「引用文献」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

A「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,葉書(例えば,年賀状,暑中見舞い等の葉書)や各種カード(例えば,クリスマスカード)等に対し,文章や画像等を任意に組み合わせてレイアウトし,印刷することが可能なワードプロセッサ,パーソナルコンピュータ等の文書処理装置およびそれら処理をコンピュータに実行させるプログラムを記録した記録媒体に関する。」

B「【0017】・・・(中略)・・・
(1):レイアウト/部品一覧画面の説明・・・図4参照
前記装置において,例えば,本発明の機能を利用し年賀状に印刷するための文書を作成する場合,ユーザは図示しない初期画面から順次画面上のメニューを選択することでその文書を自動的に作成することができ,そのユーザによる操作手順は例えば次の通りである。
【0018】先ず,図示しない表示装置14の画面上に初期画面として表示された機能選択画面のメニューから,本発明の機能を用いて文書を作成する処理項目を選択する。この処理項目の選択により,図4に示すようなレイアウト/部品一覧画面(レイアウトと部品一覧の画面)が表示装置14の画面上に表示される。前記レイアウト/部品一覧画面では,画面のA側(図4の左側)をレイアウト領域,B側(図4の右側)を部品一覧領域とされ,前記レイアウト領域Λには複数のレイアウト(例えば,年賀状のレイアウト)が表示され,前記部品一覧領域Bには部品一覧(レイアウトに挿入する部品の一覧)が表示される。
【0019】また,前記レイアウト領域Aには「次」と「前」の表示画像が表示され,前記部品一覧領域Bには「前」と,「部品属性(1)」と,「部品属性(2)」と,「部品属性(3)」と,「次」の表示画像が表示される。(以下,これらの表示画像のことをボタンと称する。)この場合,前記「次」ボタンは表示装置14の画面上に表示されていない次頁のデータを表示させるためのボタンであり,「前」ボタンは表示装置14の画面上に表示されていない前頁のデータを表示させるためのボタンである。
【0020】前記部品一覧領域Bには,複数の部品表示領域b1,b2,b3・・・b9を設定され,各部品表示領域にはユーザにより選択された部品属性の部品一覧が表示されるようになっている。また,部品一覧領域Bに設けた部品属性(1),(2),(3)の各ボタンは部品属性を選択するためのものであり,このボタンにより選択した属性の部品一覧が前記部品表示領域b1,b2,b3・・・b9にそれぞれ表示される。なお,この例では前記部品属性(1)がイラスト,部品属性(2)がタイトル,部品属性(3)が本文(挨拶文等)である。
【0021】そして,部品属性等を選択すると,前記レイアウト/部品一覧画面の表示内容は順次変化するが,その初期画面ではA側のレイアウト領域にレイアウトのみ(部品は表示されない)が複数表示され,部品一覧領域には部品属性(1)(イラスト)の部品一覧が表示される。この場合,レイアウト領域Aに表示された各レイアウト内の各フィールドには(1),(2),(3)の符号を図示してあるが,これは前記フィールドの種類を部品属性(1),(2),(3)で示したものである。例えば,(1)で示したフィールドには部品属性の部品が挿入されるフィールドであることを示し,(2)で示したフィールドには部品属性の部品が挿入されるフィールドであることを示し,(3)で示したフィールドには部品属性の部品が挿入されるフィールドであることを示している。」(当審注:上記記載について,便宜上,丸数字の表記を()付き数字に代えて示している。)

C「【0027】また,部品一覧領域Bに表示した「前」または「次」ボタンが選択されたときも同様に,CPU13は選択されたボタンに応じて前記ROM15のアドレスを変えて部品データを読み出してRAM16に格納する。そして,前記ステップS5と同様の処理によって部品データを展開した描画データを表示装置14に出力し,部品一覧領域Bの各部品表示領域に異なる部品データを表示する。この際,レイアウト領域Aに表示されているレイアウトデータの変更は行わない。
【0028】さらに,上記のように,部品属性が選択されている状態で,現在の部品属性と異なる部品属性である部品属性または部品属性を選択するボタンが押されると,CPU13は前記ステップS4,S5と同様の処理を行う。つまり,押されたボタンの部品属性に対応する部品データをROM等の記憶装置からRAMへ読み込み,その部品データを解析して描画データに展開し表示装置14へ出力する。この処理によって,部品一覧領域Bの各部品表示領域b1?b9に,選択された部品属性の部品を表示する。」

D「【0029】§3:部品挿入処理の説明・・・・(中略)・・・
(1):部品挿入画面の説明・・・図6参照
前記のように,任意の部品属性を選択して部品を表示させた後,前記部品一覧からいずれか1つの部品を選択すると,レイアウト領域Aに表示された全てのレイアウトの選択された部品属性に該当するフィールドに,それぞれ前記選択された部品がフィールド情報の修飾情報(左右反転,縦/横書き等)に従い挿入される。
【0030】すなわち,部品挿入画面では,部品一覧領域に表示された部品の1つ(図の網掛け部分)を選択すると,レイアウト領域の全てのレイアウトの該当するフィールド(部品挿入領域)に前記選択された部品が挿入されて表示する(図6では,部品一覧領域の網掛け部分が選択された部品であり,レイアウト領域の各レイアウトの網掛け部分が挿入された部品である)。
【0031】例えば,部品一覧領域に部品属性(イラスト)の部品が表示された状態で,いずれか1つの部品(例えば部品-1)が選択されると,その部品が,レイアウト領域に表示された全てのレイアウトの該当するフィールド(部品属性の挿入領域)に挿入されて表示される。」

E「【0036】・・・・(中略)・・・
§4:部品効果付加処理の説明・・・図6,図8?図10
以下,図6,図8?図10を使用して部品効果付加処理について説明する。
(1):部品効果付加画面例・・・図6,図8参照
図8は部品効果付加画面例である。図8に示した部品は図6,図7を用いて説明した部品挿入処理後の1例である。この例での部品挿入処理は,図6の部品1゜-1(うぐいすのイメージとする)が選択されてレイアウト領域Aの各レイアウトの該当するフィールドに挿入したものである。
【0037】その部品挿入処理の後,ユーザがレイアウト領域Aに表示されている「効果機能」ボタンを押すことにより,選択された部品へ効果データを付加するための図8の部品効果付加画面が表示される。その部品効果付加画面の左側には選択部品表示領域Cが設定され,前述で選択された部品が表示される。また,右側には指示ボタン表示領域Dが設定され,選択部品表示領域Cに表示されている部品に対して効果データの付加を指示するための「部品効果付加」ボタン,元の部品の表示に戻す指示を行うための「元の絵」ボタン,部品に対する効果データの付加処理を決定するための「決定」ボタンが表示される。
【0038】この部品効果付加画面が表示された状態において,ユーザは「部品効果付加」ボタンを押すことにより,選択部品表示領域Cに表示されている部品に効果データを付加し,効果データが付加された部品が所望の表示となったところで「決定」ボタンを押すことにより部品効果付加処理を終了させる。また,前述の操作により効果データを部品に付加した状態において,「元の絵」ボタンを押すことにより,選択部品表示領域Cに表示されている部品が初めの部品のみの表示に戻る。」

ア.上記Aに「葉書(例えば,年賀状,暑中見舞い等の葉書)や各種カード(例えば,クリスマスカード)等に対し,文章や画像等を任意に組み合わせてレイアウトし,印刷することが可能なワードプロセッサ,パーソナルコンピュータ等の文書処理装置およびそれら処理をコンピュータに実行させるプログラム」との記載があり,上記「葉書」等に対して「文章や画像等を任意に組み合わせてレイアウトし」たものとは電子文書であるといえることから,この記載から「ワードプロセッサプログラム内で作成した電子文書」がよみとれる。
次に,上記Dに「任意の部品属性を選択して部品を表示させた後,前記部品一覧からいずれか1つの部品を選択すると,レイアウト領域Aに表示された全てのレイアウトの選択された部品属性に該当するフィールドに,それぞれ前記選択された部品がフィールド情報の修飾情報(左右反転,縦/横書き等)に従い挿入される。」との記載があり,ここにおけるレイアウト領域とは電子文書上の領域であることから,この記載から「電子文書内の部品を挿入するための方法」がよみとれる。
また,上記Eに「その部品挿入処理の後,ユーザがレイアウト領域Aに表示されている「効果機能」ボタンを押すことにより,選択された部品へ効果データを付加するための図8の部品効果付加画面が表示される。」との記載があり,ここにおける「効果付加」とはすでに部品挿入処理がされた「部品」への「効果データ」の「付加」であることから,部品挿入処理済みの「部品」への再操作であるといえ,よってこの記載から,「電子文書内の部品を再操作するための方法」がよみとれる。
これらを合わせると,「ワードプロセッサプログラム内で作成した電子文書内の部品を挿入及び再操作するための方法」がよみとれる。

イ.上記Cに「部品属性が選択されている状態で,現在の部品属性と異なる部品属性である部品属性または部品属性を選択するボタンが押されると,CPU13は前記ステップS4,S5と同様の処理を行う。つまり,押されたボタンの部品属性に対応する部品データをROM等の記憶装置からRAMへ読み込み,その部品データを解析して描画データに展開し表示装置14へ出力する。」との記載があり,この記載から,「部品属性の選択を受け取ること」がよみとれる。

ウ.上記Bに「前記部品一覧領域Bには,複数の部品表示領域b1,b2,b3・・・b9を設定され,各部品表示領域にはユーザにより選択された部品属性の部品一覧が表示されるようになっている。また,部品一覧領域Bに設けた部品属性(1),(2),(3)の各ボタンは部品属性を選択するためのものであり,このボタンにより選択した属性の部品一覧が前記部品表示領域b1,b2,b3・・・b9にそれぞれ表示される。なお,この例では前記部品属性(1)がイラスト,部品属性(2)がタイトル,部品属性(3)が本文(挨拶文等)である。」との記載,上記Cに「前記ステップS5と同様の処理によって部品データを展開した描画データを表示装置14に出力し,部品一覧領域Bの各部品表示領域に異なる部品データを表示する。」との記載があり,これらの記載から,「選択された部品属性の部品の一覧を表示することであって,少なくとも2つの部品は同じではない,表示すること」がよみとれる。

エ.上記Dに「任意の部品属性を選択して部品を表示させた後,前記部品一覧からいずれか1つの部品を選択すると,レイアウト領域Aに表示された全てのレイアウトの選択された部品属性に該当するフィールドに,それぞれ前記選択された部品がフィールド情報の修飾情報(左右反転,縦/横書き等)に従い挿入される。」,「例えば,部品一覧領域に部品属性(イラスト)の部品が表示された状態で,いずれか1つの部品(例えば部品-1)が選択されると,その部品が,レイアウト領域に表示された全てのレイアウトの該当するフィールド(部品属性の挿入領域)に挿入されて表示される。」との記載があり,これらの記載から,「一覧からの部品の選択を受け取ること」及び「選択された部品を電子文書内に挿入すること」がよみとれる。

オ.上記Eに「図8に示した部品は図6,図7を用いて説明した部品挿入処理後の1例である。この例での部品挿入処理は,図6の部品1゜-1(うぐいすのイメージとする)が選択されてレイアウト領域Aの各レイアウトの該当するフィールドに挿入したものである。」との記載があり,ここにおける「図6の部品1゜-1」とは部品一覧領域中にあり,そこに例えばうぐいすのイメージが表示されており,それを部品の挿入のために選択することが記載されているものであり,この「部品」に対応する「イメージ」の表示とはプレビューに他ならない。よって,これらの記載から,「部品属性の部品の一覧を表示することは,一覧内の各部品のプレビューを表示することを含む」がよみとれる。

以上,ア?オで指摘した事項から,引用文献には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

ワードプロセッサプログラム内で作成した電子文書内の部品を挿入及び再操作するための方法であって,
部品属性の選択を受け取ることと,
前記選択された部品属性の部品の一覧を表示することであって,少なくとも2つの部品は同じではない,表示することと,
前記一覧からの部品の選択を受け取ることと,
前記選択された部品を電子文書内に挿入することとを含み,
前記部品属性の部品の一覧を表示することは,一覧内の各部品のプレビューを表示することを含む方法。

2)周知文献1

本願の出願前に頒布された,特開平2002-149635号公報(平成14年5月24日出願公開,以下,「周知文献1」という。)には,図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

F「【0012】<送付者処理:STEP3>次に,年賀状の送付者に関する情報の受付を行い,送付者の情報を年賀状にどのように表示するか等を決定する。この処理の詳細は,図4の通りであり,<送付者情報の入力>→<名組の選択>→<イメージ情報に変換>→<構成結果の表示>→<確認(構成結果の確認)>の手順で行う。以下,これら手順につき説明する。レイアウトサーバー1には送付者情報を入力するための入力フォーム,名組情報(送付者情報の構成例を示したイメージデータ)とそれに対応した名組番号が記憶されており,レイアウトサーバー1はこれらをパソコン2に送信する。それらを受信したパソコン2は,まず,入力フォームを液晶画面5に表示し,井上さんはその入力フォームに従って送付者情報をパソコン2の入力用キーボード7から入力する(図10)。なお,ここで送付者情報とは「郵便番号=107-0052,住所=東京都港区赤坂5-1-31,電話番号=03-3589-2571,E-mailアドレス=inoue@dowa-planning.co.jp,名前1=井上 明,名前2=陽子,名前3=たかし」からなるデータと意味するものとする。入力が終了したら井上さんは画面上の「名組を選ぶ」をクリックする。これによりパソコン2は液晶画面5に名組情報等を次のようにして表示する(図11)。
(1)液晶画面5の上段左側に,名組番号「LT-03」を表示し,その下に「LT-03」に対応する名組情報(基本的な名組)を表示する。
(2)液晶画面5の上段中央に,名組番号「LT-08」を表示し,その下に「LT-08」に対応する名組情報(旧姓有りの名組)を表示する。
(3)液晶画面5の下段左側に,名組番号「LT-04」を表示し,その下に「LT-04」に対応する名組情報(家族同サイズの名組)を表示する。
(4)液晶画面5の下段中央に,名組番号「LT-05」を表示し,その下に「LT-05」に対応する名組情報(子供小サイズの名組)を表示する。
(5)液晶画面5の下段右側に,名組番号「LT-06」を表示し,その下に「LT-06」に対応する名組情報(子供年齢入りの名組)を表示する。
【0013】次に,井上さんは希望する名組12を選択する(ここでは画面下中央の「LT-05」という名組12aを選ぶこととする)。即ち,液晶画面5上の「名組の上をクリックしてください」との要請に対して名組情報12aの部分をクリックする。これによりパソコン2は構成情報の一部としての「名組番号=LT-05」というデータ及び表示情報の一部としての送付者情報をレイアウトサーバー1に対して送信する。これらデータを受付けた(受信した)レイアウトサーバー1は受注データ(図8)の一部として送付者情報を記憶し,それと共に送付者構成情報の「名組番号」を「名組番号=LT-05」として記憶する。そして図柄番号「001」に対応する図柄(獅子舞の絵)及び送付者情報を構成情報(図8)に基づいて編集し,次のようにして「仮の構成結果」を作成する。
(1)レイアウトサーバー1内の作業エリアに年賀葉書の外枠を設け,その枠内に縦幅○○mm,横幅○○mmの大きさで獅子舞の絵(イメージデータ)を葉書の左側から○○mm,葉書下から○○mmの位置に表す。
(2)年賀状枠内に送付者情報を縦幅○○mm,横幅○○mmの大きさで,葉書の左側から○○mm,葉書下から○○mmの位置に,名組情報「LT-05」の名組で表す。
なお,この「仮の構成結果」を作成する時点において,送付者情報はテキストデータとして作成されている。」

3)周知文献2

本願の出願前に頒布された,特開2003-91544号公報(平成15年3月28日出願公開,以下,「周知文献2」という。)には,図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

G「【0147】また,表紙の画像ボタン82Eをクリックすることにより,画像選択画面が表示される。図27は画像選択画面の例を示す図である。図27に示すように,画像選択画面には,フイルムストッカーの表示画面において表示されたサムネイル画像55Aと同様のサムネイル画像83A,選択を確定させるためのOKボタン83Bおよびアルバム編集画面に戻るためのキャンセルボタン83Cが表示される。ユーザは,画像選択画面において,表紙にする画像を選択してOKボタン83Bをクリックすると,アルバム編集画面の表紙画像フィールド82Bに選択した画像が表示される。」

H「【0152】また、並び替えるボタン82Hをクリックすることにより、画像並び替え画面が表示される。図29は画像並び替え画面の例を示す図である。図29に示すように、画像並び替え画面には、レイアウトフィールド82Aに貼り付けられた画像のサムネイル画像86Aと、サムネイル画像86Aに対応した画像データの撮影年月日と、表示順とを表示する表示フィールド86B、表示フィールド86Bをスクロールするためのスクロールバー86C、レイアウトフィールド82Aに貼り付けられた画像を撮影年月日の昇順および降順に並び替えるための昇順ボタン86D、降順ボタン86E、選択された表示フィールド86Bを先頭、ひとつ上、ひとつ下、および末尾に移動させるための移動ボタン86F?86I、およびアルバム編集画面に戻るための戻るボタン86Jが表示される。」

4)周知文献3

本願の出願前に頒布された,特開2003-50921号公報(平成15年2月21日出願公開,以下,「周知文献3」という。)には,図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

J「【0085】リソースのダウンロードが終わると,図21に示すように,「画像リスト」というタグのウィンドウにキープリストが表示される(以下,このイメージエディタ22上のキープリストを画像リストという)。この画像リストには,キープされている画像のサムネイル画像(又は,それより若干大きいパレット画像)と,画像名と,価格などが表示される。」

(2)本願補正発明と引用発明との対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「ワードプロセッサプログラム」,「電子文書」,「部品」,「再操作」,「部品属性」,「一覧」は,本願補正発明の「ワードプロセッシングアプリケーションプログラム」,「電子ドキュメント」,「ドキュメントパーツ」,「再利用」,「ドキュメントパーツカテゴリ」,「ギャラリ」にそれぞれ相当し,また引用発明の「部品属性の部品」は,本願補正発明の「ドキュメントパーツカテゴリに関連付けられたドキュメントパーツ」に相当する。また,引用発明の「少なくとも2つの部品は同じではない」と,本願補正発明の「少なくとも2つのドキュメントパーツは,同じ内容を有さず,および少なくとも2つのドキュメントパーツは,同じレイアウトを有さない」とは,「少なくとも2つのドキュメントパーツは同じではない」である点で共通する。

してみると,本願補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

(一致点)

ワードプロセッシングアプリケーションプログラム内で作成された電子ドキュメント内のドキュメントパーツを挿入および再利用するための方法であって,
ドキュメントパーツカテゴリの選択を受け取ることと,
前記選択されたドキュメントパーツカテゴリに関連付けられたドキュメントパーツのギャラリを表示することであって,少なくとも2つのドキュメントパーツは同じではない,表示することと,
前記ギャラリからのドキュメントパーツの選択を受け取ることと,
前記選択されたドキュメントパーツを前記電子ドキュメント内に挿入することとを含み,
前記ドキュメントパーツカテゴリに関連付けられたドキュメントパーツのギャラリを表示することは,前記ギャラリ内の各ドキュメントパーツのプレビューを表示することを含む方法。

(相違点1)
ギャラリに表示される複数のドキュメントパーツ相互の関係について,本願補正発明が「少なくとも2つのドキュメントパーツは,同じ内容を有さず,および少なくとも2つのドキュメントパーツは,同じレイアウトを有さない」としているのに対し,引用発明は,部品について異なることは記載されているものの,「内容」及び「レイアウト」について異なることまでは,明確に記載されていない点。

(相違点2)
ドキュメントパーツのギャラリでの表示について,本願補正発明が,各ドキュメントパーツの説明と,電子ドキュメント用のページレイアウトの定義を表示することを含むとしているのに対し,引用発明は,そのような構成について,記載されていない点。


(3)判断

上記相違点1?2について検討する。

(3-1)相違点1について

上記Bに「この例では前記部品属性(1)がイラスト,部品属性(2)がタイトル,部品属性(3)が本文(挨拶文等)である。」との記載があるように,引用発明における「部品」は「イラスト」,「タイトル」,「本文」であることから,その要素として内容やレイアウトを有するものとすることができ,そのような「内容」や「レイアウト」を要素として有する複数の「部品」を互いに異ならせる際に,その要素である「内容」や「レイアウト」を異なるようにすることは周知慣用手段(引用文献における図面第31図でも,「イラスト選択画面」で「ねずみ」「うし」「とら」等の「内容」の異なるイラストが選択可能となっていることが示されているし,同図面第29図でも,「レイアウト選択画面」で異なる「レイアウト」が選択可能となっていることが示されている。)であり,引用発明において,当該周知慣用技術を採用し,ギャラリに表示されているドキュメントパーツの内容及びレイアウトを異ならせること,すなわち,相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

よって,相違点1は格別なものではない。

(3-2)相違点2について

本願補正発明における「電子ドキュメント用のページレイアウトの定義」の意味について,平成24年8月28日付け回答書にて説明されているとおり「パーツギャラリーのタイトル」であると解釈すると,文書編集の際に,文書を構成する部品の一覧表示において,部品の説明及びタイトルをプレビューとともに表示することは,本出願前周知(必要であれば,周知文献1の上記Fの記載,周知文献2の上記G及びHの記載,周知文献3の上記Jの記載を参照。周知文献1における「家族同サイズ」等の表示が「説明」に相当し,周知文献2の図面第27図中の「撮影年月日」が「説明」に「旅行」等が「タイトル」にそれぞれ相当し,周知文献3の図面第21図中の「美人」等の「画像名」が「タイトル」に「500円」等の「価格」が「説明」にそれぞれ相当する)であり,引用発明において,当該周知技術を採用し,部品の一覧表示においてプレビューとともに説明とタイトルを表示すること,すなわち,相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

よって,相違点2は格別なものではない。

(3-3)小括

上記で検討したごとく,相違点1?相違点2は格別のものではなく,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本願補正発明の奏する作用効果は,上記引用発明,周知技術及び周知慣用技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

したがって,本願補正発明は,上記引用発明,周知技術及び周知慣用技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.本件補正についての結び

以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1.本願発明

平成23年7月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願に係る発明は,平成22年9月29日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-23に記載された事項により特定されるものである。

2.引用文献等

原査定の拒絶の理由に引用された,引用文献およびその記載事項は,前記「第2 平成23年7月11日付けの手続補正についての補正却下の決定」「3.独立特許要件」の「(1)引用文献等」に記載したとおりである。

3.対比・判断

請求項1記載の発明は,前記「第2 平成23年7月11日付けの手続補正についての補正却下の決定」「1.本件補正」の「本願補正発明」から,「前記ドキュメントパーツカテゴリに関連付けられたドキュメントパーツのギャラリを表示することは,前記ギャラリ内の各ドキュメントパーツのプレビューを表示することと,前記ギャラリ内の各ドキュメントパーツの説明を表示することと,前記電子ドキュメント用のページレイアウトの定義を表示することを含む」を削除したものである。

そこで,本願請求項1記載の発明と引用発明とを対比すると,本願請求項1記載の発明と引用発明とは,以下の点で相違し,その余の点では相違しない。
(相違点)
ギャラリに表示される複数のドキュメントパーツ相互の関係について,本願請求項1記載の発明が「少なくとも2つのドキュメントパーツは,同じ内容を有さず,および少なくとも2つのドキュメントパーツは,同じレイアウトを有さない」としているのに対し,引用発明は,部品について異なることは記載されているものの,「内容」及び「レイアウト」について異なることまでは,明確に記載されていない点。
(前記「第2 平成23年7月11日付けの手続補正についての補正却下の決定」「3.独立特許要件」「(2)本願補正発明と引用発明との対比」に記載の(相違点1)に相当)

上記相違点については,相当する補正後の発明についての相違点1に対し,前記「第2 平成23年7月11日付けの手続補正についての補正却下の決定」「3.独立特許要件」「(3)判断」の「(3-1)相違点1について」に記載したとおり,周知慣用技術を採用することで,当業者が容易に想到し得たことであることから,同様の理由により,周知慣用技術を採用することで,当業者が容易に想到し得たことであり,よって上記相違点は格別のものではない。

上記で検討したごとく,相違点は格別のものではなく,そして,この相違点を勘案しても,本願請求項1記載の発明の奏する作用効果は,上記引用発明,及び周知慣用技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。したがって,本願請求項1記載の発明は,上記引用発明,及び周知慣用技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり,本願請求項1記載の発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項について言及するまでもなく,本願は,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-29 
結審通知日 2012-12-04 
審決日 2012-12-18 
出願番号 特願2005-175176(P2005-175176)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 成瀬 博之  
特許庁審判長 仲間 晃
特許庁審判官 長島 孝志
原 秀人
発明の名称 電子ドキュメント内のドキュメントパーツを作成、挿入、および再利用するための方法、システム、およびコンピュータ可読媒体  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
復代理人 柿沼 健一  
復代理人 濱中 淳宏  

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