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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B32B |
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管理番号 | 1273775 |
審判番号 | 不服2011-15 |
総通号数 | 162 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-06-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-01-04 |
確定日 | 2013-05-07 |
事件の表示 | 特願2001-508275「除去可能な保護コーティングを有する光透過性及び(又は)コーティングされた物品」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月11日国際公開、WO01/02496、平成15年 2月 4日国内公表、特表2003-504227〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2000年6月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年7月2日、米国、2000年5月10日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成22年8月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成23年1月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 その後、当審において、平成24年5月7日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、平成24年11月8日に意見書が提出されるとともに、同日に手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年11月8日に手続補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「第1表面及び少なくとも1つの光透過性表面を有する基体; 該基体の第1表面の少なくとも1部分上に付着された機能性コーティング; および 該機能性コーティングの少なくとも1部分上に付着された、フイルム形成性重合体を形成する液体コーティング組成物の蒸発生成物または反応生成物を含む除去可能な保護コーティング; を含み、該機能性コーティングが低放射率コーティング、太陽エネルギー反射性または吸収性コーティングおよび熱赤外線反射性または吸収性コーティングおよびそれらの組み合わせからなる群から選ばれ、かつ、金属酸化物層と、金属合金酸化物層と、赤外線反射性金属フイルムとを含む多重層コーティングを含み、そして 該除去可能な保護コーティングはスペーサー材料を本質的に有しない、 コーティングされた物品。」 3.引用発明 これに対して、当審が通知した上記拒絶理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平10-226537号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の事項及び引用発明が記載されている。 (a)「【請求項1】 表面の一部又は全部に、水溶性物質からなる保護膜が塗布形成されてなるガラス製品において、前記水溶性物質が、平均重合度600以下、鹸化度40モル%以上のポリビニルアルコールからなることを特徴とするガラス製品。」 (b)「【0002】 【従来の技術】板ガラス、瓶ガラス、電子部品用ガラス等の各種ガラス製品は、製造、保管、運搬中に、表面に傷が付いたり、汚れが付着しやすく、製品欠陥となりやすい。特にフラットパネルディスプレイ用ガラス基板やブラウン管用ガラスのような高い表面品位が要求されたり、後工程で各種の表面処理が施されるようなガラス製品の場合には、わずかな傷や汚れも許されない。」 (c)「【0010】本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、表面に水溶性物質からなる保護膜が塗布形成されてなるため、損傷や汚染を有効に防止でき、しかも保護膜中にアルカリ成分は含まれず、表面に結露が発生しても、保護膜が溶解し難いガラス製品と、それを製造する方法を提供することを目的とするものである。」 (d)「【0022】本発明の水溶性物質をガラス製品に塗布するにあたっては、スプレー法、浸漬法、刷毛塗り法等の公知の方法が採られる。また水溶性物質をガラス製品から除去するにあたっては、ガラス製品自体を水槽中に浸漬したり、保護膜を流水で洗い流す方法が採られる。これによって保護膜に汚染物質が付着しても、この汚染物質は、水に溶解し、剥離する水溶性物質と共にガラス製品から取り除かれることになる。特に30℃以上の温水を使用したり、水に界面活性剤等を配合すると、容易に保護膜を除去できるため好ましい。 【0023】本発明における保護膜は、その厚みが小さすぎると、ガラス製品が他の部材と擦れたり、ガラス製品同士が擦れ合ったりした時に傷が付き易くなり、また厚みが大きすぎると、保護膜の除去作業に時間がかかりすぎたり、材料コストが高くなるため好ましくない。よって保護膜の厚みは、0.001?1000μm、より好ましくは0.01?500μmである。」 (e)「【0039】本発明のガラス製品は、特に高い表面品位が要求されたり、各種の表面処理が施されるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板やブラウン管用ガラスとして好適であり、また表面に導電膜や反射防止膜といった各種の機能膜が形成されたガラス製品の機能膜上に保護膜を塗布形成することによって機能膜の欠損や汚染を防ぐことも可能である。」 以上の記載によると、引用例には、 「表面の一部又は全部に、水溶性物質からなる保護膜が塗布形成されてなるガラス製品において、 前記表面には導電膜や反射防止膜といった各種の機能膜が形成され、 前記保護膜は、除去することができ、前記水溶性物質が、平均重合度600以下、鹸化度40モル%以上のポリビニルアルコールからなるガラス製品。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 4.対比 本願発明と引用発明とを比較すると、 引用発明の「表面」、「機能膜」、「保護膜」及び「ガラス製品」は、それぞれ本願発明の「第1表面」、「機能性コーティング」、「保護コーティング」及び「物品」に相当し、 引用発明の「ガラス製品」のガラス自体は、本願発明の「基体」に相当し、また、本願発明でいう「光透過性表面」を有することは明らかであり、 引用発明の「水溶性物質」は鹸化度40モル%以上のポリビニルアルコールからなり、ポリビニルアルコールは本願の請求項11にフイルム形成性重合体とされていることからみて、引用発明の「保護膜」は、本願発明でいう「フイルム形成性重合体を形成する液体コーティング組成物の反応生成物」を含むものであり、また、本願発明でいう「スペーサー材料」は有していないものであることより、両者は、 「第1表面及び少なくとも1つの光透過性表面を有する基体; 該基体の第1表面の少なくとも1部分上に付着された機能性コーティング; および 該機能性コーティングの少なくとも1部分上に付着された、フイルム形成性重合体を形成する液体コーティング組成物の蒸発生成物または反応生成物を含む除去可能な保護コーティング; を含み、そして 該除去可能な保護コーティングはスペーサー材料を本質的に有しない、 コーティングされた物品。」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点;本願発明では、機能性コーティングが、低放射率コーティング、太陽エネルギー反射性または吸収性コーティングおよび熱赤外線反射性または吸収性コーティングおよびそれらの組み合わせからなる群から選ばれ、かつ、金属酸化物層と、金属合金酸化物層と、赤外線反射性金属フイルムとを含む多重層コーティングを含むのに対し、引用発明では、機能膜は、そのような特定がされていない点。 5.判断 そこで、上記相違点を検討すると、 ガラス製品に各種機能を付与するための表面を覆うコーティングを、赤外線反射性のものとすること及び金属酸化物層、金属合金酸化物層等の多層とすることは、何れも本願出願前周知の技術(例えば、特開平10-264289号公報、特開平8-268733号公報、国際公開第97/31872号参照)であり、ガラス製品の用途等に応じて当業者が設計上適宜になす程度のことと認められること、 また、保護膜を用いて運搬中等におけるガラス製品を保護する引用発明の技術によって、引用例に例示されたフラットパネルディスプレイ用ガラス基板やブラウン管用ガラス以外にも様々な機能膜が形成されたガラス製品を同様に保護することができることは、当業者が容易に想到しうる事項であるので、 引用発明において、上記周知の技術を採用し、上記相違点の本願発明のようになすことは、当業者が容易になし得たものである。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-12-03 |
結審通知日 | 2012-12-04 |
審決日 | 2012-12-17 |
出願番号 | 特願2001-508275(P2001-508275) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B32B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 加藤 浩、山本 昌広 |
特許庁審判長 |
鳥居 稔 |
特許庁審判官 |
河原 英雄 栗林 敏彦 |
発明の名称 | 除去可能な保護コーティングを有する光透過性及び(又は)コーティングされた物品 |
代理人 | 浅村 皓 |
代理人 | 安藤 克則 |
代理人 | 上村 陽一郎 |
代理人 | 浅村 肇 |