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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03H 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H03H |
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管理番号 | 1273783 |
審判番号 | 不服2011-23910 |
総通号数 | 162 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-06-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-11-07 |
確定日 | 2013-05-07 |
事件の表示 | 特願2006- 23773「振動子用台座の良否判定方法及び水晶振動子の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月16日出願公開、特開2007-208551〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成18年1月31日の特許出願であって、平成23年4月15日付けで拒絶理由の通知がなされ、同年6月17日付けで手続補正書の提出がなされ、同年7月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年11月7日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書の提出がなされたものである。 第2 平成23年11月7日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成23年11月7日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正内容 平成23年11月7日付けの手続補正(以下,「本件補正」という)は、本件補正前の平成23年6月17日付け手続補正書により補正された請求項の内容を、 「【請求項1】 底面から一対のリード線が導出した水晶振動子と、 前記水晶振動子の底面に設けられ、前記水晶振動子の底面に対向する上面の少なくとも一箇所から上方に延びる1あるいは1以上の突起を有する台座と、を有する台座付表面実装用水晶振動子の製造方法であって、 該製造方法が; 成形材料を金型内で射出成形して前記台座を形成する工程と、 各該1あるいは1以上の突起が前記金型の形状に倣った形状に形成されていれば良品と判定し、また、各前記1あるいは1以上の突起が前記金型の形状に倣った形状に形成されていなければ不良品と判定する工程と、 前記水晶振動子の前記底面に前記判定工程で良品と判定された台座を装着する工程と、 を有する台座付表面実装用水晶振動子の製造方法。 【請求項2】 前記金型の形状に倣った前記突起の形状が、上面が平坦面であり、かつ該上面が前記台座の前記上面に平行な面である請求項1に記載の台座付表面実装用水晶振動子の製造方法。」 から、 「【請求項1】 底面から一対のリード線が導出した水晶振動子と、 前記水晶振動子の底面に設けられ、前記水晶振動子の底面に対向する上面の少なくとも一箇所から上方に延びる1あるいは1以上の突起を有し、連続性を有する液晶ポリマーからなる台座と、を有する台座付表面実装用水晶振動子の製造方法であって、 該製造方法が; 成形材料である液晶ポリマーを金型内で射出成形して前記台座を形成する工程と、 各該1あるいは1以上の突起が、上面が平坦面であり、かつ該上面が前記台座の前記上面に平行な面に形成されている場合には、前記液晶ポリマーの直鎖が連続性を有するとして良品と判定し、また、各前記1あるいは1以上の突起が、山状に形成されている場合には、前記液晶ポリマーの直鎖が不連続性であるとして不良品と判定する工程と、 前記水晶振動子の前記底面に前記判定工程で良品と判定された台座を装着する工程と、 を有する台座付表面実装用水晶振動子の製造方法。」 に、変更する補正を含むものである。 2.補正の適否 上記補正は、補正前の請求項2において、成形材料を「液晶ポリマー」に限定し、良品の判定内容を「液晶ポリマーの直鎖が連続性を有するとして良品と判定」に限定し、不良品の判定内容を「液晶ポリマーの直鎖が不連続性であるとして不良品と判定」に限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の上記請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 3.引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-89944号公報(以下、「引用文献」という)には、下記の事項が記載されている。 (あ)「【0013】 【実施例】本発明に係る電子素子搭載体の製造方法、製造装置およびその端子板構造について実施例を挙げ、添付の図面を参照して以下に説明する。 【0014】図1において、参照符号20は、圧電振動装置を示し、この圧電振動装置20は、本実施例に係る製造方法により製造される電子素子搭載体である台座22と、電子素子である水晶振動子24とを備える。台座22は、電気絶縁材料製台座本体26と、この台座本体26に一部が埋設される二つの金属端子28とを備えるとともに、この金属端子28は、水晶振動子24のリード線(導出部)30に接続される端子板部32と、台座本体26側に折り曲げられる端子片部34a、34bとから構成される。」 (い)「【0016】台座本体26は、エポキシ等の熱硬化性樹脂材料で成形されており、中央部に開口部が設けられた略矩形状を有するとともに、その両側部に端子片部34a、34bに対応しかつこの端子片部34a、34bの幅員よりも所定の寸法だけ大きな幅員を有する溝部40a、40bが二つずつ設けられる。具体的には、端子片部34a、34bの幅員が1.0mmに対して溝部40a、40bの幅員が1.5mmに設定されている。台座本体26の表面実装側の面(底面)には、端子片部34a、34bをこの台座本体26の両側部から内側に指向しかつ前記台座本体26の肉厚方向内方に傾斜して折曲させるための傾斜壁面42a、42bが設けられている(図2参照)。 【0017】図3には、台座22を製造するための製造装置50が示されている。この製造装置50を構成する竪型射出成形機52は、下型54と上型56とを備え、この上型56はダイプレート58を介して昇降自在である。下型54と上型56とにより、複数の台座本体26を同時に成形可能なキャビテイ(図示せず)が形成される。この上型56に、例えばインラインスクリュー式射出機構60が連結されており、この射出機構60には、ホッパー62に供給されている成形材料がリニアフィーダ64を介して送られてくる。」 (う)「【0021】図3に示すように、金属帯状体70の両端が送り出しローラ72と巻取りローラ74とに係着された状態で、この金属帯状体70が竪型射出成形機52に対応して搬送され、所定の数の金属端子部位28aが下型54と上型56に対して位置決めされる。そこで、ダイプレート58を介して上型56が下降され、この上型56と下型54と金属帯状体70とによりキャビテイ(図示せず)が形成される。 【0022】このキャビテイには、ホッパー62に供給されている成形材料が射出機構60を介して所定の温度まで加熱された状態で充填され、所定時間経過後に複数の金属端子部位28aの一部を埋設して所定数の台座本体26が一体成形される(図4参照)。ここで、矢印B方向に配列される台座本体26には、湯口部分および湯道部分に対応して硬化した不要樹脂部分26aが設けられており、この不要樹脂部分26aは、後に台座本体26から分離される。 【0023】次いで、上型56が上昇されて下型54から型開きされ、金属帯状体70が所定の距離だけ矢印A方向に搬送され、この金属帯状体70の他の部位、すなわち新たな複数の金属端子部位28aの一部を埋設して台座本体26が成形される。台座本体26の成形終了後に金属端子部位28aと連結部位76との境界部分が切断され、この部分が端子片部34a、34bとして台座本体26の溝部40a、40bに対応して折り曲げられる。その際、二つの突起部位80が台座本体26の位置決め機能を有する。 【0024】次に、突起部位80に保持された状態で、台座本体26に水晶振動子24を装填すれば、金属帯状体70に配列された状態で圧電振動装置20の組み立て作業が遂行される。そして、圧電振動装置20自体に押圧力を付与すれば、台座本体26の端部に埋設されている突起部位80がこの台座本体26から容易に離脱し、前記圧電振動装置20は、金属帯状体70から取り出されることになる。金属帯状体70から取り出された圧電振動装置20は、プリント基板90の表面に半田を介して表面実装される。」 (え)図1には、一対のリード線が底側から導出された水晶振動子24と、上面の各四隅に突起が形成された台座22と、突起が形成された台座22の上面に水晶振動子24の底面を装着することを示す線が記載され、該水晶振動子24は底面を有していることは明らかであるから、引用文献には「底面から一対のリード線が導出した水晶振動子」、「水晶振動子の底面に設けられ、前記水晶振動子の底面に対向する上面から上方に延びる4つの突起を有する台座」が記載されているといえる。 よって、上記(あ)乃至(え)及び関連図面の記載から、引用文献には、実質的に下記の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。 「底面から一対のリード線が導出した水晶振動子と、 前記水晶振動子の底面に設けられ、前記水晶振動子の底面に対向する上面から上方に延びる4つの突起を有する台座と、を有する台座付表面実装用水晶振動子の製造方法であって、 該製造方法が; キャビティに成形材料を充填し射出成形して前記台座を形成する工程と、 前記水晶振動子の前記底面に台座を装着する工程と、 を有する台座付表面実装用水晶振動子の製造方法。」 4.本件補正発明と引用発明との対比 引用発明の「キャビティ」は、成形材料が充填されて台座を形成するものであるから、本件補正発明の「金型」に相当している。 そうすると、本件補正発明と引用発明とは、下記の点で一致し、また相違する。 (一致点) 「底面から一対のリード線が導出した水晶振動子と、 前記水晶振動子の底面に設けられ、前記水晶振動子の底面に対向する上面の少なくとも一箇所から上方に延びる1以上の突起を有する台座と、を有する台座付表面実装用水晶振動子の製造方法であって、 該製造方法が; 成形材料を金型内で射出成形して前記台座を形成する工程と、 前記水晶振動子の前記底面に台座を装着する工程と、 を有する台座付表面実装用水晶振動子の製造方法。」 (相違点A) 本件補正発明では、成形材料が「液晶ポリマー」であり、形成された台座は「連続性を有する液晶ポリマーからなる」ものであるのに対し、引用発明の成形材料は熱硬化性樹脂材料である点。 (相違点B) 本件補正発明では、製造方法に「各該1あるいは1以上の突起が、上面が平坦面であり、かつ該上面が前記台座の前記上面に平行な面に形成されている場合には、前記液晶ポリマーの直鎖が連続性を有するとして良品と判定し、また、各前記1あるいは1以上の突起が、山状に形成されている場合には、前記液晶ポリマーの直鎖が不連続性であるとして不良品と判定する工程」が含まれているのに対し、引用発明では、製造方法に射出成形された成形物の良否を判定する工程が含まれていない点。 (相違点C) 本件補正発明では、「判定工程で良品と判定された台座」に水晶振動子を装着しているのに対し、引用発明ではそのような良品の判定を行わずに水晶振動子を台座に装着している点。 5.当審の判断 (1)相違点Aについて 水晶振動子のような電子部品の分野において、電子部品を装着するベースの射出成形用材料として液晶ポリマーを用いることは、原査定の拒絶理由において引用された特開平11-31939号公報(段落【0024】には、ベースが液晶ポリマーを射出成形してたものであることが記載されている)だけでなく、特開平7-162258号公報(段落【0015】には、水晶片を保持する絶縁性基板が液晶ポリマー製であることが記載されている)に記載されているように周知技術にすぎないから、引用発明において、台座を形成する射出成形の材料として液晶ポリマーを用いることには、格別の困難性は認められない。 また、液晶ポリマーは、高強度及び高耐熱という特徴により電子部品の分野に利用されており、これらの特徴は、液晶ポリマーが直鎖の「連続性を有する」構造となっていることに起因している。 よって、引用発明において、高強度及び高耐熱の台座を実現するために、成形材料を「液晶ポリマー」とし、形成された台座を直鎖が「連続性を有する液晶ポリマーからなる」ものとすること、すなわち、相違点Aに係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が格別困難なくなし得たものである。 (2)相違点Bについて 射出成形の分野では、成形時に材料が合流すると強度の低下や形状不良の原因となるウェルドの発生が問題となっており、成形材料が高強度の特徴を有する液晶ポリマーであっても、同様にウェルドが強度の低下や形状不良の原因となることは、例えば、特開2000-53849号公報(段落【0002】?【0003】には、電気電子部品に用いられてい液晶ポリマーの射出成形は、ウェルド強度が低いことが記載されている)、特開2003-347447号公報(段落【0012】には、樹脂会合部が隆起してウェルドが形成されることが記載されている)に記載されているように周知な技術事項である。そして、液晶ポリマーは、直鎖が連続性を有する構造になっていることに起因して強度が高いので、ウェルド部分における強度の低下は、その部分で成形材料が合流し直鎖が不連続になることが原因であると認められる。 また、射出成形の分野では、成形品の画像処理による外観検査により良品と不良品の分別を行うことも、特開平6-160066号公報、特開平4-177107号公報に記載されているように周知技術である。 してみると、射出形成を行う引用発明において、基準となる金型に基づく形と成形品の外形を画像処理により比較を行い、ウェルドの発生により成形品が形状不良となっているものを判定して成形品の良否の判定を行うことは、当業者が容易に想到し得たものである。そして、この判定では台座の上面の4つの突起の外形も比較対象に含まれ、該各突起が金型に基づく形と同様に上面が平坦面であり、かつ該上面が台座の上面に平行な面に形成されていることは良品と判定されるべき条件であり、また該各突起が、金型に基づく形と異なる、例えば山状に形成されている場合には不良品と判定されることになる。また、良品や不良品の判定結果の理由を、液晶ポリマーの直鎖の連続性の有無として表現するか、液晶ポリマーの直鎖の不連続により発生するウェルドの有無として表現するか等、どのような表現とするかは、適宜設定する設計的事項に過ぎない。 よって、引用発明の製造方法に周知技術を採用して、「各該1あるいは1以上の突起が、上面が平坦面であり、かつ該上面が前記台座の前記上面に平行な面に形成されている場合には、前記液晶ポリマーの直鎖が連続性を有するとして良品と判定し、また、各前記1あるいは1以上の突起が、山状に形成されている場合には、前記液晶ポリマーの直鎖が不連続性であるとして不良品と判定する工程」が含まれるようにすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 (3)相違点Cについて 上記5.(2)に記載したように、射出成形の分野では、成形品の画像処理による外観検査により良品と不良品の分別を行うことは周知技術であるから、引用発明において、台座を形成する工程の後に「判定工程」を設けて、「判定工程」で良品と判定された台座に対して水晶振動子の装着するようにすることに、格別の困難性は認められない。 よって、引用発明において、「『判定工程で良品と判定された台座』に水晶振動子を装着」することは、上記周知技術から当業者が容易になし得たものである。 (4)本件補正発明の作用効果について また、本件補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 6.むすび よって、本件補正発明は、引用発明及び上記周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 補正却下の決定を踏まえた検討 1.本願発明 平成23年11月7日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願に係る発明は、平成23年6月17日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 底面から一対のリード線が導出した水晶振動子と、 前記水晶振動子の底面に設けられ、前記水晶振動子の底面に対向する上面の少なくとも一箇所から上方に延びる1あるいは1以上の突起を有する台座と、を有する台座付表面実装用水晶振動子の製造方法であって、 該製造方法が; 成形材料を金型内で射出成形して前記台座を形成する工程と、 各該1あるいは1以上の突起が前記金型の形状に倣った形状に形成されていれば良品と判定し、また、各前記1あるいは1以上の突起が前記金型の形状に倣った形状に形成されていなければ不良品と判定する工程と、 前記水晶振動子の前記底面に前記判定工程で良品と判定された台座を装着する工程と、 を有する台座付表面実装用水晶振動子の製造方法。」 2.引用文献 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献の記載事項及び引用発明は、上記第2 3.に記載したとおりである。 3.対比・判断 前記本件補正発明は、平成23年6月17日付け手続補正書に記載された請求項1に従属する請求項2に対して、上記第2 2.で検討した限定を含めたものでるから、本願発明は、前記本件補正発明から上記手続補正書の請求項2による限定と上記第2 2.で検討した限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要素を全て含み、さらに特定の点に限定を施したものに相当する本件補正発明が、上記第2 5.に記載したとおり、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明及び上記周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-01-21 |
結審通知日 | 2013-02-12 |
審決日 | 2013-02-26 |
出願番号 | 特願2006-23773(P2006-23773) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H03H)
P 1 8・ 575- Z (H03H) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 橋本 和志 |
特許庁審判長 |
吉村 博之 |
特許庁審判官 |
江口 能弘 飯田 清司 |
発明の名称 | 振動子用台座の良否判定方法及び水晶振動子の製造方法 |
代理人 | 大川 晃 |