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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N |
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管理番号 | 1274231 |
審判番号 | 不服2010-27979 |
総通号数 | 163 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-07-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-12-10 |
確定日 | 2013-05-15 |
事件の表示 | 特願2001-564463「一つの装置から別の装置へデータを転送する装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 9月 7日国際公開、WO01/65693、平成15年 9月 2日国内公表、特表2003-526244〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯、本願発明 本願は、平成13年2月21日(パリ条約による優先権主張2000年3月3日、シンガポール)を国際出願日とする出願であって、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に係る各発明は、平成22年7月9日付け及び平成22年12月10日付け手続き補正書により補正された明細書、特許請求の範囲および図面の記載からみて、請求項1ないし8にそれぞれ記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明は次のとおりのものである。 「メモリと転送手段とを有する装置であり、上記メモリが当該装置の動作上のデータを記憶し、上記転送手段が上記データを外部装置へ転送する装置であって: 赤外線だけでなく可視光をも出射するタイプの1つの発光ダイオード(LED);及び、 上記可視光によって表示される当該装置のステータス情報を示すスタティック光を出射するために上記LEDをオンし、又は、上記LEDによって出射される前記可視光及び赤外線を上記記憶されたデータを用いて変調して上記記憶されたデータを変調された赤外線ストリームとして上記外部装置へ転送し、かつ前記可視光の強さを減少させデータ転送中であることを示すようにされた制御手段; を有することを特徴とする装置。」 2.引用例 これに対して、当審における拒絶の理由で引用した特開平10-215491号公報(以下「引用例1」という。)には、次のとおりの記載がなされている。 (a)【発明が解決しようとする課題】 上記従来技術においては、電子機器と外部とを繋ぐ信号線、バス等のインターフェースが必要である。また、ボタン、スイッチ等を用いて特別な操作を行う必要がある。したがって、装置の複雑化やコストアップ等の問題点があった。 本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、特別なインターフェースを電子機器の外面に設けることなく、また特別な操作を行うことなく、電子機器の内部状態を外部へ伝えることができる電子機器の状態解析方法および電子機器状態解析装置を提供することを目的とする。(段落【0004】、【0005】) (b)本実施形態に係る電子機器状態解析装置は、図1に示すように、電子機器1の内部に、電子機器の状態を表す複数の情報を集めて管理し、これらの情報を電子機器の外部へ通知するための通知情報としてまとめる機能を有する機器状態情報作成手段2と、通知情報を高周波の変調信号に変換する機能を有する変調手段3と、変調信号に基づいてLEDを駆動させる機能を有するLED駆動手段4と、電源表示LED5とが設けられており、変調信号に基づきLED駆動手段4によって駆動させられる電源表示LED5からは、変調光が発せられる。そして、電子機器1の外部には、電源表示LED5から発せられる変調光を受光して、その変調光を解析することによって、電子機器の内部の状態を知ることができる機能を有する受光解析手段6が設けられている。 次に、以上のように構成された電子機器状態解析装置の具体的な動作について説明する。 電子機器1の電源が入れられる(電源がONとなる)と、電子機器1の予め設定された部分の状態に関する情報を、機器状態情報作成手段2が収集し、外部へ通知するための形式を持つ一連の通知情報にまとめる。このときの「予め設定された部分の状態に関する情報」としては、例えば、「CPUがどんなモードで動作しているか」、「どのプログラムモジュールが動作中か」、あるいは、「定期的な自己診断プログラムを動作させた後の各部分の診断結果がどうであるか」等の情報があげられ、機器状態情報作成手段2は、これらの情報を集めて一連の通知情報としてまとめる。なお、この「予め設定された部分の状態に関する情報」は、上記のものに限定されるものではなく、ユーザの必要に応じて、機器の保守または品質確認に必要な情報を得られるように、機器毎に設計可能である。(段落【0016】、【0017】) (c)次に、変調手段3は、以上のようにして作成された通知情報を受け取り、変調を行う。つまり、通知情報を変調信号に変換させる。 次に、LED駆動手段4は、変調手段3で作成された変調信号を受け取り、その変調信号に基づいて、電源表示LED5を駆動させる。そして、電源表示LED5からは、変調信号に対応した変調光が発せられる。 電源表示LED5は、本来電源がONになっていることを表すLEDであるが、上記のようにして、単に電源ONだけを示すのではなく、電子機器の内部状態を外部へ伝える機能をも有することとなる。 ここで、一般ユーザには、この電源表示LED5はただ単に光っているだけに見えるようにした方が望ましい。変調光の変化が目で見えるようでは、電子機器の内部で何か問題があるかのように判断するかもしれないからである。 そこで、電源表示LED5がただ単に光っているだけに見えるようにするためには、変調手段3における通知情報の変調の方法に配慮が必要となる。まず十分高い周波数で変調することが必要である。さらに、エネルギーが一定値となる変調方式を取るようにすることが必要である。ここで「エネルギーが一定値となる変調方式」とは、一定の期間(単位時間)内において、電源表示LED5に供給される電気エネルギーが一定となるような変調方式をいう。このようにすれば、電源表示LED5が一定の光の強さで発光しているようにしかユーザの目には見えないので、望ましい状態を得ることができる。 なお、LED駆動手段4によって駆動させるLEDとしては、本来は他の変化の少ない状態を表すために設けられている何らかのLEDを用いるが、最も使用する可能性の高いものは電源がONになっていることを示すLED(電源表示LED5)であると思われるため、本実施形態においては、それを例にあげて説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、他の目的に用いられているLEDをLED駆動手段4によって駆動させて、電子機器の内部状態を外部へ伝えるように構成してもよい。(段落【0018】ないし【0022】) (d)次に、電子機器の外部に設けられている受光解析手段6は、電源表示LED5が発光する変調光を受光して、その変調光(変調されている情報)を解析する。その結果、電子機器1の内部の状態を知ることが可能となる。ここで、受光解析手段6は、例えば赤外線受光素子等の受光素子を用いて構成され、受光素子で受光した変調光を電気的信号に変換する。そして、変調されていた信号を復調回路で元に戻すことによって、解析結果を得ることができる。なお、受光解析手段6は、この構成に限定されるものではない。 電子機器状態解析装置を構成する受光解析手段6は、電子機器1に関するメンテナンスサービスマン等が携帯し保守または修理に用いたり、製造段階や修理工程での品質確認または分析等で電子機器の内部状態を確認するために用いられる。(段落【0023】、【0024】) 引用例1の上記各記載を参酌すると、引用例1には、 「電子機器1であって、 その内部には、電子機器の状態を表す複数の情報を集めて管理し、これらの情報を電子機器の外部へ通知するための通知情報としてまとめる機能を有する機器状態情報作成手段2と、通知情報を高周波の変調信号に変換する機能を有する変調手段3と、変調信号に基づいてLEDを駆動させる機能を有するLED駆動手段4と、電源表示LED5とが設けられており、 電子機器1の電源が入れられる(電源がONとなる)と、電子機器1の予め設定された部分の状態に関する情報、例えば、「CPUがどんなモードで動作しているか」、「どのプログラムモジュールが動作中か」、あるいは、「定期的な自己診断プログラムを動作させた後の各部分の診断結果がどうであるか」等の情報を、機器状態情報作成手段2が収集し、外部へ通知するための形式を持つ一連の通知情報にまとめ、 次に、変調手段3は、以上のようにして作成された通知情報を受け取り、変調を行い、つまり、通知情報を変調信号に変換させ、 次に、LED駆動手段4は、変調手段3で作成された変調信号を受け取り、その変調信号に基づいて、本来、電源がONになっていることを表すLEDである電源表示LED5を駆動させ、電源表示LED5からは、変調信号に対応した変調光が、電子機器の外部に設けられ、赤外線受光素子等の受光素子を用いて構成され、受光素子で受光した変調光を電気的信号に変換する受光解析手段6に向けて発せられることを特徴とする電子機器。」 の発明が記載されているものと認められる。 3.対比 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)と引用例1に記載された発明(以下「引用発明」という。)とを対比すると次のことが認められる。 (イ)本願発明は、メモリと転送手段とを有する装置であり、上記メモリが当該装置の動作上のデータを記憶し、上記転送手段が上記データを外部装置へ転送する装置であるところ、 引用発明では、電源が入れられる(電源がONとなる)と、電子機器1の予め設定された部分の状態に関する情報、例えば、「CPUがどんなモードで動作しているか」、「どのプログラムモジュールが動作中か」、あるいは、「定期的な自己診断プログラムを動作させた後の各部分の診断結果がどうであるか」等の情報を集めて管理し、これらの情報を電子機器の外部へ通知するための通知情報としてまとめているというのであるから、引用発明も上記通知情報を記憶する適宜のメモリを有していることは明らかであり、また、上記通知情報を電子機器の外部へ通知していることから、引用発明が転送手段を有していることは明らかであり、 さらに、上記「CPUがどんなモードで動作しているか」、「どのプログラムモジュールが動作中か」、あるいは、「定期的な自己診断プログラムを動作させた後の各部分の診断結果がどうであるか」等の電子機器1の予め設定された部分の状態に関する情報は、本願発明でいう「装置の動作上のデータ」といえることから、 引用発明と本願発明とは、いずれも「メモリと転送手段とを有する装置であり、上記メモリが当該装置の動作上のデータを記憶し、上記転送手段が上記データを外部装置へ転送する装置」であるといえる。 (ロ)本願発明は、赤外線だけでなく可視光をも出射するタイプの1つの発光ダイオード(LED)を有するところ、 引用発明は、電源がONになっていることを表すLEDである電源表示LED5を有しており、当該電源表示LED5からは、変調信号に対応した変調光が、電子機器の外部に設けられた、赤外線受光素子等の受光素子を用いて構成された受光解析手段6に向けて出射され、前記受光解析手段6は受光素子で受光した変調光を電気的信号に変換していることからすると、前記電源表示LED5は可視光と赤外線の両方を出射するLED(本願発明でいう「赤外線だけでなく可視光をも出射するタイプの」LED)であるといえる。 もっとも、上記発光ダイオード(LED)が、本願発明では、「1つの」発光ダイオードであるのに対し、引用発明では、1つの発光ダイオードであるとはしていない点で相違する。 (ハ)本願発明は、上記可視光によって表示される当該装置のステータス情報を示すスタティック光を出射するために上記LEDをオンし、又は、上記LEDによって出射される前記可視光及び赤外線を上記記憶されたデータを用いて変調して上記記憶されたデータを変調された赤外線ストリームとして上記外部装置へ転送し、かつ前記可視光の強さを減少させデータ転送中であることを示すようにされた制御手段を有するところ、 引用発明の電源表示LED5は、電子機器の電源がONになっていること(本願発明でいう「装置のステータス情報」)を表すLEDであり、電子機器の電源ON状態を通常のようにスタティックな出射光で示すものであると解され、また、電源表示LED5は、上記のとおり、赤外線だけでなく可視光をも出射するタイプのLEDであって、変調手段3は、作成された通知情報を受け取り、変調を行い、つまり、通知情報を変調信号に変換させ、次に、LED駆動手段4は、変調手段3で作成された変調信号を受け取り、その変調信号に基づいて、本来、電源がONになっていることを表すLEDである電源表示LED5を駆動させ、電源表示LED5からは、変調信号に対応した変調光が、電子機器の外部に設けられた受光解析手段6に向けて発せられることから、引用発明は、本願発明と同様「上記可視光によって表示される当該装置のステータス情報を示すスタティック光を出射するために上記LEDをオンし、又は、上記LEDによって出射される前記可視光及び赤外線を上記記憶されたデータを用いて変調して上記記憶されたデータを変調された赤外線ストリームとして上記外部装置へ転送」する制御手段を有するものであるといえ、 また、引用発明でも、上記通知情報を外部に伝える際に、上記電源表示LED5のスタティックな出射光が上記変調信号に対応した変調光(点滅光)となるのであり、上記変調光として出射される可視光の強さ(平均レベル)が、上記のスタティックに出射されている可視光の強さに比して減少したものとなることは、当業者であれば、自然に理解できることであることから、当該変調光に含まれる可視光について、引用発明は、本願発明と同様「可視光の強さを減少させデータ転送中であることを示すようにされ」ていることは明らかである。 そうすると、引用発明と本願発明とは、いずれも「上記可視光によって表示される当該装置のステータス情報を示すスタティック光を出射するために上記LEDをオンし、又は、上記LEDによって出射される前記可視光及び赤外線を上記記憶されたデータを用いて変調して上記記憶されたデータを変調された赤外線ストリームとして上記外部装置へ転送し、かつ前記可視光の強さを減少させデータ転送中であることを示すようにされた制御手段を有する」といえる。 なお、引用発明が、上記のように可視光の強さを減少させデータ転送中であることを示すようにされている点について、審判請求人は、平成24年8月29日付け意見書で、引用例1の装置は、可視光の強さを減少させデータ転送中であることを示すようにされていることは明らかでない旨主張しているが、引用例1の上記記載(c)の「ここで、一般ユーザには、この電源表示LED5はただ単に光っているだけに見えるようにした方が望ましい。変調光の変化が目で見えるようでは、電子機器の内部で何か問題があるかのように判断するかもしれないからである。 そこで、電源表示LED5がただ単に光っているだけに見えるようにするためには、変調手段3における通知情報の変調の方法に配慮が必要となる。まず十分高い周波数で変調することが必要である。さらに、エネルギーが一定値となる変調方式を取るようにすることが必要である。ここで「エネルギーが一定値となる変調方式」とは、一定の期間(単位時間)内において、電源表示LED5に供給される電気エネルギーが一定となるような変調方式をいう。このようにすれば、電源表示LED5が一定の光の強さで発光しているようにしかユーザの目には見えないので、望ましい状態を得ることができる。」(下線は当審で付した。)との記載からすると、引用発明では、電源表示LED5からの変調光の変化が目で見えるようでは、電子機器の内部で何か問題があるかのように判断するかもしれないという課題を解決するために、変調手段3における通知情報の変調の方法に配慮が必要であり、まず十分高い周波数で変調することが必要であり、さらに、エネルギーが一定値となる変調方式を取るようにすることが必要であるとしており、 引用発明では、前記電源表示LED5から変調光として出射される可視光について、十分高い周波数で変調し、さらに、エネルギーが一定値となる変調方式(単位時間内においてエネルギーが一定値となるような変調方式)を採用し、変調光の変化が目に見えないようにした、すなわち、変調による時間的変化(点滅)によるちらつきが目で見えないようにしたものであり、そのようなものであるからといって、前記変調光として出射される可視光の強さ(平均レベル)が、上記のスタティックに出射されている可視光の強さに比して減少されていないとは認められず、請求人の意見書での主張は採用できない。 以上の対比結果によれば、本願発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりであると認めることができる。 [一致点] 両者は、いずれも 「メモリと転送手段とを有する装置であり、上記メモリが当該装置の動作上のデータを記憶し、上記転送手段が上記データを外部装置へ転送する装置であって: 赤外線だけでなく可視光をも出射するタイプの発光ダイオード(LED);及び、 上記可視光によって表示される当該装置のステータス情報を示すスタティック光を出射するために上記LEDをオンし、又は、上記LEDによって出射される前記可視光及び赤外線を上記記憶されたデータを用いて変調して上記記憶されたデータを変調された赤外線ストリームとして上記外部装置へ転送し、かつ前記可視光の強さを減少させデータ転送中であることを示すようにされた制御手段; を有することを特徴とする装置。」である点。 [相違点] 赤外線だけでなく可視光をも出射するタイプの発光ダイオード(LED)が、本願発明では、「1つの」発光ダイオードであるのに対し、引用発明では、1つの発光ダイオードであるとはしていない点。 4.判断 そこで上記相違点について検討する。 赤外線だけでなく可視光をも出射するタイプの1つの発光ダイオード(LED)(赤外線および可視光を出射する一つの活性層(発光層)を有する発光ダイオード)は、当審における拒絶理由で引用した特開平8-335718号公報、実願平3-11883号(実開平4-109554号)のマイクロフィルム等に開示されるように周知のものであり、このような周知のLEDを引用発明における上記赤外線だけでなく可視光をも出射するタイプの発光ダイオード(LED)として採用することは当業者が容易になし得たことである。 また、本願発明の効果についてみても、上記構成の採用に伴って当業者が当然に予測し得る程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとはいえない。 5.むすび 以上のとおり、請求項1に係る本願発明は、引用例に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は他の請求項に係る発明について特に検討するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-12-12 |
結審通知日 | 2012-12-18 |
審決日 | 2012-12-25 |
出願番号 | 特願2001-564463(P2001-564463) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大橋 達也、益戸 宏 |
特許庁審判長 |
藤内 光武 |
特許庁審判官 |
松尾 淳一 小池 正彦 |
発明の名称 | 一つの装置から別の装置へデータを転送する装置及び方法 |
代理人 | 伊東 忠彦 |