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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1274238
審判番号 不服2011-15839  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-22 
確定日 2013-05-15 
事件の表示 特願2008-508094「血圧データを管理、記録及び/又は評価するシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月 2日国際公開、WO2006/114156、平成20年11月13日国内公表、特表2008-539481〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、2006年3月10日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2005年4月28日 ドイツ)を国際出願日とする出願であって、平成22年10月14日付けの拒絶理由通知に対して平成23年1月18日付けで手続補正がなされたが、同年3月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月22日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、平成23年12月22日付けの審尋に対し、平成24年6月27日付けで回答書が提出されたものである。


第2 本願発明

1 本願発明

本願の請求項1ないし15に係る発明は、平成23年7月22日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

「血圧計を用いて取得した、複数の患者についての血圧データを処理するためのシステムであって、
各患者の血圧データが別々に記憶される中央データサーバと、
当該中央データサーバに設けられ、各患者の血圧データのための個別記憶領域と、
当該個別記憶領域にデータを入力するとともに、当該個別記憶領域からデータを読み出すネットワーク接続と、
当該個別記憶領域に対応し、患者の血圧データを取得する血圧計のための固有のデバイス識別コードを有し、アクセスが試みられた場合に端末から転送されるアクセスコードと、当該個別記憶領域に対応した固有のアクセスコードとを比較することにより、当該記憶領域へのアクセスを制御することのできるアクセス制御装置と、
前記個別記憶領域に記憶された血圧データセットを評価することのできる評価ユニットと、
前記個別記憶領域に対応する料金記憶装置と、
当該評価ユニットにアクセスが試みられた場合、及び、当該評価ユニットにより評価が準備された場合のうち少なくとも1つの場合に、前記料金記憶装置の残高を減少させる料金課金装置とを備えることを特徴とするシステム。」


2 引用例、周知例及びその記載事項

(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2003-93355号公報(平成15年4月2日公開、以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

「【0074】図1は、第1の実施の形態における生体情報測定システムの構成を示す図である。本実施の形態における生体情報測定システムは、生体情報としての血圧値を測定し管理する。」

「【0076】ユーザは、血圧計1を用いて血圧値の測定を行なう。血圧計1で得られた血圧値の情報は、PC3に読込まれる。また、メモリカード2に書込まれカードリーダ4を介してPC3に読込まれてもよい。また、メモリカード2を直接病院等に持込むことも考えられる。血圧計1で得られた血圧値の情報は、PC3からネットワーク5を介して、ホストコンピュータ6に送信され蓄積される。医師等医療関係者は、ドクター用PC7を用いてホストコンピュータ6よりユーザの血圧値の情報を得、診断およびアドヴァイス等を行なう。」

「【0105】図6を参照して、ホストコンピュータ6は、全体の制御を行なう制御部61と、ネットワーク5を介して通信を行なう通信部62と、血圧計1から送信されるユーザの血圧値情報を蓄積する記憶部63とを含む。」

「【0130】画面202に示されるステップにおいて生体情報として血圧および脈拍情報を選択すると、続いてメニュー画面が表示される(画面203)。画面203のメニュー画面にそって、データ送信を選択する。
【0131】続く画面204において、血圧計1の接続の確認が行なわれる。このとき、メモリカード2に書込まれた情報をPC3に読込ませる場合、画面204においては、メモリカード2をカードリーダ4に読取らせたか否かが確認される。
【0132】画面204に示されるステップにおいて血圧計1の接続を確認すると、測定された血圧値等の情報は、血圧計1の通信接続部110より通信部32を介してPC3に読込まれる。PC3では、読込まれた情報に基づいて、送信用のファイルが作成される。なお、送信用のファイルについては、後に具体的な例を挙げ、説明を行なう。
【0133】PC3での情報の読込みが完了すると、画面205において、読込みの完了を通知し、さらに読込んだ血圧値などの情報を表示する。画面205に示されるステップにおいて情報の送信の指示が行なわれると、作成された送信用のファイルをネットワーク5を介してホストコンピュータ6に送信する。
【0134】ホストコンピュータ6への送信が完了すると、画面206でその旨をユーザに通知する。また、PC3は、血圧計1に記憶されている血圧値等の情報を、内部メモリ1011から消去する。
【0135】以上でPC3における処理が終了する。なお図10は、上述の送信用のファイルの具体例を示す図である。図10に示される送信用のファイルは、PC3の制御部31が記憶部35に記憶されているプログラムを実行することによって作成される。
【0136】図10を参照して、送信用のファイルは、端末/カード認識番号等の端末認識用の情報と、利用者氏名、利用者ID、およびパスワード等の利用者特定用の情報と、測定センサ種別、測定日、測定時間、測定場所、測定状況、および音声メモ等の測定に関する情報と、最高血圧、最低血圧、脈拍、および環境値等の測定結果に関する情報と、データ送信時刻等の通信に関する情報とを含む。
【0137】端末/カード認識番号は、血圧計1またはメモリカード2を特定するための番号であり、予めホストコンピュータ6に登録する際に割振られている番号であってもよいし、ユーザが入力する番号であってもよい。
【0138】利用者IDおよびパスワードもまた、利用者を特定するための情報であり、上述の端末/カード認識番号と同様に定められるものであってもよい。」

「【0146】図11は、ドクター用PC7における処理を示すフローチャートである。図11のフローチャートに示される処理は、記憶部75に記憶されているプログラムが制御部71で実行されることで実現される。
【0147】図11を参照して、患者のファイルの閲覧を行なう場合、表示部74にはパスワードの入力画面が表示される。ファイルの閲覧を行なう医師は、割振られているドクターパスワードを入力部73より入力する(S301)。ドクターパスワードは、予め登録された医師等に割振られ、識別するためのパスワードである。
【0148】入力されたパスワードは照会される(S302)。パスワードの照会は、ドクター用PC7で行なわれてもよいし、ホストコンピュータ6にパスワードが送信されて制御部61で行なわれてもよい。
【0149】パスワードが照合すると(S302で”YES”)、続いて患者のカルテ番号を入力する(S303)。入力された患者のカルテ番号はホストコンピュータ6に送信され、カルテ番号に基づいて、ホストコンピュータ6の記憶部63が検索される。
【0150】該当する患者のファイルがホストコンピュータ6の記憶部63から抽出されると(S304で”YES”)、当該ファイルはネットワーク5を介してドクター用PC7に送信され、表示部74に表示される(S305)。
【0151】医師は表示された当該ファイルを閲覧し、診断結果や当該患者に対するアドヴァイスを入力する(S306)。また、当該ファイルに患者からの質問等が音声によるデータで入力されている場合、その質問に対する返答が入力されてもよい。また、入力部73がマイクロフォン等を備え、音声による入力も可能な場合、ステップS306において、医師は音声による入力を行なってもよい。
【0152】ステップS306における入力が終了すると、新たに入力された情報がファイルに追記され、更新される(S307)。更新されたファイルは、ネットワーク5を介してホストコンピュータ6に送信され、記憶される。」

「【0155】以下に図12を用いて、PC3における情報の閲覧処理の説明を行なう。図12を参照して、始めに図9に示される表示画面と同様に、初期画面(画面201)が表示部34に表示され、続く画面202においてサービスの選択を行なう。さらに続くメニュー画面(画面203)において、アドヴァイス送信を選択する。
【0156】画面203に示されるステップでアドヴァイスの受信を選択すると、ユーザのIDおよびパスワードを入力するための画面(画面401)が表示される。ここで入力するIDおよびパスワードは、図10に示される送信用のファイルに記載される利用者IDおよびパスワードと同様の情報である。
【0157】画面401に示されるステップで入力されたIDおよびパスワードは、PC3の制御部31で照会されてもよいし、ネットワーク5を介してホストコンピュータ6に送信され、ホストコンピュータ6の制御部61で照会されてもよい。IDおよびパスワードが照合されると、IDに基づいて、当該ユーザのファイルがホストコンピュータ6の記憶部63より抽出される。抽出されたファイルより、図11のステップS306において医師から入力され更新された診断結果等の情報が読出され、PC3の表示部34に表示される(画面402)。」


ア 引用例1の「【0074】‥‥‥本実施の形態における生体情報測定システムは、生体情報としての血圧値を測定し管理する。」との記載から、引用例1に記載の発明は、「血圧値を測定し管理する生体情報測定システム」に関するものである。


a 引用例1の「【0076】ユーザは、血圧計1を用いて血圧値の測定を行なう。血圧計1で得られた血圧値の情報は、‥‥‥メモリカード2に書込まれカードリーダ4を介してPC3に読込まれてもよい。‥‥‥血圧計1で得られた血圧値の情報は、PC3からネットワーク5を介して、ホストコンピュータ6に送信され蓄積される。‥‥‥」との記載から、引用例1には、「血圧計1を用いて測定したユーザの血圧値の情報は、メモリカード2を介してPC3に読込まれ、PC3からネットワーク5を介して、ホストコンピュータ6に蓄積される」ことが記載されているということができる。
b ここで、引用例1には、「【0130】‥‥‥生体情報として血圧‥‥‥を選択する‥‥‥【0131】‥‥‥メモリカード2に書込まれた情報をPC3に読込ませる場合、‥‥‥メモリカード2をカードリーダ4に読取らせたか否かが確認される。【0132】‥‥‥PC3では、読込まれた情報に基づいて、送信用のファイルが作成される。‥‥‥【0133】情報の送信の指示が行なわれると、作成された送信用のファイルをネットワーク5を介してホストコンピュータ6に送信する。」と記載されていることから、引用例1には、メモリカード2に書込まれた情報をPC3に読込ませると、「PC3は、読込まれた情報に基づいて、送信用のファイルを作成し、作成された送信用のファイルをネットワーク5を介してホストコンピュータ6に送信する」ことが記載されているということができる。
c そして、「送信用ファイル」について、「【0136】‥‥‥送信用のファイルは、端末/カード認識番号‥‥‥と、‥‥‥利用者ID、およびパスワード‥‥‥と、‥‥‥最高血圧、最低血圧、‥‥‥等の測定結果に関する情報を含む。【0137】端末/カード認識番号は、血圧計1‥‥‥を特定するための番号であり、‥‥‥」との記載から、引用例1には、「血圧計1を特定するための端末/カード認識番号と、IDおよびパスワードと、最高血圧、最低血圧を含む、送信用のファイル」が記載されているということができる。
d したがって、上記a、b、cから、引用例1には、「血圧計1を用いて測定したユーザの血圧値の情報は、メモリカード2を介してPC3に読込まれると、PC3は、読込まれた情報に基づいて、血圧計1を特定するための端末/カード認識番号と、IDおよびパスワードと、最高血圧、最低血圧を含む、送信用のファイルを作成し、作成された送信用のファイルはネットワーク5を介してホストコンピュータ6に蓄積され」ることが記載されているということができる。

ウ 引用例1の「【0105】‥‥‥ホストコンピュータ6は、‥‥‥血圧計1から送信されるユーザの血圧値情報を蓄積する記憶部63とを含む。」との記載から、「ユーザの血圧値の情報」は、「ホストコンピュータ6の記憶部63に蓄積される」ということができる。

エ 引用例1の「【0076】ユーザは、血圧計1を用いて血圧値の測定を行なう。‥‥‥血圧計1で得られた血圧値の情報は、PC3からネットワーク5を介して、ホストコンピュータ6に送信され蓄積される。医師‥‥‥は、ドクター用PC7を用いてホストコンピュータ6よりユーザの血圧値の情報を得、診断‥‥‥を行なう。」との記載、及び「【0146】‥‥‥ドクター用PC7における処理を示す‥‥‥【0147】‥‥‥患者のファイルの閲覧を行なう場合、‥‥‥ファイルの閲覧を行なう医師は、‥‥‥【0148】‥‥‥【0149】‥‥‥患者のカルテ番号を入力する‥‥‥入力された患者のカルテ番号はホストコンピュータ6に送信され、‥‥‥【0150】該当する患者のファイルがホストコンピュータ6の記憶部63から抽出されると‥‥‥、当該ファイルはドクター用PC7に送信され、‥‥‥。【0151】医師は‥‥‥診断結果‥‥‥を入力する‥‥‥【0152】‥‥‥」との記載から、カルテ番号を医師が入力することにより、該当する患者のファイルがホストコンピュータ6の記憶部63から抽出されるものであるから、「ホストコンピュータ6の記憶部63」には、複数の患者のファイルが記憶されているといえ、「ユーザの血圧値の情報」は、「複数の患者の血圧値の情報」と捉えることができる。

オ 引用例1の「【0146】‥‥‥ドクター用PC7における処理を示す‥‥‥【0147】‥‥‥患者のファイルの閲覧を行なう場合、‥‥‥ファイルの閲覧を行なう医師は、‥‥‥【0148】‥‥‥【0149】‥‥‥患者のカルテ番号を入力する‥‥‥入力された患者のカルテ番号はホストコンピュータ6に送信され、‥‥‥【0150】該当する患者のファイルがホストコンピュータ6の記憶部63から抽出されると‥‥‥、当該ファイルはドクター用PC7に送信され、‥‥‥。【0151】医師は‥‥‥診断結果‥‥‥を入力する‥‥‥【0152】‥‥‥入力が終了すると、新たに入力された情報がファイルに追記され、更新される‥‥‥更新されたファイルは、ホストコンピュータ6に‥‥‥記憶される。」との記載から、引用例1には、「ホストコンピュータ6の記憶部63に蓄積された患者のファイルは、ドクター用PC7に送信されて、診断結果が入力され、ファイルが更新されて、ネットワーク5を介してホストコンピュータ6に記憶され」ることが記載されているということができる。

カ 引用例1の「【0155】‥‥‥PC3における情報の閲覧処理の説明を行なう。‥‥‥【0156】‥‥‥ユーザのIDおよびパスワードを入力するための画面が‥‥‥表示される。ここで入力するIDおよびパスワードは、‥‥‥送信用のファイルに記載される利用者IDおよびパスワードと同様の情報である。【0157】‥‥‥入力されたIDおよびパスワードは、‥‥‥ネットワーク5を介してホストコンピュータ6に送信され、ホストコンピュータ6‥‥‥で照会されてもよい。IDおよびパスワードが照合されると、IDに基づいて、当該ユーザのファイルがホストコンピュータ6の記憶部63より抽出される。抽出されたファイルより、‥‥‥診断結果‥‥‥が読出され、PC3の表示部34に表示される‥‥‥。」との記載から、「PC3における情報の閲覧」は、診断結果の閲覧であるということができ、また、診断結果がネットワーク5を介してPC3に表示されることは明らかであるから、引用例1には、「PC3において、送信用のファイルに記載されるIDおよびパスワードを入力し、ホストコンピュータ6でIDおよびパスワードが照合されると、当該患者のファイルがホストコンピュータ6の記憶部63から抽出され、抽出されたファイルより診断結果が読出され、ネットワーク5を介してPC3に表示される」ことが記載されているということができる。


上記引用例1に記載された事項、図面の記載、及び上記アないしカを総合すると、引用例1には、次の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。

「血圧値を測定し管理する生体情報測定システムであって、
血圧計1を用いて測定した複数の患者の血圧値の情報は、メモリカード2を介してPC3に読込まれると、PC3は、読込まれた情報に基づいて、血圧計1を特定するための端末/カード認識番号と、IDおよびパスワードと、最高血圧、最低血圧を含む、送信用のファイルを作成し、作成された送信用のファイルはネットワーク5を介してホストコンピュータ6の記憶部63に蓄積され、
ホストコンピュータ6の記憶部63に蓄積された患者のファイルは、ドクター用PC7に送信されて、診断結果が入力され、ファイルが更新されて、ネットワーク5を介してホストコンピュータ6に記憶され、
PC3において、送信用のファイルに記載されるIDおよびパスワードを入力し、ホストコンピュータ6でIDおよびパスワードが照合されると、当該患者のファイルがホストコンピュータ6の記憶部63から抽出され、抽出されたファイルより診断結果が読出され、ネットワーク5を介してPC3に表示される、
生体情報測定システム。」


(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特表2004-536637号公報(平成16年12月9日公表、以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

「【0013】
例示的なサーバ側計算装置110のプロセッサは、インテル(Intel)またはAMDの単一のX86プロセッサを含んでいる。しかしながら、プロセッサ112は、代わりに超長命令語(VLIW)コードモーフィング、複合命令セットコンピュータ(CISC)、縮小命令セットコンピュータ(RISC)、単一命令/複合データ(SIMD)、複合命令/複合データ(MIMD)、またはコンパック(Compaq)、ナショナルセミコンダクタ(National Semiconductor Corporation)、モトローラ(Motorola)およびトランスメタ(Transmeta Corporation)などのベンダの他のアーキテクチャを活用する1台または複数台のプロセッサを含んでよい。プロセッサ112は、通常、メモリ114に記憶されるソフトウェアおよび/またはファームウェアルーチンを実行するために使用できる。メモリ114のソフトウェアおよび/またはファームウェアルーチンを実行した結果、プロセッサ112はサーバ側計算装置110の一般的な動作を制御する。詳細には、メモリ114のソフトウェアおよび/またはファームウェアルーチンの結果、プロセッサ112は通常、医療機器130との通信用にクライアント側計算装置120を構成するために使用できる。さらに、プロセッサ112は、通常、メモリ114のソフトウェアおよび/またはファームウェアルーチンを実行した結果、クライアント側計算装置120を介して医療機器130から測定データを検索し、医療機器から検索された測定データを永久記録保存し、医療機器から受信された測定データを処理し、および/またはクライアント側計算装置120に処理済みの測定データを提供するようにサーバ側計算装置110を構成するために使用できる。」

「【0029】
図示されているように、システム100はさらに医療機器130を含んでいる。システム100の医療機器130は、通常、1つまたは複数の生物学的/生理学的な状態を監視し、クライアント側計算装置120と医療機器130のあいだに確立された物理的通信リンク140を介してクライアント側計算装置120と通信するために使用できる。例示的な実施の形態においては、医療機器130は、通常、試験片(test strip)に適用される血液の血糖レベルを測定するために使用できる、ロッシュ ダイアグノスティックス社製のグルコース計を含んでいる。例示的な実施の形態における医療機器130はグルコース計を含んでいるが、医療機器130は、体液または身体的機能(たとえば、血液、尿、唾液)、身体的信号(たとえば、心電図信号、脳波、血圧波)、および/または身体的刺激(たとえば、呼吸作用)などの他の生物学的/生理学的なパラメータまたは状態を監視および/または分析し、血圧、血液ガス、血液凝固、電解質、心血管活動、薬物濃度、呼吸数、ストレスなどの測定値を得るために実現できるであろう。」

「【0046】
患者データ208は、通常、システム100によって監視されている患者から収集される生物学的および/または生理学的なデータを含んでいる。さらに、患者データ208は、指定された患者のアイデンティティを検証するため、および/またはサーバ側計算装置110によって収集される事前の生物学的/生理学的なデータと指定される患者を相関付けるために使用され得る患者識別情報(たとえば、氏名、生年月日、住所など)および認証情報(たとえば、ユーザ名/パスワード、ウェブクッキーテキスト、クライアント側計算装置アドレス、医療機器製造番号、クライアント側計算装置ネットワークアドレスなど)を含んでよい。システム100は、サーバ側計算装置110が患者データを維持していないケースで匿名のアクセスも可能にするか、または依然として患者が彼らの収集された生物学的/生理学的なデータを入手できるようにする匿名方式で患者データを維持してよい。匿名アクセスは、患者が、誰かがデータを患者に結び付ける惧れなしに医療機器130の現在の生物学的/生理学的なデータを検索、表示、および/または分析できるようにする。」

「【0060】
サーバ側計算装置110は、工程306において、ユーザ、クライアント側計算装置120、および/または医療機器130を認証しようと試みる。例示的な実施の形態においては、サーバ側計算装置110は、ユーザが過去に収集された生物学的/生理学的なデータを検索、および/または収集された生物学的/生理学的なデータが非公開に保たれていることを確実にできるようにするために、多様な認証方式を介してユーザ側、クライアント側計算装置120、および/または医療機器130を認証しようと試みる。例示的な実施の形態においては、ユーザは、ユーザインタフェース210を介して、サーバ側計算装置110が、ユーザが有効なユーザ名/パスワードの組を入力したかどうかを判断するために、維持されている患者データ208のユーザ名/パスワードの組と比較するユーザ名とパスワードを入力する。しかしながら、機密保護/プライバシーが懸念されない環境では、サーバ側計算装置110の他の実施の形態は、ユーザ、クライアント側計算装置120、および/または医療機器130を認証しない。他の認証方法も適当であることが認識されなければならない。たとえば認証は、さらに、または代わりに、クライアント側計算装置120のネットワークアドレス、医療機器130の製造番号、記憶されている認証キー(たとえばPGPキー)などに基づいてよい。」

上記の記載から、引用例2には、次の事項が記載されているということができる。

医療機器から得られる血圧の測定値を、クライアント側計算装置を介して保存し、また、クライアント側計算装置に処理済みの測定データを提供するサーバ側計算装置において(段落【0013】、段落【0029】)、指定された患者のアイデンティティを検証したり(段落【0046】)、生物学的/生理学的なデータ(血圧の測定値)が非公開に保たれていることを確実にできるようにしたりするために、医療機器130の製造番号に基づいてクライアント側計算装置を認証する(段落【0060】)技術。


(3)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2002-149831号公報(平成14年5月24日公開、以下「引用例3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

「【0047】情報処理装置3は、健康管理用通信装置1から送信されたデータ(健康状態情報)を、PHS通信装置36によって受け、このデータをインタフェース回路35を介して取り込む。更に、このデータに含まれる患者識別情報から、ハードディスク装置34に格納されているこの患者の個人ファイルを選び出し、取り込んだデータをこの個人ファイルに記憶する。
【0048】また、情報処理装置3は、健康管理用通信装置1から受け取ったデータを記憶すると共に、このデータを用いて、患者100の健康状態の評価を行う。この評価結果は、前記モデム装置37により、ファクシミリ装置1Aへ送信され、患者100に通知される。これと同様に、評価結果がファクシミリ装置2へ送信され、医者200に通知される。また、評価結果は、インターネットを通じて看護通信装置4へ送信され、訪問看護業者400に通知される。」

「【0053】情報処理装置3は、脈拍データ、心電データ、呼吸データ、加速度データ、及び患者識別データを受信し(ステップ9)、体重データ、血圧データ、体温データ、脈波データ、回答データ、及び患者識別データを受信する(ステップ10)。そして、これらのデータを用いて、後述する消費カロリ演算処理、有酸素運動時間演算処理、睡眠時間演算処理、ストレス時間演算処理、生活リズム演算処理、健康状態評価処理、及び問診評価処理を行う(ステップ11?17)。
【0054】また、情報処理装置3には、患者100への課金を表す患者課金データが、患者100の患者識別データに対応付けられて、ハードディスク装置34に記憶してある。患者課金データは、1月当たりの課金の総計を表しており、この課金は、1月当たりに、本健康管理システムを使用するのに必要な基本料金、及び患者100が健康状態の評価を1回受けるために必要な使用料金に、1月中に評価を受けた回数を乗じた料金からなっている。そして、情報処理装置3は、患者課金データが表す金額に1回の使用料金を加えた金額を、新たな課金とすべく患者課金データを更新する(ステップ18)。」

「【0080】次に、健康状態評価処理について説明する。図18及び図19は、健康状態評価処理の処理手順を示すフローチャートである。まず、体温データが表す患者100の体温Tmが、Tm<Tms-0.7を満たすか否かを判別する(ステップ1601)。‥‥‥(略)‥‥‥
【0081】続いて、脈波データの極大値を計数することにより、1分間の脈拍数Pを算出し(ステップ1606)、この脈拍数Pが、P<Ps-10を満たすか否かを判別する(ステップ1607)。‥‥‥(略)‥‥‥
【0082】そして、血圧データから得られる患者100の収縮期血圧P1が、P1<100を満たすか否かを判別し(ステップ1612)、これを満たす場合は、血圧が低いと判断し、「血圧が低いです。睡眠と栄養を十分にとってください」という内容を表すデータを評価結果に追加して(ステップ1613)、リターンする。ステップ1612の条件を満たさない場合は、100≦P1≦140を満たし、かつ、血圧データから得られる拡張期血圧P2が、P2<90を満たすか否かを判別し(ステップ1614)、この条件を満たす場合は、正常な血圧であると判断し、「血圧は正常です。」という内容を表すデータを評価結果に追加して(ステップ1615)、リターンする。ステップ1614の条件を満たさない場合には、血圧が高いと判断し、「血圧が高いです。お医者さんに相談してください。」という内容を表すデータを評価結果に追加して(ステップ1616)、リターンする。」

上記の記載から、引用例3には、次の事項が記載されているということができる。

A 健康管理用通信装置1から送信されたデータ(健康状態情報)を個人ファイルに記憶し、このデータを用いて、患者の健康状態の評価を行う情報処理装置3において(段落【0047】、段落【0048】)、情報処理装置3は、受信した血圧データを用いて(段落【0053】)、「血圧が低い」、「血圧は正常です」、「血圧が高い」のいずれかを判断して、健康状態評価処理を行う(段落【0080】、段落【0082】)技術。

B 健康管理用通信装置1から送信されたデータ(健康状態情報)を個人ファイルに記憶し、このデータを用いて、患者の健康状態の評価を行う情報処理装置3において(段落【0047】、段落【0048】)、情報処理装置3には、患者100への課金を表す患者課金データが、患者100の患者識別データに対応付けられて、ハードディスク装置34に記憶され、この課金は、患者100が健康状態の評価を1回受けるために必要な使用料金に、1月中に評価を受けた回数を乗じた料金とする(段落【0054】)技術。


(4)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2005-107919号公報(平成17年4月21日公開、以下「引用例4」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

「【0091】
そして、患者用の専用端末20に支払い要求がされると患者は、S457で患者用ICカードを入れて課金処理を行う。
【0092】
S458で残高などを確認し、正しく課金されたかを判断し、正しく課金されない場合はS457に戻り、正しく課金された場合は、S459でメニュー画面に戻り、同時に、S472で管理会社70に連絡が行き、患者用ICカードから残高と顧客情報を確認の上、購入価格分の金額をICカードから差し引いて課金処理を行う。」

上記の記載から、引用例4には、次の事項が記載されているということができる。

患者用ICカードから残高を確認の上、購入価格分の金額をICカードから差し引いて課金処理を行う技術(段落【0092】)。


(5)原査定において周知例として引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2001-104254号公報(平成13年4月17日公開、以下「周知例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

「【0030】以上のような体内栄養代謝動態測定装置において、被測定者の入力データ、測定データ、演算結果等のデータは、RAM14に記憶されるのみであるが、容量の大きい記録媒体を本体に設置し、RAM14に記憶されるデータを前記記録媒体に転送して半永久的に保存することができるようにし、被測定者の過去からのデータを集計できるようにすることも可能である。また、RAM14や記録媒体を被測定者毎のエリアに分割して複数の被測定者のデータを管理するようにすることも可能である。この場合、個人データの入力に関して、番号による識別手段や個人名の入力手段などを備えることが好ましい。」

(6)原査定において周知例として引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平9-237304号公報(平成9年9月9日公開、以下「周知例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

「【0032】図4はこの発明の実施の形態による記録媒体の記憶領域を患者ごとに設ける場合の概念図である。図5はこの発明の実施の形態による患者ごとに独立した記録媒体を設ける場合の概念図である。図4に示されるように記憶媒体1の領域をレコード特定情報K3の患者コードに基づいて患者ごとに区分けし、各領域に患者ごとのレコード2を独立に記憶する。各患者ごとに通常は最新のレコードRのみを参照すればよいので、このようにすると検索の便が向上する。これは、図5に示されるように患者ごとに独立した記憶媒体1としてもよい。図5の場合は記憶媒体1をICカードのようなもので実現でき、書換が必要ないのでヒュージブリンクタイプのP-ROMのような記憶保持に電源がいらず、改ざんが困難な媒体を用いることができる。また、記憶媒体1として1回書込型の光磁気ディスクまたは1回書込型の半導体メモリとすれば安価で済む。」


3 対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(A)引用発明は、「血圧値を測定し管理する生体情報測定システムであって、血圧計1を用いて測定した複数の患者の血圧値の情報は、メモリカード2を介してPC3に読込まれると、PC3は、読込まれた情報に基づいて、血圧計1を特定するための端末/カード認識番号と、IDおよびパスワードと、最高血圧、最低血圧を含む、送信用のファイルを作成し、作成された送信用のファイルはネットワーク5を介してホストコンピュータ6の記憶部63に蓄積され、ホストコンピュータ6の記憶部63に蓄積された患者のファイルは、ドクター用PC7に送信されて、診断結果が入力され、ファイルが更新されて、ネットワーク5を介してホストコンピュータ6に記憶され」るものであるから、複数の患者の血液値を処理するためのシステムと捉えることができ、本願発明と引用発明とは、「血圧計を用いて取得した、複数の患者についての血圧データを処理するためのシステム」である点で共通する。

(B)引用発明は、「血圧計1を用いて測定した複数の患者の血圧値の情報は、メモリカード2を介してPC3に読込まれると、PC3は、読込まれた情報に基づいて、」「最高血圧、最低血圧を含む、送信用のファイルを作成し、作成された送信用のファイルはネットワーク5を介してホストコンピュータ6の記憶部63に蓄積され」るものであり、また、「当該患者のファイルがホストコンピュータ6の記憶部63から抽出され、抽出されたファイルより診断結果が読出されてPC3に表示される」ものであって、ホストコンピュータ6は、PC3から血圧値の情報を収集し、また、診断結果をPC3に送信するものといえ、PC3からみて「中央データサーバ」としての機能を有するものと捉えることができから、本願発明と引用発明とは、「各患者の血圧データが記憶される中央データサーバ」を備える点で共通する。

(C)引用発明は、「最高血圧、最低血圧を含む、送信用のファイルを作成し、作成された送信用のファイルは、ネットワーク5を介して、ホストコンピュータ6の記憶部63に蓄積され」るものであって、最高血圧、最低血圧がホストコンピュータ6の記憶部63に蓄積されるものであるから、本願発明と引用発明とは、「当該中央データサーバに設けられ、各患者の血圧データのための記憶領域」を備える点で共通する。

(D)引用発明は、「作成された送信用のファイルはネットワーク5を介してホストコンピュータ6の記憶部63に蓄積され」るものであり、また、「当該患者のファイルがホストコンピュータ6の記憶部63から抽出され、抽出されたファイルより診断結果が読出され、ネットワーク5を介してPC3に表示される」ものであるから、ネットワーク5は、送信用ファイルをホストコンピュータ6の記憶部63に蓄積するためのものであるとともに、診断結果を記憶部63からPC3に送信するためのものであるといえ、本願発明と引用発明とは、「当該記憶領域にデータを入力するとともに、当該記憶領域からデータを読み出すネットワーク接続」を備える点で共通する。

(E)引用発明は、「血圧計1を用いて測定した複数の患者の血圧値の情報は、メモリカード2を介してPC3に読込まれると、PC3は、読込まれた情報に基づいて、血圧計1を特定するための端末/カード認識番号と、IDおよびパスワードと、最高血圧、最低血圧を含む、送信用のファイルを作成」するものであって、「血圧計1を特定するための端末/カード認識番号」は、「血圧計のための固有のデバイス識別コード」ということができるから、本願発明と引用発明とは、「患者の血圧データを取得する血圧計のための固有のデバイス識別コードを有」する点で共通する。

(F)引用発明は、「PC3において、送信用のファイルに記載されるIDおよびパスワードを入力し、ホストコンピュータ6でIDおよびパスワードが照合されると、当該患者のファイルがホストコンピュータ6の記憶部63から抽出され、抽出されたファイルより診断結果が読出され、ネットワーク5を介してPC3に表示される」ものであって、「ホストコンピュータ6の記憶部63」へのアクセスが、PC3から入力されるIDおよびパスワード、すなわち、端末から入力されるアクセスコードによってなされ、その照合において、比較対象となるアクセスコードを有するのは明らかであって、その照合により、「ホストコンピュータ6の記憶部63」へのアクセスが可能となるものであるから、記憶部63に対応した固有のアクセスコードであるということができ、本願発明と引用発明とは、「アクセスが試みられた場合に端末から転送されるアクセスコードと、当該記憶領域に対応した固有のアクセスコードとを比較することにより、当該記憶領域へのアクセスを制御することのできるアクセス制御装置」を備える点で共通する。

(G)引用発明は、「ホストコンピュータ6の記憶部63に蓄積された患者のファイルは、ドクター用PC7に送信されて、診断結果が入力され、ファイルが更新されて、ネットワーク5を介してホストコンピュータ6に記憶され」るものであって、診断結果は、例えば、最高血圧、最低血圧等の血圧値を評価することと捉えることができるから、本願発明と引用発明とは、「前記記憶領域に記憶された血圧データセットを評価すること」を備える点で共通する。


すると、本願発明と引用発明とは、次の<一致点>及び<相違点>を有する。

<一致点>
「血圧計を用いて取得した、複数の患者についての血圧データを処理するためのシステムであって、
各患者の血圧データが記憶される中央データサーバと、
当該中央データサーバに設けられ、各患者の血圧データのための記憶領域と、
当該記憶領域にデータを入力するとともに、当該記憶領域からデータを読み出すネットワーク接続と、
患者の血圧データを取得する血圧計のための固有のデバイス識別コードを有し、アクセスが試みられた場合に端末から転送されるアクセスコードと、当該記憶領域に対応した固有のアクセスコードとを比較することにより、当該記憶領域へのアクセスを制御することのできるアクセス制御装置と、
前記記憶領域に記憶された血圧データセットを評価することと、
を備えるシステム。」


<相違点>

(ア)本願発明が、各患者の血圧データが「別々に」記憶されるものであり、記憶領域が「個別」記憶領域であるのに対し、引用発明は、このような特定がない点。

(イ)患者の血圧データを取得する血圧計のための固有のデバイス識別コードについて、本願発明が、「当該個別記憶領域に対応」するものであるのに対し、引用発明は、このような特定がない点。

(ウ)血圧データセットを評価することについて、本願発明が、血圧データセットを評価することのできる「評価ユニット」を備えるのに対し、引用発明は、診断結果が入力される点。

(エ)本願発明が、「前記個別記憶領域に対応する料金記憶装置」を備えるのに対し、引用発明は、このような特定がない点。

(オ)本願発明が、「当該評価ユニットにアクセスが試みられた場合、及び、当該評価ユニットにより評価が準備された場合のうち少なくとも1つの場合に、前記料金記憶装置の残高を減少させる料金課金装置」を備えるのに対し、引用発明は、このような特定がない点。


4 判断

<相違点>(ア)について
一般に、被測定者毎にデータを「別々に」記憶し、記憶領域を「個別記憶領域」とすることは、周知技術であって(周知例1(上記2(5))、周知例2(上記2(6)))、引用発明において、前記周知技術を用いて、各患者の血圧データを「別々に」記憶し、記憶領域を「個別記憶領域」とすることは、当業者が適宜なし得る事項である。

よって、本願発明の<相違点>(ア)に係る構成のようにすることは、格別なことではない。

<相違点>(イ)について
引用例2には、医療機器から得られる血圧の測定値を、クライアント側計算装置を介して保存し、また、クライアント側計算装置に処理済みの測定データを提供するサーバ側計算装置において、指定された患者のアイデンティティを検証したり、生物学的/生理学的なデータ(血圧の測定値(測定データ))が非公開に保たれていることを確実にできるようにしたりするために、医療機器130の製造番号に基づいてクライアント側計算装置を認証する技術が記載されており(上記2(2))、引用発明のホストコンピュータ6の記憶部63に蓄積される血圧値の情報(最高血圧、最低血圧)についても、患者の同一性や、機密性を保つために、引用例2に記載の技術を用いて、各患者の血圧データが「別々に」記憶された「個別記憶領域」に、血圧計の製造番号を対応させるようにすることは、当業者が適宜なし得る事項である。

よって、本願発明の<相違点>(イ)に係る構成のようにすることは、格別なことではない。

<相違点>(ウ)について
引用例3には、健康管理用通信装置1から送信されたデータ(健康状態情報)を個人ファイルに記憶し、このデータを用いて、患者の健康状態の評価を行う情報処理装置3において、情報処理装置3は、受信した血圧データを用いて、「血圧が低い」、「血圧は正常です」、「血圧が高い」のいずれかを判断して、健康状態評価処理を行う技術が記載されており(上記2(3)A)、引用発明の「システム」において、医師が診断結果を入力することに代えて、引用発明の「ホストコンピュータ」に、引用例3に記載された前記技術を用いて、「血圧データセットを評価することのできる評価」に関する制御フローを設けることに格別の困難性を有しない。

よって、本願発明の<相違点>(ウ)に係る構成のようにすることは、格別なことではない。

<相違点>(エ)について
引用例3には、健康管理用通信装置1から送信されたデータ(健康状態情報)を個人ファイルに記憶し、このデータを用いて、患者の健康状態の評価を行う情報処理装置3において、情報処理装置3には、患者100への課金を表す患者課金データが、患者100の患者識別データに対応付けられて、ハードディスク装置34に記憶され、この課金は、患者100が健康状態の評価を1回受けるために必要な使用料金に、1月中に評価を受けた回数を乗じた料金とする技術が記載されており(上記2(3)B)、患者100への課金を表す患者課金データが、患者100の患者識別データに対応付けられて、ハードディスク装置34に記憶されていることから、引用発明において、患者毎の「個別記憶領域」に対応して、料金記憶装置を設けることは、当業者が適宜なし得る事項である。

よって、本願発明の<相違点>(エ)に係る構成のようにすることは、格別なことではない。

<相違点>(オ)について
引用例3には、健康管理用通信装置1から送信されたデータ(健康状態情報)を個人ファイルに記憶し、このデータを用いて、患者の健康状態の評価を行う情報処理装置3において、情報処理装置3には、患者100への課金を表す患者課金データが、患者100の患者識別データに対応付けられて、ハードディスク装置34に記憶され、この課金は、患者100が健康状態の評価を1回受けるために必要な使用料金に、1月中に評価を受けた回数を乗じた料金とする技術が記載されており(上記2(3)B)、健康状態の評価を受ける毎に課金されるものであり、また、一般に、後払い方式にて課金を行うこと、先払い方式にて課金を行うことはいずれも周知技術であるから(先払い方式については、引用例4参照(上記2(4)))、引用発明において、料金課金装置を用いる際に、先払い方式を採用して、「当該評価ユニットにアクセスが試みられた場合、」「前記料金記憶装置の残高を減少させる料金課金装置」を設けることは、当業者が容易になし得る事項である。

よって、本願発明の<相違点>(オ)に係る構成のようにすることは、格別なことではない。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は引用発明及び周知技術から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。

よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-06 
結審通知日 2012-12-11 
審決日 2012-12-25 
出願番号 特願2008-508094(P2008-508094)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 戸島 弘詩  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 田中 秀人
長島 孝志
発明の名称 血圧データを管理、記録及び/又は評価するシステム及び方法  
代理人 特許業務法人クシブチ国際特許事務所  

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