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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02M
管理番号 1274265
審判番号 不服2012-13540  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-07-13 
確定日 2013-05-15 
事件の表示 特願2007-514894「交流波形を用いる低電圧制御方法及びそれを実施するシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月 1日国際公開、WO2005/114823、平成20年 1月10日国内公表、特表2008-500799〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2005年5月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年5月24日、韓国)を国際出願日とする出願であって、平成22年8月13日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成22年8月17日)、これに対し、平成23年2月17日付で意見書及び手続補正書が提出され、平成23年5月18日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成23年5月24日)、これに対し、平成23年11月24日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成24年3月6日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成24年3月13日)、これに対し、平成24年7月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


2.本願発明
本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年11月24日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「低電圧を制御するシステムであって、
商用交流電力を受電し、かつ全波整流する整流ユニット(110)と、
前記整流ユニット(110)の出力端子に接続され、負荷に要する設定制御電圧を検出するように構成した電圧レベル検出ユニット(120)と、
前記電圧レベル検出ユニット(120)の出力端子に接続され、前記設定制御電圧に従ってスイッチング動作を行って、全波整流した交流電力の1サイクルにおいて、電圧レベルが設定制御電圧の電圧レベルよりも低い4つの出力電力を生成するように構成した、電力スイッチングユニット(130)と、
前記電力スイッチングユニット(130)の出力を直流電圧に変換する、直流変換ユニット(140)と、
前記電力スイッチングユニット(130)を動作させるための電力を供給する過大電流検出ユニット(150)であって、当該過大電流検出ユニット(150)は、前記電力スイッチングユニット(130)の出力端子に接続され、前記電力スイッチングユニット(130)の出力電流から過大電流を検出し、かつ、前記電力スイッチングユニット(130)に供給する電力を遮断する、過大電流検出ユニット(150)と、
前記電力スイッチングユニット(130)を動作させるための電流を供給する異常電圧検出ユニット(160)であって、当該異常電圧検出ユニット(160)は、前記電力スイッチングユニット(130)の出力端子に接続され、前記電力スイッチングユニット(130)の出力から異常電圧を検出し、かつ、前記電力スイッチングユニット(130)に供給する電流を遮断する異常電圧検出ユニット(160)と、
を備えることを特徴とする低電圧制御システム。」


3.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-221141号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

1-a「【請求項1】 入力電圧が予め定められたスイッチオン電圧以上から以下となったときにスイッチオン信号を出力し、上記入力電圧が予め定められたスイッチオフ電圧以下から以上となったときにスイッチオフ信号を出力する電圧検出部と、上記電圧検出部からの上記スイッチオン信号によりスイッチオンし、上記入力電圧を外部へ出力して電源を供給するとともに、上記電圧検出部からの上記スイッチオフ信号によりスイッチオフし、上記入力電圧を外部へ出力するのを抑制するスイッチ部と、このスイッチ部が出力した電圧によって充電されるとともに、上記スイッチ部がスイッチオフしているときに電源を外部へ供給する畜電部と、を備える電源回路。
【請求項2】 入力電圧が所定の電圧以上となったときに蓄電部にかかる電圧を抑制する過電圧保護回路を有することを特徴とする請求項1に記載の電源回路。」

1-b「実施例2.続いて、実施例1とは異なる動作をするスイッチ部12を持つ電源回路の例を実施例2として説明する。図4は図1の電力供給制御回路5を詳細に説明する図である。図4において、図2と同一の符号は同一又は相当の部分を示し、100は、入力端子5a・5b間にかかる回路入力電圧レベルを常に監視し、この電圧レベルによってスイッチ部12のスイッチオン/オフを制御するオン信号/オフ信号を出力する電圧レベル検出部である。ただし、実施例2では、交流電源として図1の三相交流電源1に替えて、単相の交流電源を用いている。」(【0026】)

1-c「実施例3.以上の実施例は、交流の入力を半波整流した場合について説明してきたが、この実施例3では交流の入力を全波整流した場合について説明する。図6は、実施例3による電源回路を説明する図である。図6において、図1と同一の符号は同一又は相当の部分を表し、13はこの電源回路に過大な電圧がかかったときに、この過大な電圧から電源回路等を保護する過電圧保護回路であり、201は交流電源から入力される回路入力電圧を、全波整流する全波整流回路である。図7は、実施例3による電源回路の電力供給制御回路5等の入出力波形を説明する図である。図7において各波形(a)?(e)は、図5に示した(a)?(e)までの電圧、電流又はスイッチ動作に相当する。また、電力供給制御回路5としては、実施例1において説明した図2の電力供給制御回路5を使用してもよいし、図4の電力供給制御回路5でもよいが、本実施例3では、基本構成を実施例2で説明した電力供給制御回路5を用いることにして、オン信号/オフ信号を出力するタイミングを次の条件で決定する電力供給制御回路5を用いる。ただし、実施例1・2で説明した上昇時スイッチオフ電圧V1・V11と、下降時スイッチオン電圧V2・V21を同一の値にし、これら両者の電圧V1・V11・V2・V21の役割を果たす電圧を、新たにスイッチ基準電圧V3とする。
<スイッチ条件>回路入力電圧がスイッチ基準電圧V3以上であるとき、スイッチオフし、回路入力電圧がスイッチ基準電圧V3以下であるとき、スイッチオンする。上記スイッチ基準電圧V3は、図7(a)にV3で表示されている。
次に、この回路の動作について図6及び図7を用いて説明する。実施例3では図1の三相交流電源1の代わりに、単相の交流電源を使用している。この単相交流電源による電圧を全波整流回路201で整流すると図7(a)の波形のようになる。この波形に示された回路入力電圧に対して電力供給制御回路5がどのように動作するか、充電期間eと放電期間cとに分割して説明する。また、実施例3による電源回路の基本動作は、実施例2の放電期間dが非常に短くなったときの動作に相当する、と考えることもできるので、以下にこの回路における特徴的な事項について述べる。
<放電期間b>放電期間bは後述する充電期間eの後に発生し、充電期間e中にコンデンサ6に充電した電気を放電する期間である。これは、実施例2で説明したとおりである。
<充電期間e>充電期間eは、実施例2において説明した図5の充電期間aと放電期間dと充電期間cとが、1つになったものに相当する期間である。まず、回路入力電圧がスイッチ基準電圧V3を下回ると、(図7(a)において、放電期間bの終了時に示されている)、電力供給制御回路5内のスイッチ部12がスイッチオンし、電力供給制御回路5を通じて、電流が流れコンデンサ6及び定電圧回路7に電圧がかかる。このため、コンデンサ6は充電される。この間、回路入力電圧は図7(a)に示したように一旦下降した後、上昇し、やがてスイッチ基準電圧V3を上回る、(図7(a)において、充電期間eの終了時に示されている)。このとき、電力供給制御回路5は、上記のスイッチ条件に従って、スイッチオフし、電力供給制御回路5を通る電流を止め、充電期間を終了する。そして再び、コンデンサ6によって電力を供給する放電期間bに入る。ただし、充電期間e中、一時的に回路入力電圧がコンデンサ6自体の持つ電圧よりも低くなることがあるが、例えば電圧0[V]、このときは、一時的にコンデンサ6からの放電によって、定電圧回路7に電力を供給する期間がわずかに発生する。
この実施例3による電源回路では、例えば、図3や図5に示すような入出力をする電源回路に比べ、充電期間における電力供給制御回路5、定電圧回路7等にかける電圧を低くすることができ、電力供給制御回路5、定電圧回路7等で消費される損失電力を少なくすることができる効果がある。その理由は、コンデンサ6は充電期間e中に、放電期間b中定電圧回路7へ電力を供給するのに十分な電圧を得るまで充電される必要があるが、この充電には所定の充電時間が必要になる。図3や図5に示したような入出力を行う電源回路では、回路入力電圧の半波の立ち上がり又は立ち下がり部分に、別々に充電を行っているので、上記の必要な充電時間を設定すれば、回路入力電圧の本実施例3に比べ高電圧の部分にまで、充電期間a・bとしなければならない。それに対し、本実施例3では、充電期間eは、回路入力電圧の立ち下がりと立ち上がりとを連続した充電期間とすることができるので、上記の必要な充電時間を設定する場合には電圧の低い部分が短期間に2回訪れ、この期間に充電することで、電圧の低い期間に充電をすることができる。図5と図7との比較でいえば、図5(a)の下降時スイッチオン電圧V21及び上昇時スイッチオフ電圧V11と図7(a)のスイッチ基準電圧V3との比較では、V3<V11、V3<V21、となる。充電期間eを詳しく見れば、充電期間e中に、わずかに放電期間が入ることがあるので、連続した充電期間ではないことがあるが、このわずかな放電期間中の放電により電圧がわずかに下がったところですぐに、回路入力電圧が高くなり、再び充電による電圧の大きな上昇が始まるので、わずかな放電が入ることによる上記必要な充電時間の延長は少なく、上述した効果を得ることができる。
また、本実施例3では、図6に示したように過電圧保護回路13が備わっている。この過電圧保護回路は回路入力電圧が異常に高くなったときに、電力供給制御回路5、コンデンサ6、定電圧回路7等を過電圧から保護する役目がある。機能的には、過電圧保護回路13に入力される電圧が一定以上となったときには、過電圧保護回路13の2つの入力端子間に、この回路に続くフィルタA4等をバイパスする電流を流すことにより電圧を適正なものに抑える。特に、上述のように充電部として小さいコンデンサ6を用いた場合には、このコンデンサ6の耐電圧能力も弱くなるので、瞬時に高電圧がかかる場合を想定してこのような過電圧保護回路13を設けるとよい。」(【0034】-【0038】)

1-d「以上説明したように、この発明によれば以下のような効果を奏する。入力電圧がスイッチオン電圧以上から以下となったこときにスイッチオン信号を出力し、上記入力電圧がスイッチオフ電圧以下から以上となったときにスイッチオフ信号を出力する電圧検出部と、この電圧検出部からの信号によって動作するスイッチ部と、スイッチオフのときに放電する畜電部と備えることにより、入力電圧の立ち上がり時に、蓄電部が充電し、この充電後、スイッチオフ信号が出力され、蓄電器が放電を始め、そして、入力電圧の立ち下がり時にスイッチオン信号が出力され、蓄電器が充電された後、再び放電を始め、充電器が所定の電圧以上を保持する時間を短縮するため、充電器に必要な蓄電容量を減らすことができる。
さらに、入力電圧が所定の電圧以上となったときに蓄電部にかかる電圧を抑制する過電圧保護回路を有することにより、耐電圧能力の低い蓄電部に過大な電圧がかからないため、上記蓄電器を過大な電圧から守ることができる。」(【0042】-【0043】)

上記記載及び図面に基づけば、低電圧を制御するシステムであって、単相交流電源を全波整流した交流電力の1サイクルにおいて、電圧レベルがスイッチ基準電圧V3の電圧レベルよりも低い4つの出力電力を生成するように構成している。

上記記載事項からみて、引用例1には、
「低電圧を制御するシステムであって、
単相交流電源を受電し、かつ全波整流する全波整流ユニットと、
前記全波整流ユニットの出力端子に接続され、スイッチ基準電圧V3を検出するように構成した電圧レベル検出部と、
前記電圧レベル検出部の出力端子に接続され、前記スイッチ基準電圧V3に従ってスイッチオン/オフを行って、単相交流電源を全波整流した交流電力の1サイクルにおいて、電圧レベルがスイッチ基準電圧V3の電圧レベルよりも低い4つの出力電力を生成するように構成した、スイッチ部と、
前記スイッチ部の出力を充電する、コンデンサと、
前記スイッチ部を動作させるための電圧を適正なものに抑える過電圧保護回路であって、当該過電圧保護回路は、前記単相交流電源の端子に接続され、前記単相交流電源の出力から異常に高くなった電圧を検出し、かつ、当該過電圧保護回路に続く回路に供給する電流をバイパスする過電圧保護回路と、
を備える低電圧制御システム。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-348836号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

2-a「図6は、このような保護装置の従来例を示す回路図である。51は交流電源が入力される入力端子、52は入力端子51に一端側が接続された主スイッチ、53は主スイッチ52の他端側に接続された整流回路、54は整流回路53の出力側に接続されたスイッチング素子、55はスイッチング素子54を開閉するスイッチング回路、56は1次側がスイッチング素子54の出力側に接続され、2次側が出力端子側に接続されたトランス、57は負荷58へ電源を供給する出力端子、59は出力端子57に接続される負荷58の異常を検出する異常検出回路である。
次に、動作について説明する。図6のように主スイッチ52を投入して「入」状態にすると、入力端子51から入力される交流電圧は、主スイッチ52を経て整流回路53で直流電圧に変換された後、スイッチング素子54の入力側へ与えられ、スイッチング回路55からのパルス出力により開閉されるスイッチング素子54により、交流電圧へ再変換される。この交流電圧は、トランス56の1次側へ与えられ、トランス56の2次側から降圧された交流電圧が取り出される。この交流電圧は図示しない平滑・整流回路を経て直流電圧として出力端子57へ出力され、負荷58へ供給される。
ここで、負荷58において短絡や、過電圧、過電流等の異常が発生した場合は、異常検出回路59がこれらの異常を検出して、検出信号を出力する。この検出信号はスイッチング回路55に与えられる。スイッチング回路55は、この信号を受けて発振動作を停止し、これによってスイッチング回路55からスイッチング素子54へのパルス出力がなくなるので、スイッチング素子54がオフ状態となる。この結果、トランス56の1次側には電圧が印加されなくなり、トランス56の2次側からの出力が停止するため、負荷58への電源供給が遮断される。
以上のようにして、図6の装置では、負荷58に異常が発生した場合に、異常検出回路59がこれを検出してスイッチング素子54をオフ状態にすることで負荷58への通電を遮断し、回路を保護するようにしている。このような保護回路を備えたスイッチング電源装置は、たとえば特開昭54-148221号公報や特開昭60-201018号公報に記載されている。」(【0002】-【0005】)

2-b「図1は、本発明の実施形態に係るスイッチング電源の保護装置を示す回路図である。図において、1は交流電源が入力される入力端子、2は入力端子1に一端側が接続された主スイッチ、21は主スイッチ2の構成部品であるスイッチ接点、22は主スイッチ2の構成部品である電磁ソレノイド、3は主スイッチ2の他端側に接続された整流回路、4は整流回路3の出力側に接続されたスイッチング素子、5はスイッチング素子4を開閉するスイッチング回路、6は1次側61がスイッチング素子4の出力側に接続され、2次側62が出力端子側に接続されたトランス、7は負荷8へ電源を供給する出力端子、9は出力端子7に接続される負荷8の異常を検出する異常検出回路、10は異常検出回路9と主スイッチ2との間に設けられた遅延回路である。
以上の構成において、図6の従来例と異なる点は、主スイッチ2として電磁ソレノイド22を備えたリセット機能付きスイッチが用いられていること、および、異常検出回路9の検出出力が遅延回路10を介して主スイッチ2に与えられるように構成されていることである。なお、主スイッチ2は、操作により「入」状態となった後はその状態を機械的に保持し、次の操作または電磁ソレノイド22の作動によって「切」状態に復帰する保持型のスイッチであり、このようなスイッチとしては、プッシュオン・プッシュオフ式の押ボタンスイッチや、揺動式アクチュエータを備えたシーソー型のスイッチなど、各種のスイッチを用いることができる。
次に、動作について説明する。図2のように主スイッチ2を投入して「入」状態にすると、入力端子1から入力される交流電圧は、スイッチ接点21を経て整流回路3で直流電圧に変換された後、スイッチング素子4の入力側へ与えられ、スイッチング回路5からのパルス出力により開閉されるスイッチング素子4により、交流電圧へ再変換される。この交流電圧は、トランス6の1次側61へ与えられ、トランス6の2次側62から降圧された交流電圧が取り出される。この交流電圧は図示しない平滑・整流回路を経て直流電圧として出力端子7へ出力され、負荷8へ供給される。
ここで、負荷8において短絡や、過電圧、過電流等の異常が発生した場合は、異常検出回路9がこれらの異常を検出して、検出信号を出力する。この検出信号はスイッチング回路5に与えられる。スイッチング回路5は、この信号を受けて発振動作を停止し、これによってスイッチング回路5からスイッチング素子4へのパルス出力がなくなるので、スイッチング素子4がオフ状態となる。この結果、トランス6の1次側61には電圧が印加されなくなり、トランス6の2次側62からの出力が停止するため、負荷8への電源供給が遮断される。
また、異常検出回路9の検出信号は遅延回路10に与えられる。遅延回路10は、検出信号が入力されてから所定の遅延時間(たとえば2?3秒)が経過した後に、主スイッチ2の電磁ソレノイド22を駆動するための駆動信号を出力し、この駆動信号により電磁ソレノイド22が作動する。電磁ソレノイド22はスイッチ接点21と機構的に連動しているので、電磁ソレノイド22が作動すると、図3のようにスイッチ接点21は開放されて「切」状態となる。これにより、主スイッチ2のリセット操作が自動的に行われ、スイッチング素子4やスイッチング回路5は電源から切り離されて異常発熱や焼損が防止される。なお、負荷8への通電を再開するときには、主スイッチ2を手動で投入して図2の「入」状態とする。」(【0013】-【0017】)


4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「単相交流電源」、「全波整流ユニット」、「スイッチ基準電圧V3」、「電圧レベル検出部」、「スイッチオン/オフ」、「単相交流電源を全波整流した交流電力の1サイクル」、「スイッチ部」、「スイッチ部の出力を充電する、コンデンサ」、「過電圧保護回路」は、それぞれ本願発明の「商用交流電力」、「整流ユニット(110)」、「負荷に要する設定制御電圧」又は「設定制御電圧」、「電圧レベル検出ユニット(120)」、「スイッチング動作」、「全波整流した交流電力の1サイクル」、「電力スイッチングユニット(130)」、「電力スイッチングユニット(130)の出力を直流電圧に変換する、直流変換ユニット(140)」、「異常電圧検出ユニット(160)」に相当する。

その機能をも考慮すると、引用発明の「スイッチ部を動作させるための電圧を適正なものに抑える過電圧保護回路」は、本願発明の「電力スイッチングユニット(130)を動作させるための電流を供給する異常電圧検出ユニット(160)」に相当する。

したがって、両者は、
「低電圧を制御するシステムであって、
商用交流電力を受電し、かつ全波整流する整流ユニットと、
前記整流ユニットの出力端子に接続され、負荷に要する設定制御電圧を検出するように構成した電圧レベル検出ユニットと、
前記電圧レベル検出ユニットの出力端子に接続され、前記設定制御電圧に従ってスイッチング動作を行って、全波整流した交流電力の1サイクルにおいて、電圧レベルが設定制御電圧の電圧レベルよりも低い4つの出力電力を生成するように構成した、電力スイッチングユニットと、
前記電力スイッチングユニットの出力を直流電圧に変換する、直流変換ユニットと、
前記電力スイッチングユニットを動作させるための電流を供給する異常電圧検出ユニットと、
を備える低電圧制御システム。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
本願発明は、電力スイッチングユニットを動作させるための電力を供給する過大電流検出ユニットであって、当該過大電流検出ユニットは、前記電力スイッチングユニットの出力端子に接続され、前記電力スイッチングユニットの出力電流から過大電流を検出し、かつ、前記電力スイッチングユニットに供給する電力を遮断する、過大電流検出ユニットを有するのに対し、引用発明は、過大電流検出ユニットを有していない点。
〔相違点2〕
本願発明の異常電圧検出ユニットは、電力スイッチングユニットの出力端子に接続され、前記電力スイッチングユニットの出力から異常電圧を検出し、かつ、前記電力スイッチングユニットに供給する電流を遮断するのに対し、引用発明の異常電圧検出ユニットは、単相交流電源の端子に接続され、前記単相交流電源の出力から異常に高くなった電圧を検出し、かつ、当該過電圧保護回路に続く回路に供給する電流をバイパスする点。


5.判断
相違点1について
まず、本願の図4を参照すると、過大電流検出ユニットは電力スイッチングユニットの素子をオフすることにより過大電流を遮断している。
上記2-aにあるように、電力スイッチングユニット(「スイッチング素子54」、「トランス56」が相当)を動作させるための電力を供給する過大電流検出ユニット(「異常検出手段59」が相当)であって、当該過大電流検出ユニットは、前記電力スイッチングユニットの出力端子(「出力端子57」が相当)に接続され、前記電力スイッチングユニットの出力電流(「負荷への電源供給」が相当)から過大電流(「過電流」が相当)を検出し、かつ、前記電力スイッチングユニットに供給する電力を遮断(「スイッチング素子54がオフ状態」が相当)することは、電源回路の分野において周知の事項である。
また、電源回路に過電流保護回路を設けることは、当然に要求される課題であるから、引用発明においても、当該課題の下、相違点1のような過大電流検出ユニットを設けることは当業者であれば容易に考えられたものと認められる。

仮に、過大電流検出ユニットが「電力スイッチングユニットに供給する電力を遮断」するものと文字どおり解釈した場合、上記2-bにあるように、電力スイッチングユニット(「スイッチング素子4」、「トランス6」が相当)を動作させるための電力を供給する過大電流検出ユニット(「異常検出手段9」が相当)であって、当該過大電流検出ユニットは、前記電力スイッチングユニットの出力端子(「出力端子7」が相当)に接続され、前記電力スイッチングユニットの出力電流(「負荷への電源供給」が相当)から過大電流(「過電流」が相当)を検出し、かつ、前記電力スイッチングユニットに供給する電力を遮断(「主スイッチ2のリセット操作」が相当)することは、電源回路の分野において周知の事項であるから、このように解釈しても相違点1に格別の作用効果は認められない。

相違点2について
上記2-aにあるように、電力スイッチングユニット(「スイッチング素子54」、「トランス56」が相当)の出力端子(「出力端子57」が相当)に接続され、前記電力スイッチングユニットの出力(「負荷への電源供給」が相当)から異常電圧(「過電圧」が相当)を検出し、かつ、前記電力スイッチングユニットに供給する電流を遮断(「スイッチング素子54がオフ状態」が相当)することは、電源回路の分野において周知の事項である。
また、電源回路に過電圧保護回路を設ける際に、何処の電圧に対して保護を行うようにするかは、当該回路の接続関係・配置箇所等に応じて適宜選択し得ることと認められる。
そうであれば、引用発明において、回路を異常電圧から保護するとの課題の下、上記周知の事項のように、異常電圧検出ユニットが接続され、異常電圧を検出する部位を「電力スイッチングユニット」とし、異常電圧を検出した際に、前記「電力スイッチングユニット」に供給する電流を「遮断」するようにして、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に考えられたものと認められる。

なお、審判請求人は、審判請求書において、
『引用文献1には、「本実施例3では、図6に示したように過電圧保護回路13が備わっている。この過電圧保護回路は回路入力電圧が異常に高くなったときに、電力供給制御回路5、コンデンサ6、定電圧回路7等を過電圧から保護する役目がある。」(段落〔0038〕参照)と記載されています。つまり、引用文献1では、電力供給制御回路5(審査官によれば、本願発明2の電力スイッチングユニット(130)に相当)を過電圧から保護するために、既に過電圧保護回路13が設けられているため、電力供給制御回路5から過電圧が出力されることはありません。そのため、電力供給制御回路5から過電圧が出力されない以上、引用文献1には、電極供給制御回路5からの出力電圧が過電圧であるか否かに応じて電力スイッチングユニットへの電流供給を遮断する必要性(動機付け)がありません。
従って、如何に当業者といえども、過電圧を出力しない引用文献1の電力供給制御回路5の出力用に引用文献2の異常検出回路59を接続することは容易に想到できるものではありません。』
と主張するが、
本願発明の電圧レベル検出ユニット(120)は、電力スイッチングユニット(130)よりも電源側に配置され、且つ、電源より過電圧が加われば、電力スイッチングユニット(130)の動作を停止させるという過電圧保護機能も有しているから、本願発明は、過電圧保護機能を有する電圧レベル検出ユニット(120)に加え、異常電圧検出ユニット(160)を有していることとなり、上記主張と矛盾しており、請求人の上記主張は採用できない。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び上記周知の事項から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。


6.むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-13 
結審通知日 2012-12-18 
審決日 2012-12-26 
出願番号 特願2007-514894(P2007-514894)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 服部 俊樹  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 川口 真一
大河原 裕
発明の名称 交流波形を用いる低電圧制御方法及びそれを実施するシステム  
代理人 杉村 憲司  

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