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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1274704
審判番号 不服2012-17070  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-03 
確定日 2013-05-30 
事件の表示 特願2007-243641「液体噴射装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月 9日出願公開、特開2009- 73000〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成19年9月20日に出願されたものであって、平成24年3月23日付けで手続補正がなされ、同年5月31日付けで拒絶の査定がなされ、同年9月3日に拒絶査定(以下「原査定」という。)に対する審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されて特許請求の範囲、及び明細書を補正する手続補正がなされ、これらに対し、同年11月13日付けで審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるために審尋がなされた。なお、審判請求人から、回答書の提出はなかった。

2.平成24年9月3日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「搬送方向における上流側から搬送されたターゲットを支持するための支持部材と、
該支持部材上に支持されるターゲットに対して液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記支持部材を加熱するための加熱装置と、
前記支持部材の前記搬送方向における上流側部位に付与する熱量が前記支持部材の前記搬送方向における下流側部位に付与する熱量よりも多くなるように前記加熱装置の駆動を制御する制御手段と
を備え、
前記加熱装置には、前記支持部材を加熱するための加熱手段が前記搬送方向に沿って複数設けられており、前記制御手段は、前記搬送方向における上流側に配置された加熱手段によって前記支持部材に付与される熱量のほうが前記搬送方向における下流側に配置された加熱手段によって前記支持部材に付与される熱量よりも多くなるように、前記加熱装置の駆動を制御し、
前記各加熱手段は、前記支持部材内において前記搬送方向における位置が異なるようにそれぞれ配置され、
前記支持部材には、該支持部材の厚み方向に延びる吸引孔が貫通形成されると共に、該吸引孔内を吸引するための吸引手段をさらに備え、
前記吸引孔と前記加熱手段とは、前記支持部材の前記ターゲットを支持する支持面と沿う方向において、隣り合うように配置され、
前記加熱手段と前記吸引手段とは、各々対応して同数設けられる液体噴射装置。」
と補正された。(下線は審決で付した。以下同じ。)
上記補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「支持部材」に関し、「支持部材には、該支持部材の厚み方向に延びる吸引孔が貫通形成されると共に、該吸引孔内を吸引するための吸引手段をさらに備え」ると限定し、「吸引孔、及び加熱手段」に関し、「吸引孔と加熱手段とは、支持部材のターゲットを支持する支持面と沿う方向において、隣り合うように配置され」と限定し、「加熱手段と吸引手段」に関し、「加熱手段と吸引手段とは、各々対応して同数設けられる」と限定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、前記に記載された事項により特定されるところ、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
(2-1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された「特開2006-150723号公報 」(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
・「記録媒体を支持するプラテンと、
前記記録媒体を加熱するために前記プラテンを加熱する加熱部と、
前記プラテンに支持された記録媒体に向けてインクを吐出する記録ヘッドと、
前記プラテンに設けられた複数の貫通孔を介して当該プラテン上の記録媒体を吸引し前記プラテンに吸着させる吸引ファンと、
前記貫通孔内に向けて送風する送風ファンと、
前記加熱部、前記記録ヘッド、前記吸引ファン及び前記送風ファンを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、画像記録時には前記プラテン上の前記記録媒体が吸着されながら加熱された状態で、前記記録媒体上に前記インクが吐出されるように前記記録ヘッド、前記加熱部及び前記吸引ファンを制御し、画像記録後には前記プラテンに対する加熱が停止された状態で、前記貫通孔内に送風されるように前記加熱部及び前記吸引ファンを制御することを特徴とするインクジェットプリンタ。」(【請求項1】)
・「プラテン2は上面が平面で内部が中空となるように、例えば金属等の熱伝導率の高い素材から形成されている。プラテン2の天板部21には、上端面から内部の中空部分22まで貫通する複数の貫通孔23が設けられている。また、プラテン2の天板部21の下面部には、図2に示すとおりプラテン2を加熱する複数の加熱部3がプラテン2に接触するように配設されている。この加熱部3によってプラテン2が加熱されると、プラテン2上の記録媒体Pに熱が伝導することで記録媒体Pを加熱するようになっている。」(段落【0014】)
・「そして、インクジェットプリンタ1におけるプラテン2の下方には、プラテン2上の記録媒体Pを吸引しプラテン2に吸着させる2つの吸引ファン9と、プラテン2の中空部分22から吸引ファン9までを連通させて空気の流路を形成する連通管10とが設けられている。」(段落【0018】)
・「続いて、インクジェットプリンタ1の動作について説明する。
画像記録動作の前に、記録媒体Pの種類が作業者によって入力部33から入力されると、入力部33は記録媒体Pの種類を認識し、この認識結果を制御部30に出力する。制御部30は、認識結果を基にして、記録媒体Pの種類に対応する加熱温度を記憶部34から読み出して、当該加熱温度となるように加熱部3を制御しプラテン2を加熱する。
」(段落【0025】)
・「このように間欠搬送及びキャリッジ6の走査を繰り返して画像記録が完了すると、制御部30は、加熱が停止させるように加熱部3を制御するとともに、逆転で回転するように吸引ファン9を制御する。これにより、プラテン2の中空部分22にダクトを介して外気が送風されて、プラテン2が冷却されることになる。さらに、吸引ファン9により送風された空気は貫通孔23から外部に向けて噴出するために記録媒体P自体も冷却される。
なお、この冷却時においては、制御部30は入力部33からの認識結果を基にして、記録媒体Pの種類に対応する回転速度を記憶部34から読み出し、当該回転速度となるように吸引ファン9を制御している。」(段落【0030】)
また、図1、及び2から、以下の事項が看取できる。
・「プラテンは、搬送方向における上流側から搬送された記録媒体を支持している。」
・「天板部は、プラテンの中空部を構成している。」
これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「搬送方向における上流側から搬送された記録媒体を支持するプラテンと、
前記記録媒体を加熱するために前記プラテンの中空部を構成している天板部の下面部に配設されている前記プラテンを加熱する複数の加熱部と、
前記プラテンに支持された記録媒体に向けてインクを吐出する記録ヘッドと、
前記プラテンに設けられた前記プラテンの前記天板部の上端面から内部の中空部分まで貫通する複数の貫通孔を介して当該プラテン上の記録媒体を吸引し前記プラテンに吸着させる2つの吸引ファンと、
前記記録媒体の種類に対応する加熱温度となるように、また加熱を停止させるように、前記加熱部を制御する制御部とを備えた、
インクジェットプリンタ。」

(2-2)引用例2
同じく引用された、本願の出願日前に頒布された特開2007-62156号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。
・「光を照射することにより硬化する光硬化型インクを記録媒体上に吐出する複数のノズルが前記記録媒体の幅方向に沿って列状に形成され前記記録媒体の搬送方向に平行して複数配設されたライン方式の記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの記録媒体搬送方向の下流側に配置され前記記録媒体に着弾したインクに光を照射する光照射装置と、
前記記録媒体の搬送経路上に記録媒体搬送方向の下流側の加熱量が上流側の加熱量よりも少なくなるように前記記録媒体を加熱する加熱機構とを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。」(【請求項1】)
・「各プラテン11a,11b,11c,11dの下方には、記録媒体Pを加熱する加熱機構としてのヒータ12a,12b,12c,12dが、プラテン11a,11b,11c,11dの記録媒体Pを支持する面とは反対の面に接するように設けられている。ヒータ12a,12b,12c,12dは、例えばシート状に形成されたヒートプレート等であり、記録媒体Pを均一に加熱できるように記録媒体Pの幅方向に延在し記録媒体Pの幅寸法とほぼ等しい長さ寸法を有することが好ましい。」(段落【0041】)
・「また、制御部14には、温度検知センサ13によって検知された検知結果が電気信号として送られるようになっており、制御部14は、送られた信号に基づいてヒータ12a,12b,12c,12dのON/OFFを切り替えたり、例えばPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)方式によりデューティー比を切り替えたりすることによってヒータ12a,12b,12c,12dに供給される電力を調整し、ヒータ12a,12b,12c,12dの温度を所定の設定温度に保つように制御するようになっている。」(段落【0048】)
・「また、本実施形態においては、各記録部7a,7b,7c,7dに対応してそれぞれプラテン11a,11b,11c,11dを設けるようにしたが、プラテンの構成はここに例示したものに限定されない。例えば、前述のようにロール状の記録媒体Pを使用する場合には、図4に示すように、全記録領域Aに対応する大きさのプラテン20を1つ設ける構成としてもよい。この場合には、プラテン20の記録媒体Pを支持する面とは反対の面であって各記録部7a,7b,7c,7dに対応する位置に、それぞれヒータ12a,12b,12c,12dを設けるようにする。」(段落【0065】)
また、図4から、以下の事項が看取できる。
・「ヒータ12a、12b、12c、12dは記録媒体Pの搬送方向に沿って複数設けられている。」
・「各ヒータ12a、12b、12c、12dは、前記搬送方向における位置が異なるようにそれぞれ配置されている。」
これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「プラテンに、加熱機構としてのヒータを設け、
記録媒体の搬送経路上に記録媒体搬送方向の下流側の加熱量が上流側の加熱量よりも少なくなるように前記記録媒体を加熱する加熱機構と、
ヒータのON/OFFを切り替えたり、PWM方式によりデューティー比を切り替えたりすることによってヒータに供給される電力を調整し、ヒータの温度を所定の設定温度に保つように制御する制御部とを備え、
ヒータは記録媒体の搬送方向に沿って複数設けられており、
各ヒータは、前記搬送方向における位置が異なるようにそれぞれ配置されている、
インクジェット記録装置。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明1とを対比すると、
後者における「記録媒体」は、その構造、機能、作用等からみて、前者における「ターゲット」に相当し、以下同様に、「プラテン」は「支持部材」に、「インク」は「液体」に、「記録ヘッド」は「液体噴射ヘッド」に、「複数の加熱部」は「加熱装置」に、「制御部」は「制御手段」に、「(複数の内のある一つの)加熱部」は「加熱手段」に、「貫通孔」は「吸引孔」に、「吸引ファン」は「吸引手段」に、「インクジェットプリンタ」は「液体噴射装置」に、それぞれ相当する。
また、後者における加熱部を制御する「制御部」は、記録媒体の種類に対応する加熱温度となるように、また加熱を停止させるように、加熱部を制御しているから、加熱部の駆動を制御するものといえる。
また、複数の各加熱部(加熱手段)は、プラテンの中空部を構成する天板部の下面部に配設されているから、各加熱部(加熱手段)は、プラテン内においてそれぞれ配置されているといえる。
また、後者における「貫通孔」は、プラテンの天板部の上端面から内部の中空部分まで貫通しているから、プラテンの厚み方向に延びて貫通形成されているものといえる。
また、後者における「吸引ファン」は、複数の貫通孔を介してプラテン上の記録媒体を吸引し前記プラテンに吸着させるから、貫通孔内を吸引するためのものといえる。
したがって、両者は、
「搬送方向における上流側から搬送されたターゲットを支持するための支持部材と、
該支持部材上に支持されるターゲットに対して液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記支持部材を加熱するための加熱装置と、
前記加熱装置の駆動を制御する制御手段と
を備え、
前記加熱装置には、前記支持部材を加熱するための加熱手段が複数設けられており、前記制御手段は、前記加熱装置の駆動を制御し、
前記各加熱手段は、前記支持部材内においてそれぞれ配置され、
前記支持部材には、該支持部材の厚み方向に延びる吸引孔が貫通形成され、該吸引孔内を吸引するための吸引手段を備える、
液体噴射装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
制御手段に関して、本願補正発明は、「支持部材の搬送方向における上流側部位に付与する熱量が前記支持部材の前記搬送方向における下流側部位に付与する熱量よりも多くなるように」加熱装置の駆動を制御する、及び「前記搬送方向における上流側に配置された加熱手段によって前記支持部材に付与される熱量のほうが前記搬送方向における下流側に配置された加熱手段によって前記支持部材に付与される熱量よりも多くなるように、」前記加熱装置の駆動を制御するのに対し、引用発明1は、加熱部(加熱装置)を制御するものであるが、その他の点につき、明らかでない点。
[相違点2]
加熱装置、及び加熱手段に関して、本願補正発明は、「加熱装置には、」「加熱手段が搬送方向に沿って複数設けられており、」「各加熱手段は、」「搬送方向における位置が異なるようにそれぞれ配置され」ているのに対し、引用発明1は、加熱部(加熱手段)が複数設けられているが、その他の点につき、明らかでない点。
[相違点3]
支持部材、吸引孔、加熱手段、及び吸引手段に関して、本願補正発明は、「支持部材には、」「吸引手段をさらに備え」、「吸引孔と加熱手段とは、支持部材のターゲットを支持する支持面と沿う方向において、隣り合うように配置され」、「加熱手段と吸引手段とは、各々対応して同数設けられる」のに対し、引用発明1は、そのようなものではない、または明らかでない点。

(4)判断
上記相違点について以下検討する。
(4-1)相違点1、及び2について
引用発明2は、上記2.(2-2)のとおりであって、引用発明2における「記録媒体」は、その構造、機能、作用等からみて、本願補正発明における「ターゲット」に相当し、以下同様に、引用発明2における「プラテン」は、本願補正発明における「支持部材」に、引用発明2における「加熱機構」は、本願補正発明における「加熱装置」に、引用発明2における「記録媒体搬送方向、記録媒体の搬送方向」は、本願補正発明における「搬送方向」に、引用発明2における「制御部」は、本願補正発明における「制御手段」に、引用発明2における「ヒータ」は、本願補正発明における「加熱手段」に、引用発明2における「インクジェット記録装置」は、本願補正発明における「液体噴射装置」に、それぞれ相当する。
また、引用発明2における「加熱機構」は、プラテンに設けて、記録媒体を加熱するものであるから、プラテンを加熱するためのものといえる。
また、引用発明2における「制御部」は、送られた信号に基づいて加熱機構としてのヒータのON/OFFを切り替えたり、PWM方式によりデューティー比を切り替えたりすることによって加熱機構としてのヒータに供給される電力を調整し、加熱機構としてのヒータの温度を所定の設定温度に保つように制御して、加熱機構により記録媒体の搬送経路上に記録媒体搬送方向の下流側の加熱量が上流側の加熱量よりも少なくなるように前記記録媒体を加熱しているから、プラテンの記録媒体搬送方向における上流側部位に付与する熱量が前記プラテンの前記搬送方向における下流側部位に付与する熱量よりも多くなるように前記加熱機構の駆動を制御するものといえ、また、前記搬送方向における上流側に配置されたヒータによって前記プラテンに付与される熱量のほうが前記搬送方向における下流側に配置されたヒータによって前記プラテンに付与される熱量よりも多くなるように、前記加熱機構の駆動を制御するものといえる。
してみると、引用発明2は、上記相違点1、及び2に係る本願補正発明の発明特定事項を備えている。
そして、引用発明1と引用発明2とは、共に液体噴射装置という共通の技術分野に属し、支持部材を加熱装置により加熱するという共通の機能、作用を奏するものであり、また、ターゲットの劣化を防止するという共通の課題を有するものであるから、引用発明1において、引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明1において、引用発明2を適用することにより、相違点1、及び2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(4-2)相違点3について
一般に液体噴射装置において、支持部材に吸引手段をさらに備えることは、当業者が普通になしている程度のものである(例えば、特開2000-318870号公報の段落【0032】、段落【0069】、及び図2、3、特開2007-76175号公報の段落【0016】、段落【0017】参照。以下「常套手段」という。)。また、本願補正発明において、支持部材に吸引手段をさらに備える点に、格別の技術的意義はない(以下「上記の事項1」という。)。
また、一般に液体噴射装置において、吸引孔と加熱手段とを、支持部材のターゲットを支持する支持面と沿う方向において、隣り合うように配置するものは、周知の技術事項(例えば、特開2001-213013号公報の段落【0021】、段落【0022】、及び図2参照。)である。そして、引用発明1と上記周知の技術事項とは、共に液体噴射装置という共通の技術分野に属し、ターゲットを吸引孔により吸引して支持部材を加熱装置により加熱するという共通の機能、作用を奏するものであり、また、本願補正発明において、吸引孔と加熱手段とを、支持部材のターゲットを支持する支持面と沿う方向において、隣り合うように配置する点に、格別の技術的意義はないから、引用発明1において、上記周知の技術事項を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
また、引用発明1は、上記2.(2-1)のとおりであって、複数の加熱部、及び2つ、すなわち複数の吸引ファンを備えるものである(以下「上記の事項2」という。)。また、本願補正発明において、加熱手段と吸引手段とは、各々対応して同数設けられる点に、格別の技術的意義はない(以下「上記の事項3」という。)。
したがって、引用発明1において、上記の常套手段、及び上記の事項1に照らし、相違点3に係る本願補正発明の「支持部材には、」「吸引手段をさらに備え」との発明特定事項とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項であり、その際、上記周知の技術事項を適用することにより、「吸引孔と加熱手段とは、支持部材のターゲットを支持する支持面と沿う方向において、隣り合うように配置され」るものとなし、また、上記の事項2、及び3に照らし、「加熱手段と吸引手段とは、各々対応して同数設けられる」ものとなして、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項となすことは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。

そして、本願補正発明の全体構成によって奏される効果も、引用発明1、引用発明2、上記周知の技術事項、及び常套手段から当業者が予測し得る範囲内のものである。

よって、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2、上記周知の技術事項、及び常套手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願の発明について
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年3月23日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「搬送方向における上流側から搬送されたターゲットを支持するための支持部材と、
該支持部材上に支持されるターゲットに対して液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記支持部材を加熱するための加熱装置と、
前記支持部材の前記搬送方向における上流側部位に付与する熱量が前記支持部材の前記搬送方向における下流側部位に付与する熱量よりも多くなるように前記加熱装置の駆動を制御する制御手段と
を備え、
前記加熱装置には、前記支持部材を加熱するための加熱手段が前記搬送方向に沿って複数設けられており、前記制御手段は、前記搬送方向における上流側に配置された加熱手段によって前記支持部材に付与される熱量のほうが前記搬送方向における下流側に配置された加熱手段によって前記支持部材に付与される熱量よりも多くなるように、前記加熱装置の駆動を制御し、
前記各加熱手段は、前記支持部材内において前記搬送方向における位置が異なるようにそれぞれ配置されている液体噴射装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び、その記載内容は、上記「2.(2)引用例」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、実質的に上記「2.(1)補正後の本願の発明」で検討した本願補正発明の「支持部材」に関し、「支持部材には、該支持部材の厚み方向に延びる吸引孔が貫通形成されると共に、該吸引孔内を吸引するための吸引手段をさらに備え」るとの限定、「吸引孔、及び加熱手段」に関し、「吸引孔と加熱手段とは、支持部材のターゲットを支持する支持面と沿う方向において、隣り合うように配置され」るとの限定、「加熱手段と吸引手段」に関し、「加熱手段と吸引手段とは、各々対応して同数設けられる」との限定を省いたものである。

そうすると、本願発明と引用発明1とを対比した場合の相違点は、上記「2.(3)対比」で挙げた相違点1ないし3となるから、上記「2.(4)判断」における検討内容を踏まえれば、本願発明は、引用発明1、及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1、及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-27 
結審通知日 2013-04-02 
審決日 2013-04-15 
出願番号 特願2007-243641(P2007-243641)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
P 1 8・ 575- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 立澤 正樹柳澤 智也  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 鈴木 秀幹
吉野 公夫
発明の名称 液体噴射装置  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 博宣  

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